印刷用PDFはこちら - ニッセイ アセットマネジメント

『日本版スチュワードシップ・コード』
の受入れについて
2015 年 8 月
ニッセイアセットマネジメント株式会社
私たちニッセイアセットマネジメントは、日本株運用において「受益者」の中長期的な
リターン向上を目的とした調査・投資活動をプロセスの中核としています。具体的には、
企業の経営ビジョンや経営戦略などに基づき、企業との対話・精査を経て中長期の
業績予想を行い、企業価値評価を実施しております。
このプロセスにおいて重要となるのは「企業との対話」です。実りある対話が投資先企業の
市場からの評価向上及び企業価値向上につながり、結果的に受益者と投資先企業の
共創(Co-Creation)が果たされるものと確信しております。
こうした取り組みにより、私たちは金融仲介機能を担う資産運用会社として、日本の経済・
社会の発展に貢献していきたいと考えております。
以上の考え方は、日本版スチュワードシップ・コードの目的(深い理解に基づく建設的な
「目的を持った対話」を通じ、企業価値向上や持続的成長を促す)と合致するものと考え、
2014 年 5 月に 7 原則に賛同し、コードの受け入れを表明いたしました。
今後とも責任ある機関投資家として自らのスチュワードシップ活動に必要となる能力の
更なる向上を図るとともに、コードへの対応について毎年見直し・更新を図ってまいります。
-1-
原則 1:機関投資家は、スチュワードシップ責任を果たすための明確な方針を策定し、
これを公表すべきである。
スチュワードシップ責任とは、『投資先企業やその事業環境等に関する深い理解に基づく建設的
な「目的を持った対話」(エンゲージメント)などを通じて、当該企業の企業価値の向上や持続的
成長を促すことにより、「受益者」の中長期的な投資リターンの拡大を図る責任』です。
私たちは、日本株運用においてスチュワードシップ責任を果たすため、以下の方針を策定して
おります。
 「企業との対話」を重視し、中長期的な視点での企業価値の評価・投資
判断を行うよう努めます。
 「企業との対話」を実りあるものとするため、経営層との対話に重点を
置き、企業活動への深い洞察と理解に努めます。
 「企業との対話」の場面では投資家としての意見を伝え、お互いの意見を
交換することにより企業価値の向上を実現し、受益者と投資先企業の
双方がその恩恵を受けることができるよう努めます。
 議決権の行使を「企業との対話」のひとつの手段として位置づけ、
スチュワードシップ責任を果たすよう努めます。
なお、インデックス運用ファンド等で保有する少額保有銘柄についても責任ある議決権の行使を
通じ、スチュワードシップ責任を果たすよう努めます。
-2-
原則 2:機関投資家は、スチュワードシップ責任を果たす上で管理すべき利益相反について
明確な方針を策定し、これを公表すべきである。
私たちは、スチュワードシップ責任を果たすにあたり、利益相反について以下の方針を策定して
おります。
 スチュワードシップ責任を果たすにあたっては、受益者のみの利益
(投資先企業の株式価値の増大または毀損防止)を考慮します。
 なお、重大な利益相反が発生する恐れがある場合には、議決権行使助言
機関からの助言を参考に行使判断を行う等、利益相反を適切に管理し、
受益者の利益の保護に努めます。
また、当社の社内規程によりファンド相互間の取引の禁止、利害関係人等(当社及び親会社で
ある日本生命保険相互会社及びその子会社・関連会社等)への利益を図るための不必要な取引を
行う助言や運用の禁止等の利益相反行為の禁止が規定されています。この取扱については、
全役職員が必携し遵守が義務付けられている「コンプライアンス・マニュアル」にも記載しています。
なお、議決権行使の状況については、「議案別議決権行使状況」や「議決権行使結果の概況」を
ホームページで開示しています。
議決権行使について⇒リンク
-3-
原則 3:機関投資家は、投資先企業の持続的成長に向けてスチュワードシップ責任を適切に
果たすため、当該企業の状況を的確に把握すべきである。
私たちは、企業価値を中長期の業績予想をもとに算出しますが、そのためには財務情報に加えて
1
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非財務情報 の取得が不可欠と考えています 。
運用担当者は、「企業との対話」を通じて非財務情報を積極的に取得し、当該企業の中長期的な
経営ビジョンや業界の構造変化などの外部環境等を勘案し、中長期の業績予想を行います。
その際、特に重要となる企業の経営戦略の妥当性を評価するため、経営層とのミーティングでの
対話をふまえ、産業ライフサイクル分析・競争力を確認するための SWOT 分析(強み・弱み・機会・
脅威)を行います。また、必要に応じて工場等の現場訪問、取引先等のステークホルダーや競合
先の調査も実施しています。
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財務情報と非財務情報を有機的に統合した報告形態 を採用する企業が日本でも増加して
いますが、これらを精査することでより確信度の高い中長期の業績予想につなげてまいります。
また、コーポレートガバナンス・コードの導入により、ガバナンス情報をはじめとした非財務情報の
追加提供が広がると考えており、この機会を積極的にとらえ投資先企業の状況をより的確に把握
するよう努めてまいります。
1
非財務情報
企業の中長期的経営ビジョン、ビジネスモデル、業界の構造変化などの外部環境、これらを踏まえた
経営戦略、企業価値を創出するためのガバナンス体制等。
2
私たちは投資先企業との対話において、未公表の重要事実を受領することは企図していません。万一
受領した場合には、当該企業の株式の売買を停止し、インサイダー取引規制に抵触することを防止して
います。
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統合した報告形態
企業が財務情報だけでなく非財務情報も用い、投資家を中心とするステークホルダーに中長期的な
企業価値創造プロセスを示す報告形態で、「統合報告」と称されることもあります。
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さらに、私たちは投資先企業の持続的成長力(サステナビリティ)を把握するための軸として、
ESG 評価を行うことが重要であると考えています。そのため私たちは独自の ESG 評価を
運用プロセスに組み込み、中長期の業績予想の確信度を向上させるよう努めています。
ESG 評価は以下の視点により実施していますが、適宜(少なくとも年 1 回)調査対象企業を再評価
し、適切なモニタリングを行える仕組みを構築しています。

