平均在院日数の短縮は何をもたらすのか? 病床稼働率維持には、より

平均在院日数の短縮は何をもたらすのか?
病床稼働率維持には、
より広い圏域の患者獲得が必要
回は、平均在院日数について考えてみましょう。
の短縮」が望まれているのです。
医療制度改革においては、
「平均在院日数の短縮」
ところで在院日数を短縮するだけでは空床が生じ、病
という言葉がよく出てきます。たとえば、7対1一般
院の収益も落ちてしまいます。近隣からうまく集患でき
病棟入院基本料を届け出るための施設基準には、
「当該
れば良いのですが、通常は難しいでしょう。そのため
病棟の平均在院日数が18日以内であること」がありま
病床規模を減らす選択をしない場合には、より広い圏
す。財務省などの医療制度改革案などには、
「平均在院
域から患者を獲得する必要が出てきます。
日数の短縮を進める」提言がたびたび登場します。
しかし、平均在院日数の短縮は全国で進んでいます
まず、なぜ平均在院日数を短縮する必要があるかを考
から、遠方の医療機関も同じ状況にあり、広い圏域か
えてみましょう。DPCでも出来高でも入院料などは「1
らの患者獲得に動いているはずです。つまり、平均在
日当たり」
(一部を除き)で設定されています。もちろ
院日数の短縮は「競合医療機関の増加」をもたらします。
ん医療費は入院料だけではありませんが、入院日数が
この場合、
「競争」して勝利をめざす戦略もありますが、
長ければ、その分医療費が高騰する、逆に言えば入院
「協調」して合併や統合をめざす道や、棲み分けを模索
日数を短くすれば医療費を低く抑えられるのです。さ
する方法もあります。どのような戦略をとるべきかに
らに、入院日数の短縮によって「ADLの低下」や「院内
正解はありません。まず自院の機能を客観的に見定め、
感染」を防止できるので医療の質を向上させられます。
これまで以上に広いエリアを対象にして他院の状況を
このように、さまざまな視点から見て「平均在院日数
把握することから始めてみてください。
医 療 マ ネ ジ メント の ヒント
永続する地域連携のあり方
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域医療構想、地域包括ケアシステムが話題となる
医療を提供できる医療機関であれば、専門性を活かし
中、医療機関が今後、地域とのつながりをどう深
て地域で存在感を発揮するのもひとつの方法です。ま
めていくべきかは、各地域の状況によって手法がまっ
た、専門性だけでは地域で強みを発揮できないのであ
たく違います。内閣府が「人口急減・超高齢化という
れば、地域に不足しているサービスを自らがつくるこ
我が国が直面する大きな課題に対し政府一体となって
とも視野に入れるべきです。そうした施策は、在宅、通
取り組み、各地域がそれぞれの特徴を活かした自律的
所などの介護、訪問サービスといった直接サービスだ
で持続的な社会を創生できるよう、まち・ひと・しご
けでなく、地域住民が医療・介護に関する相談を気軽
と創生本部を設置しました」
(内閣官房HP引用)として
にできるコミュニティを形成する場を設けるサービス
取り組むように、地域自体の活性化が最重要課題の地
もありえるでしょう。ある地域では、駅から病院まで
域もあれば、都心部など人口が増加している中で、患
の動線を考え、そこに地域住民が集まれるような露天
者流出・流入が激しく入り組んでいる地域もあります。
商を誘致し、人々が集まりやすい場を提供している病
他の医療・介護施設との連携といった従来型の地域
院もあります。このように地域に求められているサー
連携の促進も当然必要ですが、加えて、今までお伝え
ビスを近視眼的に考えるのではなく、長期的展望に立
した手法を通じ、地域の中で自院がどのような役割を
って提供することが、地域との深いつながり(コミュ
担うべきか検討しなければなりません。専門特化した
ニティデザイン)を継続させるのです。