Weekly Outlook

投資情報部
2016 年 2 月 25 日(木)
Weekly Outlook
週刊投資情報
CONTENTS
1. 日本株見通しとポイント~重要イベント控える中、高配当/増配関連に注目 ..............2
2. 米国株見通しとポイント~政治日程に注目 ..........................................................3
3. 円相場見通しとポイント~注目される週末の G20 会合と米国の通貨政策 ...........4
4. 国内経済動向~暖冬要因等で百貨店が苦戦、企業の景況感も停滞気味 ...............6
5. 新興国市場・経済動向 ........................................................................................7
6. 2016 年 3 月期第 3 四半期決算発表の業績動向(2 月 19 日現在) ..................10
7. 業績に着目した銘柄選別~2 期連続最高益更新銘柄 .......................................12
8. 米国先物~投機筋によるポジション動向 ...........................................................13
9. 米国株式~米国企業 10-12 月期決算途中経過 ...............................................14
10. インドネシア~予想通り 1 月に続いて利下げを決定 ..........................................15
11. インド~通貨ルピーの対ドル相場は 2 年半ぶりの安値圏に ...............................16
12. 主な国内株価指数とテクニカル指標の推移 .......................................................17
13. 来週・再来週の主なスケジュール ......................................................................18
1
本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。
No.243
2016 年 2 月 25 日(木) 投資情報部
Weekly Outlook No.243
1.日本株見通しとポイント~重要イベント控える中、高配当/増配関連に注目
日本株担当: 髙山 裕介
原油価格や為替市場の動向に左右され、一進一退の展開が続いた。今週末のG20を皮切りに複数の重要
イベントを控え、相場の転機となる可能性があり要注目。また、アナリストによる業績予想の下方修正が拡
がれば、悪材料出尽くしとなる可能性もあろう。当面は日銀のマイナス金利導入により魅力の増した東証
REIT指数や高配当利回り銘柄、連続増配銘柄の物色は投資妙味が大きいと考えられよう。
 重要な時間帯に突入
図表1. 当面の主なスケジュール
先週末以降の日本株市場は、引き続き原油価格や
為替市場の動向に左右され、日経平均は16,000円前
後で一進一退の展開となった。上値を追う材料には乏
しいものの、原油価格に下げ止まりの兆しが見えること
などから2月初旬までのような投資家の過度なリスクオフ
の局面からはやや落ち着きを取り戻しつつある。また、
テクニカル面からみても、日経平均の値幅調整は十分
に進展し、底入れ時期が近付きつつあると判断される。
2月
26日(金) G20財務省・中央銀行総裁会議(上海、~27日)
3月
1日(火)
4日(金)
米 2月ISM製造業景況指数
米 2月雇用統計
中 全国人民代表大会(~中旬まで)
10日(木) ユーロ圏 ECB(欧州中央銀行)理事会
5日(土)
14日(月) 日 日銀金融政策決定会合(~15日)
15日(火) 米 FOMC(米連邦公開市場委員会、~16日)
そうした中、今週末にはG20が開催される。各国が景
気刺激のために政策協調できるかが注目されよう。その
後も、来週はスーパーチューズデーをはじめ、米ISM景
況指数や雇用統計、来週以降は欧米日の金融政策会
合が予定されており、重要な時間帯に突入する。いず
れも相場の転機となる可能性があり、要注目だ。
出所: Bloombergおよび各種報道よりSMBC日興証券作成
図表2. 3月期決算企業の経常利益の推移
60
市場予想
(兆円)
50.1
50
41.2
43.5
46.4
?
こ
れ
か
ら
?
40
 業績下方修正含みの中での投資アイデア
30
足元では、3月期決算企業の第3四半期決算発表が
ほぼ終了し、アナリストによる業績予想修正が進んでい
る。ただ、先週末時点では、来期(17/3期)は依然として
8%の経常増益が見込まれており、軟調な株式市場が
示す業績悪化懸念はまだ反映されていない。為替前提
の見直しなどに伴い、外需関連企業の多くは円高影響
などから下方修正される可能性が高い。しかし、業績悪
化の織り込みが進めば、株式市場にとってはむしろ悪
材料出尽くしで反発のきっかけとなる可能性があろう。
29.6
20
10
来
期
業
績
の
下
方
修
正
は
0
13/3期
14/3期
15/3期
16/3期
17/3期
注: TOPIX採用3月期決算企業(変則決算除く)で継続的にデータが取
得できる1,409社を集計。市場予想はQUICKコンセンサス(2/19時
点)で、3社未満の場合は東洋経済予想を使用
出所: QUICKよりSMBC日興証券作成
図表3. 連続増配銘柄の株価パフォーマンス
国内外の悪材料出尽くしには幾分時間を要するとみ
られることに加え、上述の通り、週末以降、多数の重要
イベントを控えることなどから、日本株は当面波乱含み
の展開が予想される。そうした中、日銀によるマイナス金
利導入後、東証REIT指数は相対的な利回りの高さが
評価され、2/24終値で昨年6/3 以来となる1,860pt 台を
回復。株式市場においても、配当を意識した経営を続
ける企業の株価は良好に推移する傾向が強い。とりわ
け、足元のような株価急落局面やマイナス金利導入局
面では、下値抵抗力が強く、金利差拡大から相対的に
魅力の増した高配当利回り銘柄や連続増配銘柄の物
色は投資妙味が大きいと考えられよう。
140
130
(2015/01=100として指数化)
連続増配29社
120
110
TOPIX
100
90
※連続増配29社 :
カカクコム、アルフレッサHD、JT、GMOPG、花王、科研薬、みらか HD、ヤフー、
ユー・エス・エス、小林製薬、リンナイ、三井海洋、栗田工、SPK、高速、ハイデ日高、
Fマート、ユニチャーム、芙蓉リース、興銀リース、TC-Lease、リコーリース、三菱 Uリース、
リロHLD、トランコム、A IT、KDDI、ニトリ HD、サンドラッグ。
80
15/1
15/4
15/7
15/10
16/1 (年/月)
注: TOPIX構成銘柄のうち直近まで10期以上連続増配の銘柄を集計
出所: Bloomberg、QUICKよりSMBC日興証券作成
2
本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。
米 スーパーチューズデー(党員集会、予備選集中日)
2016 年 2 月 25 日(木) 投資情報部
Weekly Outlook No.243
2.米国株見通しとポイント~政治日程に注目
米国株担当: 河田 剛
2月18日以降の米国株は、原油価格の変動や経済指標に一喜一憂する動きが続いた。2015年10-12月期
の決算発表はピークアウトしているため、当面の株価はISM製造業景況指数、雇用統計などの主要経済指
標とG20財務相・中央銀行総裁会議や米大統領選の各州予備選・党員集会が集中するスーパーチューズ
デーなどの政治日程を消化しつつ、神経質な動きが続くものとみられる。
 先週、今週のレビュー~揉み合いが続く
売件数、住宅着工件数については、12月の暖冬と1月
の寒波による影響が出ている可能性がある。
2月18日の米国株市場は、2月13日終了週の新規失
業保険申請件数が事前予想を下回り、2月のフィラデル
フィア連銀景況指数が事前予想を上回ったものの、原
油価格の下落などから利益確定売りが優勢となり、ダウ
工業株指数(NYダウ)は前日比▲40ドルとなった。19日
は、値ごろ感からハイテク株の一部に買いが入ったが、
欧州株の下落や原油価格の下落などから、NYダウは
▲21ドルと小幅に続落した。週明け22日は、2月のマー
クイット製造業PMI(速報値)が事前予想を下回ったもの
の、原油価格が増産抑制に対する期待から上昇したこ
とや、一部企業のM&Aに関する報道などから、NYダウ
は+228ドルと大幅に上昇した。23日は、1月の中古住宅
販売件数が事前予想を上回ったものの、12月のS&P/ケ
ース・シラー住宅価格指数や2月のコンファレンスボード
消費者信頼感指数が事前予想を下回ったこと、イラン
石油相が産油4ヵ国の原油生産量に関する合意に同意
しない姿勢を示したこと、サウジアラビア石油相が減産
に否定的な見解を示したことなどから、NYダウは▲188
ドルとなった。24日は、欧州株の下落や1月の新築住宅
販売件数、2月のマークイット米国サービス業PMIが事
前予想を下回ったことから売りが先行したものの、ガソリ
ン在庫の減少を受けて原油価格がプラスとなったことな
どから、NYダウは+53ドルとなった。
 当面の見通し~政治日程に注目
経済指標では3月1日発表予定の2月のISM製造業
景況指数(事前予想:48.5)、3日発表予定の2月のISM
非製造業景況指数(事前予想:53.8)、4日発表予定の2
月の雇用統計(事前予想は非農業部門雇用者数:前月
比+19.5万人、民間部門雇用者数:+18.5万人、時間当
たり賃金:+0.2%、失業率:4.9%)などが注目される。2月
26~27日には、上海でG20(主要20ヵ国・地域)財務相・
中央銀行総裁会議が開催される。G20で具体的な景気
対策等が打ち出される可能性は低いとみられるが、何ら
かの協調姿勢が示されれば、株価にはプラスとなろう。3
月1日は大統領予備選の山場であるスーパーチューズ
デーで、マサチューセッツ州、テキサス州、ジョージア州、
テネシー州、オクラホマ州など多くの州で民主党、共和
党の予備選・党員集会が開催される。民主党でサンダ
ース上院議員が健闘し、共和党でトランプ氏がさらに優
位になるようなら、市場では不透明感が高まろう。2015
年10-12月期の決算発表はピークアウトしているため、
当面の株価は主要経済指標と政治日程を消化しつつ、
神経質な動きが続くものとみられる。
事前予想は Bloomberg、2016 年 2 月 25 日 10 時時点のもの
 不動産市場の動向
2月23日に発表された12月のS&P/ケース・シラー住
宅価格指数は、全米20都市ベースで、季節調整前の
前年比が+5.74%と事前予想(+5.80%)を下回ったが、
前年比では43ヵ月連続でプラスとなった。前月比では季
節調整前が+0.0%、季節調整後では+0.8%となり、総じ
て住宅価格の回復傾向が続いている。販売、着工につ
いては、23日に発表された1月の中古住宅販売件数は
前月比+0.4%、年率547万件(事前予想:533万件)と事
前予想を上回った。24日に発表された1月の新築住宅
販売件数は前月比▲9.2%、年率49.4万件(事前予想:
52.0万件)と事前予想を下回った。17日に発表された1
月の住宅着工件数は前月比▲3.8%の年率換算109.9
万件と事前予想(117.3万件)を下回った。新築住宅販
図表1. S&Pケース・シラー住宅価格指数の推移
(%)
60
50
200
40
180
30
160
20
140
10
120
0
100
-10
80
前年同月比(左軸)
-20
60
00
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
出所: BloombergよりSMBC日興証券作成
3
本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。
220
住宅価格指数(20都市)(右軸)
11
12
13
14
15
(年)
2016 年 2 月 25 日(木) 投資情報部
Weekly Outlook No.243
3.円相場見通しとポイント~注目される週末のG20会合と米国の通貨政策
欧米・為替担当: 本間 英至
ドル円は24日に111円割れ寸前まで下落するなど軟調推移が続いているが、こうした中、週末にG20財務
相・中央銀行総裁会議が開催される。緩慢な世界景気の拡大ペースや荒い値動きを続ける金融市場に対し、
財政・金融政策を中心にどの程度協調姿勢を打ち出せるか注目される。また、来週にかけては米国でISM
企業景況指数や雇用統計などの重要経済指標の発表が予定されており、市場の焦点となろう。
 この1週間(2/18~)のレビュー
米財務省関係者の過去の発言等を見る限り、米国景
気の良好推移や他国と金融政策の方向性が異なること
等を理由に、ドルの上昇はある程度やむなしと考えてい
るフシが窺える。ただし、無条件のドル高容認ではない。
例えば日本に関しては、デフレからの脱却と内需を中
心とした日本経済の再生に向けた取り組みの結果とし
ての円安ドル高ならば、米国としては日本の内需堅調
が国益となるが故にドル高を容認。逆に、内需の停滞を
放置して景気の回復を円安および外需に依存するなら
ば、円安を容認しないと考えていると推測される。80円
前後からの大幅な円安ドル高は、政府・日銀が日本経
済の再生に取り組む政策の組み合わせの結果としての
