アルク英語教育実態レポート(Vol.3)

アルク
英語教育実態レポート
Vol. 3
-日本人の仕事現場における英語使用実態調査-
2015 年3月
アルク教育総合研究所
0
はじめに
(株)アルクは 1969 年の創業以来、月刊誌『ENGLISH JOURNAL』、通信教育講座「1000 時間ヒアリングマラソン」
、
書籍「キクタン」シリーズなど様々な英語学習教材を開発してきました。近年は英語スピーキング能力測定試験「TSST
(Telephone Standard Speaking Test)
」、
「英語学習アドバイザー資格制度(English Study Advisor’s Certificate: ESAC)」
を独自に開発・運用し、学習成果の検証や継続的学習支援のサービスも提供するようになりました。
私たちは、語学学習者に成果をもたらす有益な方法を常に追求したいと考えています。アルク教育総合研究所は、学習
行動を成果に結びつきやすくするために、教材・学習法の研究、学習者個人・企業・教育機関のニーズ調査等を随時行い、
調査結果を公表しています。
2014 年秋、当研究所は日本人の「仕事現場における英語使用実態」に関わる調査を行いました。実態を一層明確に捉え
るため、世間一般の人が「仕事で英語を使っている人」に抱く「イメージ」も調査しました。世間のイメージと実態のギ
ャップはどこにあるのか、仕事で英語を使っている人たちとはどんな人たちなのか。ここに調査結果の概要を発表いたし
ます。
弊社が調査・公表していくレポートが英語教育関連各位の参考になれば幸いです。
(本調査は、小泉利恵・順天堂大学准教授にアドバイスをいただき、
(株)マクロミルの協力を得て実施しました)
1
◆本レポートの要点◆
1. 英語使用者に対する一般のイメージと実態には大きな乖離
仕事で英語を使っている人で「海外勤務・駐在経験がある」のは 10%強にとどまっているのが分かった。一方、一般的に
は「海外勤務・駐在経験がある」のは3割以上とイメージされていた。しかし、その実態は 10%超にとどまっており、業
務で英語を使っている人の約6割が「日本の中だけで英語学習」してきたと回答した。また、英語使用者の「英語でほと
んど誤りなくコミュニケーションができる」割合についても、実態は一般イメージより低いことが判明した。
2.仕事をしながら英語学習を継続
仕事で英語を使っている人の9割近くが、学習の頻度や時間はまちまちでも英語学習を続けているのが分かった。仕事現
場で「英語を話す・書く」を実行している人の内の約 36%が TOEICⓇテスト 600 点未満であった。英語使用者は必ずし
も英語試験の高得点者ではなく、一定の不自由さを抱えながら仕事現場で英語を使っている実態が浮き彫りとなった。
3.英語を使っているのは内勤系の人
仕事で英語を使っている人の職種には、
「技術」
「企画」
「総務」など「内勤系」が多く、一般的にイメージされがちな「海
外営業・事業」はわずかであった。
4.ノンネイティブスピーカー同士で英語を使う
日本人が英語を使用する仕事相手は、英語の「ネイティブスピーカー」と「ノンネイティブスピーカー」でその構成比に
大差ないことが分かった。仕事で英語を使っている人は、TOEICⓇスコアのどのレンジの人も、英語で「メールを書く」
「電話で話す」を実行している割合が非常に高いのが実態である。
◆目次◆
はじめに
1
本レポートの要点
2
調査目的、調査対象
3
仕事で英語を使う人の実態
1.
学習経験
6
2.
英語を使って何ができるのか
8
3.
学習時間
10
4.
職種
12
5.
業種
14
6.
英語の使用場面
16
7.
英語を使う仕事相手
18
21
まとめ・今後の課題
2
調査目的
日本の多種多様な企業が生き残りをかけて海外に進出し、海外売上比率を上げようとしている。訪日外国人の増加を受
けてビジネス拡大を目指す動きも活発になってきた。それに伴い国際共通語としての英語を「使えること」の重要性が一
層高まっている。英語教育に関して文部科学省は「英語を使ってできること」を能力レベルごとに記述した一覧表を作り、
能力指標としてあるいは到達目標の管理のために、教育現場に取り入れる可能性を探っている。
しかしながら、実際に仕事現場で「英語を使っている人」とは具体的にどのような語学能力の人たちなのか、仕事現場
では英語をどう使っているのか、その実態ははっきりと見えていないのが実状ではないだろうか。そこで、アルク教育総
合研究所は下記の目的でアンケート調査を実施した。
①
「英語を使って仕事をしている日本人」の実態を示し、世間のイメージとのギャップを明らかにする。
②
日本人にとって有用な【仕事の英語 CAN-DO List】
(CDL:英語を使って何ができるのかをレベルごと、スキルごと
に一覧表の形で記述したもの)を開発し、企業や教育機関で便利に使える「英語を使ってできること」の能力指標の
ひとつのモデルを提示する。
本レポートでは主に①に関わる調査結果の概要を提示する。
調査対象
■調査対象① 仕事で英語を使っている日本人(実態グループ)
以下の条件を満たす 2754 人をまず抽出し、この母集団から回答者 825 人を選んだ。
1.
有職者(パート、アルバイトを除く)
2.
年齢 20~59 歳
3.
過去1年以内に仕事で英語を「話す」
「書く」形で使用した人
4.
2年以内に取得した TOEICⓇスコアを申告できる人
5.
インターネット調査に回答可能な人
(一財)国際ビジネスコミュニケーション協会が TOEICⓇテストのスコアレンジによってレベル A~E(A: 860~990
点、B: 730~855 点、C: 470~725 点、D: 220~465 点、E: 10~215 点)に分けているのを参考に、各グループともほぼ
同じスコア幅になるように区切り、以下の5グループに分けて調査した。
①
860 点以上(レベル A)
②
730-855 点(レベル B)
③
600-725 点(レベル C)
3
④
470-595 点(レベル C)
⑤
465 点以下(レベル D、E)
各グループから同列に情報収集するために構成比 20%に当たる 165 人を1グループに割り当てた。しかし、
「実態」の
姿を「一般イメージ」と対照させるためには、抽出したサンプルの構成比を、母集団の構成比に補正(ウェイトバック)
する必要がある。本レポートでは下記のようにウェイトバック値を求め、サンプル数を補正した。
1.
平成 22 年度国勢調査から「就業者数」を抽出し、男女比、年代別構成比を算出
2.
825 人を抽出するスクリーニング調査結果を1の構成比に補正し TOEICⓇテストのスコア分布を算出
3.
