卒業研究をうまく行うための Tips 1) 2) 3) 4) 卒業研究の実験を行うために 実験技術を向上させるために、失敗しないために サンプルの取扱いについて 研究室で円滑に実験をするために 1) 卒業研究の実験を行うために この研究室のような理論系ではない、実験系の生物学研究で最も大切なのは実験を行って良いデータ を出すことです。いくら頭が良くてものすごい仮説をたてられたとしても、それを証明するための実験 が行えないようではせっかくの頭脳も無駄になってしまいます。研究に関する知識や最新情報は当然大 切なものですが、実験系の研究室ではそれら以上に優れた実験技術に基づいた実験データが求められま す。最初に、卒業研究の実験を行う上でこれまでと意識を変えておいてもらいたいところを、次に実験 技術を向上させるために気をつける点を挙げていきます。 学生実習から意識を変えてもらいたい点 これまでみなさんは学生実習でいろいろな実験をやってきました。しかし、卒業研究は学生実習と比 べて大きく異なる点があります。 ①未知の生物学的現象を明らかにするという姿勢 学生実習でやってきた実験は、すでに確立されたもので、 「こうやったら、この結果が出る」ことが明 らかなものです。しかし研究では「未知のものをどうにかして明らかにしたい」ために実験を行うもの なので、実験結果がどうなるかはわかりません。 (もちろん仮説を立てて「こうやったら、この結果が出 るだろう」という仮定のもとに実験を行いますが)。既存のプラスミドを大腸菌に形質導入してプラスミ ドを増幅させるといった、結果のわかっているルーチンな仕事ももちろんありますが、そのような実験 はあくまでも研究を進めるために必要な材料作りのために行うものです。基本的には未知の生物学的現 象を明らかにすることが研究というものです。 ②実験の密度が濃いこと 学生実習では「大腸菌からのプラスミド抽出」、 「制限酵素によるプラスミドの切断」、 「DNA 断片のプ ラスミドへのサブクローニング」はそれぞれ独立したテーマとなり得ます。しかし、研究室ではそれら は一日で片づけるのが当たり前の仕事です。また、二種類、三種類(以上)の実験を同時並行で行うこ ともあります。研究はのんびりやっていてはどこか他の研究グループに先を越されてしまう危険があり ます。研究成果はそれを最初に見つけた人ではなく、それを見つけたうえ、一番最初に学術論文として 発表(あるいは特許として申請)した人のものになります。2 番以下はほとんど価値がありません。「2 1 番じゃだめなんですか?」と言った政治家がいましたが、サイエンスの世界はそれではだめなんです。 研究成果をまとめるのには年単位の時間がかかりますが、例えば 1 日でできることを 3 日かけてやった としたら、それが積もり積もったときに研究がまとまるまでの時間がとても遅くなることは簡単に想像 できるでしょう。もちろん慣れないうちはゆっくりやってもらってもかまいませんが、慣れるに従い素 早い作業ができるようにしましょう。 ③いろいろな実験にはそれぞれ意味があり、全てつながっていることを理解する 学生実習ではあるテーマについて一つの実験を行ってその結果を出し、それをレポートにまとめてい ました。卒業研究では、卒業論文と発表を行うためにいくつもの実験を行います。ある現象を証明する ためにいろいろな観点で実験を行い、結果という証拠を積み重ねていく必要があります。②の最初で説 明した「大腸菌からのプラスミド抽出」、 「制限酵素によるプラスミドの切断」、 「DNA 断片のプラスミド へのサブクローニング」は目的の遺伝子をクローニングするためにそれぞれ行う実験です。さらにその 遺伝子をヒト細胞内で発現させるためには「哺乳類発現ベクターへの遺伝子サブクローニング」 「細胞の 培養」「細胞への遺伝子導入」「細胞からサンプル調製し、遺伝子発現確認」などの実験が必要です。そ して、発現確認ができたら「その遺伝子を細胞に発現させたらどのような表現型を示すか?」 「すでに報 告されている近隣遺伝子との関係は?」という未知の事象について実験をすることによってその遺伝子 の役割をようやく知ることができます。その材料を使って最終的に何を明らかにしたいのかを常にイメ ージすることが必要です。 ④準備から実際の実験、片づけまでが責任の範囲 学生実習では試薬・器具等はすでに用意されていて、それらを混ぜれば実験を始めることができまし た。また、器具の片付けも滅菌など手間のかかるものは TA が行っていました。