ケイタケイ LIGHT 津々浦々シリーズ 2014 私たちはかつて何処で踊っ

天地の振動、時空の波動が生命行為とシンクロする!懐かしくも未知/普遍のダンス・パフォーマンス!
ケイタケイ LIGHT 津々浦々シリーズ 2014 ケイタケイ’s ムービングアース・オリエントスフィア 私たちはかつて何処で踊っていたのか? 夏 ノ 群 舞 〜 相 模 の 国 編 ・77 月 2200〜2211 日 相模原・道志川辺、鎌倉・稲村ヶ崎海辺 秋 ノ 群 舞 〜 淡 路 ・ 四 国 編 ・99 月 2200〜2288 日 淡路・伊弉諾神宮、徳島・吉野川の川辺、高松・中央公園 善通寺・四国学院大学ノトススタジオ、芸西村・琴ケ浜松原野外劇場浜辺、松山・重信川河口、 松山・中島総合文化センター((中島)) 冬 ノ 独 舞 〜 墨 田 編 ・1122 月 2288 日 両国・シアターXX ■お問い合わせ:制作担当 斎藤 朋 〒132-0035 東京都江戸川区平井 2-15-7-503 マルメロ tel 03-5627-7583 fax 03-5627-7584 携帯 090-2435-1654 e-mail: [email protected]
《LIGHT》 シリーズ とは?
★ 1969 年、 ケ イ タ ケ イ が ニ ュ ー ヨ ー ク を 拠 点 に 、 多 国 籍 の 学 生 仲 間 た ち と の 創 作 か ら は じ め た ム ー ビ ン
グ ア ー ス 「LIGHT シ リー ズ 」が、全米、世界の舞踊界に衝撃を与えてから 45 年。60 年代から勃興したポスト・モ
ダンダンスの最重要作家の一人でありながらも、抽象的な実験性にとどまらず、労働や生活、芸能、稚児の遊び
などに根ざした動きから自然、民話性まで醸し出されるダンス・パフォーマンスは、コ ン テ ン ポ ラ リ ー ダ ン ス の 先
駆 け ともい え る 自 由 な 精 神 と旺 盛 な 活 動 で 、世 界 各 地 で 賞 賛 され 、尊 敬 の 念 を 集 め てきました。
★ ひとつの章が独立しながらも、延々と連なる 31Part を 1996 年までに発表。それは根源的に、ひ とつ の 作 品 で は
踊りの魂と感覚は完結できないというダンスの宿命をもって、世界中で終わらない旅を繰り広げてきたこ
とを意味します。2009 年、40 年目となる節目の年から、全 31 作品中これまで日本で発表されることのなかった作
品等に現在の日本のメンバーとともに再び挑み、作品内実の普遍性と踊りの現在を問いかけています。
★ 「40 年。思えば、あっという間の気がします。この 10 年ほどは、色々な分野の表現者との共同作業が面白く、自
分の作品よりはコラボレーションに没頭してその中で踊ってきました。そして多くのことを学びました。でも、 つい
最近の事。私は…というか私のすべてが「はっ」と気付きました。LIGHT シリーズを踊っていない自分に…。今、そ
の輪から「ポッ」と抜けて、ひとり自分が立つ。ほんらいの創作畑に立っている自分を、実感しています。これから、
何年もかけてもう一度「LIGHT」シリーズを踊りたい、創りたいという気持ちが高まり、旧作の再創造、新作に取り
組みはじめました。」(ケイ タケイ)
★ まず 2009 年 8 月に、スタジオで 6 日間、35 年ぶりに「Part 7, Diary of the field 創作畑の日記」を上演(2010
年には東北再演ツアー)。グループワークの処女作といえるこの作品は、当時のビデオ記録もなく、創作ノートを
片手に再創作。当時の作品と違いがあっても舞踊魂は同じであることが、現在のメンバーと観客にも伝わり、演劇
