4月30日資料2

原子炉解析における核データ
千葉 豪
監修:国枝賢氏
助言:市原晃氏、岩本修氏、岩本信之氏
(JAEA・核データ評価研究Gr)
原子炉の臨界状態
臨界:外部中性子源なしに、中性子の増倍が持続すること
(核分裂による中性子の発生量)
=(中性子の吸収量)+(中性子の漏洩量)
(核分裂による中性子の発生量)/
[(中性子の吸収量)+(中性子の漏洩量)]=1.0
超小型原子炉の臨界状態
Pu-239のみから成る球形の金属の臨界半径は?
[1] 約5cm
[2] 約20cm
[3] 約1m
X cm
超小型原子炉の臨界状態
Pu-239のみから成る球形の金属の臨界半径は?
[1] 約5cm
[2] 約20cm
[3] 約1m
6.3849cm
Jezebel:1950年初頭にロスアラモスで行われた実験
超小型原子炉の臨界状態
では、中性子のエネルギー分布はどうなっていますか?
[1] 高速炉型
[2] 熱中性子炉型
[3] それ以外
6.3849cm
超小型原子炉の中性子束エネルギースペクトル
超小型原子炉の臨界状態
(核分裂による中性子発生量)/
[(中性子の吸収量)+(中性子の漏洩量)]=1.0
Pu-239から成る下記の球形超小型原子炉では、
中性子吸収量と漏洩量の割合はどの程度か?
ヒント:
6.3849cm
高いエネルギーでは中性子吸
収の大部分が核分裂反応とな
る点、核分裂あたりの平均中
性子発生数が3程度である点
を考えると良い。
超小型原子炉の臨界状態
(核分裂による中性子発生量)/
[(中性子の吸収量)+(中性子の漏洩量)]=1.0
Pu-239から成る下記の球形超小型原子炉では、
中性子吸収量と漏洩量の割合はどの程度か?
答え:
6.3849cm
吸収量:33%
漏洩量:67%
超小型原子炉の臨界状態
U-238の反射体を巻いて、臨界量を小さくする
(燃料半径が6.4cmから4.5cmになる)。
12cm
4.5cm
吸収量:33% → 66%
漏洩量:67% → 35%
Flattop-Pu:1960年代にロスアラモスで行われた実験
超小型原子炉の臨界状態
下の原子炉の核分裂の連鎖反応は、次の場合どうなるでしょうか
(促進されるか、その逆か)。
[1] Pu-239の核分裂を起こす確率が大きくなったら?
[2] U-238の中性子を吸収する確率が大きくなったら?
[3] U-238による中性子の跳ね返りが前方に偏ったら?
12cm
4.5cm
超小型原子炉の臨界状態
下の原子炉の核分裂の連鎖反応は、次の場合どうなるでしょうか
(促進されるか、その逆か)。
[1] Pu-239の核分裂を起こす確率が大きくなったら?
[2] U-238の中性子を吸収する確率が大きくなったら?
[3] U-238による中性子の跳ね返りが前方に偏ったら?
