2015年4月 №83

公益財団法人 放射線影響協会
2015. 4, No.83
平成27年度 事業計画・収支予算
(骨子)
平成27年度事業計画・収支予算は、平成27年 3 月
3.顕著な成果をあげた研究者の顕彰事業
9 日に開催された理事会及び同年 3 月17日に開催さ
放射線の生物及び環境への影響、放射線の
れた評議員会において承認され、行政庁に届け出ま
医学利用の基礎並びに放射線障害の防止など
した。
放射線科学研究の分野において、顕著な業績
当協会では、本年度はこれに基づき成果の益々の
をあげた研究者を顕彰するため放射線影響研
充実を期し、一層の努力をしてまいる所存です。
究功績賞を平成12年度に設け、これまでに13
名の研究者を顕彰しました。
また、現下の放射線影響研究の重要性に鑑
事 業 計 画
み、一層の研究促進に寄与するため、新進気
Ⅰ 放射線影響に関する知識の普及・啓発及び研
鋭の若手研究者を顕彰する制度として、放射
線影響研究奨励賞を平成18年度に設け、これ
究活動への奨励・助成
までに15名の研究者を顕彰しました。
1.放射線影響に係る知識の普及・啓発
放射線影響に関する国内外の情報の収集・
いずれの賞も我が国の科学技術の進展及び
分析評価を行い、放射線影響に関する知識の
国民保健の増進に寄与することを目的として
普及啓発に努めます。このため「放影協ニュー
おり、本年度も引き続き両賞の顕彰を行いま
ス」を年 4 回発行するとともに、ホームペー
す。
4.国際研究集会参加等のための助成事業
ジの運用等を行います。
放射線影響の分野における国際研究集会へ
2.研究奨励助成金の交付事業
放射線影響に関する研究並びに放射線によ
の参加、国外研究機関への研究者の派遣及び
る障害防止及び放射線の医学的利用に関する
国外研究機関からの研究者の招聘に対する助
研究のうち、国内で行われる将来性のある、
成を行っており、平成 3 年度に開始以来の累
優れた研究に研究奨励助成を行っています。
計は201名となっています。特に、国際研究
本年度も 3 名程度の研究者に助成します。
集会への参加は、若手研究者に大きな自信を
◆◆◆目 次◆◆◆
●平成27年度 事業計画・収支予算(骨子)
…………………………
●平成26年度放射線影響研究功績賞・放射線影響研究奨励賞
及び研究奨励助成金交付研究課題について……………………
●平成26年度放射線影響研究功績賞受賞業績の概要……………
●平成26年度放射線影響研究奨励賞受賞研究の概要(1)
… ………
●平成26年度放射線影響研究奨励賞受賞研究の概要(2)
… ………
1
5
6
9
10
●除染等業務従事者等被ばく線量登録管理制度における
統計資料の公表について(平成23年~ 25年)… ………………… 13
●平成25年度研究奨励助成金交付研究の紹介(5)………………… 22
●放影協開催講座
~原子力事故に伴う、緊急時被ばく状況及び現存被ばく状況に
おける人々の防護についてのICRPの考え方について~… …… 24
●主要日誌…………………………………………………………… 28
与え、今後の研究成果が期待されます。本年
に対しては郵送等によって本事業への理解
度も引き続き 3 名程度の研究者に助成しま
と協力を図り、インフォームド・コンセン
す。また、必要に応じ外国人研究者招へいの
ト及び生活習慣等の調査を実施し、これら
助成を行い、一層の放射線影響研究の発展に
の調査に基づいて調査対象者を設定しま
寄与します。
す。
 がん罹患調査と生死調査
Ⅱ 放射線影響に関する調査研究
調査対象者のがん罹患情報の収集方法、
1.原子力発電施設等放射線業務従事者等に係
収集項目、情報の保管及び管理のためのシ
る疫学的調査
ステム開発について検討します。調査対象
低線量域放射線の健康影響を明らかにする
者の住所地及び生死確認のため、市区町村
ため、国からの委託を受けて、原子力発電施
長から住民票の写し等の交付を受けます。
設等放射線業務従事者等を対象とした疫学的
 事業の理解促進活動
調査を実施します。
低線量域放射線及び疫学調査に関する
本年度は、調査の開始以来25年が経過し新
フォーラムを開催し、調査対象者をはじめ
しい期が始まることを受け、過去の調査から
国民に対し本調査の理解促進を図ります。
でてきた課題の克服のため新しい調査計画に
また、関係する学会や会議などに参加して、
基づき疫学的調査を実施します。個人情報の
調査について報告するとともに、関連情報
保護に留意し調査対象者の生死情報を確認す
の収集及び討議を行います。
るとともに、がん罹患の把握の実行可能性に
2.福島第一原子力発電所緊急作業従事者に対
ついて検討します。また、低線量域放射線の
する疫学的研究への協力
健康影響及び疫学的調査に関する情報の発信
本疫学的研究の統括研究機関からの委託を
を図り、本調査の重要性について放射線業務
受けて、緊急作業従事以前の被ばく線量の取
従事者や関連する機関への認知度を高めるこ
扱いについて調査を行う計画です。
とに努めます。
3.その他
このため、本年度は次の事業を行います。
必要に応じて放射線影響に関する調査研究
 調査計画の策定
等を実施します。
低線量域放射線被ばくによる健康影響を
的確に評価するための調査計画を策定しま
Ⅲ 放射線の防護及び利用に関する調査研究
す。
ICRP勧告等の動向を的確に把握し、日本の
その調査計画においては、調査対象者
ICRP委員、専門家及び学識経験者等が情報及
に対する調査への協力の意思確認(イン
び認識の共有化を図り、国内における考え方が
フォームド・コンセント)及び放射線以外
勧告等の検討に貢献できるように、ICRP調査・
の生活習慣等の情報に基づく調査対象集団
研究連絡会を中心に以下の活動を行います。
の設定方法やその集団の規模について設定
 ICRPの動向調査並びに同勧告、報告等
するとともに、がん罹患調査、生死追跡調
の調査研究を行います。
査、健康影響に関する解析方法等について
 ICRP委員の活動に対する支援を行いま
設定します。
す。
 調査対象者の設定に係る意思確認と生活
 国内外におけるICRP勧告、報告等に関
習慣等の調査
する意見・情報交換を行います。
原子力発電施設等で放射線業務に従事し
 国外の主要なICRP委員など専門家を招
ている作業員等に対しては、原子力発電施
聘して、放射線影響を中心とした講演会を
設等において説明会等を実施し、退職者等
開催するなどして知識の普及に努めます。
-2-
本連絡会は、ICRP委員、会員、学識経験者
度参加事業者による協議会の開催
等により構成される連絡委員会を設置し、国内
原子力登録管理制度及び除染登録管理制
関係各界の意見交換等を積極的に行います。
度は、それぞれの制度の適切な運用を進め
平成27年度は、上記活動の一環として、外部
るため、参加事業者による協議会を開催し
の招聘専門家を交えた専門家間の意見交換の場
ます。本年度は平成26年度の事業報告・決
の新設や昨年度実施した放影協開催講座の開催
算報告及び平成28年度の事業計画・収支予
を検討します。
算並びに登録管理制度の遂行に係る重要事
項について審議します。
Ⅳ 被ばく線量登録管理業務
また、標準統計等資料について、専門委
1.経常業務
員会より報告を受けます。
制度参加事業者との協調を図りつつ、原子
 原子力登録管理制度の推進に関する実務
力放射線業務従事者被ばく線量登録管理制度
担当者会議の開催
(以下
「原子力登録管理制度」という。)、除染
本年度は、推進協議会での審議結果等に
等業務従事者等被ばく線量登録管理制度(以
基づき、必要に応じ原子力登録管理制度の
下
「除染登録管理制度」という。)、RI放射線業
推進に関する実務担当者会議を開催しま
務従事者被ばく線量登録管理制度(以下「RI登
す。
録管理制度」という。)及び放射線管理手帳(以
 放射線管理手帳発効機関に対する説明会
下
「手帳」
という。)制度に係る経常業務を行い
手帳制度を円滑に進めるため、手帳発効
ます。また、放射線関連法令による放射線管
機関を対象とした説明会を必要に応じて東
理記録の指定保存機関として適切な記録保管
京、大阪等で行います。
に努めます。
 原子力事業者、除染事業者との登録管理
2.経常業務を安全・適切に実施するための業務
制度及び手帳制度の運用等に関する協議
経常業務を安全かつ適切に実施するため、
適切な登録管理制度及び手帳制度の運用
本年度は次の業務を行います。
に資するため、手帳の運用が適正に実施さ
 原子力登録管理制度及び除染登録管理制
れているか、また、登録管理制度における
度間のデータの相互利用
個人情報の取扱い等について、センター職
当協会に設置した原子力登録管理制度の
員が各原子力事業所を訪問し実務担当者と
電算機システムと除染登録管理制度の電算
意見交換を行います。
機システムとの連携機能を活用し、両制度
なお、平成27年度は原子力事業所5事業
に登録された従事者の情報を互いのシステ
所程度を対象として実施するほか、除染事
ムを通じて制度参加事業者等へ提供しま
業場についても実施します。
す。
 放射線管理手帳発効機関に対する手帳の
 放射線管理記録の保管方法の変更
運用等に係る指導、助言
各登録管理制度の放射線管理記録につい
手帳の円滑な運用に資するため、「放射
て、従来事業者から引き渡された文書記録
線管理手帳発効機関の設置、運営等に関す
を長期保管のための原本としていたもの
る規定」、「放射線管理手帳 運用要領・記
を、文書記録のスキャン画像から作成した
入要領」
(手帳発効機関用)等に従って手帳
マイクロフィルムを長期保管のための原本
が、適切に運用されているか、また、個人
として位置づける運用に順次変更します。
情報の取り扱いが規程等に基づき適切に運
それに伴い、マイクロフィルムの真正性を
用、管理されているか等について、センター
確認した文書記録は計画的に廃棄します。
職員が各手帳発効事業所を訪問して手帳発
 原子力登録管理制度及び除染登録管理制
行実務者と意見交換を行い、必要な指導、
-3-
助言を行います。
平成27年度収支予算書(損益ベース)
(単位:千円)
なお、平成27年度は20手帳発効事業所程
科目
度を対象として実施します。
予算額
Ⅰ.一般正味財産増減の部
 統計データの解析・評価
1.経常増減の部
原子力登録管理制度に係るデータにつ
(1)経常収益
いて、統計データ評価委員会において、原
基本財産運用収益
会費・事業収益
子力登録管理制度で登録されたデータに
受取会費
2
551,556
7,665
よる公表を目的とした標準統計資料及び
受取補助金等
191,268
参加事業者のための参考統計資料につい
受取負担金
352,623
て、その解析・評価を行います。また、標
雑収益
経常収益計
準統計資料等の有効活用を図るため、これ
50
551,608
(2)経常費用
ら統計資料を原子力事業者等に提供しま
事業費
す。
役員報酬
7,728
また、除染登録管理制度に係るデータに
給料手当
245,791
退職給付費用
ついても、公表すべき統計データ及び公表
通信伝送費
12,355
2,440
の時期等について、除染登録管理制度の参
データ管理費
73,647
加事業者等と協議します。
事務所借料
39,813
諸掛費
82,932
 標準統計資料の公表
減価償却費
原子力事業所及び除染事業場における
事業費計
36,652
501,358
従事者の放射線管理が適切に実施されて
管理費
いること等を一般の方々に理解していた
役員報酬
18,432
だくため、統計資料を協会の「ホームペー
給料手当
29,824
退職給付費用
ジ」
等で公表します。
 剰余金解消策の実施
5,671
諸掛費
45,245
管理費計
99,172
除染登録管理制度においては、参加事業
経常費用計
者からの従事者数に見合う負担金収入を
当期経常増減額
600,530
△ 48,922
2.経常外増減の部
財源としています。平成26年度は、登録従
(1)経常外収益
0
事者数が事前調査に基づく想定を大きく
(2)経常外費用
0
超えたことから剰余金が出る見込みです。
当期経常外増減額
次年度の登録従事者数を精度よく想定
当期一般正味財産増減額
することは難しいのですが、国では平成28
一般正味財産期首残高
150,866
一般正味財産期末残高
101,944
年度までは継続的に除染が実施される計
Ⅱ.指定正味財産増減の部
画となっていることから、平成28年度まで
会費・寄付金収益
の2年間で収支相償を達成できるよう平
一般正味財産への振替額
当期指定正味財産増減額
成27年度及び平成28年度の負担金を見直
0
△ 48,922
3,380
△ 2,785
595
指定正味財産期首残高
10,352
すとともに、状況の変化に応じて適切に業
指定正味財産期末残高
10,947
務を遂行します。
Ⅲ.正味財産期末残高
-4-
112,891
平成26年度
放射線影響研究功績賞・放射線影響研究奨励賞
及び研究奨励助成金交付研究課題について
1.放射線影響研究功績賞
本賞は、放射線の生物及び環境への影響、放射線の医学的利用の基礎ならびに放射線障害の防止など、
放射線科学研究の分野において顕著な業績をあげた者に対して授与し、もって我が国の科学技術の進展及
び国民保健の増進に寄与することを目的としています。
