インサート軸受ユニットの試運転時における異常現象とその主な原因と対策

インサート軸受
インサート軸受ユニット
軸受ユニットの
ユニットの試運転時における
試運転時における異常現象
における異常現象とその
異常現象とその主
とその主な原因と
原因と対策
異常現象
原 因
インサート軸受ユニットに
生じるその他の異常現象
ベルトやチェーンを張り過ぎている。 異常発熱・運転音が高い
異常アキシアル荷重が作用するよう
異常発熱・運転音が高い
なユニットの取り付けになっている。
温度変化で、軸の伸縮により異常ア
異常発熱・運転音が高い
キシアル荷重が作用している。
過大なトルク 取付け面の平面度が悪い。
(回転が重
い)回転不良
アダプタを締め付け過ぎている。
対 策
試運転時の異常現象に気が
つかずに運転を継続した場合
の軸受の損傷について
軸受の早期フレーキングの要因と
ベルトやチェーンが規定通りに張られているかの確認。
なる。
正常時の運転温度や運転音の管理。
軸への取り付け方法は、止めねじ付きユニット、アダプタ付
きユニット、偏心輪付きユニットで、それぞれ異なるので、
アキシアル荷重が大きい場合に
当社総合カタログの、「軸への取付け」を参考にしていただ
は、軸受の早期フレーキングや保
き、軸受ユニットに異常なアキシアル荷重が作用しないよ
持器破損の要因となる。
うな取付けを行う。
正常時の運転温度や運転音の管理。
温度上昇による軸の伸び対策を行っている場合において アキシアル荷重が大きい場合に
は、軸受の早期フレーキングや保
も、その機能が働いているかのチェックを行う。
持器破損の要因となる。
正常時の運転温度や運転音の管理。
異常発熱・運転音が高い
軸受ユニットを、平面度が悪い箇所に取付けると、局所的
に軸受内部すきまが負になり、軸受の過大トルク、過大負 軸受の早期フレーキングの要因と
なる。
荷となる。
特にピロー形軸受ユニットの場合注意が必要。
異常発熱・運転音が高い
当社総合カタログに掲載している、アダプタの推奨締付け
軸受の早期フレーキングの要因と
トルクで締付ける。
なる。
正常時の運転温度や運転音の管理。
取付け時の不注意などにより、スリ
ンガが変形したり移動したりして、ゴ 異常発熱・異常音の発生
ムシールと接触している。
軸受ユニットの軸への挿入時、内輪または軸に強い衝撃
を与えると、両スリンガが内側に移動して、ゴムシールと接
触して過大トルクや、回転不能となる場合があるので、取
扱い扱いに注意。この場合、軸受を交換する必要がある。
試運転前のグリース補給により、軸
受のゴムシールが外に押し出されて 異常発熱・異常音の発生
スリンガと接触している。
運転停止中に多量のグリースを補給すると、軸受内部の
一部分の圧力が高くなり、ゴムシールが外に押し出されス
軸受が回転不能となる場合もあ
リンガと接触し、軸受の回転不良を生じる場合がある。グ
る。
リース補給は、出来るだけ運転中に行ない、やむを得ない
場合には手回し回転しながら行う。
異常発熱等により、潤滑グリース
の早期劣化となり、軸受の早期フ
レーキングの要因となる場合があ
る。
軸受の締結部品がゆるんでいたり、
軸に取付けられている他の部品が 異常音の発生。
軸受ユニットと同じ機台に取付けられている、全ての固定 軸等の摩耗により、振動がより大
確実に固定されていない。
軸とのはめあい面からの摩
きくなる。
部品の確認。
ユニットが機台に確実に固定されて 耗粉の発生。
いない。
軸と軸受とのはめあいがゆる過ぎ
る。
異常振動
異常音の発生。
軸と軸受とのはめあいがゆる過ぎると、異常振動の発生
軸受と軸とのはめあい面で
以外に、作用荷重が大きい場合には、このはめあい面で
のクリープ発生。
のクリープ発生の要因となる。
止めねじのゆるみ。
