アノマリーを活用しているのは機関投資家か、それとも個人投資家か? 日本の株式市場における検証 岩澤誠一郎 a 内山朋規 b 要旨 機関投資家は市場の非効率、アノマリーを活用して最終顧客に超過リターンをもたらすことが期 待されている。我々は日本の株式市場を対象としてこの「洗練された機関投資家仮説」を検証する べく、米国市場を中心とする実証研究で CAPM に対し超過リターンをもたらすことが知られている 10 のファクターにつき、海外投資家、国内投資信託、国内年金信託の各機関投資家がこれらの 「アノマリー」を活用して超過リターンを生み出しているかどうかを調査した。我々の検証結果は仮 説に対し非整合的である。第一に、各種機関投資家の集計パフォーマンスは、CAPM 及び一般 的なマルチ・ファクターモデルに対し正のアルファ値を生み出していない。第二に、機関投資家の 集計リターンのうち「銘柄選択能力」の貢献による部分と各種「アノマリー」の超過リターンとの相関 を調べたが、10 ファクターのうち 8 ファクターについては正の相関が観察されない。第三に、機関 投資家が各種「アノマリー」により超過リターンを生み出す銘柄群をオーバーウェイトする傾向があ るかどうかを検証したが、10 ファクターのうち 8 ファクターについては、そのような安定した傾向が 見られない。一方我々は、国内個人投資家を対象として同様な検証を行ったが、結果は機関投資 家に関するものと対照的である。個人投資家の「銘柄選択能力」の貢献によるリターンは、10 ファク ターのうち 8 ファクターのもたらす超過リターンと正の相関を示している。そして実際、個人投資家 はこのうち 7 ファクターについて、「アノマリー」が正の超過リターンを生み出すと想定される銘柄群 をオーバーウェイトする傾向が見られる。 キーワード:機関投資家、個人投資家、アノマリー、アセット・プライシング JEL Classification Numbers: G11, G12, G23 a 名古屋商科大学大学院マネジメント研究科 email: [email protected] b 野村證券金融工学研究センター email: [email protected] † 本論文に対し貴重なコメントを下さった井上光太郎先生、真壁昭夫先生、角田康夫先生、宮島英昭先生、広田 真一先生、第 8 回行動経済学会、Waseda Organizational and Financial Economics Seminar の参加者の方々に感 謝したい。本研究は JSPS 科研費 25380412 の助成を受けている。 1 現代のファイナンス研究者の間では、現実の株式市場が「完全に効率的(perfectly efficient)」で はないということについてある程度の合意がなされつつあるとみることができるだろう(例えば Ang 2014)。また、世界の株式市場ではバリュー・アノマリー、すなわちある時点における簿価自己資本 /株式時価総額比率(Book-to-Market 比率、以下 B/M 比率)とその後の株式投資リターンとが正 の相関を有するとの実証的事実を始め、数々のアノマリーが観察されるが、少なくともその一部がミ スプライシングにより生じているとの見方についても、大方の研究者及びファイナンス実務家の合 意を得ることができるだろう1。 ここで興味深いのは、株式市場におけるアノマリーに対して、プロの投資家である機関投資家が いかなる役割を果たしているのか、という問題である。彼らの多くはまず、市場に非効率、アノマリー が存在することを知っていると想定して良いだろう。そしてそうした中で、一般的に彼らに期待され ている役割は、情報通のプロの投資家として、市場の非効率、アノマリーを活用して最終顧客に超 過リターンをもたらすことだろう。機関投資家がこうした行動をとるのであれば、それは市場をより効 率的なものにすることにも寄与することになる。Edelen et al. (2015)にならい、こうした見方を「洗練さ れた機関投資家仮説」と呼ぼう。 だが現代の株式市場において機関投資家は強い影響力を持っている。米国の上場株式におけ る機関投資家の所有比率は 2007 年時点で 68%に達する(Lewellen 2011)。日本でも国内外の機 関投資家による上場株式の所有比率は 2013 年時点で 38%である。また機関投資家の存在感は 年々強まる方向にある。従って、機関投資家の大勢がこのように「洗練」された投資行動をとるので あれば、アノマリーは時ともに減衰・消滅の方向に向かうはずであろう。しかし現実には、近年の株 式市場においても多くのアノマリーが消滅することなく残っている(本論文第 3 章)。これは機関投 資家が全体として「洗練された」投資家として行動しているとの見方と整合しない。 機関投資家とアノマリーとの関係について、もう少し詳細に検討してみよう。「洗練された機関投 資家」は、例えばバリュー・アノマリーを活用し、自らのファンドにおいて B/M 比率の高い銘柄を市 場平均に比べオーバーウェイトすることで期待リターンを高めようとするであろうか。彼らがこれをミ スプライシングであり、正の期待超過リターンの源泉と見做すのであればそうするであろう。もっとも 「超過リターン」は、彼らのパフォーマンス評価の基礎となるベンチマークによって異なる。そのベン チマークが例えば「Russel 1000 Value」のように B/M 比率を考慮した指数である場合には、運用す るファンドにおいて B/M 比率の高い銘柄を市場平均に比べオーバーウェイトしたとしても、そのこ とだけによってベンチマークに対する超過リターンを得るのは容易ではない。だが実際には、B/M 比率を考慮したベンチマークにより評価を受けている機関投資家は少数派である。Sensoy(2009) 1 もちろんこうした見方に対し、アノマリーをファンダメンタル・リスクの代償と見做す見方が存在し、アノマリーをミス プライシングの結果と見る見方の陣営との間で議論は続いている。我々は本稿でこの議論に立ち入ることはせず、 現実の株式市場は完全に効率的ではなく、アノマリーの少なくとも一部はミスプライシングに帰することができるとの 立場をとった上で議論を行う。 2 によれば、米国株のアクティブ型ミューチュアル・ファンドのうち、B/M 比率を考慮したベンチマーク を採用しているものの比率は 16.4%に過ぎず、逆に S&P500 指数をベンチマークとするファンドは 61.3%に上る。また、日本株を運用する海外投資家のベンチマークとして最も広く使用されている のは MSCI Japan 指数、つまり B/M 比率が考慮されていない指数である。こうした指数をベンチマ ークとして超過リターンをもたらすよう動機づけられている機関投資家の大多数は B/M 比率の高 い銘柄を市場平均に比べオーバーウェイトすると予想されるだろう。そして機関投資家の多くは、 全てのアノマリーを考慮したベンチマークによって評価されているわけではないと推測されるので、 バリュー・アノマリー以外のアノマリーについても、それらによる期待超過リターンが正である限り、 それらのアノマリーを活用しようとするものと予想される。 本論文の目的は、以上の考察を踏まえた上で、「洗練された機関投資家仮説」を日本の株式市 場におけるデータにより検証することである。 我々はまず、海外投資家2、国内投資信託、国内年金信託の各種機関投資家毎に、その集計リ ターンを推計し、その集計パフォーマンスを CAPM 及び一般的なマルチ・ファクターモデルと比較 してアルファ値を算出した。機関投資家がアノマリーを活用して超過リターンを得ているのであれ ば、アルファ値は正になるはずであるが、実際にはどの投資主体をみてもアルファ値は統計的に 有意にゼロと異ならない水準であった。 次に我々は、各種機関投資家の集計リターンを CAPM によって、「タイミング能力」の貢献によ る部分と「銘柄選択能力」の貢献の部分とに分解し、後者と各種のアノマリーの超過リターンとの関 係を調べた。機関投資家がアノマリーを活用して超過リターンを得ているのであれば、各種のアノ マリーが超過リターンを生み出している際に、機関投資家の「銘柄選択」によるパフォーマンスが向 上しているはずであり、機関投資家全体としての「銘柄選択能力」の貢献によるリターンと、各種ア ノマリーの超過リターンとは正の相関を持つはずである。 我々は米国市場を中心とする実証研究で(CAPM に対し)超過リターンをもたらすことが知られ ている「時価総額(小型株優位)」、「B/M 比率(髙 B/M 株優位)」など 10 の「アノマリー」について 調査した3。このなかには、「総資産営業利益率(髙総資産営業利益率株優位)」、「予想 ROE(髙 予想 ROE 株優位)」など、日本市場では米国市場と同様な超過リターンが観察されていない「アノ マリー」も含まれるが、これらについても海外の機関投資家が「戦略的に」活用しようとする可能性 があることを考慮し、検証の対象とした。 我々の検証結果では、「総資産営業利益率」及び「予想 ROE」という収益性に関連する 2 つの ファクターを除く 8 つの「アノマリー」では、その超過リターンと機関投資家の「銘柄選択能力」の貢 2 「海外投資家」は海外に拠点を置く日本株の投資家を指す。定義上個人投資家も含まれるが「海外投資 家」の圧倒的多数は機関投資家である。 3 以下、本論文で検証の対象とする 10 の「アノマリー」を指す場合に括弧つきで表記する。 3 献によるリターンとの間に負の相関が存在するか、あるいは明確な相関が存在しないかのいずれ かであった。つまりこれらの「アノマリー」についての結果は「洗練された機関投資家仮説」と整合し ない。 また「総資産営業利益率」、「予想 ROE」の 2 つのファクターでは概ね正の相関が観察され、機 関投資家がこれらの「アノマリー」を「戦略的に」活用しようとしている可能性が示唆されるが、前述 のように、これらのファクターは日本市場では超過リターンを生み出しておらず、従って彼らの「戦 略的な」意図が奏功しているとは言えず、その意味でこの結果もまた、「洗練された機関投資家仮 説」と整合しているとは言えない。 最後に我々は、機関投資家が「アノマリー」を活用しているのかどうかにつき、より直接的な検証 を行った。各種の「アノマリー」につき、機関投資家が超過リターンを生み出す銘柄群を市場平均 に比べオーバーウェイトする傾向があるかどうかを検証したのである。 我々の検証結果では、「予想 ROE」と「予想利益修正率」の 2 つのファクターでは、機関投資家 が、「アノマリー」による超過リターンが「想定される」銘柄群を、サンプル期間中安定してオーバー ウェイトする傾向が見られた。だが前述のように、このサンプル期間において日本市場では「予想 ROE」の高い銘柄群は超過リターンを生み出していない。また、機関投資家の「予想利益修正率」 の高い銘柄群のオーバーウェイト幅は非常に小さく、結果として、彼らのリターンに貢献する度合は 小さいと見られる(実際、機関投資家の「銘柄選択能力」の貢献によるリターンと、「予想利益修正 率」アノマリーの超過リターンとの間には正の相関が観察されない)。 逆に、10 のファクターのうち上記の 2 つを除く 8 つのファクターでは、機関投資家は各種「アノマ リー」が負の超過リターンを生み出すと想定される銘柄群を一貫してオーバーウェイトしているか、 または時とともに選好の対象が変化しているかのどちらかである。これは機関投資家が「アノマリ ー」を活用して超過リターンを生み出すと見做す「洗練された機関投資家仮説」と整合しない結果 である。 かくして我々の検証結果は総じて「洗練された機関投資家仮説」と非整合的である。そしてこの 結果は、米国株式市場を対象とする近年のいくつかの研究とも整合的である。例えば Lewellen(2011)は米国市場における機関投資家の集計パフォーマンスを検証し、CAPM に対して もマルチ・ファクターモデルに対してもアルファ値がゼロであることを示している。また Edelen et al. (2015)は、機関投資家が良く知られたアノマリーの多くに関し、正の超過リターンが得られる銘柄群 (long leg of anomaly)ではなく、負の超過リターンが得られる銘柄群(short leg of anomaly)の保有 を、その超過リターンが実現する前に増加させる-従って実際に負の超過リターンを享受している -傾向があることを示している。 ところで、株式市場には機関投資家だけでなく、他の参加者も存在する。市場での売買の活発 さからみて、機関投資家に次ぐ重要性を持つのは国内個人投資家である。機関投資家がアノマリ 4 ーを活用しておらず、「洗練されていない」とすると、個人投資家はどうなのだろうか。