2016年1⽉29⽇ 優先証券について 2016年に⼊り、中国経済の減速懸念や原油安を背景に世界同時株安になるなど、いわゆる「リスクオフ」の動 きから⾦融市場では値動き(ボラティリティ)が⼤きい状況が続いています。このレポートでは、昨年来下落傾 向にある「優先証券」に注⽬し、2015年央以降の状況を説明いたします。 ①2015年7⽉〜8⽉ 第⼀次リスクオフ相場で優先証券は軟調な展開 2014年10⽉にFRBによる量的緩和が終了して以降、⽶国の利上げが意識され債券市場はやや変動が⼤きくなり ました。2015年7⽉になると持ち直していた原油価格が下落傾向になったことに加え、8⽉には中国⼈⺠元が実 質切り下げられたことにより、中国経済に対する懸念の⾼まりから中国株が⼤きく下落し、⾦融市場全般のセ ンチメントが急速に悪化しました。 債券市場では⽶国債や投資適格社債など信⽤⼒が⾼い債券が買われる⼀⽅で、ハイイールド債券など信⽤⼒が 低い債券は⼤きく下落するなど、クレジット(信⽤リスクを取って利益を追求する債券)市場は下落傾向とな りました。それまで堅調な動きを続けていた優先証券も同様に影響を受け軟調な展開となりましたが、ハイ イールド債券と⽐較すると、下落率は軽微にとどまりました。 ②2016年1⽉〜⾜元 再度のリスクオフ相場の中、優先証券も影響を受ける 2016年に⼊り、⼀時1バレル30⽶ドルを下回るなど原油価格が下落幅を広げたことに加え、中国の経済指標が 悪化したことにより、再び世界同時株安になるなどリスクオフの動きが強まりました。債券市場でも昨年夏と 同様に優先証券も含めたクレジット市場は下落傾向となりました。 債券市場 106 (⽶ドル) 65 55 ① 104 原油価格の推移 ② 102 100 ① 45 35 ② 25 98 14/12 優先証券 投資適格社債 ハイイールド債券 96 94 92 14/12/31 15/3/31 15/6/30 15/6 15/12/31 (年/⽉/⽇) ※原油:WTI原油先物、⽶国株:S&P500、中国株:上海総合、⽇本株:⽇経平均株価 優先証券:バンクオブアメリカ・メリルリンチ証券 US Capital Securities Index、投資 適格社債:バンクオブアメリカ・メリルリンチ証券 US Corporate Index、ハイイールド 債券:バンクオブアメリカ・メリルリンチ証券 US High Yield Index (2014年12⽉31⽇〜2016年1⽉22⽇) ■当資料は情報提供を目的として大和住銀投信投資顧問が作成したものであ り、特定の投資信託・生命保険・株式・債券等の売買を推奨・勧誘するものでは ありません。■当資料は各種の信頼できると考えられる情報源から作成してお りますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。■当資料に記 載されている今後の見通し・コメントは、作成日現在のものであり、事前の予告 なしに将来変更される場合があります。■当資料内の運用実績等に関するグ ラフ、数値等は過去のものであり、将来の運用成果等を約束するものではあり ません。■当資料内のいかなる内容も、将来の市場環境の変動等を保証する ものではありません。 ⽇本株 120 100 60 (年/⽉) 中国株 140 80 15/12 ⽶国株 160 15/9/30 15/9 ⽇⽶中の株価推移 180 ※2014年12⽉末を100として指数化 90 15/3 ② ① ※2014年12⽉末を100として指数化 14/12 15/3 15/6 (出所)各種データより⼤和住銀投信投資顧問作成 15/9 15/12 (年/⽉) 1/4 大和住銀投信投資顧問株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第353号 加入協会 一般社団法人投資信託協会 一般社団法人日本投資顧問業協会 2016年1⽉29⽇ 優先証券の繰上償還の状況 2012年〜2014年:繰上償還は加速し、優先証券は堅調に推移 ⾃⼰資本規制強化を背景に既存の優先証券が繰上償還された⼀⽅、国際的な⾦融機関は経営の健全性を維持する ため、⾃⼰資本の強化を進めたことから信⽤⼒の改善が進み、市場環境が不安定な時も影響は軽微にとどまり、 優先証券は堅調に推移しました。 