北海道大学 2014 年度日本語教授法ワークショップ 報告書 北海道大学留学生センター -1-1- ご挨拶 北海道大学留学生センターでは、2014年7月、海外の協定大学で日本語教育を担 当されている先生方をお招きし、日本語教授法ワークショップを開催いたしました。 協定校の日本語教育の発展に寄与し、協定校の先生同士および本学の日本語教員との 交流を深めるという目的で開始した本ワークショップは、今回で7回目となりました。本 年度は、中国、韓国、タイ、ロシア及びベルギーの協定大学より11名の先生方に札幌に お集まりいただき、ワークショップのみならず、各種行事を通じて活発な情報交換をして いただくことができました。 この催しは来年度以降も引き続き開催していきたいと考えております。初夏の札幌で 開催する本ワークショップに是非ともご参加くださるようご案内申し上げます。 北海道大学 副学長・留学生センター長 寺尾 宏明 -2- 目次 Ⅰ. 2014 年度ワークショップ実施要項. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .- 4 - Ⅱ. ワークショップ計画. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .- 6 - Ⅲ. 北海道大学の大学間協定校. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .- 8 - Ⅳ. 日本語音声教育の取り組み (山下 好孝 教授) . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . - 9 - Ⅴ. 読解授業の考え方と作り方 (中村 重穂 准教授). . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . -10- Ⅵ. 各大学における日本語のコース・デザインの共有 (小河原 義朗 Ⅶ. 参加者発表. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .-13- Ⅷ. 参加者のアンケート結果より. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .-20- Ⅸ. 2015年度開催案内. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .-22- ワークショップ参加者と本学留学生センター 日本語教育部教授 山下 好孝 -3- 准教授) . . . . . . . . . . . -11- Ⅰ. 2014 年度ワークショップ実施要項 北海道大学留学生センターは、本学と大学間交流協定を締結している協定校より日本語教師を招 き、日本語教授法のワークショップを開催した。 1. 目的 2 協定校における日本語教育をより一層充実したものにするためのお手伝いをする 協定校の日本語教員と北海道大学留学生センターの日本語教員の交流を図る 主 催 北海道大学 国際本部 留学生センター (コーディネーター:留学生センター 日本語教育部教授 山下 好孝) 3 実施期間 2014 年 7 月 28 日(月)~2014 年 8 月 1 日(金) 4 会 北海道大学国際本部 留学生センター 北海道札幌市北区北15条西8丁目 5 参加資格 場 北海道大学と大学間交流協定を締結している外国の大学において日本語科目を 担当している教員 6 参加人数 7 参加費用等 11 名 無料(ワークショップ参加費) 旅費、食費等、その他の出費は参加者の自己負担 他、参加者の宿泊代を北海道大学が負担 8 内 容 参加者の希望に基づいて決定した 9 講 師 北海道大学 国際本部 留学生センター 日本語教育部 教 授 山下 好孝(コーディネーター) 准教授 中村 重穂 准教授 小河原 義朗 -4- 参加者 2. 大学 # 名前 性別 大学 役職 所在国 M.K.