円安という認識の下、容認してきたといえよう。
ドル円は18日に114.10円でスタート後、原油安や内
外株の軟調推移を受けてドル売り円買いが進み、19日
には112円台半ばまで下落した。週明け22日には内外
株の反発を材料に113円台前半まで持ち直したものの、
米国がG20で通貨切り下げの回避を再主張するとの報
道などを機にドル売りが再び優勢に。24日には、米国株
が一時下げ幅を拡大したことや米経済指標の冴えない
結果等を受けてドル売りが加速し、111.04円と111円割
れ寸前まで下落する場面があった。ドル売り一巡後は
買い戻され、足元では112円台前半で推移している。オ
セアニア通貨も、前週末にかけて下落、22日に反発し
た後、リスク回避色の強まりから値を切り下げ、24日に豪
ドル円が79.61円、NZドル円が73.55円まで一時下落し
た。ユーロ円は、英国のEU離脱懸念も相まって軟調推
移を辿り、24日には122.46円と2013年4月以来の安値を
つけた。(東京時間2/25正午時点)
ところが現在、日本の内需は力強さを欠いた状況。米
国からみれば、日本は金融緩和を繰り返して円安に過
度に依存した景気回復を図っているように映っていると
しても不思議ではない。同じことはユーロ圏にも当ては
まろう。こうした政策を他国も追随すれば通貨切り下げ
競争となるため、米国はG20でそのリスクを警告する意
向とみられる。ルー財務長官の財政政策に重点を置い
た政策協調の要請は、各国の内需拡大による米国の国
益を狙ったものであり、米国の通貨政策がドル高容認か
ら(過度な金融緩和等による通貨安)ドル高の拒否に転
換した訳ではないというのが、現時点での評価である。
こうしたことを踏まえると、日本は財政政策と金融政策を
 ドル円相場の見通しと来週にかけての注目材料
明日からG20財務相・中央銀行総裁会議がスタート
明日(2/26)から注目のG20財務相・中央銀行総裁会
議が開催される。世界景気が力強さを欠き金融市場が
荒い値動きを続ける中、財政・金融政策を中心にどの
程度協調姿勢を打ち出せるかが焦点。為替市場に関し
ては、ファンダメンタルズからの乖離や過度な変動に対
して警戒姿勢を示すことが予想される。内容次第では
市場のリスク回避色が和らぐことが期待されるが、20ヵ
国・地域が集まる会合ゆえに共同声明に過度な期待は
抱き難い。会議前後の関係者の発言も合わせて注目す
る必要があろう。
図表1. ドル円相場の推移(週次、一目均衡表「雲」付き)
128
(円/ドル)
(円/ドル)
126
126
124
124
121.69円
122
G20を前に米国の通貨政策を考える
120
今週前半には、米国が通貨切り下げ競争の回避を
G20で改めて表明すると報じられ、ドル円がドル安円高
に振れる場面があった。市場では、米国が一段のドル
高牽制に動き始め、日銀も一段の緩和策に踏み込み
難くなったとの見方も一部で聞かれる。そこで、実際のと
ころの米国の通貨政策について考えてみたい。
118
116
116
雲
114
114
112
112
110
108
15/1/2
4
122
120
118
115.07円
15/3/27
15/6/19
15/9/11
出所:BloombergよりSMBC日興証券作成
本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。
128
15/12/4
110.99円
110
108
16/2/26
(年/月/日)
2016 年 2 月 25 日(木) 投資情報部
Weekly Outlook No.243
組み合わせた政策が求められているということになる。
財政政策で内需を押し上げながら、追加金融緩和策に
より市場に円売り材料を提供する政策ならば、米国の通
貨政策には反しないと推測されよう。
見込み。製造業の停滞長期化は米国景気の先行き不
安の大きな要因となっており、停滞色の和らぎが示され
るか注目される。一方、ISM非製造業景況指数は1月に
53.5と、良好な水準を維持したものの3ヵ月連続で低下。
低下幅も2.3ptと比較的大きく、製造業の停滞が製造業
以外へと拡がりを見せ始めた兆候と見る向きもある。一
段と低下すれば、米国景気の先行き不安が一段と強ま
る恐れもあり要注目だ(図表3)。
G20後のドル円チャート上の節目
前述したように、G20では市場の高いボラティリティ、
過度な変動に対しても警戒姿勢を示すことが予想され
るが、ドル円は1月末高値(121.69円)から2月11日安値
(110.99円)まで僅か2週間弱で10円以上も下落と「過度
な変動」そのもの。G20が市場の不安心理の緩和をもた
らすことになれば、ドル高方向への水準修正が期待され
よう。チャート的には、前述した1月末高値から2月11日
安値の0.382倍戻しとなる115.07円、週次一目均衡表
「雲」の下限となる115.38円(2/24現在)と、115円台が短
期的な目処。2月のドル安が115円を割り込んでから加
速した経緯があること、市場では115~125円を「黒田ゾ
ーン」として意識していること等も踏まえると、まずは115
円台の回復が大きなポイントといえよう(図表1)。
米国以外のイベントとして、産油国の動向が挙げられ
よう。16日にサウジアラビアやロシアなど産油4ヵ国が、
条件付きで原油生産量を1月水準に凍結することで合
意した。条件とは、他の主要産油国が追随することであ
り、現在、協議が行われている模様である。ロシアのエ
ネルギー相によると、その協議は3月1日までに終了する
見通しとのこと。これまで、原油安が市場のリスク回避色
を強め、内外株の下落やドル高円安等をもたらしてきた
だけに、その結論は市場の注目を集めることが予想され
る。
ただ、これまでドル円と同様に値を切り下げてきた原
油価格や日本株が反発の動きをみせても、ドルの反発
力は乏しく、地合いの悪い状況は続いているのが現状
だ(図表2)。足元に関しては、前述の米通貨政策に対
する懸念や、英国のEU離脱不安を材料とした円買いポ
ンド売り、円買いユーロ売りの影響がドル円に波及し、ド
ルの上値を抑えていると推測され、悪材料に敏感に反
応する状況から依然脱していない。G20が期待外れに
終わる等でドルが改めて下値を試す展開も想定してお
く必要があろう。その場合、目先的には110円の大台維
持が重要となる。そこを下抜けするようだと、2011年安値
(75.35円)から2015年高値(125.86円)の値幅の0.382倍
押しとなる106円台半ば水準も視野に入ってこよう。その
際は、日銀の追加緩和期待、さらには「過度な変動」に
対処すべくドル買い介入観測の浮上などにより、ドルの
一段の大幅深押しは回避されるとみているが、短期的
には注意を要する時間帯となりそうだ。
図表2. 原油価格とドル円相場の推移
(円/ドル)
42
ドル円(左軸)
124
38
122
120
34
118
30
116
114
26
112
WTI原油先物価格(右軸)
110
12/1 12/10 12/21 12/30
2015年
1/8
1/19
22
1/28
2/8
2016年
2/17
(月/日)
出所:BloombergよりSMBC日興証券作成
図表3. ISM企業景況指数の推移
62
60
来週は米国でISM企業景況感指数と雇用統計が発表
58
来週にかけての注目材料だが、26日に10-12月実質
GDP改定値と1月個人消費、3月1日に2月ISM製造業
景況指数、3日に2月ISM非製造業景況指数、4日に2
月雇用統計と、米国で重要経済指標の発表が相次ぐ。
56
製造業景況指数
非製造業景況指数
54
52
50
企業景況指数についてだが、ISM製造業景況指数
は1月に48.2と4ヵ月連続で50割れ。製造業活動の停滞
が改めて確認されたが、小幅ながらも8ヵ月ぶりに上昇し
ており、悪化度合いが和らぐ兆しも示唆された。市場で
は、2月は48.5(Bloomberg調査)と2ヵ月連続で上昇の
48
景気の良し悪しの目安となる50のライン
46
12/1
12/7
13/1
13/7
14/1
14/7
出所:ISM、DatastreamよりSMBC日興証券作成
5
本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。
(ドル/バレル)
126
15/1
15/7
16/1
(年/月)
2016 年 2 月 25 日(木) 投資情報部
Weekly Outlook No.243
4.国内経済動向~暖冬要因等で百貨店が苦戦、企業の景況感も停滞気味
日本経済・金利担当: 野村 真司
1月の全国百貨店売上高は、暖冬要因もあり2ヵ月ぶりのマイナス。宝飾等、高額商品も前年比で10ヵ月ぶ
りのマイナスとなった。一方、訪日外国人売上高は購買志向の変化を伴いながら引き続き好調。一方、2月
のロイター短観では、製造業、非製造業共に景況感が停滞気味だった。年初来の金融市場の混乱長期化
が悲観的な景況感につながり、現実の経済にも悪影響が及ぶという悪循環が始まりつつある。
 1月全国百貨店売上高:暖冬で衣料品が苦戦
改善したものの、円高や海外需要の減退を受けた業種
(鉄鋼等)で悪化した。一方、非製造業は同▲6ポイント
の+21と2ヵ月ぶりに大幅悪化したものの、DIの水準は過
去と比較して高めの水準を維持。業種別では6業種中、
情報通信以外はモノもサービスも動きが停滞しつつあり、
横ばい、ないし悪化した。先行きについて、5月は製造
業が+4と悪化、非製造業が+21と横ばいの見通し。総じ
て景況感に停滞感が漂う。年初来の金融市場の混乱
長期化が悲観的な景況感につながり、さらなる金融市
場の混乱を招くことで、現実の経済にも悪影響が及ぶと
いう悪循環が始まりつつある。
1月の全国百貨店売上高(店舗数調整後)は、前年
同月比▲1.9%と2ヵ月ぶりのマイナスとなった。正月休
暇が短めだったこと、月前半は気温が高く防寒商品の
動きが鈍ったこと、一部地域で大雪の影響を受けたこと
等からマイナスに転化。商品別では、主要5品目(衣料
品、身のまわり品、雑貨、家庭用品、食料品)のうち、身
の回り品、雑貨、食料品が前年水準を上回ったものの、
単価の高い衣料品の不振をカバーできなかった。細分
類では化粧品が好調。同+18.4%と堅調さを維持した一
方、昨年4月から好調だった美術・宝飾・貴金属が10ヵ
月ぶりのマイナスとなった。背景として、前年同月に海
外高級時計の値上げ前の駆け込み需要があったことに
加え、人気モデルの品薄感が挙げられる。また、年初来
の株安等、金融市場の混乱が富裕層の消費マインドに
悪影響を与えた可能性もあろう。売上高全体の前月比
(弊社季節調整値)でも▲1.7%と2ヵ月ぶりのマイナス
(図表1)。訪日外国人売上高は引き続き好調だった。
2014年10月の免税制度改正(従来の家電製品や衣類
から、化粧品や飲食料品等の消耗品も免税対象)から
一巡したものの、1月の売上高は前年同月比+36.2%の
173.4億円と、過去4番目の高水準を記録。日本百貨店
協会は、高額品のまとめ買い等から付加価値商材にシ
フトする動きを指摘している。
図表1. 小売関連統計の推移
(2005年平均=100)
150
140
138.3
コンビニエンスストア
130
(3月)
117.4
120
110
112.4
(4月)
101.1
(1月)
(前月比+1.3%)
92.6
スーパー
100
90
79.4
80
(1月)
76.4
(前月比▲1.7%)
百貨店
70
68.8 (3月)
*季節調整値はSMBC日興証券で試算。
60
2008
なお、訪日外国人の購買志向の変化は、好調だった
2月の春節商戦でも指摘されている。一部報道によれば
売れ筋がバック等高級ブランド品から、日本製の化粧品
等日用品に移ると共に、客単価は下落した模様。中国
を中心に訪日客が増加していることを踏まえると、中国
の景気減速よりも、日本での買い物に慣れてきたリピー
ターが増えてきたこと、富裕層から中間層へと訪日客の
裾野が広がっている可能性が高い。
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
(年)
出所: 日本百貨店協会、日本チェーンストア協会
日本フランチャイズチェーン協会データよりSMBC日興証券作成
図表2. ロイター短観・業況判断DIの推移
見通し
(良い-悪い、%ポイント)
40
20
0
-20
 2月ロイター短観:停滞感が漂い始めた景況感
製造業
-40
2月のロイター短観(調査期間:2月1日~2月16日)を
業種別にみると、製造業の業況判断DI(良い-悪い)は
前月比+1ポイントの+7と2ヵ月ぶりの改善ながら、昨年9
月以降はプラス1ケタ台の水準にとどまっている。業種
別では原油安・資源安の恩恵を受けた業種(食品等)で
非製造業
-60
-80
2008
2009
2010
2011
2012
2013
出所: 「ロイター短観」よりSMBC日興証券作成
6
本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。
(1月)
(前月比+0.5%)
144.4
(全店ベース・季節調整値)
2014
2015
2016
(年)
2016 年 2 月 25 日(木) 投資情報部
Weekly Outlook No.243
5.新興国市場・経済動向
新興国担当: 山本 正樹 / 白岩 千幸 / 武田 泰典 / 前田 佑太
新興国株式市場は、一部で原油相場に振らされながらも、全体としてはまちまちの動き。新興国通貨は、円
高進行によりこの1週間は軒並み対円で下落したが、対ドルでは高安まちまちとなった。足元では新興国市
場の材料としての「原油離れ」の傾向が見えつつあり、各国の個別の材料が一段と重要になろう。これから
来週にかけて新興国では、中国の2月PMIや全人代、インドの予算案、トルコの経済指標等に注目したい。
 最近の新興国市場の動向
