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共創
Vol.19
IGPI レポート 2015 夏号
経営共創基盤(IGPI)では 2011年に上海、2013 年にシンガポールに拠点を設立し、
日系・非日系企業の経営課題について、ハンズオンでサポートをしています。
また、国内においても日本政府関連のアジア支援プロジェクトに参画しています。
今号では、こうしたアジア地域におけるIGPIの最近の取り組みについてご紹介します。
Contents
03 「失われた10 年」の経験を
ベトナムで活かす
IGPI ベトナムプロジェクトチーム 06 東南アジアで自律的な現場を作り、
戦略を着実に実行する
坂田 幸樹
IGPI シンガポール 取締役 COO
09 世界一厳しい中国市場で戦うために
∼事業と組織の一体改革を考える∼
平戸 良周
IGPI(上海)副総経理
発行:株式会社 経営共創基盤(IGPI)
Industrial Growth Platform, Inc. http://www.igpi.co.jp Layout Design : 安久津みどり
カバーイラストは『東海道中栗毛弥次馬と江戸旅』善養寺
ススム著(洋泉社刊)より、
『都林泉名勝図絵・四条河原』
のリメイク。祇園祭の間だけ作られた四条河原の川床は屋
台や芝居を楽しむ人々で賑わった。
イラストレーター・江戸研究家 善養寺ススム
IGPI ベトナムプロジェクトチーム
近年、政治的にも経済的にも、また人的交流の側面でも、日越関係はますます
近しくなってきています。日本で学ぶベトナム人留学生の数は 2005 年の 2,165
Ha Noi
人から 2014 年の 32,804 人へと約15 倍に、ベトナムに長期滞在する日本人の民
et
am
N
増しています。また、日本はベトナムにとって、二国間では 1995 年以降一貫し
Vi
間企業関係者の数は 2005 年の 2,241 人から 2014 年の 7,844 人へと約 3.5 倍に急
て ODAトップドナーであり、安倍首相が 2012 年 12 月の就任後、最初に訪問し
た国もベトナムでした。
本稿では、ベトナムのマクロ経済において喫緊の課題となっている国営企業改
Ho Chi Minh
革・銀行セクター改革・不良債権問題、およびこの課題解決に対する IGPI の関わ
りについて、ご紹介します。
ベトナムのマクロ経済
ち 直 す も、2011 年 は 5.9 %、2012 年 は 5.2 %
ベトナムの経済は、1986 年の市場経済シ
中、2011 年以降、ベトナム政府は、政策運営
ステムの導入と対外開放化を柱とした「ドイ
を経済成長重視から、マクロ経済の安定と成
モイ(刷新)」政策以降、それまでの計画経済
長のバランス重視に転換しました。そして同
から市場経済化・対外開放政策へと路線を変
年 11 月の国会において、2015 年までに政府
更し、その後 1990 年から 2010 年にかけての
が取り組むべき最重要課題として、(1)国営
GDP 成長率も年平均で 7%を超えるなど、順
企業改革、(2)銀行セクター改革、(3)公共
調に経済発展を遂げました。しかし、リーマ
投資改革を掲げました。
と成長率が鈍化してきています。このような
ンショックを受けた落ち込みの後、一旦は持
I G P I R E P O RT
03
国営企業改革
更に民間資本・外資の参入と発展を経ながら、
社会主義的な保護行政体質から脱却し、銀行
ドイモイ以降、民間企業の誕生、外資の漸
の自己責任、市場的規律の構築を志向してき
進的受入に伴い、中小の国営企業の株式会社
ました。しかしながら、商業銀行の誕生以来、
化・民営化が進められる一方で、電力・石炭・
高い経済成長率や不動産・株式バブルを享受
繊維・造船等、国家戦略上の重要産業におい
してきたために、未だ担保を重視した融資を
ては、産業内の複数の国営企業を再編・グル
原則とする慣行であり、銀行内での与信管理
ープ化し、大規模な企業グループが形成され
や当局による銀行監督・検査体制が不十分と
ました。これらの企業グループは 2005 年頃