核データ
12cm
4.5cm
中性子輸送方程式における核データ
位相位置r,E,Ωにおける中性子のバランス式
それぞれのパラメータが意味するところを考えてみる。
中性子輸送方程式における核データ
:核反応断面積(中性子が媒質と反応を起こす確率)
:核分裂スペクトル(核分裂中性子のエネルギー分布)
:核分裂で発生する中性子数
中性子と原子核とのさまざまな反応
(n,n):弾性散乱
(n,n’):非弾性散乱
γ線
(n,γ):捕獲
(n,f):核分裂
γ線
(n,2n)
γ線
核分裂断面積の比較
“共鳴”
・U-235、Pu-239は熱中性子に対する断面積の値が極めて大きい。
・U-238は1MeV以上の中性子に対して断面積の値を持つ。
捕獲断面積の比較
・1eVから10keVの領域でU-238は大きい断面積の値を持つが、
1eV以下の断面積の値は比較的小さい。
弾性散乱断面積の比較
比較的平坦であるが、一部に共鳴構造が観察される。
As-75(砒素)の散乱断面積の比較
非弾性散乱、(n,2n)反応の断面積は高いエネルギーで立ち上がってくる。
中性子と原子核との相互作用:イメージ
原子核の表面で反応
中性子の入射エネルギーが原子核
全体に伝播する前に反応が終了
原子核の表面近傍で反応し
核子を放出
中性子の入射エネルギーが原子核全体に伝
播した状態を経たのち、反応が終了
中性子と原子核との相互作用:イメージ
ポテンシャル散乱
原子核の表面で反応
前平衡過程
中性子の入射エネルギーが原子核
全体に伝播する前に反応が終了
直接過程
原子核の表面近傍で反応し
核子を放出
複合核過程
中性子の入射エネルギーが原子核全体に伝
播した状態を経たのち、反応が終了
中性子と原子核との相互作用:量子力学による記述
1.ポテンシャル散乱:
標的原子核は励起されず、平均ポテンシャルで散乱
2.直接過程(10-24 sec):
標的核の表面近傍の少数核子、もしくは標的核全体との反応
3.前平衡過程:
複合核を形成する過程で起こる反応
4.複合核過程(10-16 sec):
標的核に入射核子が吸収されて平衡状態になったあとの反応
中性子輸送方程式における核データ
原子炉物理では、核データを所与のものとして扱う
→ 中性子と原子核との核反応は原子炉物理の計算では
直接モデル化しない
中性子輸送方程式における核データ
原子「炉」物理の世界
・古典力学
・ボルツマン輸送方程式
・工学部原子工学科
原子「核」物理の世界
「核データ」
・量子力学
が橋渡し
・シュレーディンガー
方程式
・理学部物理学科
原子炉計算における核データ
(中性子と原子核との反応確率)
(評価済み核データファイル)
評価
U-238
U-238
U-238
Pu-239
U-235
処理
原子炉計算コード
原子炉計算コード用
核データライブラリ
評価済み核データファイル(ENDFフォーマット)の例
Japanese Evaluated Nuclear
Data Library, version 4.0
評価済み核データファイルの開発体制
・JENDL:日本。最新版はJENDL-4.0。
(評価)JAEA、九大、北大(理)、等
(実験)JAEA、東工大、京大炉、九大、北大(理)、KEK、等
・ENDF:米国。最新版はENDF/B-VII.1。
米国の国立研究所(BNL、LANL、ORNL、ANL等)が中心。
・JEFF:欧州。最新版はJEFF-3.2。
仏国原子力庁CEA、オランダNRG等が中心。
その他、BROND(露)、CENDL(中)等がある。
最近は世界統一ファイルの開発も議論に上りつつある:
CIELO / collaborative international evaluated library organization
核データ国際会議
・3年毎に開催
・前回は2013年3月にNYにて
実施。参加者数は700人超。
核データ国際会議
・3年毎に開催
・次回は2016年9月にベルギー
にて実施。
核データの決め方(「評価」の方法)
U-238の中性子捕獲断面積
スムースパート:
実験データと
理論計算から
共鳴領域:
実験データから
スムースパートでの核データ評価法:実験データを用いる場合
(U-235捕獲断面積に対する核データ評価の例)
Otsuka, et al., JNST, 44, p.815 (2007)
核データ理論計算の手続き
光学模型計算
(ポテンシャル散乱)
歪曲波ボルン近似計算
(直接過程)
励起子模型計算
(前平衡過程)
統計模型計算
(複合核過程)
全反応断面積、形状弾性散乱断面積を決定
(ポテンシャル透過率)
直接非弾性散乱断面積を決定
非弾性散乱断面積の前平衡成分を決定
弾性、非弾性散乱、(n,2n)、捕獲断面積等を決定
(ポテンシャル透過率を利用)
(各種パラメータを、実験データを再現するように調整)
核データ理論の起源
光学模型計算
(ポテンシャル散乱)
歪曲波ボルン近似計算
(直接過程)
励起子模型計算
(前平衡過程)
統計模型計算
(複合核過程)
1950年以前
G.R. Satcheler, Nucl. Phys. 55, 1 (1964).
C. Kalbach, Z. Phys. A283, 401 (1977).
W.Hauser, H. Feshbach,
Phys. Rev. 87, 366 (1952).