新興国株式市場は、引き続き産油国等では原油相
場に振らされながらも、全体としては各国まちまちの動き
となった。直近1週間の株価騰落率(図表1、24日時点)
では、中国・上海株(+2.1%)が引き続き堅調。金融当局
が金融市場の潤沢な流動性を維持し、緩和的な金融
調節を行っていることや、人民元レートの安定等が買い
安心感につながっているとみられる。一方、1月下旬以
降、堅調に推移していたインドネシア株(▲2.3%)は足
元で利益確定の売りが優勢となっているほか、インド株
(▲1.3%)は財政赤字拡大に対する警戒感から、29日
の政府予算案発表を前に足元で軟調となっている。
し、直近1週間の対円騰落率(図表1、24日時点)は揃っ
てマイナスとなった。一 方、対 ドルでは、メキシコペソ
(+0.8%)、ブラジルレアル(+0.8%)、インドネシアルピア
(+0.7%)、トルコリラ(+0.7%)等が上昇、ロシアルーブル
(▲1.0%)、南アフリカランド(▲0.8%)等が下落と、高安
まちまちとなった。ロシアルーブル等の産油国通貨は原
油相場に一喜一憂する展開が続くものの、新興国通貨
全体では原油相場の影響は低下しつつある。メキシコ
ペソは、17日発表の緊急利上げや為替介入の強化が
引き続きサポート要因。一方、ブラジルでは、一部でル
セフ大統領の辞任観測が浮上し、レアル買い材料とな
っている模様。南アフリカランドは24日に発表された政
府予算案(後述)を受けて急落した。(山本)
新興国通貨は円高進行により対円では軒並み下落
図表1. 主な新興国市場の動向
直近値
騰 落 率 (% )
2月 24日
2016年 初 来 2015年 年 間 過 去 1週 間 過 去 30日 間 過 去 90日 間 過 去 1年 間
株価指数
中国
インド
韓 国
インドネシア
タイ
マレーシア
フィリピン
ロシア
トルコ
南アフリカ
ブラジル
メキシコ
為替
上海総合指数
香港ハンセン指数
SENSEX30種指数
韓国総合指数
ジャカルタ総合指数
SET指数
FBM KLCI総合指数
フィリピン総合指数
MICEX指数
イスタンブール100種指数
JSE全株指数
ボベスパ指数
ボルサ指数
2,928.89
19,192.45
23,088.93
1,912.53
4,657.72
1,331.93
1,664.17
6,769.26
1,797.27
74,067.21
47,995.82
42,084.56
43,173.73
▲17.2
▲12.4
▲11.6
▲2.5
1.4
3.4
▲1.7
▲2.6
2.0
3.3
▲5.3
▲2.9
0.5
9.4
▲7.2
▲5.0
2.4
▲12.1
▲14.0
▲3.9
▲3.9
26.1
▲16.3
1.9
▲13.3
▲0.4
2.1
1.4
▲1.3
1.5
▲2.3
3.4
▲0.0
0.2
1.5
1.7
▲4.1
1.1
▲0.9
▲0.3
▲0.8
▲5.7
1.0
3.4
5.1
2.4
5.2
4.7
5.0
1.7
10.7
4.1
▲19.4
▲14.7
▲11.1
▲5.8
1.3
▲2.5
▲1.1
▲4.2
▲1.7
▲1.2
▲8.1
▲10.7
▲2.7
▲9.8
▲22.5
▲20.4
▲3.2
▲14.0
▲16.7
▲8.5
▲13.6
1.4
▲14.6
▲10.1
▲18.9
▲1.7
▲8.0
▲9.8
▲11.0
▲4.1
▲5.8
▲5.3
▲8.3
▲10.2
▲7.2
▲7.4
▲6.7
▲11.9
▲4.0
▲4.2
▲6.6
▲9.7
▲8.3
▲18.0
▲4.0
▲20.1
▲19.7
▲24.9
▲32.6
▲13.8
▲2.8
▲1.6
▲2.3
▲1.1
▲1.9
▲1.7
▲1.5
▲2.6
▲1.0
▲2.4
▲1.0
▲0.9
▲5.5
▲6.2
▲7.7
▲2.0
▲4.6
▲4.3
▲4.5
0.2
▲2.4
0.6
▲2.0
▲3.1
▲11.3
▲10.9
▲14.7
▲6.3
▲8.3
▲8.6
▲9.5
▲20.5
▲8.9
▲16.1
▲13.5
▲16.8
▲10.5
▲14.3
▲15.4
▲9.2
▲14.0
▲19.0
▲12.6
▲21.9
▲20.9
▲30.6
▲32.6
▲22.8
※プラスは外貨高・円安、マイナスは外貨安・円高
中 国
インド
韓 国
インドネシア
タイ
マレーシア
フィリピン
ロシア
トルコ
南アフリカ
ブラジル
メキシコ
円/人民元
円/インドルピー
円/韓国ウォン(x100)
円/ルピア(x100)
円/バーツ
円/リンギ
円/フィリピンペソ
円/ルーブル
円/トルコリラ
円/ランド
円/レアル
円/メキシコペソ
17.03
1.63
9.10
0.83
3.14
26.53
2.35
1.48
38.19
7.19
28.33
6.15
注: 「直近値」については、当該日付が休場となっている場合は、その前営業日の値を掲載
出所: BloombergよりSMBC日興証券作成
7
本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。
2016 年 2 月 25 日(木) 投資情報部
Weekly Outlook No.243
 新興国市場関連トピック
トルコ~中銀はすべての政策金利の据え置きを決定
トルコ中央銀行は23日、市場予想(Bloomberg)通り、
18日に発表された1月の消費者物価指数(CPI)は前 主要政策金利である1週間物レポ金利をはじめ、すべて
年比+1.8%(12月+1.6%)と、5ヵ月ぶりに高い上昇率と の政策金利の据え置きを決定した。トルコの1月のインフ
なった。春節の長期休暇(2月7~13日)を控え、食品価 レ率(消費者物価指数の前年比)は+9.58%と、通貨安
格が+4.1%(12月+2.7%)と、CPI全体を押し上げた。食 や食品価格の上昇、最低賃金の大幅引き上げ(+30%)
品・エネルギーを除いたコアCPIは4ヵ月連続で+1.5%と 等を背景に2014年5月以来の高い上昇率となっている
安定した推移が続いている。一方、1月の生産者物価 が、政府の圧力もあるとみられ、中銀は利上げに踏み切
指数(PPI)は前年比▲5.3%(12月▲5.9%)と18ヵ月ぶり れていない。声明文では、「引き締め的なスタンスを維
にマイナス幅が縮小。前月比では▲0.5%(12月▲0.6%) 持する」と、従来の姿勢を繰り返し、昨年8月に打ち出し
と、昨年8月の▲0.8%を底にマイナス幅は縮小傾向にあ た金融政策の簡素化も当面先送りする可能性を改めて
示唆した。
り、デフレ圧力は徐々に低下している。(白岩)
中国~1月のCPIは食品価格の上昇が押し上げ要因
今回の結果は織り込み済みであり、市場の反応は限
定的となったが、中銀の利上げに消極的なスタンスは、
引き続き通貨リラの重石となろう。(前田)
図表2. 中国の消費者物価指数
(前年比、%)
7
6
図表4. トルコの消費者物価指数と政策金利
5
14
13
12
11
10
9
8
7
6
5
4
3
2
1
0
食品
4
全体
3
2
コア
1
0
13/1
13/7
14/1
14/7
15/1
16/1 (年/月)
15/7
出所: CEIC、中国国家統計局よりSMBC日興証券作成
南アフリカ~2016年度予算に市場はネガティブな反応
図表3. 南アフリカの財政収支および見通し(GDP比、%)
2013年度 2014年度 2015年度 2016年度 2017年度 2018年度
(※)
基礎的財政収支
(※)
(実績)
(実績)
(見込み)
(計画)
(計画)
(計画)
-3.8
-3.6
-3.9
-3.2
-2.8
-2.4
-
-
-3.8
-3.3
-3.2
-3.0
-0.7
-0.4
-0.6
0.4
0.7
1.2
-
-
-0.6
0.1
0.2
0.4
金利コリドー(グレー部分)
:市中金利の誘導目標、上限が翌日物貸出金利・下限が翌日物借入金利
12/7
13/1
13/7
14/1
14/7
15/1
15/7
16/1
(年/月)
注: インフレターゲットは+5%±2%
出所: CEIC、Bloomberg、トルコ統計機構よりSMBC日興証券作成
ブラジル~歳出削減の規模は昨年を下回る
政府は19日、今年の成長率見通しを従来の▲1.9%
から▲2.9%に下方修正し、今年度(1月~)歳入見込み
の減少に対応して234億レアルの歳出を凍結すると発
表した。一方、政府は引き続き、現行の基礎的財政収
支目標+240億レアル(GDP比+0.39%) ( 注 ) の達成を目
指しつつも、今後想定以上に景気が悪化した場合は最
大▲602億レアル(GDP比▲0.97%)までの目標引き下
げを容認する法案を議会に提出するとした。ルセフ大統
領は2011年の政権発足以降、毎年歳出予算の一部凍
結を発表している。昨年は5月に699億レアルの凍結を
発表したが、今年はそれを大幅に下回る額となっており、
市場では政府の財政再建への取り組みに懐疑的な見
方も広がっている。(武田)
注:地方政府も含めた基礎的財政収支目標は、+305 億レアル
(GDP 比+0.5%)に設定されている。
注: (※)は2015年10月時点での政府の見通し
出所: 南アフリカ財務省よりSMBC日興証券作成
8
本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。
主要政策金利(1週間物レポ金利)
消費者物価指数(前年比)
インフレターゲットの上限(+7%)
12/1
政府は24日、2016年度(16年4月~17年3月)予算を
発表し、16年度の財政収支(GDP比)見通しを▲3.2%
(15年10月時点:▲3.3%)にやや上方修正した。16年の
経済成長見通しを+0.9%(15年10月時点:+1.7%)と大
幅に下方修正し、歳出面では公務員の欠員補充の制
限等を打ち出す一方、歳入面では燃料税等の引き上
げや清涼飲料水等に対する新課税導入などを発表した。
市場では、最近の政府要人の発言等を背景に、より大
胆な歳出削減や増税、国営企業の売却等に対する期
待が高まっていたため、予算案は期待外れと受け止め
ら れ 、 24 日 の 通 貨 ラ ン ド は 前 日 比 ▲ 2.32% の 1 ド ル
=15.5955ランドと大幅安で終了した。(前田)
財政収支
(%)
2016 年 2 月 25 日(木) 投資情報部
Weekly Outlook No.243
ブラジル~ムーディーズが投資不適格級へ格下げ
インドネシアでは、3月1日に2月の消費者物価指数
格付け大手ムーディーズは24日、財政再建の遅れや (CPI)が発表される。CPIは11月以降、インフレターゲッ
景 気 の 悪 化 な ど を 理 由 に ブ ラ ジ ル の 債 務 格 付 け を ト(+4%±1%)内で推移しており、インドネシア銀行は1
「Baa3*」から「Ba2*」に2段階引き下げた。見通しは「ネ 月、2月と2ヵ月連続で利下げを決定している。インフレ
ガティブ*」としており、今後政治・経済情勢が一段と悪 の落ち着きが改めて確認されれば、追加利下げ観測が
化した場合にはさらなる格下げの可能性を指摘している。 強まろう。追加利下げ観測は海外投資家の債券買い要
今回の格下げで大手3社の格付けはすべて投資不適 因となり、通貨ルピアのサポート要因になるとみている。
格級となった。24日のレアル対ドル相場は、取引開始直
インドでは、29日に2016年度(4月~)の政府予算案が
後は格下げや商品市況の下落から大きく値を下げたが、 発表される。市場では財政赤字拡大に対する懸念が高
その後は財務相等が財政再建に取り組む姿勢を示した まっているが、政府が財政規律に配慮しつつ、効果的
ことや商品市況の反発を受けて、前日比+0.03%の1ド な成長戦略を打ち出すことができれば、インド株や通貨
ル=3.95レアルと小幅高で終了した。(武田)
ルピー買い戻しのきっかけとなろう。この他、野党の反対
で先送りが続く物品サービス税(GST)の関連法案が成
立するか否かも焦点。水面下の与野党協議は進展して
いる模様であり、長年の懸案であったGST導入に道が
開ければ、市場でもポジティブに受け止められよう。
注:(*)日本では無登録の格付け機関による格付け及び見通し
 来週にかけてのスケジュールと見通し
トルコでは、29日に1月の外国人観光客数が発表さ
れる。1月12日にはイスタンブールの観光名所でIS(イス
ラム国)によるとみられるテロが発生し、外国人観光客が
犠牲になったことから、市場では観光への悪影響が懸
念されている。観光収入は景気に加えて対外収支の観
点からも非常に重要であるだけに、観光客数が大幅に
減少していた場合には、株式や通貨が売られる可能性
があろう。この他、2月消費者物価指数(3日発表)、米ロ
両国が22日共同声明で呼びかけたシリア停戦(27日以
降)の実現可否等も注目される。
足元の金融市場では、エネルギー関連企業が主力
銘柄の一角を占める欧米株式市場をはじめ、産油国株
式・通貨等は引き続き原油相場の動向に一喜一憂する
展開となっている。一方で、産油国以外の新興国では、
金融市場の材料としての「原油離れ」の傾向が見えつ
つある。足元の原油相場は上下に大きく振れる神経質
な展開となっているが、曲がりなりにも産油国間の協調
の動きが出てきたことで下値不安が後退し、金融市場
の緊張緩和につながっているといえよう。
目先はG20(主要20ヵ国・地域)財務相・中央銀行総
裁会議(2月26~27日)、中国の国会に相当する全国人
民代表大会(3月5日開幕)等に注目が集まる。これらの
イベントによって市場が一挙にリスクオンモードに転じる
ことも期待しにくいが、年初来市場を覆っていた中国を
はじめ世界経済に対するやや行き過ぎた悲観的な見方
が和らぐことは考えられる。こうした中では、各新興国の
個別の材料が一段と重要になるとみられ、来週にかけ
ては以下のようなイベントに注目したい。
