The Murata Science Foundation 白い粒子と黒い粒子から得られる様々な色材の調製 Producing Coloured Materials with Amorphous Arrays of Black and White Colloidal Particles H26海自28 派遣先 フォトニクスに利用できる複雑構造化材料に関する会議2015 (チェコ・プラハ) 期 間 平成2014年9月18日~平成2014年9月27日(10日間) 申請者 名古屋大学 大学院工学研究科 物質制御工学専攻 准教授 竹 岡 敬 和 の入射角度によって依存しない材料を世界に 海外における研究活動状況 先駆けて調製できることを明らかにし、この結 研究目的 果は既に幾つかの学術雑誌において報告して 申請者は、平成22年度に第26回(財)村田学 おります(ACS Applied Materials & Interfaces, 術振興財団の研究助成に、 “環境応答型メタマ 1, 982-986(2009)., Chem Phys Chem., 11, 579- テリアル”の創製、という研究テーマで応募し、 583(2010).) 。また、これらの系に環境応答性 採用して頂きました。その後、約2年間をかけ を付与することで、フォトニックバンドギャッ て取り組んだ研究成果を、チェコで開催され プの位置を可逆に制御できる材料の開発にも るにAdvanced Architechtures in Photonics 2014 成功しました(New Journal of Chemistry, 36, (AAP2014)にて報告しに行きました。 2171-2175(2012).) 。フォトニックバンドギャッ プが可視光の領域に存在すれば構造色として 海外における研究活動報告 も観測されることから、角度依存性のない構造 申請者は、平成22年度に第26回(財)村田学 発色性材料にも展開できると考え、申請者は、 術振興財団の研究助成に、 “環境応答型メタマ 人や環境に優しい材料から構成された構造発 テリアル”の創製、という研究テーマで応募し、 色性材料の研究にも取り組んでいましたが、シ 採用して頂きました。その後、約2年間をかけ リカや酸化チタンなどの、人や環境への負荷の て取り組んだ研究成果を、チェコで開催され 低い材料から調製した白い微粒子と黒い微粒 るにAdvanced Architechtures in Photonics 2014 子を混ぜることで非常に鮮やかな角度依存性 のない構造発色を示すことを発見しました(図 (AAP2014)にて報告しに行きました。 提案した環境応答型メタマテリアルの創製ま 1) 。例えば、粒径の揃ったサブミクロンサイズ でには、まだ、至っておりませんが、研究の過 のシリカ微粒子とカーボンブラック(CB)を水 程において、従来のフォトニック材料には見ら やアルコールなどに懸濁させて、スプレーによ れなかった新しい知見を沢山得ることができま りガラス基板上に噴霧したり、スピンコーター した。例えば、従来のフォトニック結晶とは異 によって基板上に成膜すると、シリカ微粒子 なり、フォトニックバンドギャップの位置が光 のみでは図1の左側のように白い膜として得ら ─ 417 ─ Annual Report No.29 2015 れますが、CBの添加量に応じて鮮やかな色を して退色する場合もあります。それに比べて、 示すことを明らかにしました。膜から観測され 顔料の中には、耐光性、耐水性、耐薬品性、 る色相は、用いたシリカ微粒子の粒径に依存 抗酸化還元性などを有するものが多く、様々 し、色の彩度は加えたCBの量によって変わり な用途に利用されています。しかし、無機顔料 ます。つまり、白い微粒子と黒い微粒子によっ は毒性の高い重金属を使用した化合物からで て様々な色を表現できるようになることが分か きているものも多いため、化粧品など、人に直 りました。白い微粒子の材料としては、他にも 接触れるような用途には使用できる種類が限定 アルミナ、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、酸 されています。染料に関しても、化粧品などへ 化セリウム、硫酸バリウムや高分子なども利用 の配合に関して、規制が厳しくなっています。 することができ、黒い微粒子には酸化鉄や銀微 とりわけ、ヨーロッパを中心に広がる環境に 粒子などの材料を用いることができます。環境 対する配慮から、その他の用途への染料や顔 や人にやさしい材料を利用することで様々な色 料に使用する材質についても、今後ますます規 を示すようになるので、従来用いられていた人 制が強化されると考えられます。しかし、我々 や環境にリスクの高いと思われる色素や顔料に が豊かな生活を送る上で、様々な鮮やかな色 変わって、毒性が少なく、かつ非退色性の顔 を示す退色しない染料や顔料(色材)の存在は 料を調製することが可能になると考えています。 欠かせなくなっています。