多数アンカー式補強土壁工法

多数アンカー式補強土壁工法
設計・施工マニュアル 第4版 技術説明会
於 国土交通省 中部地方整備局 高山国道事務所
平成27年2月5日
説明内容
多数アンカー式補強土壁工法
Ⅰ)概要
Ⅱ)施工事例の紹介
Ⅲ)設計・施工マニュアル第4版改訂概要
Ⅰ)概要
「道路土工-擁壁工指針」の構成
道路土工 擁壁工指針 (平成24年)
擁壁工指針の構成
第1章 総説
第2章 擁壁工の基本方針
第3章 計画・調査
第4章 設計に関する一般事項
第5章 コンクリート擁壁
第6章 補強土壁
第7章 軽量材を用いた擁壁
第8章 維持管理
Ⅰ-1
代表的な補強土壁工法
工法名
分
類
Ⅰ-2
ジオテキスタイル補強土壁
アンカー補強土壁
テールアルメ工法
トリグリッド、テンサー、アデム
アデムウォール
多数アンカー式補強土壁工法
帯状鋼材
格子状、面状ジオテキスタイル
アンカープレート付棒鋼
模式図
帯鋼補強土壁
補強材
設計施工マニュアル
補強土(テールア
ルメ)壁工法
設計・施工マニュ
アル
第4回改訂版
平成26年8月
ジオテキスタイルを用
いた補強土の設計・施
工マニュアル
第二回改訂版
平成25年12月
多数アンカー式補強
土壁工法設計・施工
マニュアル
第4版
平成26年8月
土木研究センター
土木研究センター
土木研究センター
②第二世代=控えアンカー
+アンカープレート
①第一世代=控えアンカー
Ⅰ-3
昭和38年
盛土の中は,コンクリートの仕切り板を鉄筋に
取り付けたものを水平に幾段にも設置して
盛土の補強を行った。
↓
昭和32年頃
小規模な地滑りが発生アンカーとして
ワイヤーロープの一端を固定。
↓
④第四世代=壁面材(直壁)
+アンカープレート
③第三世代=壁面材(緩勾配)
+アンカープレート
昭和55年
『擁壁の構築方法』で,現在の多数アンカーの方式
。
昭和55年
山腹斜面で豪雪によって崩壊した斜面
高さ20m,勾配45°に斜面補強
↓
開発経緯①【控えアンカー】
Ⅰ-4
昭和32年頃
建設省 東北地方建設局管内の鳴子ダムのダムサイト左岸。
・小規模な地滑りが発生アンカーとしてワイヤーロープの一端を固定。
開発経緯②‐1【控えアンカー+アンカープレート】
Ⅰ-5
昭和38年 (1963)
建設省 関東地方建設局 横浜工事事務所管内、国道20号線の拡幅工事
・盛土の基礎は相模湖の中,埋立てた地盤は軟弱
・サンドコンパクションパイルで地盤改良を実施
・その上に高さ40m,勾配1:1.5の盛土を施工
・盛土の中は,コンクリートの仕切り板を鉄筋に取り付けたものを水平に幾段
にも設置して盛土の補強を行った
・盛土は,施工後約50年以上経過し,何の変化もなく安定を保っている。
開発経緯②‐2【控えアンカー+アンカープレート】
Ⅰ-6
特許名 :『抗張材による盛土安定増大工法』
特許出願:昭和48年(1973) 3月2日
発明者 :福岡 正巳
出願人 :建設省 土木研究所
特許内容:安定した地山に埋設した複数のアンカーに受圧部材を装備した
抗張材を突出固定し,この抗張材を覆って盛土を施すことを特
徴とする抗張材による盛土安定増大工法
開発経緯③‐1【壁面材(緩勾配)+アンカープレート】
昭和50年(1975)
建設省 中部地方建設局 高山工事事務所
・トンネルずりを盛土材として長大斜面を補強
昭和55年(1980)
富山県福野土木事務所管内脇谷地区
・山腹斜面で豪雪によって崩壊した斜面
・高さ20m,配45°に斜面を補強
Ⅰ-7
開発経緯③‐2【壁面材(緩勾配)+アンカープレート】
Ⅰ-8
開発経緯④【壁面材(直壁)+アンカープレート】
Ⅰ-9
昭和55年
・『擁壁の構築方法』で,現在の多数アンカーの方式
多数アンカー式補強土壁工法の概要
Ⅰ-10
垂直壁面と盛土内に設置した鋼
製のアンカープレート付補強材
により,盛土材を拘束補強するこ
とによって安定を保つ土工構造
物
部 材 概 要
ハーフタイプ
フルタイプ
● ○ 補強材設置位置
185 815
500
1000
1000
1000
1000
1000
1000
825
750
500
750
175
750
Ⅰ-11
ハーフタイプ
1500
1500
第4章 設計に当たっての一般事項及び使用材料
コンクリート壁面材
規 格
p106
α壁面材
(低土圧用)
第3版
第4版
β壁面材
(中土圧用)
γ壁面材
(高土圧用)
Ⅰ-12
種別,品種等
設計土圧 Pd1=60kN/㎡
重量 約 350kg
設計土圧 Pd2=100kN/㎡
重量 約 350kg
設計土圧 Pd3=150kN/㎡
重量 約 520kg
部 材 概 要
Ⅰ-13
アンカープレート付補強材(棒鋼)
壁面材
コンクリート製
コネクター
丸鋼
ターンバックル
アンカープレート
アンカープレート
ワッシャー
(M18:1枚)
ナット(M18)
ロッド
ねじ部(M18)
サブプレート
ワッシャー
(M18:1枚)
