平成 27 年大阪府地価調査の概要 地価調査とは、知事が国土利用計画法施行令第 9 条に基づいて基準地を選定し、不動産 鑑定士による鑑定評価を基に、毎年 7 月 1 日時点における基準地の 1 平方メートルあたり の正常な価格を判定し、公表するものです。 1.大阪における経済情勢 大阪経済は、緩やかな回復基調が続いている。需要面では、個人消費は、一部に弱さが みられるものの、緩やかに回復している。家電販売額(6 月)、新車販売台数は減少したが、 大型小売店販売額、コンビニ販売額は増加した。投資は、下げ止まりつつある。非居住用 建設投資及び公共投資は減少したが、住宅投資は増加した。輸出は、緩やかに改善し、輸 出額は 29 ヶ月連続で増加した。主要国向けでは、中国向け以外の地域で増加し、輸入額は 5 ヶ月連続で減少した。 供給面では、生産動向は、一進一退で推移している。大阪府(6 月)は、生産、出荷はと もに上昇した。近畿の生産(6 月)は上昇し、全国の生産(7 月)は低下した。雇用は、改 善している。近畿の失業率は改善、所定外労働時間(6 月)は減少した。 参考:大阪府商工労働部 大阪産業経済リサーチセンター「大阪経済の情勢(平成 27 年 9 月) 」 2.地価調査結果 (1) 住宅地 ① 大阪府全体の概要 ・大阪府の住宅地の平均変動率は前年同様の±0.0%となった。 ・府下全域を俯瞰すると、大阪市や北摂エリアを中心とした利便性等に優れる住宅地の地 価は、前年に引続き上昇傾向にある一方、駅徒歩圏外の住宅地等においては、一部のエリ アにおいて地価に底値感がみられるものの、依然として地価下落が続いており、選好性の 優劣による二極化が鮮明となっている。 ・府下内陸部の土砂災害警戒区域に指定されている地域については、区域指定の有無に関 わらず従来から選好性が劣るエリアが多く、地価は下落傾向で推移している。 ② 大阪市内の概要 ・大阪市の住宅地の平均変動率は、前年+0.4%から本年+0.5%となり地価は引続き上昇 基調にある。マンション等の住系用途への転換が可能な一定のポテンシャルを有するエリ アについては、上昇地点の増加や上昇率の拡大が見受けられる。一方、消費税増税等の影 響を受けて、一部エリアでは上昇率の縮小が見られた。 ・福島区内など大阪駅隣接の都心接近性に優れた地域、阿倍野区・天王寺区など学区良好 で旧来から名声が高い地域等の住宅需要は堅調に推移している。 ③ 大阪府下(大阪市を除く)の概況 ・北摂エリアでは、地下鉄御堂筋線、阪急線、JR 線沿線の駅徒歩圏内の圏域や、利便性に 優るマンション適地等で上昇地点が見られる。各市の変動率をみると、豊中市+0.5%(前 年+0.3%) 、吹田市+0.4%(前年+0.4%)、高槻市+0.5%(前年+0.5%)、茨木市+0.9% (前年+1.1%)であり、北摂主要 4 市のうち茨木市のみ上昇率が縮小した。北摂以外の 地域においても、枚方市樟葉駅徒歩圏の住宅地域等の利便性に優る品等良好な住宅地域等 の地価も堅調に推移している。 ・堺市は前年+0.4%から+0.3%となり上昇率が若干縮小している。区別にみると、北区 が前年+1.2%から+0.6%に上昇率が縮小し、堺区、西区についても上昇率の縮小が見ら れた。中区については前年同様の+0.1%、東区については前年+0.2 から+0.4%に上昇 率が拡大した。一方、人口流出の著しい南区は前年同様横ばいであったほか、利便性の劣 る美原区(△0.1%)については、依然下落基調で推移している。 (2) 商業地 ① 大阪府全体の概要 ・大阪府の商業地の平均変動率は、+3.6%(前年+2.2%)となり上昇率が拡大した。 ・商業地全 31 市のうち、大阪市や江坂地区を抱える吹田市、高槻市、茨木市、池田市、枚 方市をはじめ一定の商業ポテンシャルを有するエリアを包含する市は引続き上昇してい る。一方、泉佐野市、寝屋川市、門真市、四條畷市の 4 市で依然下落基調が続いている。 ・近年、首都圏では物件価格が高騰し、物件取得が困難な状況となっていることから、相 対的に割安感が窺える大阪府下の優良物件等への資金流入が見受けられる。また、首都圏 の地価高騰による上昇率の高止まり傾向も相俟って、大阪府の商業地の平均変動率は全国 1 位を記録した。 ② 大阪市内の概要 ・大阪市の平均変動率は、前年+3.9%から本年+6.1%と上昇率は拡大した。区別にみる と、大正区、西成区など 5 区で今期もマイナスを示す一方、北区(+10.6%)、中央区(+ 10.8%)、西区(+9.5%)等の中心部では上昇率が大幅に拡大し、これらを取り巻く福島区 (+9.1%)、天王寺区(+6.5%)等についても、上昇傾向にて推移している。また、商業地 域内のマンション適地等については、建築費高騰による用地取得価格圧迫等の影響が未だ 懸念されるものの、利便性等を有するエリアを中心に上昇率の拡大が見られた。 ・オフィス市場では大型オフィスビルの空室消化が進み、新規供給が落ち着いたことも相 俟って、一部エリアでは募集賃料の引上げが見られ、大阪の最高価格地である北 5-2(+ 15.8%)をはじめ、主要商業地の地価は上昇基調で推移している。 ・外国人観光客の大幅増加を背景に、心斎橋エリアに存する中央 5-6(+29.7%)が府下最 高の上昇率を記録したほか、 「なんば」エリアに存する中央 5-1(+28.9%)についても 上昇率は大幅に拡大した。また、家電量販店、免税店等が建ち並ぶ日本橋の「でんでんタ ウン」に存する浪速 5-1(+12.4%)の地価も大幅に上昇を示した。 ③ 大阪府下(大阪市を除く)の概況 ・堺市は前年+0.3%から+0.4%と上昇率が若干拡大した。区別では、西区が△0.5%から +0.1%と上昇へ転じたほか、北区、中区、堺区はいずれも上昇基調で推移しており、東 区は前年同様横ばいである。 ④ その他特徴的な変動率を示した地域の概況 ・ 「心斎橋」及び「なんば」エリアは、外国人観光客の大幅な増加により、近隣商店街等の 通行者数が増加傾向にある。また、中国人観光客の「爆買い」による影響等を受けて、商 業ポテンシャルの更なる向上が認められる状況にあり、店舗賃料は上昇傾向にある。なお、 主要商業エリアに隣接する中央(府)5-6 及び中央(府)5-1 については、リーマンショック 以降、暫く地価が低調に推移してきことから、地価に割安感が認められるほか、周辺が外 国人観光客のバスの発着地点となっており、商業ポテンシャルの向上も期待される。 (3) 工業地 ① 大阪府全体の概要 ・大阪府全体の工業地の平均変動率は、△0.2%(前年△0.4%)と下落率は縮小している。 ② 工業地域を形成する主な都市の概要 ・大阪市の平均変動率は+0.1%(前年△0.5%)と上昇に転じており、臨海部の主要工業 地を中心に上昇傾向にて推移している。 ・堺市の工業地については、前年△0.4%から△0.2%と下落率は縮小した。 ・マルチテナント型の大型物流施設の賃貸需要は堅調に推移しており、今後についても、 コンビニエンスストアやスーパーマーケット事業者等による潜在的な賃貸需要が期待さ れていることから、開発事業者による用地取得需要は堅調に推移している。一方、建築費 高騰が用地取得に影響を与えることが懸念されている。なお、堺市の臨海部や茨木市の内 陸部等で大型物流施設が供給される予定である。
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