日本の株式 市場では、各個別銘柄について、国内個人投資家の株式保有比率のデータが利用可能である。 米国株式市場にこのようなデータが存在しない点を考えると、個人投資家とアノマリーとの関係の 実証は、我々独自の貢献たり得るだろう。 そこで我々は、国内個人投資家について、上でみた機関投資家についてのものと同様な分析を 行った。まず、国内個人投資家の集計リターンを推計し、これを CAPM 及び一般的なマルチ・ファ クターモデルと比較してアルファ値を算出したが、アルファ値は統計的に有意にゼロと異ならない 水準であった。 次に個人投資家の集計リターンを CAPM によって「タイミング能力」の貢献による部分と「銘柄選 択能力」の貢献の部分とに分解してみた。その結果、前者は有意にマイナスであるが、驚くべきこと に、後者は有意にプラスであった(機関投資家の場合、前者も後者もともに有意にゼロと異ならな い水準であった)。個人投資家を全体としてみた場合、彼らの「銘柄選択」が、その投資パフォーマ ンスに対し有意にプラスに寄与していることが示されたのである。 更に我々は、個人投資家の「銘柄選択能力」の貢献によるリターンと、各種「アノマリー」の超過リ ターンとの相関を調べた。機関投資家の場合とは逆に、「総資産営業利益率」と「予想 ROE」という 収益性に関連する 2 つのファクターを除く 8 つの「アノマリー」において、その超過リターンと個人 投資家の「銘柄選択能力」の貢献によるリターンとの間に正の相関が観察された。つまり個人投資 家の「銘柄選択」によるリターンが良好であることの背景に、彼らが「アノマリー」を活用する形で「銘 柄選択」を行っているとの可能性があることが示唆されたわけである。 最後に、各種の「アノマリー」につき、個人投資家が超過リターンを生み出す銘柄群を市場平均 に比べオーバーウェイトする傾向があるかどうかを検証した。検証結果はここでも機関投資家の場 合と対照的であった。個人投資家は、10 ファクターのうち、「総資産営業利益率」、「予想 ROE」、 「固有ボラティリティ」を除く 7 つのファクターについて、各種「アノマリー」が正の超過リターンを生 み出すと想定される銘柄群をオーバーウェイトする傾向が見られた。また個人投資家は、「総資産 営業利益率」や「予想 ROE」の高い銘柄をアンダーウェイトし、低い銘柄をオーバーウェイトする傾 向が見られたが、前述のように、「総資産営業利益率」や「予想 ROE」の高い銘柄はこのサンプル 期間において日本市場では超過リターンを生み出しておらず、彼らが「間違っていた」わけではな い。 日本の株式市場においては、機関投資家が全体として「アノマリー」を活用しているようには見受 けられない一方、個人投資家は全体として「アノマリー」を活用して正の超過リターンを得ている、と の我々の実証結果は、「洗練された機関投資家仮説」と非整合的であることに加え、研究者の間で 見方が必ずしも収斂していない以下の論点についても示唆を与えるものである。 第一は、機関投資家がアノマリーに対して果たす役割についての議論である。これまで主流で 5 あった、機関投資家がミスプライシングを修正する「裁定投資家(arbitrageur)としての役割を担うと の想定(例えば Shleifer and Vishny 1997)に対し、最近のいくつかの研究は機関投資家がミスプラ イシングを引き起こし、アノマリーの原因を生み出しているとの見方を実証的に提示している(Coval and Stafford 2007, Frazzini and Lamont 2008, Jiang 2010, Alti and Sulaeman 2012, Edelen et al. 2013)。我々の実証結果の中に、機関投資家がミスプライシングを修正するとの見方を支持する証 拠はほとんど存在しない。また、機関投資家がアノマリーを活用して超過リターンを得ているとすれ ば、情報面等で劣後する他の投資家集団が同じ手法で利益をあげることは容易ではないだろう が、機関投資家がアノマリーの原因になっているのだとすれば、他の投資家集団がアノマリーを活 用して超過リターンを得ることは相対的に容易なはずである。我々の実証結果、つまり個人投資家 がアノマリーを活用して正の超過リターンを得ているとの結果は、間接的にではあるが、機関投資 家がアノマリーの原因になっているとの見方を支持するものである。 第二に、機関投資家がミスプライシングを引き起こしアノマリーの原因となるような投資行動をと っているのはなぜか、という問題であるが、この点に重要な示唆を与えると見られるのが、機関投資 家の追随的な投資行動(institutional herding)、つまり機関投資家が、他の機関投資家が投資した (売却した)銘柄を、追随的に投資する(売却する)傾向を持つという問題である。機関投資家が追 随的に投資した銘柄が短期的に市場をアウトパフォームする傾向が見られる(Wermers 1999)ことも あり、伝統的には、こうした行動を、他の機関投資家の投資行動を「情報」と見做した上での合理的 なものとして解釈する研究が主流であった(Banerjee 1992, Sias 2004)。しかし近年では、機関投資 家が追随的に投資した(売却した)銘柄が長期的には市場をアンダーパフォーム(アウトパフォー ム)する傾向が指摘され(Dasgupta 2011)、そうした投資行動を合理的なものと見做す解釈に対し 疑問を投げかける研究が増えている(Coval and Stafford 2007, Frazzini and Lamont 2008)。我々 の実証結果によれば、機関投資家は直近過去 3 年間に株価が上昇した銘柄をオーバーウェイト する傾向がある(表 5)が、そのことは、彼らの「銘柄選択」によるリターンにポジティブな影響を与え ていない(表 4)。一方で、個人投資家は直近過去 3 年間に株価が上昇した銘柄をアンダーウェイ トする傾向がある(表 7)が、そのことは、彼らの「銘柄選択」によるリターンにポジティブな影響を与 えている(表 6)。この結果は、機関投資家の追随的投資行動を合理的なものと解釈する見方と符 合しない。 本論文は、先行するいくつかの種類の研究に立脚している。第一に、機関投資家のポートフォリ オ選択が、顧客に価値を届けているかどうかに関する研究である。Jensen(1968)に端を発する、ア クティブ型ミューチュアル・ファンドの投資リターンの研究から一歩進み、最近の研究では、SEC13F のデータを活用し、機関投資家の投資行動を分析しているものが目立つ。既に触れたように、 Lewellen(2011)は米国市場における機関投資家の集計パフォーマンスを検証し、CAPM に対し てもマルチ・ファクターモデルに対してもアルファ値がゼロであることを示した。 6 第二に、機関投資家の投資行動とアノマリーとの関係に関する研究である。既に触れたように、 最近の研究では、機関投資家がアノマリーの原因となるミスプライシングを自らの取引によって生 み出していることを実証するものが目立つ。バリュー・アノマリーについては、ミューチュアル・ファン ドに対する資金フローの影響(Frazzini and Lamont 2008)、機関投資家の投資行動の影響(Jiang 2010, 岩澤・内山 2012)が指摘されている。また SEO アノマリーについても、機関投資家の投資行 動との関係が論じられている(Alti and Sulaeman 2012, Edelen et al. 2013)。更に、ベータ値アノマリ ーについても、機関投資家がその原因を生み出しているとの実証結果が報告されている(Iwasawa and Uchiyama 2014)。Edelen et al. (2015)はこうした研究結果に立脚し、良く知られた 8 つのアノマ リーを対象に、機関投資家がこれを活用した取引を行っているかどうかを調査し、否定的な実証結 果を得たものである。 本研究は日本の株式市場を対象とし、米国株式市場を対象とする Lewellen (2011)及び Edelen et al. (2015)と整合的な結果を得たものであるが、データの制約から米国では分析が容易ではない 個人投資家についての実証結果を加えたところに、本研究の意義の一つがあると考える。 なお、これまでに日本の株式市場における機関投資家のパフォーマンスについていくつかの実 証研究があるが、海外投資家が市場平均を上回るパフォーマンスを生み出していると結論づけて いるものが多い(Kamesaka et al. 2003, Bae et al. 2008)。これらはいずれも、投資主体別売買金額 の集計データを用いた、海外投資家の「タイミング能力」の検証とみることができる。これに対し我々 の研究は機関投資家の持ち株比率データを用い、彼らの「銘柄選択能力」を検証したものであり、 機関投資家の「銘柄選択」がアルファ値を生み出していないことを実証するものである。 以下、第 1 章で使用するデータについての説明を行った後、第 2 章では日本の株式市場にお いて、機関投資家が CAPM またはマルチ・ファクターモデルに対しアルファ値を生み出しているか どうかの検証を行う。第 3 章では、機関投資家の集計パフォーマンスのうち「銘柄選択能力」の貢 献による部分に焦点を当て、この部分と各種「アノマリー」の生み出す超過リターンとの相関を調べ る。第 4 章では機関投資家が各種「アノマリー」を生み出すファクターをオーバーウェイトしている のかどうかを検証する。第 5 章は個人投資家について、機関投資家と同様な検証を行う。第 6 章 で結論を述べる。 1. データ 本研究において我々は、1985 年 1 月から 2014 年 3 月までの、日本の株式市場の全上場銘柄 の株価リターンと、各種投資主体の持ち株比率のデータを使用して分析を行った。 株価リターンについては、東京証券取引所の株価及び配当のデータを収録した野村證券のデ ータベースを使用した。 7 各種投資主体の持ち株比率のデータについては、二種類のデータソースを利用した4。一つは 東洋経済新報社の「大株主データ」である。これは東洋経済が上場企業に対して行うアンケート調 査を基に作成されているデータベースであり、「発行済み株式総数(X)」、「外国法人・外国人持株 数(A)」、「投資信託持株数(B)」、「年金信託持株数(C)」のデータが、各企業の本決算及び中間 決算期末毎に更新される。東洋経済は A を「外国国籍を有する個人、外国の法令に基づく法人、 外国政府などによる持株数」と定義しているが、その圧倒的多数は海外に拠点を置く機関投資家 とみることができるため、我々は本研究において A/X を「海外(機関)投資家持ち株比率」とした。 また、B は「信託銀行名義のうち、証券投資信託法(改正投信法)による委託者の信託財産の株 数。特定金銭信託は含まない」、C は「信託銀行名義のうち、法人税法による適格年金および厚生 年金保険法による厚生年金制度(調整年金)の株数」とそれぞれ定義されており、本研究では、こ れらを含めた A+B+C を「(国内外の)機関投資家」、(A+B+C)/X を「機関投資家持ち株比率」とし た。なお、東洋経済のこのデータベースでは、特に古い過去のデータにおいて、年に 1 回しか更 新されていないケースが散見されるが、その場合、利用可能な直近のデータで代替した。 持ち株比率の計算で使用したもう一つのデータソースは有価証券報告書である。本決算を踏ま えて年に一度公表される有価証券報告書においては、「政府及び地方公共団体」、「金融機関」、 「金融商品取引業者」、「その他の法人」、「外国法人等」、「個人その他(D)」について、それぞれ の「所有株式数」の公表が義務付けられている。このデータは年に一度しか更新されないため、東 洋経済の「大株主データ」に比べ精度が劣るが、「大株主データ」にはない個人投資家のデータを 捕捉することができる。そこで我々は本研究で、D/X を「個人投資家持ち株比率」として活用した。 各種「アノマリー」のファクターの計算においては、野村證券のデータベースにある企業の財務デ ータ及び、I/B/E/S のコンセンサス予想データを活用した。 2. 機関投資家はアルファ値を生み出しているのか? 本章では、機関投資家が「アノマリー」を活用しているかどうかを検証するための最初のステップ として、彼らの集計パフォーマンスが、CAPM 及びマルチ・ファクターモデル対比でアルファ値を生 み出しているかどうかを検討する。 1 章で述べたように、日本の株式市場における機関投資家として、我々が検討対象としたのは、 海外投資家、投資信託、年金信託の3つの投資主体である。