第14回定期大会主催者挨拶

JEC 連合第 14 回定期大会挨拶
2015 年 7 月 23 日
JEC 連合会長 永芳栄始
JEC 連合第 14 回定期大会の開催にあたり、本年もこうして JEC 連合に集うたくさんの
仲間と、この京都の地で再会できたことを、心より嬉しく思います。
また本日は、京都盆地特有の蒸し暑い中、上部団体からは、連合 古賀伸明会長、インダ
ストリオール・JAF 佐藤良雄事務局長、友誼団体からは、化学総連より長野慎哉会長、政
界からも、労働法制、安保法制の審議で大変ご多忙のなか、民主党を代表して福山哲郎幹事
長代理、フォーラム議員団より、柚木道義衆議院議員、金子洋一参議院議員にご臨席を賜っ
ております。また、労働福祉団体からは、全国労働金庫協会・関山営業企画部長、全労済・
阿部田常務にお越しいただきました。JEC 連合を代表いたしまして、心より感謝と御礼を
申し上げます。
加えて、懇親会には、同じく JEC 連合政策フォーラム議員である、藤末健三 参議院議員
また、ご当地、連合京都の橋本信一会長にもご出席いただき、ご挨拶を頂戴する予定となっ
ております。
春闘について
さて、今年の春も皆さんにとっては行動と結果を求められる春闘となったのではないで
しょうか。まだ交渉中の単組もあるかと思いますが、ひとまずは皆さん大変ご苦労様でした。
昨年に続き、政府・経済界・労働界は「経済の好循環実現に向けた政労使会議」を官邸で
再開し、年末には昨年同様の政労使合意を取り決めました。これにより、本年もまた賃上げ
に向けた空気感が醸成されたことは間違いありません。もちろん、その成果は、それぞれの
労使による真摯な交渉プロセスを経て実現されたものであることはいうまでもありません。
数字を見れば連合集計 7 月 1 日現在で 2.20%という、昨年を上回る賃上げ率を勝ち取り
ました。このことは、大変にすばらしい成果だったと言えます。
一方で、依然として消費税増税による物価上昇分には届かず、実質賃金は 25 ヶ月連続で
マイナスとなり、そのギャップは縮まっていません。
産業全体を取り巻く情勢や各企業業績を鑑みれば、それぞれに厳しい部分はあったでし
ょう。しかしながら、声をあげねば何も始まらないのも事実です。引き続き、この賃上げの
流れを来年につなげていかなければなりません。
経済について
昨年の定期大会から、まる1年が経ちましたが、この1年も化学・エネルギー産業のみな
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らず、日本経済全体を取り巻く環境は目まぐるしく変化しました。
手元の数字を紹介しますと、昨年定期大会が開催されました 7 月 24 日の日経平均株価終
値は 15,284 円 42 銭。今年に入ってからの戻り高値(最高値)は、先月 6 月 24 日の 20,952
円 71 銭と、実に 5,600 円強も上昇しています。
他方、外国為替は、ちょうど 1 年前は 1 ドル 101 円半ばだったものが、現在 124 円前後
で推移しており、行き過ぎた円安が、我々、素材産業を苦しめています。
加えて、化学産品の原料である石油価格は、昨年 11 月を潮目に、ここ数年 1 バレル 100
ドル前後で推移していたものが急落し、一時は 1 バレル 40 ドル台に突入するなど、極めて
荒い値動きから、この先の展望が全く見通せない情況です。
こうした、堅調、軟調あい混ざった複雑な現状にあって、我が国の化学・エネルギー産業
の先行きは、より一層、不透明さと厳しさを増しています。
そんななか、昨年 11 月に経済産業省より示された、
「産業競争力強化法第 50 条に基づく
調査報告―石油化学産業の市場構造に関する調査報告」は、化学産業に対する危機感への警
鐘と同時に、課題の再認識と、その対応策を指し示すなど、我々が進むべき将来像のひとつ
の方向性を提起した内容であったと言えます。
特に、将来需給のシナリオは、リスクケースを念頭に政策議論の土台としており、これを
悲観的に捉えるのではなく、逆に産業構造を抜本的に改革し、国際競争に打ち勝つ、強靭な
化学産業を再構築するチャンスと捉え、産官学・オールジャパン体制で臨むべきと考えます。
また、3 年ごとに見直される「長期エネルギー需給見通し」
、いわゆるエネルギー・ミッ
クスが先日取りまとめられました。石油・天然ガスの位置づけはもとより、本見通しによる
新たな電源構成は、つまり将来的な原子力発電所の新設を意味しているものであり、前政権
時の取りまとめからは大きな転換があるなど、今後とも注視していかなければなりません。
政治について
今年もまた、大会挨拶で暗い話しをしなければならないことが、非常に残念でなりません。
昨年、一昨年に引き続き、労働法制の改悪が進行しています。
現在も開会中の国会では、我々労働者に関係する法律が 9 本も審議されています。全て
の紹介は時間の都合上割愛しますが、このうちのいくつかにはこの場でも触れねばなりま
せん。
まずは、労働者派遣法です。政府・自民党は再三にわたるわれわれ労働者の声を無視して、
本法案を三度国会に提出しました。既に、連合からの度重なる案内で内容はご承知のことと
は思いますが、専門 26 業種は撤廃され、3 年ルールも実質廃止されたことにより、望まぬ
派遣労働を生涯にわたり強いられることも、法的に可能となってしまいました。
他方で、雇用の安定化措置には明確な義務規定はなく、すべてにおいて使用者側にとって
