休廃止鉱山の管理業務

休廃止鉱山の管理
JX日鉱日石金属グループは 1905 年の創業以来、全国各地で
当社が管理する休廃止鉱山
鉱山を操業し、非鉄金属などの安定供給と日本の経済発展に貢献
してきました。現在はそのほとんどが鉱量枯渇に伴って操業を停
豊羽
止し *、休廃止鉱山として坑廃水処理などを行い、周辺の自然環境
の維持・回復を図っています。
また、当社では毎年「DNA研修」
と題した社員研修を行い、豊羽
長万部
坑廃水処理鉱山(12ヵ所)
鉱山における坑廃水処理設備の見学と、経営トップによる講義を
亀田
釈迦内
新城
通じて、環境問題に取り組んできたグループの歴史と、現在の休
廃止鉱山における環境マネジメントについて認識を深める機会を
北陸
設けています。
百谷
*現在、当社グループ(日本国内)で稼行しているのは春日鉱山(鹿児島県)のみ。
河守
太宝
島根
大湯
見立
三川
大谷
吉野
田代
鐘打
上北
鉛山
日立
河山
高玉
花輪
満沢
赤羽根
日光
藤ヶ谷
松尾
竜昇殿
北進
峰之沢
高浦
白滝
大瀬
堂ヶ谷
河津
牧谷
宝迫
多田
環境
DNA研修の様子(豊羽鉱山 本山坑水処理場)
休廃止鉱山の管理業務
当社が所管する39ヵ所の休廃止鉱山のうち12ヵ所については、
坑廃水処理設備と管理事業(花輪鉱山)
鉱山保安法に基づき、坑廃水処理を継続する義務が課せられてお
り、JX日鉱日石エコマネジメントが、これら一連の坑廃水処理お
よび堆積場などの鉱山用地の管理を行っています。
休廃止鉱山管理の主な業務は、坑内および堆積場などから出る
重金属を含む強酸性の坑廃水を無害な水質にする処理と、堆積場
や坑道などの維持・保全です。
坑廃水は、雨水などが休廃止後の鉱山に残る鉱石や堆積場の
捨石・鉱滓などに接触することによって絶え間なく発生するため、
中和した水の固液分離を行う沈殿池
排水基準値をクリアした水が放流される
その処理は1日たりとも休むことなく行う必要があります。
定期的な堆積場の点検のほか、場所によっては数 kmにわたる
あんきょ
坑道内部や、堆積場の底にある排水を通す暗渠(トンネル)につい
ても内部の点検を行っており、必要に応じて補修をしています。
ほかにも、堆積場の排水路が閉塞しないようにするための倒木
の撤去や草刈り、数 km もの配管の点検などを行い、未処理の坑
廃水が流出することがないよう、日々の管理を撤底しています。
坑道点検
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堆積場の地震・豪雨対策工事
当社では、東日本大震災以降、管理する全ての堆積場を対象
に、2012 年度から自主的にレベル 2 地震(対象とする地域におい
て、現在から将来にわたって考えられる最大級の強さの地震動)
に
対するリスク評価を行ってきました。併せて、近年各地で多発して
いるゲリラ豪雨などの集中豪雨に対する安定性および鉱滓が流出
した場合の堆積場下流への影響度についても評価を行いました。
これらの「自主総点検」
によってリスクを明確にし、対策が必要と判
断された堆積場については、優先順位を定め 2013 年度から対策
工事を実施しています。
対策工事では、地盤改良(地震に対する安定度の確保)や水路
の増強(豪雨時の排水能力の確保)などが行われます。
① 2014年度対策工事実施箇所
地震 2ヵ所
上北鉱山 下の沢堆積場(内盛式)
〔完了〕
満沢鉱山 第四堆積場(内盛式)
〔継続中〕
豪雨 3ヵ所
上北鉱山 田代平第一堆積場(外盛式)
〔完了〕
花輪鉱山 田の沢堆積場(外盛式)
〔完了〕
多田鉱山 白石堆積場(外盛式)
〔継続中〕
河守鉱山 第二堆積場(内盛式)
〔継続中〕
豪雨対策工事を行った花輪鉱山 田の沢堆積場
(上)堆積場のかん止堤と非常用排水路
(下)豪雨時の流木をせき止める流木止め
② 2015年度対策工事実施予定箇所
地震 2ヵ所
大谷鉱山 高瀬ヶ森堆積場(内盛式)
〔予定〕
鉛山鉱山 通洞坑ズリ堆積場〔予定〕
豪雨 2ヵ所
田代鉱山 第一第二堆積場(外盛式)
〔予定〕
藤ヶ谷鉱山 第二第三堆積場(内盛式、外盛式)
〔予定〕
地震対策工事を行った上北鉱山 下の沢堆積場
voice
365日24時間体制の管理
休廃止鉱山の坑廃水処理設備は、365日24時間体制で管理を行わなければなりません。そのた
め、処理プロセスでpH値や設備の異常などが発生した場合、直ちに管理者に連絡が行くシステムを
確立しています。また、非常用の貯水施設や自家発電設備の整備も進めており、トラブルがあって
も迅速・適切な対応が取れるよう管理を行っています。
JX日鉱日石エコマネジメント
株式会社
技師
今川 晴絵
坑廃水処理だけでなく、堆積場や坑道の管理、旧鉱山跡地への植栽活動、地域の方々とのコミュ
ニケーションなど、休廃止鉱山の管理業務は非常に多岐にわたります。
自然環境・地域と共生
休廃止鉱山の多くは、市街地から離れた便利とは言えない場所にあります。1 年の半分近くが雪
に覆われる地域もあり、その管理は厳しい自然環境にも適応して行わなければなりません。融雪や
大雨により水量が増大する時期は、特に適切な管理が重要となります。
当社の休廃止鉱山管理は、例えば各地の堆積場に、ゲリラ豪雨などの非常時に対応できるような
排水能力を持つ水路を整備したり、豊羽鉱山では豪雪に対応した大規模な全天候型屋内坑水処理
場を建設したりと、厳しい自然環境下でも安定した操業ができるよう、設備の増強や管理体制の充
実に努めています。
JX日鉱日石金属グループが日本各地で鉱山を操業していた時代を直接知る社員は少なくなって
いますが、環境や地域との共生を目指してきた当社の取り組みを引き継ぎ、発展させていくことが
私たちの世代の役割だと感じています。
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JX Nippon Mining & Metals Corporation Sustainability Report 2015