建築士法の改正(議員立法)に係る経緯 - 一般社団法人 新・建築士制度

● 建築士法の改正(議員立法)に係る経緯
・ 公益社団法人日本建築士会連合会(士会連合会)
・ 一般社団法人日本建築士事務所協会連合会(日事連)
・ 公益社団法人日本建築家協会(JIA)
三会で合意
「建築物の設計・工事監理の業の適正化及び建築主等への
情報開示の充実に関する共同提案」とりまとめ
(平成25年11月7日)
「自民党建築設計議員連盟」へ提案
(平成25年12月6日)
ヒアリング
自民党建築設計議員連盟
関係団体※
「設計監理等適正化勉強会」(4回)
※ 全国中小建築工事業団体連合会
住宅生産団体連合会
日本建設業連合会
日本建築構造技術者協会
日本設備設計事務所協会
「自民党建築設計議員連盟提言」とりまとめ
法案提出
(平成26年3月27日)
(平成26年6月11日)
国会
可決・成立
(平成26年6月20日)
平成26年6月27日公布(公布後1年以内施行)
1
● 「建築士法の一部を改正する法律」の概要
(平成26年法律第92号)
建築設計関係三団体※による「建築物の設計・工事監理の業の適正化及び建築主等へ
の情報開示の充実に関する共同提案」を踏まえ、書面による契約の義務化( 300㎡ 超)、
管理建築士の責務の明確化、建築士免許証提示の義務化等の所要の措置を講ずる。
※ 公益社団法人日本建築士会連合会、一般社団法人日本建築士事務所協会連合会及び公益社団法人日本建築家協会
法改正の必要性
従来、建築物の設計・工事監理の業務において、必ずしも書面による契約がなされな
いことなどにより、業務を行う建築士事務所の責任が不明確であることから、建築紛争の
増大・長期化等につながっている。また、建築士なりすまし事案等が発生している。
このため、建築物の設計・工事監理の業務の適正化及び建築主等への情報開示を充
実する必要がある。
【 公布日:平成26年6月27日
法改正の概要
1.書面による契約等による設計等の業の適正化
施行日:平成27年6月25日】
① 当事者が対等な立場で公正な契約を行う契約の原則を規定化。【22条の3の2】
② 延べ面積300㎡を超える建築物について、書面による契約締結の義務化。
【22条の3の3】
延べ面積300㎡を超える建築物について、一括再委託の禁止。【24条の3】
国土交通大臣の定める報酬の基準に準拠した契約締結の努力義務化。【22条の3の4】
③
④
⑤ 設計業務等に関する損害賠償保険の契約締結の努力義務化。【24条の9】
2.管理建築士の責務の明確化による設計等の業の適正化
① 管理建築士の責務を下記のとおり明確化。【24条】
・受託する業務等の選定 ・業務の実施者の選定 ・提携先等の選定 ・事務所の技術者の管理
② 建築士事務所の開設者に対する管理建築士が述べる意見の尊重義務化。 【24条】
3.免許証の提示等による情報開示の充実
① 建築主からの求めに応じた免許証提示の義務化。【19条の2】
② 建築士免許証の記載事項等(定期講習の受講履歴、顔写真)に変更があった場合
の書換え規定の明確化。【5条、10条の2の2】
4.建築設備士に係る規定の整備
① 法律上に「建築設備士」の名称を規定化。 【2条】
② 建築士が延べ面積2,000㎡を超える建築物の建築設備について建築設備士の意見
を聴くことを努力義務化。【18条】
5.その他改正事項
① 建築士事務所に係る欠格要件及び取消事由に、開設者が暴力団員等であることを
追加。【23条の4】
② 建築士に対する国土交通大臣・都道府県知事による調査権の新設。【10条の2】
③ 建築士事務所の所属建築士を変更した場合の届出義務化(3ヶ月以内)。【23条の5】
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● 建築士法改正に伴う政令・省令の改正概要
■ 政令における改正事項
① 法施行日 : 平成27年6月25日
② 法改正に伴う形式改正
・ 契約締結における電子による契約の手続きを規定 → 【令第7条第3項】
・ 法律上に一括再委託の禁止対象が規定されたため、政令上の委任規定を削除 → 【令第8条】
■ 省令における改正事項
① 免許証書換えに係る規定の整備