と舞踊の境界から生じたような、熱気と密度のある根源的なパフォーマンスで好評を得ました。
「そもそもケ イ ・ タ ケ イ の 世 界 は 、 何 が そ れ ほ ど オ リ ジ ナ ル な の か 。 ブトー(舞踏)でもなく、モダン・ダンスで
もなく、ましてや軽薄なコンテンポラリーでもない身体の造型。これは正しくわれわれ日 本 人 が 、 遠 く 受 け 継 い で
き た 胎 内 の D N A を 、 そ の ま ま 取 り 出 し て 見 せ た も の ではないだろうか。これを機に、LIGHT シリーズからピッ
クアップしたいくつかの作品が、今後のスケジュールとしていくつか組み込むという。一貫したケイ・タケイのダンス
宇宙を、じっくりと味わってみる絶好のチャンスだといえる。特に若い人はおたがい誘ってでも見るべきと思う。」
(舞踊評論家・日下四郎)
Part 7 「創作畑の日記」
Part 32 「時空に墜ちる者たち」
Part 36 「風を追う者たち」
★ 2009 年 12 月末には、年末恒例のシアターX 公演で、初のソロ作品となった「Part 8」と「Part 26 ある女の死」
「Part 28 米を洗う女」と、代表的なソロ作品3本を上演。「Part 8」では、日蓮宗の僧侶が舞台で声明を唱え、共演
し、絶賛を受けました。「…短編とはいえ、ここにはある意味でケイの芸術の、もっとも本質的な部分が凝縮されて
見えるという、得難い企画だった。中でも初めて作ったという『パート 8』が傑作。白い布衣を次々と身にまといつけ
て、ダルマのように身動きならぬ姿になり果て、最後は黒子に運び去られるのだが、その間僧侶がお経を読みな
がらグルグル周囲を回り続けるという空間構成。笑 い の 裡 に 人 生 の 哲 理 が す る ど く 見 者 の 心 に 突 き さ さ る 。
実に奥のある逸品のソロだった。」(日下四郎)
★ そして 2010 年1月。開場したてのパフォーマンスの原点の匂いを漂わせる劇場、座・高円寺1で、13 年振りのシ
リーズ新作 Part 32「時空に墜ちる者たち」を発表。作曲家・佐藤聡明氏の初期のはげしいピアノ音楽とともに、私
たちの時 空 は ど こに あ る の か とい う意 識 や 感 覚 を 問 い な が ら、い っぽ うで は 〈自 己 〉を棄 て て で も時 空 に
墜 ち こん で い くよ うな 精 神 とうごきの 波 動 が多くの観客の胸を打った。 この作品は、Part 34「CHANTING HILL」
(2011 年)、Part 36「風を追う者たち」(2012 年)と合わせて、カンパニーの最新3部作を成すことになった。 Part18「二つの麦畑」
Part28「米を洗う女」
海辺にて
Part34より「若葉の踊り」 雪の中
四季折々、日本各地のさまざまな自然・環境とヴァイブレーションする ケイタケイ LIGHT 津々浦々シリーズ
LIGHT, Part 38 「前ぶれ〜波〜」 鎌倉・稲村ケ崎 夕日公演写真 2013.7.15 による Part 40 のチラシ
■趣旨
★ 2009 年に、現在のメンバーとともに日本未発表作品の再創作と新作初演の旺盛な連続公演を開始してから 3 年
で 11 作品(ツアー含め、全 36 作品)の上演におよんだ(2012 年時点)。
これらの活動は、「文 化 人 類 学 的 視 点 か ら ダ ン ス を と ら え 、 日 本 的 ひ い て は 汎 ア ジ ア 的 身 体 性 を 探 求 、 独
創 的 な 作 風 を 生 み 出 し た 。 近 年 は 、 自 然 、 環 境 と 身 体 と の 関 係 を 軸 に 意 欲 的 な 創 作 を続けており、昨年発
