日本版スチュワードシップ・コードへの対応状況について

2015年10月23日
株式会社かんぽ生命保険
日本版スチュワードシップ・コードへの対応状況について
当社は、2014年5月に、日本版スチュワードシップ・コードの受入れを表明いたしました。
当社は、国内株式の運用を信託銀行や投資顧問会社等の運用受託機関への委託により実施して
いるため、委託者の立場で、運用受託機関から本コードに関する取組方針・実施状況につき報告
を求め、問題がないか確認することや、運用受託機関の選定や評価にこれらを反映させることな
どを通じて、スチュワードシップ責任を果たします。
また、運用受託機関からスチュワードシップに関する取組状況および株主議決権行使結果につ
き定期的に報告を受け、取りまとめたものを公表することとしています。
これに基づき、今般、運用受託機関から、2014年7月∼2015年6月のスチュワードシ
ップに関する取組状況及び株主議決権行使結果について報告を受け、それに対しヒアリングを実
施いたしましたので、その状況について以下のとおりお知らせいたします。
1
運用受託機関のスチュワードシップ・コード受入状況
当社が国内株式運用を委託するすべての運用受託機関が、日本版スチュワードシップ・コー
ドの受入れを表明し、対応方針を公表したことを確認しました。
また、その対応方針について運用受託機関にヒアリングを実施し、内容を確認いたしました。
2
運用受託機関におけるスチュワードシップ活動にかかる対応
運用受託機関から、スチュワードシップ活動を実施するにあたり、以下の対応を実施してい
るとの報告がありました。

運用受託機関各社とも、スチュワードシップ活動にかかる会議体を設置し、その決定等に
基づき、スチュワードシップ活動を実施している。

また、複数の運用受託機関で、スチュワードシップ活動を適切に実施することを目的とし
た規程類等を新たに制定している。
3
企業との対話等(エンゲージメント)にかかる状況
運用受託機関から、企業との対話については、以下のような報告がありました。

企業との対話については、調査担当アナリストが中心となって実施している。

対話の際は、①事業戦略、②財務戦略、③コーポレートガバナンス、④ディスクロージャ
ー姿勢、⑤不祥事等、のように視点を決めて実施している。

対話等の原案は調査担当アナリストが作成し、部門責任者が、内容が妥当であるか確認を
-1-
行っている。

対話を実施する企業については、アクティブ運用における投資先を中心とし、これらに加
えパッシブ運用では ROE(株主資本利益率)が相対的に低い企業、不祥事を起こした企
業等にフォーカスして選定している。
運用受託機関による具体的な対話の事例については、以下のとおりです。
カテゴリ
①事業戦略
対話内容

収益力向上と ROE 目標の達成に向けて、ホールディング傘下の
重複事業の整理や人材交流による事業活性化が必要ではないかと
指摘。その後傘下の子会社を統合する前提で検討に入ることを公
表した。

子会社の経営不振の原因について議論し、親会社との意思疎通や
経営管理に問題があるのではないかと指摘の上、経営体制につい
ての改善余地について意見交換を実施。その際に過去に他の子会
社で実行したコスト削減策を実行させる旨の回答があり、その後
当該子会社の社長交代を発表した。
②財務戦略・資本

政策
現預金等を多く保有している企業に対し、資産圧縮や株主還元の
方針について議論。その後、今後配当を増額する方針を公表した。

解散価値を大きく下回る PBR(株価純資産倍率)は株式市場の厳
しい評価の表れであることを社長に指摘し、その主因である ROE
改善の必要性について議論。その後発表された中期経営計画で、
ROE 改善の一環として株主還元策の実行が明示された。
③コーポレートガ

バナンス
社外取締役が 1 名しかいない企業に対し、経営の牽制機能強化の
点で十分ではない点を指摘し、社外取締役の増員について議論。
その後社外取締役が 1 名から 3 名に増員された。

大株主であり関係の深い会社出身の社外監査役は独立性の観点か
ら問題があることを指摘。その後独立性の高い監査役に交代した。
④ディスクロージ

ャー
競争上の観点から情報開示に消極的であった企業に対し、投資家
との接点を増やし、市場との認識の共有を図る取組の強化につい
て意見交換。その後長期データの記載や投資家との面談機会の増
加など工夫したいとの回答あり。