言われています。加えて、現在ベトナムには
から不動産・株式投資など本業以外の事業に
多くの商業銀行が存在し、小規模・財務脆弱
進出し、コングロマリット化していきました。
の小銀行がひしめきあっていることが大きな
しかしながら、2009 年以降の不動産・株式市
課題であるとも指摘されており、ベトナムの
況の悪化、インフレ抑制を目的とした 2011
中央銀行であるベトナム国家銀行は、2017
年の財政・金融引き締めに加え、従来コア事
年までに、合併・買収(M&A)により、現在
業も非効率であったため、2010 年前後より、
約40 ある国内民間商業銀行の数を15 ∼ 17 行
これらの国営企業の業績が急速に悪化しまし
程度に減らす計画を打ち出しています。
た。結果として多額の債務を抱え、債務不履
行により実質破たんに至る国営企業も出てき
不良債権問題
ました。このような状況下で、ベトナム政府
は現在、大規模企業グループも含めた国営企
上記の「国営企業改革」
「銀行セクター改革」
業の株式会社化・一部民営化の促進による経
に深くかかわっているのが不良債権問題です。
営資源のコア事業への集中、経営改革・効率
リーマンショック後の景況悪化、金融引き締
化を図っています。ベトナムにおいては、国
めに伴う不動産・株式相場の下落に伴い、企
が過半数以上を保有する企業が現在ベトナム
業に債務が蓄積され、これが銀行の不良債権
における企業売上合計の約 25%を占めており、
となり、経済全体の足かせになってしまって
ベトナムの経済システムの中で引き続き大き
います。民間企業については、不動産に代表
な影響力を有しています。
される担保の価値が融資の上限額とされる一
方、特に国営企業については、「国の信用力を
ベトナムの銀行セクター
背景に無担保融資を受けることができる」「優
遇金利が適用される」等、実質的には優遇さ
04
銀行セクターについても、1988 年のモノ
れてきたために、より不良債権の蓄積しやす
バンク・システム解体に伴う金融政策・金融
い環境にあったと言われています。結果とし
監督を担う中央銀行と国有商業銀行への再編、
て、ベトナムにおいては商業銀行の不良債権
IG PI RE PORT
の 80%弱が国営企業向け貸付であると言われ
ています。
このように、国営企業セクターの改革と
銀行セクターの改革を促進し、不良債権問題
を解決して、経済の競争力を強化していくこ
とは、ベトナムが引き続き持続的な経済成長
を遂げていくための喫緊の課題となっていま
技術協力プロジェクト「国営企業改革実施に
す。
向けた企業金融管理能力向上プロジェクト」
しかしながら、実態としては、国営企業の
と「国家銀行改革支援プロジェクト」が開始
資産を帳簿価額以下で売却する事が困難であ
されました。
ること、企業の情報開示が不十分であること、
これらのプロジェクトの一環として、2014
資産売却時に発生した損失に対する経営陣へ
年10月 に、IGPI は、Pw Cあ ら た 監 査 法 人 と
の責任が過度に重い等の理由によりノンコア
ともに、「国営企業改革実施に向けた企業金
ビジネスの売却が困難であることに加え、不
融管理能力向上プロジェクト(債権買取公社
良債権・不動産売却に係る制約や、担保権の
( DATC)および資産管理公社(VAMC)業務
実行など債権回収の実効性が担保されていな
改善支援)」を受注しました。
いなど、不良債権処理や事業再生の法的な枠
今回のプロジェクトでは、国営企業の債務
組みが整っていない状況にあります。
の引取・処理や企業再生に関する業務を担う
ベトナム財政省傘下の DATC と、不良債権の
JICA による技術協力プロジェクト
購入・処理を扱うベトナム国家銀行傘下の
VAMC の機能・能力向上を目指しています。
日本は、独立行政法人国際協力機構(JI CA)
ベトナムにおける不良債権処理や企業再生は
を通じて、2006 年以降、専門家の派遣や技
独特な側面もありますが、資産や事業の本質
術協力プロジェクト、日本での研修等によっ
的価値を見極めて再生・処理を行うという意