スコアの分布に合わせて本調査の回答者構成比を補正
結果として下記のような分布になった。仕事で英語を使っている人はどのスコア
レンジにもいるが 35.9%は 600 点未満という結果になった。
割付名
(N=825)
母集団
構成比
調査サンプル数
構成比
ウェイト
バック値
ウェイトバック前
サンプル数
ウェイトバック後
サンプル数
1
~465点
14.77
20.0
0.74
165
122
2
470~595点
21.09
20.0
1.05
165
174
3
600~725点
25.48
20.0
1.27
165
210
4
730~855点
23.67
20.0
1.18
165
195
5
860点以上
14.99
20.0
0.75
165
124
100.00
100.0
1.0
825
825
合計
860点以
上
14.99%
730~855
点
23.67%
~465点
14.77%
470~595
点
21.09%
600~725
点
25.48%
(平均)
なお、ウェイトバック補正の際に小数点以下を四捨五入しているため、以後の図表では合計 100.0%にならない場合がある。
■グループ内のスコア分布
5グループに分ける際、回答者に 45 点刻みで TOEICⓇスコアを聞いた結果、スコア分布は下表のようになった。465
点以下グループでは 64.8%が 400 点未満であった。
全体
~465点
470~595点
600~725点
730~855点
860点以上
825
122
174
210
195
124
~395点 400~
450~
500~
550~
600~
650~
700~
750~
800~
850~
900~
950~
445点
495点
545点
595点
645点
695点
745点
795点
845点
895点
945点
990点
9.6
3.0
9.8
8.8
4.6
9.1
11.4
9.7
8.8
9.0
6.7
5.5
3.9
64.8
20.6
14.5
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
36.4
41.8
21.8
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
35.8
44.8
19.4
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
20.0
37.0
38.2
4.8
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
37.0
37.0
26.1
(人数) (横%)
■男女比率、年齢分布
性別は回答者抽出の条件に加えなかったが、男性が 73.2%となり、年齢が 30 代、40 代で 66%を占める結果となった。
年齢から推察するに組織の中の「中堅クラス」に英語を使っている人が多いようだ。
55才~
59才
6.5%
性別
(N=825)
12才
60才以
上 12才未満 ~19
才
0.0%
0.0%
0.0%
20才~24才
3.8%
25才~29才
9.1%
年齢
(N=825)
50才~54才
14.6%
女性
26.8%
45才~49才
16.7%
男性
73.2%
40才~44才
17.2%
4
30才~34才
16.1%
35才~39才
16.0%
■調査対象② 「世間一般のイメージ」に関する回答者(一般グループ)
下記条件に合う 416 人を抽出した。
1.
日本の人口構成の年齢比・男女比に応じて抽出した年齢 20~59 歳の男女
2.
有職者(パート、アルバイトを除く)
3.
インターネット調査に回答可能な人
回答者抽出の条件にはしなかったが、この 416 人の英語に関しての属性は以下のとおり。TOEICⓇテスト未受験者また
はスコア不明者が 72.1%、
「聞く」
「読む」も含め英語を使っていない人が全体の 85%以上を占めている。
あなたの過去において最も点数が高かったT OEICの点数はどちらになりま すか。
(N=416)
72.1
受験したことがない/点数がわからない
5.8
3.1
2.9
2.9
2.4
2.2
1.9
1.7
1.7
1.0
1.0
0.7
0.7
~395点
500~545点
650~695点
600~645点
450~495点
550~595点
400~445点
750~795点
700~745点
900~945点
800~845点
950~990点
850~895点
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
直近1年間で、プライベート、 ビジネスにおいて、 どのくらい英語を使うことがありましたか。
※英語を「話す」「読む」「書く」「聴く」のすべてを含めてお考えください。
まったく使っていない
あまり使っていない
プライベート
ときどき使っている
頻繁に使っている
71.4
ビジネス
16.6
68.0
0%
10%
20%
30%
15.9
40%
50%
5
60%
70%
10.6
11.8
80%
90%
1.4
4.3
100%
調査結果
以下で、仕事で英語を使っている人の実態と、一般の人が抱いている「仕事で英語を使う人」のイメージを対照させて
見ていきたい。以後、仕事で英語を使う人を「実態グループ」
、世間のイメージを問うた人たちを「一般グループ」と呼ぶ。
■1■学習経験
⇒実態グループは、一般に思われるより海外経験が少なく、国内でのみ学習した人が 57.6%。
どのように英語能力を身に付けたかについて、以下のように質問した。
・一般グループ:
「英語を使って仕事をしている人」と聞いて、あなたは一般的にどのような人を思い浮かべますか。あてはまるものをすべてお答
えください。※英語を「話す」「読む」
「書く」「聴く」のすべてを含めてお考えください。
・実態グループ:
あなたは、これまでに、どのような学習経験を経て英語力を身に付けましたか。あてはまるものをすべてお選びください。
実態グループが一般グループを上回っているのは「主に日本国内で英語を学習した」のみ、他は全て「一般グループ」
の方が上回っている。英語を使って仕事をしている人は、海外経験を通じて英語を身に付けたのだろうという一般的イメ
ージとは異なり、日本国内で地道に努力を重ねてきた学習者でもあるようだ。
1.
【主に日本国内で学習した】のは実態グループで 57.6%だが、一般グループは 39.4%。
2.
【英語圏で1年以上海外留学した経験がある】のは実態グループで 13.7%だが、一般グループは 25.5%。
3.
【英語圏で海外勤務・駐在した経験がある】のは実態グループで 13.7%だが、一般グループは 32.0%。
学習経験
13.7
(英語圏で)1年以上海外留学した経験がある
3.5
(英語圏からの)帰国子女である
22.8
13.7
(英語圏で)海外勤務・駐在した経験がある
32.0
3.2
5.8
(英語圏以外で)1年以上海外留学した経験がある
1.4
(英語圏以外からの)帰国子女である
4.6
実態
7.6
9.6
(英語圏以外で)海外勤務・駐在した経験がある
3.5
インターナショナルスクールに通ったことがある
8.5
その他
0.2
一般
11.5
勤務先で英語が公用語だったことがある
該当なし・思い浮かばない
25.5
17.1
4.4
0
13.9
上記のような経験はなく、主に日本国内で英語を学習した
57.6
39.4
0%
10%
6
20%
30%
40%
50%
60%
70%
TOEICⓇスコア別「学習経験」
実態グループの調査結果を TOEICⓇテストのスコアレンジごとに見ると以下のようになる(人数以外の数値は%)。該
当するものを全て選んだ結果である。スコアが高いほど、国内のみで学習した割合が減り、海外経験の割合が高くなって
いる。下のグラフから以下のような特徴が見える。
1.
【主に日本国内で英語を学習した】は全体で 57.6%だが、465 点以下グループの 84.2%から 860 点以上グループの
32.1%へと、スコアが高い人ほど割合が低くなる。
2.
【英語圏で1年以上海外留学した経験がある】は 470~595 点グループで 4.2%、860 点以上グループで 38.2%。
3.
【英語圏で海外勤務・駐在した経験がある】は 470~595 点グループで 8.5%、860 点以上グループで 21.8%。
TOEICスコア別「学習経験」
1.2
4.2
8.5
(英語圏で)1年以上海外留学した経験がある
(英語圏からの)帰国子女である
0.0
1.2
2.4
4.2
2.4
(英語圏で)海外勤務・駐在した経験がある
(英語圏以外で)1年以上海外留学した経験がある
(英語圏以外からの)帰国子女である
20.0
38.2
10.9
8.5
~465点
14.5
19.4
21.8
0.0
1.2
4.2
4.8
4.8
0.6
0.6
1.2
2.4
1.8
470~595点
600~725点
730~855点
4.2
4.8
7.3
10.9
10.3
2.4
2.4
3.6
4.8
3.6
4.2
3.6
10.3
8.5
16.4
2.4
6.1
4.2
4.2
4.2
(英語圏以外で)海外勤務・駐在した経験がある
インターナショナルスクールに通ったことがある
勤務先で英語が公用語だったことがある
その他
860点以上
上記のような経験はなく、主に日本国内で英語を学習した
32.1
0%
825
122
174
210
195
124
(人数)
13.7
1.2
4.2
8.5
20.0
38.2
3.5
0.0
1.2
2.4
4.2
10.9
13.7
2.4
8.5
14.5
19.4
21.8
84.2
10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90%
(英語圏で)1 (英語圏から (英語圏で) (英語圏以外 (英語圏以外 (英語圏以外
年以上海外 の)帰国子女 海外勤務・駐 で)1年以上 からの)帰国 で)海外勤
留学した経験 である
在した経験が 海外留学した 子女である
務・駐在した
がある
ある
経験がある
経験がある
全体
~465点
470~595点
600~725点
730~855点
860点以上
73.3
53.3
47.9
3.2
0.0
1.2
4.2
4.8
4.8
1.4
0.6
0.6
1.2
2.4
1.8
(横%)
7
7.6
4.2
4.8
7.3
10.9
10.3
インターナ
ショナルス
クールに通っ
たことがある
勤務先で英
語が公用語
だったことが
ある
3.5
2.4
2.4
3.6
4.8
3.6
8.5
4.2
3.6
10.3
8.5
16.4
その他
上記のような
経験はなく、
主に日本国
内で英語を学
習した
4.4
2.4
6.1
4.2
4.2
4.2
57.6
84.2
73.3
53.3
47.9
32.1
■2■英語を使って何ができるのか
⇒仕事で英語をさほど不自由なく使いこなしているのは実態グループの一部の人のみである。
「英語を使ってできること」について、以下のように質問した。回答は「○○ができる」という記述項目からの多肢択
一方式である。
・一般グループ:
「英語を使って仕事をしている人」と聞いて、あなたは一般的に最低どのくらいの英語レベルの人をイメージしますか。※複数あ
てはまる場合は、最も近いと思うものをお選びください。
・実態グループ:
仕事で英語を使っていた当時の英語レベルはどちらになりますか。※複数あてはまる場合は、直近のことについて最も近いものを
お選びください。
一般グループと実態グループで大きく異なっているのは以下の 2 点である。
1.