例えば海外投資家の t 月における投 4 東京証券取引所の「株式分布状況調査」によると、2014 年 3 月末時点で、日本の全上場企業の発行済 株式のうち、 「外国法人等(本研究における「海外投資家」に相当) 」が 26.9%、 「投資信託」が 3.9%、 「年 金信託」が 2.0%、 「個人・その他(本研究における「個人投資家」に相当) 」が 24.3%を保有している。こ れ以外では「事業法人等」が 26.9%、 「(投資信託、年金信託を除く)金融機関」が 16.9%を保有している が、これらの部門の株式売買回転率は、 「海外投資家」、 「投資信託」 、 「年金信託」 、 「個人投資家」に比べ 著しく低い。 8 資リターン R 海外, t は、各主体の t-1 月末時点のポートフォリオにおける当該銘柄 i の保有ウェイトを wi,t-1、当該銘柄 i の t 月における(安全資産金利に対する)超過リターンを R it として、 R 海外, t = Σiwi,t-1 R it (1) として得る。東洋経済の大株主データは本決算及び中間決算の月、つまり年に 2 回しか更新され ないので、データが更新されない月については利用可能な最新の持ち株比率データを使用し保 有ウェイトを計算する。サンプル期間は 1985 年 1 月から 2013 年 12 月までの 29 年間である。 結果を表 1 に示した。まずパネル A の上段には、海外投資家、投資信託、年金信託の各投資 主体のサンプル期間における平均超過リターンを示したが、これはいずれも統計的に有意にゼロ と異ならない(表 1 で個人投資家についても同様な分析の結果を示したが、これについては 5 章 で触れる)。 パネル A の下段には市場平均(MKT)及び、Fama-French(1993)の B/M ファクター(HML)及び サイズファクター(SMB)、Carhart(1997)のモメンタム・ファクターの符号を逆にしたもの(LMW)の各 ファクターの平均超過リターンを示した。このうち HML ファクターの平均リターンは 5%水準で統計 的に有意な正の値をとっており、サンプル期間における日本の株式市場において、B/M 比率の高 い銘柄をロング、低い銘柄をショートする戦略が超過リターンをもたらしたことを示唆している。また LMW の平均値も統計的な有意性は低い(20%水準)が正の値であり、日本の株式市場では過去 リターンの低い銘柄が市場平均を上回るリターンをあげる傾向があったことが示されている。従っ て、機関投資家が B/M 比率の高い銘柄や過去リターンの低い銘柄をオーバーウェイトしていれ ば、そのパフォーマンスは CAPM に対し正のアルファ値を生み出すことができるはずである。 パネル B はこの点を検証すべく、各投資主体のパフォーマンスの CAPM に対するアルファ値を 示した。結果はどの投資主体をみても、アルファ値は統計的に有意にゼロと異なっておらず、彼ら が「洗練された機関投資家」として B/M 比率の高い銘柄や過去リターンの低い銘柄をオーバーウ ェイトした兆候を見出すことはできない。 また機関投資家が時価総額、B/M 比率、過去リターンとは異なる種類の「アノマリー」を活用して 超過リターンをあげているとの可能性をみるため、Fama-French(1993)の 3 ファクター・モデル及 び、これに LMW ファクターを加えた 4 ファクター・モデルに対するアルファ値も調べた。しかし結 果はどの投資主体をみても、アルファ値は統計的に有意にゼロと異なっておらず、ここでも彼らが 「アノマリー」を活用して超過リターンをあげている兆候は見られない。 3. 機関投資家は「アノマリー」を活用してリターンを生み出しているのか? 前章では機関投資家の投資リターンを推計し、これを対象に分析を行った。本章では機関投資 家の投資リターンを「タイミング能力」の貢献による部分と「銘柄選択能力」の貢献による部分とに分 解し、後者と「アノマリー」の超過リターンとの関係を調べる。機関投資家が「アノマリー」を活用して 9 超過リターンを得ているのであれば、そのことは、彼らの「銘柄選択能力」の貢献の部分に現れるは ずである。特に、市場において「アノマリー」が超過リターンを生み出している際に、機関投資家の 「銘柄選択能力」の貢献による投資パフォーマンスは向上するはずであり、この両者は正の相関を 有するはずである。 分析に使用するのは、Kacperczyk et al. (2014)が示した機関投資家の投資パフォーマンスの分 解である。彼らは機関投資家の保有株式データを使用し、t 期における機関投資家 j のパフォー マンスを「タイミング能力の貢献(Timing t j)」と「銘柄選択能力の貢献(Picking t j)」とに分解した。前 者はある期の直前期末における当該銘柄の保有ウェイトと市場ウェイトとの差に、当該銘柄の当期 のシステマティック・リターンを乗じ、(当該機関投資家が保有する)全銘柄についての和を求めた もの(下の(2)式)、後者は当該銘柄の当期の固有リターンを乗じたものの全銘柄についての和 ((3)式)である。ベータ値は直前期末まで 60 ヶ月(データが不足する場合最低 36 ヶ月)のリター ンを使用して算出した。 Timing t j=Σi (wi,t-1 j-wi,t-1 m)(βi,t-1R mt ) (2) Picking t j=Σi (wi,t-1 j-wi,t-1 m)( R it-βi,t-1R mt ) (3) まず、海外投資家、投資信託、年金信託の 3 つの投資主体について、「タイミング能力の貢献」 及び「銘柄選択能力の貢献」のそれぞれについての時系列平均値、標準偏差及び t 値を算出した (個人投資家についても同様の分析を行ったが、この結果については 6 章で触れる)。表 2 が示 すように、どの投資主体をとっても「銘柄選択能力の貢献」は統計的に有意にゼロと異ならない。こ れは前章でみた各投資主体の CAPM に対するアルファ値の分析と整合的な結果である。またサ ンプル期間を前半と後半とに分けて分析したが、結果は変わらず、いずれの期間においても、どの 投資主体についても、「タイミング能力」「銘柄選択能力」双方の貢献が統計的に有意にゼロと異な らない結果となっている5。 ただ、たとえ平均的にはゼロであるとしても、市場において「アノマリー」が超過リターンを生み出 す際には、「銘柄選択能力」が大きな貢献を生み出しているかもしれない。この点を検証するため に、各投資主体の「銘柄選択能力の貢献」の時系列データと、各種「アノマリー」の超過リターンの 時系列データとの相関を調べた。 本論文では米国市場を中心とする実証研究で(CAPM に対し)超過リターンをもたらすことが知 られている「アノマリー」として 10 のファクターを取り上げた。まず「時価総額」、「B/M 比率」、「過去 5 日本の株式市場における機関投資家のパフォーマンスについての過去の実証研究では、海外投資家が市場平 均を上回るパフォーマンスを生み出していると結論付けられている。ただ Kamesaka et al. (2003)のサンプル期間 は 1980~1997 年、Bae et al. (2008)のそれも 1991~1999 年と、サンプル期間がやや古い。本論文でも表 2 が示 すように、サンプル期間前半(1985 年 4 月~1999 年 9 月、パネルB)では機関投資家の「タイミング能力」の貢献の 平均値は、統計的に有意な水準ではないものの、比較的大きな正である。しかしサンプル期間後半(1999 年 10 月 ~2014 年 3 月、パネル C)には平均値がほぼゼロと変わらない水準まで低下している。 10 リターン(ラグ 1 ヶ月の過去 35 ヵ月リターン)6」という良く知られている 3 つのファクターに加え、 Fama and French が最近の論文(Fama and French 2014)で提唱する「5 ファクター・モデル」の中で 加えた収益性に関するファクターと投資パターンに関するファクターを考慮した。収益性に関する ファクターとしては Novy-Marx(2012)が使用した「総資産粗利益率」と近い「総資産営業利益率7」 に加え、多くの機関投資家が重視していると見られる「予想 ROE」を使用した。また投資パターンの ファクターとしては Cooper et al. (2008)に倣い「総資産成長率」を使用した。 またそれらに加え、これまでに指摘されてきた比較的良く知られている「アノマリー」のファクター として、「アナリスト予想利益修正率(Stickel 1991、 Chan et al. 1996)」、「アクルーアル(Hirshleifer et al. 2004、 Chan et al. 2006)」、「ベータ値(Black et al. 1972、Baker et al. 2011、 Iwasawa and Uchiyama 2014)」、「固有ボラティリティ(Ang et al. 2006, 2009、内山・岩澤 2012)」を加えた。 これらのアノマリーの日本市場におけるパフォーマンスを表 3 に示した。東証一、二部全銘柄を 対象に、各ファクターの前月末値を使用して、時価総額ウェイトまたは等ウェイトの五分位ポートフ ォリオを作成、1985 年 4 月から 2014 年 3 月まで 6 ヵ月毎にポートフォリオをリバランスすることを想 定、各ポートフォリオの平均リターンを算出した8。 パネル A には、時価総額ウェイトで分位ポートフォリオを作成した場合の結果を示した。統計的 に有意な水準で「アノマリー」が観察されるのは「時価総額(小型株優位)」、「B/M 比率(髙 B/M 比 率株優位)」、「ベータ値(低ベータ株優位)」、「固有ボラティリティ(低ボラティリティ株優位)」の 4 ファクターであるが、「過去リターン」、「総資産成長率」、「予想利益修正率」、「アクルーアル」の 4 ファクターについても、統計的に有意ではないが、「アノマリー」が超過リターンを生み出すと想定さ れる方向で正の平均リターンが観察される。だが収益性に関連する 2 つのファクターである「総資 産営業利益率」と「予想 ROE」は米国市場と逆の結果になっており、いずれも各収益性ファクター の最大値により構成されるポートフォリオの平均リターンが、最小値により構成されるポートフォリオ の平均リターンを下回っている。 パネル B には、等ウェイト分位ポートフォリオを作成した場合の結果を示した。統計的に有意な 水準で「アノマリー」が観察されるのは「時価総額(小型株優位)」、「B/M 比率(髙 B/M 比率株優 6 米国市場では個別銘柄の過去 12 ヵ月のリターンがその後のリターンと正の相関を有する傾向を示すの に対し、日本市場ではそのような相関は観察されず、むしろより長期の過去リターンとその後のリターン とが負の相関を有する。この点を考慮し、ここでは Kubota and Takehara(2010)に倣って「ラグ 1 ヶ月の過去 35 ヵ月リターン」をファクターとした。 7 Novy-Marx(2012)は「粗利益(=売上高-売上原価)」を「最もクリーンな利益の尺度」として、損益計算書の下に ある利益ほど、企業の裁量による歪みを反映しクリーン度が低下する、と論じている。我々はこの考え方を尊重しつ つ、データ使用の容易性を鑑みて、「粗利益」の代わりに「営業利益」を使用した。 8 リバランスの頻度を増やす(例えば 1 ヵ月毎にする)と、 「総資産営業利益率」と「予想 ROE」を除く 各種アノマリーの超過リターン幅はより大きくなる。だがここでは 6 ヵ月毎にしか更新されない機関投資 家の持ち株比率データを使用して機関投資家のパフォーマンスを検証していることに鑑み、6 ヵ月間リバ ランスを行わないとしても機関投資家が活用できる、アノマラスな超過リターンが存在するかどうかを検 証している。 11 位)」、「過去リターン(低過去リターン株優位)」、「総資産成長率(低総資産成長率株優位)」、「予 想利益修正率(髙予想利益修正率株優位)」、「アクルーアル(小アクルーアル株優位)」の 6 ファク ターである。また「ベータ値」、「固有ボラティリティ」についても、統計的に有意ではないが、「アノマ リー」が超過リターンを生み出すと想定される方向で正の平均リターンが観察される。だがここでも、 収益性に関連する 2 つのファクターである「総資産営業利益率」と「予想 ROE」は、「アノマリー」と して想定されるのとは逆方向の平均リターンが観察される。 日本の株式市場では収益性に関するファクター群が米国市場で観察されるような「アノマリー」を 生み出しておらず、たとえ機関投資家が収益性の高い銘柄をオーバーウェイトしていたとしても、そ のことが超過リターンをもたらしてはいない可能性が高いとの点を確認した上で、分析を進めたい。 