て、ベトナムの金融セクターを支援してきま
味では、日本での経験や能力は広く活用でき
した。こうした実績を踏まえ、2013 年 1 月
ると考えており、日本の不良債権問題解決に
に行われた日越首脳会談で、グエン・タン・
大きな役割を果たした産業再生機構(IRCJ)
ズン首相から、安倍晋三首相に対して、直接、
の流れを汲む IGPI としても、日越両政府のご
国営企業改革と銀行セクター改革に係る支援
期待に沿えるよう、プロジェクトに取り組ん
依頼がなされたことを受け、2014 年 3 月に
で参りたいと考えています。
本稿は以下のメンバーが担当しました。
村岡 隆史、児玉 尚剛、折原 大吾、三吉 久雄、窪澤 晶子
I G P I RE P O RT
05
東南アジアで
自律的な現場を作り、
戦略を着実に実行する
坂田 幸樹 IGPI シンガポール 取締役 COO
行が難しくなってきています。また、東南ア
ジアの位置づけが生産地から消費地に変わり
戦略変数が増えたことも、経営の複雑化に大
きく影響しています。伊藤忠商事とタイ最大
IGPI シンガポールでは、東南アジアの日系
企業及び現地企業の戦略立案から実行までの
支援を行っています。支援方法の特徴として
は、関連する業界の企業や政府関係者に直接
会って顧客ニーズや競争環境に関する一次情
報を取得することでよりリアルな戦略を立案
務提携や、ソフトバンクグループによるイン
ドネシアの E コマースサイト運営会社トコペ
ディアへの出資事例等を見ても、世界におけ
る東南アジアの位置づけが変わってきている
ことが分かります。
し、実行することにあります。1 案件の戦略
安易に「現地化」を追い求めない
ビューすることもありますし、買収・提携先
一方で多くの日系企業からは東南アジアで
立案のためにスタッフが 100 社以上にインタ
のデュー・デリジェンスではオーナー社長の
自宅を訪問して情報収集することもあります。
こうした地道な活動を通して現地企業との
信頼関係が深まると、より内部まで深く入り
込んだ経営課題について相談を受ける機会も
増えてきました。多くの現地企業は当初ファ
ミリービジネスとしてスタートしましたが、
今では東南アジア地域外へも積極的に事業投
資するような大きな財閥へと拡大しています。
こうした企業では、これまでのようなオーナー
によるトップダウンでの意思決定及びその実
06
財閥チャロン・ポカパングループの資本・業
IGP I REP ORT
の「現地化」が進まないという相談を受けます。
その中で実感したのは、日系企業において言
われる「現地化」という発想そのものが企業
の成長を阻害しているということです。私は
日本で複数の企業の経営に直接携わり、海外
では IGPI シンガポールの経営に加えて複数の
クライアント企業の経営に間接的に関与して
います。これらの経験を通し、経営に唯一の
一般解は存在せず、常に経営のステージや環
境に合わせて会社を運営していく必要がある
ということを再認識しました。
「現地化」の問題点は、「現地化」そのもの
場では様々な視点から意見を言い合える多国
成功した事業モデルを単に「現地化」すれば
一つです。ただ、製造業を中心とした多くの日
アが生まれたりするものではありません。置
前に IGPI シンガポールを設立していたら、始
を最大限発揮するために何をすべきか必死に
も全員日本人を採用していたかも知れません。
地化」を目指すことではありません。人も仕
自律的な現場の構築
があるのであれば積極的に取り組むべきです
では、東南アジアのように変化が著しい地
が目的化してしまうことにあります。日本で
籍軍が有利であると考えていることも理由の
オペレーションが改善したり、新たなアイデ
系企業が東南アジア諸国に進出し始めた30 年
かれた環境下で、自社のコア・コンピタンス
めはターゲットを日系企業に絞り、スタッフ
考え実行するのが経営であり、盲目的に「現
組みも「現地化」しないと実現できないこと
が、日本人が実行することにこそ価値がある
事業であれば、人も仕組みもまとめて輸出す
べきです。
IGPI シンガポールのプロフェッショナルスタ
