クラウドへの移行を成功に導く ロードマップの策定

クラウドへの移行を成功に導く
ロードマップの策定
IBM のスポンサーシップによるエグゼクティブ・ブリーフ
Lynda Stadtmueller
クラウド・コンピューティング担当
プログラム・ディレクター
2014 年 2 月
クラウドへの移行を成功に導くロードマップの策定
概要
お客様の企業でも既になんらかのクラウドへの取り組みを開始しているでしょう。自社の Web サイトをオンデ
マンドのクラウド・ベースのインフラストラクチャー・サービスに移行済みかもしれません。開発者は新規の
アプリケーションをリリースする前に、クラウド上でテストを行っているかもしれません。ビジネス部門では、
IT 部門の同意のあるなしにかかわらず、複数の Software-as-a-Service (SaaS) を利用していることもあります。
しかし、簡単にクラウド実装を成功させたことのある企業は存在しません。クラウド・ソリューションへの投
資とそこから得られる価値を最大化するには、規模の大小にかかわらずどのような企業もロードマップの策定
から始める必要があります。しっかりとしたロードマップの策定はクラウドへの性急な取り組みを回避します。
エンタープライズ・クラウドは、各企業独自のペースで発展する必要があります。ただロードマップは、クラ
ウドへの参入やクラウドの発展に関する「正しい」方法を規定することではありません。各企業は、どこでど
のように自社のニーズを満たすクラウド・ソリューションを採用すべきかを独自に決定する必要があります。
ロードマップの役割とは、現在のニーズを解決するために企業がクラウドに関して行う意思決定のそれぞれが
将来においても有効であることを担保することにあります。
しかし、どこから始めればよいのでしょうか。自社のクラウド戦略のロードマップを策定することは、必ずし
も困難なことではありません。多尐の計画、準備作業、およびコラボレーションの必要性が生じるだけです。
当レポートでは、IBM と IBM のパートナーが提供する価値に注目したうえで、クラウド・ロードマップを策
定するステップを列挙します。
自社のクラウド戦略のロードマップを策定することは、必ずしも困難なことではありません。
多尐の計画、準備作業、およびコラボレーションの必要性が生じるだけです。
クラウドを採用する理由
クラウドとは柔軟なビジネス・モデルです。クラウドの一般的な特徴は、幅広いビジネス上の課題に対応し、
さまざまなプロバイダーが個々の企業ニーズに対応するサービスを提供することにあります。企業は以下のメ
リットのいずれかまたはすべてをクラウドから享受することができます。




資本支出の繰り延べ: 予算が潤沢でない場合、企業は投資対効果の実現に長期間を要するハードウェ
アに資本投資を行うのではなく、代替可能な事業運用予算から支出することができます。
市場投入までの時間を短縮: クラウド・アプリケーションは数週間や数カ月ではなく数分、数時間、
数日で実装することができるため、企業は市場の変化により迅速に対応することができます。
アプリケーションのスケーラビリティー: クラウド・ソリューションはパフォーマンスを低下させる
ことなく使用の変動に対応できるため、企業はピーク時の使用に合わせたハイスペックな仕様を事前
に準備する必要はありません。
品質と一貫性の向上: 堅牢なクラウド・プラットフォーム上で構築・テスト・実装されたアプリケー
ションを使用すると、開発者は実証済みテンプレートに基づいて作業し、簡単に実働環境を複製でき
るため、エラーを削減できます。
© 2014 Stratecast.All Rights Reserved.
