SPORTS RESCUE 2015 (秋) 実施報告書

SPORTS RESCUE 2015 (秋)報告書
SPORTS RESCUE 2015 (秋) 実施報告書
平成27年11月11日
主催
一般社団法人 BERT INTERNATIONAL BERT未来防災研究所(事務局)
神戸学院大学現代社会学部社会防災学科前林研究室(実行委員会)
SPORES 2015(秋)
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SPORTS RESCUE 2015 (秋)報告書
スポーツ文化を通じて、応急医療措置を含む「防災と減災に役立つ知識と技術」を高
めることで、自然災害の多発・高齢化社会の進行の中で必要とされる、レスキュー精
神の素晴らしさを国際社会に広く伝える ---
緒言
第1回目の「SPORTS RESCUE 2015(夏)」にひき続き、徳島県・高知県を舞台とし
た今回の「SPORTS RESCUE 2015(秋)」も、事故なく無事に所期の目的を達成でき
ました。これもひとえに関係者各位の皆様のご協力の賜物であり、厚く御礼申し上げま
す。
今回は前回のSPORTS RESCUE(以下SPORES)でのオートバイによる輸送訓練に加
えて、モーターパラグライダーによる空挺部隊が新たに参加し、物資輸送、人員輸送、
情報収集と伝達における新たな可能性を探っています。サポート部隊としては前回の神
戸学院大学に加えて地元徳島大学からもふるさと愛好会の有志が参加し、次代を担う防
災人材となることが期待されます。
また、IT技術を駆使して「被災地のニーズに確実にマッチした」無駄のない支援をす
ることや、災害下の混乱時にもボランティアの行動を把握し、確実な指示を行う試験も
行っています。
第1回と第2回の短いあいだにも、関東・東北豪雨災害が発生するなど、広域災害はい
ついかなるときも我々と無関係ではありません。東日本大震災をきっかけに高まった防
災の機運を決して風化させない、そのためにも、私たちは第1回の報告書での誓いどお
り、SPORESをこれからも継続し、改善し、防災の輪、地域の絆の輪、災害時医療への
貢献の輪を広げて参ります。
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SPORTS RESCUE 2015 (秋)報告書
目的
1. モータースポーツをはじめ多種スポーツ愛好者による融合型イベントを自治体と連
携して開催することで、開催各地の地域発展と自然災害発生時のサポート体制の充
実に寄与する。
2. 参加者が応急治療を含む「防災と減災に役立つ知識と技術」を学び高めることで、
レスキュー精神の広がりと南海トラフ地震等の災害時の支援意識の高揚を図る。
3. 四国発の『防災社会システム』の構築による、防災に関するハードウェア・ソフト
ウェアの両面による「ジャパニーズ・コンテンツ」の提供を目指し、二十一世紀の
安全な街づくり・人づくり・物づくりに寄与する。
実施概要
日時
平成27年11月7日~8日
実施地域
11月7日:徳島県 阿南市を起点として美波町を経由、牟岐町に至る
11月8日:高知県 四万十市起点、黒潮町の中継点から同町拳ノ川診療所に至る
参加人数
オートバイ部隊: 26名(うち、地元自治体職員9名)
モーターパラグライダー部隊: 5名+専属サポート4名
地域・自治体のご協力者: 10名
運営・オブザーバ: 神戸学院大学教授2名 学生1名 徳島大学6名 BERT5名
合計: 59名
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後援・協賛・協力
○後援
内閣府、厚生労働省、国土交通省四国地方整備局、
岡山県矢掛町、兵庫県佐用町、
危機管理都市推進議員連盟、オートバイ議員連盟、
認定特定非営利活動法人AMDA、一般財団法人BERT
(順不同)
○協賛
ゴールドエコテック(株)、(株)神戸デジタル・ラボ、佐川急便(株)、
モチクリームジャパン(株)、タカヤマ金属工業(株)、
(株)シェリト・リンド、(株)食料マネージメントサポート(ITOCHU)、
ジャパンフーズ(株)、
