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平成27年1月30日
第1回口頭弁論/市長冒頭陳述要旨
1.
導入
本日、意見陳述の機会を与えていただき、誠にありがとうございます。傍聴に来られてい
ます摂津市自治連合会会長、鳥飼地区自治連合会会長をはじめ、井戸掘削に反対する署名を
いただきました市民を代表しまして、本件について、3点にわたって意見陳述いたします。
第1に東海道新幹線の開業前から今回の提訴に至るまでの経過について申し上げます。東
海道新幹線が開業する前といいますと、摂津市はまだ三島町のころでございます。当時は静
かな農村地帯でありましたが、そこに夢の超特急が走るという話が持ち上がり、日本国中で
驚きの声が上がったことを記憶しております。それに加えて、鳥飼地区には車両基地ができ
るということで、当時、地域では、驚きと不安の中、様々な問題が持ち上がったことを昨日
のことのように思い出します。紆余曲折を経て、50年前、新幹線は市域を縦断するという
形で開業いたしました。その後、開業前には思いもよらなかった、新幹線の騒音・振動で、
当時、摂津市がひっくり返るように大騒ぎになったことも覚えております。それから、間も
なく、今度は極端な地盤沈下が判明いたしました。当時、摂津市は新幹線のあるまち、車両
基地のあるまちとして全国に大きく発信し始めていました。先人は排除の論理ではなく共
生の道を選ばれたのだと思います。先人がいろいろと知恵を絞った結果が、この環境保全協
定であります。この協定は当時の国鉄と摂津市との約束事であります。これまでこの協定に
基づき、お互いがお互いの立場を尊重してきたからこそ、安全安心をモットーに鳥飼車両基
地が機能し、地域と共生してきたと思います。
ところが、JR 東海は突如として今般、鳥飼車両基地で井戸掘削工事を進めています。
摂津市では共生の道を求めて、環境保全協定を遵守するよう再三再四要請いたしましたが、
JR 東海の強硬な姿勢に変わりはありませんでした。
裁判で争う。これは決してベストではありません。しかし、8万5千市民の安全・安心、
これを何としても守り抜くために提訴に踏み切らざるを得なかったわけでございます。
2.
昭和52年協定の締結経緯
第2に、本市が昭和52年に当時の国鉄と環境保全協定書を締結いたしました経緯につい
て申し上げます。
東海道新幹線が開業しました昭和39年から昭和47年にかけて、鳥飼車両基地周辺で著
しい地盤沈下が発生いたしました。最も被害が甚大であった地域が新在家地区で、八幡宮の
観測地点で46.1センチメートルの沈下を記録しました。
当時、鳥飼車両基地では日量2000トンから2500トンの地下水を汲み上げており、
基地周辺でこのような大量の地下水のくみ上げを行っている事業者が他にないことから昭
和48年4月23日付文書で、新幹線総局に対して、地盤沈下と地下水の汲み上げの因果関
係を指摘し、地下水くみ上げの抑制と、用水供給源を摂津市上水道または大阪府営工業用水
に切り替えることを要望しました。
これに対して、当時の国鉄も鳥飼車両基地内で地盤沈下が起きていることを認めており、
その対策のために「水源を工業用水、上水道に切り替えたいので、摂津市に協力してほしい」
との要請がありました。
摂津市はこれに応じ、昭和51年12月15日付で、「新幹線鳥飼基地配水管布設工事に
伴う維持管理等に関する協定」を締結し、鳥飼車両基地のために新たな配水管の布設工事を
行い、上水道による日量1800トンの供給を確保することとしました。
以上の経緯を踏まえ、摂津市と旧国鉄は昭和52年9月20日「地下水の汲み上げを行わ
ない」とする環境保全協定を締結いたしました。当時、地下水の汲み上げは法律、条例で規
制されていない中での協定の締結であり、以後民営化した JR 東海とも昭和63年9月1
日、平成11年4月6日付で同趣旨の協定を繰り返し締結しています。
この環境保全協定は、摂津市域の公害の現状及び将来の動向を考慮し、住民の健康を保護
し、良好な環境を図ることを目的とし、事業者の事業場の操業に関し協定を締結したもので、
鳥飼車両基地全体が対象であることはだれが見ても明らかです。また、
「地下水の汲み上げ
を行わない」ことは環境保全協定の経緯からも、当時の国鉄から現在の JR 東海に継承され、
確約されていると認識しています。
3.
JR 東海の解釈の不当性
最後に、JR 東海の解釈の不当性について申し上げます。
JR 東海は、鳥飼車両基地のうち、茨木市域で井戸を掘削するのであるから、摂津市の行
政管理区域外であり、環境保全協定の効力は及ばない旨主張しています。
しかしながら、鳥飼車両基地はその97%が摂津市域にあり、地形的には安威川によって
茨木市域と大きく隔てられております。鳥飼車両基地に僅かながら含まれる茨木市域の土
地は、安威川の南、すなわち摂津市側に位置しており、地形的には、他の茨木市域よりも、
むしろ摂津市域と連続性、一体性を有しています。 さらに、鳥飼車両基地は安威川以南の
摂津市域と大きく隣接しております。このような鳥飼車両基地の立地条件・環境から思料す
るに、基地内の活動の如何によっては、当然にして摂津市内の環境に影響を及ぼすと考えら
れます。このことからも、行政管理区域外での活動であるがゆえ、協定の効力は及ばないと
する JR 東海の主張は失当であると言わざるを得ません。私は、協定の効力が及ぶか否かに
ついては、地理的地形的条件をはじめ、過去の経緯、及び協定締結の目的等を総合的に勘案
し判断すべきものであると考えております。
鳥飼車両基地は土地を提供した市民の協力があってこそ現在の姿があります。現在でも新
幹線の騒音・振動に悩まされている多くの市民がおられます。ましてや、地盤沈下は修復不
可能な公害です。鳥飼車両基地のうち、茨木市域はわずか3%に過ぎません。井戸を掘削す
る地点が茨木市域であっても、鳥飼車両基地周辺に地盤沈下を引き起こす恐れがあること
は変わりがなく、JR 東海の解釈は一般市民の常識に照らして、到底、納得が得られるもの
ではありません。過去の地盤沈下は、当時から住んでいる市民にとっては周知の事実であり、
JR 東海が地下水を汲み上げるため、すでに工事を進めていることに強い不安を感じていま
す。
摂津市は JR 東海に対し、協定を遵守するという企業として当然のことを求めているに過
ぎません。
裁判所には、鳥飼車両基地周辺住民の強い不安をご理解いただき、市民の納得が得られる
よう、環境保全協定締結の経緯を十分斟酌していただき、常識的な判断を行っていただきま
すようお願いいたします。
以上で陳述を終わります。