アモーソフ記念 1 ルーフォワ エレーナ 女 准教授 ロシア 准教授 ロシア 北東連邦大学 2 スタルチェンコ エレーナ 3 ワルラベンス ティナ 女 サハリン国立総合大学 女 ゲント大学 アカデミック ベルギー アシスタント 4 林晟澤 5 フクシマ 6 男 全北大学 講師 韓国 女 カセサート大学 講師 タイ グリーン 生里恵 女 マヒドーン大学 講師 タイ 7 王文賢 女 中国海洋大学 教授 中国 8 金文峰 女 上海交通大学 准教授 中国 9 範亜秋 女 蘭州大学 講師 中国 10 劉 玲 女 北京師範大学 准教授 中国 11 徐 男 東北師範大学 講師 中国 ユパカー 雄彬 (順不同・敬称略) 3. スケジュール -5- Ⅱ. ワークショップ計画 以下に示すのは、コーディネーターの山下教授が提案する「日本語ワークショップ」についての 資料である。北海道大学が求めている方向性を示すと共に、本ワークショップの位置づけを明らかに している。 -6- -7- Ⅲ. 北海道大学の大学間協定校 2015 年 3 月 31 日現在、北海道大学は 43 カ国・地域の大学と 160 の協定を結んでいる。 -8- Ⅳ. 日本語音声教育の取り組み 担当:山下 好孝 教授 2014 年度で日本語教授法ワークショップの開催は第7回目を迎えた。今回も海外の複数の大学間協 定校から日本語教育に従事する先生方をお招きし、有意義なワークショップを開催することが出来た と思う。 今回も水曜日の 1 時間目に、私が担当する「日本語研修コース」の「初級文法」の授業を教授法ワ ークショップの会場で行った。参加の先生方にも授業に参加していただき、実際に私が学生に音声指 導をしているところを見学していただいた。そこでは、実践しているディクテーションのクイズや五 十音の指導、動詞の変化形のアクセント指導を実際に体験してもらった。 私が担当する第1回目の木曜日のワークショップでは、日本語五十音の発音指導を詳しく説明した。 調音点、調音法など音声学の基本的知識が必要であることも述べた。 金曜日の第2回目のワークショップでは、単語を単位とする発音練習について説明を行った。各単 語を従来の拍(モーラ)や音節ではなく、2拍を基本とするフットという単位に分けて発音する方法 である。このやり方は参加者の皆さんの興味を引いたようで、帰国後出身大学で今回紹介した指導法 を採用してみたいという連絡をくださった先生もいる。 最初に書いたように、本ワークショップも第7回目を迎え、参加されたみなさんから一定の評価を -9- 得られるようになった。その証拠として、毎年同じ協定大学からコンスタントに参加希望を得ている 事実がある。さらに木曜日の午後に設けた、参加者のみなさんに様々な発表をしていただく時間も昨 年に引き続き盛況であった。 今後は、これまでのワークショップ開催で培った人脈をさらに広げ、学生交流にもつなげていきた いと思う。 講義風景 Ⅴ. 読解授業の考え方と作り方 担当:中村 重穂 准教授 前回のワークショップを担当した後の報告書(2012 年)末尾に「そろそろ作文や会話や読解な どの個別教科区分や技能に関する研修形態から脱却して、より広範な視点から長期的なカリキュ ラム・デザインのコンセプトや教育組織・機関としてのあり方、あるいは学生交流やワークショ ップ自体の運営方法などをテーマとして採り上げる時期に来ているのではないか」と書いた。本 来なら今回のワークショップではその記述内容を実現させるべきであったが、最近の国際本部の 業務量と労働密度の増加のため、それをかなえることはできなかった。この点をまずはお詫び申 し上げたい。 結果として、2010 年度に採り上げたのと同じ読解授業について今回も扱うことになったが、 さすがに前回と同じことをやってお茶を濁すわけにも行かず、また、この 2 年で小職の授業実践 に新しい試行が加わったこともあって、基本的な方向は前回とほぼ同じく; 1)参加者(担当者も含む)が、情報と実践を共有・交換する場を作る 2)共同作業を通じて、将来の展開への契機を作る 3)担当者からの提案を叩き台にして、読解授業の可能性を検討する としつつも、今年度のワークショップでは、 (自由参加という形ではあるが)小職が担当し ている全学教育科目「日本語Ⅰ:読解」の授業を参加者に見学していただく機会を設定した。 