この目的に従って、公募により受賞候補者の推薦を求め、学識経験者からなる本賞選考委員会の選考を経て、
平成26年度は下表のとおり受賞者1名を決定しました。
2.放射線影響研究奨励賞
本賞は、放射線の生物及び環境への影響、放射線の医学的利用の基礎ならびに放射線障害の防止など、
放射線科学研究の分野において活発な研究活動を行い、将来性のある若手研究者に対して本賞を贈呈し、
もって我が国の科学技術の進展及び国民保健の増進に寄与することを目的としています。
この目的に従って、公募により受賞候補者の推薦を求め、学識経験者からなる本賞選考委員会の選考を経て、
平成26年度は下表のとおり受賞者 2 名を決定しました。
受賞者
【放射線影響研究功績賞】
山本 修
(元広島大学アイソトープセン
ター長)
【放射線影響研究奨励賞】
桑原 義和
(東北大学加齢医学研究所助教)
【放射線影響研究奨励賞】
森田 明典
(徳島大学大学院医歯薬学研究部
医用理工学分野教授)
受賞業績
トリチウム水の動物に対する発癌と
寿命短縮の研究
がんの放射線耐性克服に向けた臨床
的放射線耐性細胞の樹立とその解析
p53を標的とする新規放射線防護剤
の開発
桑原義和先生(左から 2 人目)
、山本修先生(左から
3 人目)
、森田明典先生
(左から 4 人目)
3.研究奨励助成金交付研究課題
本事業は、放射線の生物及び環境に及ぼす影響に関する調査研究並びに、放射線による障害の防止及び
放射線の医学的利用に関する調査研究に対して研究奨励助成金を交付し、もって、我が国の科学技術の進
展及び国民保健の増進に寄与することを目的として実施している当協会の研究助成事業の一つです。
この目的に従って、募集(公募)を行い、学識経験者からなる本助成金選考委員会の選考を経て、平成26
年度は下表のとおり 4 つの研究課題に対して研究奨励助成金を交付しました。
1
2
3
4
申請者(所属)
小野田 尚佳
(大阪市立大学)
梶本 剛
(広島大学)
立野 裕幸
(旭川医科大学)
松川 京子
(鹿児島大学)
研究題目
甲状腺乳頭癌に対するRI療法の意義に関する医師主導・多施設共同・全国調
査研究
土壌沈着した放射性核種ごとの外部被ばくの線量換算係数の評価
胎仔被ばくによって不妊となったマウス雄個体の精巣内に存在する生殖細胞
の染色体研究
原子力発電所立地県における保健師の放射線に関するアンケート調査
-5-
平成26年度 放射線影響研究功績賞受賞業績の概要
トリチウム水の動物に対する発癌と寿命短縮の研究
元広島大学アイソトープセンター長 山本 修 日本放射線影響学会の発足(昭和35年)以後、世
めて高くなる理由として水素結合に関係する部位
界的にも放射線の生体に対する影響研究が進展
と関係しない5および6位置の修飾は変異に関係せ
した当時、放射線照射で細胞内のDNAとタンパ
ず、Cの脱アミノ基が変異に関係することを証明
ク質がクロスリンクすることが考えられていた
できた。
が、実際に細胞内でのクロスリンクを証明した
トリチウム影響の文部省の特別科学研究費の研
(昭和42年)
。更にDNAとタンパク質の結合する
究計画が認められ、世界に類のないトリチウム研
化学的機構の解明に成功した。その内容はタンパ
究棟を設計、完成(昭和57年)後、動物実験設備が
ク質を構成するアミノ酸の中の芳香族アミノ酸
整備される前に行ったのがDNAの鎖切断(一重鎖
(ヒスチジン、トリプトファン、フェニルアラニ
切断および二重鎖切断)である。トリチウム水で
ン、チロシン)および含イオウアミノ酸(メチオニ
は酸素効果がないことを知り、また影響度がガン
ン、システイン、シスチン)が、特異的にラジカ
マ線より高いこと(昭和60年)から発生期酸素の生
ルになり、それらが核酸塩基や脂肪酸の二重結合
成の可能性を基に、メシチルオキシドと反応させ、
に結合することを化学的に証明した(昭和50年ま
エポキシドの生成することで、これを証明した
で)
。その間種々のアミノ酸および核酸の崩壊過
(昭和61年)。動物実験設備が整備された段階で動
程および崩壊収率を報告、また“変異、老化、発
物実験を始めた(昭和62年以後)。 3 種類の動物に
癌のDNA酸化説”を提唱した(昭和56年)。他の放
同じ濃度のトリチウム水を飲ませると体内濃度は
射線化学的研究として、DNAおよび核酸塩基に
直線的に増加し、普通水と置き換えると直線的に
放射線が照射されると蛍光強度が増すことを知
を観察した結果、グアニン塩基が桁違いの蛍光
2,5-diamino-4-hydroxy-6-formamidopyrimidine で あ
ることを証明した(平成7年)。
核酸の細胞内の塩基変異の研究を始めて、成果
が出たのが昭和61年である。プリン塩基よりもピ
リミジン塩基の方が崩壊収率は高い。ピリミジン
塩基間では殆ど差がない。一重鎖DNAファージ
のガンマ線での実験である。動物細胞での二重鎖
生体の3H(T)比放射活性(MBq/kg)
物質になることを見出し、その生成物質として
20
3
1.665kBq/dm[空気中]
3
)
(≒37 MBa/dm[飲料水中]
16
マウス
12
平衡点の3H
(T)比放射活性
(MBq/kg)
り、種々の核酸塩基の放射線照射量と強度変化
16
12
8
4
0
200
400
体重(g)
ラット
8
4
モルモット
ではGC→ATトランジションの変異率の高いこと
は知られていたのであるが、G→Aトランジショ
0
4
8
12
16
20
24
HTO投与開始後時間(日)
ンなのかC→Tトランジションなのか不明であっ
た。著者らの研究結果はC→Tトランジションで
図 1 HTO水蒸気の吸入とHTO水を飲料とする場合
の体内における比放射活性変化〔点線は普通水
と置き換えたときの減少変化〕
あることが示された。それでは何故CもTも崩壊
収率は同じであるのにC→Tトランジションが極
-6-
10
(関係曲線は著者によって画き直されている)
発生率(%)
60
1万人当たりの過剰症例数
80
全腫瘍
40
胸腺リンパ腫
20
240ミリグレイ/日
0
5
10
15
線量(グレイ)
4
2
線量効果
0
1
2
重み付けした骨髄線量
(グレイ)
図 5 原爆被曝者における線量と白血病リスクとの関係
〔ABCC 調査1950-2000〕
(Preston他2004)
染色体異常を持つ細胞の割合
(%)
全腫瘍
発生率(%)
線量率効果
0
80
60
40
胸腺リンパ腫
20
20
DS86
6
20
図 2 線量と胸腺リンパ腫の発生率との関係
0↑ZEP
DS02
8
(関係曲線は著者によって画き直されている)
30
線量率効果
20
10
線量効果
40
60
80
100
線量率(ミリグレイ/日)
0
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
重み付けした骨髄線量
(Gy)
図 3 線量率と胸腺リンパ腫の発生率との関係
図 6 原爆被曝者〔広島〕の染色体異常(放影研2013)
80
1.5
寿命短縮率
(%)
過剰相対リスク
(関係曲線は著者によって画き直されている)
1.0
線量率効果
0.5
60
40
20
線量効果
240ミリグレイ/日
0
0
1
2
3
0
重み付けした結腸線量(グレイ)
図 4 原爆被曝者における線量と固形ガンとの関係
〔ABCC 調査1958-1998〕
(Preston他2007)
5
10
15
線量
(グレイ)
図 7 線量から見た寿命短縮
-7-
20
反跳アルファ粒子
60
寿命短縮率
(%)
寿命短縮率(%)
80
40
20
中性子
ZEP
↓
0
-1
陽子
-2
トリチウム原子核
-3
-4
-5
0
1
ベータ粒子
2
線量率
(ミリグレイ/日)
0↑ZEP
20
ベータ崩壊
図10 トリチウム-ベータ崩壊における反跳アルファ粒
子の生成仮説
40
60
80
100
線量率(ミリグレイ/日)
図 8 線量率から見た寿命短縮
と線量率との関係をそれぞれ図 2 と図 3 に示す。
これらの結果と原爆被曝の固形癌、白血病および
染色体異常の結果〈図 4 - 6 〉を比較してみると、
RBE
80
2.0
原爆被曝結果は線量効果ではなく線量率効果であ
寿命短縮率
(%)
ることが理解できる。ただし2Gy以上で線量効果
が出てくることを示唆する。
RBE 3.0
60
動物実験の場合、寿命短縮と線量および線量率
トリチウム水
の関係は前者が直線で後者が放物線となる。理由
RBE 4.2
40
は寿命遺伝子(teromea)のポケット構造にあると考
RBE 6.3
20
られる。トリチウム水とガンマ線の影響を比較〈図
コバルト-60
ガンマ線
9 〉すると、トリチウム水の方が影響が大きい。
ZEP
0
1
10
ZEP
線量率が高くなるほど、RBEすなわち放射線荷重
100
係数は小さくなる。線量率によってRBEが異なる
線量率(ミリグレイ/日)
ということは放射線生物学上、重要事項として認
図 9 トリチウム水とコバルト-60ガンマ線の線量率と
寿命短縮率との関係
識すべきであろう。何故トリチウム水の方がガン
マ線よりも影響が大きくなる理由としてHe3反跳
仮説〈図10〉を提唱した。
減少する。指数関数的には減少しない。また体重
この他、マウス実験で速中性子のⅩ線に対する
が大きいほどプラトーになるまでの時間が長く、
RBEが腸障害よりも造血臓器で低くなることを見
プラトーでの放射活性は低くなる(図 1 )。トリ
出し、その理由付けを骨の化学組成から理論計算
チウム水被曝線量300mGy/dが造血臓器障害死と
的に行った(昭和38-42年)。
腫瘍発生の境界である。腫瘍発生と線量との関係
-8-
平成26年度 放射線影響研究奨励賞受賞研究の概要
(1)
標準的放射線療法である 2Gy/day の X 線に耐性を示す腫瘍の克服
標準的放射線療法である2Gy/dayのX線に耐性を示す腫瘍の克服
標準的放射線療法である 2Gy/day の X 線に耐性を示す腫瘍の克服
国立大学法人 東北大学 加齢医学研究所 腫瘍制御研究部門 病態臓器構築研究分野
国立大学法人 東北大学 加齢医学研究所 腫瘍制御研究部門 病態臓器構築研究分野 国立大学法人 東北大学 加齢医学研究所 腫瘍制御研究部門 病態臓器構築研究分野
桑原 義和 桑原 義和
桑原 義和
はじめに
はじめに
手術療法や化学療法と並ぶがんの三大治
手術療法や化学療法と並ぶがんの三大治療法
1
はじめに
survival
の一つである放射線療法は広く使用されている
療法の一つである放射線療法は広く使用さ
手術療法や化学療法と並ぶがんの三大治
ものの、放射線耐性細胞の存在や出現といった解
れているものの、放射線耐性細胞の存在や
療法の一つである放射線療法は広く使用さ
決すべき課題が今なお残っている。放射線耐性
出現といった解決すべき課題が今なお残っ
に関する研究は広く行われており、様々な因子の
れているものの、放射線耐性細胞の存在や
0.1
ている。放射線耐性に関する研究は広く行
関与が報告されている。しかし、これらの研究は
出現といった解決すべき課題が今なお残っ
0.01
われており、様々な因子の関与が報告され
由来組織の異なる細胞株を比較に用いたり、単回
0
5
10
ている。放射線耐性に関する研究は広く行
Gy
照射により生き残った細胞を解析に用いたりす
ている。しかし、これらの研究は由来組織
われており、様々な因子の関与が報告され
図 2 CRR 細胞は X 線単回照射にも耐性を
るなど、いくつかの問題点があると考えられる。
の異なる細胞株を比較に用いたり、単回照
図 2 CRR細 胞はX線 単 回 照 射にも 耐 性を 示す。
標準的分割放射線療法は、2
Gy/dayのX線を30日
ている。しかし、これらの研究は由来組織
示す。
SAS-R(●; CRR 細胞)及び SAS(○; 親
射により生き残った細胞を解析に用いたり
SAS-R(●; CRR細胞)及びSAS(○; 親株)にX線
図 2 CRR 細胞は X 線単回照射にも耐性を
照射することで行われることから、この線量のX
の異なる細胞株を比較に用いたり、単回照
を単回照射して、X線感受性をmodified
株)に
X 線を単回照射して、X 線感受性をhigh
するなど、いくつかの問題点があると考え
線を照射し続けても増殖する細胞株の樹立に取
示す。
SAS-R(●;
CRR 細胞)及び
SAS(○; 親
density
survival
assay2)で解析した。Mean±
射により生き残った細胞を解析に用いたり
modified
high
density
survival assay2)で解析
られる。標準的分割放射線療法は、2 Gy/day
り組んだ。その結果、複数の細胞株から2Gy/day
S.D.
n=3
株)に X 線を単回照射して、X 線感受性を
するなど、いくつかの問題点があると考え
した。Mean±S.D. n=3
のX線を照射し続けても増殖する臨床的放射線耐
の X 線を 30 日照射することで行われること
modified
high density survival assay2)で解析
られる。標準的分割放射線療法は、
2細胞株を
Gy/day
性(clinically
relevant radioresistant; CRR)
殖するが、その後停止し、さらに照射し続
から、この線量の1)X 線を照射し続けても増
した。Mean±S.D.