ッフは各自の国籍が違います。これは IGPI が
日本で培ったノウハウを抽象化し、東南アジ
アの日系企業及び現地企業の個別事情に合わ
せて具体化して実行するのは、日本人だけで
は限界があると判断したことが理由です。ま
た、新しい価値を生み続ける必要がある経営
コンサルティングにおいて重要な要素の一つ
は多様性であり、変化し続ける東南アジア市
域で持続的に価値を生み出すことのできる
組織はどうしたら実現できるのでしょうか。
IGPI シンガポールが考えているのは自ら考え、
行動することのできる自律的な現場を構築す
ることです。そのために重要なポイントは以
下の通りです。
① 各国で現場の状況を把握する
まずは現場から情報を収集し、状況を把握
する必要があります。トップダウンでの意思
決定に問題があるということではなく、顧客・
現場の状況を正確に把握しないままに意思決
定をすると現場が混乱したり、ひいては顧客
満足度の低下につながります。日本と同じく
上長に対して意見をすることが一般的ではな
い東南アジアでは現場から声が上がりづらい
ので、自発的な気付きを促すと同時に、意見
しやすい仕組みを導入することが重要になり
ます。
② 経営陣・本部から
現場目線のメッセージを発信する
経営陣や本部からのメッセージは現場で大
きな影響力を持ちます。それがいかに現場感
のない理不尽なものであっても従わざるを得
ません。例えば、ビジョン・ミッション等は
本部から一方的に発信して東南アジアの従業
I G P I RE P O RT
07
員に押し付けるのではなく、それぞれの組織
変えるための施策を実行したくなりますが、
す。また、日々の業務指示も従業員に理解さ
変わり、次に施策を現場で推進するリーダー
す。経営陣・本部はもちろん会社全体の方向
が戦略の実行にコミットし、部下の業務を
んが、そのためにも現場が働きやすいように
をするような経験を積むしかありません。
の実態に合わせた形で発信することが重要で
本当に重要なのは、まずは経営陣・本部が
れやすい言葉・粒度で発信する必要がありま
を育成することです。そのためにはリーダー
性を見失わないよう指揮を執らねばなりませ
正確に把握した上で評価・フィードバック
サポートする役割を忘れてはなりません。
③ 現場のリーダーを育成する
自律的組織を実現するための改革は決し
て容易なものではありません。仕組みを導
現場の状況を把握し、分かりやすいメッセー
入すること自体は数ヶ月で完了しますが、
ダーが不在では意味がありません。特に東南
にわたって軌道修正をしつつ定着を図るし
れば、本部が定義したグローバル人材を派遣
ンズオンでの支援を通して、東南アジアの
いるリーダーを育成することの方が重要であ
していきたいと思っています。
ジを発信したとしても、それを実行するリー
その仕組みが効果を発揮するまでは数年間
アジアで多様性あるチームを組成するのであ
かありません。IGPI シンガポールでは、ハ
するよりも、その地域の特性を深く理解して
果実を得るために努力している企業を応援
り効果的です。現場改革というと現場を直接
IGPI シンガポールメンバー
坂田 幸樹 IGPI シンガポール 取締役 COO
外資系コンサルティング会社、外資系消費財メーカーを経て、リヴァンプに入社。ディレ
クターとしてアパレル企業、ファーストフードチェーン、システム会社などへのハンズオ
ン支援(事業計画立案・実行、M&A、資金調達など)に従事。リヴァンプ支援先のシステ
ム会社においては代表取締役に就任し、経営改革を推進。IGPI 参画後は、IGPI シンガポー
ルの取締役 COO として、物流企業、大手テレコム企業子会社、大手広告企業などの幅広
い業界においてグローバル戦略立案・実行支援、クロスボーダー M&A の支援に従事。
早稲田大学政治経済学部卒
08
IG PI RE PORT
世界一厳しい中国市場で戦うために
∼事業と組織の一体改革を考える∼
平戸 良周 IGPI(上海)副総経理
日本における中国経済に関する報道は、「減速」「危機」「撤退」といったキーワードが連日躍ってい