(株)ペガソス・エレクトラ、(株)WINEX
(株)ドコモ CS 四国、乳児用液体ミルクプロジェクト
(順不同)
○協力
高知県、黒潮町、四万十市、高知市、須崎市
徳島県、美波町、牟岐町、阿南市
神戸学院大学、徳島大学、
MKクラフト、日本パラグライダー協会
香川県レスキューサポートバイク赤十字奉仕団(香川 RB レッドクロス)
特定非営利活動法人和歌山レスキューサポートバイクネットワーク
(WRB)
監修と徳島県でのオートバイ部隊参加:
徳島県立三好病院
黒田 耕司 氏
日本 DMAT 隊員(業務調整員)、DMAT インストラクター、
四国ブロック災害医療ロジスティックス検討委員、
米国心臓協会 BLS プロバイダー
監修:神戸学院大学 中田 敬司 教授
厚生労働省
日本 DMAT 検討委員会作業部会 委員、
一般社団法人 日本集団災害医学会
災害医療ロジスティックス検討委員会 委員長、
JICA 国際緊急援助隊医療チーム 総合調整部会 委員
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SPORTS RESCUE 2015 (秋)報告書
災害支援 IT システムの概要
BERT App:スマートフォン ( iOS / Android ) に対応した
アプリ。無償で一般公開中。会員登録しておくことで災害時に
は災害発生のプッシュ通知、被災状況の登録、ボランティアの
動静把握、ボランティアへの指示(地図表示など含む)などが
可能。災害時のボランティアの秩序だった組織化と情報化の要
となるべきシステム。
DReAMS:災害時の物資面での救援の効率化を図るシステ
ム。スマートフォンでは BERT App の中から、また PC でも
ウェブ経由で利用可能。
東日本大震災での過剰な物資が無秩序に押し寄せてかえっ
て避難所の機能不全を引き起こした事態の反省から、「あげる
人(協賛企業など)」と「欲しい人(避難所などの公的団体)」
の需給がマッチングされてはじめて自動的に物資の集荷→配
送が手配されるようになっている。
もし、この配送が災害により通常の運送会社のトラック便で
は行えない場合、トラックで進出可能な被災地最寄りの地点か
らは BERT によって組織されたボランティアが運送会社の便
を中継する形で最終目的地まで(ラストワンマイル)輸送を行
う。[今回の輸送訓練の想定ケース]
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SPORTS RESCUE 2015 (秋)報告書
訓練上の想定
2015年11月1日未明
南海トラフ地震が発生
各自治体は特別避難勧告を発令して市町村民を「避難所」に避難させる。
BERT App 側から災害発生のプッシュ通知の送信。
BERT App で被災状況登録を可能にする。
BERT App の利用呼びかけと使用方法の告知を SNS 等インフラに低負荷の方法で行う。
2015年11月4日
指定避難所から DReAMS 機能を活用して支援物資の要望をアップする。
支援物資の「提供側」は、災害発生後に「支援物資」をシステムにアップする。
「要望側」と「提供側」に、マッチングした「お知らせメール」が届く。
「要望側」と「提供側」のマッチングによって、佐川急便に集荷依頼が届く。
2015年11月5日
支援物資「提供側」のデポに、佐川急便は集荷トラックを走らせる。
「提供側」は緊急支援物資と一瞥で判断できる集荷物を佐川急便に託す。
「要望側」は佐川の追跡番号で、支援物資の現在位置を知ることができる。
2015年11月6日
土砂崩れで道路が決壊し、通常ルートで物資供給が出来ないと判断した佐川急便は、
配送先に近い集荷場にまで運び、配送品を留め置く(既存ルール)
。
2015年11月7-8 日
BERT 本部は佐川急便と連絡を取り合い、BERT が用意した「ラストワンマイル輸送」
、
バイク隊とモーターパラグライダー隊で代行輸送すると伝え、
DP ( Distribution Point ) 拠点までの配送を佐川急便に指示、DP で待機している空路
(モーターパラグライダー隊)と陸路(バイク隊)に支援物資の輸送をバトンタッチす