これによって、新たな方向として; 4)上記1)~3)の諸点をワークショップ会場内の机上の議論で終わらせず、授業現場との接 点をイメージできるようにする - 10 - 5)読解授業に於ける新たな試みであるピア・リーディングの実際についての知見を得る機会を 提供する が加わり、幾ばくかの新鮮味を与えることはできたと思量する。 当日は、8 時 45 分から上記「日本語Ⅰ」の授業見学を行った。オプショナル・プログラムであ ったにもかかわらず 11 名中 10 名の先生方にご見学をいただくことができた。その後、ワークシ ョップ会場に移って 15 分ほどの趣旨説明を行った後で事前資料として開講式で配布した教材に ついて読解授業の組み立てを考えるグループワークを行い、それらを模造紙に記入した上で各グ ループの代表者に簡単に報告をしていただいた。昼食を挟んで、午後のセッションでは、作成し ていただいた授業案を生かしながら、小職から読解授業の考え方と組み立て方について講義を行 った。今年度の講義では、小職が実践する読解技術である「吟味読み」の技法について、配布し た教材に対してどのようにその技能を適用できるかを具体的に詳しく紹介・説明したので、この 点でいくらか理解の助けになったと思われる。その後先生方からのコメントやご質問を頂戴し、 意見交換を行った。 ただ、小職の進行に不手際があり、今回のもう一つのポイントであるピア・リーディングにつ いては、授業自体は見ていただけたもののその理念や実施方法などについて述べる時間がなく、 この点で参加者各位には申し訳ない結果になったと反省するところである。 ワークショップの限られた時間の中で、どこまで小職の当初目的や希望を果たし得たか判断は 難しいが、活動の中で授業見学と結びつけた形でのコメントや質問があったことを振り返ると、 過去の小職の担当したワークショップよりは示唆と刺戟を与えることができたのではないかと 思われる。諸先生方の熱意にあふれた活動へのご参加と貴重なご高見・ご指摘のご提供に深謝す る次第である。 講義風景 Ⅵ. 各大学における日本語のコース・デザインの共有 担当:小河原 義朗 准教授 本ワークショップには、本学との協定関係にある大学から日本語教育担当者が参加する。そのため、 各協定大学から留学生を受け入れる本学としては、実際に現地でどのような日本語教育が行われてい - 11 - るのかを知る絶好の機会であるはずであるが、これまでそのような機会は明示的に設けられてこなか った。一方で、参加者も日本語を教えている学生を留学生として本学に送り出す以上、本学でどのよ うな日本語教育が行われているのか、その現状と問題点について知ることは相互の連携を図る上で非 常に重要である。さらには、各国、地域から集まる参加者同士で相互の日本語教育について共有する ことは、巨視的・微視的視点から自身の日本語教育を振り返る機会にもなる。 そこで、本講義ではまず参加者の各大学における日本語コース(カリキュラム、シラバス、レディ ネス、ニーズ等)について紹介してもらい、相互の日本語コースの特徴や現在抱えている課題等につ いて共有を行った。参加者には事前に準備を依頼していたこともあり、すべての参加者がパワーポイ ント資料、ハンドアウト、コース概要、パンフレット等を使用してプレゼンテーションを行い、共有 した。各大学の共通点や相違点をはじめ、課題、悩み等について制限時間を越える活発な議論が展開 された。 その後、本学留学生センターの主に「一般日本語コース」について概要を説明した。現在、「一般 日本語コース」では「現代日本学プログラム」「新渡戸カレッジ」等の新しいプログラムのスタート に伴い、これまでの4技能を中心としたカリキュラムの改編を進めている。