表した『CHANTING HILL』『水溜まりをまたぐ女・かもめ』ほかの成果に対して」(受賞理由)と、2012 年 、第 29 回
江 口 隆 哉 賞 及 び 江 口 隆 哉 賞 に 係 る 文 部 科 学 大 臣 賞 が 授 与 されることになった。
この連続公演の反響、要望をうけ、2012 年度からあらたな展開として、「LIGHT」作 品 群 を、四 季 折 々 、ふ だ ん
は 現 代 の ダ ン ス が 上 演 され に くい 地 域 をふ くめ 、東 西 南 北 、津 々 浦 々 を巡 るシ リー ズ を開 始 しました。
★ ケイのソロ代表作と新作を中心に、生命のみなもとである海辺、水源地の清流から寺の境内、オリーブ園、600
枚の棚田、被爆建築物、神話の浜、鳥取砂丘、能舞台、スタジオ、劇場…など、3.11 から 2 年後、3 年後の 3 月
東北鎮魂ツアーまで。ひとりの女の決して屈しない逞しい生命力と日常的なしごとや労働、家事が舞踊まで高めら
れたうごき、大地から宇宙のいとなみの振動、リズム、ムーブメントをつたえる群舞など、劇的な世界の数々。
2013 年7月の稲村ヶ崎の海辺での LIGHT, Part 38 「前ぶれ〜波〜」公演では、以下のような感想が寄せられた。
●心洗われるようなパフォーマンスでした。
この貴重な一瞬一瞬を、海辺に集った皆さんと共有できたことは新鮮な記憶となりました。
ダンスの動き、構成もシンプルで力強いものでした。どこか誠実な労働を思わせる動きです。moving earth は大地と
ともに生きること、切実であり、同時におおらかであるような時空間に全身で応えようとする姿が基調となっているこ
とを、改めて確認いたしました。
(國吉和子 舞踊評論家)
●先日の作、何回見ても感動するケイタケイの世界の再確認でした。それは、そこに集まるひとたちの熱であり、ひ
たむきな姿勢だと、改めて思いました。
(長谷川六 舞踊評論家)
●観ている人が、先入観なく、いかに自由に、創造的に感じてもらうかが、タケイさんのねらいではないかと思い始
めました。人間も自然の一部、さらに言うならば、地球の一部、宇宙の一部とも言えます。その中で、唯一感情が豊
か、頭脳に優れた人間は、英知を出し合い文化を創造する。と同時に、武器や戦争、公害など、破壊する行為を繰
り返す・・ダンスを通してタケイさんから、天地創造では無いけれど、私たちが向かうべき本来の姿はどうあるべきな
のか?再度問いかけ、警鐘しているのではないか、という思いを受け取りました。
(佐藤潤子 観客)
★ かつてア メリカの TV 特 集 番 組 が 、ケ イを < 主 流 を 超 え て > と紹 介 したように、一貫してい ず れ の ダ ンス ・
ム ー ブ メ ン ト に も 属 さ ず 、 既 成 の 技 法 や ポ ス ト モ ダ ン の 抽 象 に も と ど ま る こ と の な い オ リ ジ ナ ル な 世 界 。そ
れは、大地や自然、動物、そして太古の闇と光、伝統、労働、時間、呼吸、重力との関係とリズムを刷新し、具体
的な行為から独自のダンスへとしなやかに、力強く昇華してやまない。その風合いからは、懐 か し く も 未 知 の 、
人 間 の 魂 とい とな み の 根 源 の 律 動 とヴ ァイブ レー シ ョン がひたひたと迫る。
現代社会において、混迷する人 間 の 心 とか らだ を 開 放 し、社 会 の 闇 に 一 筋 の 〈光 明 LIGHT〉を 投 げ か け る
としたら、さまざまな場所、とくに〈自然〉という大いなる環境の中、さまざまな形で照射したいと願っています。
「ケイタケイ LIGHT 津々浦々シリーズ」にどうかご期待ください。
