=地域医療の再編が始まる~二次医療圏別の基礎的状況=

レポート(Vol.15 H27 年 3 月 27 日)
=地域医療の再編が始まる~二次医療圏別の基礎的状況=
昨年改正された医療法に基づく、各病院からの最初の病床機能報告も終了し、今後、この報告の集計
結果を活用して、各都道府県では地域医療ビジョンの策定、医療計画の見直しが始まります。
このビジョンが適用される二次医療圏は、現在 340 余りですが、その状況は多様です。今回は、その
基礎的状況について、集中度をキーワードにレポートします。
注:このレポートの数値は、次の統計資料から引用・集計しています。
国勢調査(2010 年)
、日本の地域別将来推計人口(2013 年)
医療施設調査(2013 年)
、病院報告(2013 年)
<本文>
はじめに ~
医療・介護の圏域整備
現在、医療・介護は 3 層の圏域で整備することとなっています。
まず、最も身近な圏域は市区町村です。市区町村では、
「地域包括ケア」と呼ばれる政策方針のもと、
医療と介護が統合された地域・在宅サービスを広める取り組みが始まったところです。
次に、市区町村を基礎として、病院等における入院医療を提供するための圏域として、都道府県が
二次医療圏を設定します。地理的条件、経済圏域、交通事情等を勘案して設定することとされていま
すが、現在、全国で 340 を超える数があり、これを単位に、病院の病床及び診療所の病床の整備に
関する計画や、5 疾病(がん・脳卒中・急性心筋梗塞・糖尿病・精神疾患)
、5 事業(救急医療・災害
時医療・へき地医療・周産期医療・小児医療)及び在宅医療の医療連携体制に関する計画が定められ
ます。
さらに、これら通常の二次医療圏では充足できない医療(広範囲熱傷・指肢切断・急性中毒等の特
に専門性の高い救急医療、臓器移植等の先進的技術を必要とする医療、特殊な医療機器の使用を必要
とする医療など)を提供する三次医療圏が設定されます。これは、原則として都道府県単位ですが、
最近では、全ての医療分野が都道府県単位で完結できる状況ではなくなりつつあるのが現実です。
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二次医療圏の概況
(1)面積と人口
日本の国土面積、人口規模を二次医療
圏数で単純に割ると、1 か所平均で面積
は 1,100k ㎡、人口は 37 万人程度になり
ますが、これに近い二次医療圏は、全国
に 2,3 か所ある程度です。
右図は、二次医療圏の 2010 年国勢
調査時点における面積、人口の分布を示
したものです。
面積では、42k ㎡(愛知尾張中部)
から 10,828k ㎡(北海道十勝)まで、
約 258 倍の差が、人口では、21,6 千人(島根隠岐)から 2,665 千人まで、約 123 倍の差があります。
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このうち人口 150 万人を超えるような医療圏は、人口の少ない三次医療圏の 2 倍を超えるような規
模ですので、横浜市のように、一つの市でも複数の医療圏に区分することで、医療機関の過剰な競合
の防止と市区町村単位の地域包括ケアの取り組みとの連携を促すことが進められると考えられます。
また、人口 20 万人以下の二次医療圏では、当該医療圏から他の医療圏に入院する人数(流出数)
が、他の医療圏から当該医療圏に入院する人数(流入数)を上回る傾向が強いことが指摘されており、
入院医療の単位としては機能していないとして、他の圏域への統合等の検討が進められる予定ですが、
流出が多い背景としては次のことが考えられます。
日本の人口のうち DID 地区の人口割合が 2/3
であることを踏まえ、
当該医療圏人口のうち DID 地区の人口割合の比
率で、次の 3 区分を設定
人口集中度
高
2/3 以上
(日本の平均以上の人口集中)
人口集中度
中
1/3~2/3
人口集中度
低
1/3 未満
上図は、340 超の二次医療圏を、当該医療圏の人口と DID 地区(1k ㎡当たり 4 千人以上の人口密度
で、5 千以上が一体として住む地域)の人口割合により区分したものです。
これによれば、人口 20 万人以下の二次医療圏 159 か所のうち、当該 DID 地区の人口割合が 1/3
未満のものが 82%(130 か所)を占めていることがわかります。この結果、人口 20 万人以下の二次
医療圏では、当該医療圏の人口集中度合いが非常に低く、当該圏域内に散らばって住んでいる状況に
あるため、病院側からは「患者を集めにくく医療機能を一定水準以上に成長させにくいこと(小規模
な病院が多くなる)
」
、一方、患者側からは「圏域の中心にある遠い病院より、近くの隣接する圏域に
ある病院に行くほうが便利である」といった両面の状況があいまって、流出超過になりやすくなるも
のと考えられます。
