2016 Vol.782 電機 , THE JAPAN ELECTRICAL MANUFACTURERS ASSOCIATION (2 月 23 日発行) <表紙の言葉> 誌名のローマ字表記である “DENKI” をメインビジ ュアルとすることで、電機産業の発展が社会や人々 に貢献し続けた歴史を振り返るとともに、より安心 で便利な未来のために、これからもますます進化し 続けたい、 という想いを表現しています。 特集1 原子力発電所の再稼働を考える トピックス EFC15(欧州燃料電池セミナー 2015)出席報告 日本のエネルギー事情と原子力発電所の 新規制基準について パナソニック株式会社 アプライアンス社 橋本 登 4 一般社団法人 日本電機工業会 55 2016 年度(平成 28 年度)税制改正要望 結果報告 原子力発電所の再稼働に向けた取組み(インタビュー記事) 一般社団法人 日本電機工業会 総務部 57 一般社団法人 日本電機工業会 〈1〉一般社団法人 原子力安全推進協会(JANSI) からみた 九州電力株式会社川内原子力発電所の取組み 10 〈2〉三菱重工業株式会社 エネルギー・環境ドメイン 12 〈3〉日立GE ニュークリア・エナジー株式会社 14 〈4〉株式会社 東芝 電力システム社 16 一般社団法人 日本電機工業会 伊東 洋三 61 標準化活動紹介 IEC/SC23E/WG1、WG2(小形の配線用遮断器・漏電遮断器) 66 IEC/TC61(家電機器の安全) 製品・技術開発とその成果 愛知電機/ FDK /音羽電機工業/勝亦電機製作所/河村電器産業 九電テクノシステムズ/三社電機製作所/山洋電気/指月電機製作所 シャープ/正興電機製作所/ダイヘン/寺崎電気産業/東光高岳 東 芝 産 業 機 器 システム / 東 芝 ライフスタイ ル / 戸 上 電 機 製 作 所 西 芝 電 機 / ニ チ コ ン / 日 東 工 業 / パ ナ ソ ニ ック / 日 立 工 機 日立パワーソリューションズ/富士電機/富士電機機器制御/マキタ リョービ(50 音順) 定置用小形燃料電池の新たな認証基準 バルセロナ会議 出席報告 IEC/SC23E 国内対応委員会 山口 健二 特集2 2015年 会員企業各社の 三菱電機/三菱電機システムサービス/明電舎/安川電機/利昌工業 業界報告 18 シドニー会議 出席報告 第 59/61/116 小委員会 WG1 主査 佐藤 政博 68 IEC/TC105/WG11(燃料電池単セル・スタック試験法) ミラノ会議 出席報告 IEC/TC105/WG11 木下 伸二 69 IEC/TC117(太陽熱発電システム) マドリッド会議 出席報告 一般社団法人 日本電機工業会 柴田 和男 70 IEC/ISO JWG ECD 62959(環境配慮設計) KISTA(シスタ)会議 出席報告 一般社団法人 日本電機工業会 齋藤 潔 ハイライト フラッシュニュース 2016 年度経済見通し 75 2016年 年賀交歓会 (大阪支部、 名古屋支部、 福岡支部) ~下振れリスクをはらみつつも、緩やかな持ち直しが続く 三菱 UFJリサーチ&コンサルティング 小林真一郎 72 51 統計 編集後記 78 80 3 特集 1 原子力発電所の再稼働を考える 昨年の九州電力株式会社川内原子力発電所以来、原子力発電所の再稼働への道筋が開かれつつある 中、国民のエネルギー問題への関心は益々高まりつつあります。 特集記事として、わが国のエネルギー事情と原子力発電所の新しい規制基準を紹介するとともに、 更なる原子力発電所の再稼働に向け、電力会社や原子力プラントメーカがどのような対策を実施し ているかについて、電力会社 OB や現場で従事するメーカー社員の方々の生の声を集めました。 日本のエネルギー事情と原子力発電所の新規制基準について 一般社団法人 日本電機工業会 1.はじめに ミックスを組み立てていくことが重要である。これを踏ま え、2014 年に閣議決定された「エネルギー基本計画」で 2011 年 3 月11日、東北地方一帯を襲った大地震に伴 は、原子力発電は引続き「重要なベースロード電源」で う巨大津波を直接的な原因とする東京電力株式会社福島 あるとされ、2015 年 7 月に策定された「長期エネルギー 第一原子力発電所事故(以下、福島第一原発事故)が発 需給見通し」では、2030 年の電源構成に占める原子力発 生し、多量の放射性物質が環境中に放出された。その結 電の割合が 20 ~ 22%とされた。 果、福島県の9 市町村においては、現在に至るまで多く このような状況の中、電気事業者、原子力プラントメー の方々が避難生活を余儀なくされるなど、福島第一原発 カは、福島第一原発事故から得られた教訓を踏まえて、 事故の影響は甚大である。 原子力発電所の安全性を更に高める不断の取組みが必要 一方で、日本は世界有数の経済大国でありながら、資 であり、自主的に安全対策の強化を進めてきた。国内の 源小国であるためエネルギー自給率はわずか 6%であり、 既存の原子力発電プラントについては、震災直後は緊急 経済活動の元となるエネルギー源のほとんどを海外から に安全対策を強化し、新規制基準制定後は、再稼働を目 の輸入に頼らざるを得ない。国内の原子力発電所のほと 指して安全対策の強化に取り組んでいる。その結果とし んどが停止している現在、電力の90%は石油・石炭・天 て、原子力規制委員会が策定した新規制基準への適合と 然ガスによる火力発電で賄っているが、そのために日本 しては国内で初めてとなる、2015 年 8 月14日の九州電力 が海外に支払う燃料費は、震災前の2010 年よりも年間 株式会社川内原子力発電所 1 号機の再稼働(発電再開) 3 兆円以上増えると試算されている。火力中心の発電に にも貢献することが出来た。 よってCO 2 の排出量も増加しており、2012 年の排出量は 本稿では、緊急安全対策の検討および新規制基準への 2010 年の1.3 倍となっている。