機関投資家の投資リターンのうち、「銘柄選択による貢献」の部分が「アノマリー」の超過リターン により影響を受けているかを調べるため、前者を被説明変数、後者を説明変数とする回帰分析を 行った。例えば機関投資家が B/M 比率に関する「アノマリー」を活用しているとすれば、B/M 比率 の高い銘柄が B/M 比率の低い銘柄に対し大きな超過リターンを生み出した際に、彼らの「銘柄選 択能力の貢献」によるリターンが大きくなるはずで、両者は正の相関を有するはずである。 表 4 では、説明変数である各種「アノマリー」の超過リターンを時価総額ウェイトで算出した場合 (パネル A)と、等ウェイトで算出した場合(パネル B)の双方について結果を示した。また、大きな 金額の運用を行う機関投資家が全体として時価総額の大きい銘柄に偏った運用となることは不可 避であることを考慮し、時価総額による「アノマリー」の超過リターンをコントロール変数として説明変 数に加えた場合の重回帰の結果(パネル A-1、B-1)をも示した。 各種「アノマリー」のファクター毎に結果をみると、「洗練された機関投資家仮説」と整合する形 で、概ね正の相関がみられ、またいくつかの回帰係数が統計的に有意な正の値をとるのは、収益 性に関連する 2 つのファクターである「総資産営業利益率」と「予想 ROE」に限られる。他のファク ターでは、概ね負の相関がみられ、いくつかの回帰係数は統計的に有意な負の値をとる(「時価総 額」、「総資産成長率」、「予想利益修正率」、固有ボラティリティ」)か、相関が弱くほぼ統計的に有 意な水準でゼロと異ならない(「B/M 比率」、「過去リターン」、「アクルーアル」、「ベータ値」)かのど ちらかであり、これら 8 つのファクターのデータは「洗練された機関投資家仮説」と整合的でない。 収益性に関する 2 つのファクターでは回帰係数が概ね正で、いくつかのそれは統計的に有意 である。つまり機関投資家の「銘柄選択能力の貢献」によるリターンは、「総資産営業利益率」や 「予想 ROE」の大きい銘柄がそれらの小さな銘柄に対してアウトパフォームする時期に好転する傾 向を持っているということである。これは機関投資家が、例えば米国市場では超過リターンを生み 出す傾向を持つ「総資産営業利益率」や「予想 ROE」の大きい銘柄を「戦略的に」オーバーウェイ トしている可能性を示唆するが、皮肉なことに、こうした戦略は日本市場では平均的にみて正の超 過リターンをもたらしてはいない。つまり機関投資家は収益性に関する「アノマリー」を「戦略的に」 12 活用している可能性があるが、そのことが平均的にみて彼らに超過リターンをもたらしているわけで はない。その意味でこの結果は、機関投資家がミスプライシングを修正することで「利益を得てい る」と見なす「洗練された機関投資家仮説」と整合しているわけではないと言えるだろう。 4. 機関投資家は「アノマリー」を活用しているのか? 本章では機関投資家が「洗練された機関投資家」として各種の「アノマリー」を活用しているのか どうかについて、より直接的な検証を行う。アノマラスに正(負)の超過リターンをもたらす銘柄群を、 機関投資家が市場平均に対しオーバーウェイト(アンダーウェイト)する傾向があるかどうかについ ての単純な検証である。 Lewellen(2011)に倣い、以下の手順をとった。まず前章で調査した 10 の「アノマリー」の各ファク ターにより東証一、二部上場全銘柄をソートし 5 つの分位ポートフォリオを作成する。次に各種機 関投資家の保有する銘柄のうち、この各分位ポートフォリオに属する銘柄の時価総額の比率を算 出する。この比率と、ユニバース全銘柄を対象として算出した、各 5 分位ポートフォリオに属する銘 柄の時価総額の比率との差を、機関投資家の「アクティブ・ウェイト」と見なすことができる。サンプ ル期間を 1985 年 3 月~2013 年 9 月の 6 ヵ月毎とし、期間平均値を示す。機関投資家の銘柄選 択の傾向が時間を通して一定であるかどうかを確認するため、サンプル期間を前半(1985 年 3 月 ~1999 年 3 月)と後半(1999 年 9 月~2013 年 9 月)に分け、双方の結果をも示す。 結果をみよう(表 5)。「洗練された機関投資家仮説」と整合的な結果、つまり、各種アノマリーが超 過リターンを生み出すと「想定される」銘柄群をオーバーウェイトする傾向が時間を通して一貫して みられるのは「予想 ROE」、「予想利益修正率」の 2 つのファクターだけである。これ以外の 8 つの ファクターについては、機関投資家は各種「アノマリー」が負の超過リターンを生み出すと想定され る銘柄群を一貫してオーバーウェイトしているか、または時とともに選好の対象が変化しているかの どちらかである。 機関投資家、特に海外投資家の「予想 ROE」の高い銘柄群への選好は顕著であり、時間を通じ て変化していない。これは機関投資家が海外で有効であることが知られているアノマリーを「戦略 的に」活用しようとしている可能性を示唆するが、既に指摘したように、「予想 ROE」の高い銘柄群 をオーバーウェイトする投資戦略は、日本市場では超過リターンを生み出しておらず、その意味で この事実は「洗練された機関投資家仮説」と必ずしも整合的でない。 機関投資家は「予想利益修正率」の高い(低い)銘柄群をオーバー(アンダー)ウェイトする傾向 が見られる。これは「予想利益修正率」アノマリーが超過リターンを生み出す方向に沿った投資戦 略であり、「洗練された機関投資家仮説」と整合的な結果である。但し「予想利益修正率」の高い (低い)銘柄群へのオーバー(アンダー)ウェイト率は小さく、機関投資家のポートフォリオ全体のリ ターンに与える影響は限定的であると見られる。実際、前章の分析(表 4)では、「予想利益修正 13 率」の高い銘柄の低い銘柄に対するリターン格差と、機関投資家の「銘柄選択の貢献」によるリター ンとの間に正の相関は観察されず、逆にいくつかの回帰式の設定では、負の相関が観察された。 一方、機関投資家による「時価総額」の大きな銘柄群、「過去リターン」の大きい銘柄群、「総資産 成長率」の大きい銘柄群、「アクルーアル」の大きい銘柄群への選好、そして「固有ボラティリティ」 の小さい銘柄への負の選好は時間を問わず安定している。こうした投資ポジションは、これらのファ クターによるアノマリーが生み出す超過リターンをマイナスの意味で享受するものであり、「洗練さ れた機関投資家仮説」とは明らかに反する結果である。 「B/M 比率」、「総資産営業利益率」、「ベータ値」に関する機関投資家の選好は、サンプル期間 の前半と後半とで一定していない。これらのアノマラスな超過リターンが期待できるファクターに関 して機関投資家の選好が一定していないということ自体が「洗練された機関投資家仮説」と整合的 でない。加えて、より最近のサブサンプルをみると、機関投資家は「B/M 比率」の小さい銘柄群、 「ベータ値」の高い銘柄群を選好しているが、これらの投資ポジションは、これらのファクターによる アノマリーが生み出す超過リターンをマイナスの意味で享受するものである。 前章と本章の分析を併せて見た場合、機関投資家が「アノマリー」を活用して自らのポートフォリ オに超過リターンをもたらしているとの「洗練された機関投資家仮説」を支持する証拠はほとんどな いと言うことができるだろう。 5. 個人投資家は「アノマリー」を活用しているのか? ここまで、機関投資家が「アノマリー」を活用して超過リターンをもたらしているとの証拠はないこと を見てきたが、株式市場には機関投資家だけでなく、他の参加者も存在する。市場での売買の活 発さからみて、機関投資家に次ぐ重要性を持つには国内個人投資家である。機関投資家が「アノ マリー」を活用していないとして、個人投資家はどうなのだろうか。「洗練された機関投資家仮説」 が、暗黙裡に示唆する双生児的な見方は「洗練されていない個人投資家仮説」であろうが、この仮 説は支持されるのだろうか。 1 章でみたように、日本の株式市場では、各個別銘柄について、1 年に 1 回ではあるが、国内 個人投資家の株式保有比率のデータが利用可能である。米国株式市場にこのようなデータが存 在しない点を考えると、個人投資家と「アノマリー」との関係の実証は我々独自の貢献足り得るだろ う。 そこで本章では、国内個人投資家について、ここまでみてきた機関投資家についてのものと同 様な分析を行う。 第一に、国内個人投資家の集計リターンが、CAPM 及びマルチ・ファクターモデル対比でアルフ ァ値を生み出しているかどうかをみる。表 1 のパネル A が示す通り、サンプル期間における個人投 資家の超過リターンは統計的に有意にゼロと異ならない水準でしかない。そしてパネル B が示す 14 ように、個人投資家の投資パフォーマンスは、CAPM、Fama-French(1993)の 3 ファクター・モデ ル、これに LMW ファクターを加えた 4 ファクター・モデルのいずれに対しても、アルファ値は統計 的に有意にゼロと異ならない。つまりこの分析をみる限り、個人投資家の投資パフォーマンスは機 関投資家と大差ないということになる。 第二に、個人投資家の投資リターンを「タイミング能力」の貢献による部分と「銘柄選択能力」の 貢献による部分とに分解し、後者と各種「アノマリー」のリターンとの関係を調べる(表 2)。 まず個人投資家の「タイミング能力の貢献」及び「銘柄選択能力の貢献」のそれぞれについて、 時系列平均値、標準偏差及び t 値を算出した。前者は有意にマイナスであるが、驚くべきことに、 後者は有意にプラスであった。個人投資家を全体として見た場合、彼らの「銘柄選択」が、その投 資パフォーマンスに対しプラスに貢献していることが示されていることになる。機関投資家の場合ど の投資主体をとってみても「銘柄選択能力の貢献」はゼロであるから、個人投資家の「銘柄選択能 力」が全体として機関投資家より秀でているというパズリングな結果が得られたことになる。 我々は更に個人投資家の「銘柄選択能力」の貢献によるリターンと、各種「アノマリー」の超過リタ ーンとの相関関係を調べるため、前者を被説明変数、後者を説明変数とする回帰分析を行った。 表 6 では、説明変数である各種「アノマリー」の超過リターンを時価総額ウェイトで算出した場合(パ ネル A)と、等ウェイトで算出した場合(パネル B)の双方について結果を示した。また、機関投資家 が全体として時価総額の大きい銘柄に偏った運用となることが不可避であることの結果として、個 人投資家は全体として小型株に偏った運用となる傾向があるとの点を考慮し、時価総額による「ア ノマリー」の超過リターンをコントロール変数として説明変数に加えた場合の重回帰の結果(パネル A-1、B-1)をも示した。 各種「アノマリー」のファクター毎に結果をみると、収益性に関する 2 つのファクターである「総資 産営業利益率」、「予想 ROE」を除き、個人投資家の「銘柄選択能力」の貢献によるリターンと、各 種「アノマリー」の超過リターンとの間には統計的に有意な正の相関関係が観察される一方、有意 な負の相関関係は全くみられず、「洗練されていない個人投資家仮説」、つまり個人投資家が「ア ノマリー」を活用していないとの仮説とは整合的でない結果となっている。 収益性に関する 2 つのファクターでは回帰係数が概ね統計的に有意な負の値をとっている。つ まり個人投資家の「銘柄選択能力の貢献」によるリターンは、「総資産営業利益率」や「予想 ROE」 の大きい銘柄がそれらの小さい銘柄に対しアウトパフォームする時期に悪化する傾向を持っている ということである。しかし 3 章で指摘した通り、米国市場で超過リターンを生み出す傾向を示すこれ らの収益性に関するファクターは、日本市場では正の超過リターンをもたらしていない。この意味 で、この結果は「個人投資家がアノマリーを活用していない」としても、彼らが「間違った」投資行動 をとっているわけではないと言える。 第二の分析の結果は、個人投資家が各種の「アノマリー」を活用する形で「銘柄選択」を行い、 15 そのことが彼らの投資パフォーマンスにポジティブな影響をもたらしていることを示唆する。そこで 第三の分析として、個人投資家が「アノマリー」を活用しているのかどうかについてのより直接的な 検証を行った。アノマラスに正(負)の超過リターンをもたらす銘柄群を、個人投資家が市場平均に 対しオーバーウェイト(アンダーウェイト)する傾向があるかどうかについての単純な検証である。分 析の手順は 4 章で述べた機関投資家の持ち株比率についてのものと同様であり、10 の「アノマリ ー」の各ファクターについての、個人投資家の「アクティブ・ウェイト」を調べた。サンプル期間(1985 年 3 月~2013 年 9 月)の平均とともに、個人投資家の銘柄選択の傾向が期間を通して一定である かどうかを確認するため、サンプル期間の前半と後半のそれぞれについても結果を示す。 