■2014 年度ツアー実施時期・場所
Ⅰ 2014 年 7/20(日)、21(月)
ケイタケイ’s ムービングアース・オリエントスフィア LIGHT, Part 40(創作初演)
会場:相模湖上流 道志川の川辺(神奈川県相模原市)、稲村ヶ崎の海辺(神奈川県鎌倉市) 計 2 回
Ⅱ 9/20(土)〜28(日) ケイタケイ’s ムービングアース・オリエントスフィア LIGHT, Part 40
会場(予定):伊弉諾神宮(兵庫県淡路市)、吉野川の川辺(徳島県徳島市)、中央公園(香川県高松市)、
四国学院大学ノトススタジオ(香川県善通寺市)、琴ケ浜松原野外劇場浜辺(高知県芸西村)、
重信川河口(愛媛県松山市) 、 中島総合文化センター(愛媛県松山市) ほか 計 7 回
Ⅲ 12/29(月)
ケイタケイ・ソロ・ダンス LIGHT, Part 41(創作初演)
会場:シアターX(東京都墨田区) 計1回
合計 13 ヶ所 13 回
■作品内容
ⅠとⅡ ケイタケイ’s ムービングアース・オリエントスフィア LIGHT, Part 40 〜ときの方舟〜
カンパニー最新三部作 LIGHT, Part 32, 34, 36 の壮大なスケールの宇宙、生命観を展開した作品を、山、川、海と
いう生命空間に還し、さらに凝縮、結晶させた野外公演、LIGHT, Part 38。昨年、川辺で早朝 6 時、夕方 6 時、海辺
で夕方 6 時の 3 回公演を行い、時空間がまさに融合し、本領発揮の評価と手応えを感じた。それを<陰>の世界とし、
今年は Part 40 で<陽>の世界を創作、Part 38 の一部をまじえながら陰陽二部作を同じ野外で上演する。
人間が地球、自然の一部であることは間違いないが、人間のうちに自然も地球も内在し、息づいている。ダンサー
はお日様のように登っては沈み、また波のように寄せては返し踊る。地球と生命環境のリズム、気に逆らわず、共
同で生きること、仕事することがダンサーというワーカーの宿命。一見同じように見えながらわずかな変化や波動
が、群れとなり、反復のリズムは創造的舞踊性を生み起こす。一日の半分である日没後の世界のいとなみと合わ
せて“自然界の和”とし、この 6 年間の地球活動(ムービングアース)の集大成を創作、上演する。
Ⅲ ケイタケイ・ソロ・ダンス LIGHT Part 41(創作初演)
最初のソロ Part 8 から、この 5 年間の間に発表してきた「ある女の死」「米を洗う女」「走る女」「水溜まりをまたぐ女」
「待つ女。」といった〈女〉の歩く道シリーズ。日常や労働の中に見い出したかすかな舞踊の源泉を掘り下げて、踊り
へと高めてきたケイが、30 年にわたるソロ作品の<光>景を肉体と魂の内部で再編纂。
最近、〈女〉だけではなく、父あるいは師といった<男>が入り込んだ肉体で、表情はがらりと変化し始めている。ケイ
が長年全力で疾走し、日常から繰り返し抽出してきた人間の<光>は角度を変えて、さらに奥深く人生を示唆。無限
のヴァリエーションが連なり、独立しながらも連続する、まさに「LIGHT シリーズ」そのものとして結集、描き出す。
■スタッフ/キャスト
演出・振付:ケイタケイ
出演:ケイタケイ、ラズ・ブレザー、石田知生、石村弘子、いとう由香、岩崎倫夫、大野由美子、川原田瑞子、
大塚麻紀、角隆司、木室陽一、響子、青柳ひづる、福島哲彌、前田ゆきの、丸山晶
美術:河内連太(全、東京)
音楽:嶋田吉隆(Part40)
舞台監督:河内連太(フリー、東京) 照明:清水義幸(カフンタ、東京) 衣装デザイン:ケイタケイ
制作:斎藤朋(マルメロ、東京)
主催:ケイ・タケイ’s ムービングアース・オリエントスフィア 助成:芸術文化振興基金
ケイ タケイ
Kei Takei
