ようこそものわすれ外来へ

医療法人慶明会けいめい記念病院 もの忘れ外来 2015 年5月号
(第76号)
ようこそ! もの忘れ外来へ
高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015について~その1~
今年1月に日本老年医学会が、薬剤による副作用が出 【表1】
現しやすい75歳以上の高齢者、および75歳未満でもフ
レイルの方(体の弱ってきた状態の高齢者)を主な対象
に、「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」を
作成し発表しました。
急性期~亜急性期は専門治療が必要な場合が多く対
象にはなりません。慢性期、特に1ヶ月以上の服用をす
る場合、中止を考慮するべき薬物のリストを「ストッ
プ」、強く推奨される薬物を「スタート」としています。
高齢者は、①複数の疾患をかかえ、②治らない病気が
多く服用が長期になり、③体の弱りによって薬物の代
謝・排泄が遅くなり過量投与になりやすいといえます。
さらに、認知機能の低下や、視力、聴力の低下によって
+ 誤服用や副作用に気づかないなどの服用上の問題も重
なり、薬剤を投与する方も服用する方も成人以上の注意
TJ-54 ツムラ抑肝散(ヨクカンサン)って
が必要になります。
どんな薬?
5種類以上の多剤併用で副作用や転倒のリスクが高
くなることが指摘されており、たくさんの薬をもらって
「抑肝散」は、食事をする、着替える、歩くなどの
いる方は本当に必要かどうかを薬剤師や医師にもう一
日常の動きを低下させることなく、興奮・不穏・抑う
度確認することも必要です。とは言え、副作用を恐れて
つなどの症状を改善するという効果が報告されてい
必要な治療を行わない過小医療も問題です。もし、該当
ます。患者さんの治療だけでなく、介護するご家族や
する病気があれば、優先順位が高く、推奨される治療の
医療従事者の負担を軽減することも期待されます。
リスト「スタート」を紹介しておきましょう(表1)。
甘苦い「抑肝散」ですが、ココア、抹茶、オリゴ糖、
高齢者における薬物療法では、日頃から患者と向き合
黒砂糖などで少し味をつけると服用しやすいかもし
い、病態だけではなく生活状況まで把握して、薬の種類
れません。一番のおすすめは、最近発売された「らく
は少なくすませることが大切になってきます。
らく服薬ゼリー漢方用(龍角散)
」です(いちごチョ
次回は認知症を悪化させる可能性のある薬物につい
コ風味とコーヒーゼリー風味があります)
。薬の効果
て、解説します。
に影響する成分も入っていないので安心です。是非一
度お試しください。
(フロンティア薬局国富店 薬剤師:大津留順子)
ドクター岡原の今月のひとこと!
5 月号から、けいめい記念病院の隣にある 2 つの薬局の薬剤師が「認知症と薬剤師」をテーマに寄稿してくれる
ことになりました。5/7/9 月号はフロンティア薬局、6/8/10 月号はひむか薬局が担当してくれます。自分に薬を
手渡してくれる薬局の薬剤師と良い関係をもって、気軽にお薬の相談ができるようになりましょう。両薬局からの
皆様へのメッセージに耳をすませば、薬剤師が身近に感じられると思います。
宮崎県東諸県郡国富町岩知野 762 TEL:0985-75-7007
けいめい記念病院 もの忘れ外来