検証の結果は、ここでも機関投資家の場合と対照的である。個人投資家は、10 ファクターのう ち、「総資産営業利益率」、「予想 ROE」、「固有ボラティリティ」を除く 7 つのファクターについて、 各種「アノマリー」が正(負)の超過リターンを生み出すと想定される銘柄群をオーバーウェイト(アン ダーウェイト)する傾向が見られる。しかもこうした傾向はサンプル期間を通じて一定である。第二の 分析の結果と併せて考えると、個人投資家はこれら7つの「アノマリー」についてみる限り、これらを 投資銘柄の選択に活用しており、投資パフォーマンスに正の効果をもたらしているとみることができ るだろう。 また個人投資家は、収益性に関する 2 つのファクターである「総資産営業利益率」と「予想 ROE」が大きい銘柄をアンダーウェイトし、小さい銘柄をオーバーウェイトする傾向がみられる。これ は第二の分析で得た結果、すなわち「総資産営業利益率」や「予想 ROE」が大きい銘柄がそれら の小さい銘柄に対しアウトパフォームする時期に個人投資家の「銘柄選択の貢献」によるリターン が悪化する傾向を持っているとの結果と整合的なものである。だが既にみたように、米国市場で超 過リターンを生み出す傾向を示すこれらの収益性に関するファクターは日本市場では正の超過リ ターンをもたらしておらず、個人投資家が「間違った」投資行動をとっているわけではない。 結局、個人投資家は、本論文で分析した 10 のファクターのうち「固有ボラティリティ」を除く 9 の ファクターについて、各ファクターが正(負)の超過リターンをもたらす銘柄群をオーバーウェイト(ア ンダーウェイト)しており、そうすることで彼らのポートフォリオに正の貢献をもたらしているということ になる9。これは機関投資家に関する分析の結論と、極度に対照的な結果である。 6. 結論 一般的に、機関投資家は市場の非効率、アノマリーを活用して最終顧客に超過リターンをもたら すことが期待されている。本論文で我々はこの「洗練された機関投資家仮説」を日本の株式市場に おけるデータで検証した。 9 内山・岩澤(2012)は「 (「歪度アノマリー」と重なる部分が大きい)固有ボラティリティアノマリー」 の背後に、個人投資家、特に信用取引を行う個人投資家の投資行動がある可能性が高いと論じている。 16 我々はまず機関投資家の集計パフォーマンスが CAPM や一般的なマルチ・ファクターモデル に対しアルファをもたらしているかどうかを検証した。彼らがこれらのアノマリーを活用して超過リタ ーンを生み出していれば、そのファンドのリターンは CAPM や一般的なマルチ・ファクターモデル に対し正のアルファをもたらしているはずである。しかし実際にはアルファ値は統計的に有意にゼ ロと異ならない水準であった。 次に我々は、機関投資家の集計リターンを「タイミング能力」の貢献による部分と「銘柄選択能 力」の貢献による部分とに分解し、後者と、米国市場を中心とする実証研究で CAPM に対し超過リ ターンをもたらすことが知られている 10 の「アノマリー」の超過リターンとの相関を調べた。機関投 資家が「アノマリー」を活用して超過リターンを得ているのであれば、両者は正の相関を有するはず である。しかし実際には、収益性に関連する 2 つのファクターを除く 8 つの「アノマリー」について、 正の相関は観察されなかった。また、収益性に関連する 2 つのファクターは、米国市場では超過リ ターンを生み出しているが、日本市場では超過リターンを生み出していない。従って、たとえ彼らが 「戦略的に」収益性のアノマリーを日本株運用において活用しようとしているというのが正しい見方 であるとしても、そのことは彼らに正の超過リターンをもたらしてはおらず、この事実は「洗練された 機関投資家仮説」と整合するとは言えない。 最後に我々は、各種の「アノマリー」につき、機関投資家が超過リターンを生み出す銘柄群を市 場平均に比べオーバーウェイトする傾向があるかどうかを検証した。機関投資家は「予想 ROE」と 「予想利益修正率」の 2 つのファクターについては、「アノマリー」による超過リターンが「想定され る」銘柄群を、サンプル期間中安定してオーバーウェイトする傾向が見られた。だが前述のように、 このサンプル期間において日本市場では「予想 ROE」の高い銘柄群は超過リターンを生み出して いない。また、機関投資家の「予想利益修正率」の高い銘柄群のオーバーウェイト幅は非常に小さ く、結果として、彼らのリターンに貢献する度合は小さいと見られる。 逆に、10 のファクターのうち上記の 2 つを除く 8 つのファクターでは、機関投資家は各種「アノマ リー」が負の超過リターンを生み出すと想定される銘柄群を一貫してオーバーウェイトしているか、 または時とともに選好の対象が変化しているかのどちらかである。これは「洗練された機関投資家 仮説」と整合しない結果である。 我々の検証結果は「洗練された機関投資家仮説」と非整合的である。そしてこの結果は、米国株 式市場を対象とする近年の諸研究(Lewellen 2011, Edelen et al. 2015)とも整合的なものである。 我々の研究は、こうした実証結果が日本の株式市場においても概ね妥当することを示している。 更に我々は、個人投資家について、機関投資家について行ったものと同様な検証を行った。驚 くべきことに、個人投資家に関する検証結果は、機関投資家に関するものと極度に対照的なもの であった。第一に、個人投資家の集計パフォーマンスにおいては、彼らの「銘柄選択」が有意にプ ラス寄与している。これは機関投資家の集計パフォーマンスにおいて、彼らの「銘柄選択」の貢献 17 が有意にゼロと異ならないことと対照的である。第二に、個人投資家の「銘柄選択の貢献」によるリ ターンは、「総資産営業利益率」と「予想 ROE」という収益性に関する 2 つのファクターを除く 8 つ の「アノマリー」のもたらす超過リターンと、正の相関関係を示している。そして実際、この 8 ファクタ ーのうち、「固有ボラティリティ」を除く 7 ファクターについては、個人投資家は各種「アノマリー」が 正(負)の超過リターンを生み出すと想定される銘柄群をオーバーウェイト(アンダーウェイト)する傾 向が見られる。つまり個人投資家は全体として「アノマリー」を活用して超過リターンを得ていると見 ることができる。 日本の株式市場においては、機関投資家が全体として「アノマリー」を活用しているようには見受 けられない一方、個人投資家は全体として「アノマリー」を活用して正の超過リターンを得ていると の我々の実証結果は、「洗練された機関投資家仮説」と非整合的であることに加え、研究者の間で 見方が収斂していない以下の論点に対し示唆を与えるものである。 第一は、機関投資家がアノマリーに対して果たす役割についての議論である。これまで主流で あった、機関投資家がミスプライシングを修正する「裁定投資家(arbitrageur)」としての役割を担うと の想定(Shleifer and Vishny 1997)に対し、最近のいくつかの研究は機関投資家がミスプライシング を引き起こし、アノマリーの原因を生み出しているとの見方を実証的に提示している(Coval and Stafford 2007, Frazzini and Lamont 2008, Jiang 2010, Dasgupta et al. 2011, Alti and Sulaeman 2012, Edelen et al. 2013)。我々の実証結果には、機関投資家がミスプライシングを修正するとの見 方を支持する証拠はほとんど見当たらず、我々の結果は、間接的にではあるが、機関投資家がミ スプライシングを引き起こしているとの見方を示唆するものである。 第二に、機関投資家がミスプライシングを引き起こしアノマリーの原因となるような投資行動をと っているのはなぜか、という問題であるが、この点に重要な示唆を与えると見られるのが、機関投資 家の追随的な投資行動である。伝統的には、こうした行動を、他の機関投資家の投資行動を「情 報」と見做した上での合理的なものとして解釈する研究が主流であった(Banerjee 1992, Sias 2004) が、近年では、機関投資家が追随的に投資した(売却した)銘柄が長期的には市場をアンダーパ フォーム(アウトパフォーム)する傾向が指摘され(Dasgupta 2011)、そうした投資行動を合理的なも のと見做す解釈に対し疑問を投げかける研究が増えている(Coval and Stafford 2007, Frazzini and Lamont 2008)。我々の実証結果によれば、機関投資家は直近過去 3 年間に株価が上昇した銘柄 をオーバーウェイトする傾向があるが、そのことは、彼らの「銘柄選択」によるリターンにポジティブな 影響を与えていない。一方、個人投資家は直近過去 3 年間に株価が上昇した銘柄をアンダーウェ イトする傾向があるが、そのことは、彼らの「銘柄選択」によるリターンにポジティブな影響を与えて いる。この結果は、機関投資家の追随的投資行動を合理的なものと解釈する見方と符合しない。 我々の実証結果は、追随的投資行動を含む、機関投資家の投資行動の動機や制約に関する 研究を要請することになる。機関投資家が、収益性に関するアノマリーを除き、アノマリーによる超 18 過リターンを享受しようとしていないのはなぜなのか、その理由が探求されなければならない。そこ では例えば、「洗練された機関投資家仮説」で前提とされている、機関投資家が最終顧客に超過リ ターンをもたらすよう行動するはずであるとの見方が問い直されなければならず、その点では、機 関投資家が、リターンだけでなく何か他の便益、例えば顧客の資金運用における安心感を供与す る役割を担っていることを強調する議論(Gennaioli et al. 2014)が参考になるかもしれない。こうした 点に関する実証研究が求められる。 19 引用文献 Ang, A., 2014, Asset management – A Systematic approach to factor investing. 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-0.45 -0.62 -0.67 0.59 -0.86 MKT 1.00 1.01 0.99 1.00 1.00 0.93 0.99 1.01 1.00 1.00 1.00 0.95 1.00 1.00 0.99 0.99 1.00 0.95 HML SMB -0.06 -0.04 0.01 -0.01 -0.06 0.06 -0.04 -0.08 0.01 -0.04 -0.06 0.09 0.02 0.11 0.02 0.08 0.03 0.21 0.02 0.10 0.02 0.07 0.03 0.22 LMW R2 0.91 0.92 0.96 0.93 0.93 0.91 0.92 0.96 0.94 0.93 -0.02 0.04 0.01 0.03 0.00 -0.03 0.91 0.92 0.96 0.94 0.93 0.97 (注)パネル A は各投資主体(及びその組み合わせ)の保有するポートフォリオ、全上場銘柄ポートフォリオ(MKT) 及び、HML、SMB、LMW の各ファクターの平均超過リターン/月、標準偏差、t 値を示す。HML、SMB は FamaFrench の B/M(簿価自己資本/株式時価総額比率)、サイズ(時価総額)ファクター(Fama and French 1993)で、 LMW は Carhart(1997)のモメンタム・ファクターの符号を逆にしたもの(日本ではリバーサルが優位なため)。パネル B は各投資主体の保有するポートフォリオのリターンを、CAPM、Fama-French の 3 ファクター・モデル、Carhart の 4 ファクター・モデルのそれぞれにより回帰した際の切片(α 値)、標準誤差(se(α))、t値(t(α))を示す。MKT、 HML、SMB、LMW の列は、各ファクターの傾きを示す。各投資主体のポートフォリオの超過リターンは、例えば海 外投資家については本文(1)式の t 月のリターンをサンプル期間(1985~2013 年)について平均したもので、各投 資主体の銘柄保有比率は東洋経済の大株主データから取得した。ユニバースは全上場銘柄。HML、SMB、LMW の各ファクターは、久保田・竹原(2007)と Kubota and Takehara(2010)に従って作成した。LMW を作成するに当た り参照した過去リターンの期間は、Carhart(1997)が UMD ファクターを作成するに当たり参照した 1 ヶ月のラグを置 いた過去 11 ヶ月ではなく、Kubota and Takehara(2010)に従い 1 ヶ月のラグを置いた過去 35 ヶ月とした。