そのため、現在国内外で 注目され、改編作業でも参考にしている「CEFR(Common European Framework of Reference for Languages)」「スタンダード」 「Can-do」 ( 「JF 日本語スタンダード」 「JLC 日本語スタンダーズ」など) といった概念を共有しつつ、本学一般日本語コースの現状と課題、そして改編の狙いについて参加者 と議論を行った。 今回は担当教員の個別のテーマではなく、本学と参加者の各大学における日本語コースについて 共有、議論することを敢えて狙った。参加者の活発な議論や主体的に参加する様子、実際の声から も、各日本語コースの多様性や課題をもとに問題解決に向けた議論をする、相互に共有する時間を 取り入れるべきである。本学の現状と課題、参加者および参加者所属機関の日本語教育に対する姿 勢・方針や現場の実態を踏まえた上で、本ワークショップの意義、方向性、内容、実施体制につい て改めて検討する必要があると考える。 講義風景 - 12 - Ⅶ. 参加者発表 今回参加されたM.K.アモーソフ記念北東連邦大学の ルーフォワ エレーナ先生、東北師範大学の徐 雄彬先生、北京師範大学の劉 玲先生、上海交通大学の金文峰先生より、ワークショップ期間中に発 表していただいたご自身の研究についての発表内容や、ワークショップに参加しての感想などを以下 に紹介します。 ********* ********** ********** ロシア連邦サハ共和国(ヤクーチア) M.K.アモーソフ記念 北東連邦大学 外国文献学地域研究学部 准教授 ルーフォワ エレーナ 1.旧ソ連時代のヤクーチア 「ヤクーチア」というのは、 「サハ」のロシア語です。ソビエト時代には、サハ共和国は、ヤクーチ アと呼ばれていて、わたしたちは、ロシア人から、ヤクート人と呼ばれていました。ヤクーチアとサ ハ、ヤクート語とサハ語、ヤクート人とサハ人は同じ意味ですが、わたしたちにとっては、サハ共和 国、サハ語、サハ人と言われたほうが、嬉しく感じます。 サハ共和国は、ロシア連邦最大の共和国で、40%以上が北極圏に位置しています。共和国のほぼ全 域が永久凍土です。 1990 年 9 月 27 日にソビエトが崩壊して、それまでのヤクート・ソビエト社会主義自治共和国が、 ロシア連邦内の「サハ共和国」として承認され、初代大統領にニコラエフ大統領が選ばれました。 3.サハ共和国概要(地理、人口、など) サハ共和国はロシア全体の五分の一を占めています。ユーラシア大陸北東部の大部分を占め、 南 北に2,000キロメートル、そして東西に2,500キロメートルの広がりを持っています。面積 でいうと、日本の9倍です。 ロシアは多民族国家で、サハ共和国には160の民族が住んでいます。その内、ヤクート人とロシ ア人は約80%を占めていますが、今では、完全に 100%ヤクートの血を持ったヤクート人は少なく なっています。身分証明書上で、父親と母親がヤクートであれば、その子供もヤクートになりますが、 サハ共和国には 160 もの民族が住んでいるので、混血が進んでいます。 サハ共和国は気候が厳しい為、ロシア連邦政府から多くの援助を受けています。たとえば、公務員 になると、ロシア連邦政府から給料の 30%が寒冷地手当として割増になります。 また、ヤクーチアは、鉱物資源の宝庫と呼ばれています。西ヤクーチアではダイヤモンド、アルダ ン川、インデイギルカ川、ヤナ川流域では金が採掘されています。ロシアで採掘されるダイヤモンド の90%以上、そして、金の40%以上は、サハ共和国産です。ヤクーツク市のサハダイヤモンド社に は日本人駐在員もいます。駐在員の伊藤さんは、今年で6年目の滞在を迎えています。 サハ共和国は、ほとんどが永久凍土で覆われている為、マンモス、サイ、バイソンやドウケツライ オンなど多数の化石が発見されています。これまで、世界のなかで、マンモスが完全な形で発見され たのはサハ共和国だけです。 2005年の愛知万博に出展されたマンモスはサハ共和国で見つけられたものです。お土産や、装 飾品のためにマンモスの牙や骨を発掘する人たちはマンモスハンターと呼ばれています。 