今後も原子力発電所の多 対応など、福島第一原発事故発生以降に原子力プラント くが停止する状況が続けば、国の地球温暖化対策にも影 メーカが各電気事業者と共に実施してきた安全性向上及 響する可能性がある。日本が将来にわたって安定した社 び再稼働実現に向けた取組みを、加圧水型軽水炉プラン 会を築いていくためには、①安定供給、②経済性及び③ トを例に紹介する。 環境保全の3つの視点からエネルギー資源の利用を考え る必要がある。 しかし、発電方法にはそれぞれ長所と短所があり、完 2.福島第一原発事故を踏まえた 安全対策の概要 璧な発電方法は存在しない。それゆえ、資源に乏しい日 本では特定の電源に依存せず、国情に合わせて化石、原 国内には、沸騰水型軽水炉(BWR)と加圧水型軽水 子力、水力・地熱・風力・太陽光・バイオマスなどの再 炉(PWR)という、炉型が異なる二種類の商業用原子力 生エネルギーなどにより、バランスの取れたエネルギー 発電所が存在する(図1) 。双方共、原子炉内で核分裂 4 電 機 2016・February 日本のエネルギー事情と原子力発電所の新規制基準について [1] 図 1 原子力発電の原理と特徴(BWR と PWR) 反応を起こし、発生した熱を利用して蒸気をつくり、ター 手段を失った。冷却機能を喪失したことにより、原子炉 ビンを回して発電するという仕組みは同じである。異なる の余熱冷却が不能となり、最終的に燃料損傷、炉心溶融、 のは、BWRは、原子炉で直接蒸気をつくりタービンを回 水素爆発を引き起こすこととなった。 す仕組み(直接サイクル)であるのに対し、PWRは、原 今回の事故の経験を踏まえ、安全対策として、津波襲 子炉内で熱水をつくり、その熱水を原子炉とは別に蒸気 来時に重要機器を破損/浸水から守ること、電源供給機 発生器(SG:Steam Generator)に送ってそこで蒸気を 能を確保すること、冷却機能を確保すること、燃料/炉 つくってタービンを回す仕組み(間接サイクル)であると 心損傷時に事故の進展を防止することの観点から安全対 いう点である。PWRは、原子炉とは別の場所で蒸気をつ 策が強化された。 くっており、タービンを回す蒸気が放射性物質を含んで いないため、タービン側の建屋は放射線管理区域ではな いという特徴を持つ。 福島第一原子力発電所での事故発生の流れを図2に 示す。地震発生時には設計通り、制御棒は自動挿入され、 原子炉の核分裂反応は停止(原子炉トリップ)した。また、 地震により、所外からの電気の供給が途絶えたが、非常 用ディーゼル発電機(非常用DG)が自動起動し、所内 電源を確保でき、原子炉で発生する熱(崩壊熱)は設計 通り除熱された。しかし、原子炉停止から約 45 分後に襲 来した想定を超える津波により、崩壊熱を海に逃がす海 水冷却系統(“最終ヒートシンク” と称する)を喪失する と共に、非常用DGが被水したことにより、全交流電源 を喪失(SBO)した。電力が不要な緊急時補助冷却シス テムが起動し、全電源喪失後も炉心は継続して冷却され ていたが、その間に外部から注水することが出来ず、や がて緊急時補助冷却システムも機能を失って原子炉冷却 図 2 福島第一原発事故を踏まえた安全対策の概要 特集 1:原子力発電所の再稼働を考える 5 3.緊急安全対策の検討 福島第一原発事故直後、国内で稼働中または起動を予 定している原子力発電所に対し、緊急時の電源確保など また、使用済燃料ピット(プール)内に貯蔵された燃 料の冷却は、ピット内の水位を維持することで確保され る。PWRでは使用済燃料ピットが地上レベルにあるので、 給水車等で容易に追加の給水ができる。 の緊急安全対策を講じるよう経済産業大臣から指示が発 電源供給機能に係る対策では、プラント状態監視のた 令された。具体的には、最終ヒートシンクおよび全交流 めの計測制御設備や、プラント停止操作に必要な弁など、 電源が喪失した場合に、原子炉の冷却機能、使用済燃料 必要最小限の設備を作動させるための電力を供給できる の冷却機能および電源供給機能を速やかに復旧するため ようにする対策を講じた。 の対策、並びに、津波襲来時に重要機器の浸水を防止す これらの検討結果の一例を図4に示すが、PWRプラン るため、建屋の配管貫通部や扉の水密化を強化する対策 トでは、福島第一原発事故の原因調査結果、教訓を踏ま を講じた。 えた対応として、対処シナリオの構築、必要な資機材の PWRにおける最終ヒートシンクの喪失および全交流電 源の喪失時に冷却機能を確保するための対策概要を図3 に示す。 準備ならびに各種手順の整備も行った。 4.新規制基準対応 PWRプラントでは、蒸気発生器(SG)に冷却水を供 給し、SGで発生した蒸気を大気に放出することによって 独立性の強い三条委員会として2012 年 9 月に設置され 原子炉の冷却を行うことができる。SG への冷却水供給は、 た原子力規制委員会は、原子力発電所の設計を審査する 安全設備として設置されているタービン動補助給水ポン ための新しい基準の策定に着手し、2013 年 2 月に新規制 プによって行うことが可能である。このポンプは電気では 基準骨子案を発表した。その後パブリックコメントを経て、 なく、SGで発生した蒸気を駆動源としているため、全交 2013 年 7 月に新規制基準として施行した。 流電源喪失時でも運転が可能である。 図 3 PWR における最終ヒートシンクおよび全交流電源喪失時の冷却機能の確保 6 電 機 2016・February 日本のエネルギー事情と原子力発電所の新規制基準について 図 4 緊急安全対策の概要[2] 4.1 新規制基準の概要 新規制基準は、以下の3 点が従来の規制基準に対して 強化された(図5 参照) 。 部溢水対策等) ③ 意図的な航空機衝突および放射性物質の拡散抑制 対策等を追加 新規制基準は、世界的に見ても大変厳しい水準にある。 前述の通り、原子力プラントメーカでは福島第一原発事 故対策として緊急安全対策を実施していたが、更に高い 安全性を要求する新規制基準に適合すべく、安全性向上 対策立案に着手した。 以下では、新規制基準に適合するために追加された安 全性強化策について、代表例を紹介する。 