横領等の犯罪行為に 対する刑事告訴手続の現状 について

2015/7/24
横領等の犯罪行為に
対する刑事告訴手続の現状
について
平成27年7月21日
弁護士法人 佐々木総合法律事務所
1
弁護士 山田 敬之
1
2015/7/24
地方公共団体と民間企業を問わず、組織
内において職員がその業務上の立場を利
用して犯罪に及ぶことは、いつでも起こり
得る。
通常、詐欺あるいは業務上横領とい
う金銭被害に関する事案が多い
2
民間企業の場合
必ずしも刑事告訴は行わない
損害の回復が最優先(被害弁済による満足)
反省する本人への宥恕の気持ち
会社の意向に反して同僚が個人として刑事
告発をすることは考えがたい
よって、民事賠償だけの話だけで済むことも
これに対し・・・
3
1
2015/7/24
地方公務員の場合
職務に関連して、犯罪事実を発見した場合は
刑事告発をする義務がある(刑事訴訟法239
条2項)
本人が反省し、被害全額について弁済が
あったとしても・・・
原則として
刑事告訴・告発しなければならない
4
・告発義務を負うのは個々の地方公務員
・自治体が被害者の場合は首長名義で告訴する
といっても・・・
刑事告訴(発)は容易ではない
捜査機関は簡単に受理しない
5
2
2015/7/24
捜査機関が簡単に受理しない理由
警察が受理した場合、これに関する書類及び
証拠を速やかに検察官に送付する義務を負う
(刑事訴訟法242条)
送付とは?
実際には、捜査を遂げて、供述調書を含めた捜
査関係書類を事件記録としてまとめ、収集した
証拠物とともに、検察官に送ることを意味する
6
犯罪捜査規範第67条
告訴または告発があった事件については、特
に速やかに捜査を行うように努めるとともに、
次に掲げる事項に注意しなければならない。
(1) ぶ告、中傷を目的とする虚偽または著しい
誇張によるものでないかどうか
(2) 当該事件の犯罪事実以外の犯罪がないか
どうか
7
3
2015/7/24
その他
検察官は、起訴の有無について告訴人・告発
人に通知する義務を負い(同法260条)、請求
があるときは、不起訴理由を告知する義務を負
う(同法261条)
8
このため、一旦受理してしまうと、捜査に
速やかに着手して検察官に送る義務が発
生することから、簡単には受理しない
刑事事件として十分に立件可能である
ことを相当程度裏付ける証拠が必要
9
4
2015/7/24
被害届との違い
被害届=犯罪被害に遭った事実を捜査機関に
申告するための書類
〔告訴(発)との違いは・・〕
・犯人(加害者)への訴追・処罰を求めるものか
どうか
・捜査機関に義務(法的効果)が生じるかどうか
10
受理してもらうために
①事案の解明
②客観証拠による裏付け
(=告訴(発)対象事実の絞り込み)
③関係者の供述証拠の確保
④本人の弁明(自白の有無)の確認
⑤捜査機関への事件相談
11
5
2015/7/24
①事案の解明
被告訴(発)人が、いつ、どこで、何に対し、いか
なる行為・結果を、どのような方法で行ったかを、
ひとつの行為(結果)ごとに特定する作業
不正行為において取られた手続と本来
あるべき手続との対比
いかなる犯罪の構成要件に該当する
かについて法的観点からの検討(専門家
の助言が不可欠)
12
②客観証拠による裏付け
(=告訴(発)対象事実の絞り込み)
物的証拠(電子メール、報告文書、手帳、請求
書、領収書、注文書、稟議書、出納帳、通帳、
etc.・・・)によって、①によって特定された個別
の事実を紐付ける。
客観証拠上、ほぼ確実に裏付けられる犯罪
事実を選別して絞り込む(それ以外は余罪と
して言及)
13
6
2015/7/24
③関係者の供述証拠の確保
①と②について、関係者(上司、同僚、取引先
等)の証言(陳述書の作成)と紐付ける
※不正行為を看破できなかった理由(単独犯で
あること)の説明も必要
14
④本人の弁明の確認
不正行為について、物的証拠、第三者の供述
証拠によってある程度特定できた段階で、本人
に弁明を求める
※状況に応じて①~③の作業が終わるまで自
宅待機命令(証拠隠滅の回避)
※弁明内容(認めた場合を含む)の記録化(本
人の陳述書)
※可能であれば動機の解明も
15
7
2015/7/24
⑤捜査機関への事件相談
いきなり告訴状を持参して受理してくれること
は、まずあり得ない。
事前に電話で概要を説明の上、相談に赴く日
程を調整(場合によって、事前に告訴状草案
と証拠一式を送付する)
警察と相談・協議しながら、不足証拠の収集、
対象事実のさらなる絞り込み、告訴状の修正
作業を進める
16
おわりに
刑事告訴(発)は時間と労力
を要する
(それでも、受理されない場合もある)
告発義務との兼ね合いでは、犯罪行為と思われ
る事実について、放置したのではなく、告発に向け
て具体的に動いたということが重要
~ご清聴ありがとうございました~
17
8