第26回 マルチメディア振興センター特別講演会 IoT・ビッグデータ時代に向けて 平成27年5月27日 総務省情報通信国際戦略局長 鈴木 茂樹 ICTを活用して様々なモノ、サービスがつながる ビッグデータ ■ 様々なモノ(通信端末、オフィス機器、家電、車両、センサー等)がICTでつながり、それら に紐付く人、場所、プロセス等のデータを基点に様々なサービスもつながる ■ ビッグデータ等を利活用し、我が国のみならずグローバルな社会的課題を解決 新たなイノベーションを創出 経済成長と国際貢献 スマート・ジャパンICT戦略 (平成26年6月20日公表) 1 2 ICTの潮流 ビッグデータ クラウド ●全世界のデジタルデータ量は、2005年から2020年までの15年間で 約300倍に増加する見込み。 (130エクサ(1,300億ギガ)バイト → 40ゼタ(40兆ギガ)バイト) ●日本国内のクラウドサービス市場規模は、2010年から2016年までの 6年間で約8倍に拡大する見込み。(0.36兆円 → 2.81兆円) 40ZB 出典:総務省調査(「ICTコトづくり検討会議」(第6回)会議資料(2013年5月)) 出典:総務省調査(2012年3月) センサー スマートフォン ●世界中でセンサーの小型化・低消費電力化・低価格化が進展。 チップの大きさ (ダイ表面積) 将来 2000年 2010年 (2020年頃) 10mm2 約2~3mm2 1~2mm2 消費電力 0.1mW 0.05mW 0.05mW未満 平均販売価格 $3以上 $0.70 $0.50未満 (約300円以上) (約70円) (約50円未満) 35 771 2500超 世界生産量 (単位:百万個) ※ 1ドル=100円で換算 出典:Jean-Christophe Eloy=Yole Developpement (http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20110410/191000/) ●日本では全世界の約1/4のセンサーが使用されている。 (2010年の販売数量ベース(国内45億個/世界170億個)) 出典:富士キメラ総研調査( 2011年11月28日付日本経済新聞) ●日本国内におけるスマートフォン契約数は、 2011年から2020年までの 9年間で約13倍に増加する見込み。(955万件 → 11,938万件) [全携帯電話に占める契約比率は約8.5倍に増加。(8.8% → 75.3%)] (単位:万台) スマートフォン(SP) フィーチャーフォン(FP) SP契約比率 16,000 80.0% 14,000 70.0% 12,000 60.0% 10,000 50.0% 8,000 40.0% 6,000 30.0% 4,000 20.0% 2,000 10.0% 0 10年3月末 11年3月末 12年3月末 13年3月末 14年3月末 15年3月末 16年3月末 17年3月末 18年3月末 19年3月末 20年3月末 0.0% 出典: MM総研調べ(2016年3月末以降は予測値) 3 IoT/M2M関連の市場予測 M2Mは、エネルギー、医療、物流、自動車等、業種・分野の垣根を越えて展開され、市場は急速に拡大。 ◇ 2020年までには世界全体で、M2Mデバイスは140億台、M2M回線契約は6.6億回線まで増加する見込み。国内でも M2M市場は2018年度に1.2兆円規模に成長すると予測。 ◇ シスコは、ヒト、モノ、プロセス及びデータをひとまとめにし、これまで以上に密接なつながりを通して価値を生み出すネット ワークであるInternet of Everything(IoE)を提唱し、IoEにより今後10年間に世界の民間企業にもたらされる「価値の可能性*」 は14.4兆ドル(約1,460兆円;世界の企業利益を約21%押上げ)と推定。 ※ 新たに生み出される経済価値と、企業間・産業間で移転する経済価値の合計から導入コストを差し引いた額 M2Mに関する将来予測 M2Mデバイス数 M2M回線契約数 M2M国内市場規模 11,704 6.6億回線 (億円) 140億台 1.2兆円 年平均成長率 37.6% 3,400万回線 3,445 2,377 ・・・ 2013 出典: Machina Research, The Connected Life (2013/1) 出典: 矢野経済研究所、 M2M世界市場に関する調査結果(2014/3) 2014 ・・・ 2018 (年度) 出典: 野村総合研究所、 2018年度までのIT主要市場の規模とトレンドを展望(2013/11) 4 Internet of Everything Internet of Everythingとは、人、プロセス、データ、モノをひとまとめにし、これまで以上に 密接なつながりを通して価値を生み出すネットワークを作ること (米シスコ提唱) 