ます。一方、中国が日本の GDP を抜いた 2010 年からわずか 5 年、2015 年の中国 GDP は日本の
約 3 倍の 2.7 倍(IMF2015 年 4 月時点予測)に達し、7.0%に「落ち込んだ」中国の経済成長率が
アジアで依然トップクラスに位置することはあまり語られません。
急速に向上しつつある都市化率・第三次産業にはまだ上昇余地があります。目に見えて育ってきた
中国人中間層が日本に爆買に走るのを横目に、人民元建の価格表示に 20 円を掛けては「高い!」と
嘆く日本人の姿が対照的に映るここ上海から、巨大市場中国において日本企業が直面している事業
戦略・組織戦略の再構築の進め方について考察していきます。
事業戦略と組織戦略 ∼ふたつの「再構築」∼
(1)事業戦略の再構築 立地的な近さや日本市場規模の大きさゆえ
に、かつての日本企業は中国を生産拠点と位置
づける進出が多かったように思います。結果、
巨大かつ成長が続く中国ローカル市場に売ると
いう側面では、欧米・台湾・韓国企業に後れを
取っている感も否めません。
また、近年顕著なのは中国企業の成長スピー
ドの速さです。ネット大手 3 社「B AT(バイドゥ・
アリババ・テンセント)」は日本でも知られて
きていると思いますが、伸長著しい「小米(シャ
オミ)」社に象徴されるネットと物の融合(IOT)
の分野では、日本企業が追いつけないくらいの
スピードで進化しています。
今、圧倒的なプロダクトの優位性で勝者の地
位にある企業も、3 年後にはゲームのルールが
変わり足下をすくわれるかもしれません。巨大
成長市場という魅力とそれゆえに世界一厳しい
とも言われる競争環境の下で、特に日系企業向
けビジネスを収益基盤としてきた企業は、中国
ローカル市場への販売に苦戦するケースも多い
ようです。
中国ローカル市場に売ることは単なる新規顧
客開拓ではなく、全く異なる顧客の要求スピー
ド・低コスト・頻繁なニーズ変化に対応できる
バリューチェーンの構築に加え、定量的成果を
重視したインセンティブ設計を伴う営業マネジ
メントの仕組み構築も必要です。中国企業と全
I G P I RE P O RT
09
く同じことをするのではなく、自社の強み・
「ら
しさ」を活かしつつ、どのようにゲームに勝つの
か、そのためにどこまでの資源配分をするのか?
Step1
Step 2
陥らないために
事業戦略の再構築に当たって、重要なのは戦
略自体もさることながら、それを決定・遂行す
る「組織能力」でしょう。事業戦略転換が必要
な局面においては、組織転換も大胆かつスピー
業戦略上の課題を炙り出し、具体
的打ち手を決定
事業戦略自体の再構築が不可避となります。
(2)組織の再構築 ∼「とりあえず現地化」の罠に
リアルな情報を取得・分析し、事
事業戦略上の打ち手実行に適した
組織能力を定義し、現状とのギャッ
プを見える化する
中国人の特性にフィットした運営
Step 3
と人事の仕組み(権限・報酬・評価・
調達)を設計し、組織改革を断行
して高速の PDCAを回し続ける
ディに実行する必要がありますが、今まで勝っ
これらは当たり前のような話でいて、できて
せてしまうケースもあります。
テップ 2 において、現状との人材ギャップが非
この種の議論では、ブレイクスルーを求めて
や、大胆な人材獲得というアプローチも考えら
えず日本人駐在員を減らそう」という、「人」
ることが必要ではないでしょうか。
てきた組織能力がレガシーとなり、転換を遅ら
「とりあえずトップを中国人にしよう」「とりあ
いるケースは少ないように思います。特にス
常に大きい場合には、事業買収による組織基盤
れるでしょう。「転換」にはそれくらい腹を括
の話に焦点が当たりがちです。昨今では「駐在
員数を何人減らしたら高評価」、という K P I が
設定されるケースもあるようです。
一方、筆者がこの記事を書いている 2015 年
ガバナンスの在り方
上半期、ふたつの大きな事件が起きました。4
ここまで、現地視点での戦略・組織の再構築
ングスが、中国人元総経理等による巨額不正を
で転換を目指すに当たって、本社サイドではそ
は、買収戦略で事業拡大を続けていた LIX IL グ
しょうか?
