医用画像参照用モニタの輝度調整について

医用画像参照用モニタの輝度調整について
2008 年 8 月 Revision 1.0
(目次)
1.
はじめに
2.
参照用医用画像モニタの現状
3.
デジタル医用画像参照の際の課題
4.
ファインビュー・テクノロジーの概要
5.
ファインビュー・テクノロジーによる課題への対応
6.
まとめ
株式会社リアルビジョン
〒222-0033
横浜市港北区新横浜 3-1-4 プラスタリアビル 2F
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1.
はじめに
病院内や診療所において数多くのモニタが、使用されるようになってきた。通常の病院 IT 化のた
めに使用されるモニタのほかに、医師や、看護士、技師、薬剤師等が使用する医療用端末の数が
増加している。特に最近のフィルムレス化への対応が進みつつあることで、検査結果である医用
画像を医療端末のモニタで参照することが必要となっている。
リアルビジョンは、デジタル医用画像を参照する際のよりよい表示の実現をめざし、技術開発を
行っている。以下では、デジタル医用画像表示における現状の問題点として「表示輝度の調整」
を提示し、問題解決の手法として、当社が開発している、ファインビュー・テクノロジー(FVT :
Fine View Technology)の効果と今後の方向性について説明する。
2.
参照用医用画像モニタの現状
平成 20 年 4 月からの保険診療点数の変更にともない、従来進んでいなかったフィルムレス化への
動きは大きく加速されている。従来からの「デジタル映像化処理加算」点数が減らされる一方で、
新たに「電子画像管理加算」が設けられ、さらに平成 21 年度をもって「デジタル映像化処理加算」
が廃止になることから、フィルムレス化の取り組みは、病院などの経営面にまで影響を与える課
題となっている。
病院内の IT システムは、画像、検査、投薬、外来予約、入院、食事、治療など複雑多岐に関係し
ているが、医用画像参照に関しては、PACS システムと、電子カルテシステムが重要である。PACS
システムは、各種の X 線装置(CR)や、CT、MRI 等のモダリティから得られる、医用画像をデ
ジタルデータとしてサーバー上に格納し、端末からネットワークを介して参照出来るようにする。
また、電子カルテシステムでは、機能の一部として、医用画像データ、検査データ等の多様な参
照を行う。この際多くの病院(中規模以上)では、電子カルテシステムが PACS システムと接続
されている。
一般的に放射線科を始めとして、PACS システムで使用されているモニタは、医用画像参照に最
適化されている専用の高精細モニタが使用されている場合が多い。電子カルテシステムでは、基
本的に通常のパソコンが端末として使用されており、モニタも専用のものが使用されている比率
はきわめて低い。このため、医用画像の参照が、適切に行えない場合もあり、また最適な表示た
めの調整も行われていない状態で参照が行われている場合も多い。
現在フィルムレス化は、
(病院あるいは診療所経営における)経済的な側面も加わったことにより、
かなり加速されてきており、完全なフィルムレス化、デジタル医用画像参照に向かっている。病
院におけるフィルムレス参照(診断)が一般化するとともに、今後は診療所においてもフィルム
レス化が広まると見られる。これは、上記の診療点数の変更や、全国各地での病診連携の強化の
流れの影響によるものである。
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3.
デジタル医用画像参照の際の課題
PACS システムや電子カルテシステムを導入し、フィルムレス参照を行うようになった病院や診
療所では、デジタル医用画像の参照に関して、以下のような課題が認識されている。
1)検査装置として様々な医療機器が使用されている。CR、CT、MRI、マンモグラフィイ、PET、
PET-CT、SECT、超音波診断装置、内視鏡などがあり、さらに病理検査データなどが画像参
照の対象となる。医療機器ごとに輝度カーブや、カラースペースなどの表示属性が異なってい
る場合があり、その都度調整することは不可能に近い。外来診療では、一定時間内に複数の検
査結果を患者に説明する必要があり、そのような状況で一々表示のための調整を行うことは出
来ない。医師の手間が掛からない状態で、短時間かつ自動的に最適画像を表示する必要がある。
2)医用画像参照をする場所は、画像診断室(読映室)を始めとして、外来診療室、カンファレン
スルーム、看護ステーション、手術室、処置室などがある。これらの場所は、画像参照に際し
て、それぞれ固有の環境光の影響を受ける。例えば、読映室での診断の場合には、暗室に近い
環境で、高輝度のモニタが使用される場合が多い。一方外来診療室では、外光の入るような環
境で、多様な画像が参照される。モダリティの画像参照をするような際には、本来かなり高い
輝度が要求されるが、それでは「明る過ぎる」
、
「まぶしい」ので、あえて輝度を下げて参照し
ている場合もある。フィルムの場合には、いわゆるシャーカステンが使用されてきた。フィル
ムとシャーカステンの組合せは、デジタル化した医用画像参照と比較して、より安定した参照
環境を提供してきた。デジタル医用画像表示においても、モニタや場所に依存しない、安定し
た参照環境を構築することが必要である。
3)モニタ(現在は主として液晶モニタ)を使用して、医用画像の参照を行う場合には、一定の表
示品質が保たれている必要がある。
国内では、JIRA(日本画像医療システム工業会)
から JESRA
X-0093 として「医用画像表示用モニタの品質管理に関するガイドライン」が発行されており、
表示品質の管理が規定されている。しかしガイドラインに沿って表示品質を維持していく手間
がかかったり、あえて設定を変更して使用している場合もあり、病院全体として表示品質の管
理が十分行われている状況ではない。
4.