ブラジルでは、2日に政策金利、3日に10-12月実質
GDPの発表が予定されている。政策金利については、
中銀総裁等が18~19日に相次いで据え置きを示唆する
発言をしている。このため、市場では据え置き予想がコ
ンセンサスとなっており、予想通りなら市場の反応は限
定的となろう。また、10-12月の実質GDPは4四半期連続
のマイナスが予想されているが、市場では足元の景気
悪化よりも中長期的な経済の行方を左右する財政再建
策が注目されている。政府の財政再建に対する本気度
や実行力に対して懐疑的な見方が高まれば、レアルに
下押し圧力がかかろう。
中国では、3月1日に中国物流購入連合会による2月
の製造業と非製造業の購買担当者指数(PMI)、及び
財新の製造業PMIが、3日には財新のサービス業及び
コンポジット(製造業+サービス業)PMIが発表される。
また、5日には全国人民代表大会(全人代)が開幕し、
2016年及び第13次5ヵ年計画(2016~20年)期間におけ
る経済社会政策の基本方針が決定される。2月のPMI
は引き続き冴えない結果が予想されるものの、全人代で
は現政権が従来以上に構造改革に踏み込む可能性も
あり、その場合は株式市場でも好感されよう。
(山本、白岩、武田、前田)
9
本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。
2016 年 2 月 25 日(木) 投資情報部
Weekly Outlook No.243
6. 2016年3月期第3四半期決算発表の業績動向(2月19日現在)
日本株担当: 西尾 浩一郎
TOPIX採用3月期決算企業の2016年3月期第3四半期(4-12月期)経常利益は、前年同期比+5.6%の増益
となった。鉄鋼、電気機器などで業績下方修正が相次ぐ一方で、建設、情報・通信、陸運などの業績は堅調
に推移。今回の決算では、製造業と非製造業の業績の明暗がより鮮明になっている。為替や原油価格の水
準など足元の事業環境を踏まえれば、第4四半期も非製造業優位の展開となろう。
 第3四半期(4-12月期)は5.6%の経常増益
ホテル事業が好調。空運業も訪日外国人メリットを受け
TOPIX採用3月期決算企業の2016年3月期第3四半 ており、原油安も追い風となった。小売業は、暖冬の影
期(4-12月期)決算は、2月19日現在で集計対象企業 響で季節商品に落ち込みはみられたものの、白物家電
(1,423社)のほぼ全てが発表を終えた。第3四半期の経 や訪日外国人向けの販売が伸びた。一方、海運業は
常利益は、前年同期比+5.6%の増益となった。このうち、 市況の低迷で業績苦戦が続く流れに変化はなかった。
製造業は同+3.1%の増益、非製造業(除く金融)は同  業績の明暗がさらに鮮明に
+17.8%の増益となった(次頁の表参照)。
製造業の落ち込みを非製造業がカバーする構図は
第2四半期決算でもみられたが、業績の明暗はより鮮明
 製造業は、新興国の景気悪化などで一段と減速
製造業について業種ごとの業績動向をみると、中国 になっている。2016年3月期の予想経常増益率は、全
などで鋼材需要が減少する中、供給過剰により価格の 体で前年比+3.5%、製造業同+1.3%、非製造業(金融
下落が進んでいることなどを背景に、鉄鋼の業績苦戦 除く)同+12.0%が見込まれており、第2四半期決算発表
が続いている。また、電気機器は中国市場の減速で、 集計時点(11月18日)のそれぞれ、同+6.5%、同+8.3%、
FA(コンピュータ制御技術により、工場の生産工程を自 同+11.1%と比較すると製造業の悪化が著しい。新興国
動化)機器など各種制御機器や電子部品の需要が低 懸念、為替や原油価格の水準など足元の事業環境を
迷したほか、米アップルの生産調整によるスマートフォ 踏まえれば、第4四半期も非製造業の業績優位の展開
ン関連部品の鈍化も業績を下押しした。総合電機、民 が続くとみられる。
生用エレクトロニクス、電子部品大手などで業績下方修
正が相次いだ。また、ガソリン価格の低下で利益率の高
い乗用車の販売が米国で好調な輸送用機器は、諸経
費の増加はあるものの堅調を持続。ただ、円安メリットが
減少しているケースや為替前提の見直しなどで業績下
方修正を発表する銘柄もみられた。一方、化学はナフ
サなどの原材料価格の下落、石油化学製品の稼働率
上昇及び利益率拡大などにより総じて良好な内容。こ
の他では、医薬品は国内や米国などでの販売好調を理
由に、業績上方修正銘柄がみられた。
図表1. ドル円と原油価格の推移
 非製造業は、国内消費や訪日外国人の増加が追
い風
130
(ドル/バレル)
120
125
非製造業については、土木、建築工事の採算改善な
どにより、建設業が業績好調を持続させている。情報・
通信業は、政府・金融機関向けシステムの受注拡大と
稼働向上などでITサービスが業績を着実に拡大、携帯
電話事業が堅調な通信、広告需要回復などによる放送
収入の増加や都市開発事業の貢献で民放大手の上方
修正が続くなど堅調な内容となった。電気・ガス業は、
原油価格下落による燃料安効果や値上げ効果などで
業績を大幅に拡大させている。陸運業は、訪日外国人
の取り込みが奏功していることもあり、鉄道運輸事業や
100
120
115
110
80
ドル円(左軸)
60
105
100
40
95
WTI原油先物(右軸)
90
13/4
13/10
14/4
14/10
出所: BloombergよりSMBC日興証券作成
10
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(円/ドル)
15/4
15/10
20
(年/月)
2016 年 2 月 25 日(木) 投資情報部
Weekly Outlook No.243
図表2. TOPIX採用3月期決算企業の2016年3月期第3四半期決算発表終了時点での業績動向(2月19日時点)
3月決算
銘柄数 開示数 開示比
対会社予想進捗率 通期会社予想 通期会社予想 通期会社予想修正率 4-12月期増益率 10-12月期増益率 通期予想増益率
2016年3月期 上方修正件数 下方修正件数
2016年3月期
(前年同期比)
(前年同期比)
(前年比)
営業利益 経常利益 営業 経常 営業 経常 営業利益 経常利益 営業利益 経常利益 営業利益 経常利益 営業利益 経常利益
TOPIX
除く金融
除く金融,電気・ガス
製造業
1423 1421 99.9%
1288 1286 99.8%
1269 1267 99.8%
78.8%
78.8%
78.1%
78.9%
78.9%
78.1%
149
149
141
164
160
151
149
149
145
173
170
167
-2.0%
-2.0%
-2.6%
-2.2%
-2.7%
-3.2%
16.1%
16.1%
12.4%
5.6%
9.2%
5.5%
75.7%
83.4%
82.3%
127
43
40
-3.9%
0.8%
-0.2%
-4.4%
-0.4%
-1.4%
9.8%
26.1%
16.9%
3.1%
17.8%
9.1%
非製造業(除く金融)
除く電気・ガス
708
580
561
707 99.9%
579 99.8%
560 99.8%
76.5%
82.0%
80.5%
70
79
71
71
89
80
122
27
23
水産・農林業
鉱業
建設業
食料品
繊維製品
パルプ・紙
化学
医薬品
石油・石炭製品
ゴム製品
ガラス・土石製品
鉄鋼
非鉄金属
金属製品
機械
電気機器
輸送用機器
精密機器
その他製品
電気・ガス業
陸運業
海運業
空運業
倉庫・運輸関連業
情報・通信業
卸売業
小売業
銀行業
証券、商品先物取引業
保険業
その他金融業
不動産業
サービス業
4
6
88
52
25
10
107
32
6
7
26
31
23
29
105
131
64
23
37
19
38
8
3
19
90
128
69
85
22
7
21
33
75
4 100.0% 98.0% 102.1%
6 100.0% 81.8% 83.1%
88 100.0% 77.3% 78.8%
52 100.0% 90.8% 91.6%
25 100.0% 79.4% 80.1%
10 100.0% 68.5% 71.3%
107 100.0% 78.2% 79.6%
32 100.0% 106.4% 103.4%
6 100.0%
NA
NA
7 100.0% 87.6% 88.7%
26 100.0% 75.6% 74.3%
31 100.0% 74.4% 72.7%
23 100.0% 68.2% 52.6%
29 100.0% 85.7% 85.4%
105 100.0% 69.2% 69.9%
130 99.2% 69.5% 72.6%
64 100.0% 78.3% 79.1%
23 100.0% 73.2% 74.0%
37 100.0% 76.9% 81.2%
19 100.0% 90.6% 97.1%
37 97.4% 89.7% 91.8%
8 100.0% 70.6% 76.6%
3 100.0% 88.9% 95.7%
19 100.0% 72.8% 76.9%
90 100.0% 84.1% 82.7%
128 100.0%
- 70.7%
69 100.0% 74.3% 75.0%
85 100.0%
- 80.3%
22 100.0%
- 61.7%
7 100.0%
- 82.0%
21 100.0%
- 80.1%
33 100.0% 74.6% 77.3%
75 100.0% 76.5% 77.6%
1
2
25
4
1
0
12
8
1
2
4
7
2
2
14
7
2
2
2
8
7
1
1
0
13
7
5
9
1
1
24
4
2
0
13
7
1
2
4
7
2
2
14
7
2
2
2
9
7
1
1
1
14
8
7
3
1
0
0
5
10
0
1
3
1
4
2
10
1
4
0
3
9
9
5
21
33
7
7
6
4
0
6
0
2
2
2
1
6
8.7%
8.7%
5.1%
-3.5%
-0.4%
-3.8%
9.8%
9.8%
7.2%
3.5%
5.8%
3.1%
2.1% -10.2%
20.9% 17.7%
10.6%
7.5%
5.5%
16.7%
10.1%
1.3%
12.0%
5.7%
0
2.7%
3.8% 17.1%
3.2% 29.0%
0.2% 16.2%
2 -12.4% -13.3% -26.7% -31.6% -20.7% -34.7% -34.4%
3
2.8%
2.7% 55.1% 43.8% 53.4% 39.9% 30.5%
1
0.3%
0.5% 27.6% 22.4% 17.3% 10.1% 16.6%
4
1.7%
1.8% 47.2% 36.4% 36.6% 23.5% 30.5%
3
-0.7%
-7.3% 31.2% 26.8% 51.2% -5.1% 36.8%
10
0.2%
0.1% 30.6% 18.5% 21.7%
3.2% 20.7%
1
5.8%
3.8% 29.0% 26.8% 21.3% 20.7% 92.6%
4 赤字転換 赤字転換 赤字縮小 赤字縮小 赤字縮小 赤字縮小 赤字縮小
0
3.6%
3.9% 37.7% 32.4% 27.5% 12.3% 13.1%
3
-1.3%
-1.5% 11.2%
3.9% -3.1% -1.3%
7.9%
9 -16.9% -17.7% -28.6% -38.4% -47.0% -61.4% -43.1%
9
-9.0% -27.5% -6.2% -38.1% -23.5% -84.6% -12.2%
5
0.5%
-0.2% 32.7% 11.4% 24.1%
0.6%
8.0%
23
-2.5%
-3.3%
1.8% -6.9% -1.3% -13.5% -2.0%
33
-7.8%
-7.4% -6.1% -6.0% -20.1% -30.5% -8.4%
9
-0.6%
-0.6% 11.1%
6.3% -1.1% -5.4%
6.3%
7
-4.3%
-5.1% 11.9%
7.6% -5.2% -13.4%
5.8%
6
-2.7%
-2.5% 10.9% -8.8% 12.1% -16.4% 12.2%
3
7.4%
9.2% 139.8% 226.3% 黒字転換 黒字転換 84.8%
0
0.6%
0.7% 15.5% 17.3%
8.9% 11.3%
9.2%
6 -39.9% -24.6% -18.8% -23.1% -67.2% -63.3% -51.5%
0
3.1%
6.8% 26.1% 33.2%
5.7%
7.9% 21.5%
1
-4.4%
-0.9%
3.3%
0.9%
4.8%
3.0% -2.1%
2
0.2%
0.3% 17.3%
6.8%
8.1%
6.6% 12.8%
17
-7.1%
0.6%
7.8%
2
0.6%
0.6% 36.1% 28.8% 17.2% 10.9% 33.1%
2
-0.1%
- -8.7%
- -21.6%
0
0.0%
- -20.0%
- -48.4%
0
0.0%
- -4.9%
- 29.1%
1
-1.2%
- 16.0%
3.0%
1
0.1%
0.2% 20.2% 26.1% 10.2% 12.6%
7.5%
6
0.1%
0.2% -1.1% -2.8% -0.3% -1.9%
0.1%
-0.7%
-40.0%
22.7%
11.1%
22.6%
13.3%
11.4%
81.0%
赤字縮小
11.2%
4.0%
-47.4%
-35.7%
-7.7%
-6.8%
-6.9%
4.6%
2.0%
-4.3%
134.9%
10.3%
-43.0%
28.8%
-3.7%
7.7%
2.3%
26.2%
-6.6%
-5.5%
-8.8%
24.3%
7.8%
-1.6%