4.2 新規制基準へ適合するための追加対策 (1)シビアアクシデント対策 新規制基準では、仮に複数の機器が同時に故障(例: 図 5 新規制基準の概要[3] ① 従来、事業者が自主的に実施してきたシビアアクシ デント(燃料損傷等、設計時の想定を超える過酷事 故)対策を規制要求化 全交流電源喪失や、冷却材の喪失と非常用炉心冷却系 の機能喪失の同時発生等)した場合でも、炉心の損傷 や格納容器の破損といったシビアアクシデントを回避 できることが求められた。 この要求を満足させるため、代替ポンプを追加で設 ② 設計想定の事故対策についても強化(地震・津波対 置し、原子炉への冷却水注入と格納容器へのスプレイ 策等)あるいは新たな項目を追加(竜巻・火山・内 が可能なようにした。併せて、代替ポンプを駆動する 特集 1:原子力発電所の再稼働を考える 7 ための代替電源(空冷式発電装置)と代替水源(海水 あるいは池等からの補給)も確保した。この他、水素 爆発対策として触媒式水素再結合装置の設置、最終 ヒートシンク喪失対策として大容量海水ポンプ車の配 備等、事故対応手段の多重性、多様性、柔軟性を拡 大しており、可搬型設備(ポンプやバッテリ)の配備 など、様々な安全性向上対策が適用された(図6) 。 (2)設計基準事故対策の強化 新規制基準では、地震や津波の想定手法が見直され、 従前を超えるレベルの地震動や津波高さが発電所毎に 設定された。これに伴い、配管・機器のサポートを増 強するなどの耐震性向上対策(図7)や、防潮堤や水 密扉などの津波防護施設が設置された。 図 7 耐震補強工事の例[5] また、竜巻などの自然現象に対する対策も新たに規 制要求として追加された。これに伴い、屋外に設置さ れる安全設備などを竜巻から防護するための対策(防 護ネットなど)が設置された。 (3)意図的な航空機衝突(テロ)に対する対策 新規制基準では、意図的な航空機衝突(テロ)への 対策として「特定重大事故等対処施設」の設置が要 その他、火災に対する対策の強化や、原子炉建屋の 求された。特定重大事故等対処施設とは、意図的な航 内部で発生する溢水事象(機器や配管が損傷し、内部 空機衝突などが発生した場合に、格納容器を防護する の水などが溢れることで安全設備が浸水し、その機能 ことを主目的とした設備であり、水源、電源、ポンプ、 が失われる事象)に対する対策などが強化された。 緊急時制御室等から構成され、原子炉建屋内に設置さ 図 6 原子力発電所の安全対策の概要[炉心損傷防止対策の例][4] 8 電 機 2016・February 日本のエネルギー事情と原子力発電所の新規制基準について れた安全設備に対する独立性が基本的に求められてい 原子力プラントメーカは、今後も引き続き、後続プラ ントの再起動と自主的な原子力発電所の更なる安全性向 る(図8) 。 本施設は、原発本体の工事計画認可を受けてから5 上に向け、不断に取り組んで参る所存である。 年以内に設置することが要求されており、現在、東京 電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所 1, 6, 7 号機、電 〈出 典〉 源開発株式会社大間原子力発電所、関西電力株式会 [1] 「原子力・エネルギー図面集 2003 年版」 社高浜発電所 3, 4 号機、九州電力株式会社川内原子力 財団法人 原子力文化振興財団を一部加工 発電所 1, 2 号機、四国電力株式会社伊方発電所 3 号機 [2]東海第二発電所および敦賀発電所における福島第 及び北海道電力株式会社泊発電所 3 号機が本施設の安 一・第二原子力発電所事故を踏まえた緊急安全対策 全審査を申請中である(2016 年 1 月時点) 。 に係る実施状況の報告について(日本原子力発電株 式会社殿ホームページより) 5.まとめ http://www.japc.co.jp/news/press/2011/pdf/ 230422.pdf 原子力プラントメーカでは、福島第一原発事故直後か [3]実用発電用原子炉に係る新規制基準について ら電気事業者と共に原子力発電所の安全性向上に取組ん -概要-(原子力規制委員会ホームページより) でおり、世界的に見ても厳しい水準にあると言われてい http://www.nsr.go.jp/data/000070101.pdf る日本の新規制基準を満足する安全対策を追加している。 [4]原子力発電所の安全対策の概要[炉心損傷防止対策 新規制基準策定後、国内で初めて2015 年 8 月14日に再 稼働(発電再開)を果たした九州電力株式会社川内原子 の例] (九州電力株式会社殿よりご提供) [5]耐震補強工事の例(四国電力株式会社殿ホーム 力発電所 1 号機は9 月10日に営業運転に入り、続く川内 ページより) 原子力発電所 2 号機も11 月17日に営業運転に入ることが http://www.yonden.co.jp/energy/atom/ikata/ 出来た。 page_08.html 図 8 特定重大事故等対処施設の概要[3] 特集 1:原子力発電所の再稼働を考える 9 原子力発電所の再稼働に向けた取組み(インタビュー記事) 〈1〉一般社団法人 原子力安全推進協会 (JANSI) からみた 九州電力株式会社川内原子力発電所の取組み 一般社団法人 日本電機工業会 「重大事故を二度と起こしたくない」 。 産業界の強い思いのもと、新たな規制基準を満たすだ します。そして②では、定期的に原子力発電所を訪問し て運営状況を観察し、 「気付き」を伝え、足りないところ けでなく、基準よりもさらに高い安全性を求めるため、原 を指摘して改善が進むよう支援を行います。 子力の安全を牽引する団体として生まれたのが一般社団 −その中で、中野さんはどのような業務に携わられてい 法人 原子力安全推進協会(JANSI)です。 るのですか。 せんだい JANSIの活動内容と川内原子力発電所再稼働までの取 国内外の原子力施設のトラブル情報を集めて分析し、 組みなどについて九州電力株式会社 OBであるJANSI 執 その中に国内の施設の改善につながるような教訓がない 行役員 情報分析部長の中野益宏さんにお聞きしました。 