研究紹介 Introductions of Research Activities 新型電圧制御装置の開発 配電系統の電圧変動を高速制御により適正に維持する安価な装置を開発 Development of a New Type Voltage Regulator Development of a low cost device to properly maintain the voltage fluctuation of the distribution network by a fast speed control (電力技術研究所 流通G 系統T) (Power System Team, Power System Group, Electric Power Research and Development Center) 高圧配電系統に太陽光発電設備(PV)が大量連系される 中で、電圧上昇・電圧変動などの影響が懸念されている。 そこで、PV出力変動時の適正電圧維持対策として、6kV級 新型電圧制御装置の実証器を製作して、高速かつ連続電圧 調整を安価に実現できることを確認した。 With the increased integration of a large scale photovoltaic (PV) generation system to the distribution network, there is an increasing concern that it may lead to problems of voltage rise or voltage fluctuation etc. Hence, as a solution to the problem of maintaining an appropriate voltage even during PV output fluctuation, a prototype of 6kV class new type voltage regulator was manufactured, and confirmed its ability experimentally to regulate voltage continuously and rapidly at a low cost. 1 次電圧を、それぞれ目標電圧と比較して制御する。 開発の背景・目的 今回試作した実証器の仕様を第1表に示す。 高圧配電線の供給電圧を一定範囲内に調整する目的 Voltage Regulator)を設置している。近年では、高圧配 制御変圧器 △V 高圧配電線路 励磁変圧器 電系統に太陽光発電設備が大量連系される中、電圧上昇・ 出力側 入力側 で、線 路 の 途 中 に 電 圧 制 御 装 置( 以 下、SVR:Step インバータ回路 電圧変動などへの影響が懸念され、従来のSVRでは、太 陽光発電の早い出力変動に追従できない問題がある。ま た、連続制御が可能で応答性も速い自励式SVC(Static ニ次電圧3φ Vout(Vin±△V) 三次 一次電圧3φ Vin ニ次 Var Compensator)等の適用も解決策として考えられ るが、装置価格が高く、設備数の多い高圧配電系統に使 安定巻線 用する場合には電圧維持対策のコストが大きくなる。 中性点 このため、高速制御性能と低コストを両立できる電圧 第1図 主回路構成(1相分) 制御装置として、SVRに比べて高速制御可能であり、自 励式SVC等に比べてコスト面や運転効率で有利な新型電 定格電圧 定格電圧 圧制御装置(以下、HVR:Hybrid Voltage Regulator) 6, 600V 電圧調整範囲(△V) 6, 600V±262.5V ±262.5V 線路容量 制御容量 制御容量 3, 000kVA 124kVA 3, 000kVA 124kVA 〔△Vの内訳〕 タップ切換回路電圧調整範囲:±225V(75V/タップ×±3タップ) インバータ回路電圧調整範囲:±43.5V の実証器を試作するとともに、模擬配電系統における電 圧変動・負荷変動試験と系統故障時の応動試験を実施 し、実現性・有効性の確認を行った。 第1表 実証器仕様 電圧調整範囲(Vin±△V) 線路容量 6, 600V を愛知電機㈱殿と共同で開発した。本研究では、6kV級 2 サイリスタ式 タップ切換回路 3 HVRの概要 HVRでは高速かつ連続電圧調整を安価に実現するた HVRの特徴 (1)高速電圧調整 め、機械式であったSVRのタップ切換回路にサイリスタ サイリスタ式タップ切換回路とインバータ回路を組み を採用し、タップ間の電圧を細かく調整するインバータ 合わせることで高速電圧調整を可能としている。 (2)低コスト 回路を追加した。また、各相の巻線を独立に制御し、各相 個別の電圧調整も可能としている。 インバータ回路による電圧調整範囲を1タップ分に限 HVRの主回路は第1図に示す通り、励磁変圧器、制御 定してインバータ容量を抑制し、低コスト化を実現して 変圧器、サイリスタ式タップ切換回路、インバータ回路 いる。また、インバータ、サイリスタの冷却方式にヒート で構成されている。高圧配電線路に接続された励磁変圧 パイプ方式を採用してファンレス化し、メンテナンスフ 器の二次・三次巻線にはサイリスタ式タップ切換回路と リーとしている。 インバータ回路を接続している。この各回路の出力を直 (3)電圧不平衡対策 列接続して制御変圧器に印加し、その出力を高圧配電線 タップ切換回路、インバータ回路を各相に設けて個別 路電圧に加えて目標電圧に調整する。この場合、サイリ に電圧調整ができるので、配電系統の三相不平衡電圧対 スタ式タップ切換回路は一次電圧、インバータ回路は二 策が可能である。 技術開発ニュース No.154 / 2016-2 33 Introductions of Research Activities (4)高効率 4 実証器の開発・検証 SVRとほぼ同等であり自励式 SVCより高い効率を達 成している。 