第793号(第三種郵便物認可) 2015年5月25日(8) 「保険医療機関等及び保険医等の監査マニュアル」の開示を求めるとりくみ 五月雨式に開示が続く「監査マニュアル」訴訟の概要 あいまいな厚労省の行政文書の開示・不開示に係る判断基準 『監査マニュアル訴訟』次回(第15回)弁論は7月31日に開催 暮石智英歯科医師(当会理事、同指導・監査対策室長)が れた同文書は、内閣府情報公開・個人情報保護審査会の答申を 「保険医療機関等及び保険医等の監査マニュアル」(以下、 受けた厚労大臣の「修正裁決」や、提訴後2回の「変更決定」を 「監査マニュアル」)の不開示部分を更に開示するよう求め、 通じ、全面不開示は残り9頁、一部不開示は35頁まで減少して 2012年11月に提訴した「監査マニュアル」訴訟が大詰めを迎 いる。これまでの「監査マニュアル」の開示を求める取り組み えている。2009年の開示請求では全636頁が全面不開示とさ の概要を紹介する。 (1)開示請求∼審査請求∼審査会の答申∼厚労大臣の「修正裁決」まで 2009年 8月21日 暮石理事が中国四国厚生局へ開示請求 9月17日 中国四国厚生局長の不開示処分…① 行政機関の保有する情報の公開に関する法律 第5条(行政文書の開示義務) 不開示部分のある ページの割合 100% ① 不開示の理由(要旨) ・公にすると、不正・不当な診療や診療報酬を行っている一部の保険医療機関等において、監査 の選定方法や事前調査の重点項目、調査手法を察知することになり、正確な事実の把握を困 難にし、違法・不当な行為の発見を困難にするおそれがある。 ・「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」 (以下、 「法」)5条6号イに該当し、不開示 が妥当である。 行政機関の長は、開示請求があったときは、開示請 求に係る行政文書に次の各号に掲げる情報のいず れかが記録されている場合を除き、開示請求者に 対し、当該行政文書を開示しなければならない。 6 国の機関(中略)が行う事務又は事業に関 する情報であって、公にすることにより、次 に掲げるおそれその他当該事務又は事業の 性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に 1年2ヶ月も放置 10月24日 行政不服審査法に基づき、厚労大臣へ審査請求…② 支障を及ぼすおそれがあるもの ② 暮石理事の審査請求の理由(要旨) 同資料は情報公開・個人情報保護審査会において「全部を不開示とした決定については、別紙 に掲げる部分を開示すべき」との答申がなされており、不開示処分は審査会の答申に反する。 イ 監査、検査、取締り、試験又は租税の賦課 若しくは徴収に係る事務に関し、正確な 事実の把握を困難にするおそれ又は違法 若しくは不当な行為を容易にし、若しく 2011年 1月11日 厚労大臣が一部開示の上、 「理由説明書」 (…③)を情報公開・個 「審査会」)へ提出し、諮問 人情報保護審査会(以下、 不開示部分のある ページの割合 ③ 厚労大臣の「理由説明書」(要旨) ①監査での留意事項が法令から明らかな部分、②監査を公平に行うため一般的な留意事項が 簡潔に記載されているのみの部分、③標題部分、④調査書の様式部分については、公にして も監査事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとまでは言えないことから開示する。 不開示の根拠である「法第5条6号イ」の「監査」=取り調べとは性格を異にするもの。 ・不開示とするなら「法第5条6号」の「支障」や「おそれ」につき合理的な説明を行うべき。 9月21日「補充理由説明書」に対する「意見書」提出…⑥ 務に関し、正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当 な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれがあるとは認 められない部分等を開示すべきである。 ・審査請求から理由説明書提出まで、1年半近くかかった厚労省の対応に ついて「迅速かつ的確な対応が望まれる」。 