かを抽出して電力会社に伝えています。もちろん伝える 1.原子力産業界の「自主規制組織」 だけでなく、具体的な対策が実施されているかについて までフォローしています。 − JANSIとはどのような団体ですか。 JANSIは、福島第一原子力発電所事故の反省に立ち、 「二度とこのような事故を起こさない」という原子力産業 界の総意に基づいて2012 年に発足した自主規制・自主改 善組織です。原子力事業者からは独立した存在で、経験 豊富な原子力のエキスパートにより構成され、原子力施 設に対し強い権限を発揮して安全性向上を牽引する役割 を担っています。 JANSIの業務には、①安全性向上活動、②原子力施設 の評価と支援、の2つの大きな柱があります。まず①では、 再稼働第 1 号となった川内原子力発電所 また、 「NUCIA(国内の原子力施設におけるトラブル 各国の安全基準、安全性向上対策など国内外の最新情報 情報のデータベース) 」を運用・管理することも私たちの を収集し、国内の各電力会社の取組みと比較して足りな 業務です。NUCIAにはすべての原子力施設で起こった いところがあれば指摘し、追加対策を提言し改善を要求 トラブル事象とその原因、対策などの情報が集まります。 それを見て私たちは各社に同じ対策を講じてもらうよう 依頼をしたり、必要に応じてさらなる対策をお願いしたり、 改善されるまでの支援活動をしています。 2.全電力会社が協力し ひとつひとつ課題を克服 −日本の原子力発電所がすべてストップしていた中で、 鹿児島県の川内原子力発電所が最初に再稼働を果たしま インタビューの様子(右は JANSI 中野氏) 10 電 機 2016・February した。ここではどのような対策が行われ、JANSIではど 原子力発電所の再稼働に向けた取組み 張感を持って臨んでいましたので、全電力会社が協力し、 のような支援活動をされたのですか。 川内原子力発電所は、新たな規制基準に適合している かどうかの審査対象として、トップバッターに選ばれました。 各社からエキスパートを派遣するなどして準備を万全に してきました。 JANSIは電力会社、原子力施設の機器メーカーのエキ −川内原子力発電所の立ち上げは、企業の枠組みを超 スパートと協働グループを立ち上げ、福島第一の事故を えて多くの人たちが協力し、努力を積み重ねた結果なん 分析して「どのような対策を行えば事故は防げたか」 、 「事 ですね。 故の拡大を防止できたか」をまとめる作業を行いました。 それに応じて川内原子力発電所では施設の工事などを行 い、安全性向上のための対策を実施しました。 3.さらに分析力を高めて安全性向上に 力を発揮したい その間 JANSIは随時、発電所を訪問して状況を調査し、 足りないところがないかを確認し、気付きを指摘して、現 − JANSIのような第三者機関の活動は、原子力発電所 場の準備を支援してきました。また、国会、政府、民間、 の再稼働に対する国民の理解を得るうえでも不可欠だと 東京電力、海外など主要な事故調査報告書から得られた 思います。これからどのようなことに力を入れていきた 約 350の教訓を約 50にまとめて各電力会社に伝え、取組 いとお考えですか。 みを促すとともに進ちょく状況を調査しました。 私たちは電力会社を牽引する立場ですが、できたばか −中野さんも川内に行って支援をされていたそうですね。 りの組織ということもあり、まだまだ実力不足の面があり 事故後最初の立ち上げということで緊張やプレッシャー ます。電力会社との議論においては自主規制機関として も大きかったのではと思います。 毅然とした態度で臨み、一方、確かな分析力で信頼を得 そうですね。原子炉の起動前に改善するべきところが ていくことが必要です。そのため、さらに研鑽を重ねて自 きちんと改善されているかを確認するため私が駐在員と 身のレベルアップを図るとともに、関係機関との連携を強 して派遣されましたが、プレッシャーは並大抵ではあり 化して、原子力施設の安全性に対する分析力を高めてい ませんでした。産業界としても “第 1 号” ということで緊 きたいと思います。 国内事業者 プラントメーカー等 電力中央研究所・NRRC NRRC:原子力リスク研究センター INPO 米国原子力発電運転協会 電気事業連合会 WANO 世界原子力発電事業者協会 原子力産業協会 EPRI 米国電力研究所 資源エネルギー庁 NEI 原子力エネルギー協会 原子力規制委員会 NRC 米国原子力規制委員会 他産業 海外事業者 IAEA 国際原子力機関 国内外の関係機関との連携 日本のエネルギー問題を長期的な視点で考えてほしい 中野 益宏さん 資源の乏しい日本で、①エネルギーの安定的 めて使っていくことが必要だと考えています。 な確保、② CO 2 問題をはじめとする環境対策、 福島第一事故の反省に立って、JANSI を含め ③安価な電気の供給、という条件を満たすた 産業界は着実に原子力の安全性の向上を進め めには、代わりになるような革命的な発電シ ています。原子力を今後どうしていくか、長期 ステムが開発されるまでの “つなぎ” であるか 的な視点に立って考えていただければと思っ もしれないけれど、原子力発電の安全性を高 ています。 特集 1:原子力発電所の再稼働を考える 11 原子力発電所の再稼働に向けた取組み(インタビュー記事) 〈2〉三菱重工業株式会社 エネルギー・環境ドメイン プラントの設計から工事まで川内原子力発電所の再稼働に尽力 一般社団法人 日本電機工業会 三菱重工業株式会社は九州電力株式会社川内原子力 以上の対策が求められるため、経験していないことの連 発電所の再稼働にあたり、新規制基準に適合させるため 続だったのです。文章で書いてある新規制基準に対して、 の主要なプラント設備の設計、製造、設置を行いました。 具体的な設備はどうするのか、設計部門も含めた全員で 再稼働までの道のりについて横山知統さん、浦田惠子 考えました。