(2)人口変動と二次医療圏
これから人口減少は進行しますが、仮に、
現在の二次医療圏のままの場合に、どのよう
になるでしょうか。
右図は、市町村別の将来人口推計(福島県
は市町村別推計がないことから除外)から
作成した二次医療圏別の 2015 年と 2035 年の
差異を示すものですが、5 万人未満の区分が
43 圏域へと増加し、他の区分は減少すると
いう結果です。
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現在、5 万人未満の圏域は、離島や半島が過半を占めていますが、20 年後には、それ以外の地域
にも広がることが確実です。これらの二次医療圏は、現在のままでの存続は難しいと考えられる
ため、二次医療圏の減少が進むと考えられる一方で、入院患者の現状の流出先が、同一都道府県内
でない場合もあることから、既存の都道府県の枠にとらわれない~都道府県域を超えた二次医療圏
の設定が必要な時代が来るものと考えられます。
上図は、
(1)と同じく人口集中度で 3 区分して人口変動の特徴をみたものです。
まず総人口については、上左図の通り、2015 年では、人口集中度高の圏域は約 70 百万人(56%)
と、人口集中度中の 35 百万人(28%)、人口集中度低の 19 百万人(16%)を大きく上回って
います。さらに、上右図の通り、総人口は各区分とも 2035 年に向けて減るものの、その減って
いく割合は、人口集中度高の圏域が最も高く、人口集中度低が最も低いことから、結果として人口
集中度高の圏域のウエイトが現在以上に高まることになります。
次にサービス提供者となる 20~65 歳と、主たるサービス対象者となる 75 歳以上の世代の動きを
みると、右上図の通り、人口集中度高の圏域では、サービス対象者の増加が著しい(サービス提供
者の母数の減は少ない)ため、主としてサービス量の拡大が主たる地域課題である一方で、人口
集中度低の圏域では、サービス提供者の母数が 3/4 へと大幅に減少する(既に高齢化が進行して
サービス対象者の増は少ない)ため、主として職員確保が主たる地域課題と把握されます。
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二次医療圏の医療資源(人口集中度別)
(1)診療所・病院数
二次医療圏別に差異はあるものの、平均すれば
右図のように、人口 10 万人対の一般診療所は
人口集中度に比例して増えていく一方で、人口
10 万人対の一般病院数は人口集中度に反比例し
て減少していく傾向にあります。
この背景には、一般診療所は、患者確保~採算
確保の面から、人口集中地区の開業が有利である
こと、一方、一般病院は、人口集中度の低い地域
では、土地確保の面から開設しやすいこと、及び
患者の利便性から小規模・多数の設置が進んだことが考えられます。
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(2)病院病床数
二次医療圏別に差異はあるものの、平均すれ
ば右図のように、人口 10 万人対の病院病床数
は、人口集中度の高い圏域では少なく、他の
圏域で多い傾向にあります。
こうした差異は、過去、土地確保が容易な
都市郊外への病院建設が進んだことのほか、
農村部から都市部への人口移動に応じた病床数
の変動が起きなかったことなどが要因と考えら
れます。
さらに今後 20 年で、人口集中度の低い地区の人口減少率が高まることから、これら地区間の格差
は拡大することになります。
このため 75 歳以上の人口の変動に応じて、現在の病床を法律に基づき 4 つの機能(高度急性期、
急性期、回復期及び慢性期)に区分するだけでなく、病床の圏域間移動をどのように進めるか・・
都道府県には難しい課題を解決することが求められます。
(3)医療従事者数(医師・看護職)
二次医療圏別に差異はあるものの、平均すれ
ば右図のように、人口 10 万人対の病院医師数
は、
人口集中度に比例して数が増えていきます。
人口集中度の高い圏域では、規模が大きく
高度医療を提供する病院が多いため、病床当た
りの医師数が多いことが要因と考えられます。
一方、人口 10 万人対の病院看護職(看護師・
准看護師)数は、病床数の多い人口集中度が
高くない圏域で多くなっています。
さらに下図で、人口 10 万人当たりの病院病
床数と看護職員数の関係を確認すると、いずれも病床数が多い圏域では看護職員数は多くなりますが、
人口集中度が低くなると、病床数当たりの看護師数が少なくなる(人口集中度高は1床当たり 0.57
人、人口集中度低は 0.49 人)ことがわかります。人口集中度の低い圏域では、現在過剰気味の病床数
で働く人材を、地域・在宅サービスを提供する人材へ転換することが課題であると把握されます。
