デジタルメディア教室 vol.153 Nowhere? Now here!

Writer
ソリューション推進局
153
Vol.
インタラクティブ事業戦略室
デ ジ タ ル メ デ ィ ア 教 室
田村 玄
Theme
Nowhere? Now here!
円谷消費でロック消費なオヤジ世代に「モノ消費からコト消費へ」を見る
そして日本の住宅は広くなる
円谷消費なオヤジ世代
父「あ、間違えて下りの電車に乗っちゃった!」
娘「え?」
某月某日夜、新日本橋駅でテレスドンのスタン
プをゲット、徒歩圏内である神田駅まで歩きガン
「円谷消費」なオヤジ世代の推定人口は、男性
人口 6,169 万人(※ 1)×出現率 2/7(※ 2)= 1,763
万人になります。
ロック消費なオヤジ世代
娘「何でCD買うの?YouTubeで聞けばいい
ダー
(!)のスタンプをゲット、次はゴール駅である
じゃん!」
かってしまったのです。そう、いまだウルトラマン
よ!!!」
に参加、ゼットンと戦うウルトラマンよろしく、最
けていた父は娘の質問に情緒論でしか回答でき
秋葉原で降り、東京駅へ U ターン、
「全 64 駅
かもタダで聞けます、CDを置く場所も不要とな
東京駅に向かうところ、間違って秋葉原駅に向
が大好きな父は、娘とウルトラマンスタンプラリー
終局面での痛恨の移動ミスでした。
父「何で?って…、手元に置いときたいんだ
某月某日、嬉しそうに買ったCDのフィルムを開
ませんでした。確かに YouTube で聞けます、し
ウルトラ制覇証」を無事ゲット!、
「何のためにこ
ります。物心ついたときからYouTube が存在す
素朴な質問が出ないことを祈りながらの都合二
を聴くのはお金がかかることです。ベストヒット
スタンプラリー中は、様々な同士に出会いました。
ルレコード屋でレコードを借り、カセットテープ
んなことしてるの?もう帰ろうよ」という娘からの
日間、父は感激もひとしおでした。
1. 未 就学児とその親:このグループはそもそ
る娘からすれば???です。一方、父にとって音楽
USA で洋楽を知り、なけなしの小遣いでレンタ
にダビング、FM ラジオ雑誌を読んでエアチェッ
も全駅制覇の本気度は低いです。
ク・・・。そんな少年時 代を過ごしてきたのです。
に含まれます。オヤジの本気度が高いです。
ンタルやエアチェックではなく、晴れてCD その
マニアックすぎる、オタク風です。
るのでした。それに対していまどきのコドモは、
2. 小 学生とその親:上記父娘もこのグループ
3. 男性だけのグループ : 20~30代、会話が
4. 40~50代の男性: 一人で参加している風、
静かなたたずまいの中、本気度はおそらく
最高(のはずです)、平日もスーツ姿で出
現していました。
このように、オヤジ世代に対するウルトラマ
ンのコンテンツパワーは強力です。彼らはウル
トラマンに対する消費を厭いません。これを
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「円谷消費」と呼びたいと思います。ちなみに
Video Research Digest 2015. 7-8
大人になった彼は、自由に使えるお金が増え、レ
ものを買うことができるようになった喜びにひた
音楽に関して全く違う環境と言えましょう。
そんなCDを買うオヤジ世代が聴くのは60~
70年代のロックです。50 年前の音楽なのに、
“リ
マスター版”やら“コンプリート版”といった名前
に踊らされ、お金を落としていきます。本屋に行
けばそういったオヤジ向けのロック雑誌が目に入
ります。また、今の音楽シーンを追う雑誌も、ビー
トルズやローリング・ストーンズ、レッド・ツェッペ
リンといった 60 ~70 年代のロックバンドが表紙
を飾っています。1970 年代に「Rock is dead.」
と言ったミュージシャン
がいましたが、2015
(※ 3)
年の今は「Rock is classic」
ではないだろうか?