全員がベストを尽くしていましたが、本当に さん、田中さや香さんの3 人にお聞きしました。 1.新規制基準に合わせて 安全対策工事を具体化する 原子力事業部 建設・保全技術部 軽水炉保全プロジェクトグループ 上席主任 横山 知統さん これで正しいのか、常に自問しながらの日々でした」と横 山さんは当時を振り返ります。 予定どおりに作業が進まないこともあったそうですが、 「不安に思うことはあっても、苦労とは感じていませんで した。工事をすると設備がよくなり、求められている安全 対策がしっかりできるようになるのです。この先の安全対 策もしっかりやっていきたい」と横山さんは意欲に満ちて います。 新規制基準に対応するための安全対策工事のなかで、 横山さんはお客さまである九州電力と三菱重工をつなぐ 2.現地のスピーディな仕事を支援する 遠隔会議システム とりまとめ役を、川内原子力発電所の現地で担っていま した。具体的には、電力会社からの要求事項をかみ砕い 原子力事業部 建設・保全技術部 管理課 上席主任 て、それを社内の設計部門や工事部門に伝え、工事の詳 浦田 惠子さん 細を決めていく仕事です。再稼働までの1 年 8カ月を現 地で過ごしました。 「新規制基準が施行されて初めての取組みだったので、 横山さんをはじめ現地で働く人たちが少しでも時間を お客さまも私たちも、すべてが手探りでした。原子力プラ 有効に使えるようにインフラ面からサポートするのが遠隔 ントを納めた経験はあっても、新規制基準ではこれまで 会議システムを担当する浦田さんの仕事です。ウェブカ メラを利用した会議システムや、携帯電話ひとつで参加 できる電話会議システムなどを配備し、川内、神戸、東 京といった遠隔地にいる人がいつでもコミュニケーション をとれるようにしました。使いやすい仕組みにするための 設備調査から、使用手順の作成、誰でも使えるようにす るための説明やサポートなどを行っています。 離れたところにいる人たちが一堂に会し、音声はもち ろん資料やデータも映像によって同時に共有できるので、 現地の横山さんも神戸との打ち合わせなどで頻繁に利用 敷地内の訓練センターにある実物大の原子炉上部の模型 12 電 機 2016・February したそうです。 原子力発電所の再稼働に向けた取組み 「できるだけ早く再稼働したいという気持ちが現地のみ んなにあり、何事にもスピーディに行動することを心がけ ていました。このためウェブ会議のような時間短縮につな がるシステムを整えてもらったことは本当に助かりました」 と横山さん。 浦田さんも、スピードを大事にしています。 「私に連絡 が入るときは、会議システムがうまく使えない、つながら ないなどのトラブルが起きた場合が多いので、とにかく素 早い対応が求められます。例えば配線が 1 本違っていて も映像が出ないというトラブルになるため、どこが違って 妥当であることを原子力規制庁に認めてもらい、結果を いるのかを一つ一つ確認し、できる限り早く円滑な業務 次の行程にバトンタッチします。次の行程のインプットに ができる状態にするよう努めています」 なるようなデータをつくっていくことが私の仕事です」 3.想定以上の災害にも安全に 原子炉を停止させるために 原子力事業部 機器設計部 炉内構造物設計課 田中 さや香さん 「川内原子力発電所の新規制基準への適合性審査にあ たっては、揺れが次第に大きくなるような状況でも制御 棒が確実に挿入されるかを評価する手法の妥当性を検証、 九州電力が原子力規制庁に説明し、返ってきた指摘事項 に対応する、ということを繰り返しました」 世界最高水準といわれる厳しい新規制基準に対し、 「認 めてもらう」ことの難しさを実感したという田中さん。 「資 料をつくるときも、読む人それぞれのニーズや背景を思い 田中さんは炉内構造物の設計を担当しています。原子 つつ、相手に伝わるように、相手のことを考えながら文書 力発電所は基本的に「止める」 「冷やす」 「閉じ込める」 を作成するようになりました。川内の対応で学んだことを という考え方で安全を確保するよう設計されますが、そ 生かして、これから申請するプラントもすべて審査が通る の中の「止める」の部分、大きな地震などの緊急時に制 よう取り組んでいきます」と田中さん。その経験から、相 御棒を素早く挿入して原子炉を停止する機能を解析して 手のことを考えることを重視するようになったといいます。 評価するのが田中さんの仕事です。 「設計担当ではありますが、設計図を引いてものをつく る設計ではありません。核の反応を止める制御棒が何秒 で入るのか、地震のときもきちんと規定時間内に入るのか という解析をしています。新規制基準によって想定され る地震への対策が見直されていますが、そのような状況 下でも制御棒がきちんと入るかどうか、その評価手法が 〈DATA〉 三菱重工業株式会社 エネルギー・環境ドメイン (原子力関連主要拠点) 所在地:兵庫県神戸市 原子力関連事業は1958年にスター ト。加圧水型原子炉(PWR)分野 で数々の実績がある。 「だめ」と決めつけないことが大切 田中 さや香さん 川内原子力発電所は、いろいろな人が多くの 私の仕事でも、もうだめだと思ったときに皆 努力を重ねて再稼働という一歩を踏み出しま で知恵を出し合った結果、「妥当」という結論 した。福島の事故で「原子力は終わった」と感 が出たこともあり、だめと決めつけないことが じた人は多いかもしれませんが、だめかもしれ 大切だと感じました。原子力業界に限らず、ど ないというような時でも、何かしら道はあるの んな分野の仕事でも壁や困難はあると思いま かなと思います。 すが、あきらめず頑張ってほしいと思います。 特集 1:原子力発電所の再稼働を考える 13 原子力発電所の再稼働に向けた取組み(インタビュー記事) 〈3〉日立 GE ニュークリア・エナジー株式会社 新規制基準に対応する原子炉まわりのシステム設計に取り組む 一般社団法人 日本電機工業会 日立 GE ニュークリア・エナジー株式会社では、原子 備の新設や、既存設備の強化のための設計を行っています。 