今月の本誌 - ゆく春俳句会

日脚伸ぶ
乱 れ な き 玉 砂 利 の 先 梅 白 し
木
梅
蓮
の
の
蕾
一
は
花
囃
早
す
し
や
赤
窓
い
の
靴
枠
日 脚 伸 ぶ ま ま に 鷗 の 餌 付 け か な
寒
雪 掻 き や 車 の 跳 ね も も ろ と も に
光 陰 の と つ と と 逃 げ て 一 月 尽
大 寒 の 水 ぴ か ぴ か と 脳 髄 に
恐 ろ し き 手 術 を 終 へ て 日 脚 伸 ぶ
内 山 眠 龍
1
草 笛 集
加賀梅
新 美 久 子
髙 橋 純 子
加賀梅やその名にし負ふ品と格
梅咲くや遺影は今も微笑めり
咲いてみよ飛梅ならばあの世でも
日の暮れて梅の白のみ浮かびけり
梅が枝の無骨を褒めし庭師かな
初神楽
補聴器をはづし音なき冬の夜
初神楽空へ透けゆく神の笛
初髪に母の遺愛の櫛光る
どんどの火空にのぼりて星となる
初暦めくれば月日流れそむ
福詣り
鈴 木 良 子
野水仙芽ぶかんとして力ため
三日過ぎ五日も過ぎてもとの貌 福詣り留めは弁天夕日かな
大 津 浩
禅寺の清水をうけて悴めり
初夢や壊れ始めし記憶力
寒の音
響の第九を聴きて去年今年
蹲踞の脇に竹筒寒椿
水琴窟筒に耳当て寒の音
鷗には噴水冬も遊び所
初日撮るシャッターチャンス五十秒 N
4
草 笛 集
冬館
倉 林 潮
植 村 文 彦
真鍮の取つ手ガチャリと冬館 冬館扉開ければシベリウス
検問のお気をつけてとクリスマス
空爆の閃光めくや聖樹の灯
お国言葉添へて機長の御慶かな
初日
破魔矢からバスに乗り込む朝かな 曇り窓拭けば初日が指の先
端座して師の筆で書く初日記
松飾りなき門柱や星明り
初笑ひ日本列島晴れマーク
雪の層
井 村 美智子
白鳥の老いを見せざる容姿かな
山 田 瑛 子
伽羅の香の僅かに動く三日かな
親子の歩凍道軋む二重奏
雪の層すべて自然の造形美
晩年の先は知らずや寒を詠む
去年今年
古びたる木椅子の軋み年惜しむ
初みくじ大吉神の手紙てふ
初句会一本締めの音高し
玉串の奉奠合はす初烏
五輪まで元気でありたし初詣
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草 笛 集
初夢
岩 永 紫好女
春の旅
掌を温めん
小満ん
村 上 博 幸
狼か鶏舎の一羽消えし朝
家飼ひの犬にも狩の構へかな
紅梅や波打つ玻璃の窓越しに
頬半分菰に隠るる寒牡丹
助手一人乗船一人春の旅
柳家小満ん師匠の俳句
寒の月
こころみに
川 又 曙 光
初夢に出て来ぬ人を思ひけり 思ひ出す初夢ひとつ無かりけり
初夢は何と聞かれし十日かな
彩色の無き羽子板をつきし日よ
額縁のゆがみ直して春を待つ
初筑波
末枯の池面寂もり煙霧這う 耳たぶに補聴器ゆだね初音聞く
吃々と老を楽しみごまめ噛む
障子貼り替えて太陽呼び戻す
玲瓏と天にきわ立つ初筑波
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山縣輝夫先生を偲ぶ会のご案内
日 時 四月十七日(日)
正午~午後四時三十分
会 場 アルカディア市ヶ谷(私学会館)
偲ぶ会 十二時~十三時 フォッセにて会食
(アルカディア市ヶ谷内)
句 会 十三時~十六時三十分
於 貴船 (アルカディア市ヶ谷内)
兼 題 「若草」 二句 「当季雑詠」二句(追悼句を含む)
会 費 六千円 (昼食を含む)
投句のみ 二千円
申込及び 倉林 潮
投句先 〒二四四 ー〇八一三
横浜市戸塚区舞岡町
一〇九三 ー四 ー五〇三
電話 〇四五 ー八六一 ー六一二四
メールアドレス