基本となる模型は1980年以前に確立済み
核データ評価コードPOD(JAEA独自コード)の例
PODを使ったBi-209評価計算のための入力例(下図は計算結果)
中性子と原子核とのさまざまな反応
(n,n):弾性散乱
(n,n’):非弾性散乱
γ線
(n,γ):捕獲
(n,f):核分裂
γ線
(n,2n)
γ線
弾性散乱
弾性散乱反応が生じる確率は散乱角度に大きく依存
(砒素の3MeV入射中性子に対する弾性散乱断面積)
(平均値)
(入射エネルギーが大き
い場合)
前方へ散乱される反応
の確率が大
平均値:μ
(平均散乱角余弦)
(180度)
(重心系)
(0度)
超小型原子炉の臨界状態
下の原子炉の臨界特性は、次の場合どうなるでしょうか。
[1] Pu-239の核分裂を起こす確率が大きくなったら?
[2] U-238の中性子を吸収する確率が大きくなったら?
[3] U-238の中性子の跳ね返りが前方に偏ったら?
12cm
4.5cm
弾性散乱
(問)中性子がよりエネルギーを失うのは前方散乱か後方散乱か?
(砒素の3MeV入射中性子に対する弾性散乱断面積)
(平均値)
中性子の入射エネル
ギーが高い場合:
前方へ散乱される反応
の確率が大
平均値:μ
(平均散乱角余弦)
(180度)
(重心系)
(0度)
弾性散乱の平均散乱角余弦
重心系での散乱確率(等方散乱):
重心系での平均散乱角余弦:
実験室系での平均散乱角余弦:
重心系で等方散乱の場合、実験室系の平均散乱角の余弦は、
原子核の質量数のみで記述される。
弾性散乱の平均散乱角余弦
弾性散乱の平均散乱角余弦
JAEA岩本修氏よりレクチャー:
・ポテンシャル散乱でL>1の角運動量の寄与があると
非等方になる。
・一般的に中性子の入射エネルギーが高くなると、
関与する角運動量が増えて非等方性が大きくなる。
・複合核散乱では90度対称の角度分布になる。
・直接過程では高いエネルギーで大きい前方性をもつ。
・前平衡過程にも前方性がある。
各種散乱反応
砒素の断面積
入射エネルギーが高くなるにつれて、非弾性散乱反応、(n,2n)反応が立ち上がる。
非弾性散乱反応の立ち上がり
注!
複合核過程
に限定して考える。
エネルギー
As
中性子をひっぺがす
ために必要なエネルギー
As+n
非弾性散乱反応の立ち上がり
エネルギー
低いエネルギー(E)の中性子が入射した場合
E
As
As+n
非弾性散乱反応の立ち上がり
エネルギー
低いエネルギー(E)の中性子が入射した場合
As
もとの準位に戻るのみ
→ 弾性散乱反応
As+n
非弾性散乱反応の立ち上がり
エネルギー
高いエネルギー(E)の中性子が入射した場合
E
As
As+n
非弾性散乱反応の立ち上がり
エネルギー
高いエネルギー(E)の中性子が入射した場合
励起状態に戻る場合も
ある
→ 非弾性散乱反応
As
As+n
非弾性散乱反応の立ち上がり
エネルギー
高いエネルギー(E)の中性子が入射した場合
励起状態に戻る場合も
ある
→ 非弾性散乱反応
ガンマ線を放出
As
As+n
(n,2n)反応の立ち上がり
エネルギー
非常に高いエネルギー(E)の中性子が入射した場合
As-n
As
As+n
(n,2n)反応の立ち上がり
エネルギー
非常に高いエネルギー(E)の中性子が入射した場合
中性子を一回放出
As-n
As
As+n
(n,2n)反応の立ち上がり
エネルギー
非常に高いエネルギー(E)の中性子が入射した場合
As-n
As
中性子を一回放出した
あとで、もう一回中性子を
放出するだけのエネルギー
がある
→ (n,2n)反応
As+n
各種散乱反応
砒素の断面積
入射エネルギーが高くなるにつれて、非弾性散乱反応、(n,2n)反応が立ち上がる。
(n,2n)反応断面積の比較
核分裂中性子の平均エネルギーは2MeV、最大エネルギーは10MeV程度
Be反射体付き超小型原子炉での(n,2n)反応の寄与
Be-9の(n,2n)反応は、例外的に低いエネルギー
(3MeV~)で生じる。
U-235燃料+Be反射体の球形原子炉
仮に(n,2n)反応を無視すると、
12cm
5.6cm
Keff : 1.00 → 0.97
二次中性子のエネルギー分布(砒素・14MeV中性子入射)
ここでゼロになる
理由を考えよう
(n,2n)反応の立ち上がり
エネルギー
非常に高いエネルギー(E)の中性子が入射した場合
As-n
As
As+n
(n,2n)反応の立ち上がり
エネルギー
非常に高いエネルギー(E)の中性子が入射した場合
一発目が
低いエネルギー
一発目が
高いエネルギー
As-n
As
As+n
(n,2n)反応の立ち上がり
エネルギー
非常に高いエネルギー(E)の中性子が入射した場合
一発目が
低いエネルギー
→もう一発出せる
一発目が
高いエネルギー
→もう一発出せない
As-n
As
As+n
(n,2n)反応について補足
エネルギー
非常に高いエネルギー(E)の中性子が入射した場合
As-n
一気に中性子を二つ
放出することは有る?
