『障害者雇用』 企業のできる事 株式会社ダイドー 総務経理部 向 雄一 会社概要 ■ 1951年2月 設立 ■ 全国2営業所5工場 本社・東京営業所 本社工場・宇都宮工場・東北工場・静岡工場・山口工場 ■ 代表取締役社長 追田 尚幸 ■ 従業員数280名 ■ 販社:株式会社ダイドー 事業内容 ■ コンセプト Housing Parts とMoving Technologyで 全ての人に生活変化の楽しさを提供する 住宅建材 住宅設備 リフォーム 住宅関連部材の 開発・設計・製造・販売 直販事業 当社の強み(他社との差別化) ■ 生産技術部による内製設備 自社の受注・生産形態に適した加工機械設備を製作 『安全』 『コスト』 『生産性』 ※ 人にやさしい機械設備による生産対応 (60歳以上高齢者+女性作業者+障害作業者 = 39名/95名(40%)) ※ 内製設備設置率 7割 安全への取組 - 安全理念 - いくら利益がでても、会社が豊かになっても社員の安全・健康なくして会社は成り立たない 平成12年7月まで休業災害無災害記録7604日(20年10か月)。 平成26年4月まで休業災害無災害記録5020日(13年09か月)。 約35年の間で、休業災害2回だけ。 写真左 平成17年 厚生労働大臣優良賞 写真右 平成21年 安全功労者内閣総理大臣表彰 障害者法定雇用率 平成23年 従業員数 平成24年 平成25年 平成26年 平成27年 253人 259人 265人 281人 273人 法定雇用率 1.8% 1.8% 1.8% 2.0% 2.0% 法定雇用数 4人 4人 4人 5人 5人 雇用人数 6人 6人 6人 7人 8人 ・ ・ ・ ・ 身体障害者重度1名 身体障害者4名 精神障害者1名 知的障害者1名 丸亀博之さん雇用事例 時系列 概要 平成26年06月 「金属製品 組立・梱包・ピッキング・簡易加工」の一般求人に対して面接 応募 担当支援員同伴で面接し、2週間の実習期間 担当支援員・親御さん同伴で面接 平成26年07月 採用+ジョブコーチ支援 平成26年12月 プライベートでてんかん発作で倒れる(ご家族からジョブトレーナーを通じて 会社に報告あり)。 平成27年01月 ご家族・担当支援員・ジョブコーチとヒアリング実施し、緊急時対応のマ ニュアル作成。 平成27年02月 作業中にてんかん発作で倒れる(緊急時対応マニュアルに沿って対応)。 ご家族・担当支援員とヒアリング実施 今後の対応について 現在 ・ 会社として取り組む事 ・ 家族の生活面の支援・体調管理 2週間の実習期間 ・ 障害者、健常者関係なく1番重要なポイント。 得意分野 不得意分野 体力・寡黙・真面目 コミュニケーション(特に情報発信) ・ 当社に既存にあった作業 ■ 各製品組立のセルラインにおける、 ・ 製品付属させる説明書の作成業務(前段取り) ・ ビスの員数管理セットの作成業務(前段取り) ・ セットしたビスの締結(前段取り) ・ 製品梱包するダンボールの組立・セット - 作業特徴 – 前段取りの単調作業。集中力を切らすと数が上がらないが生産性をあげるには、重要な作業。 (めんどくさく、あまり遣り甲斐を感じにくい。また単調作業は疲労感も伴う。) 2週間の実習期間 ・ 障害者、健常者関係なく1番重要なポイント。 得意分野 不得意分野 体力・寡黙・真面目 コミュニケーション (情報発信・複数の情報受信) ↓ 当然強み!! ↓ モクモクと数を上げないといけない単調作業 は疲労感とポカミスを伴う作業。 マイペースな所はあり、レイティング(作業する 手のスピード)は遅いが、私語なくモクモクと やり続ける事ができる為、1日の定時間あた りに上げる量は、健常者と同等からそれ以上。 ↓ 逆に強み!! ※ 丸亀さんは1つの仕事だけでなく、簡易作業であれば、複数の仕事を理解し、こなす事もでき る。簡易作業であれば多能工もできる。 2週間の実習期間 ・ 障害者、健常者関係なく1番重要なポイント。 企業採用側のメリット 企業採用側が配慮すれば良い事 求職者の能力と、作業内容がマッチングして いれば戦力となる。 朝礼・全体朝礼出席の免除。 丸亀君の不得意分野(コミュニケーション)。 企業には、障害者雇用の使命がある為、それ 担当支援員の工場内の出入り。 を果たす事ができる。 採用にあたって、企業は様々な助成金を受け 仕事指示方法の工夫等。 ることができる。 困った事があっても、支援機関(クロスジョブ) 周りの従業員への理解と協力。 に相談すれば良い。 ■ 「メリット」と「配慮すべき事」を検討して・・・・・ 問題無し!! ジョブトレーナ・親御さん同伴面接 ・ 面接でのポイント ■ しっかりと障害者のお子さんと向き合っているか?お子さんの特徴がわかっているか? 本人の得意なことと不得意なこと(生活の中で見える本人と作業する場で見える本人は違う)、 知的障害・自閉症等の発達障害のお子さんを持つ親御さんにたまにおられる。 ■ 何かあった場合に、コミュニケーションが取りやすいように顔合わせをしておく。 