る。諸隊は GP(Goal Point, 目的地)まで予想される様々な困難をマネージして確実
に任務を達成する。
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第2回
スポーツレスキュー2015マネジメントシート
(徳島 DP)
日時
2015/11/7
(土)
予
時
間
8:20
8:30
場
所
天気
記録者氏名
曇り、雨
神戸学院大学
高岸明以
定
記録シート
内
容
時
道の駅 公方の郷
ブリーフィング終了。
なかがわ
那賀川河川敷へ移動。
那賀川河川敷
佐川急便から支援物資到着。
間
8:20
8:51
場 所
内
容
道の駅 公方の郷
ブリーフィング終了。
なかがわ
那賀川河川敷へ移動。
那賀川河川敷
佐川急便から支援物資到着。
9:00
物資の分担終了。
モーパラ、バイク
ミーティング、準備開始。
9:30
モーパラ、バイク
出発。
9:15
バイク隊 出発。
(12 時過ぎに牟岐町到着予
想)
10:09
定期連絡(阪入→吉村)…県
道 19 号通行止。
10:15
10:30
美波町
10:35
バイク 到着
海洋センター
モーパラ 出発
美波町
バイク オンロード班到着。
海洋センター
(定期連絡、物資受渡し
OK)
モーパラ、天候不良により那
賀川河川敷へ引き返し。
10:50
モーパラ 物資投下
10:50
バイク オンロード班出発
11:20
定期連絡(片山→BERT)…オ
タッチ&ゴー
11:00
牟岐町 少年自然
バイク隊 到着
の家
フロード班到着、荷物受け渡
し OK。
11:30
モーパラ隊
着陸
11:25
定期連絡(田所→吉村)…牟
岐町到着
12:00
反省会・総評
11:30
美波阿 波サンラ
バイク オンロード班
イン
休憩。
11:40
定期連絡(片山→BERT)…美
波町から那賀川河川敷へ戻
る。
11:53
牟岐町 少年自然
バイク オンロード班到着。
の家
物資受け渡し OK。
時
間
場
所
内
容
時
間
12:05
場
所
内
容
牟岐町少年自然
バイク オフロード班到着。
の家
物資受け渡し OK。
定期連絡(阪入→吉村)…オ
フロード班到着
12:30
那賀川河川敷
モーパラ隊 片づけ
12:35
牟岐町少年自然
反省会 総評 解散。
の家
第2回
スポーツレスキュー2015マネジメントシート
(高知 DP)
日時
2015/11/8
(土)
予
時
間
8:30
場
記録者氏名
曇り、雨
神戸学院大学
高岸明以
定
所
四万十川河川敷
天気
記録シート
内
容
時
間
7:58
ブリーフィング終了。
場 所
四万十川河川敷
佐川急便から支援物資到着。
9:00
モーパラ、バイク
出発。
内
容
佐川急便より荷物の引き取
り完了
8:05
ブリーフィング開始。
9:04
物資の分担終了。
バイク(+自動車 1 台)出発。
(国道班、国道外班①、国道
外班②の3チーム)
9:30
海のバザール
モーパラ悪天候のため待機
モーパラ 着陸
9:26
海のバザール
国道班、国道外班① 到着
9:33
国道外班② 到着
9:53
バイク隊 出発
10:21
BERT(山本、田所、吉村、高
岸)出発
10:30
10:45
10:25
バイク隊 到着
対策本部との連絡終了
10:27
国道外班① 到着
10:39
国道外班② 到着
10:50
高知県仮想対策本部に報告
県
や DMAT との連携説明
11:30
国道班 到着
高知県庁仮想対策本部に報
告
11:00
拳の川診療所
四万十川河川敷に終了報告
モーパラ 離陸
10:55
対策本部との連絡終了、県や
DMAT との連携の意義の説明
11:02
総評・挨拶
モーパラ海のバザール到着
解散
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レポート
第 1 日目:徳島県
阿南市 公方の郷なかがわ(集合)~ 同市 那賀川河川敷(DP)~
美波町役場 由岐支所B&G由岐海洋センター 田井ノ浜(GP1)
~
牟岐町 牟岐少年自然の家(GP2)
モーターパラグライダーが発着可能な那賀川河川敷を DP 拠点として、同じく発着可
能な 2 目的地を目指してモーターパラグライダーとオートバイの 2 手段で挑む。途中の