【文法・構造上の誤りがほとんどなく、効果的なコミュニケーションが可能】は実態グループ 6.9%、一般グループは
26.7%。
2.
【挨拶などの簡単な日常会話が可能】は実態グループ 21.5%、一般グループは 7.0%。
グラフから見える「仕事で英語を使う人」は、一般イメージに反して、
「効果的」または「適切」に英語を使いこなして
いるのは一部(約 23%)にとどまっている。一定の不自由さを抱えながらも英語を使っている、ということが実態である。
英語を使ってできること
断片的に単語を理解することはできるものの、
英語でのコミュニケーションをとることは難しい
15.7
13.2
21.5
挨拶などの簡単な日常会話が可能
7.0
挨拶のみならず、日常生活のニーズに対応す
ることが可能
15.7
11.5
実態
日常生活のニーズのみならず、仕事でも限ら
れた範囲ではコミュニケーションができる
一般
24.2
25.2
文法・構造上の誤りは見られるものの、どんな
状況でも適切なコミュニケーションが可能
16.0
16.3
文法・文構造上の誤りがほとんどなく、効果的
なコミュニケーションが可能
6.9
26.7
0%
10%
8
20%
30%
TOEICⓇスコア別「英語を使ってできること」
「英語を使ってできること」に関して TOEICⓇスコア別に実態グループ 825 人の自己評価を見てみると下の表のように
なる(人数以外の数値は%)。スコアが低い層も英語を使用しているが、【日常生活のニーズのみならず、仕事でも限られ
た範囲ではコミュニケーションができる】というのは 600~725 点、730~855 点のグループにおいて比率が高い。
下のグラフからは以下のような特徴が見える。
1.
グループのスコアレンジが上がっていくにつれ、高度な内容の「英語を使ってできること」の比率が上がっている。
2.
【文法・文構造上の誤りは見られるものの、どんな状況でも適切なコミュニケーションが可能】との回答が約 30%
かそれ以上となるのは 730 点以上のグループである。
3.
【日常生活のニーズのみならず、仕事でも限られた範囲でコミュニケーションができる】は「465 点以下」で 10.9%
いるが、割合が最多なのは「730~855 点」の 35.2%、次いで「600~725 点」の 32.1%である。
4.
「465 点以下」では【断片的に単語を理解することはできるものの、英語でのコミュニケーションをとることは難し
い】と自己評価しているのは 51.5%、
【挨拶など簡単な日常会話が可能】は 29.1%である。このグループも仕事で英
語を使っていることを考え合わせると、仕事で英語を使って「話す」「書く」場合は、よく知っている自分の仕事分
野で頻繁に出会うある程度定型的な英語を使っているのかもしれない。
TOEICスコア別「英語を使ってできること」
860点以上 1.83.04.2
18.2
37.0
断片的に単語を理解することはできるものの、
英語でのコミュニケーションをとることは難しい
35.8
挨拶などの簡単な日常会話が可能
730~855点
6.1
11.5
11.5
35.2
29.7
6.1
挨拶のみならず、日常生活のニーズに対応す
ることが可能
600~725点
8.5
470~595点
22.4
25.5
20.0
32.1
39.4
~465点
22.4
51.5
0%
10%
20%
29.1
30%
40%
10.9 0.6
50%
60%
15.8
7.3
70%
80%
2.4
0.0
10.9 1.2
0.0
90%
日常生活のニーズのみならず、仕事でも限ら
れた範囲ではコミュニケーションができる
文法・構造上の誤りは見られるものの、どんな
状況でも適切なコミュニケーションが可能
文法・文構造上の誤りがほとんどなく、効果的
なコミュニケーションが可能
100%
断片的に単語を 挨拶などの簡単 挨拶のみなら
日常生活のニー
理解することは な日常会話が可 ず、日常生活の ズのみならず、
できるものの、英 能
ニーズに対応す 仕事でも限られ
語でのコミュニ
ることが可能
た範囲ではコミュ
ケーションをとる
ニケーションがで
ことは難しい
きる
全体
~465点
470~595点
600~725点
730~855点
860点以上
825
122
174
210
195
124
(人数)
15.7
51.5
20.0
8.5
6.1
1.8
21.5
29.1
39.4
22.4
11.5
3.0
15.7
7.3
22.4
25.5
11.5
4.2
(横%)
9
24.2
10.9
15.8
32.1
35.2
18.2
文法・構造上の
誤りは見られるも
のの、どんな状
況でも適切なコ
ミュニケーション
が可能
16.0
1.2
2.4
10.9
29.7
37.0
文法・文構造上
の誤りがほとん
どなく、効果的な
コミュニケーショ
ンが可能
6.9
0.0
0.0
0.6
6.1
35.8
■3■学習時間
か いり
⇒仕事で英語を使っている人の学習頻度・時間に関しては、一般イメージと実態に大きな乖離はない。
実態グループの 87.2%の人が仕事外の時間で英語学習を続けている。
英語の学習頻度と時間について、以下のように質問した。回答は多肢択一方式である。
・一般グループ:
・「英語を使って仕事をしている人」は、普段、どのくらいの頻度で仕事以外で英語を学習していると思いますか。
・「英語を使って仕事をしている人」は、普段、どのくらいの時間、仕事以外で英語を学習していると思いますか。
・実態グループ:
・仕事で英語を使っていた当時、どのくらいの頻度で仕事以外で英語を学習していましたか。
・仕事で英語を使っていた当時、仕事以外で英語の学習時間はどれくらいでしたか。
グラフからは以下のことが言える。
1.
学習頻度に関し、
【ほぼ毎日】
【週に数回】
【週1回程度】をまとめると、実態グループは 66.4%、一般グループのイ
メージは 66.8%でほぼ同じ。
2.
学習時間に関し、
【週1時間程度】
【週2時間程度】
【週 4 時間程度】をまとめると、実態グループは 55.2%、一般グ
学習頻度
12.8
英語は学習していない
月1回以下
5.0
月に1回程度
7.4
6.8
2.2
2週間に1回程度
23.3
6.6
2.6
実態
週1回程度
12.7
一般
18.9
28.1
27.4
週に数回
19.4
ほぼ毎日
0%
5%
10%
15%
20%
26.7
25%
30%
学習時間
ほとんど学習していない
25.8
18.2
週1時間程度
14.4
18.4
22.8
22.9
週2時間程度
14.0
14.4
週4時間程度
7.8
8.5
週6時間程度
3.4
週8時間程度
4.2
週10時間程度
週20時間程度
1.5
週15時間程度
1.4
1.6
0.7
それ以上
0%
実態
7.2
一般
5.6
3.1
4.1
5%
10%
15%
10
20%
25%
30%
ループは 51.7%でほぼ同じといえる。
3.