(法5条、10条の2の2関係)
・ 改正法5条及び法10条の2の2による免許証の書換え交付を申請方法及び申請があったとき
に免許証を書き換えて、申請者に交付する旨を規定 → 【規則4条の2、規則9条の4(新設)】
② 重要事項説明等における説明事項の追加
・ 重要事項説明の内容等に建築士事務所の区分(一級、二級、木造)の追加を規定
→ 【規則17条の38(新設)、規則22条2の2(改正)】
③ 設計、工事監理に係る書面による契約の内容の規定
(法22条の3の3関係)
・ 改正法第22条の3の3第1項第六号に規定する国土交通省令で定める事項について、次のと
おりとする旨を規定 → 【規則17条の38(新設)】
一 建築士事務所の名称及び所在地並びに当該建築士事務所の一級建築士事務所、二級建築士事務
所又は木造建築士事務所の別
二 建築士事務所の開設者の氏名(当該建築士事務所の開設者が法人である場合にあつては、当該開
設者の名称及びその代表者の氏名)
三 設計受託契約又は工事監理受託契約の対象となる建築物の概要
四 業務に従事することとなる建築士の登録番号
五 業務に従事することとなる建築設備士がいる場合にあつては、その氏名
六 設計又は工事監理の一部を委託する場合にあつては、当該委託に係る設計又は工事監理の概要並
びに受託者の氏名又は名称及び当該受託者に係る建築士事務所の名称及び所在地
七 設計又は工事監理の実施期間
八 第三号から第六号までに掲げるもののほか、設計又は工事監理の種類、内容及び方法
④ 建築士事務所登録における登録事項の追加等 (法23条の2、 23条の4、23条の5関係)
・ 建築士事務所申請における添付書類に法人である場合において「登記事項証明書」を追加を
規定 → 【規則19条(改正)】
・ 申請書における所属建築士名の追加及び法人の役員の記載内容の変更等
(第5号及び第6号書式改正)
⑤ 建築士に対する立入検査に係る規定の整備
(法10条の2関係)
・ 調査権の新設に伴う立入検査に関する規定の形式改正及び立入検査証の変更
→ 【規則23条(改正)】 (第8号書式改正)
・ 立入検査の調査権限について地方整備局長等への委任(国土交通大臣が自らの調査も可)を
規定 → 【規則24条(改正)】
⑥ 工事現場に掲げる確認済の表示(看板)に記載する事項の追加
・ 設計者及び工事監理者の氏名に併せて所属する建築士事務所名及び区分(一級、二級、木
造)等を記載事項に追加 (建築基準法令第68号様式)
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① 書面による契約等による設計等の業の適正化
1-1 設計等の契約の原則
(新設 第22条の3の2)
【改正内容】
契約の当事者間において、対等な立場での公正な契約締結を行い、誠実に履行しなけ
ればならない。
1-2 書面による契約締結の義務
(新設 第22条の3の3)
【改正内容】
延べ面積が300m2を超える建築物の新築に係る設計受託契約又は工事監理受託契
約について、当該契約の当事者は、それぞれ書面に署名又は記名押印し、相互に交付し
なければならない。
<設計受託契約又は工事監理受託契約に係る書面に記載すべき内容>
① 設計受託契約又は工事監理受託契約の対象となる建築物の概要
② 設計又は工事監理の実施の期間
③ 設計受託契約にあっては、作成する設計図書の種類
④ 工事監理受託契約にあっては、工事と設計図書との照合の方法及び工事監理の実施の状況に関する報告
の方法
⑤ 建築士事務所の名称及び所在地並びに当該建築士事務所の一級建築士事務所、二級建築士事務所又は
木造建築士事務所の別
⑥ 建築士事務所の開設者の氏名(当該建築士事務所の開設者が法人である場合にあっては、当該開設者の
名称及びその代表者の氏名)
⑦ 当該設計又は工事監理に従事することとなる建築士の氏名及びその者の一級建築士、二級建築士又は木
造建築士の別並びにその者が構造設計一級建築士又は設備設計一級建築士である場合にあっては、その旨
⑧ 業務に従事することとなる建築士の登録番号
⑨ 業務に従事することとなる建築設備士がいる場合にあっては、その氏名
⑩ 設計又は工事監理の一部を委託する場合にあっては、当該委託に係る設計又は工事監理の概要並びに受