***、**、 *はそれぞれ 5%、10%、20%水準で統計的に有意であることを示す。 22 表 2 機関投資家と個人投資家の「タイミング能力」と「銘柄選択能力」 「タイミング能力」による貢献部分 t値 平均 標準偏差 0.36 2.03 0.94 0.36 2.15 0.91 0.28 1.46 1.02 0.31 1.87 0.90 0.37 1.88 1.06 -0.72 2.16 -1.79 ** 単位: %/12ヵ月 「銘柄選択能力」による貢献部分 t値 平均 標準偏差 0.18 5.62 0.17 -0.83 5.67 -0.79 -0.32 3.58 -0.48 -0.74 4.76 -0.84 -0.19 4.99 -0.20 1.40 3.73 2.01 *** 「タイミング能力」による貢献部分 t値 平均 標準偏差 0.65 2.54 0.94 0.48 2.53 0.72 0.50 1.57 1.21 0.45 2.26 0.76 0.68 2.27 1.14 -1.10 2.89 -1.48 「銘柄選択能力」による貢献部分 平均 標準偏差 -0.08 6.71 -1.84 7.16 -0.69 4.49 -1.57 6.18 -0.75 6.03 1.68 4.84 t値 -0.04 -0.98 -0.58 -0.97 -0.47 1.34 「タイミング能力」による貢献部分 t値 平均 標準偏差 0.06 1.36 0.18 0.25 1.74 0.55 0.06 1.36 0.16 0.17 1.42 0.46 0.06 1.41 0.17 -0.30 0.84 -1.35 「銘柄選択能力」による貢献部分 平均 標準偏差 0.43 4.39 0.19 3.61 0.05 2.40 0.09 2.70 0.38 3.74 1.10 2.15 t値 0.37 0.20 0.07 0.13 0.39 1.90 ** パネルA: 1985年4月~2014年3月 海外 投資信託(投信) 年金信託(年金) 投信+年金 海外+投信+年金 個人 パネルB: 1985年4月~1999年9月 海外 投資信託(投信) 年金信託(年金) 投信+年金 海外+投信+年金 個人 パネルC: 1999年10月~2014年3月 海外 投資信託(投信) 年金信託(年金) 投信+年金 海外+投信+年金 個人 (注)各投資主体(及びその組み合わせ)の保有するポートフォリオのリターンを本文(2)、(3)式に従って「タイミング 能力」及び「銘柄選択能力」による貢献の部分に分解し、それぞれについて平均値、標準偏差及びt値を表示し た。各投資主体の銘柄保有比率は東洋経済の大株主データから取得した。ユニバースは東証一、二部上場銘柄。 ベータ値は過去 60 ヶ月(最低 36 ヶ月)の月次超過リターンを東証一、二部市場ポートフォリオの超過リターンに回 帰して算出した。 23 表 3 日本の株式市場の「アノマリー」(1) 時価総額 パネルA: 時価ウェイト、1985年3月~2014年3月 #1 (最小) 5.74 #2 4.43 #3 3.30 #4 2.78 #5(最大) 2.05 #1-#5(最小-最大) 3.70 #2-#4(小-大) #5-#1(最大-最小) 14.46 標準偏差 1.95 ** t値 パネルA-1: 時価ウェイト、1985年3月~1999年9月 #1 (最小) 5.54 #2 3.95 #3 2.55 #4 2.50 #5(最大) 2.87 #1-#5(最小-最大) 2.66 #2-#4(小-大) #5-#1(最大-最小) 17.05 標準偏差 0.84 t値 パネルA-2: 時価ウェイト、1999年9月~2014年3月 #1 (最小) 5.95 #2 4.91 #3 4.06 #4 3.06 #5(最大) 1.22 #1-#5(最小-最大) 4.73 #2-#4(小-大) #5-#1(最大-最小) 11.84 標準偏差 2.15 *** t値 パネルB: 等ウェイト、1985年3月~2014年3月 #1 (最小) 6.29 #2 4.54 #3 3.31 #4 2.86 #5(最大) 2.67 #1-#5(最小-最大) 3.63 #2-#4(小-大) #5-#1(最大-最小) 12.53 標準偏差 2.20 *** t値 パネルB-1: 等ウェイト、1985年3月~1999年9月 #1 (最小) 6.07 #2 4.01 #3 2.54 #4 2.48 #5(最大) 3.10 #1-#5(最小-最大) 2.96 #2-#4(小-大) #5-#1(最大-最小) 15.03 標準偏差 1.06 t値 パネルB-2: 等ウェイト、1999年9月~2014年3月 #1 (最小) 6.51 #2 5.07 #3 4.08 #4 3.24 #5(最大) 2.23 #1-#5(最小-最大) 4.29 #3-#5(中-最大) #5-#1(最大-最小) 9.93 標準偏差 2.33 ** t値 過去 リターン B/M比率 -0.13 2.53 3.77 4.91 6.50 6.64 15.58 3.24 *** 0.18 2.35 3.92 5.07 5.58 5.39 16.04 1.81 ** -0.45 2.71 3.61 4.75 7.43 7.88 15.57 2.72 *** 0.87 2.39 3.84 5.18 7.40 6.53 10.46 4.76 *** 0.92 1.89 3.55 4.99 6.65 5.73 11.79 2.62 *** 0.82 2.89 4.14 5.37 8.15 7.33 9.29 4.25 *** 24 2.95 3.73 3.29 2.47 1.19 1.76 17.77 0.75 3.73 4.93 3.76 2.60 1.77 1.96 20.38 0.52 2.17 2.52 2.81 2.34 0.62 1.55 15.44 0.54 5.68 5.32 4.16 3.42 1.05 4.63 14.26 2.47 *** 5.02 5.37 4.10 3.18 0.56 4.46 14.51 1.66 * 6.35 5.27 4.23 3.65 1.54 4.81 14.52 1.78 * 総資産 営業利益率 予想 ROE 3.48 2.57 2.49 1.53 1.79 2.86 1.97 2.32 2.35 1.96 -1.69 11.03 -1.17 -0.90 13.51 -0.51 3.91 2.49 3.14 1.96 2.65 2.07 0.65 3.27 3.11 3.23 -1.26 12.51 -0.54 1.16 13.61 0.46 3.05 2.64 1.83 1.10 0.92 3.66 3.30 1.38 1.59 0.69 -2.13 9.75 -1.18 -2.96 13.56 -1.18 4.76 4.18 3.90 3.43 3.46 4.10 4.19 4.09 3.63 3.72 -1.30 8.08 -1.23 -0.38 8.33 -0.35 4.38 3.58 3.65 3.45 3.21 3.30 3.49 3.86 3.56 3.75 -1.17 8.86 -0.71 0.46 9.88 0.25 5.15 4.78 4.16 3.40 3.72 4.91 4.89 4.33 3.69 3.69 -1.43 7.52 -1.02 -1.22 6.70 -0.98 表 3 日本の株式市場の「アノマリー」(2) 総資産 成長率 パネルA: 時価ウェイト、1985年3月~2014年3月 #1 (最小) 2.28 #2 2.62 #3 2.34 #4 2.54 #5(最大) 1.34 #1-#5(最小-最大) 0.94 #2-#4(小-大) #5-#1(最大-最小) 10.24 標準偏差 0.70 t値 パネルA-1: 時価ウェイト、1985年3月~1999年9月 #1 (最小) 1.80 #2 3.14 #3 1.86 #4 3.82 #5(最大) 2.56 #1-#5(最小-最大) -0.75 #2-#4(小-大) #5-#1(最大-最小) 12.34 標準偏差 -0.33 t値 パネルA-2: 時価ウェイト、1999年9月~2014年3月 #1 (最小) 2.76 #2 2.10 #3 2.82 #4 1.26 #5(最大) 0.12 #1-#5(最小-最大) 2.64 #2-#4(小-大) #5-#1(最大-最小) 7.70 標準偏差 1.84 ** t値 パネルB: 等ウェイト、1985年3月~2014年3月 #1 (最小) 5.03 #2 4.24 #3 3.93 #4 3.79 #5(最大) 2.72 #1-#5(最小-最大) 2.31 #2-#4(小-大) #5-#1(最大-最小) 7.67 標準偏差 2.29 *** t値 パネルB-1: 等ウェイト、1985年3月~1999年9月 #1 (最小) 4.70 #2 3.90 #3 3.55 #4 3.85 #5(最大) 2.32 #1-#5(最小-最大) 2.37 #2-#4(小-大) #5-#1(最大-最小) 7.78 標準偏差 1.64 * t値 パネルB-2: 等ウェイト、1999年9月~2014年3月 #1 (最小) 5.37 #2 4.58 #3 4.32 #4 3.73 #5(最大) 3.13 #1-#5(最小-最大) 2.24 #3-#5(中-最大) #5-#1(最大-最小) 7.82 標準偏差 1.54 t値 予想利益 修正率 アクル ーアル 1.06 1.50 -1.28 1.27 2.98 2.01 3.08 2.44 2.24 1.56 0.45 ベータ値 2.71 3.96 3.65 1.23 1.61 固有ボラティリティ 3.75 3.27 0.83 1.41 0.23 3.52 2.73 1.92 10.88 1.34 1.17 2.32 -1.32 1.54 3.48 11.52 0.30 2.53 4.02 3.02 2.58 2.48 0.05 8.07 2.58 *** 16.11 1.66 * 3.90 4.78 4.99 2.13 2.75 4.74 4.30 1.50 1.55 -0.42 5.16 0.00 2.31 10.13 1.23 0.96 0.71 -1.22 1.01 2.48 12.09 0.02 1.49 2.14 1.87 1.89 0.63 0.86 7.35 2.00 ** 1.53 3.14 2.30 0.33 0.46 16.49 1.69 * 2.75 2.25 0.16 1.26 0.87 1.88 0.00 1.53 11.93 0.69 2.38 3.67 -1.11 3.38 5.94 11.32 0.41 4.82 4.37 3.69 3.34 3.41 1.41 8.86 1.66 * 3.12 4.69 4.70 4.17 3.28 16.12 0.63 4.67 4.68 4.28 3.93 2.41 2.26 0.00 3.57 5.29 5.13 *** 1.77 3.49 -1.84 3.05 5.61 4.81 2.23 *** 9.87 1.10 13.63 1.26 4.39 4.09 3.52 2.66 3.50 0.90 3.67 5.23 4.62 3.12 2.01 5.59 4.94 3.85 3.23 1.04 4.55 0.00 3.85 5.16 4.01 *** 2.98 3.85 -0.02 3.70 6.27 5.11 0.94 8.55 0.90 11.69 2.10 *** 5.24 4.66 3.85 4.01 3.32 1.93 2.56 4.16 4.79 5.21 4.55 3.75 4.42 4.70 4.62 3.77 -0.02 1.42 3.29 5.58 3.17 *** 25 4.61 2.25 ** 11.05 0.69 15.40 -0.01 (注)各ファクター値について前月末の値によりソートして五分位ポートフォリオを作成、各分位ポートフォリオの 6 ヵ 月リターンを計測、この作業を 1985 年 3 月~2013 年 9 月にかけて 58 回繰り返し、各分位ポートフォリオのリター ンの平均値、分位ポートフォリオのリターン格差、その標準偏差と t 値を算出した。パネル A は各分位ポートフォリ オの時価総額が等しくなるようポートフォリオを作成、パネルBは各分位ポートフォリオの銘柄数が等しくなるようポー トフォリオを作成したもの。パネル A、B は全サンプル、パネル A-1、B-1 は 1985 年 3 月~1999 年 3 月、パネル A-2、B-2 は 1999 年 9 月~2013 年 9 月のサンプル。