競合 ELISA 法の開発

技術の窓 №2117
H 28.2 .25
サルモネラ O4 群血清型に対する抗体を検出する
競合 ELISA 法の開発
サルモネラは家きんサルモネラ感染症及び家畜・家きんのサルモネラ症を引き起こし、畜産業に極
めて大きな経済的損失を与えます。また、牛肉、豚肉、鶏肉、鶏卵等の畜産物を介し、ヒトに食中毒
を引き起こす人獣共通感染症の原因菌でもあり、家畜衛生および公衆衛生上重要な病原細菌です。農
場においてサルモネラ対策を実施するにあたって、細菌検査と抗体検査が有用なツールとなりますが、
多くの場合は、細菌検査による菌の分離・同定に留まっています。しかし、抗体検査はサルモネラの
侵入や農場汚染の実態を把握することが可能です。サルモネラ抗体の検出には、ELISA 法が一般的に
用いられていますが、各動物種の抗体に対する 2 次抗体を必要とし、動物種ごとに試薬を準備する必
要があります。そこで、様々な家畜・家きんのサルモネラ抗体を単一の試薬で検出が可能となる競合
ELISA 法を開発しましたので、その概要を紹介し
ます。
1.サルモネラのリポ多糖(LPS)を
固相化する。
☆ 技術の概要
2.各種検体(血清)を反応させる。
LPS
サルモネラ O4 群には家畜・家きんのサルモネ
ラ症の原因である Typhimurium、馬パラチフスの
原因である Abortusequi などの血清型があります。
サルモネラ O4 群に対する特異的なマウスモノク
ローナル抗体を用いた競合 ELISA 法(図1)により、
ウシ、ブタ、ウマ、ニワトリにおいて、サルモネ
各種家畜・家きん検体(サルモネラ感染血清)
感染血清はLPS 非感染血清はLPS
各種家畜・家きん検体(非感染血清)
に結合する
3.抗サルモネラO4血清群モノク
ローナル抗体を反応させる。
抗サルモネラモノクローナル抗体
4.抗マウス標識抗体(2次抗体)
を反応させる。
抗マウス標識抗体
ラ O4 群に対する抗体を、単一の試薬で検出でき
ます(図 2)
。
に結合しない
5.発色後、プレートリーダで測定
する。
抗体はLPSに
結合できない
抗体はLPSに
結合する
2次抗体は各種 2次抗体はモノ
検体(血清) クローナル抗体
に結合しない に結合する
発色しない
発色する
陽性
陰性
図1 競合ELISA法の手順
☆ 活用面での留意点
各動物の抗体に対する 2 次抗体が不要で、単一の試薬で様々な動物種の抗体検査が可能です。本法
は、サルモネラ O4 群に対する抗体のみを検出しますが、その他の血清型に対するモノクローナル抗体
の開発により、様々な血清型の抗体検査も可能となります。詳細については、農研機構動物衛生研究
所情報広報課(電話 029-838-7708)までお問い合わせください。
(農研機構 動物衛生研究所 細菌・寄生虫研究領域 江口正浩 小川洋介 下地善弘)