3月号 Vol.1 もくじ 能登の仕事人 Vol.1 揚げ浜塩田・角花豊さん

能登に
あつまれ通信
月号
3
Vol.1
いよいよ3月30日から、石川県能登地方を舞台とした
NHKの連続テレビ小説『まれ』がスタートします。
この『能登にあつまれ通信』では、ドラマの主人公・
まれ
津村希(土屋太凰さん)が、世界一のパティシエを目
指すというストーリーにちなんで、能登で働く人々と
地元のおいしいお菓子を毎号ご紹介します!
今回の仕事人は、能登に伝わる日本最古の製塩法・
能登の仕事人
揚げ浜塩田とその技法を守り続ける角花豊さんです。
vol.1
ドラマの中では、希の母・藍子(常盤貴子さん)が
かく はな ゆたか
家族を養うため塩田で働くシーンが登場。撮影時は
角花 豊さん
角花さんと息子さんが演技指導を担当されました。
珠洲市仁江海岸で藩政時代から揚げ浜式製塩
を行う角花家の五代目。現在 67 歳。塩士(塩
田の持ち主)であり浜士(塩を作る人)でも
ある。2008 年に角花家が継承する能登の揚
げ浜式製塩の技法が国の重要無形民俗文化財
に指定された。
しおじ
はまじ
角花家の歴史を物語る
写真。左が菊太郎さん、
右が若い頃の豊さん
の重労働です。シコケに海水が溜まったら、オチョケとい
う円錐状の桶で塩田に海水を撒きます。この時に海水を均
角花家が代々、受け継いできた
揚げ浜式という製塩方法
等に撒くのが重要。納得する撒き方ができるようになるま
この辺りで盛んに塩が作られるようになったのは藩政時
水の量を調節するのも浜士の力量。海水汲みや海水撒きの
代からです。加賀藩二代藩主・前田利常公が塩づくりを奨
技術もさることながら、天気が読めるようになるまでが難
励し、昭和 30 年頃まではこの集落で 20∼ 25 軒ほどが塩業
しい。長年の経験によって得られるものです。
を行っていました。昭和 34 年(1959)に国が実施した「第
その後、乾いた砂をタレフネと呼ばれる囲いの中に入れ、
3 次塩業整備」により全国の塩田が廃止され、文化財として
上から海水をかけてミッショウ(別名かん水)と呼ばれる濃
の観光用に 3 軒だけ残った能登の揚げ浜塩田のうちの一つが
度の濃い塩水を採取します。約 3 日分のミッショウ(450ℓ
角花家です。それからわずかの間に 2 軒が辞め、父・菊太郎
ほど)を 2∼3 時間荒炊きし、コシオケに入れて砂などの不
が唯一、揚げ浜式の塩づくりを続けました。
純物を取り除いたらいよいよ本炊き。平釜に入れて、10 時
古くから行われた製塩法として、入浜式(後に流化式)
間ほど炊き続けます。この時に大切なのが火加減。火が弱
と揚げ浜式があります。入浜式は海の干満の差を利用して
すぎると時間がかかり、強すぎると焦げ付き、いい塩にな
塩田へ海水を引き入れる方法、この地方で行っている揚げ
りません。こうして 100kg ほどの塩と 60ℓの水ニガリが出
浜式は人力で海水を塩田まで運んで撒きます。塩づくりを
来上がります。
としつね
海水汲みから炊き上げまで。
一貫して行われる浜士の仕事
揚げ浜式の塩作りは早朝から始まります。まずはコマザ
ラエという道具で塩田に筋をつけます。これで砂地の表面
積を大きくして、海水を乾きやすくします。その後、カエ
オケという桶をで海水を汲み、シコケという大きな桶に溜
めます。36ℓもの海水が入ったカエオケを運ぶのはかなり
豊さんが撒くと広範囲に均等に海水が
と浜士の技術を守り続けてきました。
砂が乾かないといけないので、天気や季節によって撒く海
広がるのがわかる
行う職人は浜士と呼ばれ、私は角花家の五代目として塩田
でには 10 年はかかります。午後 3 時までには海水の染みた
塩づくりを後世に伝えながら
能登の自然とともに生きる
小さいころから両親を手伝っていたこともあり、特別に
親から浜士の仕事を教えてもらったわけではありません
が、浜士の仕事はひととおり身についていました。ひとと
きは能登を離れていましたが、親父が病気になり自分がこ
薄い乳白色をした角花さんの塩。角のないまろ
の仕事を継ぐことになって、自分なりに経験を積んでこれ
やかな味わい
までやってきました。
塩づくりは 4 月下旬∼ 10 月頃の天気が適した日にしか行
だと思うと、たいへんに責任のある仕事です。平成 9 年
えません。塩業を営む家は塩づくりのかたわら、田んぼや
(1997)に塩の専売制が廃止されて自由販売となってから、
畑を耕して米や野菜を作り、里山と里海の味覚を採ったり
珠洲市の特産品として揚げ浜式製塩を行うところが増えて
して暮らしていたそうですが、今の私の暮らしも同じ。い
きたのは嬉しいことです。
かにも能登らしい暮らしかもしれませんね。
現在は、近くに住む息子夫婦も一緒に塩づくりをしてい
見学は 4 月下旬 ∼10 月中頃の晴天時、14 時頃から乾いた砂を
かき集めてタレフネに入れる作業が見られます。
詳細は☎0768-87-2857
ます。この角花家がなければこの製塩法が途絶えていたの
食べてみて、能登のお菓子
能登のシンボルとして有名な見附島を
地元産大豆の豆乳を使用
モチーフに作られたかわいいスイーツ
珠洲市の新名物として昨年 12 月 13 日に発
を発見しましたよ
売したプリンは、能登を代表する景勝地「見
み つけじま
附島」の形を模し、地元特産の大浜大豆の豆
乳や能登大納言小豆、能登の塩などを使用し
珠洲市
豆乳と黄身を先に
合わせるのがコツ
みつけじまんプリン
た、地元・珠洲の魅力が凝縮された一品。
このプリンを製造・販売するメルヘン日進
堂の日野知明さんのお話では「牛乳を豆乳に
置き換えるだけで作ってみたら、大浜大豆の
豆乳はとくに固まりやすいので、固いプリン
ができてしまって。プリンらしい滑らかさを
出すのに豆乳や卵の量、混ぜ合わせるタイミ
ングなどを工夫しました」と、ベテランの洋
菓子職人も試行錯誤の上で完成したという力
作だ。大浜大豆の風味を生かしたシンプルな
味なので、かのこ風に煮た能登大納言小豆の
入ったキャラメルをプリンとしっかり混ぜて
オーブンでゆっくり熱を
加える
食べるのがおすすめ。
持ち帰り用は、メルヘン日進堂と道の駅す
ずなりで販売。1 つ 380 円。E’
カフェと見附
茶屋では店内飲食 500 円もできる。みつけじ
底の能登大納言小豆は島へ続く道の
小石を、上部の緑で島の木々を表現
店 名●メルヘン日進堂
住 所●珠洲市上戸町北方イ 49-1
電 話●0768-82-0106
営業時間●8 時∼ 18 時 30 分
定休日●水曜
まんプリンについての問合せは奥能登岬みち
づくり協議会☎0768-82-7776(珠洲市観光
交流課内)
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