注: 母集団は、TOPIX採用銘柄のうち、決算期が3月の銘柄(決算期変更銘柄は除く)。業種分類は東証33業種分類に準拠。2016年3月期の会社予想
は集計日(2月19日)における会社予想、未公表の銘柄は東洋経済予想を集計。対会社予想進捗率、会社予想修正件数、会社予想修正率は、
2015年12月末時点の会社予想(未公表の銘柄は東洋経済予想)で算出。背景網掛けは製造業。営業利益の集計は金融・卸売業を除く
出所: QUICK、東洋経済新報社よりSMBC日興証券作成
11
本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。
2016 年 2 月 25 日(木) 投資情報部
Weekly Outlook No.243
7.業績に着目した銘柄選別~2期連続最高益更新銘柄
日本株担当: 西尾 浩一郎
年初以降、製造業を中心に業績下方修正が相次いだことから、企業業績に対する不安が燻っている。足元
の事業環境を踏まえれば、来期業績に対する株式市場の目線は徐々に下がってくるとみられる。しかし、こ
うした状況下にあっても、個別でみれば高い利益水準を確保できると予想される企業がある。株式市場が落
ち着きを取り戻すにつれて有望視される銘柄として、“今来期2期連続最高益更新”銘柄に注目する。
 業績への警戒感が漂う中で投資アイデア
益予想だが、現状の為替水準や原油安、新興国懸念
などを考慮すれば、業績拡大ペースの鈍化が意識され、
下方修正されていくとみられる。
2000年以降の業績動向を振り返ると、リーマン・ショッ
クをきっかけとしたグローバルでの販売減少や急激な円
高で2009年3月期に7期振りに大幅減益となり、その後
は、震災(2011年)やタイ洪水被害(2011年)などの事業
環境の変化に対応し、企業は着実に利益を拡大させて
いる。2016年3月期の予想経常利益は約37兆円と、リー
マン・ショック以前に記録した過去最高益の約32兆円
(2008年3月期)を2期連続で上回る見込み(継続的に
データ取得可能なTOPIX採用3月期決算1,204社ベー
ス、予想は2月23日時点のQUICKコンセンサス予想、予
想社数3社未満の場合は東洋経済予想)。企業は引き
続き収益性の改善に取り組んでおり、コーポレートガバ
ナンス強化の対応で株主還元にも力を割いている。そう
した中、年初以降、製造業を中心に業績下方修正が相
次いだことから、国内企業の業績に対する不安が燻っ
ている。2017年3月期の予想経常利益は約40兆円と増
しかし、こうした状況下にあっても個別でみれば高い
利益水準を確保できると予想される企業がある。足元の
株式市場の混乱でいわゆる好業績銘柄も冴えない展
開を余儀なくされているが、今後、落ち着きを取り戻す
につれて再評価されると考えられる。そこで業績拡大銘
柄が選好されるとの前提で、2000年以降の経常最高益
を今来期2期連続で更新が予想される銘柄を取りまとめ
た(図表1)。ここに挙げた銘柄は、最高益を超える水準
に利益が拡大する過程が評価されるべきと考えられるが、
株式市場に漂う企業業績への警戒感で必ずしも評価が
高まっているとはいえない。利益を稼ぐ実力を備えてお
り、様々な事業環境の変化を糧に成長を続ける企業とし
て、株価の評価余地は相対的に大きいと考えられる。
図表1. 2000年以降の経常最高益を2期連続で更新が予想される銘柄
コード
銘柄略称
業種名
2000年以降の
経常最高益
決算期
2000年以降の
経常最高益
(百万円)
(A)
予想
決算期
予想
経常利益
(百万円)
(B)
(B)/(A)
増益率
予想
決算期
予想
経常利益 (C)/(B)
(百万円) 増益率
(C)
2015年
高値(円)
(D)
2015年
高値日
(年/月)
2月23日
終値(円)
(E)
(E)/(D)
騰落率
1925 大和ハウス
建設業
2015/03
202,628 2016/03
234,790 15.9% 2017/03 248,210
5.7%
3,615.0 2015/11
2,995.5 -17.1%
3382 7&I-HD
小売業
2015/02
341,484 2016/02
362,724
6.2% 2017/02 398,469
9.9%
5,998.0 2015/08
4,396.0 -26.7%
4452 花 王
化学
2015/12
169,273 2016/12
190,040 12.3% 2017/12 205,420
8.1%
6,623.0 2015/07
5,831.0 -12.0%
6326 クボタ
機械
2014/03
211,293 2016/12
253,082 19.8% 2017/12 271,313
7.2%
2,193.5 2015/07
1,458.0 -33.5%
6367 ダイキン
機械
2015/03
194,234 2016/03
213,214
9.8% 2017/03 236,843 11.1%
9,758.0 2015/05
7,703.0 -21.1%
6594 日電産
電気機器
2015/03
107,371 2016/03
130,184 21.2% 2017/03 155,861 19.7% 11,415.0 2015/08
7,315.0 -35.9%
6981 村田製
電気機器
2015/03
238,400 2016/03
294,238 23.4% 2017/03 317,941
8.1% 22,220.0 2015/07
8801 三井不
不動産業
2015/03
163,373 2016/03
179,008
8.8%
9022 JR東海
陸運業
2015/03
428,134 2016/03
9433 KDDI
情報・通信業
2015/03
752,402 2016/03
9.6% 2017/03 194,738
13,090.0 -41.1%
3,879.0 2015/08
2,562.5 -33.9%
495,762 15.8% 2017/03 529,346
6.8% 24,800.0 2015/03
20,430.0 -17.6%
838,788 11.5% 2017/03 904,727
7.9%
3,375.0 2015/08
2,896.0 -14.2%
注: TOPIX採用企業のうち、(1)2000年以降の経常最高益を今期コンセンサス予想経常利益が5%以上上回る、(2)来期コンセンサス予想経常利益が
前年比5%以上の増益率(今期及び来期が変則決算は除き、対象期間中の会計基準の変更は母集団の対象に含む)、との条件を満たす銘柄の時
価総額上位10社を証券コード順に並べた。予想データはQUICKコンセンサス予想で2月23日時点。米国会計基準とIFRS採用企業については、税
引前利益を経常利益とする
出所: QUICKよりSMBC日興証券作成
12
本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。
2016 年 2 月 25 日(木) 投資情報部
Weekly Outlook No.243
8.米国先物~投機筋によるポジション動向
日本株担当: 母良田 剛
2月16日時点での米国先物取引による投機筋ポジションでは、円の対ドルでの持ち高は1月5日以降、7週
連続で買い越しとなった。またユーロの売り越し幅は6週連続で縮小した。一方で原油先物の買越幅は3週
連続で縮小し、2012年7月以来ほぼ3年7ヵ月ぶりの低水準となった。金先物の買い越し幅は4週連続で拡
大し、世界的な株安を背景に安全資産への逃避買いが一段と強まっている。
 円は7週連続で買い越し
 原油の買い越しは3年7ヵ月ぶりの低水準
米商品先物取引委員会(CFTC)が2月19日に発表し
た建玉明細報告(2月16日集計分)によると、シカゴ・マ
ーカンタイル取引所(CME)の通貨先物市場で投機筋
(非商業部門)による円の対ドルでの持ち高は買い越し
幅が前週比で拡大し、1月5日以降、7週連続で買い越
しとなった(図表1)。日銀がマイナス金利を導入したにも
関わらず、円の買い越しは続いている。また、テクニカル
分析の観点からは一段の円高を予想する声が増えてい
るようである。今週26日から上海で開催されるG20財務
相・中央銀行総裁会議で国際的な協調が実施されるか
に注目したい。
一方で、ニューヨーク・マーカンタイル取引所
(NYMEX)で投機筋による原油先物の買越幅は3週連
続で縮小し、2012年7月以来ほぼ3年7ヵ月ぶりの低水
準となった(図表3)。産油4ヵ国での増産凍結の合意に
ついて報じられており、今年後半からの原油価格の回
復を予想する市場関係者のコメントが散見されるように
なってきている。一方で、米国エネルギー情報局(EIA)
の統計によると、米国内の在庫は1930年以来の最高水
準にまで積み上がっており、予断を許さない状況であ
る。
ニューヨーク商品取引所(COMEX)で投機筋による
金先物の買い越し幅は4週連続で拡大した(図表4)。買
い越し幅は2015年10月27日以来、およそ3ヵ月半ぶりの
大きさとなった。世界的な株安を背景に安全資産への
逃避買いが一段と強まっている。欧米株式市場では金
をはじめとした貴金属・資源関連株が動意づいている。
またユーロの売り越し幅は6週連続で縮小した。2014
年5月以来続いているユーロの売り越し幅は、足元では
急減している(図表2)。
図表1. 円先物ポジション
図表2. ユーロ先物ポジション
(円) 70
(枚)
50000
(枚)
(ユーロ/ドル)
100000
円ポジション(左軸)
円
買 0
い
超
1.45
買い残高ー売り残高
80
ドル円(右軸、逆目盛)
1.40
50000
1.35
0
90
100
-50000
1.30
-50000
1.25
1.20
-100000
110
-150000
-100000
120
買い残高ー売り残高
-150000
2012/2
130
2012/8
2013/2
2013/8
2014/2
2014/8
2015/2
2015/8
ユーロ ポジション(左軸)
1.15
ユーロ/ドル(右軸)
1.10
-200000
1.05
-250000
2012/11
2016/2
1.00
2013/5
2013/11
2014/5
2014/11
2015/5
2015/11
(年/月)
(年/月)
図表3. WTI原油先物ポジション
図表4. 金先物ポジション
(枚)
500000
450000
400000
350000
300000
250000
200000
150000
100000
50000
0
(ドル/バレル)
買い残高 ― 売り残高
原油ポジション(左軸)
原油価格(右軸)
120
110
100
90
80
70
60
50
40
30
20
(枚)
(ドル/TOZ)
200000
180000
1700
金ポジション(左軸)
1600
160000
140000
1500
120000
1400
100000
80000
1300
60000
1200
40000
0
2013/2
出所: CFTC(米商品先物取引委員会)、BloombergよりSMBC日興証券作成
13
本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。
1100
買い残高ー売り残高
20000
(年/月)
金価格(右軸)
1000
2013/8
2014/2
2014/8
2015/2
2015/8
(年/月)
2016/2
2016 年 2 月 25 日(木) 投資情報部
Weekly Outlook No.243
9.米国株式~米国企業10-12月期決算途中経過
米国株担当: 河田 剛
米国企業の2015年10-12月期決算は2月22日時点でS&P500指数採用企業のうち437社が発表を終えて
いるが、全産業のEPSは前年同期比▲4.7%と直前予想を上回っているものの、最終的に減益となる可能
性が高まっている。2016年1-3月期については、全産業のEPSが▲7.4%、4-6月期も▲1.7%と減益が続く
見通しになっている。増益に転じるのは2016年7-9月期以降となろう。
 10-12月期は減益見通し、増益転換は2016年7-9
月期以降に
かに増収ペースになっている。直前予想(全産業:同▲
3.1%、金融除く▲3.6%、エネルギー除く+1.2%)に対し
ては、全産業、金融除く、エネルギー除くともに下回っ
ている。全産業、金融除くは減収で終わる可能性が高
まっている。
米国企業の2015年10-12月期(Q4)決算は2月22日
時点でS&P500指数採用企業のうち437社(87.4%)が発
表を終えているが、全産業の1株当たり利益(EPS)は前
年同期比▲4.7%と直前予想(▲6.7%、1月8日時点の
Bloomberg集計、以下同じ)を上回っている。また、金融
除くベースは▲4.0%(直前予想▲7.5%)、エネルギー除
くベースは+1.1%(直前予想▲1.2%)となっている。大幅
減益が予想されるエネルギー企業の決算発表がまだ残
っているため、全産業、金融除くは最終的に減益になる
可能性が高まっている。セクター別のEPSでは、通信サ
ービス(+26.8%)、耐久消費財(+12.0%)、ヘルスケア
(+11.1%)などが好調な伸びとなっている。一方、エネル
ギー(▲72.1%)、素材(▲19.0%)、金融(▲7.6%)、非
耐久消費財(▲0.9%)、情報テクノロジー(▲0.4%)など
が減益ペースとなっている。
2016年1-3月期(Q1)については、全産業のEPSが▲
7.4%、4-6月期(Q2)も▲1.7%と減益が続く見通しになっ
ている。増益に転じるのは2016年7-9月期(Q3)以降とな
ろう。
売上高については、全産業が▲4.3%、金融除くが▲
4.9%、エネルギー除くが+0.1%とエネルギー除くがわず
図表1. S&P500採用企業セクター別収益動向
(2月22日時点)
1株当たり利益(EPS)予想増益率(前年比)
既発表率 暫定実績
(前年比)
S&P500