託者の氏名又は名称及び当該受託者に係る建築士事務所の名称及び所在地
⑪ その他設計又は工事監理の種類、内容及び方法に関わる事項
⑫ 報酬の額及び支払の時期
⑬ 契約の解除に関する事項
ポイント
・書面への記載事項は、従来からの第24条の8に基づく書面の交付の記載事項と同様で
ある。
・受託契約について書面を相互に交付した場合、第24条の8に基づき契約締結後遅滞な
く行う書面の交付を行う必要はないものとする。
・第24条の7に基づく重要事項説明は、従来どおり必要である。
・必要となる記載事項を変更する場合も変更事項について、書面の相互交付が必要となる。
・再委託契約など、建築士事務所間での契約についても適用される。
・建築工事の請負契約において、「設計」と「工事監理」の内容を含み一括で契約する場合
も適用される。
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〈参考〉契約に係る重要事項の説明と書面の交付の関係
法第24条の7の規定による
重要事項説明
法第22条の3の3の規定による
書面による契約
法第24条の8の規定による
書面の交付
契約を締結する前に行う
契約を締結する際に行う
契約を締結した後、遅滞なく行う
建築主
委託者
委託者
書面を交付して、
重要事項を説明
建築士事務所の
管理建築士等
【適用対象】
・すべての契約(建築士事務所の業として
設計及び工事監理を行うもの)
・委託者が建築士事務所である場合は適
用対象外
* 改正前からの事項
記名・押印された書面
を相互に交付
受託者
(建築士事務所)
【適用対象】
・延べ面積300m2を超える建築物の新築に係
る契約(増築、改築、大規模修繕、大規模模
様替に係る部分が延べ面積300m2を超える
場合は適用対象)
・委託者が建築士事務所であっても適用対象
* 改正による追加事項
書面を交付
建築士事務所の
開設者
【適用対象】
・すべての契約(法22条の3の3の規定
による書面による契約を行った場合を
除く※)
・委託者が建築士事務所であっても適用
対象
* 改正前からの事項
※ 延べ面積300m2以下であっても、法令により定められた事項が記載された書面を相
互に交付された場合は、法24条の8の規定による書面の交付が行われたとみなされ
る。
改正前までは、必ずしも書面による契約締結を行う必要はなかった(口頭等であった場
合も民法上は契約として成立するケースもある)が、改正後は、書面による契約締結を
行う必要がある。
また、今回の改正により業を行う建築士事務所側だけではなく、委託者となる建築主
等についても義務の対象となる。
◎ ご注意 (無登録業務の禁止)
従来より、建築士が行う建築物の設計・工事監理の業務は、都道府県知事の登録を受けた「建築士事
務所」でなければ行うことができない。 そのため、都道府県知事の登録を受けていない事業者について
は、設計受託契約又は工事監理受託契約を締結することはできない。
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1-3 一括再委託の禁止
(改正 第24条の3)
【改正内容】
延べ面積が300m2を超える建築物の新築工事について、建築士事務所の開設者は、
委託者の許諾を得た場合においても、委託を受けた設計又は工事監理の業務を、それぞ
れ一括して他の建築士事務所の開設者に委託してはならない。(第24条の3第2項)
(改正前)
(改正後)
一括再委託が禁止されている建築物
一括再委託が禁止されている建築物
3階かつ延べ面積1,000m2以上の共同住宅
延べ面積300m2超のすべての建築物
一括再委託とみなすもの
〈建築主〉
設計及び
工事監理
〈委託先〉
委託
事務所A
〈再委託先〉
再委託
事務所B
意匠・構造・設備の
すべての業務を実施
設計図書への記名・押印等を事務所Bが行う
=事務所Aは何もしない
禁止の対象
設計図書への記名・押印等を事務所B、C、Dが
行う=事務所Aは何もしない
禁止の対象
設計図書への記名・押印等を事務所B、Cが行う
※事務所Aは意匠設計を行い、記名・押印を行う
禁止の対象
でない
事務所B
再委託
設計及び
