双葉郡中高一貫校整備事業(福島県立ふたば未来学園中学校・高等学校(仮称) ) 基本・実施設計委託業務 公募型プロポーザル審査委員会 審査講評 1 審査経過 本施設の整備事業基本設計・実施設計委託業務に係る公募型プロポーザルは、福島県教育 庁の所管のもとに各分野を代表する7名の審査委員による委員会が設置され、当該募集要 領等の策定から最終審査に至るまで、慎重かつ厳正な審査を行った。その詳細は次のとおり である。 (1) 第1回審査委員会、平成 27 年 7 月 7 日福島市内で開催。審査委員長および副委員長 の選出を行った後、建設予定地の現況や学校基本計画の確認、公募型プロポーザル募集 要領、当該審査スケジュール等について協議を行った。 (2) 第2回審査委員会、平成 27 年 8 月 17 日福島市内で開催。期限内に応募された7者 の提案書について厳正に書類審査を行い、各審査委員がヒアリング要請を行うべきと思 う提案者について、1票ずつ計3者に投票を行った。一次投票にて4者が選出された後、 ヒアリング要請者を計5者とすべく、各審査委員が5者目のヒアリング要請者とすべき と思う提案者について1票を投じる二次投票を実施し、5者をヒアリング要請者として 選出した。 (3) 第3回審査委員会、平成 27 年 8 月 31 日福島市内で開催。当日は、1者あたり発表 15 分、質疑応答 20 分でヒアリング審査を行った。当該 5 者の発表及び質疑応答の終 了後、直ちに最終審査会を開催し、技術提案書の内容及びヒアリングにおける質疑応答 の内容などを踏まえ審議を行った。その最終段階において、各審査委員が最も良いと思 う提案者に1票を投じ、最優秀提案者1者及び次点1者を決定した。 2 審査結果 ○第一次審査(書類審査)結果 審査日:平成 27 年8月 17 日 審査委員の投票結果 受付番号 1 2 3 4 5 6 7 一次投票 4 6 0 0 4 7 0 二次投票 - - 0 1 - - 6 ヒアリング要請者:以下の5者 受付番号1:株式会社 共同建築設計事務所 受付番号2:株式会社 相和技術研究所 受付番号5:双葉郡中高一貫校整備事業(福島県ふたば未来学園中学校・ 高等学校(仮称))基本・実施設計業務辺見・阿部設計共同体 受付番号6:中村・山本堀・永山アーキテクツ共同体 受付番号 7:株式会社 SALHAUS ○第二次審査(ヒアリング)結果 審査委員の投票結果 審査日:平成 27 年 8 月 31 日 ※委員1名欠席により計6票による 受付番号 1 2 5 6 7 得票数 0 0 4 2 0 最優秀提案者:受付番号5 双葉郡中高一貫校整備事業(福島県ふたば未来学園中学 校・高等学校(仮称))基本・実施設計業務辺見・阿部設 計共同体 次 点 者:受付番号6 中村・山本堀・永山アーキテクツ共同体 3 審査講評 本施設のプロポーザルで求めた提案課題は、次に示す7項目であった。 (1) 骨太な理念とその具現化の考え方 (2) 豊かな環境を生かした本学園にふさわしい合理的な土地利用の考え方 (3) 特色ある教育プログラムに対応した施設の考え方 (4) 生徒と教師を支える質の高い教育空間の考え方 (5) 合理的かつ現実的な施設整備の考え方 (6) 業務実施体制の提案 (7) 迅速かつ円滑な施設整備を実現する施工に関する提案 (委員長全体講評) 福島復興の象徴のひとつとなり得る中高一貫校であるだけに、すぐれた提案が寄せられ ました。学校の規模と新たな企画に対して充分な敷地面積が確保できないこと、設計工期、 建設工期ともにタイトなスケジュールであること、建設物価高騰の影響をうまくかいくぐ ることが出来るかなど、このプロジェクトをめぐる環境には厳しいものがあります。これら のハードルを、この場所で新しい教育を創っていこうという熱い思いを抱いた先生方と、力 を合わせて乗り越えていけるのか。それにかなう設計者を選定することが審査委員に求め られました。 最終選考では、ヒアリングを聞いた上で、各案の特徴や説明内容、さらには説明者の印象 などについて自由にディスカッションが行われました。これには実情に詳しいアドバイザ ーも加わりました。当日欠席された長澤委員からは、各案に対する適確な見解が書かれたレ ポートを寄せていただいていたので、議論の経過で適宜披露しながら各案に対する認識を 深めていきました。