150 (2011年12⽉31⽇〜2016年1⽉22⽇) 優先証券 ハイイールド債券 投資適格社債 140 130 ※優先証券:バンクオブア メリカ・メリルリンチ証 券 US Capital Securities Index、ハイイールド債 券:バンクオブアメリ カ・メリルリンチ証券 US High Yield Index、投資 適格社債:バンクオブア メリカ・メリルリンチ証 券 US Corporate Index 120 110 100 ※2011年12⽉末を100として指数化 90 11/12/31 12/12/31 13/12/31 14/12/31 15/12/31 (年/⽉/⽇) 2015年〜現在:銀⾏銘柄は繰上償還進むも、⼀部の保険銘柄で繰上償還が延期 繰上償還が進んだことで、投資対象となる銀⾏銘柄は減少し、2014年以降新たな投資対象として保険銘柄が注 ⽬されるようになりました。銀⾏のような規制強化による繰上償還はないものの、格付け維持等の理由で、銀⾏ と同様に最初の繰上償還可能⽇に繰上償還が期待されたものです。 しかしながら、2015年に⼊ると⼀部の保険銘柄については、繰上償還の延期が材料となり、信⽤⼒についての 懸念はないものの、価格が下落しました。(詳細は次ページ以降) 繰上償還が⾒送られるという懸念は⼀部の保険銘柄に限られているものであり、優先証券全体に拡⼤しているわ けではありません。引き続き最初の繰上償還⽇に繰上償還された銘柄は多数存在しています。 <ご参考> 2016年に繰上償還が期待されている銘柄 繰上償還となった銘柄(ドイツ銀⾏)の価格推移 (⽶ドル) (⽶ドル) (2015年3⽉31⽇〜 2016年1⽉19⽇) 105 (チューリッヒ・インシュアランス)の価格推移 110 2016年1⽉19⽇ 繰上償還済 (2015年3⽉31⽇〜 2016年1⽉22⽇) 105 100 100 95 95 15/3 15/6 15/9 15/12 (年/⽉) 15/3 15/6 15/9 15/12 (年/⽉) 2/4 ■当資料は情報提供を目的として大和住銀投信投資顧問が作成したものであり、特定の投資信託・生命保険・株式・債券等の売買を推奨・勧誘するものではありません。 ■当資料は各種の信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。■当資料に記載されている今後の見通 し・コメントは、作成日現在のものであり、事前の予告なしに将来変更される場合があります。■当資料内の運用実績等に関するグラフ、数値等は過去のものであり、将来 の運用成果等を約束するものではありません。■当資料内のいかなる内容も、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。 2016年1⽉29⽇ ⼀部の保険銘柄について 2015年1⽉末:⼀部銘柄について繰上償還が延期される懸念浮上 銀⾏のように⾃⼰資本規制強化を背景とする優先証券の繰上償還期待は無いものの、格付け維持等による繰上償 還期待から、保険セクターの優先証券も2014年末まで安定的に推移していました。 しかし、発⾏体の経済合理性の観点から繰上償還を延期するリスクがあると意識され始め*、信⽤⼒についての 懸念はないものの、2⽉以降銀⾏セクターと⽐較して軟調な動きとなりました。⼀部の銘柄に対する売りはその 後も断続的に散⾒されました。 *銘柄によっては、最初の繰上償還可能⽇以降クーポンが固定⾦利から変動⾦利に変わることにより、発⾏体が⽀払うクーポンが 著しく低くなる銘柄があったことから、こうした銘柄は経済合理性の観点から繰上償還を延期するのではないか、という考え⽅。 2015年8⽉:リンカーン・ナショナル発⾏の⼀部優先証券について繰上償還が延期される懸念拡⼤ 特に、8⽉初旬には、リンカーン・ナショナルの⼀部の銘柄が⼤きく下落しました。リンカーン・ナショナルの CEOが7⽉30⽇の4-6⽉期決算発表において、実質的に繰上償還の延期を宣⾔したと⾒做される発⾔をしたこと がその背景です。