5月2日 厚労大臣が審査会の答申に基づき「裁決」 5月10日「監査マニュアル」開示(一部不開示) 請求の手口が明らかとなり、同様の手口による 求額を比較することにより、聴聞おいて金額の 多寡に関する質問に終始したり、訴訟を提起す るなど、指導及び監査業務の適正な遂行に支障 ・他の行政庁は各種「監査マニュアル」を公開している。 ・公にしても個別指導の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ、監査に係る事 ・「事故内容」を公にすると、監査の手法・不正 された個々の金額の多寡と自らの不正・不当請 ・健保法に基づく監査は「犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない」とされ、 ⑦ 審査会の答申(要旨) ⑤ 厚労大臣の「補充理由説明書」(要旨) ・「診療報酬の不正請求」欄を公にすると、記載 ④ 厚労大臣の「理由説明書」に対する暮石理事の「意見書」(要旨) 2012年 3月6日 審査会が厚労大臣に答申…⑦ はその発見を困難にするおそれ 不正請求等を行う契機を与えるおそれがある。 2月4日 厚労大臣の「理由説明書」に対する「意見書」を提出…④ 9月6日 厚労大臣が「補充理由説明書」を提出…⑤ 52% を及ぼすおそれがある。 ⑥ 厚労大臣の「補充説明書」に対する暮石理事の「意見書」(要旨) ・取消処分の原因となる事実を公表し周知することは同様の事故防止 に極めて効果的であり、保険診療の質的向上を図るための事務・事 業の推進及び公共の利益に資するもの。 ・不利益処分に対し、自己防衛権を保障するための聴聞や、訴訟にお いて処分の妥当性の司法判断を求める行為を否定する主張は「裁判 を起こさせないために開示しない」ということであり暴論。保険医 の取消処分に比例原則を適用した「溝部訴訟」判決にも反する。 ・法第5条第6号柱書の「適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」は、 「行政機関に広範な裁量権を与える趣旨ではない」とされている。 不開示部分のある ページの割合 52% ※答申に基づく追加開示:全面開示は3頁、一部開示は167頁 ・別件の開示請求で開示されていた部分が不開示とされているなど、情報公開の流れに逆行するものであった。 11月7日 広島地裁に「行政文書一部開示決定処分取消請求訴訟」(「監査マニュアル」訴訟)を提起 (論点)①開示拒否の理由:指導・監査において厚労省に犯罪捜査の権限があるかのような誤った前提に立つもの。 ②多くの部分がマスキング:他省庁と比べても厚労省の隠 体質は異常。 ③1年2ヶ月間の放置:行政内部では不開示処分について審査請求送付後、審査会への諮問まで90日以内に行う べきとされており、これほど長期に放置することは違法の疑いが強い。 7ページに続きます ▼ (7)2015年5月25日 (第三種郵便物認可)第793号 「監査マニュアル」の開示を求めるとりくみ 五月雨式に開示が続く 「監査マニュアル」訴訟の概要 第1回追加開示までの被告国側の主張(要旨) ①開示拒否の理由について あいまいな厚労省の行政文書の開示・不開示に係る判断基準 8ページからの続き▼ (2)「監査マニュアル」訴訟の経緯 2013年 1月16日 第1回弁論 3月15日 第2回弁論 5月14日 第3回弁論 7月12日 第4回弁論 9月6日 第5回弁論 11月22日 第6回弁論 2014年 2月12日 第7回弁論 4月25日 第8回弁論 ・監査手法等を公にすると、不正・不当な診療報酬請求を行っている一部の保険医療機関等では、 監査の選定方法や事前調査の重点項目、調査手法を察知し、患者への口止め工作、資料改ざん、不 正・不当な請求の巧妙化等を行うことにより、正確な事実の把握が困難になるおそれがある。 ・各種様式には書類作成にあたっての留意点等が記載されており、監査の重点項目や具体的手法が 容易に推測され、正確な事実の把握を困難にするおそれ、または違法・不当な行為を容易にし、そ の発見を困難にするおそれがある。 ②多くの部分がマスキング ・他省庁のマニュアルは検査・調査項目のチェックリスト的なものであるが、監査マニュアルは不 正または著しい不当が疑われる場合における対応を想定したものであり、セルフチェックを期待 するものではない。 ③1年2ヶ月間の放置 ・不服申立てから諮問まで「遅くとも90日を超えない」規定は、行政機関において努力すべきもの であるが、この期間を徒過しても、直ちに手続が違法となるものではない。 ・監査マニュアルは636頁に及び、一文ずつ検討・判断する必要があった。指導監査業務に携わっ ていた職員による収賄事件が発生し、対応等にも追われることになった。1年2ヶ月の期間を要 したことはやむを得ない。 ④「公法上の契約」について 6月30日 第9回弁論 7月8日 ※1回目の追加開示 (27頁分の全部または一部を開示) 9月1日 第10回弁論 10月8日 第11回弁論 不開示部分のある ページの割合 50% 12月10日 第12回弁論 ⑤「診療報酬点数表」の留意事項通知について 2015年 1月30日 ※2回目の追加開示 (128頁分の全部または一部を開示) 2月6日 第13回弁論 5月8日 第14回弁論 ・医師等が医療業務を行うには、自由診療の医療機関と契約する選 択肢も存在しており、保険医登録が強制されるものではない。 ・医師、歯科医師は健保法を遵守するという受忍義務を承知の上で 自らの意思で申請を行うもので、申請しないことも可能であるか ら、契約の自由が保障されていないという原告の主張は誤り。 不開示部分のある ページの割合 38% ・「診療報酬点数表」の留意事項通知はいわゆる解釈基準であ り、裁判所が法令解釈をするにあたっては、その内容に拘束され るものではなく、また、医療行為は医師等の医学的裁量に委ねら れているところである。 「監査マニュアル」の残る不開示部分は、全面不開示は9ページ、一部不開示35ページとなっている。 ※「監査マニュアル」のうち、「過去の取消事例」欄の個人情報掲載部分は除く 第2回 歯科医院スタッフ交流企画を開催 患者さんを心から笑顔に! 頑張っている歯 科 助 手 へ の 応 援 メ ッ セ ー ジ 5月 17 日、岡山県立図書館にて第2回 講演2 ワン・フォー・オール、 オール・フォー・ワン 歯科医院スタッフ交流企画が開催され、 「患者さんを心から笑顔に!∼頑張って 難波 香 様(須藤歯科診療所) いる歯科助手への応援メッセージ」を テーマに3医院の皆様よりご講演を頂 くと共に、澤泉仲美子先生(㈱ オフィ スウエーブ代表取締役)より基調講演 を頂いた。当日は 83 名が参加した。 参加者の感想の一部を紹介する。(澤泉 先生のご講演要旨を次号に掲載予定) 参加者の感想(抜粋/順不同) 歯医者の世界へイッテQ 綾野 理帆 様・松本 真季 様 (しんくら歯科医院) ・若いお二人がこんなにも意識高く仕事を されていることに感動しました。 ・異業種からの転職で、同じ悩みを抱えて いました。年齢も近くて励まされました。 ・「資格が無いからこそできること」を私も 考えていきたいと思います。 頑張っている歯科助手へ の応援メッセージ 澤泉 仲美子先生 ・マインドを共有するためのツールとして みんなで作り上げていく手帳 がとても 参考になりました。 ・私も教える立場となった今、やり続ける、 言い続ける、粘り続ける、褒めてアドバ イスを実践していきたいと思います。 ・チームの一員として動いている姿が素敵 でした。 (㈱ オフィスウエーブ代表取締役) ・「資格が無い」コンプレックスから救い 出してくれる講演でした。医院で孤独に 感じることも多々ありましたが、歯科助 手なしでは成り立たない、チーム医療の 大切さに気づき、向上心が持てました。 ・歯科助手は考え方、やり方しだいで医院 に無くてはならない重要な存在になれ 講演3 講演1 基調講演 笑顔が見たいから 山本 唯 様(和気歯科医院) ・歯科助手は 歯科業界の底辺ではない と いう言葉に共感しました。仕事に誇りを 持っていることがよく伝わってきました。 ・忘れていた思いに気づくことができまし た。初心に戻って頑張りたいと思います。 ・私も笑顔、挨拶、会話で一番になります! る!とても前向きな気持ちになれました。 小さなステージからスタートするという 言葉も良かったです。 ・ 欠点は隠すものではなくて活かすもの 、 自己成長することで周りを変える 、 し んどい時は成長期 など、沢山の言葉が 心に響きました。 ・プロ意識を持つことが大切さや、 「相手や 環境のせいにしない」という言葉が深く 胸に刺さりました。
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