NPO G.Planning 製作の暴力防止教育アニメとノルウェーの作品を比べてみると・・・ NPO G.Planning 木村民子 NPO G.Planning は、試作版に引き続き、動物版のアニメーション教材『ママのばんそうこう』を 製作、ようやく完成しました。これはクマさん一家のちちグマの DV に対し、おびえ、苦しんだあに グマが、保育士に打ち明けるという内容です。DV は家庭という密室で起きる暴力なので、なかなか 外部の人間は気がつきません。まして幼児でさえ、自分の父親が暴力を振るい、母親を傷つけている とは言い出せずに、じっと我慢しているのです。こうした子どもたちの SOS をどのように受け止め、 助けの手を差し伸べることができるのでしょうか。 最近ノルウェーのアニメ映画『パパ、ママをぶたないで』 (アニータ・キリ監督、2010 年製作)を 見る機会を得ました。また映画の原作となった絵本*も刊行され、 『ママのばんそうこう』とまったく 同じようなテーマが描かれていることに驚かされました。 このアニメや絵本は、父親の母親への暴力に苦しむポイという男の子が、父親の母親への暴力は「ぼく が悪い子だから・・・」と悩み苦しみ、風や木に励まされて、王様に手紙を書いて訴えるという ストーリーです。 ただ、私はこのノルウェーのアニメや絵本を見て、少々疑問を感じました。まず第一に、父親が暴力を 振るうのは、父親の中に潜む怒り鬼のせいにしていること。それは父親が悪いのではなく、あたかも 二重人格のようにも捉えられるし、また一種の病気のせいだからと DV 加害男性を許容しているよう にも思えるからです。そして第二には男の子が助けを求めるのは王様という設定です。これは 12 歳の 少女が王様に手紙を書いたという実話が基になっているのですが、ノルウェーの王様=ハーラル国王は 国民にとても信頼が厚いとはいえ、加害者対策として王様を登場させたのには違和感を覚えました。 とはいえ、文化や国情の違いはあるにせよ、暴力におびえる子どもたちの声をどのように聞き、いか に救うのかは、各国共通の大きな課題であると思います。ノルウェーの二つの作品では、王様の命令 で、父親が更生プログラムを受ける施設に入り、男の子はパパがすっかりよくなって戻ってくること を期待して終わっています。 私たちのアニメ教材『ママのばんそうこう』も保育士さんが「いっしょに考えようね」とあにグマ に言い、あにグマのうれしそうな表情で終わります。これで解決にはならないことは十分承知して いますが、それが最初の一歩ではないでしょうか。ハーラル国王も次のように語っているそうです。 「子どもたちは主人公の少年のように、誰かに話す権利がある。子どもたちが自分の家の中でおびえる ようなことは、決してあってはならない」と。 *『パパと怒り鬼―話してごらん、だれかに―』作グロー・ダ―レ 絵スヴァイン・ニーフス 共訳大島かおり 青木順子 ひさかたチャイルド *男女平等が世界で最も進んでいるはずのノルウェーでも、DV は深刻で、2005 年の統計では女性の 24%が 暴力を経験し、12 人に 1 人が命に関わる暴力を経験していると示しています。さらに移民が増え、シェル ター入居者のうち移民女性はほぼ半数にまで増加してきているという現状です。そして、暴力は無差別大量 殺人という痛ましい形で噴出してしまいました。 -1-
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