舞踊家、振付家。ケイタケイ’s ムービングアース・オリエントスフィア主宰、障害者ダンスグループ 月の石も主宰。
檜健次、藤間喜与恵に師事。1969 年 5 月、「LIGHT, Part1」にてニューヨーク・デビュー。1978 年ネザーランド・シアタ
ーに委嘱作品の振付け。1978 年と 1985 年日本招待公演(文化庁、日米交流基金招待)。1980〜1983 年アメリカン・
ダンス・フェスティバル講師。1982 年イスラエルのインバウ・カンパニーの作品に振付け。1990 年米国ミネアポリス、
他にて「24 時間 LIGHT」上演。1993 年、息子の小学校入学を機に帰国。1994〜2008 年シアターX インターナショナ
ル・ダンス・フェスティバルにて振付、出演。「24 時間 LIGHT」を 1995 年東京で、1997 年ベルリン、英国ウェールズに
て上演。1998 年長野オリンピック文化芸術祭参加作品に振付け。2001 年イスラエル、サンフランシスコ、ニューヨー
クで公演。2002 年、日印国交樹立 50 周年記念公演参加インド公演。2007 年、オランダの音楽家とともに公演「変身
Corpora-Allata」。2008 年アメリカン・ダンス・フェスティバル 75 周年記念にて公演。2009 年、ソロでドイツ公演、シア
ターX「小栗と照手」(共同演出、振付、出演)ヨーロッパ・ツアー。
2009 年からを再スタートした「LIGHT シリーズ」は、現在、Part 36 まで発表と精力的に活動をおこなっている。
これまでにフルブライト・スカラシップ賞、ナショナル・エンバーモン芸術助成金、グッゲンハイム・グラント、N.Y.S.C on
the ART 振付賞のための助成、WAVE Hill 振付賞、HOUSE OF SIRCLES ユトレヒト振付賞助成、Tanztheater
Schanspielhouse 振付賞などを授与。日本舞踊批評家協会賞(1979)、Meet The Composer 賞(1991)、第 27 回ニム
ラ舞踊賞(2007)、第 29 回江口隆哉賞及び江口隆哉賞に係る文部科学大臣賞(2012)などを受賞。
穏やかに、普遍の営みを描きだす ── ケイ タケイ 上野房子 ( ダ ン ス 評 論 ) 思い返せば、20 世紀のダンスの本流は、より速く大きく雄弁であることを基軸にして推移していた。1969年に産声
をあげたケイタケイの「LIGHT」は、しかし、もっぱら穏やかに緩やかに歩みを重ね、ケイタケイの踊り、としか形容し得
ない作品群であり続けている。その緩やかさと穏やかさの根底にあるものを、普遍という言葉で言い表してみたい。
特定のテクニックや時、場所など、様々な括りに捕われることのない、大らかさをそこに感じることが出来るのだ。
ケイタケイの振付語彙は、独特だ。ムーバーこと、「LIGHT」シリーズの出演者達が繰り広げる動きは、彼女がかつ
て学んだモダンダンスやバレエなど、既存のテクニックには拠らない、どこかのどかな風合い(少なくとも筆者が見た
パートでは)。むろん、彼女がニューヨークに渡った当時、隆盛していたポスト・モダンダンスに見られる、既存のテクニ
ックに挑みかかる好戦的な構えとも一線を画する。ただし、振付にしばしば織り込まれた、農作業や祭礼、何気ない
日常のひとこまを彷彿させる身ぶり手ぶりが、日本人に郷愁を感じさせることはある。
たとえばPart 27『最後の米畑』にちりばめられていたのは、田植えや収穫、盆踊り等、田んぼをめぐる日本の原風
景のような情景。ところが初演当初、ケイタケイは「田んぼはインターナショナル」だと語り、米畑を日本固有のものと