工事監理
委託
事務所A
再委託
再委託
意匠の業務を実施
事務所C
構造の業務を実施
事務所D
設備の業務を実施
設計及び
工事監理
設計及び
工事監理
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委託
再委託
意匠の業務を実施
委託
事務所B
構造の業務を実施
事務所A
事務所C
再委託
設備の業務を実施
再委託
事務所B
再委託
設備の業務を実施
事務所A
意匠の業務を実施
事務所C
再委託
事務所D
構造の業務を実施
設計図書への記名・押印等を事務所A 、 C 、Dが
行う=事務所Bは何もしない
禁止の対象
1-4 適正な委託代金での契約締結の努力義務
(新設 第22条の3の4)
【改正内容】
設計受託契約又は工事監理受託契約を締結しようとする者は、国土交通大臣が中央建
築士審査会の同意を得て定める報酬の基準(平成21年国土交通省告示第15号(以下、
告示15号))に準拠した委託代金で設計受託契約又は工事監理受託契約を締結するよう
努めなければならない。
(改正前)
(改正後)
業務報酬基準に準拠することを努力義務
設計・工事監理受託契約に係る委託代金につ
いての規定は特になし
【第22条の3の4】 (新設)
設計受託契約又は工事監理受託契約を締結しようと
する者は、第25条に規定する報酬の基準に準拠した
委託代金で設計受託契約又は工事監理受託契約を
締結するよう努めなければならない。
ポイント
・告示15号は、業務報酬の考え方及び標準業務における標準業務量(人・時間)を目安と
して示しているものである(具体的な金額を規定したものではない。)。
・報酬の額について、当事者間の個々の事案において取り決められるものを妨げるもので
はない(努力義務であり業務報酬基準に準拠することを強制するものではない。)。
・再委託契約など、建築士事務所間での契約についても対象である。
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1-5 設計等の業務に係る損害賠償保険の契約締結等の努力義務
(新設 第24条の9)
【改正内容】
建築士事務所の開設者は、設計等の業務に関し生じた損害を賠償するために必要な金
額を担保するための保険契約の締結その他の措置を講ずるよう努めなければならない。
(改正前)
【第24条の6】
建築士事務所の開設者は、国土交通省令で定める
ところにより、次に掲げる書類を、当該建築士事務所
に備え置き、設計等を委託しようとする者の求めに応
じ、閲覧させなければならない。
一 (略)
二 (略)
三 設計等の業務に関し生じた損害を賠償するため
に必 要な金額を担保するための保険契約の締
結その他の措置を講じている場合にあつては、そ
の内容を記載した書類
四 (略)
(改正後)
改正前からの建築士事務所に備え置きする閲
覧に供する書類への記載することについては
変更なし
損害賠償保険の加入等を努力義務化
建築士事務所における設計等に係る損害賠償
保険の加入等についての規定は特になし
【第24条の9】 (新設)
建築士事務所の開設者は、設計等の業務に関し生じ
た損害を賠償するために必要な金額を担保するため
の保険契約の締結その他の措置を講ずるよう努めな
ければならない。
ポイント
・保険契約の締結だけではなく、その他の措置としては、積立金等の任意の措置を行うこ
とも考えられる。
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1-6 建築士事務所の区分(一級、二級、木造)明示の徹底
(省令改正)
【改正内容①】
「重要事項説明(24条の7)」、「契約の際、相互に交付する書面(22条の3の3)」、「契
約後、遅滞なく委託者へ交付する書面(24条の8)」において、建築士事務所の名称に併
せて建築士事務所の一級建築士事務所、二級建築士事務所、木造建築士事務所の別を
記載する。
(改正前)
建築士事務所の「一級」、「二級」、「木造」
の別の記載についての規定は特になし
(改正後)
契約の際、相互に交付する書面等に記載すべ
き事項
建築士事務所の名称及び所在地並びに当該建築
士事務所の一級建築士事務所、二級建築士事務