ヤクーツク市には、世界で唯一のマンモス博物館があります。これは、わたしが勤めている北東連 - 13 - 邦大学の敷地内にあって、大学のマンモス研究所によって作られ、一般公開されているものです。 ヤクーツク市には世界で唯一の永久凍土研究所があって、国内外から研究者が来ています。永久凍 土というのは、研究者にとっては非常に興味深くて、面白い研究材料かもしれませんが、わたしたち ヤクーツクに住む人間にとっては、非常に煩わしいものです。道路の被害はその一つです。ヤクーツ クの気温は、冬はマイナス 50℃、夏はプラス 33℃になるので、路上は氷で覆われたり、解けたりを 繰り返し深刻なダメージを受けます。マンションを建てるときも、同じ理由で、柱の上に建てなけれ ばなりません。 5.四季の特徴 サハ共和国は 極端な大陸性気候なので、冬と夏で気温差が 80 度前後あります。だいたい、10 月上 旬から雪が降り始めて、気温は零下になります。この時期から路上はずっと氷で覆われたままになり、 3 月まで解けません。冬の間は、朝 8 時半ごろまで真っ暗で、夕方の 4 時半には、また真っ暗になっ てしまうので、昼がとても短いです。 ヤクーツクの東にあるオイミャコンは、マイナス71.2℃を観測した、地球の北半球における“寒 極”があることで有名です。 冬の間は、大きな川もすべて凍ってしまう為、川の上を車で走ることができるようになります。こ れは、とても便利なことで、橋のない場所でも、冬は車でどこでも行けるようになります。そして、 冬の間は、市場で凍った魚や肉が売られています。冬の平均気温はマイナス 30℃から 40℃になる為、 日本で売られている防寒具は、とても役に立ちません。 サハ共和国の防寒具の一つにサハ語でウントゥイと呼ばれるトナカイの毛皮で作られた伝統的なブ ーツがあります。また、シューバと呼ばれるミンクの毛皮で作られた伝統的なコートや、シャフカと 呼ばれるキツネやタヌキ、ウサギやミンクなどの毛皮で作られた帽子などもあります。サハ共和国で は、一年のうち、半年くらいは、このウントゥイとシューバ、シャフカが必需品です。 5 月になると、急に、昼がどんどん長くなっていきます。5 月中旬になると、夜 11 時ごろまで、日 本の普通の夕方のような空模様で、明るいままです。そして、夜は本当に数時間だけで、午前 3 時に なると、また明るくなります。6 月になると、日が沈まなくなるので、夜は完全になくなり白夜が続 きます。7 月末までは白夜です。 サハ共和国の特徴として知られているのはオーロラです。ヤクーチアだけでなく、サレハルドのタ イミル半島、ムルマンスク、アラスカでオーロラ現象が起きています。オーロラは、アラスカ、ハド ソン湾、ビッグベア湖、アイスランド、南グリーンランド、ノルウェー北部、シベリアで見ることが できます。典型的なオーロラはピンクと赤のスプラッシュとカーテン、乳白色の青緑色の光を輝かせ ているように見えます。ヤクーチアでは、冬のときよく見ることができます。これは非常にすばらし い光景で、空が青と緑になります。 サハ共和国の美しい自然、魅力溢れる景色、独特な文化、ユニークな歴史背景は北の世界の忘れら れない思い出を作ることでしょう。 発表の様子 - 14 - 発表の様子 近代中国朝鮮族初等学校での日本語教授法(1908~1945) ――朝鮮の学校、漢民族学校との比較も含めて 東北師範大学日本語学部 講師 徐雄彬 拙稿では、これまで軽視されてきた、日本による中国東北地方の朝鮮族初等学校の日本語教育の実 態を、教授法に焦点を合わせて行うことによって、少々なりとも明らかにしたい。日本語教育につい て、 「満州国」建国前、 「満州国」建国から「皇民化」教育実施前の段階、「皇民化」教育段階など 3 つの時期に分けて各時期の教授法の特徴を分析し、それらの教授法の導入に影響を与えた教育政策、 教師、学生、朝鮮族社会での日本語の普及程度など 4 つの要素についても分析を加えた。これらの分 析は、一次資料と当時日本語教育を受けた高齢者へのインタビュー調査(2 回の調査、50 人)を通じ て行った。