実態グループの【英語は学習していない】は 12.8%。言いかえれば、英語を使って仕事をしている人の 87.2%は英
語を学習し続けている、ということになる。
TOEICⓇスコア別「学習頻度・時間」
TOEICⓇスコアグループ別に英語学習の様子を見てみる。スコアに関わらず【週に数回】
【週に1(2)時間程度】学習
する人が多い。
【ほぼ毎日】学習するというのが 860 点以上グループで 39.4%と最多になっているのが特徴的である。ス
コアが高い人ほど学習頻度が高く学習時間も長くなっている傾向がみえる。
グラフから読み取れる特徴は、以下のとおりである。
1.
【ほぼ毎日】学習は、
「860 点以上」で 39.4%、
「600~725 点」で 15.8%、
「465 点以下」で 9.7%とスコアが下がる
に従い比率も下がっている。
2.
【週1回程度】学習は、
「860 点以上」で 9.7%、
「600~725 点」で 21.2%、
「465 点以下」で 23.0%。855 点以下で
はグループによる差が小さい。
3.
スコアグループごとに割合が最多の「学習頻度」を見ると、「465 点以下」は【週1回程度】で 23.0%、「470~595
点」
「600~725 点」
「730~855 点」は【週に数回】
、
「860 点以上」は【ほぼ毎日】となっている。860 点以上グループ
は英語のニュースなどに毎日触れている、ということかもしれない。
4.
最も割合の高い「学習時間」は【ほとんど(仕事以外で)学習していなかった】だが、600~725 点グループのみが例
外である。全体の 25.5%という最高の構成比率を占めるこのグループは【週2時間程度】が最多の 26.5%となって
いる。
TOEICスコア別「学習時間」
860点以上 2.3 6.8 4.5 7.5 4.5 6.8
9.8
18.8
14.3
週20時間以上
週20時間程度
24.8
週15時間程度
730~855点 0.0
0.7
2.1 7.0 3.5 9.8
16.1
600~725点 1.3
1.3
0.7
3.34.6
18.5
18.9
19.6
22.4
週10時間程度
週8時間程度
9.9
26.5
15.2
18.5
週6時間程度
週4時間程度
470~595点 0.0
0.7
2.0
0.75.9
13.1
全体
~465点
470~595点
600~725点
730~855点
860点以上
719
97
161
192
169
100
(人数)
10%
21.6
29.4
週2時間程度
週1時間程度
~465点 0.0
1.54.6 4.6 6.9
0%
26.8
19.8
20%
30%
21.4
40%
50%
41.2
60%
70%
80%
90%
100%
ほとんど(仕事以外で)学
習していなかった
ほとんど
(仕事以
週1時間 週2時間 週4時間 週6時間 週8時間 週10時間 週15時間 週20時間 週20時間
外で)学
程度
程度
程度
程度
程度
程度
程度
程度
以上
習してい
なかった
25.8
18.4
22.8
14.0
7.8
3.4
4.2
1.4
1.5
0.7
41.2
21.4
19.8
6.9
4.6
4.6
1.5
0.0
0.0
0.0
29.4
21.6
26.8
13.1
5.9
0.7
2.0
0.7
0.0
0.0
18.5
15.2
26.5
18.5
9.9
4.6
3.3
0.7
1.3
1.3
22.4
19.6
18.9
16.1
9.8
3.5
7.0
2.1
0.7
0.0
24.8
14.3
18.8
9.8
6.8
4.5
7.5
4.5
6.8
2.3
横%
11
TOEICスコア別「学習頻度」
ほぼ毎日
860点以上
39.4
20.0
9.7 1.23.6 6.7
19.4
週に数回
730~855点
23.6
600~725点
27.9
15.8
18.8
35.8
5.5 6.1 4.8
21.2
13.3
週1回程度
2週間に1回程度
6.7 6.7 5.5 8.5
月に1回程度
470~595点
11.5
~465点
9.7
0%
29.7
21.2
10%
23.0
20%
30%
ほぼ毎日
全体
~465点
470~595点
600~725点
730~855点
860点以上
20.0
825
122
174
210
195
124
(人数)
40%
6.1 7.9
50%
週に数回
19.4
9.7
11.5
15.8
23.6
39.4
12.1
28.1
21.2
29.7
35.8
27.9
20.0
60%
9.1
11.5
70%
週1回程度
18.9
23.0
20.0
21.2
18.8
9.7
10.3
7.3
それ以下
英語は(仕事以外で)学習し
ていなかった(していない)
20.6
80%
90%
100%
2週間に1回 月に1回程
程度
度
6.6
6.1
12.1
6.7
5.5
1.2
英語は(仕
事以外で)
学習してい
なかった(し
ていない)
それ以下
6.8
7.9
9.1
6.7
6.1
3.6
7.4
11.5
10.3
5.5
4.8
6.7
12.8
20.6
7.3
8.5
13.3
19.4
横%
■4■職種
職種
⇒仕事で英語を使う職種は、
【企画】
【技術】
【総務】
【研究】など「内勤系」に多い。
技術職
20.1
3.1
企画・営業・マーケティング職
その他
英語を使って仕事をする人の「職種」について、
あなたが知っている「英語を使って仕事をしている
人」の職種をお選びください。
海外営業・事業
7.5
経理・財務
7.3
1.7
2.2
経営(管理企画を含む)
2.9
法務・法律関係
仕事で英語を使っていた当時の職種はどちらになり
0.0
医療
1.2
0.0
広報
0.9
0.2
翻訳職
0.7
てお選びください。
看護師
0.4
0.2
弁護士・司法書士・公認会計士
0.3
0.5
【通訳職】【翻訳職】であるが、実態は【技術職】
実態
一般
5.8
23.8
0.0
該当のものがない
17.7
0.0
0.7
著述業・著作業・ライター
0%
12
5.0
0.1
1.7
医師
【企画・営業・マーケティング】
【総務・人事】
【研
5.5
0.2
通訳職
描く「仕事で英語を使う人」は【海外営業・事業】
24.3
2.6
ますか。※複数あてはまる場合は、直近の職種につい
右グラフから見て取れるように、一般の人が思い
8.8
4.3
システム関連
・実態グループ:
10.2
1.7
研究職
・一般グループ:
12.2
2.2
総務・人事
以下のように質問した。回答は多肢択一方式である。
16.9
7.0
10%
20%
30%
究職】
【経理・財務】などいわゆる内勤系の職種で英語を使っている人が多いのが分かった。
【翻訳職】
【通訳職】を選ぶ人
が一般グループに目立つのは、
「知っている」人を自分の知人ではなく一般論として回答したためと思われる。一般グルー
プで【該当のものがない】と回答した人は具体的に「教師、パイロット、秘書、管制官」などの職種を挙げていた。
1.
実態グループの【海外営業・事業】は 7.5%、一般グループは 24.3%。
2.
実態グループの【技術職】は 20.1%、一般グループは 3.1%。
3.
実態グループの【企画・営業・マーケティング職】は 16.9%、一般グループは 7.0%。
4.