このため、信⽤⼒についての懸念はないものの、⼀部の投資家の売りを誘い下落したものと考 えられます。 リンカーン・ナショナルの下落により、他の⼀部の保険銘柄*も影響を受けましたが、いずれもリンカーンと同 様に信⽤⼒の悪化によるものではありません。 *「リインシュアランス・グループ・オブ・アメリカ」「カトリン」「グレンメドウ」等 8⽉に繰上償還が延期される懸念が拡⼤した銘柄(リンカーン・ナショナル)の価格推移 (⽶ドル) (2013年12⽉31⽇〜2016年1⽉22⽇) 110 105 100 95 90 85 80 75 70 13/12 14/3 14/6 14/9 14/12 15/3 15/6 15/9 15/12 (年/⽉) (出所)各種データより⼤和住銀投信投資顧問作成 3/4 ■当資料は情報提供を目的として大和住銀投信投資顧問が作成したものであり、特定の投資信託・生命保険・株式・債券等の売買を推奨・勧誘するものではありません。 ■当資料は各種の信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。■当資料に記載されている今後の見通 し・コメントは、作成日現在のものであり、事前の予告なしに将来変更される場合があります。■当資料内の運用実績等に関するグラフ、数値等は過去のものであり、将来 の運用成果等を約束するものではありません。■当資料内のいかなる内容も、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。 2016年1⽉29⽇ ⼀部の保険銘柄について(前⾴より続く) 2015年11⽉:リインシュアランス・グループ・オブ・アメリカ発⾏の優先証券の繰上償還が延期 2015年11⽉15⽇、リインシュアランス・グループ・オブ・アメリカ(RGA)の優先証券の繰上償還が延 期されたことが判明しました。事前に市場で予想されていたこともあり、直後の市場の⽔準に⼤きな変化 はありませんでしたが、同様の⾦利⽀払い条件を持つ⼀部の保険銘柄は、⾜元にかけ徐々に価格が下落し ました。(※) (※)発⾏体から繰上償還⾒送りの可能性を表明された銘柄について下落幅が⼤きくなっています。 (⽶ドル) 繰上償還が⾒送られた銘柄(RGA)の価格推移 (2013年12⽉31⽇〜2016年1⽉22⽇) 110 105 100 95 90 85 80 75 70 13/12 14/3 14/6 14/9 14/12 15/3 15/6 15/9 15/12 (年/⽉) (出所)各種データより⼤和住銀投信投資顧問作成 ⼀部の保険銘柄の今後の⾒通し 信⽤⼒に懸念は無いものの繰上償還延期を材料として価格下落した⼀部の保険銘柄は、実質的に変動⾦利 の債券として価格形成される⽔準まで下落していると考えられます。したがって、これらの銘柄は信⽤⼒ の悪化など別の価格下落要因がなければ、今後⼤幅に下落することは考え難いと思われます。 しかし、現在のように全体的に弱含んだ状況を脱するには、前述のような状況から⼀転して世界の経済環 境が改善、物価が上昇し、FRBによる利上げが継続することが必要と思われます。とりわけ、FRBが年内 に何度か利上げを実施すれば、⾦利収⼊が増加する(実質的な)変動⾦利の銘柄の価格は上昇すると期待 されます。 4/4 ■当資料は情報提供を目的として大和住銀投信投資顧問が作成したものであり、特定の投資信託・生命保険・株式・債券等の売買を推奨・勧誘するものではありません。 ■当資料は各種の信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。■当資料に記載されている今後の見通 し・コメントは、作成日現在のものであり、事前の予告なしに将来変更される場合があります。■当資料内の運用実績等に関するグラフ、数値等は過去のものであり、将来 の運用成果等を約束するものではありません。■当資料内のいかなる内容も、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。
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