6kV 級実証器製作後,模擬配電系統に設置して各相個別 の電圧制御も含めた電圧変動・負荷変動試験を行い,太陽 光発電等の出力変化で発生する早い電圧変動への追従と, 実証器の開発・検証 三相不平衡電圧の是正が可能なことを確認した。さらに, 配電系統短絡故障時の応動試験を行い,試験後の正常動作 6kV級実証器製作後、 模擬配電系統に設置して各相個 も確認し,実系統に適用できる見通しを得た。第2図に実 証器外観,第3図に負荷変動試験回路図,第4図に負荷変 別の電圧制御も含めた電圧変動・負荷変動試験を行い、 動試験状況,第5図に負荷変動試験結果の一例を示す。 4 太陽光発電等の出力変動で発生する早い電圧変動への追 ヒートパイプ(裏面にインバータ・サイリスタを実装) 出力側 従と、三相不平衡電圧の是正が可能なことを確認した。 入力側 さらに、配電系統短絡故障時の応動試験を行い、試験後 Vin 6,900V 6,600V 6,300V 負荷投入(※) インバータ電圧 250V 200V 150V 100V 50V 0V ΔV タップ電圧 出力電圧調整範囲(6862.5~6337.5V) Vout 6,900V 6,600V 6,300V -5 変圧器部 の正常動作も確認し、実系統に適用できる見通しを得た。 研究紹介 0 5 4 (秒) 10 15 20 (a)UV(線間) 第3図に負荷変動試験回路図、第4 Vin 6,900V 第2図に実証器外観、 実証器の開発・検証 負荷投入(※) 1,500mm 図に負荷変動試験状況、 第5図に負荷変動試験結果の一2,300mm6,600V Vin 6,900V 6,300V 6kV 級実証器製作後,模擬配電系統に設置して各相個別 例を示す。 6,600V の電圧制御も含めた電圧変動・負荷変動試験を行い,太陽 光発電等の出力変化で発生する早い電圧変動への追従と, 三相不平衡電圧の是正が可能なことを確認した。さらに, 制御箱 1,750mm 配電系統短絡故障時の応動試験を行い,試験後の正常動作 も確認し,実系統に適用できる見通しを得た。第2図に実 (a)正面 (b)側面 証器外観,第3図に負荷変動試験回路図,第4図に負荷変 第2図 実証器外観 動試験状況,第5図に負荷変動試験結果の一例を示す。 電源 HV R 実証 器 ~ 線 路インピーダンス Z1 ヒートパイプ(裏面にインバータ・サイリスタを実装) Z2 出力側線路 インピーダンス 入力側 6.6kV 変圧器部 ΔV 放熱器 インバータ電圧 インバータ電圧 6,300V 250V 200V ΔV 150V 100V 50V 0V 250V タップ電圧 200V 150V 100V タップ電圧 50V 出力電圧調整範囲(6862.5~6337.5V) 0V Vout 6,900V 6,600V Vout 6,900V 6,300V 6,600V -5 6,300V0 -5 第3図 負荷変動試験回路図 1,500mm 2,300mm 第2図 実証器外観 電源 HVR 実証器 制御箱 線路インピーダンス Z1 (a)正面 6.6kV 第2図 電源 ~ 線 路インピーダンス Z1 1,750mm HVR 実証器 模擬 負荷 模擬負荷 ΔV 放熱器 線路インピーダンス Z2 (b)側面 負荷変動試験状況 5 5 20 インバータ電圧 インバータ電圧 タップ電圧 タップ電圧 模擬負荷 Vout 6,900V Vout 6,900V 6,600V 6,600V 6,300V 6,300V まとめ 第3図 負荷変動試験回路図 HVR 実証器 250V 200V 150V 100V 50V 0V 20 15 線路 インピーダンス Z2 6.6kV 第4図 250V ΔV 200V 150V 100V 50V 0V 15 10 (a)UV(線間)(秒) (b)VW(線間) Vin 6,900V Vin 6,900V 6,600V 6,600V 模擬配電系統6,300V 6,300V 実証器外観 HV R 実証 器 5 10 0 (秒) 5 -5 0-5 50 (秒) 5 10 (秒) 10 15 15 20 20 模擬 負荷 第 3 図 負荷変動試験回路図 (c)WU(線間) (b)VW(線間) 太陽光発電の早い出力変動に追従できる高速電圧制御 ※負荷投入はUV(線間)のみ と三相不平衡電圧の是正が可能で,系統故障後も正常動作 Vin 6,900V 第5図 負荷変動試験結果 第5図 負荷変動試験結果 できる6kV級新型電圧制御装置の実証器を開発した。 6,600V 模擬配電系統 今後は,HVRの最適なインバータ容量と設置場所を明 6,300V 確にし,実配電系統におけるフィールド試験を通じて,長 まとめ 期信頼性を確認の上,実用化を目指す。模擬負荷 250V ΔV インバータ電圧 技術開発ニュース No.1xx/ 20xx-x 第 4 図 負荷変動試験状況 第4図 負荷変動試験状況 5 執筆者/加納稔久 200V 太陽光発電の早い出力変動に追従できる高速電圧制御 150V と三相不平衡電圧の是正が可能で、 系統故障後も正常動 100V タップ電圧 50V 作できる6kV級新型電圧制御装置の実証器を開発した。 0V 今後は、HVRの最適なインバータ容量と設置場所を明 Vout 6,900V 確にし、実配電系統におけるフィールド試験を通じて、 6,600V 長期信頼性を確認の上、実用化を目指す。 6,300V -5 まとめ 太陽光発電の早い出力変動に追従できる高速電圧制御 技術開発ニュース No.154 / 2016-2 と三相不平衡電圧の是正が可能で,系統故障後も正常動作 0 5 (秒) 10 (c)WU(線間) 34 ※負荷投入はUV(線間)のみ 15 20 執筆者/加納稔久
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