n=3
in vivo におけるCRR腫瘍の克服
樹の
立することに
成 功した 。 親 株では2Gy/dayの
X 線を 30 日照射することで行われること
けると全ての細胞が死滅してしまうのに対
殖する細胞株の樹立に取り組んだ。その結
CRR細 胞であるSAS-Rとその 親 株であり 口 腔
X線を10回程度の照射までは増殖するが、その後
殖するが、その後停止し、さらに照射し続
から、この線量の X 線を照射し続けても増
して、CRR 細胞では 2Gy/day の X 線を 60Gy
果、複数の細胞株から
2Gy/day
の
X
線を照
がん由来のSASをヌードマウス背部皮下に移植し
停止し、さらに照射し続けると全ての細胞が死
けると全ての細胞が死滅してしまうのに対
殖する細胞株の樹立に取り組んだ。その結
以上照射し続けても増殖することが分かっ
射し続けても増殖する臨床的放射線耐性
て形成した腫瘍に2Gy/dayのX線を部分照射した。
滅してしまうのに
対して、CRR細 胞では2Gy/day
して、CRR 細胞では 2Gy/day の X 線を 60Gy
果、複数の細胞株から 2Gy/day の X 線を照
のX線を60Gy以上照射し続けても増殖することが
た(図 1)。また、CRR 細胞は X 線単回照射
(clinically relevant radioresistant; CRR)細胞株 その結果、SAS由来の腫瘍は縮小するのに対して
以上照射し続けても増殖することが分かっ
射し続けても増殖する臨床的放射線耐性
SAS-R由来の腫瘍は縮小しないことが分かった3)。
分かった(図 1 )。また、CRR細胞はX線単回照射
にも親株と比べて明らかに耐性を示すこと
を樹立することに成功した 1)。親株では
in vitroの解析からCRR細胞ではX線照射でオート
にも親株と比べて明らかに耐性を示すことも分
た(図
1)。また、CRR 細胞は X 線単回照射
(clinically relevant radioresistant; CRR)細胞株
も分かった(図 2)。
2Gy/day の X 線を 10 回程度の照射までは増
ファジー細胞死が誘導されにくいものの、オート
にも親株と比べて明らかに耐性を示すこと
in vivo における CRR 腫瘍の克服
ファジーを誘導するrapamycin処理によりその克
も分かった(図 2)。
2Gy/day の X 線を 10 回程度の照射までは増
4)
CRR 細胞である SAS-R とその親株であり
。そこで、
服が可能であることが分かっていた
in vivo
における CRR 腫瘍の克服
in
vivoにおいてもオートファジー細胞死の誘導で
150
口腔がん由来の SAS をヌードマウス背部皮
CRR
細胞である SAS-R とその親株であり
CRR腫瘍の克服が可能であると考え、rapamycin
下に移植して形成した腫瘍に 2Gy/day の X
100
の 誘 導 体であるEverolimusを
用いて 解 析を 行 っ
口腔がん由来の
SAS をヌードマウス背部皮
線を部分照射した。その結果、SAS 由来の
50
た。その結果、腫瘍の縮小が見られたものの顕著
下に移植して形成した腫瘍に 2Gy/day の X
腫瘍は縮小するのに対して SAS-R 由来の腫
0
なオートファジーの誘導は見られなかった。組
線を部分照射した。その結果、SAS
由来の
10
20
30 CRR 細
図 10 CRR 細胞の樹立。SAS-R(●;
織学的解析から、SAS-R由来の腫瘍では2Gy/day
瘍は縮小しないことが分かった 3)。in vitro
day
腫瘍は縮小するのに対して
SAS-R 由来の腫
のX線を60Gy照射しても、照射前と組織構築があ
胞)及び SAS(○; 親株)に 2Gy/day の X 線
の解析から CRR 細胞では X 線照射でオート
3)
図 1 CRR胞の
細胞の樹立。SAS-R(●;
CRR胞)及び
細
瘍は縮小しないことが分かった
。in vitro
まり変化しないのに対して、SAS由来の腫瘍では
図 1 CRR細
樹 立。SAS-R(●; CRR細
を照射して、経日的に総細胞数を定量し
ファジー細胞死が誘導されにくいものの、
SAS(○;SAS(○;
親株)に2Gy/dayのX線を照射して、経
巨核細胞や死細胞であるpycnotic
cellが増えてく
胞)及び
親株)に 2Gy/day の X 線
の解析から
CRR 細胞では X 線照射でオート
た。Mean±S.D. n=3
オートファジーを誘導する
rapamycin
処理
日的に総細胞数を定量した。Mean±S.D.
n=3
ることが分かった(図 3 )。また、トマトレクチ
を照射して、経日的に総細胞数を定量し
ファジー細胞死が誘導されにくいものの、
relative number
1)
かった
(図 2 )
。
を樹立することに成功した
。親株では
た。Mean±S.D. n=3
オートファジーを誘導する rapamycin 処理
-9-
SAS-R
SAS
2Gy/day の X 線照射と Everolimus の併用に
CRR細胞の今後
より血管内皮細胞にアポトーシスが誘導さ
CRR細胞は、栄養飢餓に感受性が高いことが分
0 Gy
れ、引き続き血栓が形成されたのち、腫瘍
かってきたため、今後、代謝経路に焦点を絞った
研究を始めた。
細胞が飢餓状態に陥りネクローシスを起こ
すことで腫瘍が縮小することが分かった。
謝辞
本研究を進めるにあたりお世話になった東北大
CRR
細胞は、栄養飢餓に感受性が高いこ
学加齢医学研究所・病態臓器構築研究分野の福本
30 Gy
CRR 細胞の今後
とが分かってきたため、今後、代謝経路に
学教授及び同分野の皆様に御礼申し上げます。本
研究は、日本学術振興会科学研究費補助金及び公
焦点を絞った研究を始めた。
益財団法人放射線影響協会研究奨励助成金の助成
60 Gy
謝辞
を受けて行われました。
本研究を進めるにあたりお世話になった
東北大学加齢医学研究所・病態臓器構築研
参考文献
図 3 CRR腫瘍の組織学的解析。SAS-R由来の腫瘍
図 3 CRR 腫瘍の組織学的解析。SAS-R
では2Gy/dayのX線を60Gy照 射しても 組 織 構
由来の腫瘍では 2Gy/day の X 線を 60Gy
築に大きな変化は見られないが、SAS由来の
照射しても組織構築に大きな変化は見
腫瘍では巨核細胞やpycnotic cell (矢じり) が
多数みられ、結合組織が増えているのが分か
られないが、SAS
由来の腫瘍では巨核
る。
細胞や pycnotic cell (矢じり) が多数み
られ、結合組織が増えているのが分か
ンを用いた血管内皮細胞の可視化による解析か
る。
らSAS-R腫瘍では血管新生が盛んであり、SAS由
によりその克服が可能であることが分かっ
来の腫瘍に比べて血管密度の高いことが分かっ
た。電子顕微鏡による解析から、2Gy/dayのX線
ていた 4)。そこで、in vivo においてもオー
照射とEverolimusの併用により血管内皮細胞にア
トファジー細胞死の誘導で CRR 腫瘍の克
ポトーシスが誘導され、引き続き血栓が形成され
服が可能であると考え、rapamycin の誘導体
たのち、腫瘍細胞が飢餓状態に陥りネクローシス
である Everolimus を用いて解析を行った。
を起こすことで腫瘍が縮小することが分かった。
1)Kuwahara Y et al. Clinically relevant radioresistant
究分野の福本学教授及び同分野の皆様に御
cells efficiently repair DNA double-strand breaks
礼申し上げます。本研究は、日本学術振興
induced by X-rays. Cancer Sci 2009; 100:747-52.
2)Kuwahara Y et al. The modified high-density
響協会研究奨励助成金の助成を受けて行わ
survival assay is the useful tool to predict the
れました。
effectiveness of fractionated radiation exposure. J
Radiat Res 2010; 51:297-302.
参考文献
al. Targeting
3)Kuwahara
of tumor endothelial
1) Kuwahara Y etYal.etClinically
relevant
会科学研究費補助金及び財団法人放射線影
cells combining 2 Gy/day of X-ray with Everolimus
is the effective modality for overcoming clinically
double-strand
inducedtumors.
by X-rays.
Cancer Med 2014;
relevantbreaks
radioresistant
Cancer3:310-21.
Sci 2009; 100:747-52.
al.modified
4)Kuwahara
Y et
Enhancement of autophagy
2) Kuwahara
Y et al.
The
is a potential modality for tumors refractory to
high-density
survival assay is the useful tool to
radiotherapy. Cell Death Dis 2011; 2:e177.
radioresistant cells efficiently repair DNA
その結果、腫瘍の縮小が見られたものの顕
predict the effectiveness of fractionated
著なオートファジーの誘導は見られなかっ
radiation exposure. J Radiat Res 2010;
51:297-302.
た。組織学的解析から、SAS-R
由来の腫瘍
平成26年度 放射線影響研究奨励賞受賞研究の概要
(2)
3)
Kuwahara
Y
et
al.
Targeting
of tumor
では 2Gy/day の X 線を 60Gy 照射しても、
照射前と組織構築があまり変化しないのに
endothelial cells combining 2 Gy/day of X-ray
with Everolimus is the effective modality for
p53を標的とする新規放射線防護剤の開発
対して、SAS 由来の腫瘍では巨核細胞や死
overcoming clinically relevant radioresistant
細胞である pycnotic cell が増えてくること
徳島大学 大学院医歯薬学研究部 医用理工学分野 が分かった。また、トマトレクチンを用い
tumors. Cancer Med 2014; 3:310-21.
た血管内皮細胞の可視化による解析から
4) Kuwahara Y et al. Enhancement of
SAS-R 腫瘍では血管新生が盛んであり、
はじめに
SAS 由来の腫瘍に比べて血管密度の高いこ
p53阻害剤は、造血系組織に代表される放射線
高感受性組織の被ばく後の
「過剰な細胞死(アポ
とが分かった。電子顕微鏡による解析から、
教授 森田 明典 autophagy is a potential modality for tumors
のアポトーシスを選択的に抑制し、p53機能を喪
refractory
to radiotherapy. Cell Death Dis 2011;
失しているがん細胞は防護しないため、放射線被
2:e177.