ファインビュー・テクノロジーの概要
リアルビジョンでは、ファインビュー・テクノロジー(FVT : Fine View Technology)と呼ぶ独
自の表示技術を開発することで、デジタル医用画像参照に最適な表示環境を実現する。ファイン
ビュー・テクノロジーは、ハードウエアと、ミドルウエア、アプリケーションの組合せであり、
現在は FVT シリーズと呼ぶボックス製品(FVT200、FVT250)として提供されている。FVT シ
リーズは、パソコン本体と、液晶モニタの間に設置して使用され、表示インタフェイスの一部と
して、以下の機能を提供する。
-多階調表示(擬似 10 ビット表示)
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-DICOM 表示(DICOM GSDF に適合した輝度カーブ)
-色温度のプリセット機能
-輝度キャリブレーション機能(LumiCal Advanced Client)
-ユニフォーミティ補正機能(LumiCal Advanced Client)
-モニタのネットワーク管理機能(LumiCal Advanced Server)
-DICOM ビューワー(RVDCM Viewer)
-大型モニタ表示対応(37 インチ~65 インチ)
以下に FVT シリーズと応用製品である電子シャーカステン(LumiImager シリーズ)の写真と、
その構成要素を示す。
注)ファインビュー・テクノロジー及び FVT シリーズに関しては、当社の別資料をご参照下さい。
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5.
ファインビュー・テクノロジーによる課題への対応
3.に示したように、デジタル医用画像参照の際の課題として、適正な表示輝度、正しい表示品質
の維持、手間のかからなさをどのように実現するかを上げることが出来る。以下にその実現手法
を示す。
- マルチモダリティ環境に対応した DICOM ビューワー(RVDCM Viewer)と FVT シリーズの
連携動作により、表示する医用画像の種類(モダリティの種類)に応じて、輝度カーブや表示
輝度の調整を自動的に行うことが可能である。例えば、CR、CT、MRI 等のモダリティでは、
DICOM GSDF で表示を行うが、超音波診断装置からのデータや、内視鏡画像、病理診断画像
においては、異なった輝度カーブ(Windows OS の標準輝度カーブである Gamma2.2 など)
や、色空間、表示カラーが必要となる場合場ある。DICOM のデータ形式には、対象画像が、
「何の画像なのか」を識別ずるデータ・フィールドが規定されており、この情報によって、表
示対象ごとに輝度カーブなどを調整する。RVDCM Viewer が読み込んだ DICOM データベー
スの情報に基き、輝度カーブやカラーの調整は、FVT シリーズが持つ、ルックアップテーブル
で行われる。ルックアップテーブルの制御は、DICOM データのヘッダー情報に基き(どのモ
ダリティイなのか等)、自動的に行われることが求められる。
- 場所による環境光の相違や、時間的変動による表示画像の調整に対応することも重要である。
画像診断を行う読映室と、外来診療室では、環境光に大きな相違がある。読映室は、ほぼ暗室
のような環境であるのに対して、外来診療室は一般に明るく、外光が入っている場合もある。
環境光に併せて最適な表示輝度への調整を行っていくべきであるが、医用画像を参照する医師
などが、「明る過ぎる」、「まぶしい」、「見にくい」などの理由で、勝手に輝度調整を行ってし
まうことにより、それぞれの医用画像に最適な輝度カーブから外れてしまう場合がある。表示
輝度に関しては、参照する個人ごとに「好み」があるため、特に高輝度タイプのモニタを使用
している場合には、輝度を下げて使用することがある。このようなことが病院内の各所で発生
すると、ある時点でキャリブレーションしているにもかかわらず、モニタによっては最適な表
示が行われていないことになる。この問題点に関しては、キャリブレーション・センサーやモ
ニタ自体に付属している、照度センサーからの情報に基き、モニタの輝度調整をすることは可
能である。
- 1 つの画面上で、複数のモダリティからの医用画像を参照する場合には、ビューワーのウイン
ドウごとに、最適な輝度カーブやカラーを表示することも可能である。これにより、例えば X