→ 高エネルギーでは有り得る。
(統計模型では考慮不可)
As
As+n
中性子捕獲反応
エネルギー
高いエネルギー(E)の中性子が入射した場合
E
As
γ線を放出して、この核のまま留まる
→ 捕獲反応
As+n
中性子捕獲反応
エネルギー
γ線の放出には、比較的長い時間が必要:
他の競合反応が多いほど、γ線放出の可能性は減る
入射エネルギーが大
→ 競合反応が大
As
As+n
砒素の捕獲断面積
入射エネルギーの増加に伴い断面積が減少
砒素の捕獲断面積
!注意!
高エネルギー領域
での話です。
砒素の捕獲断面積
低エネルギー領域で
いわゆる「1/v」の振る舞い
砒素の弾性散乱断面積
ポテンシャル散乱成分
(平坦)
共鳴散乱成分
(1/vの振る舞い)
共鳴領域
U-238の中性子捕獲断面積
スムースパート:
実験データと
理論計算から
共鳴領域:
実験データから
共鳴領域
低い入射エネルギーでは
「As+n」の励起レベルが
離れている。
エネルギー
励起レベルは低いものしか
分かっておらず、理論的に
予測することも不可能。
共鳴エネルギー
に対応
As
As+n
共鳴領域
高い入射エネルギーでは
「As+n」の励起レベルが
密集しているため、「共鳴
ピーク」はならされ、断面積
はスムースになる。
エネルギー
共鳴ピークの密集度を
近似的に評価することで
理論的に断面積を予測可能。
As
As+n
共鳴ピークがなぜ幅を持つのか?
・全ての励起準位には「寿命」が考えられる。
・励起準位の寿命(時間)と励起エネルギーは、不確定性原理により、
同時に正確な値を測定することが出来ないことが言える。
→ 励起(共鳴)エネルギーは「あいまいさ」、すなわち「幅」を持つ。
共鳴パラメータ(Cu-63)の例
一行(6つのパラメータ)で一本の共鳴に対応。
共鳴領域での核データ評価法
(U-235での共鳴解析の例。上:核分裂、下:捕獲)
断面積のオーダー
が小さいため、実
験誤差が大きいと
考えられる。
Leal et al., NSE, 131, p.230 (1999)
実験データを再現するように共鳴パラメータを決定する。
米国ORNLのSAMMYコードが有名。
補足
・1/vの振る舞いについて
・非弾性散乱断面積の補足
・B-10の中性子吸収反応について
・「魔法数(マジックナンバー)」について
・「ペアリング」について
補足
・1/vの振る舞いについて
低エネルギー領域で「1/v」になる理由を専門家に聞いてみた(1)
物質粒子の波長はλ∝1/v。
不確定性原理(位置と運動量は同時に正確には測定でき
ない)により、中性子が波長程度広がっているとすると、
原子核と衝突しうる面積はπλ2(つまり1/v2に比例)。
一方、原子核の中へ入っていく可能性は速い中性子ほど
大きく、vに比例する(物体に比べて波長が長いほうが影
響を受けにくく、衝突の影響が小さくなるため、衝突確率
が小さくなる)。
よって、反応確率=1/v2×v = 1/v
JAEA 岩本修氏より
低エネルギー領域で「1/v」になる理由を専門家に聞いてみた(2)
補足
・非弾性散乱断面積の補足
非弾性散乱反応補足
エネルギー
稀に、複合核がγ線を放出したあとに、中性子が放出
される場合がある→非弾性散乱反応
As
As+n
非弾性散乱反応補足
エネルギー
稀に、複合核がγ線を放出したあとに、中性子が放出
される場合がある→非弾性散乱反応
中性子の入射エネルギーが
低くても起こる場合がある。
As
As+n
非弾性散乱反応補足
例えばこの範囲
補足
・B-10の中性子吸収反応について
B-10:中性子の強吸収核種
B-10による中性子吸収は、B-10(n,α)Li-7により生じる