捉えていなかった。そこに暮らす人間の暮しに直結し、その国ごとにニュアンスの違う畑に感動する、との言葉も記憶
に残っている。
「LIGHT」には米畑に加えて、野菜や麦、石、風、さらには“創作畑”まで、様々な畑が登場するが、それらは決して
特定の場所の特定の畑ではない。彼女にとっての畑とそこで行われる種々の行為は、食べること、 生きること、 創
作すること、すなわち人間の普遍の営みの象徴にほかならない。ケイタケイは、独自の語彙で普遍の世界を描き出
す振付家なのだ。
ケイタケイは、穏やかながら、変化に富んだリズムを刻む演出家でもある。
「LIGHT」シリーズに流れるリズムは二つに大別できる。一つは、個々のパートのなかの、ゆったりとした起伏。起承
転結と呼ぶほどには理路整然としていないが、各パートのおおよその構成は、どこからともなくムーバーが現れ、何
かを行い、いずこかに去っていく、というもの。これらのパートが連綿と連なると、もう一つのリズム、つまり、どこが始
点とも終点ともつかない、時には立ち止まり、後ずさりしながら本流に立ち戻る、大河のようなリズムが生み出され
る。
この穏やかなリズムを、ケイタケイは突然、断ち切ることがある。「LIGHT」初のソロ作品となったPart 8では、仏僧
が朗々と声明を唱える傍らで、彼女はコブのような突起がついた奇妙な衣服を幾枚も身に着けていった。やがて身動
きが取れなくなり、スタッフに搬出される。ケイタケイはこの結末をやんわりとした笑いで包んでいたが、リズムの断絶
が死を示唆することは明白。流れ続けることが、リズムの命脈なのである。
「LIGHT」が連綿と続いていることを逆手にとり、自らを茶化してしまった演出も印象深い。Part 20と21の一節で、ム
ーバー達が振付のボキャブラリーが気に入らない、他パートと変わりばえしない等、口々に文句をこぼす。と、ケイタ
ケイは号令をかける。「フリーズ!」ざわざわしていた彼らは号令通りに静止し、辺りは静けさに包まれた。創作し続け
ることの難しさを垣間見せただけでなく、時間の流れを一瞬にして変える、小気味良いギアチェンジだった。
様々なリズムが流れる「LIGHT」をさらに魅惑的にする、ケイタケイという稀代のパフォーマーの存在も忘れてはなら
ない。
彼女の外観といえば、童女の初々しさを残した面差しに、切りっぱなしの長めのオカッパ髪がトレードマーク。衣装
は、簡素な木綿のシャツとパンツで一貫。およそ飾りっ気のないケイ タケイが動き出すや、説明や描写を経ることなく、
即、核心に到達する。
Part28「米を洗う女」では、神妙な面持ちで米を洗い始め、ほどなくして身ぶりが大きく楽し気になり、労働だったは
ずの米洗いが遊びに転じる。米を洗う身ぶり自体を楽しんでいるのかもしれない。同じ行為を繰り返してその意味合
いを変化させ、逆転させ、やおら元に戻す。あるいは見る者の視線を自分の手許に引きつけたかと思うと、背後に広
がる空間を意識させるなど、自由自在。 声高にならずとも、雄弁なムーバーなのである。
振付家、演出家、ムーバーとしてのケイタケイと不即不離の「LIGHT」シリーズ。13年ぶりの新作『時空に墜ちる者た
ち』で、果たして彼女はどのような顔を見せてくれるのだろうか。
(2010年1月「LIGHT, Part 32 時空に墜ちる者たち」パンフレットより)
ダンスの海へ----ダンス・バレエの備忘録 22000099--0088--2255 高橋森彦 ■[[DDAANNCCEE]] ケイ・タケイ’s ムービングアース・オリエントスフィア・LLIIGGHHTT,, PPaarrtt 77 『DDiiaarryy ooff tthhee ffiieelldd——創作畑の日記』 ケイ・タケイ(武井慧)という舞踊家/振付家をご存知でしょうか?
