生活保護基準引下げ違憲訴訟始まる

編集長から
生活保護基準引下げ違憲訴訟始まる
増田 一世
2014(平成 26)年 11 月 19 日,さいたま地裁で「生活保護基準引下げ違憲処分取消等請
求訴訟」第1回口頭弁論期日が開かれた.埼玉県では 25 人が原告となり,やどかりの里か
らは5人のメンバーが原告となった.これまで2回の生活扶助費の切下げが行われてきた.
切下げは納得できない,これ以上どこを切り詰めたらよいのか,この切り下げは間違って
いる,間違いは正さなくては,そんな思いを抱いての原告らの覚悟だった.
さいたま地裁前には1時間以上前から傍聴券を求めて長蛇の列ができた.初冬の冷たい
風が吹く中で,188 人の人が傍聴券を求めて並んだ.
法廷には正面に裁判長席,その向かいに原告がぎっしりと並ぶ.やどかりの里のメンバ
ーも緊張の面持ちだった.
裁判は,弁護団のスライドを用いての訴状の説明から始まった.2013(平成 25)年8月
の生活扶助費を減額する処分(国の行為は違憲・違法である)の取消し,国に対する損害
賠償請求(原告らの権利侵害,厚労大臣の裁量権の逸脱濫用)を求めた裁判であることを
説明した.その後第1準備書面(弁論内容の説明)の説明に続き,2人の原告が口頭意見
陳述を行った.
1人はがんで余命宣告をされていると述べ,「がんを発症し,仕事を止めざるを得なくな
ったこと,命の限りは見えているが,自分が周りの人に助けてもらってきたので,周りの
人を助ける仕事をしたい,弱い人を助け,協力し合って生きていきたいと原告に立った」
と語った.そして,この間の切り下げが自身の生活に大きな影響を及ぼしていることにつ
いて,実際の暮らしぶりを通して語った.
もう 1 人は,さいたま市内の作業所で働く精神障害のある人で,
「3回の入院を経て親から
独立してひとり暮らしを始め,年金,給料,生活保護で暮らしている.節約,節約と考え
て,いつもお金の不安を抱えている.ゆとりある気持ちで暮らしたい.生活保護を削るこ
とは間違っている」と堂々と語った.
長く続くであろう裁判の最初の一歩にふさわしい2人の意見陳述だった.障害者権利条
約第 28 条には「相当な生活水準及び社会的な保障」が明記されている.切下げは権利条約
違反でもある.この 4 月に消費税もあがり,生活に欠かせない品々の物価も上がった.最
後のセーフティーネットである生活保護を切下げることは政治の誤りに他ならない.政治
の誤りを正す司法の役割が問われている.そして,総選挙も近い.この国で何を大切にし
ていくのか,私たちに問われている.