ばく事故での救命への応用だけでなく、その正常
組織選択性から放射線治療の線量制限(耐容線量)
トーシス)
」の原因となるp53を、一過的に抑制す
ることで急性障害を軽減する新しいタイプの放射
線防護剤である。正常なp53機能をもつ正常細胞
や、抗がん剤の投与量制限を克服する副作用軽減
剤としての応用が期待されている。
-10-
研究概要
p53 を標的とする新規放射線防護剤の開発
も、p53依存性アポトーシスを抑制できたとの報
我々は、放射線誘発アポトーシスの分子機構の
徳島大学 大学院医歯薬学研究部 医用理工学分野
告はなく、その幅広いキレート毒性の影響が懸念
解明とそれに基づく新しいタイプの放射線防護剤
教授
森田
明典
された。そこで我々は、まずp53依存性アポトー
の開発を目指して研究を行ってきた。この取り組
シスを抑制し、細胞毒性が少なく、なおかつp53
みの最初の成果として,p53の転写依存性・非依
変性作用を有する亜鉛キレート化剤(3~6座配位
存性両経路に作用し,骨髄死から腸死への移行線
はじめに
子)の探索を進め、その内の 1 つBispicen(N,N'-Bis
量域である12 Gyの全身被ばくからマウスを防護
p53
阻害剤は、
造血系組織に代表される放射線高感受性組織の被ばく後の
「過剰な細胞死(アポトーシス)
」
(2-pyridylmethyl)-1,2-ethanediamine)に、
優れた
する新規放射線防護剤としてオルトバナジン酸ナ
4)
1,2)
p53阻害効果、アポトーシス抑制効果を見出した 。
。
トリウム
(バナデート)
の原因となる
p53 を見出した
を一過的に抑制することで急性障害を軽減する新しいタイプの放射線防護剤である。正
Bispicenは、一部の亜鉛キレート化剤がp53転写
バナデート効果の発見は、薬理的なp53阻害に
常な p53 機能をもつ正常細胞のアポトーシスを選択的に抑制し、p53 機能を喪失しているがん細胞は防護し
依存性・非依存性の両アポトーシス経路を抑制す
よる放射線防護効果を十分に引き出すためには、
ないため、放射線被ばく事故での救命への応用だけでなく、その正常組織選択性から放射線治療の線量制
る阻害剤として機能し、培養細胞のp53依存性ア
p53両経路の遮断が有効であることを示しており、
ポトーシスを抑制することを示した初めての化合
今後の防護剤開発の重要な指針となることが期待
限(耐容線量)や、抗がん剤の投与量制限を克服する副作用軽減剤としての応用が期待されている。
物である。しかしながら、全身照射マウスを用い
された。また、バナデートは防護剤としてだけで
我々は、放射線誘発アポトーシスの分子機構の解明とそれに基づく新しいタイプの放射線防護剤の開発
た放射線防護活性試験では、キレート毒性による
なく、被ばく
「後」投与でも有効な放射線障害緩和
を目指して研究を行ってきた。この取り組みの最初の成果として,p53
の転写依存性・非依存性両経路に作
ものと考えられる用量制限毒性のため、
Bispicenは
剤としても
機 能することが 後の 研 究で 明らかと
3)
。
なった
用し,骨髄死から腸死への移行線量域である
12 Gy 全身照射マウスに対して防護効果を示さなかった。
の全身被ばくからマウスを防護する新規放射線防護剤
1,2)
としてオルトバナジン酸ナトリウム(バナデート)を見出した
。
p53の亜鉛結合部位を標的とする新規p53阻害剤
2座 配 位 子である8-キ
ノ リ ノ ー ル 誘 導 体による
の開発バナデート効果の発見は、薬理的な p53 阻害による放射線防護効果を十分に引き出すためには、
p53制御
p53 両経
p53阻害剤の中で最も高い放射線防護効果を示
そこで我々は、1つの亜鉛イオンに対して2つの
路の遮断が有効であることを示しており、今後の防護剤開発の重要な指針となることが期待された。また、
すバナデートの強力なp53作用について、我々は
分子で錯体形成する2座配位性の8-キノリノール
バナデートは防護剤としてだけでなく、被ばく「後」投与でも有効な放射線障害緩和剤としても機能する
バナデートが有するp53変性作用に注目した。こ
(8-HQ)に着目した。2座配位性のキレート化剤は
のp53の変性・失活作用は、p53分子内の亜鉛イオ
一般にキレート活性が低く、細胞や生体に対する
ことが後の研究で明らかとなった3)。
ン結合部位(図 1 )に配位する亜鉛イオンの解離
毒性が低いことが期待された。合成された数十種
や他の金属イオンとの置換によって生じることが
の8-HQ誘導体のp53依存性放射線誘発アポトーシ
p53 の亜鉛結合部位を標的とする新規 p53 阻害剤の開発
知られていた。
ス抑制効果を検討したところ、いくつかの高活
5)
。その内の1つ、AS-2
(5,7 このことから、亜鉛キレート化剤が第一の候
性化合物を発見したp53
p53 阻害剤の中で最も高い放射線防護効果を示すバナデートの強力な
作用について、我々はバナデー
bis(N-methylaminosulfonyl)-8-hydroxyquinaldine)
補として 考えられたが、 これまでの 報 告では 亜
トが有する p53 変性作用に注目した。この p53 の変性・失活作用は、p53 分子内の亜鉛イオン結合部位(図
は転写非依存的にp53依存性アポトーシスを阻害
鉛キレート化剤でp53を失活させることはできて
1)に配位する亜鉛イオンの解離や他の金属イオンとの置換によって生じることが知られていた。
図 1図
p53の亜鉛結合部位
1 p53 の亜鉛結合部位
Protein Data Bank(PDB code: 1TUP; Science 265, 346-355, 1994)の構造データを基に作成した。 3 つのシステインと
Protein Data Bank (PDB code: 1TUP; Science 265, 346-355,亜鉛結合部位はDNA結合面に位置する。
1994)の構造データを基に作成した。3
1つのヒスチジンから成るZincフィンガー様の亜鉛結合部位を拡大図示した。
-11-
図2 これまでに報告したバナデート、Bispicen、AS-2 の p53 経路における位置付け
図 2 これまでに報告したバナデート、Bispicen、AS-2のp53経路における位置付け
謝辞
してミトコンドリアの機能不全を防ぐことがわか
参考文献
研究にあたりご助言・ご指導いただきました鈴木紀夫先生(東京大学名誉教授)
り、骨髄死相当線量である8
Gyの放射線被ばくか
1.A. Morita, et al., Sodium 、細井義夫先生(東北大
orthovanadate
6)
らマウスを防護した
。
suppresses
DNA damage-induced caspase
学)、および共同研究者である青木伸先生(東京理科大学)
、王冰先生、田中薫先生(放射線医学総合研究
以上のように、放射線誘発アポトーシスを抑制
activation and apoptosis by inactivating p53. Cell
所)、これまでに私が在籍した東京大学、東京理科大学、広島大学、徳島大学の所属研究室の皆様に心より
Death Differ. 13, 499-511, 2006.
するバナデート効果の解明を端緒に、p53制御の
御礼申し上げます。本研究の一部は、JSPS 科研費
24689050
の助成を受けたものです。
核心となるp53分子内の亜鉛イオン結合部位を標
2.A.
Morita,
et al., Sodium orthovanadate inhibits
的とした分子標的薬の開発が順調に推移、発展し
p53-mediated apoptosis. Cancer Res. 70, 257ている状況にある(図 2 )。AS-2の他、p53機能を
265, 2010.
参考文献
制御する新たな8-HQ誘導体が現在も見つかって
3.B. Wang, et al., Sodium orthovanadate (vanadate),
1. A. Morita, et al., Sodium orthovanadate suppresses
DNA damage-induced
caspase
activation
and
おり、8-HQ誘導体によるp53制御の有効性が示さ
a potent mitigator
of radiation-induced
damage
to
れつつある。今後のさらなる展開が期待される。
the hematopoietic
system2006.
in mice. J. Radiat. Res.
apoptosis by inactivating p53. Cell Death Differ.
13, 499-511,
54, 620-629, 2013.
2. A. Morita, et al., Sodium orthovanadate inhibits p53-mediated apoptosis. Cancer Res. 70, 257-265,
謝辞
4.A. Morita, et al., Evaluation of Zinc (II) chelators
2010.
研究にあたりご助言・ご指導いただきました鈴
for inhibiting p53-mediated apoptosis. Oncotarget
木紀夫先生
、細井義夫先生
(東 (vanadate),
4, 2439-2450,
3.(東京大学名誉教授)
B. Wang, et al., Sodium
orthovanadate
a potent 2013.
mitigator of radiation-induced damage
北大学)
、および共同研究者である青木伸先生(東
5.S. Ariyasu, et al., Design and synthesis of
to
the hematopoietic system
in mice. J. Radiat.
Res. 54, 620-629,radioprotective
2013.
京理科大学)
、王冰先生、田中薫先生
(放射線医学
8-hydroxyquinoline-based
agents.
Bioorg. Med.for
Chem.
総合研究所)
、これまでに私が在籍した東京大学、
22, 3891-3905,
2014.
4. A.
Morita, et al., Evaluation of Zinc (II) chelators
inhibiting
p53-mediated
apoptosis.
東京理科大学、広島大学、徳島大学の所属研究室
6.A. Morita, et al., AS-2, a novel inhibitor of
Oncotarget 4, 2439-2450, 2013.
の皆様に心より御礼申し上げます。本研究の一部
p53-dependent apoptosis, prevents apoptotic
5.
S.
Ariyasu,
et
al.
,
Design
and
synthesis
of
8-hydroxyquinoline-based
は、JSPS科 研 費24689050の 助 成を 受けたもので
mitochondrial dysfunction inradioprotective
a transcription- agents.
す。
independent manner and protects mice from
Bioorg. Med. Chem. 22, 3891-3905, 2014.
a lethal dose of ionizing radiation. Biochem.
6. A. Morita, et al., AS-2, a novel inhibitor of p53-dependent apoptosis, prevents apoptotic
Biophys. Res. Commun. 450, 1498-1504, 2014.
mitochondrial dysfunction in a transcription-independent manner and protects mice from a lethal
dose of ionizing radiation. Biochem. Biophys. Res. Commun. 450, 1498-1504, 2014.
-12-
除染等業務従事者等被ばく線量登録管理制度における統計資料の公表について
(平成23年~ 25年)
放射線従事者中央登録センター 1.統計資料の公表について
(公財)放射線影響協会放射線従事者中央登録
染等業務従事者等の男女別線量」、「除染等業
務従事者等の年間関係工事件名数及び線量」
センター(以下「中央登録センター」という。)は、
「除染等業務従事者等被ばく線量登録管理制度
(以下「除染登録管理制度」という。)」に加入する
及び「除染等業務従事者等の 2 年間関係工事
件名数及び線量」の集計については、除染電
離則の年線量限度及び 5 年間線量限度の管理
除染等事業者の事業場に従事する除染等業務従
事者等一人ひとりに中央登録番号を付与して登
録し、その者の被ばく線量(以下「線量」という。)
に対応しています。これら統計資料では、厚
生労働省の除染電離則ガイドライン(注)に示
された線量限度管理に係わる線量の扱い(平
を一元的に登録管理しています。これにより、除
染等従事者等が複数の事業場を移動して除染等
事業に従事した場合であっても、除染登録管理制
度に参加し、線量データ登録を行った除染等事業
者等の全事業場における当該従事者の線量を正
確に把握することが可能です。 中央登録センターでは、登録されたデータを基
に、除染等事業場における除染等業務従事者等の
放射線管理状況を示す統計資料を公表します。
今回は、除染登録管理制度に登録された平成23
年、平成24年及び平成25年に実施された除染等業
務等の線量データに基づく統計資料を公表しま
す。なお、当協会のホームページには、今回掲載
した線量統計の他、速報値として四半期毎の線量
分布
(平成23年、平成24年、平成25年、平成26年)
成23年 3 月11日から平成23年12月31日までに
受けた線量は、平成24年 1 月 1 日に受けた線
量とみなして合算すること)に従い、平成24
年の統計に加えて統計資料の作成を行いまし
た。
なお、「除染等業務従事者等の地域別線量」
は年間及び 5 年間の線量限度の管理に対応す
る資料ではないため、上記ガイドラインの線
量の扱いには従わず、それぞれの年の実績を
示しています。
(注):「除染等業務に従事する労働者の放射
線障害防止のためのガイドライン」 及び
「特定線量下業務に従事する労働者の放射
線障害防止のためのガイドライン」
(4)集計時点において除染登録管理システムに
を掲載しておりますので合わせてご覧ください。
2.データの集計方法
「除染登録管理制度」に加入している除染等事
線量データが登録されたもののうち、該当年
の 1 月 1 日から12月31日までの線量が対象と
なります。
年 線 量:除染等業務従事者等の関係事業
業者の除染等事業場における除染等従事者等の
線量を、中央登録センターが集計したものです。
場における線量を、暦年( 1 月
1 日から12月31日)で集計しま
した。
5 年間線量: 5 年線量限度の管理のため法律