ナット(M18)
ダブル締め
工法の原理
Ⅰ-14
アンカー補強土壁
(多数アンカー)
盛土内に埋め込まれた
アンカープレートの
支圧抵抗力を
引抜抵抗力とする。
帯鋼補強土壁
(テールアルメ)
盛土内に埋め込まれた
帯状鋼材の
摩擦抵抗力を
引抜抵抗力とする。
盛土内に埋め込まれた
ジオテキスタイルの
摩擦抵抗力,
インターロッキング効果を
引抜抵抗力とする。
ジオテキスタイル
補強土壁
(アデムウォール)
Ⅰ-15
内部安定検討
1.0m
M18:黄色
M20:赤色
M22:緑色
M24:青色
M27:白色
Ⅰ-16
盛土材の適用範囲が広い
補強土壁工法の中では一番、適用範囲が広い
岩ずり-粗粒土(礫・砂質系土)-粘性系土
※細粒土(粘性土系)
⇒支圧抵抗力が
得られる材料
※岩ずり
⇒粒径250mm以下
第3版は, 300mm以下
盛土材の適用範囲が広い
Ⅰ-17
中分類用三角座標
多数アンカー
ジオテキスタイル
テールアルメ
Ⅰ-18
盛土材の適用範囲が広い
盛土材に関する留意点 (擁壁工指針 p266)
・盛土材料には,支圧抵抗力が十分に発揮される砂質土
系や礫質土系の土質材料が望ましい。
細粒分を多く含む土質材料については,必要な支圧抵抗
力を得られることを確認して使用する。
・現地発生材の採用
メリット :現地発生土の有効利用ができる。
デメリット :粘性系が多い傾向があるため、手間を要する。
天候により,含水比調整などを実施する。
・購入材の採用
メリット :現地発生材の処分と購入材の費用が発生する。
デメリット :均一的な品質であれば、管理が容易になる。
補強材長が短い(構造細目)
Ⅰ-19
最小補強材長は,設計計算に安定上余裕がある場合においても,
下記の値を下回ってはならない。
工法
多数アンカー
テールアルメ
ジオテキスタイル
形状
考え方
2.5mかつ0.4H
(高さ4.0m以下で背面が安定している地山
の場合は2.0mまで短く出来る)
4.0mかつ0.4H
3.0mかつ0.4H
(基本的に全段同長敷設)
Ⅰ-20
ロックアンカーとの併用
狭隘な地形で十分な底版幅が確保できない
掘削土量を削減自然地形を活かす
一般的
ロックアンカー併用
1:0.3
1:0.3
10000
10000
1:0.3
1:0.3
1:0.3
15°
4000
事例紹介1(変状)
2500
Ⅰ-21
変状事例(その1): 安山岩層の地すべり(風化)
,降雨
変状事例(その2): 融雪,基礎基層未定着
変状事例(その3): 湧水,低品質盛土材料
,基礎基層未定着
Ⅰ-33
事例紹介2(被災状況調査)
H07.01 阪神大震災
H16.10 新潟中越地震
H23.03 東日本大震災
H07.01 阪神大震災の被災状況調査結果
Ⅰ-34
平成7年当時、『補強土工法の被災度評価および災害復旧に向けての
基本方針に関する報告書』(平成17年10月土木研究センター)は存在しな
かったが,調査記録をもとに損傷ランクを判定すると、『Ⅰ』又は『Ⅱ』程度
であった。
性能1を満足している状況と判断される。
損傷
ランク
状
態
Ⅰ
変形・損傷なし。
Ⅱ
部分的に変形・損傷したが、構造物の安定性に大きく影響しない。
Ⅲ
全体が変形したが、構造物の安定性に大きく影響しない。
Ⅳ
部分的に変形・損傷し安定性は損なわれたが、構造物としての機能は当面可能。
Ⅴ
比較的に大きな変形・損傷をしたが、構造物としての機能は当面維持可能
Ⅵ
完全に崩壊または大変形し、構造物としての機能を有していない。
Ⅰ-35
H16.10 新潟中越地震の被災状況調査結果
平成16年の調査結果から、被災ランクを判定し,下表にまとめた。
被災ランクAの各現場とも性能2が確保できておらず、性能3となる。
①アンカーによる抑止対策
②撤去・再構築
③前面埋め戻しなどの各処置が実施された。
被災ランク
状態
件数
AA
補強土壁としての終局的安定性を喪失して、道路施設としての機能を果たさな
い状態。
0
A
施設としての機能を維持しているが、補強土壁として全体的構造安定性を長期
的に確保することが困難な状態。
3
B
施設としての機能を維持しているが、補強土壁として部分的構造安定性が損な
われた状態。
3
C
出来形管理値(δ/H≦0.03)を満足しており、構造的安定性は確保されているが、
12
コンクリート製壁面材に補修が必用な状態。
D
出来形管理値(δ/H≦0.03)、および構造的安定性は確保されている状態。
28
Ⅰ-36
H23.03 東日本大震災の被災状況調査結果
『補強土工法の被災度評価および災害復旧に向けての基本方針に関
する報告書』(平成17年10月土木研究センター)の損傷ランクによって判
定 損傷
状
態
ランク
Ⅰ
変形・損傷なし。
Ⅱ
部分的に変形・損傷したが、構造物の安定性に大きく影響しない。
Ⅲ
全体が変形したが、構造物の安定性に大きく影響しない。
Ⅳ
部分的に変形・損傷し安定性は損なわれたが、構造物としての機能は当面可能。