日本が生んだ舞踊家としてもっとも国際的に名を知られたひとりであり、オックスフォード舞踊辞典にもその名がの
るほど。以前、タケイについて調べる機会があり、実際に舞台を観たこともあるのですが、その略歴と仕事の一端に
触れるだけで圧倒されます。とはいえ残念ながら海外での評価に比べ国内での認知度は高いとはいえません。
タケイは日本の現代舞踊のパイオニアの檜健次&日本舞踊の藤間喜与恵に師事したのちジュリアード音楽院舞踊
科に留学。アナ・ハルプリン、マーサ・グレアム、トリシャ・ブラウン等の下で学んでいます。折しもアメリカン・ポストモ
ダンダンスの最盛期のニューヨークで活動したタケイは、同地を拠点にムービングアースを結成して独自のダンスを
追究。1969年以降31作が創作された「LIGHT」シリーズはタケイの代表作となり、世界各地で繰り返し上演されてきま
した。近年は日本に戻りシアターΧでのコラボレーション企画等を中心に活動、「LIGHT」シリーズから遠ざかっていま
した。最初の作品の初演から40年を迎える節目の年に再び「LIGHT」シリーズ上演を本格的に開始。第一弾として
LIGHT, Part 7『Diary of the field—創作畑の日記』を上演しました。
舞台奥にウッドアートが4本ほど置かれている以外は舞台も衣装もほぼ白一色。足を悪くした魔女のようないでたち
のタケイがダンサーたちに向かって命じます。「呼吸しろ」「凍りつけ」……。ダンサーたちは命じられるままに動き、働
かされます。最後、ダンサーたちが小さく膨らんだ白い風船を田植えでもするかのように何度も植えつける印象的な
シーケンスまで動きは基本的にノンストップ。激しく暴力的ですらある。タケイの創作を、ポストモダン=洗練されたミニ
マルなものと考えていたら大違い。当時、故・市川雅はタケイの作品について“アルトー的残酷さを体現する”と述べ、
同時期のアメリカン・ポストモダンダンスとの相違を指摘していたのは慧眼といえるでしょう。タケイの作品は、ポストモ
ダンの洗礼を受けつつ独自の文脈で発展させたもの。発想の自在さにおいて現代のコンテンポラリー・ダンスとの断
絶を感じさせず、今みても刺激的です。
本作は「LIGHT」シリーズ初期作品であり、タケイにとってグループ作品としては最初とのこと。映像記録は残されて
おらず、タケイの創作ノートを基に再び創作されました。タケイ、ラズ・ブレザーのように初演時から出ている踊り手も
いますが多くは若手・中堅の新たなメンバー。河内連太による舞台美術も新たな装いを与えた箇所があったとか。パ
ンフレットにおいてタケイはこう書いています。“当時のものと今回上演するこの作品はちがいがあっても舞踊魂は同
じである”。単なる再演や再現ではない。真の意味でのリ・クリエーションであり、舞踊という再現性の薄い芸術表現に
おいて、伝承性や永続、再生の形についても考えさせられる大変興味深い上演でした。
タケイと仲間たちによる「LIGHT」シリーズ上演は続きます。12月末にはタケイのソロ「Part8&26」を上演。来年1月に
は「Part32 時空への旅2010」と題して十数年ぶりの新作が発表されます。タケイの再評価やポストモダンダンス再考
といった文脈に限らず、豊かで刺激に溢れるダンスを味わえる場としてその活動から目を離せません。
(2009年8月21日 スタジオ・ムービングアース)
ダンスの海へ 高橋森彦 22001122--0022--2222 [[DDAANNCCEE]] 第2299回 江口隆哉賞にケイ・タケイ 社団法人現代舞踊協会制定による第29回 江口隆哉賞にケ イ・タケ イが決まった。
授賞理由は以下の通り。
文化人類学的視点からダンスをとらえ、日本的ひいては汎アジア的身体性を探求、独創的な作風を
