北方山草(32):31-36. March 2015 北海道産植物ノート(4)北海道のアザミ、その後 つくば市 門 田 裕 一 北海道のフロラに追加されたアザミ属 6 種 alpinum All. の後続同名で、不適法名とな 私は 2013 年に北海道産のキク科アザミ る。このため、裸名であった小泉秀雄氏の 属を一旦まとめ、5 新種アサヒカワアザミ yezoalpinum を採用し、記載を与えて正式 Cirsium kenji-horieanum Kadota、エゾノミヤ に記載した。エゾノミヤマアザミという和 マアザミ C. yezoalpinum H. Koidz. ex Kadota 名は小泉源一氏が標本台紙上に記したもの et Umezawa、 テ シ オ ア ザ ミ C. teshioense だが、このアザミの名前としては最も古い Kadota、 チ カ ブ ミ ア ザ ミ C. chikabumiense のでこれを採用した。本種を独立種として Kadota、 カ ム イ ア ザ ミ C. austrohidakaense 認識する際、梅沢俊氏のご指摘が引き金と Kadota、 そ し て エ ゾ マ ミ ヤ ア ザ ミ C. なったので、同氏には学名の共著者になっ charkeviczii Barkalov の 合 計 6 種 を 報 告 し ていただいた。エゾノミヤマアザミは大雪 た (Kadota 2013)。いずれも国立科学博物館 山系と知床山地に分布する高山植物であ のホームページ、 「日本のアザミ」http: // る。 www.kahaku.go.jp/research/db/botany/azami/ エゾマミヤアザミとチカブミアザミにつ search_word.html で紹介しているので、そ い て は 本 誌 25 号 (2008) と 29 号 (2012) を れぞれの画像についてはそちらを参照して 参照していただきたい。 いただきたい。ここでは上記の各種を発表 アサヒカワアザミ (2n=68) は旭川市の他、 するに至った経緯を振り返ってみたい。 幌加内町、士別市、深川市から得られてい エゾノミヤマアザミはこれまで「ミヤマ るが、いずれも超塩基性岩地である。本州 サワアザミ」という名前で呼ばれてきたア のカガノアザミ群を思わせる、細い総苞が ザミであり、北海道の低地湿原に生えるエ 印象的な、気品のあるアザミである。2014 ゾノサワアザミの高山型とみなされてきた 年の旭川市江丹別町(基準産地)の調査で ものである。詳しく調べたところ、根出葉 は、総苞の粘る形が見出されている。 は花期に生存せず全体に軟毛が多く、葉 テシオアザミ (2n=34) は中頓別町と幌延 は軟質で、茎には狭い翼があり、総苞片 町で見出されたもので、知駒山系の東西に が 11‒12 列で扁平、雌性株が存在すること 分布する形になる。これは超塩基性岩地の などにもとづいて、これを独立種として認 崩壊地や川原に生える。姿形や染色体数が めた。このアザミを、エゾノサワアザミの エゾノサワアザミに似ているが、両者に直 変種として扱う学名 C. pectinellum A. Gray 接的な関係はないだろうと私は推定してい var. alpinum Koidz. ex Kitam. から種のラン る。 クに格上げすると、Cirsium alpinum (Koidz. チカブミアザミ、アサヒカワアザ ミ、 ex Kitam.) と な り、 ヨ ー ロ ッ パ の Cirsium テシオアザミの 3 種、及び日高山脈南部 − 31 −
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