道路の障害の影響を全く受けない反面天候の影響を受けやすいモーターパラグライダ
ー、悪路にも悪天候にもまずまず強いオートバイ、それぞれの特性が活かせるか。
阿南市
公方の郷なかがわ(集合)
初顔合わせとなる参加者もいる中、改めて今回のイベントの目的を確認して全員の意
識を共有する。各参加者はリアルな災害の想定のもと、「自ら積極的に情報収集」して
あらゆる不確定な事象、想定外の事象に自律的に、混乱せず対応することをこのイベン
トを通して学び、伝えていく使命がある。
参加者である神戸学院大学教授陣や徳島県立三好病院勤務 DMAT インストラクター
の説く「迅速・安全・確実な輸送支援」「災害時医療における被災情報・傷病者情報の
収集と伝達」の重要性に一同納得。DMAT のような公的な仕組みにボランティアがど
のように貢献できるか、訓練を通して皆で考察していかなければならない。
同じく参加者である阿南市防災部のメンバーの引率で DP 拠点となる河川敷へ移動。
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SPORTS RESCUE 2015 (秋)報告書
阿南市
那賀川河川敷(DP)
DReAMS の指示により協賛企業から
佐川急便により集荷されてきた物資。こ
れらは佐川の通常便では道路障害により
GP まで配達できないと判断されて、到達
可能な GP 最寄りの配送店で留め置かれ
る。そこから BERT の指示で佐川急便の
委託を受けた配送業者が DP となる那賀
川河川敷まで支援物資を届けてきた。
本人確認(DP から先の配送を代行する
BERT 職員であること)の上荷物の引渡
し。
支援物資をモーターパラグライダー部
隊とバイク部隊で分担し、それぞれの部
隊で作戦会議。目的地に合わせて幾つか
の小隊に分けたり、目的地まで想定され
る災害に対応した、より安全なルートの
考慮を行う。
土地勘のある地元バイク部隊員による走行上の
ポイントを抑えた地図。正確な既存の地図だけでな
く、こうした手製の地図も併用して、全員で危険予
知のブレインストーミングを実施するなど、本部の
指示がなくても参加者が自発的に目的達成のため
に必要な行為を次々実行していく。
このような考え方や細かなノウハウを含めて忘
れることなく継承し、改善していかなければならな
い。また、土地勘のある自治体職員の方々との平時
からの連絡が非常時の混乱回避に活きてくること
も実感される。
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SPORTS RESCUE 2015 (秋)報告書
新しい分野からの参加者は新しい文
化と知識を持ち込んでくれる。単なる娯
楽ではない安全への厳格さで定評のあ
る日本パラグライダー協会の教育事業
部スーパーバイザが中心になり、PC を
活用した地形や航路の確認をしている
様子。安全であることの徹底、指示の明
確さ、システマティックで洗練された段
取りなど、学ぶところが多い。
自然と教授陣、学生さんを含むサポ
ート部隊も彼らの打ち合わせを傾聴す
べく集まってくる。このイベントが実
践の場であり、学びの場でもあるとい
う光景。
天候は良くないが出動の可能性を探
り準備に余念のないモーターパラグラ
イダー部隊。油断が事故を生み被災地
に二次災害の負荷をかけることになる
のは横目で見ているバイク部隊も同じ。
お互い良い緊張感を生んでいる。
美波町(GP1)
悪天候に苦しむモーターパラグライダ
ー部隊を置いて GP1 の美波町の海岸
に先着したバイク部隊。南海トラフ地
震想定で海岸沿いを避けて遠回りとな
る山中のワインディングを駆け抜けて
きた。
SPORES 2015(秋)
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SPORTS RESCUE 2015 (秋)報告書
こちらは離着陸可能な広い海岸でモータ
ーパラグライダーの到着を待つバイク部
隊。DP から途中の道がバイクでも到達で
きない場合を想定して、障害部分を空挺
部隊が飛び越え、GP 側から走ってきたバ
イク部隊と海岸でランデブーする想定。