所又は木造建築士事務所の別
【改正内容②】
工事現場に掲げる「確認済」の表示(看板)において、設計者及び工事監理者の氏名に
併せて建築士事務所の名称及び一級建築士事務所、二級建築士事務所、木造建築士事
務所の別等を記載する。
(改正前)
<建築基準法施行規則第68号書式>
(改正後)
「設計者氏名」、「工事監理者氏名」欄の記載方
法に関する注意書きを追加
1 設計者及び工事監理者が建築士の場合には、設
計者氏名及び工事監理者氏名の欄にその者の一
級建築士、二級建築士又は木造建築士の別を併
せて記載する。
2 設計者及び工事監理者が建築士事務所に属して
いる場合には、設計者氏名及び工事監理者氏名
の欄にその名称及びその一級建築士事務所、二
級建築士事務所又は木造建築士事務所の別を併
せて記載する。
記載例
一級建築士事務所 (株)○○設計事務所
一級建築士 建築 太郎
※ 様式自体は、変更なし。記載方法を明確化。
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② 管理建築士の責務の明確化による設計等の業の適正化
2-1 管理建築士の責務の明確化
(改正 第24条)
【改正内容①】
管理建築士が建築士事務所の業務において総括する技術的事項について具体的な事
項を規定。
(改正前)
(改正後)
技術的事項について具体的な規定は特になし。
技術的事項について具体的な事項を規定
【第24条第3項】
管理建築士は、その建築士事務所の業務に係る技
術的事項を総括し、その者と建築士事務所の開設者
が異なる場合においては、建築士事務所の開設者に
対し、技術的な観点からその業務が円滑かつ適正に
行われるよう必要な意見を述べるものとする。
【第24条第3、4項】
3 管理建築士は、その建築士事務所の業務に係る
次に掲げる技術的事項を総括するものとする。
一 受託可能な業務の量及び難易並びに業務の内
容に応じて必要となる期間の設定
二 受託しようとする業務を担当させる建築士その
他の技術者の選定及び配置
三 他の建築士事務所との提携及び提携先に行わ
せる業務の範囲の案の作成
四 建築士事務所に属する建築士その他の技術者
の監督及びその業務遂行の適正の確保
4 管理建築士は、その者と建築士事務所の開設者
とが異なる場合においては、建築士事務所の開設者
に対し、前項各号に掲げる技術的事項に関し、その
建築士事務所の業務が円滑かつ適切に行われるよ
う必要な意見を述べるものとする。
【改正内容②】
建築士事務所の開設者は、技術的事項について管理建築士の意見を尊重しなければな
らない。
(改正前)
開設者が管理建築士が述べる意見を尊重す
るについての規定は特になし
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(改正後)
開設者が管理建築士が述べる意見の尊重義務
【第24条第5項】
建築士事務所の開設者は、前項の規定による管理
建築士の意見を尊重しなければならない。
③ 建築主等への情報開示の充実
3-1 建築士免許証等の提示の義務
(新設 第19条の2)
【改正内容】
建築士は、設計等の委託者(委託しようとする者を含む。)から請求があったときは、建築
士免許証等を提示しなければならない。
(改正前)
(改正後)
重要事項説明時の建築士免許証等の提示義務
【第24条の7第2項】
2 管理建築士等は、重要事項説明をするときは、
当該建築主に対し、一級建築士免許証、二級建築士
免許証若しくは木造建築士免許証又は一級建築士
免許証明書、二級建築士免許証明書若しくは木造建
築士免許証明書を提示しなければならない。
従来どおり重要事項説明時の建築士免許証等
の提示義務は変更なし
建築主等の求めに応じた建築士免許証等の
掲示義務
重要事項説明時以外での建築士免許証等の
掲示義務についての規定は特になし
【第19条の2】
一級建築士、二級建築士又は木造建築士は、第二
十三条第一項に規定する設計等の委託者(委託しよ
うとする者を含む。)から請求があつたときは、一級
建築士免許証、二級建築士免許証若しくは木造建築
士免許証又は一級建築士免許証明書、二級建築士
免許証明書若しくは木造建築士免許証明書を提示し