(中性子「捕獲」の(n,γ)ではない)。
B-10:中性子の強吸収核種
エネルギー
B-10
Q=2.79MeV
B-11
Li-7
Q=2.79MeV+中性子入射エネルギーがアルファ線
とLi-7の運動エネルギーとして分配される。
B-10:中性子の強吸収核種
エネルギー
B-10
Q=2.311MeV
B-11
Li-7
ガンマ線
ただし、Li-7の第一励起レベルが0.4776MeVにあるため、
ガンマ線が一本放出される場合がある(MF=801として定義)。
B-10:中性子の強吸収核種
低エネルギー領域ではガンマ線がほぼ必ず放出されるが、
高速領域では放出される確率が低くなる。
多群形式B-10(n,t)2a断面積の比較(PWRトリチウム生成量)
87
PWR UO2ピンセル減速材領域でのB-10(n,t)2a反応率(Log-Log)
88
PWR UO2ピンセル減速材領域でのB-10(n,t)2a反応率(Log-Lin)
エネルギー積分値:
J40/0.264
J33/0.398
E70/0.299
JENDL-4.0ではトリチウム生成量が3-4割低減するが、問題ないか?
89
補足
・「魔法数(マジックナンバー)」について
「魔法数」について
「原子」の魔法数:
・原子に束縛されている電子のさまざまな軌道エネル
ギーにギャップがある。
・あるギャップより下の全軌道に電子が詰められる状態
・電子が魔法数をもつ原子は極めて安定:
2(ヘリウム)、10(ネオン)、18(アルゴン)
「原子核」の魔法数:
・原子と同様に、原子核にも魔法数が存在
・陽子数もしくは中性子数が2、8、16、20、50、82、126の
原子核は極めて安定
・崩壊や核分裂が起こりにくくなる
「魔法数」について
励起レベルを見ると、魔法核近傍の核は低いエネルギーレベル
の分布が疎
通常の核
「魔法核」
「魔法数」について
魔法核近傍の核
低い入射エネルギーの中性子
では励起されづらい
(励起レベルが無い)。
↓
高い入射エネルギーの中性子
ではチャンネル数が多くなるため
γ線放出の可能性が減る。
↓
捕獲断面積が小さくなる。
A
A+n
「魔法数」について
陽子数、もしくは中性子数が以下の魔法数の核種
が魔法核
(魔法数) 2, 8, 16, 20, 50, 82, 126
例えば、
・鉛(Pb):Z=82, N=126(ダブルマジック)
・ジルコニウム(Zr):Z=40, N=50
捕獲断面積の比較(JENDL-3.3)
*W-184は
魔法核ではない
魔法核は中性子捕獲断面積が小さいため、原子炉材料として有利
Pb捕獲断面積の比較(JENDL-3.3)
Pb-208:「ダブルマジック」(天然組成のうち52.4%)
Zr捕獲断面積の比較
Zr-90のみが魔法核(天然組成のうち51.45%)
補足
・「ペアリング」について
「ペアリング」について
原子核は、陽子、中性子ともに、「ペア」になりたがる性質を持つ
→ ペアリング
中性子捕獲反応を考える場合、中性子数が奇数の核の方が、
偶数の核と比べて、反応が起こりやすい
Xe捕獲断面積の比較(JENDL-4.0)
Xeの原子番号:54
Sm捕獲断面積の比較(JENDL-3.3)
Smの原子番号:62
Gd捕獲断面積の比較(JENDL-3.3)
Gdの原子番号:64
その他
補足:弾性散乱断面積に見られるピーク
砒素の断面積
・ポテンシャル散乱の成分である。
・引力項と斥力項が釣り合うときに断面積は極小値を取る。
軽核の中性子吸収断面積の比較
He-4は中性子吸収断面積がゼロ
(原子核は吸収できる中性子数の上限が存在する→He-5は存在しない)