当時、朝鮮族学校は朝鮮の学校だけでなく、中国の漢民族学校とも共通点や相違点があり、 従って、本研究ではこれらの学校との比較についても分析を行った。 「満州国」建国前の中国の東北地方では、日本支配下の朝鮮族学校と反日教育を行う朝鮮系、中国 系、外国系朝鮮族学校が共存していた。東北地方が中国の領土であることから、日本系学校は明確な 植民地教育法や教育規則を打ち出すことはできなく、朝鮮国内の教育方針、授業コース、教科書など を取り入れた。日本語教育は植民地教育の柱となり、第一次「朝鮮教育令」公布後、日本語が「国語」 とされた。日本は、天皇制教育のイデオロギーとして機能していた直接法を朝鮮族学校に導入しよう としたが、実際は順調に進まなかった。その背景として、当時日本の対朝鮮族教育政策は朝鮮族を「日 本臣民としての朝鮮人」として育成しようとしたこと(主な目的は朝鮮族を支配下に入れること)、 教師の日本語レベルが低かったこと、学生の反日意識が強く、日本語が普及しなかったことなどがあ る。 「満州国」の建国後、日本は朝鮮族を「日本帝国臣民」、「満州国の一分子」として教育する方針を 打ち出した。 「満州国」内の朝鮮族学校で朝鮮国内の教育令や学校規則を基準にし、日本語を「国語」 とすることなどを明文化した。 「日本国民」である朝鮮族を、日本の統治を支える「補助者」として 育成するため、日本は朝鮮族に対する「国語」教育をより徹底した。日本語教育の教授法において、 朝鮮族学校ではその「特殊性」が見られる。「満州国」の漢民族学校に比べて、朝鮮族学校では直接 法がより本格的に導入された。その背景として、日本政府が朝鮮族に他の民族より高い「日本化」を - 15 - 求めたこと、朝鮮族学校には日本人教師が多くて朝鮮族教師は直接法によって養成されたこと、朝鮮 族社会の反日意識が弱まり、日本語が普及するにつれて、学生の「日本化」程度が多少高くなったこ となどがあげられる。 1937 年中日戦争勃発後の翌年、日本は朝鮮民族を完全に「日本人化」する「内鮮一体」政策を中国 の朝鮮族社会にも適用し、「第三次朝鮮教育令」では、国体明徴、内鮮一体、忍苦鍛錬の三大綱領を 基本教育方針としたが、それによって朝鮮族学校は軍国主義教育の場となった。朝鮮語科目がなくな り、朝鮮語の使用が禁止された。この時期の日本語教授法は「極端な直接法」だと言えるが、このよ うな教授法が実施された背景には、 「内鮮一体」は朝鮮族を「完全なる日本人」に同化させる政策で あること、日本語レベルの高い朝鮮族教師が多く養成されたこと、朝鮮族社会で日本語の普及率が高 くなって、学校に入る前から日本語ができる子供が少なくなかったことなどがあげられる。 こうして、本研究において、近代日本の対朝鮮族初等学校での日本語教育は、時期別に特徴がある ことを明らかにした。 発表の様子 北京師範大学中日交流事業 北京師範大学外国語言文学学院 准教授 劉玲 一 北京師範大学交流校(日本のみ) 日本・80校ほど、大学レベルまたは部局・学部レベルで種々交流協定を結ぶ ・実施中の交換留学プログラム(入学料・授業料が免除):18校(筑波大学、金沢大学、東京学芸 大学、北海道大学、神戸大学、早稲田大学、大阪大学、広島大学、横浜国立大学など) ・毎年、日本留学人数全学30-35人程度(学部生:五分の二/大学院生:五分の三) 二 外国語言文学学院日文系の概要 教員:中国人教師11名、日本人教師1名 学部生:四学年制、一学年18人~24人 修士課程:三学年制、一学年9人~11人で、日本語学・日本語教育・日本文学・日本文化の四専 攻に分ける。 - 16 - 三 外国語言文学学院日文系が中心に実施中の国際交流事業 1 短期留学: ・学部生の場合:三年生の時に、クラスの三分の一から半分の学生が日本へ一年間留学する。 ・院生(修士課程)の場合:二年生の時に、ほぼ全員が日本へ一年間留学する。 ・留学先:交換留学生プログラム実施中の大学に行くことが多い。 