S&P500(金融除く)
S&P500(エネルギー除く)
耐久消費財
非耐久消費財
エネルギー
金融
ヘルスケア
工業(資本財)
情報テクノロジー
素材
通信サービス
公益
出所:
87.4%
85.7%
88.0%
73.8%
84.2%
80.0%
95.4%
92.9%
93.9%
88.2%
96.3%
80.0%
82.8%
Q4/15
Q1/16
▲4.7%
▲4.0%
1.1%
12.0%
▲0.9%
▲72.1%
▲7.6%
11.1%
0.5%
▲0.4%
▲19.0%
26.8%
2.6%
▲7.4%
▲7.9%
▲3.0%
9.1%
▲2.3%
▲87.0%
▲5.9%
4.4%
▲10.0%
▲7.9%
▲19.2%
12.1%
▲0.5%
BloombergよりSMBC日興証券作成
14
本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。
Q2/16
Q3/16
2015
2016
2017
▲1.7%
5.9% ▲2.0%
3.7% 12.9%
▲1.5%
4.4% ▲2.5%
3.2% 13.7%
1.5%
8.3%
4.9%
6.2% 10.6%
9.9%
9.6% 11.4%
8.6% 13.1%
▲1.4%
5.2% ▲1.2%
3.8%
7.6%
▲62.9% ▲41.2% ▲60.0% ▲51.2% 126.0%
▲2.2% 12.4%
0.2%
5.6%
9.6%
4.7%
8.2% 13.1% 12.1% 11.2%
▲0.3%
9.1%
0.0%
1.4%
9.4%
1.1%
7.3%
7.4%
6.2% 12.7%
▲9.7%
7.5% ▲6.2% ▲3.5% 16.9%
8.8% ▲1.1% 15.7%
8.4%
4.1%
3.8%
3.9%
0.9%
4.5%
3.3%
2016 年 2 月 25 日(木) 投資情報部
Weekly Outlook No.243
10.インドネシア~予想通り1月に続いて利下げを決定
新興国担当: 山本 正樹
インドネシア銀行は2月18日、市場予想通り、2ヵ月連続で利下げを決定した。今後も追加利下げが見込ま
れるが、これまで通り慎重に進める限り、大きな通貨安圧力が生じる可能性は低いとみている。先進国の長
期金利は当面低位安定が見込まれ、国債市場への海外資金流入が引き続き通貨ルピアのサポート要因と
なろう。他方、昨年のように先進国長期金利が急騰した場合の通貨安リスクには留意が必要であろう。
 インドネシア銀行は景気重視の姿勢を鮮明に
お高く、今後も追加利下げが見込まれるものの、これま
で通り、小刻みの利下げを慎重に進める限り、大きな通
貨安圧力が生じる可能性は低いだろう。日本のマイナス
金利導入や予想されるECB(欧州中央銀行)の追加金
融緩和等により、当面先進国の長期金利は低位安定が
見込まれ、引き続き通貨ルピアのサポート要因となろう。
他方、インドネシア国債は外国人保有比率が4割程度と
新興国の中でも高いだけに、2015年にみられたように欧
米の長期金利が急騰する局面で国債市場から資金が
流出し、通貨安をもたらすリスクには引き続き留意が必
要であろう。
インドネシア銀行(中央銀行)は2月18日、市場予想
(Bloomberg)通り、政策金利を0.25%pt引き下げた(BI
レートは7.00%へ)。また、預金準備率を3月16日に7.5%
から6.5%へ引き下げることも決定した。1月に11ヵ月ぶり
の利下げを決定しており、2ヵ月連続の利下げとなった。
インドネシア銀行は声明文で、今回の政策決定の背
景として、金融市場の不透明感後退とインフレ圧力の低
下を挙げ、政策金利及び預金準備率引き下げという2
つの政策により景気浮揚を図る意思を鮮明にしている。
消費者物価指数(CPI)の前年比は、2014年11月に実
施された燃料価格の大幅値上げの影響が剥落し、2015
年11月以降は急低下に転じ、インフレターゲットの+4%
±1%に収まっている。声明文では原油価格の下落がイ
ンフレ圧力を低下させることが期待されるとし、2016年に
ついてもインフレターゲットの達成に自信を示した。足元
の景気については、2015年10-12月の実質GDP成長率
が前年比+5.04%と1年ぶりに+5%台を回復するなど底
打ちの動きとなっている。インドネシア銀行は、政府のイ
ンフラ投資等が景気をけん引する一方で、民間部 門
(消費、投資)や外需が弱い現状を指摘したが、2016年
の実質GDP成長率は+5.2%~+5.6%と、2015年の+4.8%
から上向くとの見通しを示した。
インドネシアは経常収支の赤字を海外からの資金流
入によりファイナンスする国際収支構造となっているが、
最近では、より安定的な長期資金である直接投資によ
る経常赤字ファイナンスの割合が上昇傾向にある。現在
のところ、経常赤字そのものが縮小していることがその
主因ではあるが、今後直接投資の流入が拡大すれば
経常赤字のファイナンス面で脆弱性は低下し、通貨安リ
スクの低減にもつながることが期待されよう。その意味で、
昨年9月以降、政府が相次いで経済政策パッケージを
打ち出し、外資誘致を通じて経済の活性化を図る姿勢
を鮮明にしている点は注目に値しよう。
 国債市場への資金流入が通貨のサポート要因
インドネシアでは、このところ外国人投資家による債
券市場への資金流入が目立っている。外国人投資家
によるインドネシア国債の売買動向(週間)をみると、昨
年の12月25日終了週から直近の2月19日終了週まで9
週連続で買い越しとなっている。年明け以降、世界的に
リスクオフの流れとなる中でも、通貨ルピアは他の新興
国通貨に比べて底堅く推移している。こうした金融市場
の動向も追加利下げを後押ししたと考えられる。
図表1. インドネシアの政策金利
9
貸出ファシリティ
レート
8
BIレート
7
6
預金ファシリティ
レート
5
なお、先行きの金融政策について、声明文では直接
的な言及は見られなかったものの、総じてハト派的なト
ーンが目立ち、引き続き追加利下げを視野に入れてい
ると考えられる。政策金利(7.00%)からインフレ率(1月
のCPI前年比+4.14%)を控除した実質金利は3%弱とな
4
3
13/1
13/7
14/1
14/7
出所: BloombergよりSMBC日興証券作成
15
本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。
(%)
15/1
15/7
16/1
(年/月)
2016 年 2 月 25 日(木) 投資情報部
Weekly Outlook No.243
11.インド~通貨ルピーの対ドル相場は2年半ぶりの安値圏に
新興国担当: 山本 正樹
インドでは、2016年度予算案の発表(29日)を控え、財政赤字拡大に対する警戒感等から株価や通貨が足
元で軟調となっている。ファンダメンタルズ面からは違和感もある足元のインド資産の動きは、ここ数年、他
の新興国に比べ底堅く推移していた反動の側面もあるとみられる。予算案で政府が財政規律に配慮しつつ、
効果的な成長戦略を打ち出すことができれば、インド資産買い戻しのきっかけとなりえよう。
 市場では財政赤字拡大に対する警戒感が浮上
能性も指摘されるが、日本株などと同様ここ数年のパフ
ォーマンスが良好であったインド株が格好の売り対象と
なった可能性もあろう。加えて、金融当局が輸出競争力
の観点から足元のルピー安を容認する姿勢をみせたこ
とも、ルピー売りを後押ししたとみられる。
インドルピー対ドル相場は、年明け以降の世界的なリ
スクオフの流れから下落。1月中旬頃から新興国通貨が
総じて持ち直す中でも、じり安傾向が続いている。2月
22日には一時1ドル=68.6913ルピーと2013年8月28日に
付けた過去最安値68.8450ルピーに接近した。インド株
式市場でも、2月11日にSENSEX指数が2014年5月以
来の安値22,951.83で終了し、年初から▲12.1%となるな
ど、ルピーと同様に下げが目立つ展開となっている。
 予算案発表を機に買い戻しの動きも
海外投資家のインド株式売買動向をみると、2月23日
時点の年初来売り越し額は23億702万ドルと、昨年1年
間の買い越し額32億7,410万ドルのおよそ7割にも達し
ている。前述の通り、市場では財政赤字拡大への懸念
が高まっているが、政府が財政規律を大きく逸脱する可
能性は低いとみている。29日に発表される予算案で財
政規律に配慮しつつ、効果的な成長戦略を打ち出すこ
とができれば、インド株を買い戻すきっかけとなりえよう。
株価に連動して下げてきた通貨ルピーも同様となろう。
この 他 、野 党 の 反 対 で先 送 りが 続 く物 品 サー ビ ス税
(GST)関連法案の成立可否も大きな焦点となっている
が、これについては水面下の与野党協議が進展してい
る模様。長年の懸案であったGST導入に道が開ければ、
市場でもポジティブに受け止められよう。
こうした背景には、2016年度(4月~)の政府予算案発
表(2月29日)を控え、財政赤字拡大に対する警戒感が
浮上していることが挙げられる。政府は昨年2月の2015
年度予算案発表の際、財政赤字を2015年度予算案の
GDP比3.9%から、2016年度に3.5%へ、2017年度には
3.0%へ引き下げる目標を掲げている。一方、2016年度
は公務員給与の大規模な改定が予定されていることか
ら (注 ) 、市場では2016年度の財政赤字が昨年示された
目標を上回るとの見方が強まっている。
注:政府の諮問機関である第 7 次中央給与委員会は昨年 11 月
19 日 、 2016 年 以 降 の 公 務 員 給 与 の 大 幅 な 引 き 上 げ
(+23.55%)を勧告した。公務員給与のうち基本給は、概ね 10
年に 1 度この勧告に基づき改定される。なお、前回 2008 年の
改定では 35%の引き上げ勧告に対して実際は 21%の引き上
げとなった。
なお、予算案の内容が逆にネガティブに受け止めら
れ、短期的には株価や通貨が一段の下値を模索する
可能性も否定できない。ただ、+7%台の堅調な成長が
続き、インフレや対外収支も改善する等、良好な経済フ
ァンダメンタルズを考慮すると、予算案を巡る材料出尽
くしもあり、売り一巡後は持ち直しに転じるとみている。
 株式・通貨が底堅く推移していた反動の面も
年明け以降の世界的なリスクオフの一因として、原油
相場の下落があるが、原油消費量の約8割を輸入に依
存するインドにとっては原油安のメリットは大きく、対外
収支やインフレ、財政収支の改善効果が期待される。そ
うしたファンダメンタルズ面からは違和感もある足元のイ
ンド株や通貨の下げは、ここ数年主要な新興国の中で
も株式や通貨が底堅く推移していた反動という側面も考
えられる。米国が金融緩和の出口を模索し始めた2013
年以降、インド株や通貨も他の新興国資産と同様に大
きく売り込まれる局面もあったが、2014年に発足したモ
ディ政権に対する期待感や、景気、インフレ、対外収支
等のファンダメンタルズ改善を支えにインド資産は相対
的に底堅く推移してきた。年明け以降の世界的な株安
の背後には産油国の政府系ファンド等による売りの可
図表1. 新興国通貨・円の対ドル年初来騰落率(2月24日)
7.2 日本円
1.7
1.0
0.9
0.5
0.1
-0.2
-0.6
-0.7
-0.8
-1.2
-1.5
-3.5
-4.3
-4.8
-5.5
-8
-6
-4
-2
0
2
4
出所: BloombergよりSMBC日興証券作成
16
本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。
インドネシア ルピア
マレーシア リンギ
タイ バーツ
シンガポール ドル
中国オフショア人民元
ブラジル レアル
香港 ドル
中国人民元
トルコ リラ
南アフリカ ランド
台湾ドル
フィリピン ペソ
インド ルピー
ロシア ルーブル
韓国ウォン
メキシコ ペソ
2.8
6
8 (%)
2016 年 2 月 25 日(木) 投資情報部
Weekly Outlook No.243
12.主な国内株価指数とテクニカル指標の推移
日本株担当: 溝渕 彩乃
日本株は、為替や原油価格の動向に左右される中、週末にG20を控えていることなどからボックス圏内の
動きが続いている。一方、24日に日本国債10年債利回りはマイナス0.055%と過去最低を更新し、東証
REIT指数は2015年6月1日以降の高値水準となった。日銀のマイナス金利導入で長期金利の低下圧力が
強まる中、今後も相対的に高利回りが期待できるREITや高配当利回り銘柄への資金流入が期待できよう。
図表1. 主な国内株価指数とテクニカル指標の推移
【国内主要株価指数】
110
105
100
95
90
85
80
75
70
65
60
【東証REIT指数と日本10年物国債利回り】
(pt)
1,900
(150日前を100として指数化)
1,850
7/14
8/13
9/12
東証マザーズ指数
10/12 11/11 12/11
2015年
0.5
1,750
0.4
1,700
0.3
1,650
0.2
【日経平均と25日移動平均・乖離率】
日経平均株価(左軸)
22,000
1,550
2/9 (月/日)
0
7/14
(%)
9/12 10/12 11/11 12/11 1/10
-0.1
2/9 (月/日)
2016年
【日経平均と100日移動平均・乖離率】
(円)
20
10
20,000
8/13
2015年
15
25日移動平均(左軸)
0.1
東証REIT指数(左軸)
2016年
(円)
0.6
日本10年物国債利回り(右軸)
1,500
1/10
(%)
日経平均株価(左軸)
22,000
0
-5
16,000
25日移動平均乖離率
(右軸)
14,000
7/14
8/13
9/12 10/12 11/11 12/11 1/10