2
Stratecast | Frost & Sullivan

レジリエンス: 多くの企業は事業継続性と災害復旧計画を実現するクラウド・ソリューションを選択
することによって、データの可用性に関する規制を遵守し、ベスト・プラクティスを活用することが
できます。
それぞれのクラウド・サービスの種類 (パブリック・クラウド、プライベート・クラウド、ハイブリッド・クラ
ウド、ならびに IaaS、PaaS、SaaS を含む) は、それぞれ異なるニーズに対応しています。それゆえに、単一の
クラウド・アプローチがすべての企業にとって最適であるとは言えないのです。これは、各企業が独自のクラ
ウド戦略を策定することが重要な理由でもあります。
クラウド・ロードマップ策定のための 5 つのステップ
企業が自社のクラウド戦略のロードマップを策定する際に役立つガイドラインは以下のとおりです。
コミュニケーション
クラウドの採用は、IT 部門だけでなく企業全体にメリットをもたらします。この点をはっきりと示すことが重
要です。特に経営陣とビジネス部門に対して早期に計画について情報連携し、どのようなメリットが生まれる
のかを強調してください。クラウドに基づく企業の IT 戦略がイノベーションを促進し、市場への即応性を改善
し、しかも資本投資を削減できることを経営陣に説明してください。ビジネス部門のマネージャーに対しては、
クラウドによって IT 部門に対するアプリケーションのリクエストが迅速に処理され、市場投入までの時間が短
縮され、コラボレーションがより強化されることを示してください。クラウドのメリットを説明することによっ
て、2 つの点でプロジェクトを促進することができます。第 1 にプロジェクトをサポートするために必要とな
る予算を確実にリクエストすることができます。第 2 にどのアプリケーションをクラウドに移行すべきか検討
する際にビジネス部門のマネージャーの協力を得ることができます (実際には、マネージャーが次々とやって来
て自部門のアプリケーションの移行をリクエストしてくることになるでしょう)。
ワークロードのとりまとめ
尐なくとも予測可能な将来においては、すべてをクラウドに移行することにはなりません。しかし、どのワー
クロードをいつの時点で移行すべきかについてはある程度考慮する必要があります。その際、ワークロードの
とりまとめから開始する必要があります。選択する業務によって、この作業の難易度は変化するかもしれませ
ん。もちろん、IT 部門は現在管理しているアプリケーションのリストは既に持っています。しかし、ワークロー
ドのとりまとめを拡張し、現在自動化されていないワークロードや部分的にしか自動化されていないワーク
ロード (ある部門がスプレッドシートを使用して暫定的に実施しているビジネス・アナリティクス機能など) を
含めることもできます。このようなワークロードを把握することによって、IT 部門はクラウド・オプションの
全体的なスコープ (ソフトウェア機能の統合を含む) をより効果的に決定することできます。
ワークロードのとりまとめの際には、既に効率が落ちていたり、パフォーマンスが低下しつつあるレガシー・
アプリケーションに特に注目してください。そのなかには、完全に再設計 (クラウドによるデリバリーを最適化
するためのリファクタリングを含む) すべきものがあるかもしれません。同様に、ファイアウォール内で稼働し
ている特定のアプリケーションを再設計することによって、一部の要素または機能をオンプレミスで引き続き
稼働させることもできれば、その他のアプリケーションをクラウド上で稼働できるようリファクタリングを行
うこともできます。
ワークロードの評価
クラウド適合性とは、複数の主観的かつ客観的な基準 (セキュリティー、可用性、アクセシビリティー、レジリ
エンシー、およびアプリケーションが他のワークロードと連携する方法を含む) による機能を指します。IBM で
はまず行うべきこととして、そのワークロードが自社にとってどれほど重要かつ戦略的なのかを評価するよう
推奨しています。それは、基幹業務のワークロードなのでしょうか。つまり、このワークロードに 1 週間アク
セスできなくなった場合でも、ビジネスを継続することはできるでしょうか。それは、戦略的なワークロード
なのでしょうか。つまり、企業にとって大きな価値を生み出すものでしょうか。図 1 で示したとおり、それぞ
れのワークロードを表にまとめてみてください。ほとんどの企業は、 4 層 のワークロードからクラウド参入
を開始しています。ロードマップが進展するにつれ、経験に基づいてワークロードを他の層から動かすことも
できます。
3
© 2014 Stratecast.All Rights Reserved.
クラウドへの移行を成功に導くロードマップの策定
図 1: IBM のワークロード評価ツール
はい
1層
4層
2層
戦略的
3層
はい
いいえ
基幹業務
4 層
アプリケーション・ 戦略的でも、
クラス
基幹業務でもない
3層
2層
1層
戦略的であるが、
基幹業務ではない
基幹業務
不可欠:
最も重要
典型的な
比率
55%
20%
20%
5%
求められる可用性
低い
95% 以下
中程度
95-98.5%
高い
98.5-99.7%
非常に高い
決して停止しない
サポート内容
ベスト・エフォート 営業時間内
24 時間 365 日
24 時間 365 日
モニタリング
不要
インフラストラク
チャー
アプリケーション・
レベル
基本サーバー
出典: IBM
ワークロードとクラウド・サービスのマッチングと移行の開始
柔軟なクラウド・モデルは、コスト、パフォーマンス、および機能のトレードオフにより多くのソリューショ
ン環境を提供します。仮想化されたパブリック・クラウドは、最も低コストなオプションです。プライベート・
クラウドは、より高いレベルでのセキュリティーとパフォーマンス制御を提供します。高パフォーマンスまた
は低遅延のアプリケーションの場合、ベアメタル・クラウドを利用すると最も価格性能比が高い可能性があり
ます。複数ソースを使用するワークロード (オンプレミスのプライベート・クラウドを含む) の場合は、ハイブ
リッド・クラウドが適切なオプションかもしれません。アプリケーションの開発のためには、Platform-as-a-Service
が最適なオプションである場合があります。市場で一連のソリューションが提供されるなか、最も幅広く最も
柔軟なポートフォリオと自社のニーズを満たすパフォーマンスのサービス・レベルを提供するプロバイダーを
選択してください。
ワークロード評価の出力結果を使用して、どのワークロードをまず移行するのかを決定してください。例えば、
上記のとおり IBM のワークロード評価ツールでは、ほとんどの企業は 4 層 に分類される (すなわち、最も戦
略的でなく基幹業務でもない) ワークロードで移行作業を開始しています。お客様がビジネス中断のリスクを最
小化したうえでクラウド・コンピューティングの利用を開始したいと希望するなか、これは賢明なスターティ
ング・ポイントと言えます。移行対象として選択した各ワークロードに関して、プロバイダーのオンライン・
ツールキットを使用してワークロードを仮想マシンとして作成してください。その後、その仮想マシンをプロ
バイダーのクラウドにアップロードしてください。
© 2014 Stratecast.All Rights Reserved.