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都道府県別の中心地区への集中度
各都道府県は、3(鳥取等)から 21(北海道)の二次医療圏で構成されていますが、当該二次医療
圏の人口集中度別の構成は、下図の通り多様です。
現状では、全ての二次医療圏が人口集中度が高い圏域である大阪、神奈川から、8 割を超える二次
医療圏が人口集中度の低い圏域である秋田、島根までに区分されますが、今後 20 年程度の人口変動
で、この構成がさらに変動することは容易に予測されます。
さて、これら多様な構成の 47 都道府県ですが、当該都道府県庁所在地を含む二次医療圏は、大学
病院が設置されるなど、三次医療圏の中心として機能することが期待される各都道府県の中心的な医
療圏とされています。
下図は、各都道府県庁所在地を含む医療圏が保有する病床数、医師数、看護職数のシェアの状況を、
当該医療圏の人口シェアとの差異で示しています。例えば、最も集中度の高い福井県では、県庁所在
地のある二次医療圏の人口シェアは 51%、病床シェアは 58%、医師シェアは 74%、看護職シェアは
68%ですので、下図では、病床は人口シェアとの差異 7%、医師は 23%、看護職は 17%と示されて
います。
地域別では、福井、熊本、岩手、和歌山、京都の集中度が高い一方で、分野別では、医師の集中度
が高い都道府県が目立ちます。医師をはじめとする都道府県間の医療資源の不均衡は、よく話題にな
りますが、同一都道府県内の医療資源の不均衡も解決すべき問題です。
集中度が高い医療圏から、都道府県立病院の他圏域への移転、医療人材の派遣などを通じて、医療
資源の不足する圏域を支援することも、次の医療計画等を考えるうえで都道府県の考えるべき事項で
しょう。
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まとめ
(1) 現在 340 を超える二次医療圏は、人口変動等を受けて再編が必要な状況にあります。
人口 150 万人を超えるような医療圏は、一つの市でも複数の医療圏に区分することで、医療機関
の過剰な競合の防止と市区町村単位の地域包括ケアの取り組みとの連携を促すことが必要であり、
人口 20 万人以下の二次医療圏のうち、DID 地区の人口割合が低いことに起因して医療機能の集積
成長が弱く、当該医療圏から他の医療圏に入院する人数(流出数)が多いような地域は、他の医療
圏との統合が必要となっています。
(2) さらに、二次医療圏別のうち、現在人口 5 万人未満の 16 圏域の多くは離島・半島に所在する
ものですが、人口減少が進む 2035 年には 43 圏域と増加し全国的に広がる見込みです。このため、
人口減少を想定した二次医療圏の統合も必要と考えられます。
(3) 人口集中度が高い医療圏では、現在、相対的に病院数、病床数(特に高齢者が利用する療養病床)
が少ない一方で、
今後 20 年で 75 歳以上の高齢者は現在の 5 割近くに増加することが予測されます。
当該医療圏では、高齢者の増加に応じ、地域包括ケアの整備と連動した回復期及び慢性期の量的
確保を進めることが課題となります。
(4) 人口集中度が低い医療圏では、現在、病院数、病床数が過剰気味である一方で、今後 20 年での
高齢者の増加は 1 割台にとどまるものの、現役世代が 3/4 に減少することが予測されます。当該
医療圏では、過剰気味の病床を削減しつつ、既存人材を地域・在宅サービスへ振り向けることが
課題となります。
(5)47 都道府県庁所在地を含む二次医療圏の多くは、人口シェアを超えて、病床数、医師数、看護職
数が集中しており、それを活用して当該都道府県全体の医療資源のバランスを確保することも都道
府県の役割となります。
(6) 今後、国のガイドラインが整備される予定ですが、患者の流出入を重視するのは当然としても、
それを過度に重視すると、従来通りの現状追認型の医療計画になりかねません。
「資源がないから、
他の圏域に行く」という患者行動を繰り返せば、最終的には、都道府県の中心圏域に患者が集中
し、医療資源が偏在するという現在の構造を強化するだけです。
当該都道府県内で、何を集中させ、何を均衡させるかという対象を明確にした地域医療ビジョン
の策定、医療計画の見直しが進むことを期待します。
皆さんも ぜひ 自分の住む地域の現在の医療計画を見て考えてください。
この計画は、そこに住む人の将来を決める重要なものです。行政担当者や医療関係者に作成を任せるだ
けでなく、自らの参加があってはじめて、実効性のあるものになると考えます。
都道府県医療計画の一覧
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/iryou_keikaku/index.html
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