2015年
(円)
10
20,000
5
22,000
0
18,000
-5
-10
16,000
100日移動平均乖離率
(右軸)
-10
-15 14,000
2/9 (月/日)
7/14
2016年
8/13
9/12 10/12 11/11 12/11 1/10
2015年
【日経平均と東証一部25日騰落レシオ】
日経平均株価(左軸)
東証一部25日騰落レシオ(右軸)
(円)
-15
-20
2/9 (月/日)
2016年
【日経平均 ストキャスティクス(9日)】
300
300
日経平均株価(左軸)
%D(右軸)
Slow %D(右軸)
22,000
250
20,000
20
15
100日移動平均(左軸)
5
18,000
0.7
1,800
1,600
日経平均
日経JASDAQ指数
(%)
250
20,000
200
200
(%)
18,000
150
150
18,000
(%)
120%ライン
100
80%ライン
16,000
100 16,000
70%ライン
14,000
7/14
2015年
8/13
50
20%ライン
9/12 10/12 11/11 12/11 1/10
2016年
50
14,000
2/9 (月/日)
7/14
2015年
8/13
9/12 10/12 11/11 12/11 1/10
2016年
0
2/9 (月/日)
注: データは2016年2月24日まで
出所: 各図表ともQUICKよりSMBC日興証券作成
テクニカル指標の見方
 騰落レシオ(25 日):過去 25 日間の値下がり銘柄数に対する値上がり銘柄数の割合。一般的に、120%以上で買
われ過ぎを、70%以下で売られ過ぎを表す。
 ストキャスティクス(9 日):直近の終値が過去のレンジで相対的にどのレベルに位置するのかを見るための指標。
%D=(直近終値と直近 9 日間の安値の乖離の 3 日移動平均)÷(直近 9 日間の高値と安値の乖離の 3 日移動平均)
Slow%D は%D の 3 日移動平均。一般的に%D が 80%以上で買われ過ぎ、20%以下で売られ過ぎを表す。
17
本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。
2016 年 2 月 25 日(木) 投資情報部
Weekly Outlook No.243
13.来週・再来週の主なスケジュール
<来週のスケジュール>
発表日
国・ 地域
日本
2月 29日 (月 )
米国
ユーロ圏
日本
米国
3月 1日 (火 )
ユーロ圏
英国
中国
3月 2日 (水 )
豪州
インドネシア
タイ
南ア
米国
豪州
ブラジル
米国
3月 3日 (木 )
ユーロ圏
英国
豪州
トルコ
ブラジル
日本
米国
3月 4日 (金 )
3月 5日 (土 )
3月 6日 (日 )
豪州
フィリピン
ロシア
ブラジル
中国
市場予想 前月・ 前期・ 前年
1月
1月
1月
2月
2月
-
10-12月期
10-12月期
1月
1月
1月
2月
-
2月
2月
1月
2月
2月
2月
2月
-
2月
2月
10-12月期
2月
10-12月期
-
1月
2月
-
1月
2月
2月
1月
2月
10-12月期
1月
1月
2月
2月
2月
1月
2月
2月
1月
-
小売業販売額(前年比)
鉱工業生産指数( 前月比、 速報)
中古住宅販売成約指数(前月比)
シカゴ購買部協会景況指数
消費者物価指数( 速報、 前年比)
2016年度予算案衆院通過( 年度内成立確実)
設備投資( 法人企業統計、 ソフトウエ ア 含む、 前年比) 全産業
設備投資( 法人企業統計、 ソフトウエ ア 除く 、 前年比) 全産業
有効求人倍率
失業率
家計調査-実質消費支出(前年比)
新車販売台数(除く軽自動車、前年比)
スーパーチュ ーズ デー( 党員集会、 予備選集中日)
ISM製 造 業 景 況 指 数
自動車販売台数(年換算)
失業率
製造業PMI(確報、前回値は速報値)
製造業PMI
製造業PMI
非製造業PMI
政策金利
消費者物価指数(前年比)
消費者物価指数(前年比)
実質GDP(前期比年率)
ADP雇用統計( 前月比)
実質GDP( 前期比)
政策金利
製造業受注(前月比)
ISM非製造業景況指数(総合)
地区連銀経済報告( ベージ ュ ブッ ク)
小売売上高(前月比)
サービス業PMI(確報、前回値は速報値)
ハリファックス住宅価格指数(前月比)
貿易収支
消費者物価指数(前年比)
実質GDP( 前期比)
毎月勤労統計-現金給与総額(前年比、速報)
貿易収支
非農業部門雇用者数( 前月比)
民間部門雇用者数( 前月比)
失業率
小売売上高(前月比)
消費者物価指数(前年比)
消費者物価指数(前年比、発表日未定、~9日)
鉱工業生産(前月比)
全国人民代表大会( ~中旬ま で)
▲0.4%
▲1.1%
3.2%
▲1.7%
1.0%
0.1%
53.8
55.6
0.4%
-
-
-
11.2%
-
11.2%
-
1.27倍
1.27倍
3.3%
3.3%
▲3.1%
▲4.4%
0.2%
-
-
-
48.5
48.2
1,765万台
1,746万台
10.4%
-
51.0
-
52.9
-
49.5
49.4
53.5
-
2.00%
2.00%
-
4.14%
▲0.63%
▲0.53%
-
0.7%
18.5万 人
20.5万 人
0.9%
-
14.25%
-
1.0%
▲2.9%
53.8
53.5
-
-
0.3%
-
53.0
-
1.7%
-
- ▲35.35億豪ドル
9.58%
-
▲1.7%
-
0.0%
-
▲433億ドル
▲434億ドル
19.5万 人
15.1万 人
18.5万 人
15.8万 人
4.9%
4.9%
0.0%
-
1.3%
-
9.8%
-
▲0.7%
-
-
-
注: 発表日は現地時間。市場予想と実績は2016年2月25日12時時点のBloombergの値を表示。スケジュールは予告なしに変更されることがあります
出所: Bloombergおよび各種報道などよりSMBC日興証券作成
18
本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。
2016 年 2 月 25 日(木) 投資情報部
Weekly Outlook No.243
<再来週のスケジュール>
発表日
国・ 地域
日本
3月 7日 (月 )
ユーロ圏
中国
-
日本
3月 8日 (火 )
ユーロ圏
独
中国
3月 9日 (水 )
マレーシア
ブラジル
メキシコ
ユーロ圏
独
3月 10日 (木 )
中国
NZ
韓国
トルコ
ブラジル
市場予想 前月・ 前期・ 前年
1月
1月
-
2月
-
10-12月期
1月
2月
2月
10-12月期
1月
2月
2月
2月
-
2月
2月
-
-
1月
1月
1月
2月
2月
2月
-
-
1月
1月
1-3月期
3月 11日 (金 )
日本
1-3月期
ブラジル
3月 12日 (土 )
中国
3月 13日 (日 )
日本
米国
1月
1-2月
1-2月
1-2月
-
-
景気一致CI指数(速報)
景気先行C I指数( 速報)
ユーロ圏財務相会合(ブリュッセル)
外貨準備高
米韓合同軍事演習(~4月末)
実質GDP(前期比年率、 2次速報、 前回値は速報値)
経常収支( 季調済)
景気ウォッチャー調査-現状判断DI
景気ウォッ チャー調査- 先行き判断DI
実質GDP(前期比、 改定値、 前期値は速報値 )
鉱工業生産(前月比)
貿易収支
輸出( 前年比)
輸入( 前年比)
政策金利
IPCA(拡大消費者物価指数、前年比)
消費者物価指数(前年比)
ECB( 欧州中央銀行) 理事会
政策金利
輸入(前月比)
輸出(前月比)
貿易収支
消費者物価指数( 前年比)
マネーサプライM2(前年比、発表日未定、~15日)
新規銀行融資( 発表日未定、 ~1 5 日)
政策金利
政策金利
経常収支
小売売上高指数(前月比)
法人企業景気予測調査
( 景況判断BSI- 大企業製造業、 前期比)
法人企業景気予測調査
( 景況判断BSI- 大企業全産業、 前期比)
経済活動指数(前月比)
鉱工業生産(前年比)
小売売上高(前年比)
固定資産投資(都市部、年初来、前年比)
自民党大会
夏時間入り(NY証券取引所の取引時間が日本時間でPM10:30~翌AM5:00に)
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
3.25%
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
2.50%
-
-
-
110.9
102.1
-
3.23兆ドル
-
▲1.4%
16,354億 円
46.6
49.5
0.3%
▲1.2%
632.9億 ド ル
▲11.2%
▲18.8%
3.25%
10.71%
2.6%
-
0.05%
▲1.6%
▲1.4%
188億ユーロ
1.8%
14.0%
25,100億 元
2.50%
1.50%
▲50.7億ドル
▲2.7%
-
3.8%pt
-
4.6%pt
-
-
-
-
-
-
▲0.52%
5.90%
11.10%
10.0%
-
-
注: 発表日は現地時間。市場予想と実績は2016年2月25日12時時点のBloombergの値を表示。スケジュールは予告なしに変更されることがあります
出所: Bloombergおよび各種報道などよりSMBC日興証券作成
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Weekly Outlook No.243
投資情報部作成最新レポートのご紹介
【定期発行レポート】
日次
週次
月次
Daily Outlook(日刊投資情報)
Weekly Outlook(週刊投資情報)
月刊投資情報(株式・為替・金利の見通し)
@ Wall Street
投資部門別売買動向(現物・先物)
日本株投資戦略(月刊プレゼン資料)
主要通貨デイリー
来週・再来週の注目スケジュール
米国株式投資ガイド
新興国通貨デイリー
米国 ETF テクニカル週報
日興ストラテジー・セレクション(注目銘柄リスト)
Global Market Review
米国主要企業決算発表スケジュール
投資初心者向け資料
向こう 3 ヵ月の注目スケジュール
Japan Market Review
【随時発行レポート】
<Spot Report >
2016/02/25
豪ドル
上昇タイミング後ずれの可能性
2016/02/24
トルコ
金融政策と足元のシリア情勢について
2016/02/19
インドネシア
予想通り 1 月に続いて利下げを決定
2016/02/18
豪ドル
原油価格が左右~年後半に上向きへ
2016/02/18
メキシコ経済
緊急利上げを含む包括的な通貨安抑制策を発表
2016/02/18
米国株式
Hot Topics:米国株市場の反発期待銘柄
2016/02/17
NZ ドル
期待インフレ率低下という独自の下落要因が浮上
2016/02/12
日本株式
下げ止まらない日本株市場について
2016/02/10
日銀金融政策
日銀のマイナス金利導入に関する Q&A
2016/02/10
日本株式
欧州金融の財務不安でリスクオフ
2016/02/03
日本株式
日銀の追加緩和策と原油相場
2016/02/03
中国株式
今後の中国経済と本土株式市場について
<カントリー・レポート>
2016/01/18
2015/10/19
南アフリカ共和国概観
インド概観
<注目の投資テーマ&業界ナビ>
2016/02/24
3 月の株主優待銘柄のご紹介
2016/02/01
注目の投資テーマ ~2016 年 2 月~
<プレゼン資料ほか>
2016/02/25
米国ストラテジー・セレクション『ロウズ・カンパニーズ』
2016/02/24
米国ストラテジー・セレクション『ホーム・デポ』
2016/02/18
日経平均株価の 2015 年 8 月急落時と今回との比較
2016/02/09
マイナス金利導入が日本株に与える影響
2016/02/09
マイナス金利で投資妙味高まる J-REIT
2016/02/05
NZ ドルの現状と見通し
2016/02/05
米国ストラテジー・セレクション『フィリップ モリス インターナショナル』
2016/02/03
原油関連データ集(更新版)
* 上記レポートをご希望の方は、最寄りの支店までお問い合わせください。
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2016 年 2 月 25 日(木) 投資情報部
Weekly Outlook No.243
無登録格付に関する説明書
格付会社に対しては、市場の公正性・透明性の確保の観点から、金融商品取引法に基づく信用格付業者の登録制が導入されてお
ります。
これに伴い、金融商品取引業者等は、無登録格付業者が付与した格付を利用して勧誘を行う場合には、金融商品取引法により、
無登録格付である旨及び登録の意義等を顧客に告げなければならないこととされております。
つきましては、格付会社(ムーディーズ・インベスターズ・サービス・インク、スタンダード&プアーズ・レーティングズ・サービシズ、フィ
ッチ・レーティングス)の「無登録格付に関する説明書」を下記の通りお知らせ致します。
<無登録格付に関する説明書(ムーディーズ・インベスターズ・サービス・インク)>
○登録の意義について
登録を受けた信用格付業者は、①誠実義務、②利益相反防止・格付プロセスの公正性確保等の業務管理体制の整備義務、③格付対
象の証券を保有している場合の格付付与の禁止、④格付方針等の作成及び公表・説明書類の公衆縦覧等の情報開示義務等の規制を
受けるとともに、報告徴求・立入検査、業務改善命令等の金融庁の監督を受けることとなりますが、無登録格付業者は、これらの規制・
監督を受けておりません。
○格付会社グループの呼称等について
