1 北極海航路を通じて 北欧社会が見る 北海道,日本,アジア コペンハーゲン大学 政治学部 北欧アジア研究所 研究員 礪波亜希 [email protected] 2015年7月1日 北極海航路活用戦略セミナー in 苫小牧 2 自己紹介 礪波(となみ)亜希 コペンハーゲン大学政治学部 北欧アジア研究所 (Nordic Institute of Asian Studies) 研究員 2004年3月 京都大学大学院 経済学研究科修士課程 修了 2007年3月 京都大学大学院 地球環境学舎博士課程 修了 京都大学博士(地球環境学) 2008年1月〜2010年1月 在オランダ日本大使館 専門調査員 (オランダ内政・外交) 3 北欧アジア研究所 1968年設立 コペンハーゲン大学政治 学部内 研究部,出版部,図書部 資金提供機関 - 北欧大臣 評議会(The Nordic Council of Ministers), 26の参加大学 http://www.teacollection.com/destinations/nordic 4 背景 • 北極評議会 (Arctic Council) • 2000年代後半〜: アジア諸国による オブザーバー資格 申請 • 2013年5月: 第8回閣僚会合 (於スウェーデン・キルナ) • 伊,印,韓,新,中,日 5 6 “ASIA IN A CHANGING ARCTIC” 2012年〜2014年 研究プロジェクト 北欧大臣評議会 ヒアリング, 各種データ収集 報告書 “To the benefit of Greenland” 7 中国の北極政策 • 過去20年間で様々な北極関連国際枠組みに参加 • 国連海洋法条約(UNCLOS) • 2011年:国家海洋局極地考察弁公室 陈连增(Chen Lianzeng)副主任(当時) 「中国の5カ年極地政策は『極地権』をさらに守るために 中国の『地位と影響力』を向上させること」 • 北極に対する権利 • スヴァールバル諸島での科学的・経済的活動 • 北極評議会へのオブザーバー参加 • 科学調査,運輸,観光,漁業のための北極海利用 • 北極圏での空路利用 • 国際ガバナンス制度下での意思決定過程への参加 • 鉱山開発事業の入札等,経済開発 • 深海鉱山開発事業の入札 8 中国の北極政策(2) 中国 日本 極地探検隊 なし 1910〜1912年(南極) スピッツベルゲン条約 (1925年) 1925年 原加盟国 国際北極科学委員会 (IASC)(1990年) 1996年 1990年 国立極地研究所の設立 1989年 1973年 スヴァールバル観測所の 設置 2003年 1991年 スヴァールバル観測所 拠点数 1 2 スヴァールバル以外の 北極圏の観測所 なし グリーンランド, フィンランド, アイスランド他 極地観測用の砕氷船数 1 (1隻建造中) 1 北極研究事業 なし GRENE(2011年〜) 9 中国の北極政策(3) • 戦略的関心 1. 安全保障(経済・政治・軍事) 2. 資源 3. 科学技術 4. 統治権 5. 航路 6. 戦略的鉱物・炭化水素 7. 環境問題 10 中国の北極政策(4) • 北極の重要性 • 将来の石油・鉱物需要 • 北極海航路・空路の確保は世界随一の勢力となるために不可欠 • 対外姿勢と対内姿勢間のへだたり • 様々なレベル及び機関を通じた関与を推奨 • 北極情勢に対する発言権(「話語権」)を強化 • 北極,北極圏におけるビジネスチャンスなどに関し,市民に対して 啓蒙活動 • 比較的寛容な北極海沿岸国に対する積極外交 • アイスランド,グリーンランド,デンマーク,ノルウェー, スウェーデン • China-Nordic Arctic Research Center (2013-) • 米,露,加を挑発するようなことは忌避 11 韓国の北極政策 • 1970年代後半:科学的 調査開始 • 2002年〜: スヴァールバル観測所 • 2009年〜: 砕氷研究船・極地調査 船 アラオン号 • 大統領府による強力な リーダーシップ 12 韓国:主な関心事項 1. 北極海航路 2. 資源開発 3. 科学外交 13 韓国:北極海航路 • 2013年2月: 朴槿恵政権 140項目の国政課題 • 「北極海航路及び 北極海の開発」が 第13項目 • ハブ港としての釜山, 蔚 山 • 造船業界 14 韓国:資源開発 • 96.4%のエネルギーを輸入に依存(2012年度) • エネルギー供給源の多様化不可欠 • 第一次国家エネルギー基本計画(2008〜2030年): エネルギーの自立社会を目指す • 第二次国家エネルギー基本計画(2013〜2035年): 高効率システム化を通じ,エネルギー低消費社会の 実現を目指す • 科学的調査と資源探索の共存:アラオン号を利用して ボーフォート海(加・米)にて海中永久凍土層の調査 及びメタンハイドレートの試掘(2013年9月) 15 韓国:科学外交 • グリーン成長 • 量的成長から,低炭素・質的 成長へ • エコロジカル近代化 • 環境への投資を通じて 経済成長 • 北極海沿岸国との協力 不可欠 • フィンランドとのMOU (2014年11月) • 国際的プロファイルの改善 の手立て 16 アジア諸国の全体的な特徴 • エネルギー資源の大部分を輸入に依存 • 海洋国家 • 貿易国家 • 開発志向型国家 17 総論 • アジア諸国の北極海政策≈科学技術外交 • より「経済的関心」中心ではあるが, 「政治的関心」がないとは言い切れない • 経済安全保障の重要性 18 NIASの取り組み 中国-北欧北極研究 センター(China-Nordic Arctic Researcher Center) メンバー 中国・復旦大学 ヨーロピアンセンター設 置 韓国極地研究所, 延世大学との協定 19 グリーンランド大学での集中講義 2013年12月 アジア・インサイト 政府・大学・企業 関係者,学生対象 日中韓に関する2日間の集中 講義 先住民が多数を占め, 日本の先住民の扱いに関心 20 NIASセミナー:北極海航路の未来 2014年1月 大塚夏彦博士による 講義 海運,政府,大学 関係者 21 セミナー:アジア諸国の北極海航路戦略 2014年12月10-11日 フィンランド・ トゥルク大学 欧州(英・フィンラン ド・ノルウェー), 日中韓印 22 LET THE ARCTIC SILK ROAD COME (北極シルクロード) Paradiplomacy by subnational actors of Hokkaido (北海道のサブ国家アクターによるパラ外交) 23 サブ国家(SUB-STATE) アクターと 北極海航路 サブ国家アクターとは 行政単位,自治区, 市町村等 ロシア アルハンゲリスク, ムルマンスク, ペトロザヴォーツク… 北海道 日本列島最北端 北極海航路に関する政策の 形成,推進 Image: Wikimedia Commons 24 パラ外交(PARADIPLOMACY) Wolff, 2007 比較的新しい分野の国際関係論 サブ国家的存在の「外交政策能力」 サブ国家的存在による独自の国際的な目標を達成するため の国際場裡への参加.