B/M 比率は簿価自己資本/株式時価総額比率。過去リタ ーンは 1 ヶ月のラグを置いた過去 35 ヶ月(Kubota and Takehara 2010)。総資産営業利益率は営業利益(直近期実 績)/総資産。予想 ROE は 12 ヵ月先予想純利益(コンセンサス予想)/簿価自己資本。総資産成長率は総資産 前期比変化幅/総資産。予想利益修正率は今期純利益(コンセンサス予想)に関する過去 6 ヵ月平均対比での変 化率。アクルーアルは(Δ売上債権+Δ棚卸資産-Δ買入債務-Δ貸倒引当金-減価償却費)/総資産。ベー タ値は過去 60 ヵ月(最低 36 か月)のヒストリカルベータ。固有ボラティリティは Fama-French 3 ファクターモデルによ る残差ボラティリティで、過去 60 ヵ月(最低 36 ヵ月)の月次リターンより作成。各ファクターにつき、「アノマリー」によ る超過リターンがプラスとなることが「知られている」方向で、最小値ポートフォリオ(#1)-最大値ポートフォリオ(#5)、 ないしは最大値ポートフォリオ(#5)-最小値ポートフォリオ(#1)の平均リターン格差を算出した。ベータ値に関して は、リターン格差が最大となる#2 ポートフォリオと#4 ポートフォリオとの平均リターン格差を算出した。***、**、*はそ れぞれ 5%、10%、20%水準で統計的に有意であることを示す。 26 表 4 機関投資家の「銘柄選択」によるリターンのアノマリーの超過リターンによる回帰(1) 時価総額 B/M比率 過去 リターン 総資産 営業利益率 予想 ROE #1-#5 #5-#1 #1-#5 #5-#1 #5-#1 <パネルA: 単回帰、時価総額ウェイト> 海外 係数 t値 -0.06 -1.77 ** -0.05 -1.49 * -0.01 -0.48 -0.01 -0.17 0.09 2.41 *** 投資信託(投信) 係数 t値 -0.02 -0.65 -0.01 -0.40 0.00 -0.04 -0.03 -0.53 0.05 1.21 年金信託(年金) 係数 t値 -0.03 -1.14 -0.01 -0.31 0.01 0.36 -0.01 -0.28 0.03 1.12 投信+年金 係数 t値 -0.02 -0.65 0.00 -0.11 0.01 0.29 -0.02 -0.39 0.03 1.01 海外+投信+年金 係数 t値 -0.06 -1.88 ** -0.04 -1.43 -0.01 -0.44 0.00 0.01 0.07 2.21 *** <パネルA-1: 重回帰(時価総額をコントロール変数とする)、時価総額ウェイト> 海外 係数 t値 -0.01 -0.21 0.02 0.54 -0.05 -1.05 0.08 1.59 投資信託(投信) 係数 t値 0.01 0.16 0.01 0.37 -0.05 -0.90 0.06 1.04 年金信託(年金) 係数 t値 0.03 0.90 0.03 1.16 -0.03 -0.85 0.02 0.47 投信+年金 係数 t値 0.03 0.63 0.02 0.77 -0.03 -0.75 0.03 0.76 海外+投信+年金 係数 t値 0.00 0.01 0.02 0.66 -0.04 -0.90 0.06 1.25 <パネルB: 単回帰、等ウェイト> 海外 係数 t値 -0.07 -1.78 ** -0.08 -1.58 -0.04 -1.05 0.16 2.61 *** 0.16 2.74 *** 投資信託(投信) 係数 t値 -0.04 -0.95 -0.06 -1.13 -0.03 -0.75 0.13 1.99 ** 0.12 1.93 ** 年金信託(年金) 係数 t値 -0.04 -1.38 -0.01 -0.35 -0.01 -0.22 0.07 1.79 ** 0.05 1.16 投信+年金 係数 t値 -0.04 -1.05 -0.04 -0.93 -0.02 -0.60 0.11 2.04 *** 0.10 1.86 ** 海外+投信+年金 係数 t値 -0.07 -2.01 *** -0.07 -1.63 -0.04 -1.09 0.15 2.84 *** 0.15 2.76 *** <パネルB-1: 重回帰(時価総額をコントロール変数とする)、等ウェイト> 海外 係数 t値 -0.04 -0.55 0.00 0.02 0.14 1.88 ** 0.15 2.05 *** 投資信託(投信) 係数 t値 -0.04 -0.66 -0.01 -0.22 0.14 1.73 ** 0.12 1.65 年金信託(年金) 係数 t値 0.03 0.72 0.02 0.76 0.06 1.20 0.02 0.50 投信+年金 係数 t値 -0.02 -0.32 0.00 0.03 0.11 1.73 ** 0.09 1.51 海外+投信+年金 係数 t値 -0.03 -0.44 0.00 0.12 0.13 2.00 *** 0.12 1.94 ** 27 表 4 機関投資家の「銘柄選択」によるリターンのアノマリーの超過リターンによる回帰(2) 総資産 成長率 予想利益 修正率 アクルーアル ベータ値 固有ボラティリ ティ #1-#5 #5-#1 #1-#5 #2-#4 #1-#5 <パネルA: 単回帰、時価総額ウェイト> 海外 係数 t値 -0.08 -1.59 * 投資信託(投信) 係数 t値 年金信託(年金) 0.00 0.03 0.03 0.59 0.04 0.60 -0.07 -2.23 *** -0.06 -1.08 -0.03 -0.58 0.00 -0.05 -0.01 -0.21 -0.07 -2.28 *** 係数 t値 -0.01 -0.39 0.01 0.21 0.05 1.75 * -0.02 -0.42 -0.02 -0.97 投信+年金 係数 t値 -0.04 -0.94 -0.03 -0.64 0.00 0.04 -0.02 -0.43 -0.05 -1.97 ** 海外+投信+年金 係数 t値 -0.07 -1.68 ** 0.00 -0.09 0.02 0.58 0.01 0.10 -0.06 -2.27 *** <パネルA-1: 重回帰(時価総額をコントロール変数とする)、時価総額ウェイト> 海外 係数 t値 -0.05 -0.94 -0.04 -0.73 0.00 0.03 0.05 0.78 -0.07 -2.40 *** 投資信託(投信) 係数 t値 -0.05 -0.88 -0.05 -0.91 -0.01 -0.27 -0.01 -0.15 -0.07 -2.31 *** 年金信託(年金) 係数 t値 0.00 0.09 -0.01 -0.26 -0.01 -0.31 -0.02 -1.04 投信+年金 係数 t値 -0.03 -0.73 -0.04 -0.97 -0.01 -0.18 -0.02 -0.37 -0.05 -2.00 *** 海外+投信+年金 係数 t値 -0.05 -0.98 -0.04 -0.91 0.00 -0.01 0.02 0.27 -0.07 -2.46 *** 0.04 1.45 * <パネルB: 単回帰、等ウェイト> 海外 係数 t値 -0.18 -2.86 *** -0.15 -1.51 * -0.15 -1.40 * -0.02 -0.39 -0.06 -1.47 投資信託(投信) 係数 t値 -0.17 -2.63 *** -0.20 -2.09 *** -0.16 -1.50 * -0.05 -1.01 -0.07 -1.83 ** 年金信託(年金) 係数 t値 -0.08 -1.91 ** -0.08 -1.26 0.02 0.27 -0.01 -0.41 -0.02 -0.80 投信+年金 係数 t値 -0.14 -2.59 *** -0.15 -1.88 ** -0.11 -1.15 -0.04 -0.94 -0.05 -1.68 ** 海外+投信+年金 係数 t値 -0.18 -3.13 *** -0.13 -1.47 * -0.14 -1.48 * -0.04 -0.74 -0.05 -1.54 <パネルB-1: 重回帰(時価総額をコントロール変数とする)、等ウェイト> 海外 係数 t値 -0.16 -2.22 *** -0.25 -2.46 *** -0.12 -1.10 -0.01 -0.24 -0.09 -2.34 *** 投資信託(投信) 係数 t値 -0.18 -2.44 *** -0.28 -2.72 *** -0.15 -1.33 * -0.05 -0.93 -0.09 -2.36 *** 年金信託(年金) 係数 t値 -0.07 -1.40 -0.13 -1.96 ** 0.04 0.54 -0.01 -0.29 -0.04 -1.39 * 投信+年金 係数 t値 -0.15 -2.34 *** -0.22 -2.52 *** -0.09 -0.97 -0.04 -0.85 -0.07 -2.23 *** 海外+投信+年金 係数 t値 -0.16 -2.40 *** -0.22 -2.54 *** -0.11 -1.14 -0.03 -0.58 -0.09 -2.53 *** (注)各投資主体の「銘柄選択能力」の貢献によるリターンを被説明変数、各種アノマリーの「超過リターン」を説明 変数として回帰し、「超過リターン」の回帰係数及びt値を表示した。パネル A、B は単回帰、パネル A-1、B-1は時 価総額を説明変数として加え重回帰を行ったもの。各投資主体の「銘柄選択能力」の貢献によるリターンについて は表2注を参照。各種アノマリーの「超過リターン」は、表 3 における各ファクターの分位ポートフォリオ#1(最小)-#5 (最大)、#5(最大)-#1(最小)のいずれかのリターン格差。ベータ値は#2-#4 で算出。パネル A は時価総額ウェイト で分位ポートフォリオを作成した場合、パネル B は等ウェイトで分位ポートフォリオを作成した場合の結果。 28 表 5 機関投資家のポートフォリオと市場ポートフォリオ ファクター ウエイト 時価総額 市場 海外-市場 投信-市場 年金-市場 投信+年金-市場 海外+投信+年金-市場 市場 海外-市場 投信-市場 年金-市場 投信+年金-市場 海外+投信+年金-市場 市場 海外-市場 投信-市場 年金-市場 投信+年金-市場 海外+投信+年金-市場 市場 海外-市場 投信-市場 年金-市場 投信+年金-市場 海外+投信+年金-市場 市場 海外-市場 投信-市場 年金-市場 投信+年金-市場 海外+投信+年金-市場 市場 海外-市場 投信-市場 年金-市場 投信+年金-市場 海外+投信+年金-市場 市場 海外-市場 投信-市場 年金-市場 投信+年金-市場 海外+投信+年金-市場 市場 海外-市場 投信-市場 年金-市場 投信+年金-市場 海外+投信+年金-市場 市場 海外-市場 投信-市場 年金-市場 投信+年金-市場 海外+投信+年金-市場 市場 海外-市場 投信-市場 年金-市場 投信+年金-市場 海外+投信+年金-市場 B/M比率 過去リターン 総資産営業利益率 予想ROE 総資産成長率 予想利益修正率 アクルーアル ベータ値 固有ボラティリティ 1985年3月~2013年9月 株式5分位 1(最小) 3(中位) 5(最大) 0.01 0.04 0.83 -0.01 -0.02 0.06 -0.01 0.00 -0.01 -0.01 -0.01 0.02 -0.01 -0.01 0.00 -0.01 -0.02 0.04 0.37 0.17 0.06 -0.01 0.00 0.01 -0.01 0.01 0.01 -0.05 0.02 0.01 -0.03 0.01 0.01 -0.01 0.01 0.01 0.15 0.18 0.30 -0.01 -0.01 0.04 -0.01 -0.01 0.02 -0.01 0.00 0.01 -0.01 0.00 0.02 -0.01 -0.01 0.03 0.10 0.19 0.30 -0.01 0.00 0.00 -0.01 0.01 -0.02 -0.01 0.01 -0.02 -0.01 0.01 -0.02 -0.01 0.00 0.00 0.08 0.21 0.31 -0.02 -0.03 0.07 -0.01 -0.02 0.04 -0.01 -0.01 0.03 -0.01 -0.02 0.03 -0.02 -0.02 0.06 0.12 0.21 0.23 -0.02 0.00 0.04 -0.01 0.00 0.03 -0.02 0.01 0.01 -0.02 0.00 0.02 -0.02 0.00 0.03 0.17 0.09 0.22 -0.01 0.00 0.01 -0.01 0.00 0.01 -0.01 0.00 0.00 -0.01 0.00 