米シスコの分析結果によると、 これによって、今後10年間に世界の民間企業にもたらさ れる 「価値の可能性*」は14.4兆ドル(世界の企業利益を約21%押上げ) ※ 新たに生み出される経済価値と、企業間・産業間で移転する経済価値の合計から導入コストを差し引いた額 〔21項目ごとに人や情報がネットワークにつながった場合の「価値の可能性」を分析、積算〕 個別分野 分野横断 世界の民間企業にもたらされる 価値の可能性( 2013~2022年) スマートグリッド 銀行 ビジネスプロセス最適化 テレワーク スマートビルディング 医療管理 デジタルアテンダント 出張の回避 自動車 物理・ITセキュリティ 決済 商品開発期間の短縮 スマートファーミング デジタルモール ゲーム、娯楽 サプライチェーン効率化 スマートファクトリー マーケティング、広告 教育 健康管理 デジタルサイネージ 類型別の内訳 イノベー ション 21% 顧客経 験 26% 14.4 兆ドル (内訳) 個別分野・・・66%(9.5兆ドル) 分野横断・・・34%(4.9兆ドル) 地域別の内訳 資産活 用 労働生 17% 産性 17% サプライ チェーン と物流 19% 14.4兆ドル カナダ その他 18% 3% 日本 5% 産業別の内訳 米国 32% 14.4 兆ドル 中国 12% 欧州 30% 製造業 27% その他 37% ヘルス ケア 金融・ 7% 保険 9% 14.4 兆ドル 小売り 11% 情報 9% より多くの人や新しい種類の情報がインターネットに接続されることで、Internet of Things(モノのイン ターネット)の時代からInternet of Everythingの時代へ 【出典】 米シスコ社HP (http://www.cisco.com/web/about/ac79/innov/IoE.html) を基に作成 活発化するIoT/M2Mに関するコンソーシアム oneM2M Internet of Things Consortium 設 立: 2012年7月 参加企業: TTC, ARIB, ETSI, ATIS, TIA, CCSA, TTA, TSDSI等 設 立: 2013年1月 参加企業: SmartThings, NXP, Logitech 等 Allseen Alliance Industrial Internet Consortium 設 立: 2013年12月 参加企業: Qualcomm, パナソニック, シャープ, Microsoft, LG 等 Open Interconnect Consortium 設 立: 2014年7月 参加企業: Intel, Samsung 等 設 立: 2014年3月 参加企業: GE, Intel, IBM, Cisco, AT&T 等 Thread Group 設 立: 2014年7月 参加企業: Nest Labs, Samsung 等 5 ICT分野における最近の主な標準化活動(平成24年度~) デジュール標準 ITU-T※1 IEEE※3 ○平成24年6月 デジタルサイネージ基本フレームワーク(H.780)、ユビキタス環境のID体系ucode (H.642)の勧告化。 ○平成25年3月 ネットワークロボットプラットフォーム(F.747.3)の勧告化。 ○平成25年9月 光アクセスシステム※2 (G.9801)の勧告化。 (SG-16札幌会合) ○平成26年7月 映像符号化の標準方式を拡張する勧告草案(H.265v2)、デジタルサイネージ災害情報サービスの要求 条件に関する勧告草案(H.785.0)を含む、67勧告草案について合意。 ○平成27年1月 HEMSのアーキテクチャに関する提案(Y.2070)の勧告化。 ○平成27年2月 4K,H.265等の技術と対応したIPTV端末仕様標準(H.721.V2)の勧告草案について合意。 ○平成24年1月 IEEE802.15.4g/e普及推進認証団体としてWi-SUN ※4allianceの設立。 ○平成24年3月 スマートメータ等のための省電力無線通信方式(IEEE802.15.4g/e)の標準化。 ○平成26年5月 無線LAN高速認証技術(IEEE802.11ai)のドラフト承認。 フォーラム標準等 IETF/W3C ○平成25~26年 ○平成26年 5月 ○平成26年10月 ●平成27年10月 oneM2M ○平成24年7月 M2Mのサービスレイヤの標準化推進組織(ARIB,TTC,ETSI他7団体)として設立。 ○平成27年1月 国際標準 技術仕様書(Requirements, Architecture, Protocol 等)のRelease1 を公開。 国内標準化 活動 ○平成24年11月 ○平成25年 2月 ○平成25年 3月 ○平成26年 6月 ○平成27年 1月 ※5 ※1 ※2 ※3 ※4 ※5 ※6 ※6 6 ブラウザ上で縦書きレイアウトを実現する機能(CSS)の主なものが勧告候補化。 