2 修士課程二重学位プログラム:金沢大学 ・2009年より、修士二年生が金沢大学大学院(人間社会環境研究科)へ正規生として入学し,学位 取得要件を満たすことによって,本学と金沢大学両方の修士の学位を取得できる。なお、修士論 文は両大学に対して別個のものを2篇作成する(内容が一部重複するのは可)。 ・2012-13年度:2名、2013-14年度:4名、2014-15年度:申し込み受付中 3 海外教育実習プログラムの受入 ・日本の大学の実習生の受入(年二回/授業参観・授業の担当) 埼玉大学:2011~2014年(連続四回) 2015年も受入れ予定。 金沢大学:2011~2013年(連続三回) 4 教員交換事業: 内容:東京学芸大学⇔北京師範大学で、相互に教員を派遣し、客員教授として授業担当などをす る。 期間:六ヶ月もしくは一年 5 研究会・シンポジウム・共同セミナー等 ・2002年より、毎年、それぞれ、日本語教育、日本語学、日本文学関係のシンポジウムを開催。2014 年前半まで計11回 ・共催大学:筑波大学、金沢大学、東京学芸大学など 6 機関誌: 『日语教育与日本学研究论丛』(日文系編研究論文集) ・2002年発刊 ・発行:二年ごとに一集。2012年12月まで、計五集。 ・掲載論文:20篇~30篇ほど。主として、研究会・シンポジウム・セミナー(上記5)などで口 頭発表した論文の投稿を掲載。 発表の様子 - 17 - 精読の授業における本文の導入 ―二年生を中心に― 上海交通大学外国語学部 准教授 金文峰 上海交通大学の日本語学部は日本語の基礎のまったくない学生を募集し、学生はゼロから日本語の 勉強を始める。ここでは、筆者が担当する二年生を中心に、精読の授業における本文の導入について、 世界各国の日本語学科の先生方と意見を交わしたい。 本学における二年生の精読の授業は、第一学期が 16 週間、週 12 コマで、第二学期は同じ 16 週、 週に 10 コマであり、単位はそれぞれ 12 と 10 である。教科書は北京大学出版の『総合日本語』三、 四(2010 年 8 月)を使っており、二人の教師がそれぞれ、各課のユニット1とユニット2を担当する。 この教科書はユニット1が会話文を中心に展開されており、 ユニット 2 が読解文中心となっている為、 ほとんど同時に進行して差し支えない。 筆者担当の読解文の授業は読解が中心になっているが、新出単語や文法解釈の量が多く、重点をつ かみにくい。過去に、以下のような、いろいろな教授法を試みてきた。 1.新出単語(ppt)+解説・語彙→文法説明(ppt)+解説・文法→本文説明→練習 2.新出単語(ppt)+解説・語彙→本文説明・文法説明(ppt)+解説・文法→練習 3.新出単語(ppt)+解説・語彙+本文説明→本文センテンス羅列法→本文説明 +文法説明(ppt) +解説・文法→練習 4.本文説明(ppt)+新出単語+文法説明(ppt)→解説・語彙+解説・文法→練習 5.本文説明(ppt)+新出単語+解説・語彙→文法説明(ppt)+解説・文法→練習 (注: 「解説・語彙」と「解説・文法」は教科書の内容) 上述した五つの方法のうち、1と2は一番古いやり方で、一つ一つの項目を完成する形でやってい るが、無味乾燥な教授法であったという学生の評判だったので、今はもう使っていない。 3は、単語を説明しながら関係するセンテンスを挙げているので、本文説明の時、あまり難しく感 じられないという長所を持っている。しかし、単語のあらゆる用法をすべて説明すると、時間が足り ないという短所もある。 4は、いきなり本文を読ませ、本文を説明しながら、関係する単語や文法を説明する。これはある 程度学生には受け入れられやすいものの、一課を終わらせるのにあまり時間がかかりすぎることもあ った。 5は、今、筆者がやっている方法であるが、本文説明に焦点をあて、日本語能力試験の読解問題を 解くように、ひと通り本文の内容や文の構成、長い文の読み方などについて、説明する。文法のいろ いろな用法はそのあと集中的にやる。学生からはこの方法がいいと言われ、連続二、三年やっている。 本学の学生は、二年生が終わる夏休みに日本語能力試験 2 級の試験を受けるので、文法説明や読解文 の読みもおろそかにできないのである。 