Ⅴ
比較的に大きな変形・損傷をしたが、構造物としての機能は当面維持可能
Ⅵ
完全に崩壊または大変形し、構造物としての機能を有していない。
県 名
損傷ランク
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
Ⅴ
合 計
Ⅵ
岩手県
1
2
0
0
0
0
3
宮城県
2
9
※1
0
0
0
12
福島県
4
9
0
0
0
0
13
茨城県
2
3
0
0
0
0
5
合 計
9
23
1
0
0
0
33
※宮城県ランクⅢは、基礎下に旧坑道があり、地震時の陥没によって直上の多
数アンカーに変位が発生したもの。地震の振幅による変位ではない。
Ⅰ-37
各事例からの留意事項
p166
排水工の設計
各事例から,排水状況が補強土壁の出来形に大きく
影響されることがわかる。
今回のマニュアル改定は,性能設計の枠組みが導入
された経緯もあり、排水処理の方法などがさらに
詳細に掲載されている。
また、補強土壁の完成後だけでなく、施工中や施工
休止時などの排水処理などについても、留意を促
している。
第5章
設計
排水工の検討
適切に排水工を設置し,入念な施工を実施すること
降雨の作用に対して性能1を満たすことができる
Ⅰ-38
p163
第5章
設計
排水工の検討
各事例からの留意事項
Ⅰ-39
p166
Ⅰ-40
p206
施工中及び施工中断中における排水対策
上部の嵩上げ盛土ならびに舗装を連続して施工す
るのが望ましい。
やむを得ず期間を空けて施工する場合は,放置期間
中の補強領域内への雨水等の浸入を防ぐため,地
表面には勾配を設けて平滑に締め固めるとともに,
必要に応じてシート等で覆う。また,表面水の浸
入を防ぐため表面排水工を設ける等の排水対策を
行う。
長期間施工が中断する場合は,仮排水工にアスファ
ルト乳材やコンクリート等を用いるとよい。
Ⅰ-41
施工時における留意点
設計・施工マニュアルの中において,特に重要な
留意点7項目が紹介されているが,施工時においても,
この留意点には,注意が必要となる。
また,追記事項として,
①発注図書と現地形の差異確認
②仮置き土の土質試験試料の採取方法
③基盤の確認
特に重要な留意事項(1)
1)適用全般にわたる留意事項
①盛土材選定・締固め(土質試験の実施)
②基礎地盤(施工段階での基礎地盤の確認)
③排水性能(排水工の設置と供用後の維持管理)
3)集水地形への適用
①谷部・沢の集水地形における横断排水施設の設置
②地形に合った表面排水施設,経路の計画,維持管理
③施工時における湧水対策
p.25
Ⅰ-42
2)急峻な地形への適用
①崖錐層や軟弱な土層に対する確認
②基礎地盤,地山からの湧水の把握と排水施設
の設置
4)軟弱地盤への適用
①縦断方向の不同沈下に対する調査・設計
②地盤改良の強度と範囲の検討
特に重要な留意事項(2)
5)変形に対する制限が厳しい箇所や異種構造物との
隣接箇所への適用
①支持地盤の確保,せん断強度が大・圧縮性が小の盛土材
②隣接構造物との境界部に緩衝部等
③根入れ掘削による既設構造物への影響
6)積雪寒冷地への適用
①冬期施工における凍土,雪氷の混入
②壁面の背面の凍上対策(凍上抑制層,断熱材)
7)水辺への適用
①堅固な支持地盤と根固め工等の洗堀対策
②残留水圧と吸出しに対する処置
Ⅱ)施工事例の紹介
p.31
Ⅰ-43
施工事例①-発生土の有効利用
Ⅱ-1
施主:愛知県知多建設事務所
場所:半田大府バイパス
 9箇所の補強土壁が計画されており、当初は全て摩擦系
の補強土壁工法で設計されていた。
施工事例①-発生土の有効利用
Ⅱ-2
 1期施工分(1擁壁)が工事発注されたが、現地発生土に細
粒分が多く、摩擦系の工法では発生土を利用できなかった。
 発生土を有効利用するために、設計の見直しが行われ、残
りの8擁壁は全て多数アンカーに変更され施工された。
1期施工
他の補強土壁
2期施工
多数アンカー
施工事例②-最高壁高
Ⅱ-3
施主:宮崎県西都土木事務所
施工場所:国道219号中尾バイパス
0 25
00
9500
 切土工区の発生土(岩ズリ)を有効利用するため、
高壁高の補強土壁を計画。
 施工後15年以上経過するが、壁面の変状は無し。
施工事例③-軟弱地盤
施主:沖縄県中部土木事務所
施工場所:具志川沖縄線(川田高架橋)
 他の補強土壁工法に比べて補強材長が短いため、
地盤改良範囲も少ない。
 本体の経済性と地盤改良の経済性で採用。
Ⅱ-4
施工事例④-ロックアンカー
Ⅱ-5
施主:近畿地方整備局 姫路河川国道事務所
施工場所:姫路北バイパス 石倉トンネル市道昨日復旧工事
 岩盤掘削を低減するために、ロックアンカータイプを採用。
 盛土材は、同路線の発生土を使用。
施工事例⑤-多段積補強土
Ⅱ-6
施主:東北地方整備局三陸国道事務所
場所:三陸縦貫道高田道路
盛土高37.1m
.
12
2
m
.