IR のあり方について、市場環境や業績悪化要因の説明が少なく、
定量的に事業環境を把握できない点が問題であることを指摘。そ
の際、前向きに検討したいとの回答があり、その後改善がなされ
た。
⑤不祥事等

発生した不祥事に対し十分な説明がなされておらず、市場の評価
のみならず世論も厳しくなっていることを指摘。その際、今回の
指摘を経営トップに伝え、情報開示のあり方について再検討する
-2-
との回答あり。

子会社で発生した不祥事に関し、機関投資家は再発防止策に注目
していることから、再発防止策を開示してはどうかと指摘。その
際、社内で再発防止策は実施したが、開示については検討したい
との回答があり、その後開示がなされた。
4
株主議決権行使の状況
当社は、個別の議決権行使を運用受託機関に委ねていますが、運用受託機関が議決権を行使
するにあたり留意すべきと考える事項等を「株主議決権行使ガイドライン」として運用受託機
関に提示しています。
運用受託機関は当社ガイドラインの趣旨を踏まえて議決権行使に関する方針を策定し、議決
権を行使しています。
今年度の運用受託機関の株主議決権行使については、以下のとおりでした。

すべての運用受託機関が全件について、株主議決権を行使している。

運用受託機関各社合計で、2014年7月∼2015年6月に株主総会が開催された国内
上場企業のべ5,573社について、のべ21,944件の株主議決権行使を行った。
議案
計
1 会社提案
賛成
反対
棄権
21,391
18,577
2,806
8
① 剰余金処分
4,128
4,001
125
2
② 取締役選任
5,669
4,438
1,229
2
③ 監査役選任
5,185
4,370
813
2
④ 定款一部変更
2,888
2,817
69
2
⑤ 退職慰労金支給
766
410
356
0
⑥ 役員報酬額改定
1,734
1,703
31
0
⑦ 新株予約権発行
462
337
125
0
⑧ 会計監査人選任
40
40
0
0
⑨ 組織再編関係
150
150
0
0
⑩ その他の会社提案
369
311
58
0
(うち買収防衛策)
274
216
58
0
553
4
549
0
21,944
18,581
3,355
8
2 株主提案
1及び2の合計
※1 「組織再編関係」には、合併、営業譲渡・譲受、株式交換、株式移転、会社分割等を含む
※2 「その他の会社提案」には、自己株式取得、法定準備金減少、第三者割当増資、資本
減少、株式併合、買収防衛策等を含む
※3 「棄権」は運用受託機関の親会社等の議案
-3-

会社提案において、反対件数が多い議案は取締役選任、監査役選任、退職慰労金支給等で
あった。
主な反対例は以下のとおりです。
議案内容
剰余金処分
取締役・監査役選任
主な反対例

配当政策が妥当性に乏しい

必要以上の金融資産を理由なく保有している

独立性の観点から問題があると考えられる社外取締役・監査役
の選任

業績悪化の責任のある取締役の再任

取締役会・監査役会への出席率が低い取締役・監査役の再任

社外取締役が不在

剰余金配当の取締役会決議化

取締役の員数を大幅に増加させる

発行可能株式総数の変更につき、具体的根拠に乏しい
役員報酬額改定、

業績低迷している企業における報酬額の増枠、賞与の支給
退職慰労金支給

社外取締役・監査役に対する退職慰労金の支給
新株予約権発行

株主価値の大幅な希薄化が懸念される

発行の対象に社外取締役・監査役が含まれている

買収提案に対する検討期間が定められていない

継続的に資本効率が低迷している
定款一部変更
買収防衛策
5
今後の課題等
運用受託機関からは、以下のような報告がありました。

外部有識者招聘による勉強会や、会議体での情報共有等を通じて、組織全体のレベルア
ップを図り、対話の質の維持・向上に努める。

講演会や情報誌を通じ、ガバナンス等に関する企業への情報発信に積極的に取組む。
今般の運用受託機関からの報告において、運用受託機関各社が体制の整備や実務の具体化
などの対応を進めていることが確認できました。委託者である当社といたしましても、運用受
託機関によるスチュワードシップ活動が、今後より実効性のあるものに発展していくよう、運
用受託機関との定期的な意見交換等を継続してまいります。
-4-