が定めた 5 年間の線量をいい、
平成24年 1 月 1 日を始期とし、
(1)本統計資料は、平成27年 3 月30日現在の除
染特別地域内における除染等業務(「土壌の
除染等の業務」、
「廃棄物収集等業務」、
「特定
汚染土壌等取扱業務」)、特定線量下業務及び
以降 5 年毎の線量を集計するも
のです。
除染特別地域内外での事故由来廃棄物等の
処分の業務に関する事業を実施する事業者
からの登録データに基づき作成したもので
す。
(2)集計した線量は、外部被ばくと内部被ばく
が合算された実効線量です。
経 過 線 量:法令に定められた 5 年間の途中
の年度までの線量を集計したも
のです。(今回は平成24年、平
成25年の 2 年間の線量を集計し
(3)
「除染等業務従事者等の年齢別線量」、「除
ています。)
-13-
(4)
「最大線量」、「合計線量」、「平均線量」、及
び
「%」
は、少数点第 2 以下を四捨五入しまし
3.除染等業務従事者等の線量限度
除染等業務従事者等の線量限度は、 5 年間に
た。このため、表中の合計が合わない場合や
100.0%にならない場合があります。
(5)
「除染等業務従事者等の年齢」は、平成24年
つき100ミリシーベルト及び 1 年間につき50ミリ
シーベルト〔女子(妊娠不能と診断された者、妊娠
の意思のないもの及び妊娠中のものを除く)につ
統計は平成24年12月31日現在、平成25年統計
は平成25年12月31日現在の満年齢としました
(6)統計資料の作成においては、中央登録番号
いては、前述の規定のほか、 3 月間につき 5 ミリ
シーベルト〕です。
(個人識別番号)を基に名寄せされた個人の線
量を集計しました。「地域別線量」の統計以外
は、集計の期間(年間、 5 年間)で名寄せされ
【用語の定義】
(1)除染等業務従事者等:除染等業務に従事する
労働者、特定線量下業務に従事する労働者及
た統計となっていますが、「地域別線量」の統
計は地域ごとに名寄せされた集計を行ってお
り、 1 年間に 2 つの地域で作業をした従事者
は 2 名と数えています。
び事故由来廃棄物等の処分の業務に従事する
労働者
(2)除染等事業者:除染等業務又は特定線量下業
務又は事故由来廃棄物等の処分の業務を行う
(7)年間関係工事件名数は、除染等業務従事者
等が統計をまとめた期間(暦年)内に従事した
除染等の工事件名の数を示します。
事業の事業者
(3)除染電離則:東日本大震災により生じた放射
性物質により汚染された土壌等を除染するた
めの業務等に係る電離放射線障害防止規則
(平成23 年厚生労働省令第152 号)
4.平成24年線量統計(平成23年地域別統計を含みます)
1.除染等業務従事者等の年齢別線量[平成24年]
線量(mSv)
年齢(歳)
18 ~ 19
20 ~ 24
25 ~ 29
30 ~ 34
35 ~ 39
40 ~ 44
45 ~ 49
50 ~ 54
55 ~ 59
60 ~ 64
65 ~ 69
70以上
1以下
126
631
631
710
861
1,065
1,105
1,225
1,470
1,497
498
170
除染等業務従事者数(人)
1を超え 2を超え 3を超え 4を超え 5を超え 7.5を超え 10を超え 15を超え 20を
2以下
3以下
4以下
5以下 7.5以下 10以下 15以下 20以下 超える
4
0
1
1
0
0
0
0
0
27
7
2
1
7
1
0
0
0
38
3
5
4
6
0
0
0
0
37
7
13
4
7
2
3
0
0
49
13
10
7
8
2
2
0
0
69
16
12
6
7
1
3
0
0
59
17
11
4
11
2
3
0
0
93
17
15
11
18
5
8
0
0
99
18
12
10
19
5
4
0
0
110
16
17
15
11
9
7
0
0
20
7
4
3
5
1
1
0
0
11
1
1
0
3
0
1
0
0
合計人数
9,989
616
122
103
66
102
28
32
0
0
(%)
(90.3) (5.6) (1.1) (0.9) (0.6) (0.9) (0.3) (0.3) (0.0) (0.0)
合計線量
2,188.1
846.1
296.5
362.2
299.4
611.1
251.0
371.6
0.0
0.0
(人・mSv)
線 量
合計
平均
最大
(人・mSv) (mSv) (mSv)
132 (1.2)
32.9
0.2
4.6
676 (6.1)
237.0
0.4
9.8
687 (6.2)
251.1
0.4
5.9
783 (7.1)
373.1
0.5
11.3
952 (8.6)
437.6
0.5
13.0
1,179 (10.7)
505.7
0.4
11.2
572.9
0.5
13.4
1,212 (11.0)
1,392 (12.6)
787.7
0.6
12.7
1,637 (14.8)
792.3
0.5
13.9
898.3
0.5
12.1
1,682 (15.2)
539 (4.9)
246.2
0.5
12.0
187 (1.7)
91.1
0.5
10.8
計
人(%)
11,058(100.0)
-
-
-
-
5,226.0
0.5
13.9
[表の見方]
・厚生労働省の除染電離則ガイドラインに示された線量限度管理に係わる線量の扱いに従い、平成23年の線量を平成24年の
線量に合算しています。
・例えば、平成24年集計における年齢「25 ~ 29」の線量「 1 を超え 2 以下」の「38」という値は、平成24年の 1 年間に25 ~ 29歳
の者で除染等業務を行い、その線量が1mSvを超え2mSv以下であった者が38人であったことを示します。
・平成27年 3 月30日現在の登録データを基に集計しています。
-14-
(公表データ)
2.除染等業務従事者等の年齢別線量[平成24年]
2.除染等業務従事者等の年齢別線量[平成24年]
2000
10mSvを超える
5mSvを超え10mSv以下
1mSvを超え5mSv以下
1mSv以下
1500
従
事
1000
者
数
(
500
)
人
0
年
齢
(歳)
*この図は
「除染等業務従事者等の年齢別線量[平成24年]」の表を図化したものです。
* この図は「除染等業務従事者等の年齢別線量[平成24年]」の表を図化したものです。
3.除染等業務従事者等の男女別線量[平成24年]
性別
線量(mSv)
男性
人(%)
女性
人
(%)
計
人
(%)
合計線量
人・mSv
(%)
(90.1)
9,729 260 (98.5)
9,989 (90.3)
2,188.1 (41.9)
1を超え2以下
612 (5.7)
4 (1.5)
616 (5.6)
(16.2)
846.1 2を超え3以下
122 (1.1)
0 (0.0)
122 (1.1)
296.5 (5.7)
3を超え4以下
103 (1.0)
0 (0.0)
103 (0.9)
362.0 (6.9)
4を超え5以下
66 (0.6)
0 (0.0)
66 (0.6)
299.4 (5.7)
5を超え7.5以下
102 (0.9)
0 (0.0)
102 (0.9)
(11.7)
611.1 7.5を超え10以下
28 (0.3)
0 (0.0)
28 (0.3)
251.0 (4.8)
10を超え15以下
32 (0.3)
0 (0.0)
32 (0.3)
371.6 (7.1)
15を超え20以下
0 (0.0)
0 (0.0)
0 (0.0)
0.0 (0.0)
20を超える
0 (0.0)
0 (0.0)
0 (0.0)
0.0 (0.0)
合計人数(%)
10,794(100.0)
264
(100.0)
11,058
(100.0)
5,226.0
(100.0)
男女全体の割合人(%)
(97.6)
10,794 264 (2.4)
1以下
平均線量(mSv)
合計線量(人・mSv)
最大線量(mSv)
0.5
0.2
0.5
5,178.9
47.1
5,226.0
13.9
1.4
13.9
[表の見方]
・厚生労働省の除染電離則ガイドラインに示された線量限度管理に係わる線量の扱いに従い、平成23年の線量を平成24年
の線量に合算しています。
・例えば、平成24年集計における「男性」の線量「 1 を超え2以下」
の
「612」
という値は、平成24年の 1 年間に除染等業務を行っ
た男性で、その線量が1mSvを超え2mSv以下であった者が612人であったことを示します。
・平成27年 3 月30日現在の登録データを基に集計しています。
-15-
4.除染等業務従事者等の年間関係工事件名数及び線量[平成24年]
年間関係
工事件名数
1
2
3
4
5
計
人
(%)
6以上
年間線量(mSv)
9,300
598
75
16
0
0
(90.3)
9,989 1を超え5以下
705
147
34
19
2
0
907 (8.2)
5を超え10以下
102
27
1
0
0
0
130 (1.2)
10を超え15以下
24
8
0
0
0
0
32 (0.3)
15を超え20以下
0
0
0
0
0
0
0 (0.0)
20を超え25以下
0
0
0
0
0
0
0 (0.0)
25を超え30以下
0
0
0
0
0
0
0 (0.0)
30を超え40以下
0
0
0
0
0
0
0 (0.0)
40を超え50以下
0
0
0
0
0
0
0 (0.0)
50を超える
0
0
0
0
0
0
0 (0.0)
1以下
10,131
(91.6)
合計人数(%)
平均線量(mSv)
780
(7.1)
0.4
1.0
110
(1.0)
1.0
35
(0.3)
1.5
2
(0.0)
0
(0.0)
2.2
11,058
(100.0)
0.0
0.5
[表の見方]
・厚生労働省の除染電離則ガイドラインに示された線量限度管理に係わる線量の扱いに従い、平成23年の線量を平成24年の
線量に合算しています。
・例えば、平成24年集計における年間関係工事件名数「3」の線量「1を超え5以下」の「34」という値は、平成24年の1年間に3工
事件名の除染等業務を行い、その線量が1mSvを超え5mSv以下であった者が34人であったことを示します。
・平成27年3月30日現在の登録データを基に集計しています。
(公表データ) 5. 除染等業務従事者等の年間関係工事件名数及び線量
5.除染等業務従事者等の年間関係工事件名数及び線量に対する
に対する従事者構成比[平成24年]
従事者構成比[平成24年]
100%
90%
凡例
10mSvを超える
80%
5mSvを超え10mSv以下
従
事
者
構
成
比
70%
1mSvを超え5mSv以下
60%
1mSv以下
50%
40%
30%
20%
10%
0%
1
2
3
4
5以上
年間関係工事件名数
*この図は
「除染等業務従事者等の年間関係工事件名数及び線量
[平成24年]
」
の表を基に図化したものです。
*
この図は「除染等業務従事者等の年間関係工事件名数及び線量
[平成24年]」の表を基に図化したものです。
-16-
6.除染等業務従事者等の地域別線量[平成23年]
市町村
年間線量(mSv)
1以下
1を超え2以下
2を超え3以下
3を超え4以下
4を超え5以下
5を超え7.5以下
7.5を超え10以下
10を超え15以下
15を超え20以下
20を超える
地域A
地域B
224
2
0
0
0
0
0
0
0
0
合計人数(%)
平均線量(mSv)
合計線量(人・mSv)
226(18.6)
0.3
72.7
地域C
460
0
0
0
0
0
0
0
0
0
460
(37.8)
0.1
25.8
その他
494
35
1
0
0
0
0
0
0
0
530
(43.5)
0.3
172.1
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
(0.1)
1
0.1
0.1
計
人
(%)
1,179 (96.9)
37 (3.0)
1 (0.1)
0 (0.0)
0 (0.0)
0 (0.0)
0 (0.0)
0 (0.0)
0 (0.0)
0 (0.0)
1,217
(100.0)
0.2
270.7
[表の見方]
・平成23年に除染等業務従事者等が除染事業に従事した市町村を4区分に取りまとめて集計しています。
・平成23年は、複数の市町村にまたがる除染実証事業の工事が含まれていることから、除染実証事業の区分で取り纏めて
集計しています。この区分は、平成25年の統計と異なります。
地域A:飯館村、川俣町、南相馬市、浪江町 地域B:葛尾村、田村市、双葉町、富岡町
地域C:川内村、楢葉町、広野町、大熊町 その他:除染特別地域外の市町村
※ 平成25年の統計では、大熊町が地域Bに、富岡町が地域Cに区分され、広野町はその他に区分されています。
・例えば、平成23年集計における「地域C」の線量「1を超え2以下」の「35」という値は、平成23年の 1 年間に地域Cで除染等
業務を行い、その線量が1mSvを超え2mSv以下であった者が35人であったことを示します。
・平成27年 3 月30日現在の登録データを基に集計しています。
[留意点]
・除染等業務従事者等の作業時間、作業日数等は考慮されていませんので、平均線量が必ずしも地域の空間線量率を反映
したものとはなっていません。
・福島県の空間線量率につきましては、原子力規制委員会ホームページ「放射線モニタリング情報」及び福島県ホームペー
ジ「空間線量モニタリング結果情報」をご確認ください。
7.除染等業務従事者等の地域別線量平成24年]
市町村
年間線量(mSv)
1以下
1を超え2以下
2を超え3以下
3を超え4以下
4を超え5以下
5を超え7.5以下
7.5を超え10以下
10を超え15以下
15を超え20以下
20を超える
合計人数(%)
平均線量(mSv)
合計線量(人・mSv)
地域A
2,023
416
55
30
21
27
4
2
0
0
2,578(23.4)
0.8
1,963.9
地域B
2,830
71
24
9
1
0
0
0
0
0
2,935
(26.6)
0.2
732.4
地域C
5,168
63
48
67
35
71
27
22
0
0
5,501
(49.9)
0.4
2,259.1
その他
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
(0.0)
0
0.0
0.0
計
人
(%)
10,021 (91.0)
550 (5.0)
127 (1.2)
106 (1.0)
57 (0.5)
98 (0.9)
31 (0.3)
24 (0.2)
0 (0.0)
0 (0.0)
11,014
(100.0)
0.4
4,955.3
[表の見方]
・平成24年に除染等業務従事者等が除染事業に従事した市町村を 4 区分に取りまとめて集計しています。
・平成24年は、複数の市町村にまたがる除染実証事業の工事が含まれていることから、除染実証事業の区分で取り纏めて
集計しています。この区分は、平成25年の統計と異なります。
地域A:飯館村、川俣町、南相馬市、浪江町 地域B:葛尾村、田村市、双葉町、富岡町
地域C:川内村、楢葉町、広野町、大熊町 その他:除染特別地域外の市町村
※ 平成25年の統計では、富岡町が地域Cに、大熊町が地域Bに区分され、広野町はその他に区分されています。