普通なら票を入れて候補者を絞り込んでいくのですが、今回はきわめて 活発な意見が各委員から述べられたため、議論を中心に委員の意見をまとめていくことに しました。 最終的に、案の柔軟性と熱意が感じられる辺見・阿部設計共同体と、完成度がたかく実現 性が高い中村・山本堀・永山アーキテクツ共同体が残りました。両案とも、良い点と懸念さ れる点について議論がなされ、最終的に挙手で採決を採り、辺見・阿部設計共同体が最優秀 案、中村・山本堀・永山アーキテクツ共同体が優秀案となりました。各委員がしっかりと意 見を述べる公正で良い審査であったと思っています。 この企画に対して、優れた案を作成し応募して下さったすべての設計者の方たちに謝意 を表したいと思います。最優秀案となった設計者にはエールを送りたいと思います。ここで 生まれるはずの福島の未来に向けて、すばらしい成果を得ることを審査委員一同祈念して います。 (委員長各案講評) ○最優秀提案者:受付番号5 双葉郡中高一貫校整備事業(福島県ふたば未来学園中学校・ 高等学校(仮称))基本・実施設計業務辺見・阿部設計共同体 福島の建築家たちによる設計共同体。木造を中心に低層で造ること、運動場や隣接する他 施設まで含めたエデュケーショナル・コンコース(ECC)の考え方が特徴的だった。要求され ているボリュームが入っているのか、図面では確認できなかった。考え方の提案を中心とし たプロポーザルコンペである以上、これはやむを得ない。実現化する過程で一部に三階部分 も出てくるかも知れない。木造の低層をうまくさばけばコスト的にも優位に働くはず。地元 の力で復興を、と訴えるプレゼンテーションには強い説得力があった。この体制で設計を間 に合わせることが出来るのか、疑問が呈され議論になった。 ○次点者:受付番号6 中村・山本堀・永山アーキテクツ共同体 スパインと名付けられた 150m の長さの南北の空間を中心に、西側に体育施設、東側に 教室群をフィンガー状に広げた案。設計体制がしっかりしており、平面構成の完成度が高く、 よく練られている優れた案だった。長大なスパインの空間イメージ、フィンガー状の教室棟 の間に囲まれた中庭のスケールに疑問が残った。全体として完成度が高いだけに、これから 作っていく新しい教育システムを、当局や先生方と一緒に組み上げていけるのか、という意 見も出た。 ○受付番号1:株式会社 共同建築設計事務所 もっともコンパクトな提案。敷地の狭さやコストなどから考えれば、よく考えられた実現 性の高い案。開放的な一階の扱い方には特徴がある。審査では、この一般開放する領域と学 生たちの領域を区分しすぎているのではないか、という指摘もあった。 ○受付番号2:株式会社 相和技術研究所 敷地を分けるように配された「未来モール」と「ふたばの輪」が全体構成の大きなエレメ ントになっている。 「未来モール」の利用の仕方と平面計画で示された「ふたばの輪」の在 り方が分かりにくく、ヒアリングでも最後まで明確に示されなかった。 ○受付番号 7:株式会社 SALHAUS 東側の正面に体育施設を大きく構えた案。この是非に議論が集中した。面白い提案だが、 この学校の性質から体育ばかりが強調されることに異論が出た。タテを貫くアクティブ・ラ ーニング・ギャラリー、ヨコに貫くスポーツ・ギャラリー、これらの大きな構成には見るべ きものがある。東西反転したらどうか、という意見も出たが、そうなるとこの案の主たるコ ンセプトとも異なってしまうことからこの提案は見送られた。 平成 27 年9月15日 双葉郡中高一貫校整備事業(福島県立ふたば未来学園中学校・高等学校(仮称) ) 基本・実施設計委託業務公募型プロポーザル審査委員会 委員長 内藤 廣 (東京大学名誉教授) 副委員長 長澤 悟 (東洋大学名誉教授) 委 員 大月 敏雄 (東京大学教授) 委 員 平田 オリザ(東京藝術大学アートイノベーションセンター特任教授) 委 員 丹野 純一 (ふたば未来学園高等学校長) 委 員 大沼 博文 (福島県教育庁高校教育課長) 委 員 川音 真悦 (福島県土木部営繕課長)
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