都合のよい内容となっており、一部の関係企業への利益誘導に力点を置き、また、働きやす
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さを謳いながら、本音は使いやすさを主眼にした、働く者をまったくないがしろにした悪法
といわざるを得ません。
次は労働基本法です。ホワイトカラー・エグゼンプション。これは、かつての小泉・竹中
政権において、われわれが葬り去った愚策です。しかしながら、政権交代直後から官邸の有
識者会議でゾンビのように蘇り、姿かたちを変えてついに本国会に提出されました。
“高度プロフェッショナル制度”という、一定の年収要件を満たした労働者は、労働時間、
休日・深夜の割り増し賃金等の規定を適用除外とし、いくら残業をしても賃金が支払われな
いという、過重労働を助長し過労死といったさらなる労働災害を招くような法案が成立し
ようとしています。
加えて、経団連など経営者側は、将来的な年収要件の見直しを既に示唆しており、あろう
ことか、これに本来われわれ労働者を守るべき立場の厚生労働大臣が前向きな姿勢を見せ
るなど、厚顔無恥のきわみとも言えることが起こっています。このような暴挙には断固反対
の立場を貫き闘い続けねばなりません。
戦後 70 周年を向かえ
最後に、今年は戦後 70 周年の年にあたります。平和、民主主義、基本的人権の尊重など、
過去の反省から生み出された価値を確実に次代に引き継いでいくことは、今を生きる我々
の責務です。次々と降り注ぐ課題に対処していく上で、様々な主体が参画し対話を重ね信頼
を醸成するプロセスが重要になっています。その中で当然働く者、労働運動も必要な役割を
果たしていかなくてはなりません。
本日は、なぜその役割を果たさなければならないのか、とあわせて今一度原点に立ち戻り、
何のために皆さんと共にこの場所に結集し思いを一つにしようとしているのか考えてみた
いと思います。
まず大前提として、平和で安定した社会があってこそ、安心して働き、生活していける、
このことを守るためにも労働運動はその先頭に立つ必要があり、それは労働運動の存在意
義に関わることでもあります。
ILO(国際労働機関)は 1919 年第一次世界大戦の反省に立ち、社会正義を基礎とした世
界平和の確立に寄与することを目的に設立されました。しかし、ふたたび第二次世界大戦が
勃発したことにより、ILO は 1944 年、二度と戦争を起こしてはならないとの決意を共有
し、
「労働は商品ではない」
「一部の貧困は全体の繁栄にとって危険である」とした、「フィ
ラデルフィア宣言」を採択しました。そして、「結社の自由及び団体交渉権」を中核的労働
基準と位置づけ、労働者が団結してその権利と労働条件を守ることで貧困や格差など戦争
につながりかねない問題を解消し、平和を実現していこうと現在まで活動しています。この
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原点を考えれば、労働組合はメンバーシップのみを代表する組織であってはならないこと
がよくわかります。すべての労働者を包摂し、その雇用と生活を守り、格差や貧困を解消し、
社会正義を追及する、まさに「人間の安全保障」の担い手であるといっても過言ではなく、
だからこそ、団結する権利が保証されているのです。
そしてもう一つ、労働組合が求める「平和」とは、武力を背景とするものではなく、対話
や相互理解によって実現していくものであることも再認識する必要があります。世界情勢
が混沌としている時代だからこそ、労働組合の役割は大きいものがあり、働くものが手を携
えてその役割を果たしていくことが今求められています。
戦争を知らないわれわれにとって、平和の希求と、平和運動の継続がいかに大切か。と、
同時に、なぜ労働組合が平和行動に取り組むのかという原点に立ち戻り、現役世代のわれわ
れが、しっかりと次の世代に継承していかねばなりません。
そんな中、つい先日安全保障法案が衆議院を通過しました。独善的な議会運営と、国民へ
の説明を尽くし理解を得ぬまま強行採決に及んだ安倍政権の愚行には、労働組合員という
立場を超え、立憲民主主義国家の一国民として、怒りと反対の声を上げねばなりません。
しかしながら、昨年末の衆議院選挙も含め現政権に信任を与えたのも、紛れもなく我々日
本国民です。議会で過半数をとり与党となった政権党が、多数をもって審議を進める。これ
も憲法によって規定された民主主義の原則です。
この成熟社会の中では、私たちの働き方・暮らし方、さらには生き方にまで、政策決定プ
ロセスである政治が直結しており、働く者の暮らしを守るための政策や法律を実現しよう
とすれば、政治に無関心というわけにはいきません。
と、するならば来年の夏にわれわれが取るべき行動は明確ではないでしょうか。多くは申
し上げません。労働法制の改悪を阻止し、安保法制の暴挙を許さず、社会の課題を他人事で
はなく自らの問題として共有し、その積み重ねによって大きな運動のうねりを作り上げて
いく、そうした運動のダイナミズムを生み出していくために、引き続きすべての構成組織・
各部会・本部が更なる一体感を醸成しながら力強い活動を展開していこうではありません
か。共にがんばりましょう。
ありがとうございました。
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