4
Stratecast | Frost & Sullivan
クラウドの管理
クラウドとは、一度設定するだけで完了するプロジェクトではありません。プロバイダーがクラウドを最適化
するために役立つ一連の堅牢な管理ツールを提供していることを確認してください。自社がクラウドをどのよ
うに使用しているかをしっかりと把握してください。各部門に対して請求を行うため、あるいは効率を確認す
るために、使用状況のレポートを定期的に検証してください。さらに、お客様の従来の IT 環境とも連携できる
管理ツールを持つクラウド・プロバイダーを選択するか、クラウド・ツールをお客様の現在のコンソールと統
合できるサービスを提供しているプロバイダーを選択してください。そうすることで、お客様は一貫性のある
方法で環境全体を管理できるため、管理機能を合理化し、ビジネスに対する価値を最大化することができます。
クラウド・パートナーの選択
クラウド・ロードマップ策定のために専念できるリソースや専門知識が限られている企業の場合、ロードマッ
プ・プロセスの早期段階でパートナーとなるクラウド・プロバイダーを選択することがスマートな方法となり
ます。そうすることで、お客様はクラウド・プロバイダーの支援により、クラウドに関する選択肢を把握し、
自社のワークロードを評価したうえで、移行を管理することができます。クラウド・プロバイダーは、クラウ
ド戦略の策定を支援するために、クラウド採用パターンの幅広い知識を持ち、お客様に対してクラウド評価の
ベスト・プラクティスを共有する必要があります。さらに、クラウド・プロバイダーはお客様のクラウド・ロー
ドマップに当てはまる幅広いオファーを提供する必要があります。
多くの企業にとって、IBM および IBM がサポートするクラウド認証を受けたパートナー各社は、企業がクラ
ウドの取り組みを開始するための最適なパートナーとなりえます。数十年にわたって企業のデータセンターを
管理した経験を持つ IBM および IBM のパートナーは、クラウド戦略の策定、ワークロードの評価、セキュリ
ティー・リスクとレジリエンシーの評価、クラウドの移行、さらにはクラウド・サービスの継続的な管理とモ
ニタリングを行うためのプロフェッショナル・サービスを提供することができます。また企業は、IBM のクラ
ウド評価ワークショップに参加することもできます。さらに、IBM はお客様の新規クラウド環境と統合するプ
ライベート・クラウドと仮想化をサポートする製品とサービスを通じて、お客様のオンプレミスのデータセン
ターを最適化する支援を行うことができます。
IBM はハードウェア、ソフトウェア、サービス、統合されたソリューションの幅広いポートフォリオを提供す
ることによって、企業が最適なクラウド環境を開発・実装・管理するためのお手伝いをします。クラウドの取
り組みを開始するにあたり、企業は SoftLayer (現在は IBM のクラウド・ポートフォリオに含まれています) 上
で利用可能な一連のサービスを採用することができます。IBM クラウドが SoftLayer によって強化されること
で、お客様は以下を行うことができます。



5
専有サーバー、仮想サーバー、ベアメタル・サーバーをあらゆる方法で組み合わせることによって、
セキュアかつスケーラブルなエンタープライズ・クラウドが構築でき、セキュリティー、可用性、お
よびパフォーマンスを低下させることなくコスト効率を最大化することができます。
スケーラビリティーと可用性を提供したうえで、リソースを最適化するハイブリッド・クラウドを構
築することによって、オンプレミスのデータセンターへの投資を強化することができます。
さまざまな種類の信頼性の高い IBM ソフトウェアとビジネス・パートナーのアプリケーションを
IBM のソフトウェア・カタログ (Rational、WebSphere、Lotus、DB2、Informix、Cognos、InfoSphere、
および Tivoli を含む) から活用することができます。このソフトウェア・カタログで、お客様の既存
と新規の業務を強化し、生産性と効率をさらに高めることができます。このソフトウェア・カタログ
を使用することにより、コラボレーションによる開発、ストレージの拡張、ビッグデータ・アナリティ
クス、およびビジネス・インテリジェンスなどの機能を追加していくことができます。
© 2014 Stratecast.All Rights Reserved.