これで実験ができるよう になったと自信をもたないようにしてください。学生実験は料理で言うとレトルトのカレーを温めてご はんに乗せてカレーライスができたと言っているようなものです。それで「カレーを作れるよ」なんて 言うことはできないことはわかると思います。卒業研究の実験では、実験の計画から試薬・器具の準備、 実験の実行、後片付け、そして結果と考察といった一連の作業を全て一人で行わねばなりません。料理 で言うなら材料を決めて買い出し、レシピを確認しながら料理を作り、片づけまでとなります。先ほど から料理のことばかり触れていますが、料理も実験も上手に行うためのコツは似ていると思っています。 例えば「複数の料理を同時並行で作る」という技術は、複数の実験を同時並行に進める技術に通じてい ます。個人的なイメージでは「料理の上手な人≒実験が上手」です。 もちろん実験に慣れていなうち指導しますし、得られた結果からの考察もスタッフや大学院生、同期 と活発にディスカッションしてもらいたいとも思いますが、基本的には一人で実験ができるようになる ためには上に挙げたようなことが全てできるようにならなければなりません。そして、それぞれの試薬・ 器具の正しい扱い方、後片付けは常に完璧にできるように意識し、実践してください。試薬・器具はみ んなで使うものですし数に限りがあります。メンバーに支障の出ることのないように実験を行うことは 極めて重要です。 以上の点を踏まえて、卒業研究に励んでください。 2 2) 実験技術を向上させるために、失敗しないために 多くの実験にはプロトコールがあり、基本的にその通りに行えば結果を出すことができます。しかし、 実際に実験をやってみるとプロトコールに沿ったやり方を実行したつもりでも結果がうまくでないこと は、特に実験に慣れていないうちはよくあります。例えばプラスミドを大腸菌から回収するという極め て基礎的な操作でも、器具の取り扱いが悪かったり、試薬をよく混ぜていなかったりあるいは激しく混 ぜすぎたり、操作に手間取って必要以上に時間をかけてしまうとプラスミドの回収ができなくなります。 ルーチンな実験を除いて、未知の事象を明らかにするために研究を行うときにはどんな結果が出るかを 予め断定することはできません。そのような大切な実験を行う場合、予想したポジティブな結果が出た 場合はまだ良い(もちろん結果の再現性を検証する必要はあります)のですが、ネガティブな結果が出た場 合、その理由が本当に予想していた現象が生物内では起きていないからかもしれませんが、実験操作の 技術が不十分だったことで、出るべき結果が出なかったせいかもしれません。特にタンパク質を用いた 実験のような、繊細な取り扱いが要求される実験はプロトコールが大切なのは言うまでもありませんが、 そこに書かれていない操作の巧拙でその結果が大きく左右されます。技術が足りない人は技術を向上さ せない限りいつまでたっても結果を出すことが出来ません。うまくいかなかった原因を考えて、次の実 験に活かすためにも実験操作が不十分という要素はできるだけ省いておきたいところです。ですので、 実験操作には早めの段階から十二分に習得してもらう必要があります。 実験操作は「素早く、丁寧に」が理想です。これらが大切な例を挙げると、試薬の反応時間 が定められているような実験で複数のサンプルを扱う場合に操作が素早くできなかったら、最初のサン プルと最後のサンプルで反応時間が異なり、結果に差が出てしまう可能性があります。また、サンプル が必要以上に乾燥してしまったり、発色反応が進んでしまったりといったことも起こり得ます。また丁 寧にという点では、後でも説明しますが、ピペッティングが雑で反応液が泡立ってしまうと反応液中の 酵素が失活する恐れがありますし、チューブを握りながら実験操作をしてしまうと冷やしておくべきチ ューブ内の反応液が温まり、反応が勝手に進んでしまったりもします。このようなことをしていると、 プロトコール通りにやったのに結果が得られません。操作そのもののミス、というか手際の悪さや、サ ンプルに対する配慮不足は失敗の原因を考えるときに自分だけでは気づかないことが多々あります。 そこで実験技術を向上させ、よい結果を得るための注意点をいくつか挙げておきます。 スタッフ、先輩の実験技術をよく観察する スタッフや先輩はもちろん実験技術に長けています。そのような技術を持つ人が実験操作をどのよう に行っているかをしっかりと観察してください。