電磁気学により連続の式は次のように与えられる。 div J = - ∂ρ (1) ∂t ここでJは電流密度、ρは電荷密度である。 半導体における連続の方程式を求める。 n形半導体を考え、少数キャリアである正孔に関する連続の方程式を導く。 このためにはまず、電荷密度をキャリア濃度で置き換える必要がある。 電荷密度ρと正孔濃度pの間には次の関係がある。 ρ = ep (2) 従って( 2 )式を( 1 )式に代入して次式を得る。 ∂p = - 1e div J (3) ∂t この式は、半導体における微少体積を考えた場合、そこに流れ込む電流(と流れ出す電流)により、 その体積中の正孔濃度が時間ともに増加することを示している。しかし半導体において、①キャリ アの注入や外部からの刺激によるキャリアの生成による少数キャリアの増加や、②少数キャリアが 多数キャリアと再結合することによる少数キャリアの減少、が生じる。 この為、半導体における 少数キャリア連続の方程式を表す為には、 (3 ) 式に、①キャリアの生成と②再結合の項を加味しなけ ればならない。単位時間あたりのキャリアの生成割合をg p、n形半導体中での少数キャリアである 正孔の寿命を τp とすれば、( 3 )式はつぎのように修正される。 ∂Δp Δp = - 1e div J + gp τp ∂t (4) 半導体中の電流は、ドリフト電流 と拡散電流 の和で与えられる。 Jp,drift = pev d = peμp E Jp,diffusion = - eDp grad p (5) Jp = peμp E- eDp grad p よって、( 5 )式を( 4 )式に代入して、 ∂Δp ∂t = - 1e div J + gp - Δp τp = - 1e div peμp E- eDp grad p + gp - Δp τp Δp τp Δp = Dp div grad p - μp div pE + gp τp 2 Δp = Dp ∇ p - μp E⋅ grad p + p⋅ divE + gp τp = div Dp grad p-pμp E + gp - ∵ div pE = E⋅ grad p + p⋅ divE E: [外部から印加した電界] + [キャリアの濃度勾配による電界] 電界が一定の場合 div E = 0 少数キャリア連続の方程式 ∂Δp Δp τp n形半導体 = Dn ∇ n + μn E⋅ grad n + gn - Δn τn ∂t p形半導体 ∂t ∂Δn 2 = Dp ∇ p - μp E⋅ grad p + gp - 2 半導体に光を照射したり、電圧を印加したりすれば、キャリア濃度は熱平衡状態からずれること になる。半導体デバイスの動作を理解する基本は、このような外部刺激に対して、新たにキャリア 濃度がどのように分布するかを知ることである。 少数キャリア連続の方程式とは、少数キャリア の分布を解析するための基本方程式である。 キャリア濃度の分布が定まれば、電流密度が算出で きる。 少数キャリア連続方程式では、外部刺激があったとき、単位時間、単位体積当たりキャリ ア濃度がどのように変化するかを考慮する。 ここでは、まず簡単化のため、p形半導体に一様に電 界Fがかかっており、しかも熱平衡状態では、不純物分布は均一であると仮定する。 p形半導体の 微小部分をとり、この場所での少数キャリア(電子)の増減を式で表す。 考えなければならない 現象は、拡散、ドリフト、再結合、発生の4項目である。 ∂Δp Δp τp n形半導体 = Dn ∇ n + μn E⋅ grad n + gn - Δn τn ∂t p形半導体 ∂t ∂Δn 2 = Dp ∇ p - μp E⋅ grad p + gp 2 右辺の4項の物理的意味の説明。 拡散による効果 (1)右辺第1項 拡 少数キャリア濃度が一様でなければ拡散が生じこれが拡散電流となる。 微小体積を考えた場合、これに流れ込む拡散電流が流れ出す拡散電流よりも多ければ、この部分に おける少数キャリア濃度は時間とともに増加する。 ドリフトによる効果 (2)右辺第2項 ド 電界が印加されていると少数キャリアはドリフトを受ける、これによりドリフト電流が流れる。 微小体積を考えた場合、これに流れ込む拡散電流が流れ出す拡散電流よりも多ければ、この部分に おける少数キャリア濃度は時間とともに増加する。 再結合 (3)右辺第3項 再 過剰に少数キャリアが存在すれぱ、熱平衡状態に系が戻ろうとするために必ず再結合が生じてい る。 再結合により、少数キャリア濃度は時間とともに減少する。 単位時間、単位体積当たりの 再結合の割合はすでに式(7.22)で示したようにとなる。 キャリア生成 (4)右辺第4項 キ たとえぱ半導体に光を照射すると、電子正孔対を発生させることができる。そこで、単位時間、 単位体積当たりの少数キャリアの発生数をg pとする。生成により、少数キャリア濃度は時間ととも に増加する。 以上の4項目により、単位時間単位体積当たりの少数キャリア濃度の増分が左辺の -∂Δp/∂ tで ある。 例題 半無限長n型半導体の左側から光照射により電子・正孔対が生成され、x=0の点からx軸の正 の方向に正孔が注入されている。少数キャリア連続の方程式を解くことにより、正孔濃度pをxに 対して求め、結果を図示せよ。ただし、光子エネルギーは半導体の禁制帯幅より大きく、キャリア は光照射された半導体の表面付近でのみ生成され(半導体内部でのキャリア生成は無視する)、系 は定常状態にあるものと仮定する。また、x=0 での正孔濃度をp(0)とする。 n形半導体中での一次元の少数キャリア連続の方程式は次のように表される。 [ ] 仮定より ①半導体内部に [ ]が存在しないから、 [ ]とおける。 ②半導体内部で [ ]が無いから、 [ ]とおける。 ③時間が十分経過し、系は[ ]であるから、 [ ]とおける。 従って、連続の方程式は次のように簡単な2階の微分方程式で表される。 [ ] ここで解をe λx とおけば、特性方程式は、 [ ] 従って、連続の方程式の一般解は次のように表される。 [ ] 境 界 条 件 ①→∞ でpは有限値をとるから [ ] である。 ②x=0 で正孔濃度はp(0)であるから [ ] 従って、定数は [ ] とあらわされる。 従って、連続の方程式の解は、 [ ] [ ] となる。ここでLp=√Dpτp は[ ]と呼ばれ、拡散によりキャリアが移動できる平均 距離を表している。
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