1.潰瘍性大腸炎 大腸の粘膜(最も内側の層)にびらんあるいは潰瘍ができる大腸の炎症性疾患。特徴的な 症状としては、下血を伴うまたは伴わない下痢とよく起こる腹痛であり、病変は直腸から 連続的に、口側に広がる性質があり、最大で直腸から結腸全体に拡がる。 患者数 77,073 人(平成 14 年度特定疾患医療受給者証交付件数) 正常粘膜 潰瘍性大腸炎 1)内科的治療 現在、潰瘍性大腸炎を完治する内科的治療はなく、治療の目的は大腸粘膜の異常な炎症を 抑え、症状をコントロールすること。 〈5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤〉 サラゾスルファピリジン(サラゾピリン) その副作用を軽減するために開発された改良新薬のメサラジン(ペンタサ) 経口や直腸から投与され、持続する炎症を抑え、下痢、下血、腹痛などの症状は減少する。 5-ASA 製剤は軽症から中等症の潰瘍性大腸炎、再燃予防に効果がある。 〈副腎皮質ステロイド剤〉 1 プレドニゾロン(プレドニン) 経口や直腸からあるいは経静脈的に投与。 中等症から重症の患者さんに用いられ、強力に炎症を抑える。再燃を予防する効果は認め られていない。 〈血球成分除去療法〉 血液中から異常に活性化した白血球を取り除く治療法。 LCAP(白血球除去療法:セルソーバ)、GCAP(顆粒球除去療法:アダカラム) 副腎皮質ステロイド剤で効果が得られない重症や難治性の活動期の治療。 〈免疫抑制剤〉 アザチオプリン(イムラン)、6-メルカプトプリン(ロイケリン) 、シクロスポリン(サンデ ィミュン) 5-ASA 製剤や副腎皮質ステロイドに無効か効果不十分、あるいは副腎皮質ステロイドが中 止出来ない難治性潰瘍性大腸炎に使用。 2)外科的治療 (1)大量出血 (2)中毒性巨大結腸症(大腸が腫れ上がり、毒素が全身に回る) (3)穿孔 (4)癌化またはその疑い (5)内科的治療に反応しない重症例 (6)副作用のためステロイドなどの薬剤を使用できない場合 手術は大腸の全摘が基本。 2.クローン病(Crohn's Disease)とは 主として若年者にみられ、口腔にはじまり肛門にいたるまでの消化管のどの部位にも炎症 や潰瘍(粘膜が欠損すること)が起こる可能性がある。小腸の末端部が好発部位で、非連 続性の病変(病変と病変の間に正常部分が存在すること)が特徴。それらの病変により腹 痛や下痢、血便、体重減少などが生じる。 2004 年度 23,188 人(医療受給者証交付件数) 2 【栄養療法・食事療法】 経腸栄養療法 抗原性を示さないアミノ酸を主体として脂肪をほとんど含まない成分栄養剤と少量のタン パク質と脂肪含量がやや多い消化態栄養剤やカゼイン、大豆タンパクなどを含む半消化態 栄養剤がある。 完全中心静脈栄養は高度な狭窄がある場合、広範囲な小腸病変が存在する場合、経腸栄養 療法を行えない場合など。 【薬物療法】 5-アミノサリチル酸製剤、副腎皮質ステロイド、6-MP、アザチオプリンなどの免疫抑制剤 緩解を維持するために 5-アミノサリチル酸製剤や免疫抑制剤が使われる。 栄養療法、5-アミノサリチル酸製剤、副腎皮質ステロイドなどによる治療が効かない症状の 3 重い場合や瘻孔のある場合は、抗 TNF-α抗体が使用されることもある。 【外科治療】 著しい狭窄や穿孔、膿瘍などを経過中に生じ、内科的治療でコントロールできない場合に は手術が必要。できるだけ腸管を温存するために小範囲切除や狭窄形成術。 4
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