埼玉県内で初めて雑草イネの発生を確認

[雑草と作物の制御]vol.8
2012 p37~38
埼玉県内で初めて雑草イネの発生を確認
埼玉県農林総合研究センター水田農業研究所
雑草イネを県内で初めて確認
今年、農産物検査で赤い玄米の混入により 2 等
上野敏昭
実がコシヒカリより早いことから推定、写真-
1,2)。
になった事例が発生し、これが何かという問い合
2.脱粒が極易(軽く握るだけで脱粒、写真-3)。
わせがあった。有色米の作付前歴が全くない生産
3.ふ先色(籾の先端部の色)は赤褐色で粳種。
者ということで、当初、現物がないので茶米ある
無芒。籾の熟色は一般品種と同じ(写真-4)。
いはやけ米の混入ではないかと推測した。その後、
JA全農埼玉営農支援部の県 OB 福田技術参与か
4.玄米は薄い茶褐色。玄米の先端は籾と同じ赤
褐色(写真-5)。
ら、栃木県などで最近確認された雑草イネの可能
性について連絡があった。そこで、地域 JA の担
当者に案内を請い、10 月 26 日に現地確認に出か
対応
発生原因は現在のところ不明であるが、耕作者
の話によれば早いほ場で 2 年前から発生していた
けた。
場所は、利根川を挟んで茨城県に接する久喜市
の北広島周辺地区(旧北葛飾郡栗橋町北広島他)。
耕耘をしないように依頼してあったほ場は、ヒコ
バエの登熟中であった。畦間からの漏生株を調査
すると雑草イネの特徴を有しており、県内で初の
確認となった。
今回発見された雑草イネの特徴
1.熟期がコシヒカリよりやや早い(再生株の稔
写真-2
畦間から漏生(再生)
写真-1
雑草イネ(刈り後再生株から出穂)
写真-3
未熟でも手で握るだけで脱粒
[雑草と作物の制御]vol.8
2012 p37~38
写真-4 ふ先赤褐色、熟色は一般品種と同じ
写真-5 左が雑草イネの玄米
ようであった。発生情報は直ちに全県の普及組織
を指示した。また、地域 JA と連携してチラシ等
に発信した。現地の技術普及部は発生ほ場の特定
で周辺農家への周知を行う等、25 年作に向け関係
を行い、株抜き、焼却と春までの不耕起等の対策
機関一体となって拡大防止に取り組んでいる。
コラム
アレチウリのはなし
集落の道の草刈り作業に出るたび、
「アレチウリ」
集落にも拡大しているという。
がどんどん山奥に広がってゆくことを実感する。
「昨
私の居住する自治体では「アレチウリ」など外来
年はこのあたりまではあったが、今年はこんなとこ
雑草の駆除キャンペーンを行っている。地域での一
まで生えてる」などと仲間と話しながら作業する。
斉防除作業と対策は根から引き抜くなどを呼びかけ
5 月には見過ごしていたのか、8 月の盆明けの作業
ているが、防除は人海戦術に頼るしかないのか。効
では蔓の絡まりにかなり苦戦する。休憩時、集落の
果としてはむなしい物理的防除を毎年繰り返してい
70 代の農業者が話すところ、30 年ほど前、川縁の
るわけだ。雑草研究者の間においても対策のハード
畑に見慣れないカボチャのような蔓があるとのこと
ルは非常に高い植物として認識されている。特定外
で、普及所に持ち込んだとのこと。管内では、初め
来生物であり移動持ち出しが制限されていることも
て持ち込まれた
「アレチウリ」
との見立てであった。
ある。農道河川敷などは公的または地域内の協力に
これが、当地区の発生のはしりと見る。このような
よって美化清掃レベルの防除が可能かもしれない。
経過があったとは知らず、
わたしも昭和の終わり頃、
しかし、農地畑作への侵入が始まれば、初発時期に
地元新聞紙上でアレチウリが犀川沿いに北上してい
対策を行わないと畑作物が壊滅的被害を受けること
るとの記事を目にし、自宅周辺の犀川沿いを歩いて
になる。
2012 年末に農業改良普及センター作物担当
みた。100m ほどの範囲に数個体あったと記憶する。
者にアンケートしたところ、すでに侵入を認めてい
以降「アレチウリ」は珍しい植物でもなく、厄介者
る、もしくは、侵入の危険が切迫しているとの答え
として川縁から山奥まで生息域を広げている。
(独)
がほとんどであった。被害が顕在化しないうちに有
中央農研によると「アレチウリ」の生息について河
効な防除対策に取り組む必要がある。
川域の遡上は東北地方でも認められ、かなり山奥の
酒井 長雄(長野県)