実態グループの【総務・人事】は 10.2%、一般グループは 1.7%。
TOEICⓇスコア別「職種」の分布
仕事で英語を使っている 825 人の内、30 人以上が該当した「職種」は下のグラフで取り上げた8職種であった(技術職、
企画・営業・マーケティング職、総務・人事、研究職、海外営業・事業、経理・財務、システム関連、経営(管理企画を
含む)
)
。それ以外の職種を「その他」として図表にまとめたのが下記である。
職種内での TOEICⓇスコア分布をみると、
【技術職】は相対的に低スコア層の比率が高く、
【海外営業・事業】
【経営(管
理企画を含む)
】では高スコア層の比率が高くなっているのがわかる。
1.
【技術職】
:TOEICⓇテスト全体のスコア分布を反映し高スコア者ほど少数になるピラミッド型。
2.
【海外営業・事業】
【経営(管理企画を含む)
】
【経理・財務】
:高スコア者が多い逆ピラミッド型。
3.
【システム関連】
【研究職】
:どのスコア層もほぼ均等の分布になっている。
4.
【企画・営業・マーケティング職】
【総務・人事】
:相対的に高得点者の比率が高い。
TOEICスコア別「職種」
860点以上
6.1
730~855点
14.5
8.5
10.9
600~725点
9.1
19.4
17.0
13.3
12.1
21.2
9.1
6.1
10.3
技術職
企画・営業・マーケ
ティング職
総務・人事
23.0
9.1
9.7
8.5
5.5 6.7
14.5
9.1
5.5 7.3 5.5 3.0
18.2
研究職
海外営業・事業
17.0
経理・財務
470~595点
29.7
~465点
14.5
40.6
0%
10%
20%
技術職
全体
~465点
470~595
600~725
730~855
860点以上
825
122
174
210
195
124
(人数)
20.1
40.6
29.7
17.0
10.9
6.1
30%
6.7
9.1
6.1 6.1 6.7 2.4
18.8
システム関連
10.9
6.7
7.3 3.6 5.5 3.64.2
17.6
経営(管理企画を含
む)
その他
40%
50%
企画・営
業・マー 総務・人
研究職
ケティン 事
グ職
16.9
10.9
14.5
21.2
19.4
14.5
10.2
6.7
6.7
14.5
12.1
8.5
60%
70%
80%
90%
100%
経営(管
海外営 経理・財 システム
理企画 その他
業・事業 務
関連
を含む)
8.8
7.3
9.1
9.1
9.1
9.1
7.5
3.6
6.1
5.5
9.7
13.3
横%
13
7.3
5.5
6.1
7.3
8.5
9.1
5.5
3.6
6.7
5.5
5.5
6.1
5.0
4.2
2.4
3.0
6.7
10.3
18.6
17.6
18.8
17.0
18.2
23.0
■5■業種
⇒一般イメージと実態に大きなギャップがあるのは【製造業】
【翻訳・通訳】
【商社・卸業】である。TOEIC
Ⓡ
スコア別の「業種」分布を見ると【製造業】
【金融業】などでその「型」はかなり異なっている。
英語を使って仕事をする人の「業種」について、以下のように質問した。回答は多肢択一方式である。
・一般グループ:
あなたが知っている「英語を使って仕事をしている人」の業種をお選びください。
・実態グループ:
仕事で英語を使っていた当時の業種はどちらになりますか。※複数あてはまる場合は、直近の業種についてお選びください。
一般イメージと実態にギャップが大きい業種は【製造業】
【商社・卸売業】
【翻訳・通訳】であった。
【翻訳・通訳】を選
ぶ人が一般グループに目立つのは、「知っている」人を自分の知人ではなく一般論として回答したためと思われる。【その
他】と回答した一般グループの人は具体的に「貿易、コールセンター、公務員」などの職種を挙げていた。
グラフから見える特徴は以下の2点である。
1.
実態グループの【製造業】は 42.4%、一般グループは 10.2%。
2.
実態グループの【商社・卸売業】は 5.4%、一般グループは 17.8%。
業種
製造業
6.2
8.0
9.3
5.9
IT関係
教育
2.0
商社・卸売業
5.4
運輸
5.3
1.1
4.8
3.4
3.6
1.4
3.2
金融業
建設業
その他
医療機関
団体・組合
不動産業
通信
翻訳・通訳
農林水産業
宗教法人
出版・マスコミ
デザイン 製版・印刷業
17.8
9.9
2.6
1.7
2.2
2.3
1.9
1.1
1.9
0.3
1.2
0.3
0.7
小売業
食品・飲料
42.4
10.2
10.0
サービス業
実態
一般
30.3
0.6
0.0
0.3
0.3
0.1
0.0
0.0
2.0
0.0
0.3
0%
10%
20%
14
30%
40%
50%
TOEICⓇスコア別「業種」の分布
仕事で英語を使っている 825 人の内、30 人以上が該当した「業種」は下のグラフで取り上げた8種であった(製造業、
サービス業、IT 関係、教育、商社・卸売業、運輸、金融業、建設業)。それ以外を「その他」としてまとめたのが下の図
表である。
TOEICⓇスコア別に業種の分布をみると、特徴があるのは【製造業】
【金融業】
【商社・卸売業】
【教育】である。その他
の業種では特定のスコア層に大きな偏りは見られない。
1.
【製造業】
:TOEICⓇテスト全体のスコア分布を反映し低スコアグループの比率が高いピラミッド型分布になってい
る。
2.
【金融業】
【商社・卸売業】
【教育】
:高スコアグループの比率が高い逆ピラミッド型になっている。
TOEICスコア別「業種」
860点以上
30.3
7.3
9.7
10.3
7.9
6.1
9.1 3.0
製造業
16.4
サービス業
730~855点
37.6
11.5
8.5
4.8 7.3 1.8 7.9 4.2
IT関係
16.4
教育
600~725点
37.6
12.1
9.7
6.7 4.2 6.1 3.63.0
商社・卸売業
17.0
運輸
470~595点
45.5
9.7
6.7 5.5 4.8 7.3 1.8 5.5
13.3
金融業
建設業
~465点
66.1
0%
全体
~465点
470~595点
600~725点
730~855点
860点以上
825
122
174
210
195
124
(人数)
10%
20%
30%
製造業
サービ
ス業
42.4
66.1
45.5
37.6
37.6
30.3
10.0
7.3
9.7
12.1
11.5
7.3
7.3 4.22.42.4 6.1 1.8
1.8 7.9
40%
IT関係
8.0
4.2
6.7
9.7
8.5
9.7
50%
教育
5.9
2.4
5.5
6.7
4.8
10.3
60%
70%
商社・卸
運輸
売業
5.4
2.4
4.8
4.2
7.3
7.9
横%
15
5.3
6.1
7.3
6.1
1.8
6.1
80%
90%
その他
100%
金融業 建設業 その他
4.8
1.8
1.8
3.6
7.9
9.1
3.6
1.8
5.5
3.0
4.2
3.0
14.6
7.9
13.3
17.0
16.4
16.4
■6■英語の使用場面
⇒仕事で英語を使うのが多い場面は【メール】と【電話】である。
「仕事で英語を使っている人」の英語使用場面について以下のように質問した。多肢複数回答である。
・一般グループ:
あなたが知っている「英語を使って仕事をしている人」は、どのような場面・シーンで英語を使っていますか。あてはまるものを
すべてお選びください。
・実態グループ:
あなたが、直近1年以内で、仕事で英語を使った(話す、書く)シーンをすべてお選びください。※英語を「話す」
「書く」に限定
してお答えください。
かいり
下のグラフから分かるように実態グループと一般グループで比較的大きな乖離があるのは【メールを書く】【交渉する】
【プレゼンを行う】である。一般グループが【交渉する】
【プレゼンを行う】の項目で実態グループを大きく上回っている
のは、
「人前で話す」ことが英語で仕事をするイメージと結びついているためと思われる。
一般グループが【その他】として挙げている英語の使用場面には、
「接客、学会での発表、文書翻訳、英語の書類を読む、
授業」などがあった。実態グループが挙げた【その他】の場面には「授業をする、工場案内をする、論文執筆」等が含ま
れていた。
1.