24
9
m
アーチカルバート
 本線直下のアーチカルバートの延長を短くするために、
補強土壁を計画。
 圧迫感を低減するために、多段積の形状を採用。
 盛土材は、道路線の発生土を使用。
Ⅱ-7
施工事例⑥-両面壁(補強材緊結)
施主:緑資源機構美濃東部建設事業所
施工場所:3工区農用道工事
 橋台背面の幅員が狭い両面壁で、左右の補強材を中央で
連結。
 他の補強土壁工法では、補強材長を確保できず計画不可。
施工事例⑦-水没補強土(ダム
湖)
Ⅱ-8
施主:中国地方整備局
江の川総合開発工事事務所
場所:灰塚ダム付け替え道路
k≧1×10-2cm/s
 水没部の盛土材は、透水性の良い砕石や岩ズリを使用。
 砕石や岩ズリには、支圧抵抗による工法が適しているため、
多数アンカー工法が採用。
施工事例⑧-河川用補強土壁
Ⅱ-9
START
 河川用壁面材(厚さ350mm)を
使用した流水域での事例。
施主:九州農政局西諸県農業水利事業所
場所:浜ノ瀬ダム付替え林道
適用範囲の確認
湖 沼
流水のない 貯水池
調整池
など
河川内流水あり
波浪を伴う海岸構造物など
別途検討
基本条件の確認、調査
砕石等以外の土質材料
水没部分の盛土材料
砕石、岩砕
透水係数k
k<1×10-2cm/s
k≧1×10-2cm/s
hw>2m
水位日変動量hw
hw≦2m
別途詳細検討
内部安定の検討
外部安定の検討
構造細目の検討
排水工
END
Ⅲ)設計・施工マニュアル第4版
改訂概要
設計・施工マニュアルの沿革(1)
Ⅲ-1
昭和58年12月
建設省山口工事事務所にて第一号を構築。
平成4年~平成6年
「補強土擁壁の合理的な設計方法に関する共同研究」:建設省と民間
平成6年10月 マニュアル初版発刊
「多数アンカー式補強土壁工法設計・施工マニュアル」
(財)土木研究センター
平成7年1月
兵庫県南部地震発生
平成8年
「補強土壁工法の壁面材薄型化の検討」(日本道路公団)
平成10年
多数アンカー式補強土工法に関する「研究ノート」
(財)土木研究センター
設計・施工マニュアルの沿革(2)
Ⅲ-2
平成10年11月 限界状態設計法による薄型壁面材導入
「多数アンカー式補強土壁工法設計・施工マニュアル第2版」
(財)土木研究センター
平成12年2月
「補強土壁工法の適用に関する手引き」:日本道路公団
平成14年10月 合理的な耐震設計法,補強材の拘束補強効果を導入
「多数アンカー式補強土壁工法設計・施工マニュアル第3版」
(財)土木研究センター
平成16年10月
新潟中越地震発生
平成17年3月
アンカー式補強土壁工法研究委員会報告書-性能規定化に関する検討-
(財)土木研究センター
設計・施工マニュアルの沿革(3)
Ⅲ-3
平成17年10月
補強土工法の被災度評価及び災害復旧に向けての基本方針に関する報告書
(財)土木研究センター
平成19年3月
能登半島地震発生
平成19年7月
新潟中越沖地震発生
平成18年7月 補強材の材質をSS→SNとし高強度化
マニュアル第3版 追記(鋼材規格)
(財)土木研究センター
平成20年7月 コンクリート設計基準強度を30→40N/mm2とし、鉄筋を低減
マニュアル第3版 追記(コンクリート製壁面材規格)
(財)土木研究センター
平成23年3月
東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)発生
平成24年12月
笹子トンネル天井板落下事故
平成26年8月 性能設計の導入,維持管理,安全性
「多数アンカー式補強土壁工法設計・施工マニュアル
(一財)土木研究センター
第4版」
Ⅲ-4
採用実績の推移
9000
180
160
累計壁面積
8000
累計施工件数
140
7000
)u 120
・
(・ 100
マ
・
ハ
・
ヌ
v・ 80
・
ン
・ 60
6000
40
2000
20
1000
5000
4000
3000
0
0
地域
ご採用実績
2014年11月現在
)・
(・
・
・
・
H
・{
v・
・
ン
・
全
国
中部地方整備局
高山国道事務所
件数(件)
6,882
数量(㎡)
1,777,602
159
45,232
7
3,980
Ⅲ-5
適用範囲
道路に適用する盛土高さ20mまでの多数アンカー式補強土壁
の計画,調査,設計,施工及び維持管理に適用する。
道路以外の用途についても,
適用する用途に求められる構
造物の性能を考慮し,関連す
る技術基準を遵守し,本マ
ニュアルを適用することを妨
げるものではない。
多数アンカー式補強土壁工
法の適用に当たっては,本マ
ニュアルに従い,計画・調査,
設計,施工及び維持管理を適
切に実施しなければならない。
Ⅲ-6
適用例
(a) 道路盛土
(c) 多段積み構造の盛土
(b) 水辺の盛土
(d) 急峻な地形での盛土
(e) のり留め盛土
Ⅲ-7
基本方針
①使用目的との適合性
計画通りに利用できる機能。
②構造物の安全性
常時,降雨,地震動の作用等に対し安全性を有すること。
③耐久性
経年劣化が生じても所要の性能が確保できること。
④施工品質の確保
施工中の安全性も含め,確実な施工が行える性能を有すること。
⑤維持管理の容易さ
点検,材料・部材の調査,補修作業等が容易に行えること。
⑥環境との調和
社会環境,自然環境に及ぼす影響を軽減,調和さえること。
