テレビゲームの熱中感に関する 実験的検討 京都光華女子大学 人間関係学部 酒井浩二 大草史子 1.1 テレビゲームの人間への影響 (1)負の影響 – – – – 脳活動の低下(川島,2001) 知能の低下 暴力性の向上 社会的不適応 (2)正の影響 – 臨床の一ツール(香山,1996) – 認知能力の向上(井堀,2003) • 視覚的注意力の向上(Greenら,2003) →多くの研究があるが,知見が分かれる 1.2 本研究のねらい 問題提起 人はなぜテレビゲームに熱中するのか? テレビゲームする動機 ①外発的動機:話題づくり,友人と競争など ②内発的動機:それ自体が楽しい “for its own sake”(Malone, 1981) 本研究では②を検討 本研究の目的 ゲームに熱中する要因の検討 1.3 ゲームに熱中する物理的要因 ゲームの好み要因(Malone,1981) ・目標の設定 ・得点表示 ・オーディオ効果 ・ゲーム中のランダム要素 ゲームの特徴的な構成要素(林ら,1995) ・時間的要素 ・キャラクタの成長・面クリア ・ストーリー ・謎解き ・問題解決機能 1.4 ゲームに熱中する心理的要因 3つの要因(Malone,1981) ①挑戦(challenge) ・目標 ・予測不可な出力(ランダム要素など) ②想像性(fantasy) ・外発的な想像性 スキル使用が想像性と深く関連せず ・内発的なファンタジー スキル使用が想像性と深く関連 ③好奇心(curiosity) ・感覚的な好奇心 感覚的刺激に対する注意の喚起 ・認知的な好奇心 整合する知識の構築 1.5 本実験で用いたゲーム テレビゲームのジャンル シューティング,アクション,RPG,など 本実験 ・テトリス(パズル系)の熱中感の検討 ・ジャンルによりゲームの熱中感は大きく相違 →ジャンルごとの熱中感の検討が必要 テトリス使用の理由 ・広く普及 ・ゲームの操作・目標が容易 ・ゲームに不慣れな被験者でも楽しめる ・短時間で楽しめる 2.方法 2.1 装置 ゲーム機-プレイステーション ゲームソフト-テトリス 2.2 被験者 女子大生11名 2.3 手続き 練習5分 休憩2分 本実験25分でテトリスをプレイ ・テトリスのレベルは,全被験者で同一 ・1プレイが終了→最初のレベルからプレイ続行 プレイ後,5段階評定 ①熱中感の4要素:目標性,報奨性,操作性,現実性 ②プレイ中の欲求 ③熱中感 3.結果 3.1 プレイ時の欲求 項目により平均値の差が比較的大きい 1 A1.早く次のレベルに上がりたい A2.高得点が欲しい A3.操作がうまくなりたい A4.早く次の手を考えられるようになりたい A5.コンピュータのパターンを読みたい A6.ゲームオーバーにならないようにしたい A7.途中でセーブしたい A8.より少ない回数で高得点を得たい 2 プレイ時の欲求 3 4 5 3.2 熱中感に関する4要素 (1)目標性 平均3.7 1 2 3 4 5 1 2 3 4 5 ①目標が分かりやすい ②目標に対するレベルが適切 ③場面を終了すると次の目標が呈示 ④場面を終了すると難しくなる ⑤自分で目標が立てられる ⑥出来そうで出来ない点がよい (2)報奨性 平均3.9 ①特別な条件を満たすと音が鳴る ②特別な条件を満たすと得点される ③場面を終了すると映像が変わる ④特別な条件を満たすとより有利 (3)操作性 1 2 1 2 3 4 5 ①操作が簡単 平均4.4 ②操作が理解しやすい ③ボタン押しで思い通りに操作できる ④適切な操作で良い状況に変わる ⑤不適切な操作で悪い状況に変わる (4)想像性 ①見た目が綺麗 平均3.1 ②立体的 ③絵が現実的 ④動きが滑らか ⑤音楽が場面の雰囲気に合っている 3 4 5 3.3 熱中感に及ぼす4要素の影響 重回帰分析の結果 目標性 報奨性 操作性 想像性 標準化係数 0.844 -0.495 0.587 0.523 有意確率 p < 0.05 n.s. p < 0.10 p < 0.10 熱中感への影響 ・目標性-有意に寄与 ・報奨性-有意に寄与せず ・操作性,想像性-有意傾向で寄与 4.考察 4.1 目標性は熱中感に影響 テトリスでの目標 即時的 なるべく早くブロックを落下 一時的 なるべく早く横1列そろえる なるべく一度に横2列以上そろえる 最終的 なるべく長時間ゲームを続ける 目標が非常に明確かつシンプル→熱中感 報奨性は熱中感に影響せず 熱中感への影響-×目標達成による状況変化 ○目標達成自体 4.2 操作性・想像性は熱中感に影響 テトリスでの操作性 ブロック移動の操作がシンプル 課題の明瞭さ→目標性の単純さ→熱中感 ブロック移動が自由に操作可能 高いコントロール感→自尊心の増大→意欲感 テトリスでの想像性 ブロックの落下・回転 ブロックの崩壊 →「ブロック崩しゲームでブロック崩壊は面白さに 大きく影響(Malone, 1981)」と関連
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