しっかりと見ることによって実験操作のコツや、自分 の実験の無駄な動作に気づくことができるようになると思います。 ノートに記録する 学生実験では実験記録をレポート用紙にまとめていましたが、卒業研究~では実験記録を個人の実験 3 ノートにまとめます。実験ノートには実験を行う日付、実験プロトコール、結果、考察を記入します。 実験前に方法等を書きこむことによってその実験の流れの確認、必要な試薬類の確認等を行い、実験後 に結果と簡単な考察を必ず書くことでやった実験をまとめます。きちんと記録することで実験のミスも 減りますし、再現実験を行うときに実験条件を同一にできたり、実験がうまくいかなかったときにその 原因を探ることができたりします。また、基本のプロトコールから条件を変更したような場合は必ずそ の変更点を記入しましょう。 とにかくメモをとる スタッフや先輩などから新しい実験機器を使うときなどは説明を受けます。このようなときは聞き洩 らしのないようメモをとる習慣を身につけましょう。キーワードをメモするだけでも、後で復習すると きに容易に説明を思い出すことができると思います。また学会、セミナーのような場においてもその習 慣を忘れないように。 プロトコールの各ステップの意味を理解する 実験プロトコールの各ステップは、物理的・化学的・生物学的に意味があるからやっているものです。 各ステップを、 「プロトコールに書かれていることをテキトーにやっていけばいいや」という考えはやめ ましょう。実験のプロトコールの各ステップでの小さなミスや不十分な操作の積み重ねが最終的な結果 に大きく影響していきます。たとえ話ですが、ステップごとの成功率が 0.99 の人と 0.7 の人が同じ実験 をした場合、5つのステップを経たときの成功率はそれぞれ 95%、17%となります。後者は正しい実験 データをめったに得られないことが分かると思います。 また、プロトコールの各ステップの意味を理解していれば実験操作を素早く進めなければいけないこ とが分かりますし、実験を中断できる箇所を見つけることができたりします。また、場合によっては時 間短縮のための「手抜き」を行うことも可能になります。 取り扱う試薬や、核酸、タンパク質などの性質を理解する 試薬等は室温保存、4℃保存、-20℃保存、-80℃保存のように、それらが安定する温度条件下で保存さ れています。その温度を外れてしまうと反応が始まる、分解が始まる、失活するなど様々なことが起こ ります。保管庫から取り出して実験に用いる場合は、できる限り保管温度を大きく外れないように氷上 に置くなど、その取扱いに注意しましょう。-20℃保存、-80℃保存の試薬類は基本的に解凍してから用い ます。試薬が必ず全て溶けてから実験に用いるように。また、しっかりと混ぜて濃度を均一にするよう に!水の凝固点はそこに溶けている物質によって変化します。中途半端な解凍で実験に用いると、溶け た液体部分の試薬濃度がおかしくなることはわかると思います。全て解凍させたとしても、しっかりと 混ぜなければ溶液の上部と下部でその濃度は異なりますから、やはり正しい試薬の濃度になりません。 また、タンパク質(活性のあるもの)を取り扱うような場合だと、高温下に置いたりボルテックスをかける と、タンパク質が失活してしまう恐れがあります。他にも、粘度の高い試薬や揮発性の高い試薬は、ピ ペットマンで分取するときにコツが必要になったりもします。良く使うものだとグリセロールやデター ジェント、クロロホルムといったものがそれに該当します。また、RNA を取り扱う実験では、RNase のコンタミを防ぐために手袋、マスク、専用の実験器具・試薬などが必要になります。RNA 実験に用い る器具・試薬は専用のボックスに入れることになっています。取扱うときは必ず手袋着用のこと。 4 試薬類はラボメンバー全員で使うものが多いです。一人が上記に示したようないい加減な使い方をす ると、その後から使用するメンバー全員が被害を蒙ります(後にも述べます)。 実験機器の設定を確認する 実験機器は常に一定の条件設定になっているものではないことを頭に入れておいてください。多人数 がそれぞれいろいろな実験を行うときはインキュベーター、遠心機、サーマルサイクラーなど、様々な 機器が使用され、実験に応じた設定にされます。自分が使う場合は、使用前に設定条件が正しいかを確 認してください。特に温度条件は重要でかつ、設定が変っていることが多いものなのでインキュベータ ー等の設定温度は常に気をつけましょう。 