実態グループの【メールを書く】は 77.8%、一般グループは 53.0%。
2.
実態グループの【電話で話をする】は 61.2%、一般グループは 64.0%で大差ない。
3.
実態グループの【交渉する】は 33.3%、一般グループは 56.1%。
4.
実態グループの【プレゼンを行う】は 31.3%、一般グループは 43.1%。
英語の使用場面
メールを書く
77.8
53.0
61.2
64.0
電話で話をする
48.4
44.8
会議で発言する
33.3
交渉する
ビジネスレターを書く
31.7
26.9
プレゼンを行う
31.3
56.1
実態
43.1
一般
23.7
19.5
パーティーに出席する
22.5
26.6
企画書・報告書を書く
13.8
16.7
FAXで用件を書き送る
13.0
クレーム・トラブル処理を(口頭)で行う
20.7
5.4
2.5
その他
0%
10%
20%
30%
16
40%
50%
60%
70%
80%
90%
TOEICⓇスコア別「英語の使用場面」
実際の英語使用場面を TOEICⓇスコアグループごとに比較すると、下のグラフのようになる。スコアに関わりなく英語
を使っている場面(【メールを書く】)と、高スコア者ほど多く担当する場面(
【プレゼンを行う】等)とに分かれている、
という実態がみえる。図表から見える特徴は以下のとおりである。
1.
【メールを書く】はどのスコアレンジの人も高い割合で行っており、スコアレンジによる差は小さい。
2.
【会議で発言する】【電話で話をする】はどのスコアレンジの人も行っているが、スコアレンジによる差が大きい。
高スコアの人ほど行っている人の割合が高くなっている。
3.
【交渉する】【プレゼンを行う】【企画書・報告書を書く】【クレーム・トラブル処理】などの業務は、スコアレンジ
が高くなるに従って担当する割合が増えている。英語能力が高まるのに応じて行う業務の範囲が広がっているのがう
かがえる。
TOEICスコア別「英語の使用場面」
75.2
70.3
80.0
80.6
83.0
メールを書く
35.2
32.7
38.2
会議で発言する
23.0
23.6
26.7
交渉する
14.5
プレゼンを行う
22.4
ビジネスレターを書く
16.4
21.8
10.3
15.2
パーティーに出席する
6.1
7.9
クレーム・トラブル処理を口頭で行う
5.5
FAXで用件を書き送る
9.7
クレーム・トラブル処理を文書で行う
2.4
5.5
7.3
その他
4.2
6.7
4.8
4.8
6.1
0%
メールを
書く
全体
~465点
470~595点
600~725点
730~855点
860点以上
825
122
174
210
195
124
(人数)
77.8
75.2
70.3
80.0
80.6
83.0
10%
48.4
32.7
38.2
46.1
57.0
68.5
730~855点
68.5
53.9
38.2
50.9
31.5
34.5
41.8
26.1
15.2
17.6
19.4
11.5
20%
23.0
30%
電話で話 会議で発
プレゼン
交渉する
をする
言する
を行う
61.2
35.2
48.5
66.7
72.7
77.0
600~725点
42.4
46.7
30.3
12.1
14.5
57.0
72.7
77.0
860点以上
31.5
12.7
12.7
17.6
企画書・報告書を書く
66.7
46.1
42.4
29.1
24.8
470~595点
48.5
電話で話をする
~465点
33.3
23.0
23.6
26.7
42.4
53.9
40%
ビジネス
レターを
書く
31.3
14.5
22.4
29.1
42.4
46.7
横%
17
31.7
16.4
21.8
31.5
38.2
50.9
50%
60%
70%
80%
90%
クレーム・
クレーム・
パー
企画書・
FAXで用
トラブル
トラブル
ティーに 報告書を
件を書き
その他
処理を口
処理を文
出席する 書く
送る
頭で行う
書で行う
23.7
10.3
15.2
24.8
31.5
34.5
22.5
12.7
12.7
17.6
30.3
41.8
13.0
6.1
7.9
12.1
14.5
26.1
13.8
5.5
9.7
15.2
17.6
19.4
9.5
2.4
5.5
7.3
11.5
23.0
5.3
4.2
6.7
4.8
4.8
6.1
■7■英語を使う仕事相手
⇒日本人が英語を使って仕事をする相手として、ネイティブスピーカー、ノンネイティブスピーカーの
割合に大きな開きはない。英語を使って「何をするか」は英語能力に応じてその内容が変化している。
仕事で英語を使った 825 人に対してのみ以下の質問をした。業務内容ごとに仕事相手を「英語圏の人(ネイティブスピ
ーカー)/非英語圏の人(ノンネイティブスピーカー)/英語圏の人か非英語圏の人かわからない」から選んでもらった。
あなたは、直近1年以内で、英語で以下のお仕事を行ったとき、その相手はどのような方でしたか。頻繁に仕事をした相手を全て想定し
て、あてはまる方をすべてお選びください。
■話す
電話で話をする/会議で発言する/交渉する/プレゼンを行う/パーティーに出席する/クレーム・トラブル処理を口頭で行う
■書く
メールを書く/ビジネスレターを書く/企画書・報告書を書く/FAX で用件を書き送る/クレーム・トラブル処理を文書で行う
全体の大きな傾向としては、下のグラフから分かるように、英語を使う仕事相手としてネイティブスピーカーの方がや
や多いもののノンネイティブスピーカーが占める割合との間に極端な開きはないと言える。これは、英語を使って仕事を
進めている日本の経済活動の現実を反映しているものと思われる。
英語を使う仕事相手
メールを書く
75.5
63.0
電話で話をする
75.9
62.0
会議で発言する
交渉する
76.3
63.6
ビジネスレターを書く
77.7
62.1
プレゼンを行う
80.8
65.7
パーティーに出席する
66.3
企画書・報告書を書く
66.1
FAXで用件を書き送る
83.6
82.9
クレーム・トラブル処理を口頭で行う
70.6
75.1
78.8
61.8
66.5
67.4
その他
0%
10%
20%
30%
英語を使って行うこと
メールを書く
電話で話をする
会議で発言する
交渉する
ビジネスレターを書く
プレゼンを行う
パーティーに出席する
企画書・報告書を書く
FAXで用件を書き送る
クレーム・トラブル処理を口頭で行う
クレーム・トラブル処理を文書で行う
その他
40%
50%
60%
70%
80%
90%
英語圏の人 非英語圏の人 英語圏の人か
全体 (ネイティブス (ノンネイティ 非英語圏の人
ピーカー)
ブスピーカー) かわからない
642
505
399
275
262
258
195
185
114
107
79
44
(人数)
18
75.5
75.9
76.0
76.3
77.7
80.8
83.6
74.9
82.9
75.1
78.8
66.5
(%)
非英語圏の人(ノ
ンネイティブスピー
カー)
74.9
55.1
クレーム・トラブル処理を文書で行う
英語圏の人(ネイ
ティブスピーカー)
76.0
63.9
63.0
62.0
63.9
63.6
62.1
65.7
66.3
66.1
55.1
70.6
61.8
67.4
8.3
8.6
6.3
7.5
8.7
7.4
10.3
11.4
13.1
14.0
9.9
8.8
英語圏の人か非
英語圏の人かわ
からない
TOEICⓇスコア別にみた「英語を使って仕事をする相手」
TOEICⓇスコアグループごとに「誰を相手に」
「何をするか」を見ていくと、下の図表で示すような比率になる。低目の
スコアグループがノンネイティブスピーカーを
TOEICスコア別「英語で話す」相手
相手にする比率が高くなっているのが特徴とし
て見える。
85.0
78.8
82.0
81.8
ネイティブ
465 点以下グループに注目すると、
【交渉する】
ンネイティブスピーカーを相手にする割合の方
860点以上
【プレゼンを行う】など英語を「話す」場合、ノ
76.7
67.7
69.0
67.4
71.4
66.7
72.1
ノンネイティブ
8.7
6.2
6.7
10.4
10.5
11.6
不明
が高い。英語を「書く」場合には、調査した全項
目においてノンネイティブスピーカーを相手に
75.0
79.8
78.6
82.9
84.6
70.8
ネイティブ
「グローバル化」が進展する中で英語のノンネイ
730~855点
する割合の方が高くなっている。
これは何を意味するのだろうか。経済活動の
ティブスピーカー同士が、英語を共通言語として
600~725点
85.4
87.8
80.0
10.9
7.9
11.4
6.3
7.3
TOEIC のスコア別、「英語を使って何をす
25.0
72.5
74.6
71.8
75.7
72.0
53.8
57.1
51.3
62.2
60.0
ノンネイティブ
【交渉する】相手は、
「465 点以下」で
はノンネイティブスピーカー(71.1%)
ネイティブ
50.0
~465点
がネイティブスピーカー(60.5%)よ
り多いが、
「860 点以上」ではネイティ
b.