環境問題への取り組みが企業価値向上につながっているか(E:環境の視点)

長期的な企業価値創造に向けた株主以外のステークホルダー(従業員・顧客・取引先等)
との関係構築ができているか(S:社会の視点)

企業価値を持続的に向上させるガバナンスの仕組み、体制を構築しているか等
(G:ガバナンスの視点)
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私たちは、ESG 評価の重要性を提唱する PRI (責任投資原則)に賛同し、その発足(2006 年)
当初から署名を行っております。
また、私たちは必要となる財務情報や個別企業のニュースフローも常に確認し、中長期の業績
予想や企業価値に与える影響度について毎朝の運用担当者会議で共有化するなど、投資先
企業の状況を適時に把握し評価に反映できるモニタリング態勢を整えています。
なお、議決権行使業務を通じて得た情報(役員構成、定款変更等)についても、「企業との対話」
において積極的に活用いたします。
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PRI
Principles for Responsible Investment。2006 年に当時の国際連合事務総長であるコフィー・アナン氏
が金融業界に対して提唱したイニシアティブであり、機関投資家の投資意思決定プロセスに ESG 課題を
受託者責任の範囲内で反映させるべきとした投資原則。
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原則 4:機関投資家は、投資先企業との建設的な「目的を持った対話」を通じて、投資先企業
と認識の共有を図るとともに、問題の改善に努めるべきである。
私たちは、経営戦略や企業価値創出のためのガバナンス体制等について中長期的な視点から
投資先企業と意見交換を行い、認識の共有化に努めます。中長期的な視点での経営戦略等
について投資先企業と当社との考え方に相違がある場合には、投資家としての意見を伝えて
建設的な議論を行うことで、投資先企業の価値の向上につながるよう努めます。ただし、選択肢
として株式売却の判断を否定するものではありません。
また、当社は ESG や議決権行使に係る専門人材であるコーポレート・ガバナンス・オフィサーを
2007 年9月より運用部門に配置しています。コーポレート・ガバナンス・オフィサーはグローバルな
ガバナンスや、ESG・CSR の動向についての深い見識をもとに、投資先企業と対話を行う運用
担当者に対してアドバイスを行うとともに、必要に応じて運用担当者と協働で対話を行います。
このような取り組みにより、投資先企業とのより深い認識の共有化、対話効果の最大化を図って
います。
なお、企業との対話は経営層・IR 担当者との個別面談を中心に行っていますが、企業からの依頼
に応じて経営幹部の方々を一同に会しての意見交換会を行うこともあります。
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企業との対話の視点は以下のとおりです。
(事業戦略)

経営理念・経営ビジョン・具体的な事業戦略が企業の中長期にわたる持続的な成長、
企業価値の向上につながっているか

企業価値を向上させる事業ポートフォリオ運営になっているか 等
(財務戦略)

資本政策(負債/株主資本比率)が上記の事業戦略遂行にあたって適正なものとなっているか

長期的な観点で見た株主還元が適正に行われているか 等
(IR 戦略)

投資家が適正に会社を評価するのに十分な情報開示が行われているか

IR について企業の事業戦略や経営者のビジョンが投資家に十分伝わるものになっているか 等
(ガバナンス/リスク管理)