と思う筆者です。
そのような中、彼らを刺激するアイテムが現れ
ました。ハイレゾです。
*
「モノ消費」から「コト消費」の時代へ(※ 7)
製 造 業 だけに限らず、小 売・サービス 業 など 幅 広い 業
界でここ数年よく使われている言 葉だ。市場は成熟し、す
でに 必 要な「モノ」はほとんど 手に入った。そこで人々の
関 心は「モノ」の 所 有 欲を 満 たすことから、経 験 や 体 験、
思い出、人 間関 係、サービスなどの目に見えない 価 値 で
ある「コト」に移 行してきている。
円谷消費:スタンプラリーという体感型企画の参加
ロック消費:CD の所有からデータの所有、共有へ
*HD-Music「ハイレゾ」とは(※ 4)
ハイレゾとは ハイレゾリューション(高 解 像 度)のことで
す。
「 ハイレゾ 音 源」とは、スタジオで録 音したマスターが
持ってい る情 報 量 により近 い 高 解 像 度の 音 源(デ ータ)
のことを指します。
CDよりも情 報 量 の多いハイレゾ 音 源はきめ 細 やかな
音になり、CD では 再生できない 空 気 感と臨 場 感を 表 現
する事ができます。
ハイレゾ 音 源データは、スタジ オで録 音されたそのま
まの 音 源に近いので、ハイレゾ 対 応プレーヤーで 再生 す
ると、ボーカル の息づかいや 個々の演 奏 者の立ち位 置ま
で、リアルな臨場 感と立体 感を得ることができます。
“所有”がなくなることで本来の消費の形
(=「コト
なんだかよくわからないけど凄そうです。そこに
トリーミングも電子書籍のいずれも、現物が手元
です。ハイレゾは物理的な“円盤”
ではなく、ダウ
は、今、ここにある、音楽を聴き、本を読むこと
円谷消費はまさに「コト消費」です。
ロック消費も、本来音楽を聴くということは経
験や体験であり、
まさに「コト消費」そのものです。
消費」)
に回帰したと言えるのではないでしょうか。
Nowhere? Now here!
“円 盤 ”のC D や紙の書籍と異なり、音楽のス
60~70年代のロックが載ってれば彼らはいちころ
にありません。どこにもない、
のです。しかし我々
ンロードで音源データを購入するという形式をと
ができるのです。
ります。その先はストリーミングが主となるのかも
これからは、ますます書籍や音楽を所有しな
しれません。ちょうどこの拙文を書いている途中、
い生活へと変わっていくのかもしれません。結果、
を開始するというアナウンスがありました。
ていくでしょう。住宅は、相対的に広くなるという
Apple から MUSIC というストリーミングサービス
(※ 5)
住宅に占める、
書籍 やC Dの容積はどんどん減っ
こうなると、オヤジたちは、やっと娘と同じ
ことになるのではないでしょうか。その代わり、巨
「ロック消費」
と呼びたいと思います。ちなみに
う。データはどこかにあるのです。しかし、ここに
境地にたどりつくのかもしれません。これを
「ロック消費」
なオヤジ世代の推定人口は、男性
人口 6,169 万人
×出現率 2/7
(※ 1)
万人となります。
= 1,763
(※ 6)
オヤジ世代の「モノ消費からコト消費へ」
「イマドキの若者は?」というように話題の俎上
に上げられることがまったくと言っていいほどな
い、オヤジ世代。そんなオヤジ世代ですが、い
わゆる「モノ消費からコト消費」を実践しているこ
とがわかります。
大なデータセンターがあちこちに必要となるでしょ
書籍があり、音楽があるのです。
<引用元>
※ 1 人口推計平成27年5月報 総務省統計局
※ 2 本文の “ 父 ” が所属する部署におけるウルトラマン
スタンプラリー参加割合。無作為抽出と仮定した
場合、95%信頼区間は-4.9~62.0%となります。
※ 3 セックス・ピストルズのジョニー・ロットン
※ 4 http://hd-music.info/html.cgi/support_03.
html
※ 5 http://www.apple.com/jp/apple-events/
2015-june-event/
※ 6 本文の“父”が所属する部署における60~70年代
ロック嗜好者出現率。無作為抽出と仮定した場合、
95%信頼区間は-4.9~62.0%となります。
※ 7 http://www.nikkeibp.co.jp/article/matome/
20140220/384639/
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