実験器具・実験機器の取扱いに慣れる 実験操作を素早く丁寧に行うためには実験器具の取扱いに慣れていなければなりません。操作が素早 いからと言っても乱雑では意味がないですし、ゆっくりやるよりも悪影響を及ぼすことが多いです。 ※分子生物学実験でおそらくもっとも用いる器具はピペットマンです。まずはピペットマンの扱いに慣 れ、素早く正確に計量できるようになりましょう。実験機器も正しく使いましょう。最も頻繁に使うと 考えられる遠心機も、バランスをしっかり取って使用するなど守らなければならないルールがあります。 5 3) サンプルの取扱いについて プラスミドベクターや、遺伝子を導入したプラスミドの正式保管について 共通で用いるプラスミドベクターや、実験で作成した遺伝子を導入したプラスミドはとても重要なも のです。いずれも失くしてしまうと再び入手するのが困難です。特に、ラボで作製したプラスミドは、 世界でここにしかないものと言っても言い過ぎではありません。このため、プラスミドベクターおよび 遺伝子を導入したプラスミドは保存専用のオリジナルと、実験用の二つに分けて保管してください。ま た、スクリーニングで取得した cDNA クローンなどはオリジナルだけでよいので保管してください。ど れを保存してよいかわからない場合は必ず聞いてください。プラスミド類は基本的には 1.5ml チューブ に入れ、-20℃保存します。このとき、1.5ml チューブのフタには油性ペンで必要事項を記入した専用 のラベルを必ず貼ること(電気泳動用などの一時的なサンプルについてはチューブのふたに直接書き込ん でもよいです)。 ベクター名 作製日 遺伝子名などの情報。複数ある場合はナンバ リングする サンプルの種別:オリジナル、実験用、 精製済み、などのインフォメーション を書く。場合によってはサブクローニ ング用いた制限酵素の種類なども。 濃度がわかれば濃度も 図1:1.5ml チューブフタのラベル記入例 万一フタに貼ったラベルがはがれてしまっても大丈夫なように、1.5ml チューブのサイド部分にもラベ ルで記入したことを油性ペンで書き込み、上から透明テープで保護する、あるいはテレポマーカーで記 入したものを貼ること。保管にはフリーズボックスを用い、作製したプラスミドを所定の位置に入れ、 フリーズボックスのどこに何が入っているかわかるようにリストを作成しましょう。 図2:1.5ml チューブサイドのラベル記入例 作製したサンプルをみだりに捨てない 実験で用いたサンプル、作製したサンプルは途中経過のものも含めすぐに捨ててしまわないように! 例①最終的に実験に使うサンプル C を作製するため、サンプル A→サンプル B→サンプル C というよう に副産物の作製を経る必要がある場合、サンプル C を取得したからといってサンプル A、サンプル B を 捨ててしまわないように。万一サンプル C を失ってしまったときにリカバリが効きますし、サンプル B からサンプル C´を作製する必要があとから出てくることもあります。 例②ウェスタンブロッティングで電気泳動に用いたサンプルの残り。ウェスタンブロッティングの過程 で万一失敗してしまったときにやり直しがすぐにできます。電気泳動サンプルをすぐに捨ててしまって 6 いたらもう一度サンプル作製をやり直さねばならず、時間と費用がかかります。副産物サンプルは一時 的な保管(長期)、または正式保管してください。 一時的なサンプルの保管 制限酵素処理をしたサンプルを翌日泳動する、ウエスタンブロッティングサンプルの予備を保管する ような場合は、適切な温度で保管しましょう。DNA の一時サンプルは短期の場合は 4℃、比較的長期の 場合は-20℃に保管。RNA は分解されやすいため一時サンプルも-80℃保管。ウエスタンブロッティン グなどタンパク質サンプルも-80℃保管。保管温度を間違えるとサンプルが劣化し、次に実験をやった ときに違う結果がでてしまうかもしれません。 実験に用いたすべてのサンプルをずっと保管しておくことは、冷蔵庫・冷凍庫のスペース的にも無理 なので、必要な実験が完了したら捨ててください。 4) 研究室で円滑に実験をするために 研究室ではスタッフ、学生が共通の機器や器具、試薬を使って研究を行っています。さすがに予算と スペースの都合上一人一人に全ての実験設備を用意することはできないため、共通の機器や器具、試薬 をラボメンバーでシェアしないといけません。ですので、それらをトラブルなく利用するために気をつ けてもらいたいことがあります。 ・使い終わったらすぐに片づける これがラボでの研究を円滑に進めるために最も大事なことだと思います。機器や試薬は使い終わった らすぐに片づけましょう。特に試薬や共通の器具は次に使う人が分かるよう必ず元の位置へ。試薬の保 存温度も室温、4℃、-20℃、-80℃などそれぞれ異なるので、試薬ごとに確認して間違えないように。特 に酵素類、抗体類、シークエンス反応用の試薬類は保存温度を間違えると活性を失い使えなくなってし まいます。たった 1.5ml チューブのサイズにμl 単位でしか入っていない試薬でも数万円するものばかり なので、その金額的損失は大きいです。また、時間的な損失もとても大きくなります。過去の経験です が、実験がなかなかうまくいかないと思いその原因を詳しく調べると、使っていた酵素が失活していた ことがわかりました。過去に学生が使った後室温にそれを一晩放置してしまい、あとからこっそり-20℃ の保管庫に戻していたものでした。酵素類は失活しても見た目の色が変わるわけでもないので外からは 判別できません。メンバーは共通の試薬を「活性があるもの」という前提で使用しますから、一人のい い加減な試薬の取り扱いは周りの人に大きな迷惑をかけてしまいます。ビーカーやフラスコなどのガラ ス器具も、使い終わったらすぐに洗ってください。洗うときは器具の内側だけでなく外側も。洗い終わ ったらまず水道水でしっかりすすぎ、最後に純水ですすいでください(内側外側どちらも 3 回すすぐ)。 また、チューブやディスポのピペットを始めとするプラスチックの消耗品は移動式の棚に箱ごと保管 していて、そこから小分けの袋を取り出して必要な場所で使っています。そこの小分けの袋の消耗品が なくなったら、袋をカラにした人が棚の箱から新しい袋を出してセットしてください。 7 ・係分担 ラボで研究を円滑にすすめるためには、共通で使用するもの(チップ、チューブ、バッファー類、ア ガロースゲル、液体窒素、純水などの水)については係分担をして全員で維持を行っていきます。少数 の人に負担がのしかからないよう、自分の分担の仕事はきちんとやってください。 ・共通機器の利用の確認 共通機器に電源が入っている場合、誰かがそれを使うため準備している可能性があります。一例を挙 げると、4℃に設定された遠心機があるとします。冷却遠心機は 4℃に冷やすまでに少し時間がかかるの で、使いたい時間より先に遠心機の温度を下げておく必要があります。設定を変更する場合は、それを 使おうとしている人がいないことを確認してください。 ・試薬や器具の注文 共通で使う試薬やプラスチック消耗品は基本的に一本、一箱単位で購入します。試薬は予備が用意し てあるものもあります。棚、冷蔵庫、あるいはフリーザーに袋に新品の予備があるかどうかを確認して ください。開封したら新しく一つ注文してください。プラスチック消耗品の注文については、最後の一 袋を開けた人が注文するようにしてください。試薬もプラスチック消耗品も最後まで使い切ってからの 注文だと、どのようなことが起きるかは想像に難くないと思います。注文したいものがある場合は井上 か大学院生に伝えてください。 ・試薬や器具を無駄遣いしない 試薬や器具の消耗品の単価は、想像以上に高価です。研究室の予算は限られていますので、ただ分注 するだけなのに1回ずつチップやピペットを換えるようなことはしないでください。また、試薬も必要 量だけ使うように(特に酵素類)。無駄遣いをせず、節約を心がけてください。また、それぞれの実験器具 や試薬には使い方のルールがあります。実験マニュアル等を確認してください。 ・最後に帰る人は 卒業研究の時点では、最後に帰るなんてことはほとんどないと思いますが、最後に帰る前はガスの元 栓や線虫用卓上バーナーなどの火元、電源が入りっぱなしの機器はないか(インキュベーターを除く)、 フリーザーのドアが閉まっているか、などを確認、消灯してから施錠してください。 さいごに 」と言われています。 社会人の基本中の基本は「ほう・れん・そう(報告・連絡・相談) これは決して社会人だけに当てはまらないことは、バイトをしている学生なら当然知っていると思いま す。研究室においても、実験で成功したこと、失敗したこと、機器にトラブルが出た場合、試薬の消耗 について、研究スケジュールなどなど、 「ほうれんそう」すべきことはたくさんあります。皆さん十二分 に心がけてください。 8
© Copyright 2024 ExpyDoc