60.3
59.3
ではノンネイティブスピーカー
( 62.1 % ) が ネ イ テ ィ ブ スピ ー カ ー
(58.1%)より多いが、
「860 点以上」
ではネイティブスピーカー(83.9%)
がノンネイティブスピーカー(71.5%)
を上回っている。
6.9
5.6
10.5
8.3
11.8
不明
【メールを書く】相手は、
「465 点以下」
0%
TOEIC
相手
10%
67.2
60.3
6.9
72.5
53.8
10.0
75.5
54.5
10.9
75.0
70.8
5.8
85.0
67.7
8.7
(%)
71.1
66.7
70.6
90.0
20.0
20%
30%
40%
50%
60%
電話で話をす 会議で発言す
交渉する
る
る
ネイティブ
~465
ノンネイティブ
点
不明
ネイティブ
470~
ノンネイティブ
595点
不明
ネイティブ
600~
ノンネイティブ
725点
不明
ネイティブ
730~
ノンネイティブ
855点
不明
ネイティブ
860点
ノンネイティブ
以上
不明
19
76.9
67.2
61.1
60.5
62.5
58.8
ノンネイティブ
ブスピーカー(82.0%)がノンネイテ
ィブスピーカー(67.4%)を上回る。
84.6
10.0
6.3
5.1
10.8
12.0
7.7
不明
a.
クレーム・トラブル
処理を口頭で行う
ネイティブ
470~595点
の英語使用シーンについて見てみる。
パーティに出席す
る
54.5
52.6
59.1
56.3
51.2
50.0
ノンネイティブ
不明
るか」の行動別に見ると、英語能力に応じ
プレゼンを行う
75.5
76.3
77.3
ネイティブ
Ⓡ
た「役割分担」があるようだ。以下で3つ
交渉する
11.5
8.3
じような傾向を示している。
2.
会議で発言する
80.8
79.2
5.8
5.3
5.7
4.3
不明
示していると言えないだろうか。
英語を「話す」場合と「書く」場合で、同
電話で話をする
70.8
75.5
67.1
70.0
ノンネイティブ
何とか英語を駆使して仕事を進めている実態を
1.
91.2
61.1
59.3
5.6
74.6
57.1
6.3
76.3
52.6
7.9
79.8
75.5
5.3
78.8
69.0
6.2
60.5
71.1
10.5
71.8
51.3
5.1
77.3
59.1
11.4
78.6
67.1
5.7
82.0
67.4
6.7
70%
80%
90%
100%
クレーム・トラ
プレゼンを行 パーティに出
ブル処理を口
う
席する
頭で行う
62.5
66.7
8.3
75.7
62.2
10.8
85.4
56.3
6.3
82.9
70.0
4.3
81.8
71.4
10.4
58.8
70.6
11.8
72.0
60.0
12.0
87.8
51.2
7.3
84.6
80.8
11.5
91.2
66.7
10.5
50.0
90.0
20.0
84.6
76.9
7.7
80.0
50.0
25.0
70.8
79.2
8.3
76.7
72.1
11.6
【電話で話をする】相手は、
「465 点以下」
TOEICスコア別「英語を書く」相手
ではノンネイティブスピーカー60.3%、
67.7%、ネイティブスピーカー85.0%で、
860点以上
ネイティブスピーカー67.2%、
「860 点以
上」ではノンネイティブスピーカー
83.9
88.1
84.1
90.6
78.9
ネイティブ
71.5
71.4
69.6
65.6
68.4
ノンネイティブ
ともにネイティブスピーカーの割合が
不明
2.6
高い。
8.8
8.3
11.6
9.4
78.9
76.2
80.0
ネイティブ
730~855点
73.7
55.2
7.5
7.9
6.0
6.9
5.3
企画書・報告書を
書く
9.8
7.7
600~725点
不明
13.8
58.6
トラブル・クレーム
処理を文書で行う
20.0
33.3
71.6
77.8
71.4
75.0
470~595点
ネイティブ
56.3
6.9
5.6
不明
100.0
64.7
50.0
ノンネイティブ
61.9
66.7
19.0
18.8
0.0
58.1
40.7
ネイティブ
25.0
52.4
33.3
62.1
66.7
71.4
66.7
75.0
ノンネイティブ
8.1
不明
14.3
11.1
0%
10%
メールを書く
58.1
62.1
8.1
71.6
64.7
6.9
79.5
47.0
9.8
78.9
73.7
7.5
83.9
71.5
8.8
(%)
20
88.0
83.3
FAXで用件を書き
送る
47.0
50.0
44.0
41.7
ネイティブ
~465
ノンネイティブ
点
不明
ネイティブ
470~
ノンネイティブ
595点
不明
ネイティブ
600~
ノンネイティブ
725点
不明
ネイティブ
730~
ノンネイティブ
855点
不明
ネイティブ
860点
ノンネイティブ
以上
不明
79.5
80.8
65.5
ノンネイティブ
相手
ビジネスレターを
書く
63.2
ネイティブ
TOEIC
メールを書く
86.2
73.7
69.8
68.0
ノンネイティブ
不明
~465点
c.