・例えば、平成24年集計における「地域C」の線量「1を超え2以下」の「63」という値は、平成24年の 1 年間に地域Cで除染等
業務を行い、その線量が1mSvを超え2mSv以下であった者が63人であったことを示します。
・平成27年 3 月30日現在の登録データを基に集計しています。
[留意点]
・除染等業務従事者等の作業時間、作業日数等は考慮されていませんので、平均線量が必ずしも地域の空間線量率を反映
したものとはなっていません。
・福島県の空間線量率につきましては、原子力規制委員会ホームページ「放射線モニタリング情報」及び福島県ホームペー
ジ「空間線量モニタリング結果情報」をご確認ください。
-17-
5.平成25年線量統計
1.除染等業務従事者等の年齢別線量[平成25年]
線量(mSv)
1以下
年齢(歳)
18 ~ 19
20 ~ 24
25 ~ 29
30 ~ 34
35 ~ 39
40 ~ 44
45 ~ 49
50 ~ 54
55 ~ 59
60 ~ 64
65 ~ 69
70以上
176
1,072
1,171
1,263
1,433
1,823
1,985
2,167
2,610
2,692
999
178
除染等業務従事者数(人)
1を超え 2を超え 3を超え 4を超え 5を超え 7.5を超え 10を超え 15を超え 20を
2以下
3以下
4以下
5以下 7.5以下 10以下 15以下 20以下 超える
20
2
1
0
0
0
0
0
0
130
23
3
2
0
0
0
0
0
145
27
4
0
0
0
0
0
0
165
34
7
5
5
0
0
0
0
190
48
6
2
4
0
0
0
0
229
72
19
5
4
0
0
0
0
225
53
24
4
3
0
0
0
0
289
74
17
5
6
0
0
0
0
377
68
23
2
6
0
0
0
0
363
77
22
3
9
0
0
0
0
131
21
8
3
3
0
0
0
0
19
5
1
2
0
0
0
0
0
合計人数
17,569
2,283
504
135
33
40
0
0
0
0
(%)
(85.4) (11.1) (2.5) (0.7) (0.2) (0.2) (0.0) (0.0) (0.0) (0.0)
合計線量
5,578.1 3,110.0 1,202.8
460.7
147.4
220.7
0.0
0.0
0.0
0.0
(人・mSv)
線 量
合計
平均
最大
(人・mSv) (mSv) (mSv)
199 (1.0)
90.6
0.5
3.6
1,230 (6.0)
566.6
0.5
4.9
1,347 (6.6)
632.0
0.5
3.8
1,479 (7.2)
742.9
0.5
5.6
1,683 (8.2)
835.0
0.5
5.4
2,152 (10.5)
1,151.1
0.5
5.6
2,294 (11.2)
1,158.3
0.5
5.3
1,419.6
0.6
6.0
2,558 (12.4)
3,086 (15.0)
1,663.0
0.5
6.6
3,166 (15.4)
1,720.9
0.5
6.7
1,165 (5.7)
635.3
0.5
6.4
205 (1.0)
104.7
0.5
4.5
計
人(%)
20,564(100.0)
-
―
―
―
10,719.8
0.5
6.7
[表の見方]
・例えば、平成25年集計における年齢「25 ~ 29」の線量「1を超え2以下」の「145」という値は、平成25年の 1 年間に25 ~ 29歳
の者で除染等業務を行い、その線量が1mSvを超え2mSv以下であった者が145人であったことを示します。
・平成27年 3 月30日現在の登録データを基に集計しています。
2.除染等業務従事者等の年齢別線量[平成25年]
2.除染等業務従事者等の年齢別線量[平成25年]
4000
3500
3000
従
2500
10mSvを超える
5mSvを超え10mSv以下
1mSvを超え5mSv以下
1mSv以下
事
2000
者
数
1500
(
)
人
1000
500
0
年
齢
(歳)
*この図は
「除染等業務従事者等の年齢別線量[平成25年]」の表を図化したものです。
* この図は「除染等業務従事者等の年齢別線量[平成25年]」の表を図化したものです。
-18-
(公表データ)
3.除染等業務従事者等の男女別線量[平成25年]
性別
男性
人(%)
線量(mSv)
女性
人
(%)
計
人
(%)
合計線量
人・mSv
(%)
(85.3)
17,081 488 (91.4)
17,569 (85.4)
5,578.1 (52.0)
1を超え2以下
(11.2)
2,244 39 (7.3)
2,283 (11.1)
3,110.0 (29.0)
2を超え3以下
497 (2.5)
7 (1.3)
504 (2.5)
(11.2)
1,202.8 3を超え4以下
135 (0.7)
0 (0.0)
135 (0.7)
460.7 (4.3)
4を超え5以下
33 (0.2)
0 (0.0)
33 (0.2)
147.4 (1.4)
5を超え7.5以下
40 (0.2)
0 (0.0)
40 (0.2)
220.7 (2.1)
7.5を超え10以下
0 (0.0)
0 (0.0)
0 (0.0)
0.0 (0.0)
10を超え15以下
0 (0.0)
0 (0.0)
0 (0.0)
0.0 (0.0)
15を超え20以下
0 (0.0)
0 (0.0)
0 (0.0)
0.0 (0.0)
20を超える
0 (0.0)
0 (0.0)
0 (0.0)
0.0 (0.0)
20,564
(100.0)
10,719.8
(100.0)
1以下
合計人数(%)
20,030(100.0)
534
(100.0)
男女全体の割合人(%)
(97.4)
20,030 534 (2.6)
平均線量(mSv)
合計線量(人・mSv)
0.5
0.4
0.5
10,503.3
216.5
10,719.8
6.7
2.9
6.7
最大線量(mSv)
[表の見方]
・例えば、平成25年集計における「男性」の線量「1を超え2以下」
の
「2,244」
という値は、平成25年の 1 年間に除染等業務を行っ
た男性で、その線量が1mSvを超え2mSv以下であった者が2,244人であったことを示します。
・平成27年 3 月30日現在の登録データを基に集計しています。
4.除染等業務従事者等の年間関係工事件名数及び線量[平成25年]
年間関係
工事件名数
1
2
3
4
5
計
人
(%)
6以上
年間線量(mSv)
14,028
3,121
382
35
3
0
(85.4)
17,569 1,565
1,055
280
49
6
0
(14.4)
2,955 5を超え10以下
29
10
1
0
0
0
40 (0.2)
10を超え15以下
0
0
0
0
0
0
0 (0.0)
15を超え20以下
0
0
0
0
0
0
0 (0.0)
20を超え25以下
0
0
0
0
0
0
0 (0.0)
25を超え30以下
0
0
0
0
0
0
0 (0.0)
30を超え40以下
0
0
0
0
0
0
0 (0.0)
40を超え50以下
0
0
0
0
0
0
0 (0.0)
50を超える
0
0
0
0
0
0
0 (0.0)
1以下
1を超え5以下
合計人数(%)
平均線量(mSv)
15,622
(76.0)
0.4
4,186
(20.4)
0.7
663
(3.2)
1.1
84
(0.4)
1.2
9
(0.0)
1.4
0
(0.0)
0.0
20,564
(100.0)
0.5
[表の見方]
・例えば、平成25年集計における年間関係件名数「 3 」の線量「1を超え5以下」の「280」という値は、平成25年の 1 年間に 3 工
事件名の除染等業務を行い、その線量が1mSvを超え5mSv以下であった者が280人であったことを示します。
・平成27年 3 月30日現在の登録データを基に集計しています。
-19-
(公表データ) 5. 除染等業務従事者等の年間関係工事件名数及び線量
5.除染等業務従事者等の年間関係工事件名数及び線量に対する
に対する従事者構成比[平成25年]
従事者構成比[平成25年]
100%
90%
凡例
10mSvを超える
80%
5mSvを超え10mSv以下
従
事
者
構
成
比
70%
1mSvを超え5mSv以下
60%
1mSv以下
50%
40%
30%
20%
10%
0%
1
2
3
4
5以上
年間関係工事件名数
*この図は
「除染等業務従事者等の年間関係工事件名数及び線量
[平成25年]
」
の表を基に図化したものです。
*
この図は「除染等業務従事者等の年間関係工事件名数及び線量
[平成25年]」の表を基に図化したものです。
6.除染等業務従事者等の
2 年間関係工事件名数及び経過線量
2年間関係
工事件名数
線量(mSv)
1以下
1を超え5以下
5を超え10以下
10を超え15以下
15を超え20以下
20を超え25以下
25を超え30以下
30を超え40以下
40を超え50以下
50を超え60以下
60を超え70以下
70を超え80以下
80を超え90以下
90を超え100以下
100を超える
合計人数(%)
平均線量(mSv)
1
18,106
2,093
122
24
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
3,263
1,293
34
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
20,345
4,592
(77.1) (17.4)
0.5
0.8
3
4
551
564
19
7
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1,141
(4.3)
1.4
5
73
124
7
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
205
(0.8)
1.6
6
15
42
7
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
64
(0.2)
2.1
7
5
19
4
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
28
(0.1)
2.6
計
人
(%)
8以上
2
4
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
7
(0.0)
2.2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
(0.0)
0.0
22,015 (83.4)
4,139 (15.7)
194 (0.7)
34 (0.1)
0 (0.0)
0 (0.0)
0 (0.0)
0 (0.0)
0 (0.0)
0 (0.0)
0 (0.0)
0 (0.0)
0 (0.0)
0 (0.0)
0 (0.0)
26,382
(100.0)
0.6
[表の見方]
・除染等業務従事者等における法定の 5 年間(平成24年 1 月 1 日から平成28年12月31日)の内、平成24年 1 月 1 日から平成
25年12月31日までの2年間に従事した工事件名数毎の線量分布を集計しています。
・厚生労働省の除染電離則ガイドラインに示された線量限度管理に係わる線量の扱いに従い、平成23年の線量を平成24年
の線量に合算しています。
・例えば、表における2年間関係工事件名数「3」の線量「1を超え5以下」の「564」という値は、平成24年~平成25年の 2 年間に
3 工事件名の除染等業務を行い、その線量が1mSvを超え5mSv以下であった者が564人であったことを示します。
・平成27年 3 月30日現在の登録データを基に集計しています。
-20-
7.除染等業務従事者等の地域別線量[平成25年]
市町村
年間線量(mSv)
1以下
1を超え2以下
2を超え3以下
3を超え4以下
4を超え5以下
5を超え7.5以下
7.5を超え10以下
10を超え15以下
15を超え20以下
20を超える
合計人数(%)
平均線量(mSv)
合計線量(人・mSv)
地域A
4,317
1,034
165
31
0
0
0
0
0
0
5,547(24.6)
0.7
3,788.7
地域B
6,838
505
134
42
8
2
0
0
0
0
7,529
(33.3)
0.5
3,405.1
地域C
8,469
644
139
33
22
30
0
0
0
0
9,337
(41.3)
0.4
3,525.4
その他
177
0
0
0
0
0
0
0
0
0
177
(0.8)
0.0
0.6
計
人
(%)
19,801 (87.7)
2,183 (9.7)
438 (1.9)
106 (0.5)
30 (0.1)
32 (0.1)
0 (0.0)
0 (0.0)
0 (0.0)
0 (0.0)
22,590
(100.0)
0.5
10,719.8
[表の見方]
・平成25年に除染等業務従事者等が除染事業に従事した市町村を、下記の地域A~C及びその他の 4 区分に取りまとめて
集計しています。ただし、この区分は平成23年及び平成24年統計の除染実証事業に基づく区分とは異なっています。
地域A :飯館村、川俣町、南相馬市、浪江町 地域B :葛尾村、田村市、双葉町、大熊町
地域C :川内村、富岡町、楢葉町 その他 :除染特別地域外の市町村
※ 平成23年、平成24年の統計では、富岡町が地域Bに、大熊町、広野町が地域Cに区分されています。
・例えば、平成25年集計における「地域C」の線量「1を超え2以下」の「644」という値は、平成23年の 1 年間に地域Cで除染等
業務を行い、その線量が1mSvを超え2mSv以下であった者が644人であったことを示します。
・平成27年 3 月30日現在の登録データを基に集計しています。
[留意点]
・除染等業務従事者等の作業時間、作業日数等は考慮されていませんので、平均線量が必ずしも地域の空間線量率を反映
したものとはなっていません。
・福島県の空間線量率につきましては、原子力規制委員会ホームページ「放射線モニタリング情報」及び福島県ホームペー
ジ「空間線量モニタリング結果情報」をご確認ください。
-21-
平成 25 年度 研究奨励助成金交付研究の紹介
(5)
平成 26 年度
研究奨励助成金交付研究の紹介
低線量の放射線へ複数回曝露する場合に誘発されるがんのリスク評価:
低線量の放射線へ複数回曝露する場合に誘発されるがんのリスク評価:
発がん数理機構モデルの構築およびモデルに基づく超過相対リスクの推定
発がん数理機構モデルの構築およびモデルに基づく超過相対リスクの推定
大分大学工学部
大分大学工学部 泉 志津 津
恵
和 和
泉 志
恵 1.はじめに
1.はじめに
発がんのプロセスの概要
2011年
月に福島原発事故が発生し、事故後に
2011
年 33 月に福島原発事故が発生し、事故後
第1相
放出された低線量の放射線への連続曝露による健
に放出された低線量の放射線への連続曝露によ
康影響が懸念されている。既存の多段階発がん数
る健康影響が懸念されている。既存の多段階発が