生み出した。近年は、自然、環境と身体との関係を軸に意欲的な創作を続けており、貴殿が昨年発表
された「CHANTING HILL」「水溜りをまたぐ女・かもめ」ほかの成果に対して。
江口隆哉賞は、わが国における現代舞踊の振興と協会の繁栄に尽力した故・江口隆哉の功績を記念し1983年
10月13日に制定された。年間を通じ優れた現代舞踊を創作発表した作者に、過去の実績を加味して授与するこ
ととしている。現代舞踊協会の理事と舞踊評論家・ジャーナリストによる選考会によって選出される。
よく誤解されているのだが、同賞の授賞対象は広く舞踊界(公益目的事業における顕彰事業)。現代舞踊協会
会員のみが対象ではない。前回の中村恩恵に続いて非協会員のケイ・タケイが獲得したことは舞踊界全体に対
して刺激をあたえるものになるのではないか。戦前から育まれてきたわが国の現代舞踊の歴史を尊重したうえで、
現代のダンスとの接点を見出していくという、より建設的な視座が打ち出されたといえる。
ケイ・タケイは現代舞踊のパイオニアのひとり檜健次と、その夫人の藤間喜与恵に師事した。のちにジュリアー
ド音楽院舞踊科に留学。アナ・ハルプリン、マーサ・グレアム、トリシャ・ブラウンらの下で学ぶ。アメリカン・ポスト
モダンダンス最盛期のニューヨークに学んだ彼女は、同地を拠点に仲間たちとムービングアースを結成する。独
自の舞踊語彙を開発し、1969年以降代表作のLIGHTシリーズを世界各地で上演してきた。文化庁の招待等によ
って来日公演も行う。欧米で各種助成金や舞踊賞を獲得。勅使川原三郎が登場する10数年も前から世界的知
名度が高い舞踊家・振付家である。
1992年帰国後も内外で地道な活動を続け、現代舞踊の折田克子やアキコ・カンダ、竹屋啓子らと共演する機会
も少なくなかった。とはいえ、欧米での高評価・高知名度に比し国内での評価が低かったのは否めない。2007年
度に第19回ニムラ舞踊賞を得ているのが目立つ程度である。が、最初の作品の初演から40年を迎えた2009年
以降、再びLIGHTシリーズ上演を本格的に再開。ダンサーやスタッフにも恵まれ、新作発表と旧作のリ・クリエー
ションを腰を据えて展開したことが今回の受賞につながった。
LIGHT, Part 34『CHANTING HILL』は昨年2月に日暮里サニーホールにて初演されたグループワーク。生の根
源と自然との共生・対話を探るという彼女の一貫して追求してきた主題がスケール大きな構成のもとに展開され
る。自然への畏怖や近代化する過程で人間が行ってきた営為への疑問を静かに訴える。文明批評的な奥深さを
備えた力作。大震災以前に発表されたがアクチュアリティがある。というよりも、いかにケイ・タケイが以前から今
日的な問題を独自の舞踊語彙をもってして語り継いできたかの証左といえる。いっぽう、年末にシアターΧで上
演したLIGHT, Part35『水溜りをまたぐ女』は新作ソロ。これは「ある女の生活記録」という副題を持つ。その年季
の入った踊り、舞踊家としてさらなる高み・深みを志向する覚悟を示しつつストイックにダンスと向き合う姿勢が圧
倒的であった。創作力・実績とも申し分ない。文句ない受賞であろう。
先日、受賞後初の公演として最新作 LIGHT, Part36『風を追う者たち』および LIGHT,Part12『Stone Field』をシ
アターΧ にて上演した。旺盛な創作欲に驚かされる。そして、世界中で上演されてきた代表作のひとつ『Stone
Field』のなかで印象的な、わらべ歌を用いた場面などは、師であった檜ひいては現代舞踊の潮流の DNA をも
感じさせる。江口隆哉の名を冠した、現代舞踊界最高の栄誉を受けるにふさわしい存在であると、あらためて
実感した。ケイ・タケイの、さらなる発展を願いたい。