線画像などの高輝度な表示が必要とされる画像と、内視鏡写真あるいは表などで示される検体
検査データ等を同一画面上で正しく表示することが出来る。これは、FVT シリーズのルックア
ップテーブル機能を強化する(必要個数のルックアップテーブルを用意する)ことで、ウイン
ドウごとの輝度カーブ及びカラー設定を行うことにより実現される。これは、電子カルテシス
テムを使用する際に特に重要な機能である。モダリティのコンソール端末や、画像診断を行う
端末では、表示する画像が一定しているが、電子カルテでは、基本的に検査データ、患者用カ
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ルテ、各種医用画像など複数種類のデータが参照される。特に大型モニタの普及が進むにつれ、
ウインドウごとの輝度管理やカラー管理が重要になってくると見られる。同一画面上への混合
表示イメージを以下に示す。
注)この機能は現状の FVT シリーズ(FVT200/FVT250)では実現されていない。
- モニタの最適表示のために、モニタ管理を行う必要がある。特に病院においては、かなりの台
数(大病院では 1000 台以上の場合もある)の端末が使用されるため、これらをネットワーク
を介して効率的に管理することが必要である。リアルビジョンでは、モニタのネットワーク管
理ツール(LumiCal Advanced Server)を製品として提供している。このツールを使用するこ
とにより、病院内のモニタ環境を統合的に管理、調整することが可能となる。ハードウエア環
境を整えていくことにより、自動キャリブレーションや、自動適合性試験、モニタ状況の監視
機能、バックライト制御機能、レポート作成機能等を実施することが可能となる。例えば輝度
カーブが変更されてしまったような場合に、それを自動的に検出し、必要によって自動的に校
正することが出来るようにすることができる。ネットワーク管理ツールを導入することにより、
病院レベルでのモニタ管理が統合的に行えるようになり、均一なモニタ品質の維持が比較的容
易に行える。また液晶モニタの故障検知や、交換時期の予測(バックライト性能の劣化による)
なども可能となる。既に欧米では、モニタ管理を外部委託する仕組み作りが進んでいが、国内
においても同じようなニーズが存在する。
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6.
まとめ
デジタル医用画像表示を最適に行うことに関して、技術面での問題点はあまりない。既に確立さ
れている技術や、対応する製品の組み合わせにより、最適な表示を実現することは可能である。
しかし運用面から見ると、いろいろな問題点が浮かび上がってくる。医師にとっては、モニタの
管理は重要事項ではない。基本的には出来るだけ雑多なことに係りたくは無いし、要するに「何
もしなくてもちゃんと見えている」ことが求められる。日常的なモニタの品質管理を科される事
などもっての他だし、医師によっては、
「見えてれば良いよ」あるいは「そんなの関係ない!」な
んて方もずいぶんいる。
しかし一方で、デジタル医用画像参照が一般化するにつれ、見易さや、品質管理に関して、何ら
かの対応をしていかなければならないことも事実である。画像診断や参照が一般化しつつあり、
診断の大きな要素として、医用画像データが必須のものとなっている今、使い方を誤ると医療過
誤にもつながりかねない状況があるからである。
これを解決するのは、自動化しかない。医師やその他の医用画像の参照を行う人が、一切の手間
をかけること無に、最適な表示状態を維持することが要求されている。自動化については、すべ
てにおいて可能かどうかは、規格などとの整合性もあり、どのようにすれば良いのか今後検討し
てゆくことが必要である。
リアルビジョンでは、ファインビュー・テクノロジーをベースとして、デジタル医用画像の最適
な表示、手間のかからないモニタ管理、システムの低価格化、高品質化を目指し、製品開発を続
けていく。
参考)
- DICOM GSDF
診断用に使うモニタは DICOM (Digital Imaging and COmmunications in Medicine) GSDF
(Grayscale Standard Display Function) といわれる輝度カーブに校正されている。
以上
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