正会計にからみ最大 660 億円の損失計上を発
のようなお答えをお持ちでしょうか。
月には、化学薬品商社江守グループホールディ
について考察してきました。それでは、中国側
きっかけに民事再生手続を申立て。また 6 月に
れをどのようにガバナンスしていけばよいので
ループが、2014 年に買収した中国子会社の不
例えば以下の質問に対して皆様の会社ではど
表。この 2 つの事例からも、
「とりあえず現地化」
のリスクは明らかでしょう。人の現地化と並行
リスク統制が求められる中、いかにして
意思決定スピードを高めているか?
みの設計を実行していくことは不可欠です。
中国事業に対してどこまで(いくらまで)
投資リスクを負えるか?
事業戦略と組織戦略の再構築はどのように進
中国事業の経営を任せる人材の
スペック、評価基準は何か?
提供できる報酬とキャリアは?
して、実態の把握とその見える化、統制の仕組
めていけば良いのでしょうか。筆者は、以下のよう
なステップを踏んだ検討が必要と考えています。
10
中国事業に対する
IGPI RE PORT
左記の3つの質問は、突き詰めると中国固有
るキャッシュフローの現在の価値で投資回収が
モデルをどう設計するべきかという大命題に行
し、オプションバリュー的価値を追求し事業成
値そのもの、すなわちリアルオプションを基本
るかをスピーディに決定する中国式意思決定と
の問題ではなく、グループ全体の海外事業経営
できるだろうか?」という日本式意思決定に対
き着きます。例えば中国事業だけ投資機会の価
功そのものの可能性に賭け、投資するか撤退す
とする経営意思決定の仕組みを作る、中国事業
のロジックの違いともいえます。
チは成り立ちえるのか?こうした問いに対して
IG P I は、中国においても常駐型(ハンズオン)
組織戦略の再構築を足掛かりに、本社における
開発、構造改革、合弁事業の建て直し等をサ
プローチも考えられるのではないでしょうか。
一様に「大苦戦」ではないというのが所感です。
最後に 1 つエピソードをご紹介します。筆者
に事業戦略や組織戦略の再構築を推し進める一
の CFO と話していた時に、次のような話があ
換期でふるいにかけられ、優位性を失っていた
だけ経営者を特別待遇する、といったアプロー
真摯に向き合い、さらには中国事業の事業戦略・
のアプローチで、事業運営の仕組み作り、事業
海外事業経営のガバナンスを再設計していくア
ポートしていますが、中国における日本企業は
既に競争優位にある企業が将来を見据え積極的
が、日本企業と合弁を組んでいた中国大手企業
方、苦戦しながら踏ん張ってきた企業はこの転
りました。
企業は淘汰される… 優勝劣敗が急速に明らか
「何か根本的な思想が違う気がしている。君
OKY(お前が来てやってみろ)という言葉に象
益性に拘って将来のための投資リスクを採らな
いる暇はなく、全社一体での改革に邁進してい
になりつつある状況と言えるでしょう。もはや
たち日本企業は、事業計画の蓋然性、短期の収
徴される本社 vs 現法の不毛な対立に消耗して
い。我々にとっては机上の事業計画や蓋然性な
くべきではないでしょうか。
どどうでもいい。やってみて、これだと思った
ものにいかにスピード感をもって投資判断でき
るかだ。」
合弁企業をめぐっては、日本(本社)側の事業
計画至上主義と中国側経営者の対立というケー
スは多くあります。このCFO は「思想」の違い
と表現しましたが、「 事業計画上想定されてい
IGPI(上海)メンバー 平戸 良周 IGPI(上海)副総経理
キリンビール(現キリンホールディングス)にて原価管理や決算・開示業務を担当。2003年より
6 年間中国現地法人(台湾企業との合弁)に出向、管理部門の責任者として、人事制度改革、ERP
導入、合弁解消と独資移行、グループ共同調達、工場移転等のプロジェクトを推進。日本に帰任後、