力発電プラントの研究・開発から設計、製造、建設、保 新規制基準では、地震や津波などの自然災害によって 守まで幅広い業務を行っています。原子炉まわりのシス 通常の安全機能がいっせいに失われた状態になったとし テム設計を担当する串間有紀子さんに、現在取り組んで ても、原子炉格納容器の損傷を防ぎ、事故の進展を食い いる仕事についてお聞きしました。 止める対策が求められています。串間さんはそのための 1.高度な安全基準に応えるための新しい 設備設計に取り組む 原子力計画部 プラント計画グループ 技師 串間 有紀子さん 串間さんは原子炉建屋内に設置される原子炉まわりの 新たな設備の設計に取り組んでいます。例えば、放射性 物質の放出を最小にするフィルター付きのガス排出シス テム(フィルター・ベント)もその一つです。また、津波 が来ても建物に水が入らないようにする、あるいは万一、 水が入ったとしても機器をコントロールできるようにする といった既存設備の強化にも取り組んでいます。 2.安全は「人」がつくるものだから、 できることは徹底的に システム設計を担当している設計技師です。原子炉建屋 とは発電所の心臓部である原子炉を格納している建物で システム設計は原子力発電プラントの設計においてス す。建物内には原子炉のほか、水を循環させる装置、非 タート地点を担う仕事であるため「ここで間違いがない 常時に熱を取り除く装置など約 30のシステムが収まって よう、基準にも照らしながら、この設備はこれでいいのか、 います。串間さんの仕事はそれぞれのシステムについて、 何度も細かく確認しながら作業を進めます」と串間さん。 求められる性能や大きさ・数などを考え、原子炉まわり それでも途中で仕様を変更したり、設備を追加したりす のシステム全体の仕様を決めること。現在は中国電力島 る必要がでてきて、調整や対応に力を尽くしてきました。 根原子力発電所 2 号機について、新規制基準を満たす設 「最終的に現地に “モノ” が据えつけられるまでにはさ まざまな部署や、大勢の人の協力が必要です。みなさん の協力を得て次のステップへ仕事をつなげていくのは苦 労の連続ですが、安全のためにできることはとことんやら なければと思っています」 「打ち合わせや会議など、人に何かを伝えなければなら ないときは、なるべく直接会って対話することを大切にし ています。会って話したほうが、難しい話でも理解し合 えて決定も早いのではないかと思います」 気がつくと、打ち合わせや会議で 1日が終わっていた、 最新の改良型沸騰水型原子炉(ABWR)の仕組みを説明す る模型 14 電 機 2016・February ということも。さまざまな設備の設置を進めることで安全 対策に取り組んでいますが、それをつくるのも、運用する 原子力発電所の再稼働に向けた取組み のも「人」です。串間さんは部署内のチームワークや部 署を超えた連携、そしてお客さまである電力会社との信 頼関係を何より大切にしています。 3.1 日も早い運転再開を目指して 日々、万全を尽くしています resources infrastructure TRADE 電力の多くを火力発電に頼っている今、停止している BUSINESS GLOBAL WORLD STANDARD 原子力発電所の運転をできるだけ早く再開し、エネルギー ミックスをバランスのとれた状態に近づける必要がありま organization ELECTRIC POWER GNP 串間さんは「これからの審査こそが私たちの設計が問 す。そのためには、発電所の安全対策が新規制基準に適 われる正念場です。まだまだ緊張する日々が続きますが、 合しているかどうかの審査に合格しなければなりません。 再稼働に向けて一歩一歩、万全を尽くして頑張ります」 串間さんの担当する島根原子力発電所 2 号機について と意気込みを語りました。 resources は、今後、再稼働前にいくつかの審査があります。まず、 全審査があり、この後、安全のために設置した設備に問 題がないかの審査があります。これらに合格し認可を受 けると、現地に設置した後の検査(使用前検査)があり、 すべてに合格して、初めて再稼働に必要な規制上の手続 WORLD きが完了することになります。1日でも早く発電所を立ち 上げるため、串間さんたちは日々、時間とたたかいながら の作業を続けています。 infrastructure 〈DATA〉 0.000001 発電所の基本設計が基準に適合しているかを調べる安 日立 GE ニュークリア・エナジー 株式会社 所在地:茨城県日立市 日立製作所とアメリカのゼネラル・ エレクトリック社(GE 社)の合弁に GLOBAL よって設立された会社。主に沸 騰水型原子炉(BWR)に関連する 設計、製造や保守を行っている。 社会的責任をともなう仕事だからこそ、やりがいも感じられる 原子力発電所はまず安全が第一で、安全が 所の事故のあとは、その是非を含め社会から あってこその供給安定性、経済性、環境性だと 常に注目されており、社会的な責任をひしひ 思っています。現場で働く人たちが、その気持 しと感じながら日々仕事をしています。逆に、 ちを忘れたことはありません。 そのことがやりがいでもあります。将来、この 原子力発電所はたくさんの人々の暮らしを 串間 有紀子さん 支える大切な設備です。福島第一原子力発電 分野に関わる人が少しでも増えるといいなと 思っています。 特集 1:原子力発電所の再稼働を考える 15 原子力発電所の再稼働に向けた取組み(インタビュー記事) 〈4〉株式会社 東芝 電力システム社 放射線防護の分野で、原子力発電所で働く人の安全を守る 一般社団法人 日本電機工業会 株式会社 東芝の原子力安全システム設計部では、原 ちが、事故収束のための作業を安全にできることが必要 子力発電所の再稼働に向け、新規制基準に対応して原子 です。松下さんは「事故を収束させるため現場に残る人」 力発電所に導入される安全対策の基本設計を担っていま のための仕事であることを常に意識しながら仕事にあたっ す。 ています。 現場で働く人を放射線の被ばくから守るための「遮へ い設計」について、松下郁さんにお聞きました。 