なければならない。
ポイント
・従来どおり、重要事項説明を行う際、建築士免許証を提示する必要がある。
・建築士免許証の携帯義務はないため、委託者から求めがあった場合にその場で必ず提
示しなくても、次回打合せ時に掲示するなど誠実な対応を行うことで構わない。
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3-2 建築士免許証等の書換え規定の明確化
(新設 第5条、第10条の2の2)
【改正内容】
建築士は、建築士免許証等に記載された事項等(定期講習の受講履歴、顔写真等)に
変更があったときは、書換え交付を申請することができる。
(改正前)
(改正後)
氏名等に変更が生じた場合、建築士免許証等
の書き換えの申請を義務付け
【建築士法施行規則第4条第2項】
一級建築士は、前項の規定による届出をする場合に
おいて、一級建築士免許証(以下「免許証」という。)
又は一級建築士免許証明書(以下「免許証明書」と
いう。)に記載された事項に変更があつたときは、免
許証の書換え交付を申請しなければならない。
従来どおり氏名等に変更が生じた場合の書き
換え義務に変更なし
登録事項のうち「氏名、生年月日、性別」に変更が生
じた場合、その変更が生じた日から30日以内の届出
なければならない(義務)
氏名等以外の記載事項についての建築士免
許証の書き換えを規定
上記以外に建築士免許証の書き換えについ
て特段の規定なし
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【第5条第3項】 (新設)
一級建築士、二級建築士又は木造建築士は、一級
建築士免許証、二級建築士免許証又は木造建築士
免許証に記載された事項等に変更があつたときは、
一級建築士にあつては国土交通大臣に、二級建築
士又は木造建築士にあつては免許を受けた都道府
県知事に対し、一級建築士免許証、二級建築士免許
証又は木造建築士免許証の書換え交付を申請する
ことができる。
【第10条の2の2第4項】 (新設)
構造設計一級建築士証又は設備設計一級建築士証
の交付を受けた一級建築士(以下それぞれ「構造設
計一級建築士」又は「設備設計一級建築士」という。)
は、構造設計一級建築士証又は設備設計一級建築
士証に記載された事項等に変更があつたときは、国
土交通大臣に対し、構造設計一級建築士証又は設
備設計一級建築士証の書換え交付を申請することが
できる。
④ 建築設備士に係る規定の整備
4-1 法律上に「建築設備士」の名称を規定
(新設 第2条第5項)
【改正内容】
建築設備に関する知識及び技能につき国土交通大臣が定める資格を有する者を「建築
設備士」とする。
(改正前)
(改正後)
法律上に名称の規定はなく省令において規定
法律上に「建築設備士」を定義し、名称を規定
【建築士法施行規則第17条の18】
法第20条第5項に規定する建築設備に関する知識
及び技能につき国土交通大臣が定める資格を有す
る者(以下「建築設備士」という。)
【第2条第5項】 (新設)
この法律で「建築設備士」とは、建築設備に関する知
識及び技能につき国土交通大臣が定める資格を有
する者をいう。
4-2 建築設備士の意見の聴取の努力義務
(新設 第18条第4項)
【改正内容】
建築士は延べ面積2,000㎡を超える建築物の建築設備の設計を行う場合には、建築設
備士の意見を聴くよう努めなければならない。
(改正前)
(改正後)
建築設備士の意見を聴くことを努力義務化
建築設備士の意見を聴いた場合の設計図書
等への記載についての規定のみで、意見を聴
くことについての規定は特になし
【第20条第5項】
建築士は、大規模の建築物その他の建築物の建築
設備に係る設計又は工事監理を行う場合において、
建築設備に関する知識及び技能につき国土交通大
臣が定める資格を有する者の意見を聴いたときは、
設計図書又は工事監理報告書において、その旨を明
らかにしなければならない。
【第18条第4項】 (新設)
建築士は、延べ面積が二千平方メートルを超える建
築物の建築設備に係る設計又は工事監理を行う場
合においては、建築設備士の意見を聴くよう努めな
ければならない。ただし、設備設計一級建築士が設