20%
22.2
25.0
30%
40%
50%
FAXで用件を ビジネスレ
書き送る
ターを書く
33.3
66.7
11.1
75.0
56.3
18.8
88.0
44.0
20.0
86.2
55.2
6.9
90.6
65.6
9.4
40.7
66.7
22.2
77.8
50.0
5.6
80.8
50.0
7.7
76.2
69.8
7.9
88.1
71.4
8.3
60%
70%
80%
90%
100%
トラブル・ク
企画書・報告
レーム処理を その他
書を書く
文書で行う
52.4
71.4
14.3
71.4
61.9
19.0
65.5
58.6
13.8
80.0
68.0
6.0
84.1
69.6
11.6
25.0
75.0
25.0
100.0
66.7
0.0
83.3
41.7
33.3
73.7
63.2
5.3
78.9
68.4
2.6
85.7
57.1
14.3
63.6
63.6
0.0
87.5
37.5
0.0
50.0
100.0
25.0
50.0
80.0
10.0
まとめ
以上が、今回の調査結果の概要である。一般イメージに反して、仕事で英語を使っている人は主に日本国内で学習して
きた場合が多く、不自由なく英語を使いこなしている人は一部にとどまることが分かった。TOEICⓇテストのスコアとの
兼ね合いで見ると、①スコアの低い層も高い層も英語を使用していること、②「誰に対して」
「英語を使って何をするのか」
という業務内容に応じて語学能力別に一定の役割分担をしつつ仕事を進めている様子が見えてきた。
TOEICⓇスコアと「話す能力」との相関に関しては個人差が大きいことを「アルク英語教育実態レポート 2014」で示し
たが、以下で本調査で分かった「仕事で英語を使っている人」の特徴を TOEICⓇスコアレンジごとにまとめてみたい。
■465 点以下グループ
全体の 14.8%を占める。英語を主に国内で勉強したのが8割強。現在は特に学習していないとする人の割合が4割強と5
グループの中で最も高いが、週1~4時間英語を学習している人の割合を合算すると 48.1%と他グループと大差ない。相
手がネイティブスピーカー、ノンネイティブスピーカーを問わず、7割強の人がメールを書いている。英語で話す場合も
書く場合も仕事相手はノンネイティブスピーカーの方が多い、というのがこのグループの傾向。
■470~595 点グループ
全体の 21.1%を占める。英語を主に国内で勉強したのが7割強。特に英語学習をしていないのは約3割だが、週に1~4
時間学習している人を合算すると 61.5%となり5グループ中最高割合を示す。メールを書くのは7割強で、その相手はネ
イティブスピーカーの方がノンネイティブスピーカーよりやや多い。英語で話す場合、どのようなタスクを行うにしても
相手はネイティブスピーカーがノンネイティブスピーカーを上回っている。
■600~725 点グループ
全体の 25.5%を占め構成比が最も高い。英語は主に国内で勉強したという人が5割強。英語学習をしていないのは2割弱
だが、週に1~4時間学習しているのは 60.2%。8割の人が英語でメールを書いており、ネイティブスピーカー相手が約
8割、ノンネイティブスピーカー相手が5割弱とその差が5グループ中最大になっている。英語を話す相手はネイティブ
スピーカーの方がノンネイティブスピーカーより多く、その差は他のグループで観察できる差より大きくなっている。
■730~855 点グループ
全体の 23.7%を占める。英語を主に国内で勉強したのが5割弱。仕事以外で英語を学習していないのは2割強、週1~4
時間学習するのは 54.6%である。メールを書くのは約8割で、相手が誰かによる大きな差はない。英語を話す場合にも相
手がネイティブスピーカー、ノンネイティブスピーカーでその比率に大きな差がない。
■860 点以上グループ
全体の 15.0%を占める。英語を主に国内で学習した割合が約3割と5グループ中最低、英語圏で1年以上の留学・勤務体
験がある人の比率が5グループ中で最も高い。特に英語の学習時間を割いていないのが2割強、週1~4時間学習してい
るのが 42.9%。5割強の人が英語で交渉を経験し、8割強の人が英語でメールを書いている。電話で英語を話す場合、相
手がネイティブの場合 85.0%、ノンネイティブの場合 67.7%と差が大きくなっているのも特徴である。
21
今後の課題
今回の調査では、
仕事で英語を使っている 825 人の方々から「私は英語で○○ができる」
という形で CAN-DO List
(CDL)
開発のための項目を募り、3000 を超える項目が集まった。この項目内容を精査・整理し、追って「仕事の英語 CAN-DO List」
を公表する予定である。各種テストの「スコア」「級」「レベル」が仕事現場で英語を使って何ができると言える能力を示
しているのかを分かり易い形で提示したいと考えている。
1例を挙げる。今回の調査の回答者には、下のような CAN-DO List から自分ができると思う項目をひとつ選択しても
らった。その際、自信の程度を示すために①「日本語で行うのも困難である」
、②「英語で行う場合、不安があり、できな
いが、日本語であれば行える」
、③「英語で行う場合、非常に不安をおぼえつつも、何とかできる」
、④「英語で行う場合、
あなたは、以下の仕事に関する
事柄を英語で行う場合、あなた
はどの程度自信を持って行うこ
とができますか。(複数回答)
職場で、席を外している人が今
1 どこにいるか、他の人に尋ねた
り、答えたりすることができる。
食事に招待されたとき、食べ物
2 や飲み物についての好き嫌いを
聞かれて、答えることができる。
職場の定期的な会議で、自分
の担当業務に関する現状や今
後の予定などについて、自分に
3 直接向けられた簡単な質問に
答えたり、人の助けがあれば、
自分の考えや賛意を示すことが
できる。
来客に自分の会社などを案内す
るとき、各部署や施設などを短
4
い簡単な言葉で紹介することが
できる。
職場の定期的な会議で、新しい
商品開発など、議題の概要を理
5 解し、事実確認をしたり、自分の
意見を述べたりして、ディスカッ
ションに参加することができる。
ガイドとして有名な観光地などを
案内するとき、あらかじめ準備し
6 てあれば、名所や名物などを、
ある程度詳しく紹介することがで
きる。
会社などの職場で、取引先とト
ラブルがあったとき、トラブルの
内容や取引先とのやりとりなど
7 について上司に正確に報告し、
上司からの質問に答えたり、今
後の対応について指示を受けた
りすることができる。
職場の企画会議などで、あらか
じめ準備してあれば、自分の企
画案について図表やグラフなど
8
を示しながら、明確に詳しく説明
し、質問に的確に対応すること
ができる。
問題解決や人事案件など、仕事
上の目的に合った話し方や表現
を用いて、自然な流暢さを保っ
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たまま、顧客または同僚を相手
に、自分の考えを正確に述べる
ことができる。
やや不安はありつつも、できる」
、⑤「英語で自信をもってできる」の5段階からもひとつを
選択してもらった。この CAN-DO List は、
『JF 日本語教育スタンダード 2010 利用者ガイ
ドブック』
(独立行政法人国際交流基金
2010)を参考に作っており、下に行くに従って高い
能力が必要になる「行動」を示している。
例えば、
【職場の定期的な会議で、新しい商品開発など、議題の概要を理解し、事実確認を
したり、自分の意見を述べたりして、ディスカッションに参加することができる】に関して
は、下のような分布になった。
高スコア者ほど「自信」の度合いが高くなっているのは自然なことであろう。注目したい
のは、
「英語を使って会議で自分の意見を言う」というタスクを TOEICⓇ400 点台から 700
点台の人たちの中に「非常に不安をおぼえつつも、何とかできる」と考える人が多いという
事実である。ここでは「どの程度英語がうまくできるか」ではなく回答者の実際の行為の存
在と自信の程度を問うている。
このような自己評価と回答者の TOEICⓇスコアとを参照しつつ、
回答者自身が記述した
「○
○ができる」という項目内容を精査して CAN-DO List を開発する予定である。
【職場の定期的な会議で、新しい商品開発など、議題の概要を理解し、事実確認
をしたり、自分の意見を述べたりして、ディスカッションに参加することができる】
860点以上 1.8
4.2 9.1
730~855点 0.66.7
600~725点 1.8
20.6
10.3
日本語で行うのも困難である
50.9
28.5
470~595点 4.8
~465点
33.9
45.5
33.3
32.7
32.7
40.6
58.8
英語で行う場合、不安があり、できな
いが 日本語であれば行える
18.8
11.5
17.0
23.0
4.8
7.30.6
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%
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英語で行う場合、非常に不安をおぼ
えつつも、何とかできる
英語で行う場合、やや不安はありつ
つも、できる
英語で自信をもってできる
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株式会社アルク
アルク教育総合研究所
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