以上、日本語の精読の授業におけるいろいろな授業のやりかたについて、筆者の経験をもとに、そ の長所と短所を述べた。これからもひきつづき、先学のいろいろな教授法を参考にしながら、本学の - 18 - 学生に合った方法を探り続けたい。 発表の様子 - 19 - Ⅷ. 参加者のアンケート結果より ワークショップ終了後、参加した先生方にアンケートをお願いし、下記のような回答(一部抜粋) を得ました。いただいた貴重なご意見は、来年度以降、よりよいワークショップを企画するために最 大限に生かしていきます。 A) 開催期間、日程について ・ 授業見学、ワークショップ(討論)を増やして欲しい ・ あっという間の5日間だったので、期間を長くして欲しい ・ 良い季節ではあるが、飛行機のチケットを取るのに苦労した ・ 開催期間・日程はちょうどよかった。 B) ワークショップ内容について ※ 山下 好孝 教授「日本語音声教育の取り組み」 ・初めて聞いた考え方・やり方が多くて勉強になった ・今回学んだ音声の教授法を自分のクラスに取り入れたいと思う ・この講義を通して自分のアクセントや音声の間違いを認識したので今後修正したいと思う ・とても勉強になったが、リズムについては自分で教えるには難しく感じた ・学生が積極的に授業に取り組んでいる様子は素晴らしく、教授法も画期的な方法であったと感じた ・自分の大学では音声教育の取り組みはないが、今後取り入れていく必要性を感じた ・もう少し時間が欲しかった ※ 中村 重穂 准教授「読解授業の考え方と作り方」 ・読解授業のあり方、教えるべき内容について考えるきっかけを与える内容だった ・グループになって行う討論形式のワークショップが良かった ・様々な読解授業の教授法を参加者からも学ぶことができた ・授業見学の機会があったのが良かった ・帰国後に自分の大学でも実践してみたい ・帰国後に読解授業を担当している日本語教師と内容を共有したいと思う ・新しい読解方法が学べてよかった ※ 小河原 義朗 准教授「各大学における日本語のコース・デザインの共有」 ・日本語のコース・デザインの参考資料がよかった ・各大学の日本語のコースが勉強できてよかった ・参加者による各大学での日本語教育カリキュラムに関する発表を聞いて世界中の日本語教育の状況 がわかった ・他の参加者の発表を聞くのは興味深かった ・もう少し時間が欲しかった - 20 - ※ その他の行事:交歓会、キャンパスツアー、授業見学、市内見学など ・授業見学で色々と勉強できた ・授業見学の機会を増やして欲しい ・市内見学等については毎日講義終了後に行うのではなく、ワークショップの2日目(午前か午後) に集中的にやるのはどうかと思った ・行事の数はちょうどよかった ・行事の内容は活動的なものが多くおもしろかった - 21 - Ⅸ. 2015 年度開催案内 北海道大学留学生センターでは、2015 年度も本学と大学間交流協定を締結している協定校から日本 語教師をお招きし、日本語教授法ワークショップを開催する予定です。 1. 主催 北海道大学 国際本部 (コーディネーター 国際本部留学生センター日本語教育部 2. 教授 山下 好孝) 実施期間 2015 年 7 月 27 日(月)~7 月 31 日(金)(予定) 3. 会場 北海道大学 国際本部留学生センター 北海道札幌市北区北 15 条西 8 丁目 4. 参加資格 北海道大学と大学間交流協定を締結している外国の大学において日本語科目を担当している 教員 5. 募集人数 10 名程度(予定) 6. 参加費用 無料(北海道大学が参加者の参加費及び宿泊費を負担) 7. 内容 参加者の希望に基づいて決定 8. 講師 北海道大学留学生センター日本語教育部 教 授 山下 好孝(コーディネーター)他2名 * 日程や内容の詳細については、後日確定し、発表する。 * 問合せ先:北海道大学 国際本部国際教務課 [email protected] - 22 -
© Copyright 2025 ExpyDoc