計を行う場合には、設計に関しては、この限りでない。
設計図書又は工事監理報告書への記載につ
いては変更なし
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⑤ その他改正事項
5-1 暴力団排除規定の整備
(改正 第23条の4、第26条)
【改正内容】
①建築士事務所登録の拒否事由として、登録申請者が暴力団員等又は暴力団員等がそ
の事業活動を支配する者に該当する場合を追加。 (新設 第23条の4第1項第五号、
第七号)
②建築士事務所登録の取消事由として、開設者が暴力団員等又は暴力団員等がその事
業活動を支配する者に該当する場合を追加。(新設 第26条第1項第二号)
(改正前)
(改正後)
建築士事務所の登録申請者について、登録を
拒否する事由として、暴力団員等又は暴力団
員等がその事業活動を支配する者であること
の規定は特になし。
建築士事務所の登録の拒否事由に、暴力団
員等又は暴力団員等がその事業活動を支配
する者であることを追加
建築士事務所の開設者について、登録の取
消事由として、暴力団員等又は暴力団員等が
その事業活動を支配する者であることの規定
は特になし。
建築士事務所の取消事由に、暴力団員等又
は暴力団員等がその事業活動を支配する者
であることを追加
ポイント
・登録申請者が法人の場合、法人の役員(業務を執行する社員、取締役、執行役及びこれ
らに準ずる者、社外取締役、代理権を有する支配人、理事等を含み、監査役、取締役で
ない支店長等は含まない))すべてが対象となる。
・建築士事務所登録の際に提出する誓約書に暴力団員等でないこと及び暴力団員等がそ
の事業活動をしないことを追加する(様式変更)。
登録申請者(登録申請者が法人である場合における当該法人の役員を含む。)が次のいずれにも該当しないこ
とを誓約
1.暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成三年法律第七十七号)第二条第六号に規定する暴
力団員又は同号に規定する暴力団員でなくなつた日から五年を経過しない者(以下「暴力団員等」という。)
2.暴力団員等がその事業活動を支配する者
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5-2 建築士に対する国土交通大臣・都道府県知事による調査権の新設
(新設 第10条の2)
【改正内容】
①国土交通大臣が、一級建築士に対しその業務に関し必要な報告を求め、その業務に関
係のある場所に立ち入り、図書その他の物件を検査することができる。
②都道府県知事が、二級建築士若しくは木造建築士に対しその業務に関し必要な報告を
求め、又はその職員に、その業務に関係のある場所に立ち入り、図書その他の物件を
検査することができる。
(改正前)
(改正後)
国土交通大臣及び都道府県知事による建築
士に対する調査権を規定
建築士事務所に対する調査権は、建築士事
務所の登録権者である都道府県知事にある
が、建築士に対する調査権は、登録権者であ
る国土交通大臣及び都道府県知事に与えら
れていない
【第26条の2】
都道府県知事は、この法律の施行に関し必要がある
と認めるときは、建築士事務所の開設者若しくは管
理建築士に対し、必要な報告を求め、又は当該職員
をして建築士事務所に立ち入り、図書その他の物件
を検査させることができる。
【第10条の2】(新設)
国土交通大臣は、建築士の業務の適正な実施を確
保するため必要があると認めるときは、一級建築士
に対しその業務に関し必要な報告を求め、又はその
職員に、建築士事務所その他業務に関係のある場
所に立ち入り、図書その他の物件を検査させ、若しく
は関係者に質問させることができる。
2 都道府県知事は、建築士の業務の適正な実施を
確保するため必要があると認めるときは、二級建築
士若しくは木造建築士に対しその業務に関し必要な
報告を求め、又はその職員に、建築士事務所その他
業務に関係のある場所に立ち入り、図書その他の物
件を検査させ、若しくは関係者に質問させることがで
きる。
従来どおり都道府県知事による建築士事務所
に対する調査権については変更なし