税務戦略策定や中国事業再編に従事した後、株式会社リクルートに入社。グループ再編(持株会
社化)、上場準備、国内外の事業再編やアジア・北米での事業開発、中国合弁企業の管理等を担当。
IGPI 参画後は、国内の再生案件や中国関連の複数のプロジェクトに参画し、2014 年 10 月から
上海に常駐。東京大学文学部卒
I G P I R E P O RT
11
Information
Books
新刊・既刊 書籍のご案内
『 選択と捨象』「会社の寿命10 年」時代の企業進化論 (朝日新聞出版)
『IGPI 流ビジネスプランニングの
リアル・ノウハウ』 冨山 和彦(弊社代表取締役 CEO)
(P H P 研究所)
企業は必ず滅びる。どんなに大きな会社
冨山 和彦・経営共創基盤
であっても必ず寿命が来る。それが当た
IGPI 流 リ ア ル・ノ ウ ハ
り前であることを前提にトップは経営
ウシリーズ第 3 弾。現実
し、働き手も備えなければならない―。
経営の最前線にたつ
カネボウ、ダイエー、JAL、、、、産業再
IGPI の 実 体 験 に 基 づ く
生機構の最高執行責任者(COO)とし
ノウハウ、実行を前提と
て、またその後にも、数々の企業再生
したリアルなビジネスプ
の現場に対峙してきた筆者が、「選択と
捨象」が真に意味するところの現実た
6 月19日発刊
る事実を伝え、日本再生の処方箋を示
しています。
序章 栄枯盛衰は企業の宿命
ランニングのエッセンス
4 月21日発刊
をご紹介しています。
第 1 章 「事業計画を作ってほしい」
と言われたら
第 2 章 事業計画策定の重要な要素
第 1 章 会社がつぶれると、なぜ雇用が生まれるのか
―そのとき、コンサルタントは
第 3 章 「偉大な創業者」がいる会社が安泰とは限らない
第 3 章 事業計画の意外な効用
第 2 章 「企業」がなくなっても、「事業」はなくならない
何を進言したか
第 4 章 継続すべき事業かどうかは「市場」が決める
―対外コミュニケーションと
労働力が不足している「地方」には未来がある
第 4 章 勝ち抜きシナリオを探る
第 5 章 地方企業の再生から学ぶー
第 6 章 会社も、人も、進化し続けるものだけが生き残る
健康診断機能
―事業戦略立案のノウハウ
湘南モノレール株式会社が
みちのりグループへ
IGPI 上海 オフィス移転のお知らせ
みちのりホールディングス(IGPI の 100%出資会社、
このたび、IGPI 上海では、業容拡大に伴うオフィス
以下、「みちのり HD」)が、この度湘南モノレール株
式会社の株式の 92%を取得いたしました。
みちのり HD としては、福島交通、茨城交通、岩手県北
バス、関東自動車、会津乗合自動車各交通事業グループ
に、6 つ目の交通事業グループを加えることとなります。
湘南モノレールはみちのり HD の他のグループ会社と広
域連携し、事業の発展により一層取り組んで参ります。
大 船 か ら 湘 南 江 の 島 ま で た っ た 14 分! 湘 南 で の レ
ジャーに、是非湘南モノレールをご利用ください。
スペースの拡充を図るべく下記へ移転いたしました。
益基譜管理諮詢(上海)有限公司
中国上海市延安中路 1440 号阿波羅大厦 309 室
(〒200040)
電話番号 : +86 -(0)21-6133-1818
FAX: +86 -(0)21-6103-1724
お近くにお越しの際は、是非お立ち寄りください。
担当 : 副総経理 平戸
発行:株式会社 経営共創基盤(IGPI) お問合せ:広報/池田・英(はなぶさ)
〒100 - 6617 東京都千代田区丸の内一丁目 9 番 2 号 グラントウキョウサウスタワー 17 階
TEL:03-4562-1111 E-mail:[email protected] News Release
ニュースリリース