さらに、低毒性、低 長期間屋外に貼られたポスターが、色あせ 環境負荷性を備えた色材が安価に大量に得ら た状態になっているのを目にした人は多いで れるようになれば、今後の我々の暮らしが永続 しょう。このようなポスターは、紫外線によっ 的に発展可能で快適になることを後押しするで て分解しやすいイエローやマゼンダの染料(有 しょう。そのためには、自然界に豊富に存在し、 機色素)が使われているため、長い時間を太陽 環境負荷性が低い自然調和性に優れた化合物 光に晒されたことで、それらの染料は元の色合 を利用した色材作りが求められることから、申 いを失ってしまったものです。他にも、水分や 請者が見いだした“人や環境への負荷の低い材 化学物質の影響を受けて酸化還元反応を起こ 料から調製した構造発色材料”が新しい色材と して役に立つかもしれません。 参加したAAP2014では、申請者が取り組ん でいるようなフォトニック材料の研究者が世界 中から招集されます。ヨーロッパのチェコで開 催されるAAP2014において申請者の成果を発 表することは、人や環境に優しく、非退色性 な新しい色材としての提案を発信するには絶好 の場所でありました。参加者らと共に撮った写 真を添付致します。有り難うございました。 図1 粒 径の揃ったシリカ微粒子などの白い微粒子の集合体 に黒い微粒子(例えばカーボンブラック:CB)を少量添 加すると鮮やかな構造色が観測される。粒径が280nm、 360 nmの白い微粒子を用いると、それぞれ緑と赤になる。 この派遣の研究成果等を発表した 著書、論文、報告書の書名・講演題目 1) Hirashima, R., Seki, T., Katagiri, K., Akuzawa, Y., ─ 418 ─ Torimoto, T., Takeoka, Y.“Light-induced Saturation The Murata Science Foundation Change in the Angle-independent Structural Crystals and Colloidal Amorphous Arrays for Use Coloration of Colloidal Amorphous Arrays”J. in Functional Structurally Colored Materials” Materials Chemistry C, 2, 344-348(2014). J. Materials Chemistry C, 1, 6059-6074(2013) (Invited . Review, published as a cover picture) 2) Takeoka, Y., Yoshioka, S., Takano, A., Arai, S., Khanin, N., Nishihara, H., Teshima, M., Ohtsuka, 5) Takeoka, Y.“ Applications of Stimuli-Sensitive Y., Seki, T.“Producing Coloured Pigments with Inverse Opal Gels”in“Responsive Photonic Amorphous Arrays of Black and White Colloidal Nanostructures: Smart Nanoscale Optical Materials” Particles”Angew. Chem. Int. Ed., 52, 7261-7265 (2013). , Edited by Yadong Yin, RSC Publishing, 2013. 6) Gotoh, Y., Suzuki, H., Kumano, N., Seki, T., 3) Takeoka, Y., Yoshioka, S., Teshima, M., Takano, Katagiri, K., Takeoka, Y.“ Amorphous Array of A., Harun-Ur-Rashid, M., Seki, T.“Structurally Poly(N-isopropylacrylamide)Brush-Coated Silica Coloured Secondary Particles Composed of Black Particles for Thermally Tunable Angle-Independent and White Colloidal Particles”Sci. Rep., 3, 2371-1-7 Photonic Band Gap Materials”New Journal of Chemistry, 36, 2171-2175(2012) (published . as a (2013). 4) Takeoka, Y.“Stimuli-Responsive Opals: Colloidal ─ 419 ─ cover picture, and selected as a NJC hot article)
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