格付会社グループの呼称:ムーディーズ・インベスターズ・サービス・インク
グループ内の信用格付業者の名称及び登録番号:ムーディーズ・ジャパン株式会社(金融庁長官(格付)第2号)
○信用格付を付与するために用いる方針及び方法の概要 に関する情報の入手方法について
ムーディーズ・ジャパン株式会社のホームページ(ムーディーズ日本語ホームページ(http://www.moodys.co.jp)の「信用格付事業」をク
リックした後に表示されるページ)にある「無登録業者の格付の利用」欄の「無登録格付説明関連」に掲載されております。
○信用格付の前提、意義 及 び限界について
ムーディーズ・インベスターズ・サービス・インク(以下、「ムーディーズ」という。)の信用格付は、事業体、与信契約、債務又は債務類似
証券の将来の相対的信用リスクについての、現時点の意見です。ムーディーズは、信用リスクを、事業体が契約上・財務上の義務を期
日に履行できないリスク及びデフォルト事由が発生した場合に見込まれるあらゆる種類の財産的損失と定義しています。信用格付は、
流動性リスク、市場リスク、価格変動性及びその他のリスクについて言及するものではありません。また、信用格付は、投資又は財務に
関する助言を構成するものではなく、特定の証券の購入、売却、又は保有を推奨するものではありません。ムーディーズは、いかなる形
式又は方法によっても、これらの格付若しくはその他の意見又は情報の正確性、適時性、完全性、商品性及び特定の目的への適合性
について、明示的、黙示的を問わず、いかなる保証も行っていません。
ムーディーズは、信用格付に関する信用評価を、発行体から取得した情報、公表情報を基礎として行っております。ムーディーズは、こ
れらの情報が十分な品質を有し、またその情報源がムーディーズにとって信頼できると考えられるものであることを確保するため、全て
の必要な措置を講じています。しかし、ムーディーズは監査を行う者ではなく、格付の過程で受領した情報の正確性及び有効性について
常に独自の検証を行うことはできません。
この情報は、平成26年2月18日に信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性を当社が保証するもの
ではありません。詳しくは上記ムーディーズ・ジャパン株式会社のホームページをご覧ください。
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2016 年 2 月 25 日(木) 投資情報部
Weekly Outlook No.243
<無登録格付に関する説明書(スタンダード&プアーズ・レーティングズ・サービシズ)>
○登録の意義について
登録を受けた信用格付業者は、①誠実義務、②利益相反防止・格付プロセスの公正性確保等の業務管理体制の整備義務、③格付対
象の証券を保有している場合の格付付与の禁止、④格付方針等の作成及び公表・説明書類の公衆縦覧等の情報開示義務等の規制を
受けるとともに、報告徴求・立入検査、業務改善命令等の金融庁の監督を受けることとなりますが、無登録格付業者は、これらの規制・
監督を受けておりません。
○格付会社グループの呼称等 について
格付会社グループの呼称:スタンダード&プアーズ・レーティングズ・サービシズ
グループ内の信用格付業者の名称及び登録番号:スタンダード&プアーズ・レーティング・ジャパン株式会社(金融庁長官(格付)第5号)
○信用格付を付与するために用いる方針及び方法の概要 に関する情報の入手方法について
スタンダード&プアーズ・レーティング・ジャパン株式会社のホームページ(http://www.standardandpoors.co.jp)の「ライブラリ・規制関
連」の「無登録格付け情報」(http://www.standardandpoors.co.jp/unregistered)に掲載されております。
○信用格付の前提、意義 及 び限界について
スタンダード&プアーズ・レーティングズ・サービシズ(以下「レーティングズ・サービシズ」)の信用格付は、発行体または特定の債務の将
来の信用力に関する現時点における意見であり、発行体または特定の債務が債務不履行に陥る確率を示した指標ではなく、信用力を
保証するものでもありません。また、信用格付は、証券の購入、売却または保有を推奨するものでなく、債務の市場流動性や流通市場
での価格を示すものでもありません。
信用格付は、業績や外部環境の変化、裏付け資産のパフォーマンスやカウンターパーティの信用力変化など、さまざまな要因により変
動する可能性があります。
レーティングズ・サービシズは、信頼しうると判断した情報源から提供された情報を利用して格付分析を行っており、格付意見に達するこ
とができるだけの十分な品質および量の情報が備わっていると考えられる場合にのみ信用格付を付与します。しかしながら、レーティン
グズ・サービシズは、発行体やその他の第三者から提供された情報について、監査・デュー・デリジュエンスまたは独自の検証を行って
おらず、また、格付付与に利用した情報や、かかる情報の利用により得られた結果の正確性、完全性、適時性を保証するものではあり
ません。さらに、信用格付によっては、利用可能なヒストリカルデータが限定的であることに起因する潜在的なリスクが存在する場合もあ
ることに留意する必要があります。
この情報は、平成26年2月18日に信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性を当社が保証するもの
ではありません。詳しくは上記スタンダード&プアーズ・レーティング・ジャパン株式会社のホームページをご覧ください。
<無登録格付に関する説明書(フィッチ・レーティングス)>
○登録の意義について
登録を受けた信用格付業者は、①誠実義務、②利益相反防止・格付プロセスの公正性確保等の業務管理体制の整備義務、③格付対
象の証券を保有している場合の格付付与の禁止、④格付方針等の作成及び公表・説明書類の公衆縦覧等の情報開示義務等の規制を
受けるとともに、報告徴求・立入検査、業務改善命令等の金融庁の監督を受けることとなりますが、無登録格付業者は、これらの規制・
監督を受けておりません。
○格付会社グループの呼称等について
格付会社グループの呼称:フィッチ・レーティングス(以下「フィッチ」と称します。)
グループ内の信用格付業者の名称及び登録番号:フィッチ・レーティングス・ジャパン株式会社 (金融庁長官(格付)第7号)
○信用格付を付与するために用いる方針及び方法の概要 に関する情報の入手方法について
フィッチ・レーティングス・ジャパン株式会社のホームページ(http://www.fitchratings.co.jp)の「規制関連」セクションにある「格付方針等
の概要」に掲載されております。
○信用格付の前提、意義 及 び限界について
フィッチの格付は、所定の格付基準・手法に基づく意見です。格付はそれ自体が事実を表すものではなく、正確又は不正確であると表現
し得ません。信用格付は、信用リスク以外のリスクを直接の対象とはせず、格付対象証券の市場価格の妥当性又は市場流動性につい
て意見を述べるものではありません。格付はリスクの相対的評価であるため、同一カテゴリーの格付が付与されたとしても、リスクの微
妙な差異は必ずしも十分に反映されない場合もあります。信用格付はデフォルトする蓋然性の相対的序列に関する意見であり、特定の
デフォルト確率を予測する指標ではありません。
フィッチは、格付の付与・維持において、発行体等信頼に足ると判断する情報源から入手する事実情報に依拠しており、所定の格付方
法に則り、かかる情報に関する調査及び当該証券について又は当該法域において利用できる場合は独立した情報源による検証を、合
理的な範囲で行いますが、格付に関して依拠する全情報又はその使用結果に対する正確性、完全性、適時性が保証されるものではあ
りません。ある情報が虚偽又は不当表示を含むことが判明した場合、当該情報に関連した格付は適切でない場合があります。また、格
付は、現時点の事実の検証にもかかわらず、格付付与又は据置時に予想されない将来の事象や状況に影響されることがあります。
信用格付の前提、意義及び限界の詳細にわたる説明については、フィッチの日本語ウェブサイト上の「格付及びその他の形態の意見に
関する定義」をご参照ください。
この情報は、平成26年2月18日に信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性を当社が保証するもの
ではありません。詳しくは上記フィッチのホームページをご覧ください。
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Weekly Outlook No.243
本資料について
【免責事項】
本資料は証券その他の投資対象の売買の勧誘ではなく、SMBC日興証券株式会社(以下「弊社」といいます)が投資情報の提供を目
的に作成したものです。本資料は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手した情報に基づいて作成していますが、これらの情報
が完全、正確であるとの保証はいたしかねます。情報が不完全または要約されている場合もあります。本資料に記載する価格、数値等
は、過去の実績値、概算値あるいは将来の予測値であり、実際とは異なる場合があります。かかる価格、数値等は予告なしに変更する
ことがありますので、予めご了承くださいますようお願いいたします。本資料は将来の結果をお約束するものでもありませんし、本資料に
ある情報をいかなる目的で使用される場合におきましても、お客様の判断と責任において使用されるものであり、本資料にある情報の
使用による結果について、弊社及び弊社の関連会社が責任を負うものではありません。本資料は、本資料を受領される特定のお客様
の財務状況、ニーズ又は投資目的を考慮して作成されているものではありません。本資料はお客様に対して税金・法律・投資上のアド
バイスを提供する目的で作成されたものではありません。投資に関する最終決定は、契約締結前交付書面、上場有価証券等書面、目
論見書、お客様向け資料等をよくお読みになり、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。
本資料は、弊社又は弊社の関連会社から配布しています。本資料に含まれる情報は、提供されましたお客様限りでご使用ください。本
資料は弊社の著作物です。本資料のいかなる部分についても電子的または機械的な方法を問わず、いかなる目的であれ、無断で複製
または転送等を行わないようにお願いいたします。本資料に関するお問い合わせは、弊社の営業担当者までお願いいたします。
本資料に記載された会社名、商品名またはサービス名等は、弊社または各社の商標または登録商標です。
【金融商品取引法第 37 条(広告等の規制)にかかる留意事項 】
手数料等について
弊社がご案内する商品等へのご投資には、各商品等に所定の手数料等をご負担いただく場合があります。例えば、店舗における国内
の金融商品取引所に上場する株式等(売買単位未満株式を除く。)の場合は約定代金に対して最大 1.242%(ただし、最低手数料 5,400
円)の委託手数料をお支払いいただきます。投資信託の場合は銘柄ごとに設定された各種手数料等(直接的費用として、最大 4.32%の
申込手数料、最大 4.5%の換金手数料又は信託財産留保額、間接的費用として、最大年率 5.61%の信託報酬(又は運用管理費用)及
びその他の費用等)をお支払いいただきます。債券、株式等を募集、売出し等又は相対取引により購入する場合は、購入対価のみをお
支払いいただきます(債券の場合、購入対価に別途、経過利息をお支払いいただく場合があります。)。また、外貨建ての商品の場合、
円貨と外貨を交換、又は異なる外貨間での交換をする際には外国為替市場の動向に応じて弊社が決定した為替レートによるものとしま
す。上記手数料等のうち、消費税が課せられるものについては、消費税分を含む料率又は金額を記載しております。
リスク等について
各商品等には株式相場、金利水準、為替相場、不動産相場、商品相場等の価格の変動等及び有価証券の発行者等の信用状況(財
務・経営状況を含む。)の悪化等それらに関する外部評価の変化等を直接の原因として損失が生ずるおそれ(元本欠損リスク)、又は元
本を超過する損失を生ずるおそれ(元本超過損リスク)があります。
なお、信用取引又はデリバティブ取引等(以下「デリバティブ取引等」といいます。)を行う場合は、デリバティブ取引等の額が当該デリバ
ティブ取引等についてお客様の差入れた委託保証金又は証拠金の額(以下「委託保証金等の額」といいます。)を上回る場合があると共
に、対象となる有価証券の価格又は指標等の変動により損失の額がお客様の差入れた委託保証金等の額を上回るおそれ(元本超過
損リスク)があります。
また、店頭デリバティブ取引については、弊社が表示する金融商品の売付けの価格と買付けの価格に差がある場合があります。
上記の手数料等及びリスク等は商品毎に異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面や目論見書又はお客様向け資料等をよ
くお読みください。なお、目論見書等のお問い合わせは弊社各部店までお願いいたします。
商 号 等 SMBC日興証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 2251 号
加入協会 日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、一般社団法人第二種金融商
品取引業協会
(2015/04/09 版)
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