⑦経済性
維持管理を含めた費用がより小さくなること。
特に重要な留意事項(1)
1)適用全般にわたる留意事項
①盛土材選定・締固め
②基礎地盤(施工段階での基礎地盤の確認)
③排水性能(排水工の設置と供用後の維持管理)
3)集水地形への適用
①谷部・沢の集水地形における横断排水施設の設置
②地形に合った表面排水施設,経路の計画,維持管理
③施工時における湧水対策
Ⅲ-8
2)急峻な地形への適用
①崖錐層や軟弱な土層に対する調査
②基礎地盤,地山からの湧水の把握と排水施設
の設置
4)軟弱地盤への適用
①縦断方向の不同沈下に対する調査・設計
②地盤改良の強度と範囲の検討
特に重要な留意事項(2)
Ⅲ-9
5)変形に対する制限が厳しい箇所や異種構造物との
隣接箇所への適用
①支持地盤の確保,せん断強度が大・圧縮性が小の盛土材
②隣接構造物との境界部に緩衝部等
③根入れ掘削による既設構造物への影響
6)積雪寒冷地への適用
①冬期施工における凍土,雪氷の混入
②壁面の背面の凍上対策(凍上抑制層,断熱材)
7)水辺への適用
①堅固な支持地盤と根固め工等の洗堀対策
②残留水圧と吸出しに対する処置
55
計画・調査(1)
計画にあたっては,道路の全体計画の
中で,地形・地質をはじめとする多数ア
ンカー式補強土壁を設置する諸条件を総
合的に勘案し,施工・維持管理に適し,
十分な安全性を有し,良好な景観を保ち,
かつ経済的に有利となるように留意する。
Ⅲ-10
計画・調査(2)
Ⅲ-11
(1)基本方針
合理的かつ経済的な計画,設計,施工,維持管理が行えるよ
うに,地形,地質・土質等の地盤の条件のほか,周辺構造物の
有無や施工,環境等の条件について適切に調査を実施する。
(2)調査の視点
①地表水・地下水の調査
②質・量ともに規模に応じた地盤調査
③盛土材の耐久性や環境に与える影響の調査
(3)調査位置
(4)施工段階での確認
計画・調査(3)
Ⅲ-12
(1)盛土材料に関する調査
ⅰ) 盛土材料としての適否に関する試験(粒度特性,細粒分含有量など)
ⅱ)安定計算に必要な土質定数を求める試験(強度試験)
ⅲ)耐久性に関する調査(pH,電気比抵抗,塩化物・硫化物含有量)
(2)基礎地盤及び周辺地盤に関する調査
基礎地盤に生じるすべり破壊は,壁高の1.5倍以内の深さに生じると考えら
れ,自重や背面盛土等による沈下の影響は,壁高の1.5~3倍以内の深さと考
えられている。
砂質土で20程度以上,粘性土で10~15以上のN値であれば,支持層と考えて
よい。
(3)周辺構造物,施工条件に関する調査
ⅰ)根入れ部の掘削が,隣接する構造物を支持する地盤に及ぼす影響
ⅱ)既設構造物の荷重が増大し,既設構造物の安定性に及ぼす影響
ⅲ)隣接して設置される構造物からの影響
第4章
設計に当たっての一般事項及び使用材料
設計の基本
Ⅲ-13
p50
1. 設計に当たっては,原則として,要求性能に応じて限界状態を設
定し,想定する作用に対する多数アンカー式補強土壁の状態が
その限界状態を超えないことを照査する。
2. 設計に当たっては,設計で前提とする施工,施工管理,維持管
理の条件を定める。
3. 設計は,これまでの経験・実績から妥当と見なせる第4章及び第
5章に基づいて行う。
擁壁工指針に対応し,性能設計の枠組みを導入
ただし,マニュアルに基づけば必要な性能を満たすと見なしてよい
第4章
設計に当たっての一般事項及び使用材料
Ⅲ-14
検討する作用に対し満足しているとみなしうる条件と性能
検討する作用等
性能を満足すると
みなすための条件
p52
満足していると
みなしうる性能
常時の作用
部材の安全性と補強土壁の安 常時の作用に対して
性能1
定性を満足する場合
降雨の作用
適切に排水工を設置し,入念な 降雨の作用に対する安
定性の照査の省略が可
施工を実施すること
能 (→性能1)
レベル1
地震動
レベル1地震動に対する設計水 
平震度に対して部材の安全性と
補強土壁の安定性を満足する 
場合
レベル1地震動に
対する性能1
レベル2地震動に
対する性能3
レベル2
地震動
レベル2地震動に対する設計水
平震度に対して部材の安全性と 
補強土壁の安定性を満足する
場合
レ ベ ル 2 地 震 動 に対
する性能2
地震動の作用
第4章
設計に当たっての一般事項及び使用材料
Ⅲ-15
p53
要求性能の水
準
要求性能
性能の限界状態
満足すべき性能
安全性,修復性,供用性
性能1
擁壁が安定し,健全性を損なわない
性能2
過大な変形や損傷が生じず,擁壁とし
ての機能の回復が容易に行い得る
性能3
損傷が擁壁として致命傷にならない
安全性
想定する作用等による変状によって人命を損なうことのないようにす
るための性能
修復性
想定する作用によって生じた損傷を修復できる性能
供用性
想定する作用による変形や損傷に対して,擁壁により形成される道路
が本来有すべき通行機能,及び避難路や救助・救急・医療・消火活
動・緊急物資の輸送路としての機能を維持できる性能
第4章
安全性,修復性
安全性
設計に当たっての一般事項及び使用材料
p54
重要度の区分
重要度の区分
重要度1
区分の判断
万一損傷すると交通機能
に著しい影響を与える場
合,あるいは隣接する施
設に重大な影響を与える
場合
上記以外の場合
重要度2