0.01 -0.01 0.00 0.00 0.22 0.19 0.15 -0.01 0.00 0.01 -0.02 0.01 0.01 0.00 0.01 0.00 -0.01 0.01 0.00 -0.01 0.01 0.01 0.17 0.19 0.27 -0.01 0.00 -0.01 -0.03 0.01 0.01 -0.01 0.00 0.00 -0.02 0.00 0.00 -0.02 0.00 0.00 0.34 0.20 0.07 -0.03 0.02 -0.01 -0.06 0.03 0.00 -0.02 0.02 -0.02 -0.04 0.03 -0.01 -0.03 0.02 -0.01 1985年3月~1999年3月 株式5分位 1(最小) 3(中位) 5(最大) 0.01 0.05 0.80 -0.01 -0.01 0.04 -0.01 0.00 -0.03 -0.01 -0.01 0.01 -0.01 0.00 -0.02 -0.01 -0.01 0.03 0.33 0.18 0.10 -0.09 0.03 0.04 -0.08 0.03 0.02 -0.10 0.04 0.02 -0.08 0.03 0.02 -0.09 0.03 0.03 0.14 0.17 0.33 -0.01 -0.01 0.04 -0.01 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 -0.01 0.00 0.00 -0.01 -0.01 0.03 0.10 0.19 0.31 -0.01 0.01 -0.03 0.00 0.02 -0.05 -0.01 0.02 -0.05 0.00 0.02 -0.05 -0.01 0.01 -0.04 0.09 0.21 0.28 -0.02 -0.03 0.08 -0.01 -0.02 0.04 -0.02 -0.01 0.02 -0.01 -0.01 0.03 -0.02 -0.02 0.06 0.13 0.20 0.22 -0.03 0.00 0.06 -0.02 0.01 0.04 -0.02 0.02 0.02 -0.02 0.01 0.03 -0.03 0.01 0.05 0.18 0.12 0.22 -0.02 0.00 0.01 -0.02 0.00 0.01 -0.01 0.00 0.00 -0.01 0.00 0.01 -0.02 0.00 0.01 0.21 0.21 0.14 -0.01 0.01 0.02 -0.02 0.01 0.03 0.00 0.00 0.01 -0.01 0.01 0.02 -0.01 0.01 0.02 0.15 0.17 0.31 0.03 -0.01 -0.05 -0.01 0.00 -0.01 0.00 0.00 -0.02 0.00 0.00 -0.02 0.01 -0.01 -0.03 0.41 0.18 0.07 -0.03 0.01 -0.01 -0.07 0.03 -0.01 -0.01 0.01 -0.02 -0.05 0.03 -0.01 -0.04 0.02 -0.02 1999年3月~2013年9月 株式5分位 1(最小) 3(中位) 5(最大) 0.01 0.03 0.86 0.00 -0.02 0.08 0.00 -0.01 0.01 0.00 -0.01 0.03 0.00 -0.01 0.02 -0.01 -0.02 0.06 0.41 0.16 0.02 0.06 -0.02 -0.01 0.05 -0.02 -0.01 0.01 0.00 -0.01 0.03 -0.01 -0.01 0.06 -0.02 -0.01 0.15 0.18 0.27 -0.01 -0.01 0.03 -0.02 -0.01 0.04 -0.01 -0.01 0.03 -0.01 -0.01 0.03 -0.01 -0.01 0.03 0.09 0.19 0.30 0.00 -0.01 0.04 -0.01 0.00 0.02 -0.01 0.00 0.01 -0.01 0.00 0.02 0.00 -0.01 0.04 0.07 0.20 0.33 -0.01 -0.02 0.06 -0.01 -0.02 0.04 -0.01 -0.02 0.04 -0.01 -0.02 0.04 -0.01 -0.03 0.06 0.11 0.21 0.25 -0.01 -0.01 0.02 -0.01 0.00 0.01 -0.01 0.00 0.00 -0.01 0.00 0.01 -0.01 -0.01 0.02 0.16 0.06 0.21 -0.01 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 -0.01 0.00 0.00 -0.01 0.00 0.00 -0.01 0.00 0.00 0.23 0.18 0.16 -0.01 0.00 0.01 -0.01 0.02 -0.01 -0.01 0.02 -0.02 -0.01 0.02 -0.01 -0.01 0.01 0.00 0.19 0.20 0.22 -0.05 0.01 0.02 -0.05 0.01 0.03 -0.03 0.01 0.02 -0.04 0.01 0.02 -0.04 0.01 0.02 0.26 0.21 0.07 -0.03 0.02 -0.01 -0.04 0.02 0.01 -0.02 0.02 -0.01 -0.03 0.02 0.00 -0.03 0.03 -0.01 (注)「市場」は、東証一、二部上場銘柄を対象に、1985 年 3 月~2013 年 9 月まで、毎年 3、9 月末に各特性値で 銘柄をソートし、各ポートフォリオの銘柄数が等しくなるように分位ポートフォリオを作成、各分位ポートフォリオに含 まれる銘柄の時価ウェイトを算出、その時系列平均値。「海外-市場」、「投信-市場」、「年金-市場」、及びそれら の組み合わせについては、これらの投資主体が保有する銘柄を上の各分位ポートフォリオに割り当て、各ポートフ ォリオの時価ウェイトを算出した上で、それと市場時価ウェイトとの差を算出したもの。 29 表 6 個人投資家の「銘柄選択」によるリターンのアノマリーの超過リターンによる回帰 時価総額 B/M比率 過去 リターン 総資産 営業利益率 予想 ROE #1-#5 #5-#1 #1-#5 #5-#1 #5-#1 <パネルA: 単回帰、時価総額ウェイト> 個人 係数 t値 0.08 3.94 *** 0.08 3.24 *** 0.08 2.72 *** -0.16 -4.81 *** -0.09 -3.21 *** 0.01 0.32 0.03 0.94 -0.12 -3.47 *** -0.05 -1.44 * 0.11 1.93 ** 0.07 1.44 * -0.13 -1.69 * -0.13 -1.98 ** 0.10 1.67 * -0.19 -1.98 ** -0.23 -2.51 *** <パネルA-1: 重回帰(時価総額をコントロール変数とする)、時価総額ウェイト> 個人 係数 t値 <パネルB: 単回帰、等ウェイト> 個人 係数 t値 0.01 0.22 <パネルB-1: 重回帰(時価総額をコントロール変数とする)、等ウェイト> 個人 係数 t値 0.16 2.28 *** 総資産 成長率 予想利益 修正率 アクルーアル ベータ値 固有ボラティリ ティ #1-#5 #5-#1 #1-#5 #2-#4 #1-#5 <パネルA: 単回帰、時価総額ウェイト> 個人 係数 t値 0.15 3.73 *** -0.05 -1.13 -0.04 -1.03 0.19 2.58 *** 0.02 0.58 <パネルA-1: 重回帰(時価総額をコントロール変数とする)、時価総額ウェイト> 個人 係数 t値 0.10 2.34 *** 0.01 0.32 0.01 0.36 0.14 2.20 *** 0.02 0.76 0.27 3.52 *** 0.19 1.40 * 0.41 3.49 *** 0.10 1.18 0.15 2.74 *** 0.41 3.42 *** 0.11 1.20 0.17 2.95 *** <パネルB: 単回帰、等ウェイト> 個人 係数 t値 <パネルB-1: 重回帰(時価総額をコントロール変数とする)、等ウェイト> 個人 係数 t値 0.34 4.04 *** 0.27 1.73 ** (注)個人投資家の「銘柄選択能力」の貢献によるリターンを被説明変数、各種アノマリーの「超過リターン」を説明 変数として回帰し、「超過リターン」の回帰係数及び t 値を表示した。パネル A、B は単回帰、パネル A-1、B-1は時 価総額を説明変数として加え重回帰を行ったもの。各投資主体の「銘柄選択能力」の貢献によるリターンについて は表2注を参照。各種アノマリーの「超過リターン」は、表 3 における各ファクターの分位ポートフォリオ#1(最小)-#5 (最大)、#5(最大)-#1(最小)のいずれかのリターン格差。ベータ値は#2-#4 で算出。パネル A は時価総額ウェイト で分位ポートフォリオを作成した場合、パネル B は等ウェイトで分位ポートフォリオを作成した場合の結果。 30 表 7 個人投資家のポートフォリオと市場ポートフォリオ ファクター ウエイト 時価総額 市場 個人-市場 市場 個人-市場 市場 海外-市場 市場 海外-市場 市場 海外-市場 市場 海外-市場 市場 海外-市場 市場 海外-市場 市場 海外-市場 市場 海外-市場 B/M比率 過去リターン 総資産営業利益率 予想ROE 総資産成長率 予想利益修正率 アクルーアル ベータ値 固有ボラティリティ 1985年3月~2013年9月 株式5分位 1(最小) 3(中位) 5(最大) 0.01 0.04 0.83 0.01 0.02 -0.08 0.37 0.17 0.06 -0.04 0.02 0.01 0.15 0.18 0.30 0.01 0.00 -0.02 0.10 0.19 0.30 0.02 0.01 -0.05 0.08 0.21 0.31 0.02 0.01 -0.03 0.12 0.21 0.23 0.01 0.01 -0.02 0.17 0.09 0.22 -0.02 0.03 0.01 0.22 0.19 0.15 0.02 0.00 0.00 0.17 0.19 0.27 0.02 0.00 -0.02 0.34 0.20 0.07 0.00 -0.01 0.03 1985年3月~1999年3月 株式5分位 1(最小) 3(中位) 5(最大) 0.01 0.05 0.80 0.01 0.02 -0.07 0.33 0.18 0.10 -0.04 0.02 0.01 0.14 0.17 0.33 0.01 0.01 -0.04 0.10 0.19 0.31 0.02 0.02 -0.06 0.09 0.21 0.28 0.02 -0.01 -0.01 0.13 0.20 0.22 0.00 0.02 -0.01 0.18 0.12 0.22 -0.02 0.03 0.02 0.21 0.21 0.14 0.03 0.00 0.00 0.15 0.17 0.31 0.02 0.01 -0.04 0.41 0.18 0.07 -0.03 0.00 0.03 1999年3月~2013年9月 株式5分位 1(最小) 3(中位) 5(最大) 0.01 0.03 0.86 0.01 0.03 -0.08 0.41 0.16 0.02 -0.03 0.01 0.01 0.15 0.18 0.27 0.01 0.00 -0.01 0.09 0.19 0.30 0.03 0.01 -0.04 0.07 0.20 0.33 0.02 0.02 -0.05 0.11 0.21 0.25 0.02 0.00 -0.02 0.16 0.06 0.21 -0.01 0.03 -0.01 0.23 0.18 0.16 0.00 0.01 -0.01 0.19 0.20 0.22 0.04 -0.02 0.00 0.26 0.21 0.07 0.02 -0.02 0.03 (注)「市場」は、東証一、二部上場銘柄を対象に、1985 年 3 月~2013 年 9 月まで、毎年 3、9 月末に各特性値で 銘柄をソートし、各ポートフォリオの銘柄数が等しくなるように分位ポートフォリオを作成、各分位ポートフォリオに含 まれる銘柄の時価ウェイトを算出、その時系列平均値。「個人-市場」はこれらの投資主体が保有する銘柄を上の 各分位ポートフォリオに割り当て、各ポートフォリオの時価ウェイトを算出した上で、それと市場時価ウェイトとの差を 算出したもの。 31
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