勿論災害時にはこのような整った砂浜で
はなく、地上の障害で着陸不能になる可
能性は高いが、タッチ&ゴーで離脱する
ことは可能。
牟岐町(DP2)
最終着陸点に吹き流しを立ててモーター
パラグライダーの到達を願う牟岐町職員
の皆様とスタッフ。この日は結局離陸し
たものの、折からの強風に押されて前進
かなわず、燃料切れで基地へ帰還するこ
とに。残念ながら安全のための勇気ある
撤退。この様子は上空用デジタル簡易無
線で逐一本部へ報告されていた。
オートバイ部隊は問題なく到達、副町
長と町職員の皆様に物資の手渡しを行い、
基地に途中の状況と任務完了を報告。
この日はモーターパラグライダーとバ
イクの連携はかなわなかったものの、風
の影響を実感するとともに、逆に風を利
用した運行ルートの設定のためには予め
離陸・着陸のポイントのオプションを地
元に多数作っておくこと、その安全性を
地元の愛好者と連携して調べておくこと
など、打開策も見えてきた。
SPORES 2015(秋)
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SPORTS RESCUE 2015 (秋)報告書
第 2 日目:高知県
四万十市 四万十川河川敷
黒潮町
渡川緑地(DP) ~ 黒潮町 入野海岸(中継点)~
拳ノ川診療所(GP)
美しい四万十川の光景も、生憎の雨模様。
モーターパラグライダーは昨日のリベン
ジなるか。参加者の顔ぶれも昨日と入れ
替わった部分もあり、再び入念なミーテ
ィングを行う。この日はパラグライダー
元世界チャンピオンも合流。
佐川急便の委託を受けた運送便がこの日
も予定通り DP まで物資を届けた。物資
はバイク部隊とモーターパラグライダー
部隊で分担、バイク部隊はさらに参加者
である高知県危機管理部
危機管理・防
災課の皆様が分隊長となって、ミーティ
ングの結果仮想の被災状況と現地の地勢
に即した内陸ルートを選択。
雨脚が徐々に強くなる中、バイク部隊は
一足先に中継地点へ出発。中継地点でモ
ーターパラグライダーを待ち受けて物資
をリレーする役、GP まで直接物資を届け
る部隊もスタート。
入野海岸(中継点)
順調に飛べば内陸を遠回りするバイク部
隊よりモーターパラグライダーのほうが
遥かに早く到達する(大きな利点)が、
なかなか降り止まぬ雨のため中継点には
バイク部隊が先に到達。
大型輸入バイクでの参加者は自慢の耐候
性で快適なツーリングとなったものの、
事後の感想メールによれば「実際の 災害
時には大型すぎて障害回避に手こずるか
もしれない」と感想を吐露してくれた。一方百戦錬磨の日本赤十字社特殊奉仕団、香川
RB レッドクロス隊員は実際の災害時でも少々の瓦礫はものともしなかったトレール車
や農耕バイクでの参加で、濡れねずみながら意気軒昂である。
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SPORTS RESCUE 2015 (秋)報告書
黒潮町 拳ノ川診療所(GP)
オートバイ部隊が実際の災害時に医療
拠点となる高台の目的地に到着。待ち受
けていた黒潮町地域住民課の方に医薬品
などに擬えた支援物資を手渡す。
救護所の衛生を保つ殺菌効果のある水、
長期備蓄に耐え即使える懐中電灯、清潔
な飲料水、非常時に母乳が出なくなった
代わりとなる液体ミルク、避難所のこど
もの心を癒やすぬいぐるみや絵本等々、協
賛企業様からのどれも真心のこもった贈
り物であり、一同その思いと意義に感謝す
るとともに、災害時への備えの重要性への
認識を新たにした。
また、物資輸送だけでなく情報の収集と
伝達も大切な任務である。県庁の協力の下、
通信会社より貸出された災害対策用携帯
電話を用い、県庁に設置された仮想災害対
策本部に被災状況や傷病者情報を連絡す
る訓練を実施。
参加者にはこれが県庁と連
携した DMAT の眼と耳となり、EMIS を
補完する機能であることを説明。また、実
際の災害時で固定回線も使えず、故障して
いない携帯電話も数少ない事態になれば
この災害対策用携帯電話が EMIS のバッ
クボーン回線にもなり得るとも付言。
また、参加者からは「DMAT は通例ま