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5-3 建築士事務所の所属建築士を変更した場合の届出義務等
(改正 第23条の2、第23条の5)
【改正内容】
①建築士事務所の登録事項に、建築士事務所に属する建築士の氏名及びその者の一級
建築士、二級建築士又は木造建築士の別を追加。 (第23条の2第5項)
②建築士事務所の開設者は、建築士事務所に属する建築士の氏名及びその者の一級建
築士、二級建築士又は木造建築士の別について変更があったときは、3ヶ月以内に、そ
の旨を都道府県知事に届け出なければならない。 (第23条の5第2項)
※ 今般の改正により新たに建築士事務所に属する建築士が登録事項となるため、施
行日から1年以内に、建築士事務所に属する建築士の氏名及びその者の一級建築
士、二級建築士又は木造建築士の別を都道府県知事に届け出なければならない。
(附則 第3条)
変更があった場合に届けなければならない登録事項
(改正前)
(改正後)
<2週間以内に届け出>
<2週間以内に届け出>
・建築士事務所の名称及び所在地
・登録申請者の氏名、法人である場合はその名
称及び役員の氏名
・管理建築士の氏名及び一級、二級、木造建築
士の別
等
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左記の記載事項
<3か月以内に届け出>
・建築士事務所に属する建築士の氏名 等
5-4 建築士事務所の登録申請における様式の変更等
(省令改正)
【改正内容】
①建築士事務所の登録申請書(第五号書式)に所属建築士名を追加し、申請者が法人の
場合、法人の役員(業務を執行する社員、取締役、執行役及びこれらに準ずる者、社外
取締役、代理権を有する支配人、理事等を含み、監査役、取締役でない支店長等は含
まない)をすべて記入しやすい様式に変更する。
②登録申請時の添付書類に「登記事項証明書」を追加する(法人である場合)。
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(参考)法律の改正内容の概要
<建築士法の構成>
<主な改正内容>
第1章 - 総則(第1条 - 第3条の3)
第2条
第2章 - 免許等(第4条 - 第11条)
第5条 免許書換えに関する規定を新設
第10条の2 建築士に関する報告、検査等に関する規定を新設
第10条の2の2 構造設計一級建築士証又は設備設計一級建
築士証の書換えに関する規定を新設
第3章 - 試験(第12条 - 第17条)
第4章 - 業務(第18条 - 第22条の3)
第4章の2 – 設計受託契約等(第22
条の3の2 -第22条3の4 )
第5章 - 建築士会及び建築士会連合会(第22
条の4)
「建築設備士」の定義を新設
第18条 2000㎡を超える建築物の建築設備について建築設備
士の意見を聴くことを努力義務として新設
第19条の2 建築士の免許証の提示についての規定を新設
第22条の3の2 設計受託契約等の原則に関する規定を新設
第22条の3の3 300㎡を超える建築物の設計等の契約におけ
る書面上の契約の義務化に関する規定を新設
第22条の3の4 適正な設計委託代金に関する規定を新設
第6章 - 建築士事務所(第23条 - 第27条)
第7章 - 建築士事務所協会及び建築士事務所
協会連合会(第27条の2 - 第27条の5)
第8章 - 建築士審査会(第28条 - 第33条)
第9章 - 雑則(第34条 - 第37条)
第10章 - 罰則(第38条 - 第44条)
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第23条の2 建築士事務所に所属する建築士の氏名等を建築
士事務所の登録事項とする規定を新設
第23条の4 建築士事務所に係る欠格要件及び取消事由に、
開設者が暴力団員等であることを追加
第23条の5 建築士事務所の所属建築士を変更した場合の届
出義務化に関する規定を新設
第24条 管理建築士の責務を明確化
第24条の3 300㎡を超える建築物について、一括再委託の禁
止の対象を拡大
第24条の9 設計業務等に関する損害賠償保険の契約締結の
努力義務に関する規定を新設