[email protected]
締 切
三月末日
(二十四名)をオーバーした場
定員
合は事前に締切ることがあります。
投句のみ 投句のみの方は参加料二千円を同
の受付 封してお送り下さい。
会場の地図・アクセスは三〇頁をご参照下さい。
◆この一句(二月号より)
夜を徹し国道除雪の音遠く
谷 島 展 子
し ば れ る 気 象 条 件 の 下、 夜 も す が ら 国 道
の除雪に勤しむ真摯な労働者を思い遣りな
がら、かなたの作業音に耳を傾け続けます。
作 者 の 居 住 地「 旭 川 」 は、 過 去 に 氷 点 下
四 十 一 度 を 記 録 し た 都 市 で す。 苛 酷 な 大 自
然と共に生きる人々のど根性には頭が下が
り ま す。 暦 の 上 で は 早 春 の 候 に な り ま し た
が、 気 象 の 方 は ま だ ま だ 冬。 本 格 的 な 凍 解
の季節が待ち遠しいことでしょう。
岩澤正春 選評
三月号担当 谷島展子
7
春 雷 集
ともかくも何か啄む寒雀
横 浜 本 間 辰 也
浮き来たる鯉は冬雲崩しけり
年用意猫のシャンプー加はりて
捨て難きモネの名画の古暦
葱畑隊列組みて空に伸び
大人めくメール画面の初笑い
東 京 山 縣 文
鬢付けの匂ふ棧敷や初芝居
迷子札はスマホとなりぬ歳の市
テレビから埃來さうな煤掃ひ
仕舞弘法手を離さざる人ばかり
一陽來復麻酔覚めたる日の眩し
海老名 和泉屋 石 海
スーパーの角に研ぎ師の日向ぼこ
東 京 山 﨑 カツ子
好きな木の好きな枝あり寒雀
初日記庭に猫来て雀来て 老いの文字使わぬ決意初日記
遠い日の縁をいまに賀状くる
横 浜 岩 澤 正 春
正月の凧の競り合ふ深空かな
宮内庁御用達とや初買す 独楽それて勝ち運つかみ損ねけり
士 別 川 崎 春 浪
女児二三交へて湯殿始かな
双六や竜頭蛇尾の二連敗
雪吊りや男結びの縄の花
獅子使い無形文化の頬被り
大手毬弾み欲しそう飾り棚
煤払う先祖が眠る納骨堂
斧始杣伐採のしずり雪
東 京 石 原 まさ子
大き掌の悴むこころつつみ給ふ
白き富士海より仰ぐ淑気かな
紺青の海渡りきし寒の鰤
金屛に物語りめく絵蝋燭
冬の月方丈の縁夜坐の僧
8
占うごとくひび割れし鏡餅
飯事のお菜はいつも実南天
冬虹の消えぬ間の約束は愛
深雪晴大倉山にテレマーク
朝ぼらけ氷ひしめく山湖かな
前 橋 金 田 葉 子
一片の香澄みわたる初茶席
初空に宮居の鳩の翔ちにけり
虹色の鳥の羽差し冬帽子
来賓の席落ちつかず隙間風 年惜しむ捨てるつもりの鍋磨く
東 京 水 上 通 子
よそほひにブローチ一つ初句会
梅早しみたらし団子売り切れる
底冷えの寺に重要文化財 さりげなき母の小言や冬山椒
ラジオより星座解説寒昴
仙 台 及 川 紀 子
三方に御供物としてブロッコリー
冬薔薇棘に秘めたる花の色 ストーブで塾の先生煮るおでん
産土を離れて久し初浅間 だるま市買うて貼らるる申の札
福耳の飾る小顔や冬うらら
東 京 佐 藤 恵美子
洛中洛外雪虫のさまよへる
舌を出す異國の神や春逡巡 拗ねた眼のジェームスデーン裘
梟の賢者の顔を廻しけり 焼印の押されし下駄や梅見茶屋
福 士 あき子
旭 川 渡 辺 タミ子
節料理娘に伝授とて肩並べ
正座して三年日記の一ページ
初詣羽織袴の犬の居て 竹刀の手声に悴み解けにけり
雪の中熟成を待つ銘酒かな
旭 川 白息を荒げ顚末語りけり 地吹雪や標なる灯をはやばやと
雪焼けて下山の峡の露天風呂
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