1.「事故を収束させるため 現場に残る人たち」を守る 原子力事業部 磯子エンジニアリングセンター 原子力安全システム設計部 松下 郁さん 松下さんはリスク評価、被ばく評価、放射線評価など を行うグループに所属し、放射線の遮へい設計を担当し 「新規制基準に対応する事故を収束させるための機器 がありますが、事故が起こったときは、これを操作する現 場の方がいることもあります。私たちは、実際に事故が起 こったら現場はどのような状態になるのか、放射性物質 がどこまで到達するのかを正しく想像し、評価しなけれ ばなりません。原子力発電所は大きなシステムですから、 その状態を自分ひとりで把握するのは困難です。そこで 社内の関連課や電力会社さんと検討を重ねて、正しく把 握したうえで評価の条件に反映するよう心がけています」 2.正しい評価のために 何度でもやり方を見直す ています。再稼働のための対応として、原子力発電所で の万一の事故を想定し、現場で働く人が放射線から防護 規制基準が見直されたことで、これまで設計の常識と され安全な環境で作業できるかどうかを、放射線の線量 されてきたこととは異なる考え方や手法も必要になりまし などを計算することにより評価しています。 た。松下さんたちは部門全体で培ってきた技術を最大限 新規制基準では、万一重大な事故が発生した場合でも、 に生かし、新規制基準を満たす遮へい設計に全力で取り 中央制御室や緊急時対策所の運転員や対策要員の人た 沸騰水型原子炉(BWR)炉心部の模型 16 電 機 2016・February 組んでいます。 改良型 BWR を 10 分の 1 で再現した模型 原子力発電所の再稼働に向けた取組み 社屋前に展示されている世界最大級の 52 インチタービン 「今まで積み上げてきた経験があっても、新しい基準を 面的な検討が求められるようになってきました。松下さん 満たすための評価となると、どのような結果になるのか想 たちはそれに対応していくとともに、規制基準を超えた安 像がつかないところもありました。評価方法を何度も見直 全性を求めて自主的な取組みを行っています。 し、関連部署の専門技術者も交えて納得がいくまで検討 「世界一といわれる厳しい規制基準に適合すると判断 を重ねています」と松下さん。深夜まで議論や作業が続 された場合でも、リスクがゼロになるわけではありません。 くことも、たびたびあったそうです。 残るリスクをできる限り減らすため、新しい知見や技術を 「福島第一原子力発電所の事故があってから『現場に 取り込んで、基準の範囲を超えた『自主的安全性向上』 人が行く』ということを忘れたことはなく、納得できるま と呼ばれる取組みを継続して行っていきます。福島第一 で評価方法や条件を見直すのは当たり前のことと思って 原子力発電所の事故での教訓を忘れずに、原子力発電所 います。自分の仕事が原子力発電所の安全に直結して の安全性、信頼性を高める開発に貢献していきたいと考 いると考えたとき、怖さがないといえばうそになりますが、 えています」 怖いからこそ正しい評価のために一つ一つ確認しながら 進めることが大切だと思います。また、そうすることで落 ち着いて仕事に取り組むことができますし、緊張感のあ る仕事だからこそ、評価が妥当であると判断されたときは 大きな達成感があります」 〈DATA〉 株式会社 東芝 電力システム社 磯子エンジニアリングセンター 所在地:神奈川県横浜市 3.リスクを可能な限り ゼロに近づけるために 再稼働のための適合審査では、審査が進むにつれて多 磯子エンジニアリングセンターは 東芝の原子力事業の中心となる施 設。 沸 騰 水 型 原 子 炉(BWR) と 加 圧 水 型 原 子 炉(PWR) と の 両 分野の技術を保有している。 くの議論がなされ、当初の新規制基準よりもさらに深く多 原子力の多様な情報を知って、必要性とリスクについて考えてほしい 松下 郁さん エネルギー資源のほとんどを輸入に頼って にも、電力会社や規制委員会のホームページで いる日本では、多様な資源を確保することは大 発電の仕組みから安全対策まで様々な情報が 切です。再生可能エネルギーへすぐに切り替え 公開されています。みなさんには、いろいろな るのは難しく、原子力発電は今後も重要な役割 情報から原子力発電を知っていただき、必要性 を担っていくと言われています。 やリスクについて考えてもらえたらと思いま 原子力発電についてはメディアの報道以外 す。 特集 1:原子力発電所の再稼働を考える 17 特集2 2015年 会員企業各社の 製品・技術開発とその成果 本誌では、毎年、過去 1 年間の会員(正会員)企業各社における一般社団法人 日本電機工業会 (JEMA)の取扱製品を対象とした製品・技術開発とその成果について、ご紹介しております。 2015 年につきましては、次のとおり、各社より稿が寄せられましたので、ご紹介いたします。 なお、当該製品、技術等につきましてのお問合わせ先は、会社名の右隣に部門名と電話番号を記 載してあります。 掲載社一覧 (五十音順) 愛知電機 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19 戸上電機製作所 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35 FDK ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20 西芝電機 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 36 音羽電機工業・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21 ニチコン ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37 勝亦電機製作所 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22 日東工業 