擁壁が損傷した場合の道路の交通機能へ
の影響と隣接する施設等に及ぼす影響の
重要性を総合的に勘案して定めること。
道路の交通機能への影響は,必ずしも道
路の規格による区分を指すものではなく,
迂回路の有無や緊急輸送路であるか否か
等,万一損傷した場合に道路ネット
ワークとしての機能に与える影響の大きさ
を考慮して判断すること。
p55
【多数アンカーの要求性能の例】
重要度
想定する作用
常時の作用
降雨の作用
レベル1地震動
地震動の作用
レベル2地震動
Ⅲ-16
重要度1
重要度2
性能1
性能1
性能1
性能2
性能1
性能1
性能2
性能3
第4章
設計に当たっての一般事項及び使用材料
Ⅲ-17
p62
自重
第3版の自重
(滑動、支持力)
内部安定
第4章
外部安定
設計に当たっての一般事項及び使用材料
Ⅲ-18
p63
載荷重
1)活荷重
2)嵩上げ盛土荷重
3)その他の載荷重 (構造物等の死荷重)
1)活荷重
深さ方向に
分散・低減
※第3版は低減無し
2)嵩上げ盛土荷重
第4章
設計に当たっての一般事項及び使用材料
第3版
土圧
Ⅲ-19
第4版
仮想背面における壁面摩擦角δは,常時及び地震時ともδ=φとする。
仮想背面は,補強領域の底面上で最下段のアンカープレートの直下の位置を通過し,
全ての補強材を横切る直線とする。
第4章
設計に当たっての一般事項及び使用材料
Ⅲ-20
p64
土圧
内部安定
外部安定
第4章
設計に当たっての一般事項及び使用材料
Ⅲ-21
地震時の考え方
外部安定の地震時土圧力と慣性力
第3版
第4章
第4版
設計に当たっての一般事項及び使用材料
p69
地震の影響
内部安定
Ⅲ-22
外部安定
自重や土くさびの重量に応じた慣性力を考慮する
Ⅲ-23
第4章
設計に当たっての一般事項及び使用材料
外的安定の検討に用いる設計水平震度
マニュアル第3版
マニュアル第4版
地震の影響を考慮する場合の設計水平
震度は「擁壁工指針」に示されている。
kh=czkh0
kh :設計水平震度
kh0 :設計水平震度の標準値
cz :地域別補正係数
慣性力=kh・W
「擁壁工指針」に示された設計水平震度に,
補正係数ν(=0.7)を乗じた修正設計水平震度
を用いる。
kh=czkh0
kh :設計水平震度
kh0 :設計水平震度の標準値
cz :地域別補正係数
内的安定 : 慣性力=kh・W
外的安定 : 慣性力=ν・kh・W
外部安定(滑動・転倒・支持)のみ
地盤種別
Ⅰ種
Ⅱ種
Ⅲ種
中規模地震動
0.12
0.15
0.18
レベル1地震動 0.12×0.7 0.15×0.7 0.18×0.7
大規模地震動
0.16
0.20
0.24
レベル2地震動 0.16×0.7 0.20×0.7 0.24×0.7
地盤種別
Ⅰ種
Ⅱ種
Ⅲ種
Ⅲ-24
第4章
設計に当たっての一般事項及び使用材料
全体の安定性検討に用いる設計水平震度
マニュアル第3版
マニュアル第4版
地震の影響を考慮する場合の設計水平震
度は,「擁壁工指針」に示されている。
全体安定性の検討においては「盛土工指針」
に示された設計水平震度を用いる。
擁壁の設計水平震度を使用
盛土の設計水平震度を使用
地盤種別
Ⅰ種
Ⅱ種
Ⅲ種
地盤種別
Ⅰ種
Ⅱ種
Ⅲ種
中規模地震動
0.12
0.15
0.18
レベル1地震動
0.08
0.10
0.12
大規模地震動
0.16
0.20
0.24
レベル2地震動
0.16
0.20
0.24
Ⅲ-25
技術資料9 補強土壁の耐震性
検討項目
補正係数ν
《室内実験》動的遠心載荷実験における
水平震度と加速度の比較
0.61~0.79
《事例調査》実被害事例による震度比の
評価結果
0.75
《設計法》
従前と提案の耐震設計法に
おける長さLの比(D値)で比較
0.65~0.70
コンクリート擁壁の水平震度の0.70程度を
考慮することで,コンクリート擁壁と同等の
耐震性を有すると考えられる。
第4章
設計に当たっての一般事項及び使用材料
盛土材の諸定数
p374
Ⅲ-26
p77
・土の強度定数は,原則として土質試験及び原位置試験等の結果
を総合的に判断し,施工条件等も十分に考慮して設定する。
・多数アンカー式補強土壁の設計に用いる土圧算定のための盛土
材の強度及び単位体積重量等の諸定数は,土質試験等によって
求めることを基本とする。
・多数アンカー式補強土壁の設計に用いる基礎地盤の諸定数は,
土質試験等によって求めることを基本とする。
第4章
Ⅲ-27
設計に当たっての一般事項及び使用材料
p79
盛土材の強度定数
予備設計段階において土質試験を行うことが困難な場合は,経験的
に求められた下表の値を用いてもよい。
盛土材料の種類
せん断抵抗角(φ)
礫 質 土
35°
-
30°
-
25°
-
砂 質 土
注1
粘性土(ただし wL<50%)
粘着力(c)
注2
注 1) 細粒分が少ない砂は,礫質土の値を用いてよい。
注 2) 「5-4-2 地盤全体のすべり破壊の照査」において,予備設計段階で
は礫質土以外について粘着力 c を 10kN/m2 考慮して良い。ただし,
詳細設計では土質試験結果の値を用いる。
第4章
設計に当たっての一般事項及び使用材料
p85
安定検討に用いる安全率及び安定条件
種
部材の安全性
の検討
(内部安定検討)
多数アンカー式
補強土壁自体