大企業になればノウハウのある専門担当者を配置、雇用する事もできるが、中堅企業以下中小 企業はそういうわけにはいかない。専門知識や対応方法についてのノウハウが素人の為、どうし ても不安がある。何かあった場合に、家庭への相談、また逆に職場における状況の報告等が必 要となるケースが出てくる事に備えておく必要がある。 採用 プライベートでてんかん発作 ■ 年末年始休暇中、てんかん発作で倒れるという事があった。 ・ てんかんかどうかの検査が必要な為、年始に担当支援員から連絡を受け、検査の為、通院が 必要な日程計画について連絡を受ける。 <Point> ・ 親御さんがてんかん発作・転倒であったことが、正直に担当支援員に相談されている点 (会社に黙っていても、わからない) ・ 年末の一度だけで、その後同様の症状がない為、様子を見る事に。 ・ 緊急時に備え、緊急時の対応方法のマニュアルを、「会社-担当支援員-ご家族」で作成準 備した。 作業中にてんかん発作 ■ 2度目の失神が職場作業中に起こる(平成27年02月)。 ・ 幸い、ケガなし。緊急時の連絡、その他処置等のマニュアルを生かし、混乱を最小限に抑える 事ができた。 しかし、企業として考える事は・・・ 次に急な失神で倒れた時に、大きなケガ、災害になるかもしれない。 周りの従業員がやはり動揺する。 管理者の仕事も止まり、対応に追われると非効率。 トータル的に考えると雇用延長は難しいか? 作業中にてんかん発作 ■ 本人・ご家族・支援員とヒアリング実施【今後の対応について】 ヒアリング 失神する前兆(体調の異変)有無 失神・転倒時の対策 労働災害の扱い 雇用の継続について 発作の前兆(体調の異変)有無 ■ 本人に確認したところ、発作が起こったその日は午後から体調が悪かった(しんどかった)こ とがわかった。 本人の生真面目な性格上仕事を優先する傾向にある事がわかった。 ※ 当日も発作から意識を取り戻すやいなや、立ち上がり作業を再開しようとした。 • • • ジョブコーチにより、1日の定時間に体調チェックシートを作成。 チェックシートに体調によって〇△×印をつけるようにし本人の体調変動を見る事に。 ×印がついている場合、監督者は丸亀君の作業を中断させるルールを決めた。 発作・転倒時の対策 ■ 工場での作業は立ち作業を原則としているが、経営トップの判断指示により、座り作業の特 例が出る ■ 立っている場合より、リスクを軽減させられる為、生産技術部で作業台の高さに合わせて、高 さを変更できる、作業椅子を製作 作業台の高さに合わせることが可能な、 作業椅子。 作業場移動の際、持ち運びを便利にす るために、折りたたみ式でキャスターを装 備。 労働災害の扱いについて ■ 工場は「安全第一」。当社の経営方針展開の取組の中にも無災害記録の継続があり実績が あり、社員のモチベーションの一つにもなっている。 ■ 労災保険を適用すると、メリット制の為、大きな労働災害になると、次年度の保険料に影響を 与える。 ■ 判例では、てんかん等発作による転倒災害等の労働災害は適用されていない(日常でも起 こり得る事である為)。 ご家族に説明、理解、了承を得る。 雇用の継続について ■ 7月からの丸亀君の働きぶりから、十分に戦力となっている為、今回の就労中の発作だけで、 雇用を中断するという判断はしない。 ■ 但し、契約期間内に複数回の発作等があった場合は、やはり雇用の継続は難しい。 ※ 発生時のリスク、管理職が対応で仕事の中断が発生する、周りに動揺を与える等。 ■ 通院・薬服・健康管理を含め、再発防止に努める。 ご家族に説明、理解、了承を得る。 総括 当社の経営者のポリシーは 『従業員満足(Employee Satisfaction)』 ・ 当社の経営者は従業員の幸せを考えられ、「一度入社した従業員は『家族』である」と口にさ れます。 ・ 「ES」達成の為には『顧客満足(Customer Satisfaction)』を通した会社への貢献が必要。 ・ 健常者、障害者関係なく『利益貢献ができるか』が従業員としての心得でなければならない。 ・ 丸亀さんは、障害特性を活かし、モノづくりの戦力として、会社に貢献できている。 ・ 会社に貢献できている従業員に対し、今回の配慮は当然である。 ・ 健常者、障害者関係なく入社した限りは当社の中で成長して欲しいという経営トップの思い。 家族の理解 ・ 健康管理をはじめとする、就労に対するサポート(企業・家族の連携) ・ 企業の障害者雇用に対する「考え方」「立ち位置」「状況」に対する正しい理解 ・ 障害者に限らず、従業員とその家族は、会社への感謝とロイヤリティーを高める事が経営者と 従業員双方にとって、相乗効果で幸せのスパイラルになる。 支援機関の活用 ・ 企業も家族も困った事があればクロスジョブ(支援機関)を活用する。 ・ 今回の丸亀さん雇用が、現状上手く推移できているのは、企業・家族双方の理解と支援機関 のサポートのおかげです。
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