クラウドへの移行を成功に導くロードマップの策定
SoftLayer の 1,200 を超える API と、IBM が OpenStack によるオープン・スタンダード・コミュニティーを
サポートすることで、IBM のクラウド・サービスは複数の異なった環境間での相互運用を実現します。そのた
め、IBM および SoftLayer のポートフォリオはお客様のビジネスとともに成長し、現在のみならず将来の IT
ニーズにも対応することができます。
結論
企業がクラウドに取り組み始めたばかりでも、既にクラウドを活用し、その拡張を目指している場合でも、しっ
かりとしたロードマップを策定することが重要です。このロードマップを使用することで、生産性、コスト削
減、および機能拡張の観点より、企業はクラウド上のワークロードから生み出す価値を最大化することができ
ます。また、ロードマップは企業の投資も保護するため、企業は自社の機能を拡張し、選択した基盤をさらに
拡大することができます。ロードマップを策定するために、企業は IBM のクラウド・ポートフォリオ (IBM の
グループ企業となった SoftLayer による幅広いクラウド・サービスを含む) を採用することができます。IBM お
よび IBM のビジネス・パートナーは、企業がクラウドの取り組みを開始し、ビジネスの成長に合わせてさらに
その取り組みを続けるための専門知識、幅広いポートフォリオ、およびクラウド・ツールを提供します。
Lynda Stadtmueller
クラウド・コンピューティング担当プログラム・ディレクター
Stratecast | Frost & Sullivan
[email protected]
IBM の幅広いクラウド・コンピューティングのポートフォリオに関するより詳細な情報については、
ibm.com/cloud-computing/jp/ja/ をご参照ください。
© 2014 Stratecast.All Rights Reserved.
6
シリコンバレー
331 E. Evelyn Ave., Suite 100
Mountain View, CA 94041
電話: 650-475-4500
Fax: 650-475-1570
サンアントニオ
7550 West Interstate 10, Suite 400
San Antonio, Texas 78229-5616
電話: 210-348-1000
Fax: 210-348-1003
ロンドン
4, Grosvenor Gardens,
London SWIW ODH,UK
電話: 44-(0)20-7730-3438
Fax: 44-(0)20-7730-3343
877.GoFrost • [email protected]
http://www.frost.com
STRATECAST について
Stratecast はクライアントと協力のうえ、迅速に進化し競争が激しい ICT (情報通信技術) 市場において、ビジネ
ス上の意思決定をサポートします。アクションを促進するサブスクリプション・ベースの研究とカスタマイズ
されたコンサルティング・ビジネスを提供する Stratecast は、業界における実際の経験に基づいた知識と知見を
提供します。この業界では、顧客はコラボレーション・パートナーであり、今日のパートナーは明日の競合相
手であり、俊敏性とイノベーションが成功のための必須要素となっています。成長目標を実現するために役立
つ当社の経験を利用するには、Stratecast の営業担当者までお問い合わせください。
FROST & SULLIVAN について
グロース・パートナーシップ・カンパニーである Frost & Sullivan はクライアントとの協力に基づいて業務を行
うことにより、現代の市場のプレーヤーに大きな影響を与えるグローバルな課題と関連する成長機会を実現す
るイノベーションを提供します。50 年以上にわたって、当社はグローバル企業 1,000 社、新興企業、公共セク
ター、および投資コミュニティー向けに成長戦略の策定を行っています。お客様の組織は、業界の収束、革新
的なテクノロジー、競争の激化、メガトレンド、画期的なベスト・プラクティス、変動する顧客の力学、新興
市場といった今後の大きな波に対応する準備はできていますか。
二次利用に関しては、以下まで書面でお問い合わせください。
Frost & Sullivan
331 E. Evelyn Ave. Suite 100
Mountain View, CA 94041
RLL12364-JPJA-00
オークランド
ドバイ
モスクワ
シリコンバレー
バーレーン
フランクフルト
ムンバイ
シンガポール
バンコク
イスカンダル (マレーシア)
オックスフォード
ソフィア・アンティポリス
北京
ジョホールバル
パリ
シドニー
バンガロール
イスタンブール
ロックビル・センター
台北
ブエノスアイレス
ジャカルタ
サンアントニオ
テルアビブ
ケープタウン
コルカタ
サンパウロ
東京
チェンナイ
クアラルンプール
サラソタ
トロント
コロンボ
ロンドン
ソウル
ワルシャワ
デリー / デリー首都圏
マンハッタン
上海
ワシントン D.C.
デトロイト
マイアミ
深圳
ミラノ