日本科学哲学会 第 48 回大会 ワークショップ「現代行為論の展開」 オーガナイザ 笠木 雅史(日本学術振興会) 提題者 笠木 雅史(日本学術振興会/京都大学) 鈴木 雄大(日本学術振興会/専修大学) 鴻 浩介(日本学術振興会/東京大学) 趣旨 現代の分析哲学において、もっとも発展を遂げている分野の一つに行為論が ある。しかしながら、行為論の日本への導入は、主に Davidson を中心とする 7、80 年代までで尽きており、近年の展開はほとんど未紹介に留まっている。 この点での紹介の遅れは、日本の分析哲学研究にとって大きな問題であると考 える理由が幾つか存在する。第一に、近年の行為論の展開は、心の哲学だけで なく、メタ倫理や認識論と深く関連する形で行われており、行為論の展開につ いての理解の欠如は、これらの他の分野の展開についての理解をも困難にする ことである。第二に、行為論が他分野と共同で発展した結果、かつて標準的と された Davidson の行為論の枠組みを超える論点が様々に提出され、同時にそ うした観点から、Davidson の行為論についても批判ないし再検討が大規模に 行われていることである。Davidson の行為論は、心理主義、因果説、そして おそらく内在主義という特徴をもつが、これらの各立場に対する多くの反論や 対立する立場の擁護が行われているのである。現代の行為論の展開を理解する ためには、こららのさまざまな立場の対立を理解することが必要となる。 このような問題意識を背景として、本ワークショップでは、現代行為論の紹 介と検討を行う。現代行為論の論点は多岐に渡るが、最も効率的にその見取り 図を描くため、本ワークショップは 3 つの主要な対立軸に焦点を合わせる。 (1) 理由の心理主義 vs 反心理主義、 (2)行為の因果説 vs 反因果説、 (3)理由の 内在主義 vs 外在主義、の 3 つである。各提題者は、これらの各対立軸に対す る立場を概観し、整理したうえで、特定の立場の擁護ないし批判を行う。 まず、笠木は(1)の対立軸に対し、行為の理由と信念の理由が同種の存在 者であるとする「理由の統一性テーゼ」に訴えることで、反心理主義を擁護す る。鈴木は(2)の対立軸に対し、Davidson ら因果説の主張とそれへの反論 を検討したうえで、これらの反論はうまくいかないにせよ、反因果説を支持す る独立の理由があると論じる。鴻は(3)の対立軸に対し、内在主義は行為の 理由は行為を指導することが可能でなければならないという根拠から支持さ れるのであり、内在主義に向けられた反論にも対処することができると論じ る。
© Copyright 2024 ExpyDoc