自動車情報取得等に関するAPIが公開。 次世代ブラウザの主要仕様であるHTML5.0が勧告化され、縦書き関連仕様である「ルビ」が反映。 W3Cの年次技術総会(TPAC※7)が札幌で初の日本開催。同年11月第94回IETF総会が横浜で開催。 スマートメータに関連する通信インタフェースの実装ガイドライン(TR-1043)をTTC※8が策定。 ECHONET Lite向け通信インタフェースの標準化(Wi-SUN,HD-PLC※9等(JJ-300.10,11))。 HTML5を活用した放送通信連携規格(ハイブリッドキャスト技術仕様Ver.1.0)を公開。 災害・緊急時におけるデジタルサイネージ運用ガイドライン(第2版)をDSC※10が策定。 HEMS-宅内機器用のWi-SUN HANプロファイルをWi-SUN Allianceが策定。 ITU-T : International Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector (国際電気通信連合 電気通信標準化部門) 光アクセスシステム : 光伝送システムのうち、通信事業者の局舎と加入者の建物との接続に光ファイバ を用いたシステムの総称 IEEE: Institute of Electrical and Electronics Engineers (米国電気電子学会) Wi-SUN : Wireless-Smart Utility Networking IETF: Internet Engineering Task Force W3C : World Wide Web Consortium ※7 TPAC : Technical Plenary/ Advisory Committee ※8 TTC: Telecommunication Technology Committee ((一社)情報通信技術委員会) ※9 HD-PLC : High Definition power Line Communication ※10 DSC: Digital Signage Consortium ICT成長戦略Ⅱ (平成26年6月20日公表) 7 ビジョン ICTを活用して様々なモノ、サービスを繋げることにより、新たなイノベーションを創出 アプローチ 国家戦略特区等の活用 重点プロジェクト 地域の活性化 社会的課題解決 ・医療(スマートプラチナ社会) ・教育(教育 ×ICT) ・防災(公共情報コモンズ等) ・交通(ITS(自律走行支援)) ・女性の活躍支援 ・ICT街づくり ・G空間シティ (ワークスタイル確立(テレワーク等)) ・農業(スマート・アグリ) ・社会インフラ老朽化対応 ・電子政府・電子自治体 ・ICT新事業創出(ベンチャー支援等) 東京オリンピック・パラリンピック ・無料公衆無線LAN整備の促進 ・「グローバルコミュニケーション計画」の推進 (多言語音声翻訳システムの高度化) ・4K/8Kの利活用推進 ・放送コンテンツの海外展開推進 プラット フォーム ・G空間プラットフォーム(個々人に応じた避難誘導等への活用) ・ICT街づくりプラットフォーム(普及展開・共通IDの活用) ・ビッグデータ、オープンデータの活用(農業、医療、社会インフラ分野等) インフラ 共通基盤 ・観光地や防災拠点等における無料公衆無線LAN整備の促進(「フリーWi-Fi」構想) ・4K/8Kの利活用推進(放送、医療、教育分野等) ・ユビキタスネットワークの整備(世界最先端のモバイルネットワーク/M2M/IoT/ファブ社会など) ・世界最高レベルのICT基盤の更なる普及・発展に向けた競争政策の見直し等 環境整備 ・人材育成・活用(「プログラミング教育」の実施、「データサイエンス人材」の育成等) ・研究開発の推進(ネットワークの超大容量化、以心伝心の実現(多言語音声翻訳、ウェアラブル・センサー・ロボット等の活用(脳情報・生 体情報等の活用))、自然なユーザーインターフェース等) ・情報セキュリティ対策の推進、パーソナルデータの環境整備等 2020年以降の主要な移動通信システム 8 ○第5世代移動通信システム(5G)の研究開発・標準化から導入 ◆5Gに求められる要件 ○ 有線に匹敵する超高速性、超低遅延性 ○ センサーネットワーク等における多数の機器の 同時接続 現行LTEの1,000倍のシステム容量 同100倍の接続機器数 10Gbps以上のピーク速度 1ミリ秒以下の遅延(無線アクセス網) 低消費電力化 等 ◆5Gの円滑な標準化と導入に向けた課題 高速通信を実現し、2010年比1,000倍のトラヒックを捌くには、より広い周波数幅を確保することが重要 5G以降のシステムでは、単一の周波数帯の電波のみを使うのではなく、VHF帯といった低い周波数帯からミリ 波といった高い周波数帯まで複数の周波数帯の電波を組み合わせて、場所、時間、アプリケーションなどにより 最適な使い方を採用する柔軟な周波数使用を可能とし、より安定的な通信を実現。 