理モデルでは、ArmitageやDoll [1]らによって癌死
第2相
正常細胞
0
1
3
2
曝露への感受性有
ん数理モデルでは、Armitage
や Doll [1]らによっ
亡率を年齢や曝露の関数として定式化し、Izumi
k 2

曝露への感受性無
て癌死亡率を年齢や曝露の関数として定式化し、
やOhtaki [2]によって集団の不均一性や被曝線量
k
の不確定性を取り入れた関数が提案されている。
Izumi
や Ohtaki [2]によって集団の不均一性や被
一方、生命現象を階層構造からなる生命システム
曝線量の不確定性を取り入れた関数が提案され
として理解するシステム生物学により、極めて複
ている。一方、生命現象を階層構造からなる生命
雑性な発がん機構は体系的に解明される段階にあ
システムとして理解するシステム生物学により、
る[3, 4]。近年、システム生物学に基づく発がん
極めて複雑性な発がん機構は体系的に解明され
数理モデルの研究では、イニシエーション・プロ
る段階にある[3,
4]。近年、システム生物学に基
モーションへの放射線の影響を定式化した分化型
づく発がん数理モデルの研究では、
イニシエーシ
数理モデル[5]や、大腸がんにおける変異多段階
型数理モデル[6]が提案されている。これまでは、
ョン・プロモーションへの放射線の影響を定式化
これらの既存の発がん数理モデルを用いて、放射
した分化型数理モデル[5]や、大腸がんにおける
線への一点曝露や連続曝露により発がん超過相対
変異多段階型数理モデル[6]が提案されている。
リスクの推定が試みられてきた。しかし、発がん
これまでは、これらの既存の発がん数理モデルを
のメカニズムは非常に複雑であるため、既存のモ
k 1
腫瘍増殖
悪性腫瘍
1 多段階発がんモデルの模式図
図図
1.多段階発がんモデルの模式図
そして、
放射線への一点曝露による発がん過程と
A1)細胞の発がんは正常細胞から臨床的腫瘍発生
同様に、以下の仮定をおく。
までの段階で構成される。
A2)細胞の癌化の過程の内,最初の
2 段階のみが
A1)
細胞の発がんは正常細胞から臨床的腫瘍発
放射線の曝露への感受性が強い。
生までの段階で構成される。
A3)
(j-1)段階から(j)段階(j=1,…,k)の時刻tにおけ
A2) 細胞の癌化の過程の内,最初の 2 段階のみ
る推移強度は,j=1,2の場合時間に依存する
が放射線の曝露への感受性が強い。
関数により表され,j=3,..,kでは時間に依存し
A3) (j-1)段階から(j)段階(j=1,…,k)の時刻 t にお
ない関数により表される。
用いて、放射線への一点曝露や連続曝露により発
ける推移強度は,j=1,2 の場合時間に依存す
A4)個々の細胞での発がんに関する変異の発生と
る関数により表され,j=3,..,k では時間に依
他の疾患による死亡の発生が独立である。
デルでは発がん超過相対リスクの変化について十
がん超過相対リスクの推定が試みられてきた。
し
分説明ができない場合が認知されている。そこで、
かし、
発がんのメカニズムは非常に複雑であるた
本研究では、これまでに蓄積された生物学的知見
を元に、低線量の放射線へ複数回曝露する場合に
め、
既存のモデルでは発がん超過相対リスクの変
本研究では、既存のモデルを拡張して、Iodine
存しない関数により表される。
131
(半減期、h=
8 日)、Strontium 90(h=28.8日)、
A4) 個々の細胞での発がんに関する変異の発生
Scandium 46(h=83.8 日 )、Cesium 134(h= 2 年 )、
と他の疾患による死亡の発生が独立であ
Cesium 137(h=30年)のような異なる半減期をも
誘発されるがんに対して、システム生物学的知見
化について十分説明ができない場合が認知され
に基づいた発がん数理機構モデルを開発し、その
ている。そこで、本研究では、これまでに蓄積さ
る。
つ放射線同位元素への一定時間への曝露による発
本研究では、既存のモデルを拡張して、Iodine
がんリスクへの影響を評価する方法を考案する。
モデルに基づく超過相対リスクを推定すること
れた生物学的知見を元に、低線量の放射線へ複数
で、がんのリスク評価を試みる。
回曝露する場合に誘発されるがんに対して、シス
131
(半減期、h=8 日)、 Strontium 90 (h=28.8 日)、
単一の放射線同位元素への一定時間への曝露によ
テム生物学的知見に基づいた発がん数理機構モ
2 .方法
Scandium
46 (h=83.8 日)、 Cesium 134 (h=2 年)、
る発がんリスクへの影響の評価方法については、
デルを開発し、
そのモデルに基づく超過相対リス
本研究において設定する二相多段階仮説では、
IzumiやOhtaki
らによ
っ て 検 討されてきた [7, 8,
Cesium
137 (h=30
年)のような異なる半減期をも
多段階発がん過程の前半の
2 個の変異のみが曝露
クを推定することで、
がんのリスク評価を試みる。
9]。参考資料として、上記の評価方法により推定
つ放射線同位元素への一定時間への曝露による
感受性をもち、それ以降の変異は曝露に影響され
ないとする
(図 1 )。
2.方法
そして、放射線への一点曝露による発がん過程
本研究において設定する二相多段階仮説では、
と同様に、以下の仮定をおく。
発がんリスクへの影響を評価する方法を考案す
多段階発がん過程の前半の 2 個の変異のみが曝
ては、Izumi や Ohtaki らによって検討されてきた
露感受性をもち、それ以降の変異は曝露に影響さ
[7]。参考資料として、上記の評価方法により推
れないとする(図1)。
された発がん超過相対リスクと年齢との関係を、
曝露の種類別
(一点曝露、連続曝露)
に示す
(図 2 )
。
る。単一の放射線同位元素への一定時間への曝露
さらに、幾つかの設定下で作成した数値実験
データを用いて、新たに構築した発がん数理モデ
による発がんリスクへの影響の評価方法につい
定された発がん超過相対リスクと年齢との関係
-22-
1
泉志津恵)の支援により得られた。
さらに、幾つかの設定下で作成した数値実験デ
ータを用いて、新たに構築した発がん数理モデル
最後に、本研究奨励助成に採択いただいた公益
に基づく超過相対リスクを推定し、モデルの特性
財団法人放射線影響協会に深く感謝申し上げる。
を検証する。
参考文献
1. Armitage P, Doll R. (1954) The age distribution of
参考文献
cancer P,
andDoll
a multi-stage
theory
carcinogenesis.
1. Armitage
R. (1954) The
ageof
distribution
of
cancer
a multi-stage
theory of carcinogenesis.
Br J and
Cancer.
8(1): 1–12.
J Cancer.
8(1):Ohtaki
1-12. M. (2007) Incorporation of
2.BrIzumi
S. and
S. and Ohtaki
M. (2007) Incorporation
of
2. Izumi
inter-individual
heterogeneity
into the multi-stage
inter-individual heterogeneity into the multi-stage
carcinogenesis model: approach to the analysis of
carcinogenesis model: approach to the analysis of
cancer incidence data. Biometrical Journal.
cancer incidence data. Biometrical Journal. 49:53949:539-550.
550.
甲斐倫明
(2010)
システム放射線生物学につ
(2010)
システム放射線生物学につい
3.3.甲斐倫明
て考える-発がんのリスク評価の観点から-.
いて考える-発がんのリスク評価の観点から
放射線生物研究.
45(4): 357-366.
-. 放射線生物研究.
45(4): 357-366.
(2011)
システムバイオロジーの内外動
4.4.八尾徹
八尾徹 (2011) システムバイオロジーの内外
向-医科学研究から創薬・治験・診断・治療へ
動向-医科学研究から創薬・治験・診断・治
-. 日本バイオインフォマティクス学会. 2011年
療へ-. 日本バイオインフォマティクス学会.
2月28日
2011 年
2 月 28
日Sachs RK, Brenner DJ. (2010)
I, Ullrich
RL,
5. Shuryak
5.The
Shuryak
Ullrich initiation
RL, Sachs
Brennerin DJ.
balanceI,between
andRK,
promotion
radiation-induced
murine carcinogenesis.
Radiat and
(2010) The balance
between initiation
Res.
174(3):357-366.
promotion
in
radiation-induced
murine
MD,
Edwards
CM,
Bodmer
WF,
Maini
6. Johnston
carcinogenesis. Radiat Res. 174(3):357-366.
PK, Chapman SJ.(2007) Mathematical modeling
6. Johnston MD, Edwards CM, Bodmer WF, Maini
of cell population dynamics in the colonic crypt
PK, Chapman SJ. (2007) Mathematical modeling
and in colorectal cancer. Proc Natl Acad Sci U S A.
of cell population dynamics in the colonic crypt
104(10):4008-4013.
and inS,colorectal
Proc Natl
Acad Sci
U S A.
Ohtaki cancer.
M, Aihara
K. Innova
tive
7. Izumi
mathematical
modeling for the effects of chronic
104(10):4008-4013.
radiation
on cancer
risk. Proceedings
for
7.exposure
Izumi to S,
Ohtaki
M, Aihara
K. Innovative
themathematical
International modeling
Biometric for
Conference,
Florence
the effects of chronic
2014. July 6-11, 2014
exposure to radiation on cancer risk. Proceedings
8. Ohtaki M, Tonda T, Aihara K. Mathematical
for the International Biometric Conference,
implication of a single-point low-dose radiation
Florence
2014.
6-11,relative
2014 risk of cancer.
exposure
effect
forJuly
excess
図
図 22.単一の放射線同位元素の場合における超過
単一の放射線同位元素の場合における超過相
相対リスクの推定(イメージ図)
対リスクの推定
(イメージ図)
3.展望
ルに基づく超過相対リスクを推定し、モデルの特
これから整備されると予想される実データを
性を検証する。 統計解析システム R において、
解析するために、
発がん数理モデルを用いたアプリケーションを
3 .展望
これから整備されると予想される実データを解
高めるアプリケーションとともに、
研究成果を幅
析するために、統計解析システムRにおいて、発
広い人々に
IT 技術を利用して提供していく。
がん数理モデルを用いたアプリケーションを開発
する。新たに構築する数理モデルの汎用性を高め
るアプリケーションとともに、研究成果を幅広い
4.おわりに
人々にIT技術を利用して提供していく。
本研究において開発される新たな発がん数理
開発する。新たに構築する数理モデルの汎用性を
モデルにより、これまでの方法よりも、さらに適
4 .おわりに
切な評価が可能となると考えられる。
本研究において開発される新たな発がん数理モ
デルにより、これまでの方法よりも、さらに適切
8.TheOhtaki
M, Tonda Symposium
T, Aihara on
K. Innovative
Mathematical
3rd International
Mathematical
FIRST, Aihara
Innovative
implicationModeling.
of a single-point
low-dose
radiation
5.謝辞
な評価が可能となると考えられる。
本研究は、広島大学・原爆放射線医科学研究所
5 .謝辞
の大瀧慈氏、および、大分大学大学院工学研究科
Mathematical
Modelling
Project,
The University
of
exposure effect
for excess
relative
risk of cancer.
Tokyo.
12-15, 2013
The November
3rd International
Symposium on Innovative
9. Izumi S, Nagata D, Aihara K, Ohtaki M. Comparing
Mathematical
Modeling.
FIRST,
Aihara
the effects of duration of chronic exposure to
本研究は、広島大学・原爆放射線医科学研究所
の永田大貴氏と共同で行っている。
本研究の元と
の大瀧慈氏、および、大分大学大学院工学研究科
の永田大貴氏と共同で行っている。本研究の元と
なる成果は、科学研究費補助金・基盤研究(A)(課
Innovative Mathematical Modelling Project, The
題番号:24249039、研究代表者:大瀧慈)および
なる成果は、科学研究費補助金・基盤研究(A)
(課
題番号:24249039、研究代表者:大瀧慈)および
広島大学原爆放射線医科学研究所共同利用・共同
2
radioactive fallout on the cancer risk with those
of a single point exposure, based on a simulation
study. The 5th International Symposium of RIRBM,
Hiroshima University. March 2-3, 2015.
