学芸出版社セミナー 2015年1月30日 松尾 雅彦 1. 「スマート

学芸出版社セミナー
2015年1月30日
松尾 雅彦
1.
「スマート・テロワール」 出版の狙い
「東京1極集中」の対極として「日本を農業国」にすること
工業化して最初に豊かな国になった英国は、現在農業国である(野口教授)
英国から工業化の覇権を奪った米国は、将に農業国である。
アジア諸国の工業化で輸出力が減退した日本の生きる道は農業国である。
農業国となれる3つの条件
① 農業を政府が管掌せず「地域主権」であること 太陽と大地の賜物
② 農産業の垂直統合を支援する研究機関が「プラットホーム」になること
③ 地域住民は農家・加工食品業・流通サービス業を支援して地元産を尊重
地域住民が鍵を握るということは、供給者と消費者が近所で接点を持つこ
とで、農業に「品質管理」を導入できることです。
日本の製造業が成功したのは「TQC」で全員参加の経営を開発したこと
TQC:米国から導入した統計的品質管理-上からの標準化-を、消費者と生
産現場を主役にして米国との競争に優位に立った
日本の農村部は、上記3条件を30年かけて構築すること
2. 何事も『時代の変化』に対して、適応しなければ『ジレンマ』となる
1960~70年代に社会構造の根本的な変化が始まった (P30など)
食料供給不足社会→供給過剰社会への転換
豊かな社会が到来して、食生活のライフスタイルに大きな変化が起こった
家庭料理が主体の社会
⇒
加工食品・外食が主体の社会
米と野菜を市場経由で流通
契約取引で製品となって流通
<個人戦> 対策は規模拡大
<団体戦> 対策は工場に対応
カルビーは「時代の変わり目」にバレイショ事業で登場。
日本の農村と基幹産業「農業」が衰退し、消滅の危機を迎えている要因を解
明し、提言することは私の使命
~世界史を変えた“じゃがいも”の魔性~
原産地は南米、欧州に渡りドイツ・ロシアを最強国にして、1960年代からのファースト
フードのトレンドの主役マックのハンバーガー・ポテトフライ・コーラ/ポテトチップ
日本では、生バレイショは輸入禁止作物 魔性をコントロールできなかった日本の農業界
バレイショは野菜性と穀物性の両面を持ち、どの国でも最重要の作物となっている
カルビーは、バレイショ事業で栽培・加工・流通の3局面に「品質管理」を持ち込んだ
問題発見:日本を3つに層別→少子化の根本原因
(P40日本地図)
都市向きの少子化対策はムダ 農村の人口流出を止め、女性職場を回復する
イタリアの最も美しい村:シングルマザーが少子高齢化を予防している
3.
「スマート・テロワール」は農村が永遠に続く国際競争に参加する『砦』
市場経済下の米と果菜類の農業は「個人戦」:潰された穀物(P224)
農業でのチームは「テロワール」
:栽培・加工/サービス→品質管理の連携
テロワールの片方の主役は、住民(消費者)・・・だから「スマート」
米国の農業製品はなぜ世界の農村を攻めるか?・・・生産力>域内需要量
(米国の食料自給率約90%
日本の自動車
国産比率約90%
TPP の論議の実態)
日本の現実は自給率38%・・・・・・・・・旺盛な消費>乏しい生産力
(作物別自給率の変化 1965→2013 P24 穀物を輸入に依存)
自給圏の形成:生産量>消費量→他地域へのマーケティング力が必要
域内の交換:市場経済→非市場経済(第3章 K.ポランニー「大転換」
)
契約栽培:J.R.シンプロット開発 優先供給先の加工場がマーケティング
為替リスク・相場変動リスクから解放され、天候リスクのみに専念できる
欧州の対米食料戦争:産地認証制 品質管理で強力な地域ブランド
4. 「スマート・テロワール」は、農村の理想像を描くことに貢献したい
農村は、大都市部よりアトラクティブになれる→『ビジョン』で示す
「美食革命」:農村部の住民は、自身のライフスタイルに投資すること
現代の若年層の1/3は、農村志向 海外志向を上まっている
未利用資源(埋もれている宝)の活用:日本の8割の資源は農村にある
① 過剰な水田・・・大地の有効活用(中山間地の水田は3割のムダあり)
② 衰退している食品加工場の復活
③ 傾斜地を流れる水資源のエネルギーとしての活用
④ 身の回りにある宝を見出す“人の眼” 政府のお金は“眼”を潰す
⑤ 村の憲章「約束を守る 嘘をつかない 清潔で簡素な生活を守る」
非市場経済へ:市町村の家政経済(自給自足 自立)と互酬経済(広域連合
を組み相互に協力して自給圏を形成)を拡大して、大都市の市場経済へ
5. 「スマート・テロワール」を書いて判ったこと
① 【格差の拡大する社会】先ずは農村に柱を建てること→都市も変わる
② 米中は準同盟関係:東アジア諸国は、皆農政で失敗している
③ 第9交響曲合唱付きの意味 シンプルな調べが「歓喜の歌」になる
~武士(官僚)の商法のバカらしさ~
国会の議論:民主党長妻昭議員の質問にたじたじの安倍首相。いよいよ始ま
ったピケティの経済論議。成長が先か、格差対策が先か?
生産性の低下:産業界の意向を汲んで製造業で非正規雇用を拡大したこと
虐げられた人々がはるかに多いのに、投票所に足を運ばせる議論をすべき
NHK「NEXT WORLD」先端科学者の愚かさ 人類の基礎は「共生」