軸の摩耗により、異常音発生はさ
らに激しくなる。
クリープを発生すると、軸受破損
にいたる場合がある。
軸に取付けられている軸受ユニット以外の部品のバランス
軸受と軸受箱のはめあい面の更
が悪い場合とか、軸に曲がりがあると、異常振動の発生の
なる摩耗により、振動発生は大き
回転体のバランスが悪かったり、軸 軸受箱と外輪とのはめあい
要因となる場合がある。アンバランス荷重の修正や軸の曲
くなる。 保持器の破損に至る場
に曲がりがある
面のクリープ発生。
がり等のチェックが必要。アンバランス荷重が必要条件の
合もある。
場合には、軸受と軸受箱のはめあいをかたくする。
機台の剛性が不足している。
異常音の発生
機台にはじゅうぶんな剛性をもたせることが望ましい。
異常振動により、あらゆるはめあ
い面の摩耗が促進され、振動は
より大きくなる。
3個の軸受の軸心を合わせることは、ピロー形では特に難
一軸上に3個以上の軸受を使用し、 異常荷重作用による、異常 しいので、出来るだけこのような選定は避ける。止むを得 軸受の早期フレーキングの要因と
各軸受の軸心が狂っている。
発熱・異常音の発生
ず一軸上に3個の軸受を使用する場合は、一個をフランジ なる。
形を使用すると軸心をあわせ易くなる。
軸受の締結部品が確実に固定され 異常振動の発生。
ていない。
異常音の発生。
軸受が軸または軸受の締結部品との間で、すべりを生じ
ていると、異常発熱する場合があるので、軸受の締結部品 軸の異常摩耗。軸受内輪内径面
の異常摩耗
は確実に固定する必要がある。
正常時の運転温度や運転音の管理。
作用荷重が大き過ぎる。
運転音が高い。
過大荷重作用の原因を調査し、その原因を取り除く必要
がある。
直径系列200より300への切り替え。
正常時の運転温度や運転音の管理。
運転音が高い。
軸受ユニットを、平面度が悪い箇所に取付けると、局所的
に軸受内部すきまが負になり、軸受は異常発熱となりま 軸受の早期フレーキングの要因と
す。この原因を除去する必要がある。
なる。
正常時の運転温度や運転音の管理。
運転音が高い。
アダプタを締付け過ぎると、軸受内部すきまが負すきまと
なり、異常発熱する。当社総合カタログに掲載している、ア 軸受の早期フレーキングの要因と
ダプタの推奨締付けトルクで締付ける。
なる。
正常時の運転温度や運転音の管理。
軸からの伝導熱で内輪が膨張し、軸
受内部すきまが負すきまになってい 運転音が高い。
る。
熱処理炉等において、軸受ユニットが炉外の側壁に取り付
けられている場合には、軸受の内輪と外輪の温度差は大
きくなり、軸受の内部すきまが負すきまとなる場合がありま
軸受の早期フレーキングの要因と
す。このように予め外内輪の温度差が大きい使用条件の
なる。
場合には、軸受の製作時に、内部すきまを大きくする必要
がある場合があるので、ASAHIにご相談ください。
正常時の運転温度や運転音の管理。
軸の伸縮が大きいのにアキシアル
方向の逃げが取れていない。
軸受ユニットが高温にさらされる場合、運転中の温度上昇
が大きい場合、軸受の間隔が長い場合等で、軸の伸縮が
軸受の早期フレーキングの要因と
大きい場合には、逃げがないので、軸受に異常アキシア
なる。
ル荷重が作用し,異常発熱の要因となる。このような場合、
保持器の破損に至る場合もある。
アキシアル方向の逃げ対策を講じる必要がある。
正常時の運転温度や運転音の管理。
取付け面の平面度が悪い。
異 常 アダプタを締め付け過ぎている。
温度上昇
運転音が高い。
軸受の早期フレーキングの要因と
なる。
取付け時の不注意などにより、スリ
ンガが変形したりして、ゴムシールと 異常音の発生。
接触している。
異 常
温度上昇 回転速度が限界を超えている。
異常振動の発生。
一軸上に3個以上の軸受を使用し、