研究(課題番号: 25-重点5-3、研究代表者:和泉
志津恵)
の支援により得られた。
最後に、本研究奨励助成に採択いただいた公益
財団法人放射線影響協会に深く感謝申し上げる。
-23-
放影協開催講座
~原子力事故に伴う、緊急時被ばく状況及び現存被ばく状況に
おける人々の防護についてのICRPの考え方について~
公益財団法人 放射線影響協会
皆様ご承知のとおり、福島の原発事故以来、国
う、緊急時被ばく状況及び現存被ばく状況におけ
民全体として放射線の影響に対する関心、不安が
る人々の防護についてのICRPの考え方について』
強くなっています。
と題して、それぞれの委員のご見解に基づいて解
この放射線の影響、またその防護に関しては、
説をしていただきました。
国際放射線防護委員会(ICRP)が長い間世界の専
また、お三方からの解説の後には、質問・討論
門家を集めて、定期的に勧告や報告を出してお
の時間も設けました。
り、我が国の規制にも多く取り入れられていま
今回の講座は、当協会のホームページにより参
す。
加者を募り、54名の参加者の下、平成23年 2 月23
しかしながら、専門家が長年議論した結果です
日(月)に東京ガーデンパレス(御茶ノ水)において
ので、簡単には理解できないところがあります。
開催しました。
そこで、
( 公 財)放 射 線 影 響 協 会としては、
以下に、今回の講座の予稿集に記載されている、
ICRPに関心を寄せる方々を対象に、ICRPが公表
3 人のICRP委員による解説の概要をお示ししま
する勧告・報告等をわかりやすく解説する場を提
す。
供したいとの思いから、初めての試みではありま
( 公 財)放 射 線 影 響 協 会といたしましては、
すが、
『放影協開催講座』を開催することとしまし
ICRP勧告等の理解促進に、また、皆様の今後の
た。
お役にたつことができれば、主催者としてたいへ
今回の講座では、我が国からのICRP委員でお
ん幸いでございます。
られる、丹羽太貫ICRP主委員会委員、本間俊充
当協会としましては、今後とも、放射線影響に
ICRP第 4 専門委員会委員及び甲斐倫明ICRP第 4
関する知識の普及など努力して参りますので、引
専門委員会委員のお三方から、『原子力事故に伴
き続きよろしくお願いいたします。
-24-
放影協開催講座のご案内
テーマ
原子力事故に伴う、緊急時被ばく状況及び現存被ばく状況における人々の防護につい
てのICRPの考え方について
『緊急時被ばく状況における人々の防護のための国際放射線防護委員会(ICRP)勧告の適用』
及び『原子力事故または放射線緊急事態後の長期汚染地域に居住する人々の防護に対する国
際放射線防護委員会(ICRP)勧告の適用』の考え方等について、我が国のICRP委員に解説し
ていただきます。
開催日時
場 所
平成27年2月23日(月)午後1時25分~午後3時
東京ガーデンパレス(2階、天空の間)
〒113-0034 東京都文京区湯島1-7-5
電話代表 03-3813-6211
公益財団法人放射線影響協会
主 催
無 料
参加費
90名(ただし、原則、1団体2名様までとさせていただきます。)
定 員
参加申込み方法
参加を希望される方は、Eメールアドレス([email protected])あてに、メール
の件名を『放影協開催講座参加申込み』と入力していただき、参加者(お二人の場合
は2名)の①氏名(フリガナ)、②ご所属、③ご連絡先(Eメールアドレス、電話番号、
FAX番号等)を明記の上、お送りください。(お申し込みいただいた個人情報は、本放
影協開催講座のご参加の確認以外には使用いたしません。)
なお、メールをお持ちでない方は、FAX(03-5295-1486)でも受け付けます。
平成27年2月16日(月)午後3時
参加申込み締め切り
先着順に受付け、定員になり次第締め切ります。参加希望をお送りいただいた方
に、参加の可否をご連絡します。
〒101-0044 東京都千代田区鍛冶町1-9-16 丸石第2ビル5階
お問い合わせ先
(公財)放射線影響協会企画部
担当 倉田(電話 03-5295-1483)又は林(電話 03-5295-1482)
プログラム
13:00 開
13:25 開
場
会
座 長
長瀧 重信(
(公財)放射線影響協会理事長)
(ICRP主委員会委員 丹羽 太貫)
13:30 解説1 ICRPにおける放射線防護の全体像と課題
13:50 解説2 緊急時被ばく状況における人々の防護のための委員会勧告の適用(ICRP Publication
109)について
(ICRP第4専門委員会委員 本間 俊充)
14:10 解説3 原子力事故または放射線緊急事態後の長期汚染地域に居住する人々の防護に対する委員
会勧告の適用(ICRP Publication 111)について
(ICRP第4専門委員会委員 甲斐 倫明)
休
憩(14:30~14:40)
14:40 質疑応答
15:00 閉 会
X線の発見後の放射線利用は、さまざまな身体
【解説1】
ICRPにおける放射線防護の全体像
的障害をもたらした。X線技師には皮膚の潰瘍が
と課題
頻発し、1904年にはすでに肉腫の発症が報告され
ている。
丹羽太貫ICRP主委員会委員
国際放射線医学会議は、1928年のストックホ
ルムにおける第二回大会において、国際X線ラ
ジウム防護会委員会(のちの国際放射線防護委員
ICRPの放射線防護体系は、放射線のもたらす
会(ICRP))を設置し、放射線防護体系の構築が始
障害から人々を護るためのものである。しかし放
まった。初期の放射線防護は、その後に確定的影
射線の障害の中身は、時代に応じて、さらには文
響と呼ばれる皮膚障害や造血組織の障害の防止が
化に応じて変遷する。
主で、それには被ばくを閾値線量以下に管理する
-25-
ことであった。しかし1920年代後半のショウジョ
ウバエの研究で遺伝的影響には閾値がみられない
【解説2】 緊急時被ばく状況における人々の
ことが明らかになり、さらにその後白血病が低い
防護のための委員会勧告の適用
線量でも発症しうる可能性が示唆された。ICRP
(ICRP Publication 109)について
は1959年の Publication 1 において、閾値による管
本間俊充ICRP第 4 専門委員会委員
理の他に、直線閾値無しモデルを前提としたリス
ク概念に基づく防護を採用するに至った。これに
より、従来の確定的影響に加えて、確率的影響が
放射線防護に取り込まれた。また遺伝的影響は次
ICRP 2007年勧告(ICRP Publication 103)は、そ
世代を通じて集団に伝搬するところから、集団線
れまでの行為と介入というアクションに関する放
量概念が取り入れられ、さらには作業者に加えて
射線防護のアプローチから、計画被ばく状況、緊
公衆も放射線防護の対象になる。
急時被ばく状況、現存被ばく状況という 3 つの被
上記の放射線防護体系は、1970年代に徐々に成
ばく状況の特性に基づいたアプローチへと発展し
果が出始めた原爆被爆者の疫学解析の結果を取り
ました。
入れてリスク係数などが整備されるにともない、
ICRP Publication 109は、このうちの緊急時被ば
1977年のPublication 26でさらに精緻化されること
く状況、すなわち“計画された状況を運用する間
になる。すなわち、正当化・最適化・線量限度の
に,もしくは悪意ある行為から,あるいは他の予
防護三原則、実効線量などが放射線防護の体系に
期しない状況から発生する可能性がある好ましく
登場した。1990年のPublication 60では、線量限度
ない結果を避けたり減らしたりするために緊急の
の改定や、低線量・低線量率効果係数(DDREF)
対策を必要とする状況”と定義されるような,す
の取り入れ、さらには自然放射線や事故時への対
べての放射線緊急事態への準備と対応についての
応などが盛り込まれた。
ガイダンスを与えるものです。
2007年の Publication 103では、これまでの行為
正当化、最適化の原則と重篤な確定的影響の防
と介入による対応から、緊急時被ばく、現存被ば
止の要件は、これまでの介入における防護の考え
く、計画被ばくの3つの放射線状況に分類し、そ
方と同様ですが、緊急時被ばく状況では個別の防
れぞれの実情に応じた対応が可能な放射線防護体
護措置導入(介入)の効果を最適化する代わりに、
系を勧告した。この変更にはチェルノブイリ事故
すべての被ばく経路とすべての防護措置を総合的
の経験が大きい。そしてこの事故の経験をさらに
に考え、一連の防護措置から成る最適な防護戦略
明 確に 取り 入れて、2009年にはPublication 109と
を決定するという新しい最適化のアプローチが大
Publication 111が刊行された。
きな特徴と言えます。これは、ひとつの防護措置
従来の放射線防護体系は、放射線の身体的障害
を考えるだけでは十分な防護を確実にすることが
を防止することが基本で、これは今も変わらない。
難しい場合にも、いろいろな防護措置のオプショ
一方福島事故では、事故直後の緊急避難措置や放
ンを総合的に考えることで、これまでより包括的
射性物質の放出もチェルノブイリ事故に比して少
でより柔軟な対応が可能になり、資源の効果的な
なかったこともあり、住民の多くの方々への線量
配分にも通じると考えられています。
は少ないと言える。にもかかわらず事故による不
防護戦略を計画し最適な防護レベルを確立する
安と社会的な影響は極めて大きく、しかもそれが
ために,ICRPは参考レベルを用いた最適化を提
今後も長期にわたって続くと予想される。すなわ
案しています。実効線量で20から100 mSvの間に
ち、放射線による身体的障害への対応だけでは、
設定すべきと勧告している参考レベルを用いた最
放射線事故から社会を護ることはできない。福島
適化では,防護戦略が実施された後に結果として
の放射線状況への適切な対処は、放射線防護の大
受けてしまう線量(残存線量)に着目します。計画
問題である。
段階ではこの参考レベルを基準としてそれを下回
る防護戦略を選択します。対応段階では実行した
防護戦略の効果を測り、その修正あるいは追加措
-26-
置の必要性が参考レベルを基準として検討される
居住する人々の放射線防護を現存被ばく状況の防
ことになります。
護としてICRPが初めて勧告したものである。
もう一つICRP 109の特徴は、時間の経過ととも
事故後の汚染した地域において、計画被ばく状
に防護措置をどのように変更し管理していくかを
況と決定的に異なるのは、放射線防護方策を検討
考察している点です。初期に導入した防護措置の
する段階ですでに放射性物質による被ばくが存在
変更や終了は、その時々に広く行きわたった状況
することである。つまり、放射線源を制御するこ
を十分考慮し、また、次第に係わり合うステーク
とが 難しいために、 被ばくを 抑 制するための 異
ホルダーの関与を重視して、放射線防護のみなら
なった防護戦略が求められる。基本的な防護原則
ず、社会、経済、政治的な側面も考慮に入れなが
は、実施する防護戦略の正当化と、それによって
ら判断し、ICRP 111で扱う現存被ばく状況に移行
達成される防護の最適化である。参考レベルと呼
するとしています。
ばれる線量目標は最適化のプロセスに利用される
解説では、緊急時被ばく状況への対応が、これ
ものである。住民が汚染地域に留まって生活する
までのICRPの 考え 方からどのように 発 展してい
ことを認める場合、個人被ばくのリスクを上回る
るか、福島第一原子力発電所における対応の実例
個人の便益と社会に対する便益全体を保証する責
を交えながらお話ししたいと思います。
任が政府にある。汚染地域内では放射線被ばく以
外に、社会的および経済的な活動とともに住民の
日常的なあらゆる側面が影響を受ける可能性が高
【解説3】
原子力事故または放射線緊急事態後
い。放射線被ばくのみに注目していただけでは対
の長期汚染地域に居住する人々の防
応できない複雑な状況である。このような状況に
護に対する委員会勧告の適用(ICRP
おいては、放射線被ばく状況を改善のための管理
Publication 111)について
方策を検討する上で主要なステークホルダーを関
与させることが人々の生活状況を改善し尊厳を取
り戻すために不可欠である。
甲斐倫明ICRP第4専門委員会委員
参考レベルは線量に関する数値的な目標となる
ために注目される。ICRPが勧告する参考レベル
Pub.111 は原子力事故または放射線緊急事態に
は、この線量以下にすることが到達点ではない。
よって長期汚染した地域の復旧に対する放射線防
個人被ばく分布の公平性を重視し、状況を段階的
護のあり方について勧告したものである。
に改善していくための目安として中間的な参考レ
従来、放射線防護の対象は人間活動である目的
ベルも用いながら、長期的には被ばくを「通常」と
で利用する放射線・放射性物質であった。これは
考えられるレベルに近いかあるいは同等のレベ
2007年勧告で分類された計画被ばくに分類される
ルに 引き 下げることを 目 標とすべきである。 年
ものである。事故や自然放射線からの被ばくを抑
1mSvというレベルはこのような倫理的な背景か
制することは計画被ばくとは異なる性格のもので
らでてきたものである。
あるため、ICRPは2007年勧告で、緊急時被ばく
Pub.111は従来のICRP勧告とはかなり異質な面
と現存被ばくとして分類した放射線防護の原則を
がある。事故という特殊な状況の下では、計画的
構築した。2007年勧告では、放射線防護は、すべ
な被ばく状況と被ばく以外に異なる側面が複雑で
ての制御可能な被ばく状況に対して、被ばくの大
あり、汚染地域で生活を継続するための防護戦略
小とその起源にかかわらず、あらゆる放射線源か
として考えるべき事柄(食品管理、モニタリング、
らの放射線被ばくを対象とするように拡大してき
健康サーベイランスなどを含む)を勧告したもの
た。Pub.111は、原子力事故後の長期汚染地域に
である。
-27-
主 要 日 誌
( )内は協会前職若しくは新規就任・採用
【人事異動】
○本部
4 月 1 日 総務部長兼企画部長(出向採用)富田 英二
○放射線疫学調査センター 4 月 1 日 事業推進担当部長兼広報担当部長(採
用)鎌倉 幸雄
○放射線従事者中央登録センター
2 月12日 第 2 回除染登録管理制度参加者協議会
(平成26年度事業報告及び決算見込み、
平成27年度事業計画及び収支予算、統
計データの公表について等)
2 月17日 放射線管理手帳発効機関への説明会
(除染登録管理システムの概要、シス
テム運用に伴う協力依頼、手帳運用要
領・記入要領の改定について等)
○放射線疫学調査センター
富田 英二
鎌倉 幸雄
【活動日誌】
○本 部
2 月23日 放影協開催講座(原子力事故に伴う、
緊急時被ばく状況及び現存被ばく状況
における 人 々 の 防 護についてのICRP
の考え方について)
2 月27日 平成26年度研究奨励助成金交付研究課
題選考委員会開催
2 月27日 平成26年度放射線影響研究功績賞及び
同奨励賞選考委員会開催
3 月 9 日 平成26年度第 4 回理事会(決議事項:
平成27年度事業計画及び収支予算並び
(委員会活動)
2 月 2 日 平成26年度第 3 回放射線疫学調査解析
検討委員会(第Ⅴ期放射線疫学調査結
果について)
2 月 6 日 平成26年度第 3 回個人線量記録評価専
門委員会(個人線量記録の整合性に関
する評価報告書について)
2 月13日 平成26年度第 2 回放射線疫学調査評価
委員会(第Ⅴ期放射線疫学調査結果等
について)
2 月20日 平成26年度第 2 回放射線疫学調査調査
運営委員会(生死追跡調査結果、第Ⅴ
期放射線疫学調査結果等について)
2 月25日 平成26年度第 2 回放射線疫学調査倫理
委員会(生死追跡調査の現状及び「個人
に資金調達及び設備投資の見込みを記
載した書類について等)
3 月17日 平成26年度第 3 回評議員会(決議事項:
平成27年度事業計画及び収支予算につ
情報保護に関する技術専門委員会」報
告並びに次年度以降における放射線疫
学調査の方向性について)
いて等)
編集・発行 公益財団法人 放 射 線 影 響 協 会
URL:http://www.rea.or.jp
〒101-0044 東京都千代田区鍛冶町 1 丁目 9 番16号 丸石第 2 ビル 5 階
電話:03
(5295)
1481
(代)FAX:03
(5295)
1486
●放射線従事者中央登録センター
電話:03
(5295)
1788
(代)FAX:03
(5295)
1486
●放射線疫学調査センター
-28-
電話:03
(5295)
1494
(
代)FAX:03
(5295)
1485