30GHzを超えるミリ波帯をはじめとした高い周波数帯も含め、早い段階から移動通信向けの技術開発・国際標準 化活動を並行して推進し、5Gの標準化等において国際協調を主導的に進めることが必要。 9 ICTを活用した維持管理の実現に向けて 社会インフラにセンサーを設置して常時遠隔監視することで、その状態を正確に把握することにより適時適切に 対応し、事後的な対処ではなく、ICTを活用した予防保全を基本とする社会インフラの効果的・効率的な維持管理 を可能とし、もって、社会インフラの長寿命化の実現に資する。 従来の維持管理 ICTを活用した維持管理 橋梁 センサー データ化された 定量的・継続的 な監視 データ管理設備 検査員の感覚に依存した 定性的・間欠的な監視 損傷につながる異常を早 期に発見・補修することに より、社会インフラの予防 保全を実現。 データ センサー管理基盤 (参考)社会インフラの老朽化に関する主な政府戦略 10 成長政策 「日本再興戦略 -JAPAN is BACK-」(平成25年6月14日 閣議決定) センサーやロボット、非破壊検査技術等の活用により、生活インフラ、公共インフラ、産業インフラといった様々なインフラの損 傷度等をデータとして把握・蓄積・活用することにより、早期の異常検知により事故を未然に防ぎ、最適な時期に最小限のコスト による補修によってトータルライフサイクルコストが最小化されている社会を実現する。 「世界最先端IT国家創造宣言」(平成26年6月24日 閣議決定) センサー、ロボット、非破壊検査、情報化施工等の技術も活用することにより、社会インフラの実態を正確に把握・蓄積し、そ れらを活用することにより、社会インフラを安全により長く利用できることにつなげ、世界で最も安全で経済的な社会インフラを実 現する。 科学技術政策 ◇ 「科学技術イノベーション総合戦略2014 ~未来創造に向けたイノベーションの懸け橋~」(平成25年6月24日 閣議決定) 効果的、効率的に構造物の劣化・損傷等を点検・診断し余寿命を予測する技術やインフラを補修・更新する技術、インフラの 構造材料の耐久性を向上させる技術等の開発を推進する。また、これらの技術を用いライフサイクルコストの最小化を目指す体 系的なマネジメントシステムの開発を推進する。この取組により、災害時対応や確認困難な箇所等の対応が安全かつ適切に行 えるようになるほか、近年進むインフラ老朽化にもコスト・安全性のバランスを鑑みて戦略的に対処することが可能となり、長期に わたり安心してインフラを利用できる社会を目指す。 国土・インフラ政策 「国土強靱化基本計画」(平成26年6月3日 閣議決定) センサー・画像情報等のICTを積極的に活用した社会インフラの情報収集・分析システムを構築し、効率的な老朽化対策や 維持管理を早期に実現するとともに、災害時の避難誘導等への活用を図る。あわせて、社会インフラの各種情報等を活用した 災害対策及び維持管理技術を向上させるために必要な研究開発や規制の見直し等を行う。 「インフラ長寿命化基本計画」(平成25年11月 インフラ老朽化対策の推進に関する関係省庁連絡会議決定) ICT、センサー、ロボット、非破壊検査、補修・補強、新材料等に関する技術研究開発を進め、それらを積極的に活用するとと もに、既存の技術や他分野の技術についてもその有用性を認識し、有効に活用する。さらに、その結果を速やかに評価し、有 用な技術について基準等に反映することで、現場への導入を加速させる。評価の結果、課題がある場合には、改善点等を明ら かにし、更なる技術の改善につなげる。 IoT・ビッグデータ時代に向けて ① 11 1.ビッグデータの収集、流通、保管、整理、検索、分析等 (1)どのようにデータを取るのか? ・移動通信(第5世代)端末、センサー、レーダー、画像 等々 (2)どのように情報を情報通信基盤上で流通させるか? ・光ファイバ等固定通信網(高速・高性能ルーター、多芯光ファイバ、SDN) ・移動通信等無線通信網(5G、Wi-Fi、Wi-SUN) (3)誰が、情報を保管・保有しているのか? ・個人情報保護法 ・及びその改正(パーソナルデータの利用) (4)符号(Data) 情報(Information) 整理 知識(Intelligence) 意味付け、 活用 ・この流れを、誰が、どの段階で、どのように対応するのか? IoT・ビッグデータ時代に向けて ② 2.ビッグデータの活用 (1)これまで、活用してきている例 (2)新たに活用が期待されている分野 (3)配慮すべき事項 ア.公的なデータ イ.私的なデータ ウ.その中間的なデータ エ.人材 (4)自己責任、自助努力 以 上 12
© Copyright 2024 ExpyDoc