国家ないし首都から独立して 行われる. 25 既存研究 Cornago (2000) 日露関係,サハリン・北海道関係 Williams (2006) 北方領土においては,日露両政府から国際活動が奨励されていた Serguin & Joenniemi (forthcoming) パラ外交はサブ国家的存在及びプーチン政権にとって現在も重要 ロシアからの見地が主流 北海道の視点は? 日本の北極海航路政策における北海道の重要性 26 本研究の問い 1. 北海道のサブ国家的アクターによる国際活動の 背景に存在する動機とは? 1. 北海道のサブ国家的アクターの主なパラ外交 戦略,施策,制度とは? 3. 日本政府と北海道の関係ないし日本の外交政策 に対するパラ外交の影響? 27 背景 ハブ港としての苫小牧? 北海道とロシア (サハリン)との ある種特別な関係 国家事業の「破綻」 (1999年頃) 苫小牧東部開発計画 大規模工業開発プロジェクト Image: Port of Tomakomai, Wikimedia Commons 28 研究手法 Sergunin and Joenniemi (forthcoming) パラ外交理論 外交政策分析(Foreign Policy Analysis) 外交政策の意思決定 (Allision 1969) 国際・国内政治環境の評価 目標設定 政策オプションの決定 公式な意思決定 政策オプションの実施 Two-level ゲーム (Patnum) 各国の外交政策担当者は相互で目標を設定するが,各担当者はそれぞれ独自の関心や, 外交政策に関する独自の考えもつ,国内の集団からやってくる(国内環境が外交政策 にもたらす影響) ヒアリング,政策文書 29 まとめ:北海道と北欧 日露関係における 重要なアクター 北方地域の先住民 としてのアイヌ かぼちゃ (ホッカイドウ) 30 参考文献 • Brady, A.-M. (2014). China: Making Arctic Inroads. WWF Magazine The Circle, 2014(3), 8-9. • Chaturvedi, S. (2014). India's Arcitc Engagement: Challenges and Opportunities. Asia Policy(18), • • • • • • • • • • 73-80. Chen, G. (2012). China’s emerging Arctic strategy. The Polar Journal, 2, 357-371. Hong, N. (2012). The melting Arctic and its impact on China's maritime transport. Research in Transportation Economics, 35(1), 50-57. Jakobson, L., & Peng, J. (2012). China's Arctic Aspirations. SIPRI Policy Paper(34). Lasserre, F. (2010). China and the Arctic: Threat or cooperation potential for Canada? China Papers(11). Palosaari, T. (2011). The Amazing Race. On resources, conflict, and cooperation in the Arctic. Nordia Geographical Publications, 40(4), 13-30. Solli, P. E., Rowe, E. W., & Lindgren, W. Y. (2013). Coming into the cold: Asia's Arctic interests. Polar Geography, 36(4), 253-270. Tonami, A. (2013). Arctic Newcomes: The View from Japan, South Korea and Singapore. Global Asia, 8(4), 102-106. Tonami, A. (2014). The Arctic policy of China and Japan: Multi-layered economic and strategic motivations. The Polar Journal, 4(1), 105-126. Tonami, A. (2015, forthcoming). China and Japan in the Arctic: Economic security and the role of foreign policy for the ‘developmental state’. In L. Heininen (Ed.), Future Securities of the Global Arctic: Defense, Sovereignty and Climate. Basingstoke: Palgrave MacMillan. Watters, S., & Tonami, A. (2012). Singapore: An Emerging Arctic Actor. In L. Heininen (Ed.), Arctic Yearbook 2012 (pp. 105-114). Akureyri, Iceland: Northern Research Forum.
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