の安定性の検討
(外部安定検討)
安全率及び安定条件
常 時
地震時
別
アンカープレートの引
抜きに対する安全率
Ⅲ-28
Fs
≧ 3.0
≧ 2.0
Fs
≧ 1.5
≧ 1.2
e
≦ B /6
≦ B /3
支持に対する安全率
( 壁面基礎及び補強土
壁全体)
Fs
≧ 3.0
≧ 2.0
第3版では2.0
第3版では1.5
すべり破壊の安全率
Fs
≧ 1.2
≧ 1.0
滑動に対する安全率
転倒に対する安定条件
(偏心距離)
補強土壁施工完了後の
残留沈下量の目標値
有害な変形が生じない程度
第4章
設計に当たっての一般事項及び使用材料
Ⅲ-29
p91
盛土材料
【細粒土】
wL < 50%
Ic  ( wL  wn ) / I P ≧1.0
IC :コンシステンシー指数
wL :液性限界 (%)
wn :自然含水比 (%)
IP :塑性指数(%)
【中硬岩,硬岩ずり,軟岩】
粒 径
重量比
250mm 以上 150mm 以上 75μm 以下
0%
25%以下
35%以下
第3版では最大粒径300㎜
(締固め厚さが250㎜以下となったため変更)
第4章
設計に当たっての一般事項及び使用材料
Ⅲ-30
p94
盛土材料
盛土材料の電気化学的性質の規定
項目
規定値
試験方法等
pH
5~12
JGS 0211
電気比抵抗
1,000Ω・cm 以上
JGS 0212
塩化物含有量
0.02%以下(水辺;0.01%以下)
JGS 0241
硫化物含有量
0.03%以下(水辺;0.01%以下)
JGS 0241 解説
第3版では記載なし
第4章
設計に当たっての一般事項及び使用材料
Ⅲ-31
p95
鋼製補強材
第3版ではメッキ付着量HDZ35
部 材
タイバー
プレート
アンカー
第4章
規 格
種別,品種等
接続ロッドアイ
JIS G 3138
建築構造用圧延棒鋼
SNR490B
溶融亜鉛めっき JIS H 8641 HDZ55
ターンバックル
JIS G 3475
建築構造用炭素鋼鋼管
STKN400W,B,STKN490B
溶融亜鉛めっき JIS H 8641 HDZ55
ロッド(丸鋼)
JIS G 3138
建築構造用圧延棒鋼
SNR490B
溶融亜鉛めっき JIS H 8641 HDZ55
カプラー
JIS G 4051
機械構造用炭素鋼鋼材
S45C
溶融亜鉛めっき JIS H 8641 HDZ55
JIS G 3101
一般構造用圧延鋼材
SS400
溶融亜鉛めっき JIS H 8641 HDZ55
メインプレート
サブプレート
設計に当たっての一般事項及び使用材料
コンクリート壁面材
規 格
α壁面材
(低土圧用)
第3版
第4版
β壁面材
(中土圧用)
γ壁面材
(高土圧用)
Ⅲ-32
種別,品種等
設計土圧 Pd1=60kN/㎡
重量 約 350kg
設計土圧 Pd2=100kN/㎡
重量 約 350kg
設計土圧 Pd3=150kN/㎡
重量 約 520kg
第5章
設計
p124
設計手順
第5章
設計手順
Ⅲ-33
設計
Ⅲ-34
p124
第5章
Ⅲ-35
設計
p125
内部安定の検討項目
追記
第5章
設計
内部安定の土圧
Ⅲ-36
内部安定の補強材長
p126
p134
タイバー長=ℓ1+ℓ2
部材安定の照査
(土圧と補強材の引張力の
釣り合いで安定)
第3版では活荷重の
分散無し
l2 =最低定着長
第4版 (=1.0m)
第3版での定着長(1.2m)
第5章
Ⅲ-37
設計
p143
外部安定の検討項目
第5章
Ⅲ-38
設計
p154
全体としての安定性の検討項目
道路構造物として必要に応じて検討
軟弱な砂質地盤
マニュアルに設計手法の記載、許容値の規定なし
第5章
Ⅲ-39
設計
全体としての安定性の検討(すべり破壊の照査)
第3版
第4版
抵抗力=補強せん断強度増分
※≒疑似粘着力
・補強せん断増分は
拘束補強効果による
抵抗力=アンカープレート
の引抜き抵抗力
(疑似粘着力に一定の合理性はあるが、
性能設計の枠組みにより)
※アンカーすべり面を横切り,かつすべり面
とアンカープレートとの距離がアンカープレー
トの辺長の2倍以上となる補強材。
第5章
Ⅲ-40
設計
p159
基礎の検討
布状基礎
重力式基礎
重力式基礎の高さは4m程度以下を基本とする。
第5章
設計
Ⅲ-41
p163
排水工の検討
適切に排水工を設置し,入念な施工を実施すること
降雨の作用に対して性能1を満たすことができる
第5章
排水工の検討
設計
Ⅲ-42
p166
第5章
設計
Ⅲ-43
p171
コーナー部の構造
万が一ずれが生じ
ても,盛土材が漏出
しないようにする
第5章
隣接構造物との取合い
万が一ずれが生じ
ても,盛土材が漏出
しないようにする
設計
Ⅲ-44
p175
第5章
設計
Ⅲ-45
p180
水辺への適用
盛土材の吸出し防止として分離材を設置
第5章
多段積み構造
設計
Ⅲ-46
p182
壁高が高くなる場合,外観上の圧迫感を避ける等の理由により多
段積みとされる場合がある。このような場合,上段壁と下段壁の
位置関係によって度合いは異なるが,それぞれに影響を及ぼす
ため,その特性を考慮して計画・設計する必要がある。
Ⅲ-47
第6章 施工
①壁面材設置
④転圧
②補強材設置
⑤壁面の鉛直度調整
③盛土材敷き均し
⑥転圧
93
Ⅲ-48