とまって 1 台の乗り物で派遣されるから、
オートバイ乗りの支援者は DMAT 要員が
単独行動する場合の現地の手足として有
用」との指摘もあった。
オートバイ部隊の終わりのミーティング中、モーターパラグライダーも晴れ間を得て
離陸、その後すぐに見事中継点についたとの報告があった。
以上、関係各位のご尽力のおかげで無事全日程を終えられたことを感謝致します。そ
のすべてが順調というわけではありませんでしたが、すべては必ず今後に活かしてまい
ります。
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SPORTS RESCUE 2015 (秋)報告書
その後
参加者に防災における常日頃からの地域内の絆、他地域との連携の重要性や災害時医療
への貢献について、このイベントを通して考えたことを感想メールとして募集した。
続々と参加者それぞれの視点に立った声が届いており、貴重な意見として今後のイベン
トの改善、そして防災ノウハウの蓄積に活かしていきたい。
まとめと課題
今回の参加者はモーターパラグライダー部隊を除き前回に引き続いての参加者が多
く、しかも自治体関係者や日本赤十字社の関係者が多くを占めるなど、職業的にも防災
スキルが高く、モーターパラグライダー部隊含め総じて質の高い参加者に恵まれた。
初回ということもありお祭りや地域おこしイベント的な要素もあった前回と比べる
と、直接の参加者や支援者自体は少なくなっている。しかし、参加者をある程度絞り込
んでより本質的な訓練や意見交換、情報の共有を進めたことで、参加者それぞれの社会
的影響、その裾野の大きさも相まって今回も意義の深いイベントとなった。
運営的には参加者の質に助けられた部分も多々あったと考えられる。今後今回イベン
トの継続的なレビューを通して今回得られた知見を収集、分析、蓄積をすすめ、今後の
イベントにおいては彼らの質の高さを活かしつつも、彼らの質に依存することのないよ
り体系化された訓練となるようにしなければならない。それが、また新たな参加者を受
け入れたときの訓練効果を最大化するものとなる。
勿論、地域の絆の活性化が防災や災害時医療を支える原点となる、という当団体、そ
して BERT 未来防災研究所の思想は変わることがなく、今後のイベントでは時機に応
じてより強く地域活性化色を打ち出すことも考えている。
モーターパラグライダー部隊の参加は空飛ぶモノ特有の安全思想など、訓練に新たな
文化の風を吹き込む大変価値のあるできごとであった。輸送任務の遂行状況は予定通り
とはいえなかったものの、災害時の対応力は今後離着陸地点などさまざまな条件に予め
選択肢を持つようにすることで磨かれると確信できた。また、自然の力に逆らわず、地
形に寄り添う姿勢は国土を深く知り、守っていく価値に気付かされた。今後もこうした
異分野との交流を進めていきたい。
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SPORTS RESCUE 2015 (秋)報告書
IT 関連では、今回は参加者もさほど多くなく、スマー
トフォン利用者でない参加者、BERT App をインストー
ルしていない and/or 会員登録していない参加者もいた
ので、BERT App の「参加者証表示」によるチェックイ
ン・チェックアウトよりもビブスの貸出・回収枚数によ
る人数把握のほうがむしろ簡便であったが、参加者が増
えるに従い IT 化の威力は増してくる。
DReAMS についても今回はスケジュールの関係で実際
の操作を避難所の自治体職員にお願いすることはできな
かったが、事前のリハーサルどおり動作し、当日もきち
んと集荷→営業所留置→DP まで中継輸送が行われたこ
とで、実証実験としての効果があったと考えている。
おわりに
今回のイベントの成功に、多大なご尽力を頂きました関係者各位、ご後援、ご協賛、
ご協力賜りました行政機関、協賛企業の皆様、開催地の自治体の皆様、その他たくさん
の皆様にこの場を借りて厚く御礼申し上げます。
ありがとうございました。
以上
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