取締役や監査役によるガバナンスが適正に機能する状況にあるか

社会、環境問題、反社会的行為を含む不祥事等のリスクに対する防止体制が十分か 等
上記のような「企業との目的を持った対話」に加え、書籍の刊行や論文の執筆、投資候補先企業等
が参加する講演会や会合等で私たちの日本株運用の哲学やプロセスを伝えたり、統合した報告
形態の重要性を訴求したりするなど、積極的に対外発信活動に取り組んでいます。
このような取り組みが私たちの日本株運用のプロセスに対する企業の理解を促進し、「目的を
持った対話」の円滑な成立と早期の認識共有化につながるものと考えています。
-7-
原則 5:機関投資家は、議決権の行使と行使結果の公表について明確な方針を持つと
ともに、議決権行使の方針については、単に形式的な判断基準にとどまるので
はなく、投資先企業の持続的成長に資するものとなるよう工夫すべきである。
私たちは、「議決権の行使」と「議決権の行使結果の公表」について以下の方針を策定して
おります。
(議決権の行使の方針)
 議決権の行使を「企業との対話」のひとつの手段として位置づけ、
スチュワードシップ責任を果たすよう努めます。
 また、その行使にあたっては、受益者のみの利益(投資先企業の
株式価値の増大または毀損防止)を考慮します。
(議決権の行使結果の公表)
 議決権の行使結果について、「議案別議決権行使状況」と「議決権行使結
果の概況」を毎年ホームページ等に公表します。
私たちは、原則として日本株の議決権の行使判断を外部に委託しません。また、定型的・画一的
なアプローチではなく、日常の企業との対話を活用し、個別企業の企業価値向上を念頭に、実情
に応じた個別議案の審査に努めます。
-8-
なお、議決権行使については、責任投資委員会での協議を経て運用部門の担当役員が決定する
「議決権行使の基本方針」や、その他議決権行使に係る社内規程に則って個別の議案を十分に
審査した上で指図内容を決定します。また、定期的に議決権行使の振り返りを行い、判断基準の
妥当性を確認しています。
議決権の行使結果の公表については、主な議案種類別(剰余金処分案、取締役・監査役選任
議案等)に集計し、議決権行使結果の概況とともに当社ホームページに掲載します。これらの
開示により、受益者及び投資先企業は私たちが議決権の行使において何を重視しているかが
認識できるものと考えております。
以上のプロセスにより、議決権の行使判断の適切性・透明性を確保しています。
議決権行使について⇒リンク
スチュワードシップ活動の概況⇒リンク
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原則 6:機関投資家は、議決権の行使も含め、スチュワードシップ責任をどのように
果たしているのかについて、原則として、顧客・受益者に対して定期的に報告を
行うべきである。
「企業との対話の概況」や「議決権行使の状況」などについて、「スチュワードシップ活動の概況」
として毎年ホームページに公表しています。
「企業との対話の概況」では「企業との対話の具体例」・「対外発信活動の具体例」などを、
「議決権行使の状況」では「議案別議決権行使状況」・「議決権行使結果の概況」などを記載して
います。
私たちのスチュワードシップ活動の変遷をご理解頂けるよう、過去のものとあわせて閲覧可能な
状態にしてまいります。
スチュワードシップ活動の概況⇒リンク
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原則 7:機関投資家は、投資先企業の持続的成長に資するよう、投資先企業やその事業
環境等に関する深い理解に基づき、当該企業との対話やスチュワードシップ活動
に伴う判断を適切に行うための実力を備えるべきである。
私たちは、日本株運用において「受益者」の中長期的なリターン向上を目的とした調査・投資活動
を運用プロセスの中核としています。当運用プロセスは、真摯な態度での「企業との対話」を通じ、
投資先企業の事業構造・事業環境・経営戦略等に関する深い理解を得ることを運用担当者に対し
て強く求めるものとなっています。
私たちは、運用プロセスや企業との対話力を一段と強化する観点から、対話の成功事例や失敗
事例などを組織内で共有化することで企業価値向上に資する対話スキルの蓄積を図っています。
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また、グローバルなコーポレートガバナンス団体である ICGN の活動に参加し、海外先進事例を
自らのスチュワードシップ活動に生かすとともに、私たちの考え方を提言することでコーポレート
ガバナンスに係る諸課題の解決に貢献していきたいと考えています。
更に外部有識者や専門家を招聘して運用プロセスの改善に資する意見の収集を行うほか、
コーポレートガバナンス・コードへの見識を深める社内勉強会等を通じて運用担当者の知識向上
にも努めています。
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ICGN
International Corporate Governance Network。コーポレート・ガバナンスの課題に関わる情報や見解を
国際的に交換したり、ガバナンスの基準やガイドラインを設定するとともに、秀でたコーポレート・ガバナ
ンスの実践を遂行するための様々な支援・助言を行う機関。世界各国から機関投資家・規制当局・学
者・弁護士・コンサルタントなどの関連団体・個人が参加。
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以上の活動は運用担当者の企業活動への深い理解を促すとともに、企業分析・評価における
洞察力を一層高めることにつながり、組織全体のクオリティ向上に資するものと考えています。
運用担当者は、当運用プロセスの重要性を常に意識したうえで「企業との対話」とスチュワード
シップ活動を繰り返し実践することで、より洗練された企業とのコミュニケーションが可能となり、
同時にスチュワードシップ活動を行う実力も十分に備えることができると考えています。
その結果、受益者と投資先企業との共創が果たされると確信しています。
以上
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