第6章 施工
組立手順
透水防砂材
横目地材
壁面材
タイバー
コネクター
ターンバックル
多数アンカーの施工手順
アンカープレート
第6章 施工
Ⅲ-49
施工方法
【施工時の排水】
上部の嵩上げ盛土ならびに舗装を連続して施工するのが
望ましい。やむを得ず期間を空けて施工する場合は,放置
期間中の補強領域内への雨水等の浸入を防ぐため,地表面
には勾配を設けて平滑に締め固めるとともに,必要に応じ
てシート等で覆う。また,表面水の浸入を防ぐため表面排
水工を設ける等の排水対策を行う。長期間施工が中断する
場合は,仮排水工にアスファルト乳材やコンクリート等を
用いるとよい。
【基礎工】
階段部の水平長さは,3m程度以上
の長さとし,1段の垂直高さの変化
は,2m程度以下とする。
第6章 施工
Ⅲ-50
締固め管理
第3版→1層の仕上り厚さ0.30m以下
【敷均し,締固め】
敷均し厚は,締固め層の下層部分でも所定の締固め度を確保で
きることを確認して,一層の敷均し・締固めの仕上り厚及び締
固め機械を定める。その際,締固め後の1層の仕上り厚さは最
大0.25mとする。一方,上記のように締固め度が確認できない
場合,一層の締固め後の仕上り厚さは路床に準じて0.20mとす
る。
第3版→締固め密度90%以上
【締固め管理】
最大乾燥密度に対して,突固め方法がA法またはB法の場合は
95%以上に,C,DまたはE法の場合は90%以上に締固めることを
標準とする。
第6章 施工
Ⅲ-51
出来形管理
(1)壁面材の組立てに当たっては,壁面の鉛直度が確保され,
かつ所定の精度が得られるように管理する。
(2)多数アンカー式補強土壁の出来形管理は,設計で定めた
形状,寸法に施工されているか,あるいは完成しているかどう
かを,出来形管理基準に基づき確認,記録する。
第7章 維持管理
維持管理の着目箇所
Ⅲ-52
Ⅲ-53
第7章 維持管理
補修対策
補修前
補修後
補修前
補修後
コンクリート製壁面材がひび割れ等の損傷を
受けた場合、鉄筋の腐食膨張による損傷の
拡大を防止するため、エポキシ樹脂材や樹脂
モルタル等の充填を行う。
コンクリート製壁面材の角欠けや目地の開き
が生じた場合、背面に設ける盛土材の抜け出
し防止材の劣化を防ぐため、目地材の変形性
と透水性を確保した上で、樹脂モルタルやコン
クリートで断面を修復する。
壁面はつり後状況
グラウト打設状況
型枠設置状況
修復完了
補強材の引抜き試験後におけるコンクリート壁面材の修復例
マニュアル改訂内容 維持管理
Ⅲ-54
補強対策
補強材の増し打ち:補強材の異常が認められた場合は、先端羽根つきアンカー等を新たに補強材とし
て設置しることにより補強効果を高めることができる。
先端羽根つきアンカー(ミニアンカー NETIS番号 KT-990162-V)
マニュアル改訂内容 維持管理
Ⅲ-55
補強対策
押え盛土
排水工の追加
技術資料10
被災度判定マニュアル
(案)
グラウンドアンカー
による補強
Ⅲ-56
H16.10
新潟県中越地震被災状況
Ⅲ-57
H16.10
新潟県中越地震被災状況
Ⅲ-58
多数
アンカー
従来擁壁
Ⅲ-59
設計計算結果
高さ6m, 嵩上げ盛土高さ5m
設計・施工マニュアル第3版
設計・施工マニュアル第4版
安全率
滑動
円弧すべり
安全率
滑動
円弧すべり
常時
1.618 (>1.5)
1.749 (>1.2)
常時
2.148 (>1.5)
1.220 (>1.2)
地震時
1.223 (>1.2)
1.433 (>1.0)
地震時
1.230 (>1.2)
1.042 (>1.0)
直接工事費 94.6
直接工事費 100
105
Ⅲ-60
設計計算結果
高さ12m, 嵩上げ盛土高さ5m
補強材を伸ばして円弧に抵抗
設計・施工マニュアル第3版
設計・施工マニュアル第4版
安全率
滑動
円弧すべり
安全率
滑動
円弧すべり
常時
1.726 (>1.5)
1.911 (>1.2)
常時
3.816 (>1.5)
1.202 (>1.2)
地震時
1.241 (>1.2)
1.547 (>1.0)
地震時
1.843 (>1.2)
1.110 (>1.0)
直接工事費 100
直接工事費 93.0
106
Ⅲ-61
設計計算結果
高さ12m, 嵩上げ盛土高さ5m
補強材の強度を上げて円弧に抵抗
設計・施工マニュアル第3版
設計・施工マニュアル第4版
安全率
滑動
円弧すべり
安全率
滑動
円弧すべり
常時
1.726 (>1.5)
1.911 (>1.2)
常時
2.541 (>1.5)
1.201 (>1.2)
地震時
1.241 (>1.2)
1.547 (>1.0)
地震時
1.479 (>1.2)
1.081 (>1.0)
直接工事費 96.6
直接工事費 100
107
設計・施工マニュアルまとめ
Ⅲ-62
本マニュアルは,平成24年に改訂された「道路土工-擁壁工指
針」に準拠し、補強土壁に要求される性能とそれに基づく限界状
態を整理した性能設計の枠組みを導入した。
本マニュアルは,我が国の道路構造物に関わるエキスパートが
監修したものであり,より安全性,経済性,施工性に優れた多数
アンカー式補強土壁の適切な調査・設計・施工・維持管理に活用
されることを期待するものである。
土圧を味方に!
ご清聴ありがとうございました。