異常振動の発生。
各軸受の軸心が狂っている。
軸受に直接または間接的に衝撃荷重を与えないように注
意する。軸受ユニットを固定した後に、軸受ユニット以外の 軸受に衝撃荷重が作用すると、鋼
部品を取付けるときに、ユニットに衝撃を与えないように注 球によって外内輪の転がり面に圧
意が必要。
痕を生じ、異常音を発生する。
正常時の運転温度や運転音の管理。
軸受を高速仕様に変更する等の検討が必要。
軸や軸受ユニットの精度に付いての検討が必要。
正常時の運転温度や運転音の管理。
軸受に焼きつきが発生する場合
もある。
3個の軸受の軸心を合わせることは、ピロー形では特に難
しいので、出来るだけ避けて選定する。止むを得ず一軸上
軸受の早期フレーキングの要因と
に3個の軸受を使用する場合は、1個をフランジ形を使用
なる。
すると軸心を合わせ易くなる。
正常時の運転温度や運転音の管理。
軸受の締結部品がゆるんでいたり、 異常振動の発生・軸とのは 軸受ユニットと同じ機台に取付けられている、全ての固定
軸等の摩耗により、振動や異常
軸に取付けられている他の部品が めあい面からの磨耗粉の発 部品の確認。
音がより大きくなる。
確実に固定されていない。
生
正常時の運転音の管理。
止めねじの締付け過ぎで、内輪割れ
異常振動の発生。
を発生している。
内輪割れを生じると、その軸受は取り替える必要がある。 特殊焼入れ適用軸受の呼び番号
ASAHIでは、内輪全体を焼き入れていた従来品での内輪
割れや止めねじのゆるみ等の対策として、内輪割れを起こ
し易い商品では、内輪特殊焼入れを行っている。しかしな UC204~216
がら、止めねじを過大なトルクで締付け過ぎると、回転精 UC307~311
度が悪くなるので、カタログ記載の適正な締め付けトルク UR204~213
SER204~212
で締付ける必要がある。
B4~7
正常時の運転音の管理。
異常振動の発生。
すぐに軸受破損には至らないが、この異音が許容できない
取付け時の不注意等により、ユニッ
スリンガー移動により、ゴム 場合は軸受を交換。
トに打撃を与え軌道面に圧こんを生
シールとの接触による発
軸受に直接あるいは間接的な衝撃を与えないようにする。
じている。
熱。
正常時の運転音の管理。
異常音
運転停止中の振動で軌道面にフ
レッチングが生じている。(フォール 異常振動の発生。
スブリネリング)
軸受ユニットが停止中に外部からの振動を受けたり、軸受
ユニットを揺動で(揺動角が小さい)使用した場合に、軌道
面を転動体ピッチで磨耗させる(無潤滑状態)ことがある。
この現象が激しい場合では軌道面に鋼球間隔でくぼみが
生じ、すだれ状の凹凸ができ、著しい異常音発生や異常
振動発生となる。この対策は難しいが、軸受ユニットにでき
るだけ振動が伝わらないように、防振ゴムを取付けたり、
軸受の潤滑剤や潤滑方法の見直しが必要となる。装置据
付後、試運転をするまでの期間が長いような場合に発生
することがある。
軸受ユニット取付け時に、そのユニットに直接打撃を与え
たり、軸に衝撃を与えてユニットを軸に通したり、そのユ
ニットを機台に固定した後に、軸に固定する他の部品を取
スりンガとゴムシールとの間に異物
付け時に衝撃を与えたために、スリンガが内側に移動して
異常発熱や振動を発生した
が入ったり、取付け時の不注意など
ゴムシールと接触することがある。また、スリンガに何かが
り、軸受の回転不能になる
により、スりンガが変形したりして、
当たりスりンガが変形して、ゴムシールと接触することがあ
こともある。
ゴムシールと接触している。
る。この接触があると、異常音を発生したり軸受の発熱要
因となったり、時にはこの接触により、軸受が回転不能と
なることがあるので、取扱いには十分な注意が必要であ
る。