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38 河村電器産業・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23 パナソニック・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 39 九電テクノシステムズ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24 日立工機 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 40 三社電機製作所 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25 日立パワーソリューションズ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 41 山洋電気 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26 富士電機 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 42 指月電機製作所 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27 富士電機機器制御 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 43 シャープ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28 マキタ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 44 正興電機製作所 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29 三菱電機 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 45 ダイヘン ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30 三菱電機システムサービス・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46 寺崎電気産業・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31 明電舎・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 47 東光高岳 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32 安川電機 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 48 東芝産業機器システム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 33 利昌工業 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 49 東芝ライフスタイル・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 34 リョービ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 50 18 電 機 2016・February 愛知電機株式会社 愛知電機株式会社 電力事業部 変圧器技術部 小形技術グループ 0568-35-1143 高度遠隔制御対応型高圧自動電圧調整器 1.まえがき 近年、太陽光発電に代表される再生可能エネルギーを 利用した分散型電源の配電系統への導入が進められてい る。それに伴う逆潮流の発生により、従来の高圧自動電 圧調整器(以下、従来型 SVR)では適切な電圧調整を 行うことができないという問題が生じていた。この問題 の互換性を保つ仕様とした。 また、制御装置と変圧器部、タップ切換器部との取り 合いを従来に合わせることで、従来型 SVR、逆潮対応 SVRから新逆潮対応 SVR への改造を制御装置の交換の みで可能にした。 ■主な仕様 線路容量 3000kVA、5000kVA 相 数 3 定格周波数 50/60Hz に対応するため、当社は逆潮流対応型高圧自動電圧調整 一次タップ電圧 器(以下、逆潮対応 SVR)を開発し、東北電力殿や四国 タップ点数 電力殿に2014 年度より納入している。逆潮対応 SVRは、 SVRの設置点の電圧、電流から変電所接続方向を判定し ている。ただし、実配電系統では難しい条件が発生する 7000、6900、6800、6700、6600、6500、 6400、6300、6200V 9 タップ、タップ幅:100V 定格二次電圧 6800 − 6600V 結 線 単巻星形結線 タップ切換器 真空バルブ式 ため、より確実に判定を行い、適切な電圧調整を行うた めに配電線自動化システムによる遠隔からの変電所接続 方向の設定や整定値の変更、タップ制御といった機能が 必要となってきている。 今回、これら遠隔からの設定、制御、計測、監視を可 能とした高度遠隔制御対応型高圧自動電圧調整器(以下、 新逆潮対応 SVR)を開発した。 2.特 長 2.1 遠隔制御機能の拡張 逆潮対応 SVRでは接点入出力による遠隔制御を行って いたが、これをシリアル通信方式に変更し、遠隔からの 新逆潮対応 SVR の外観 整定値変更等を可能とした。 2.2 操作性・視認性の向上 逆潮対応 SVRから操作パネルを変更し、操作性と視 認性を向上させた。 計測値、整定値の表示方法を逆潮対応 SVRの1 要素 表示から4 要素同時表示とし、入力方法を10キー方式と した。 2.3 互換性 SVRは変圧器部、タップ切換器部及び制御装置(制 御ユニットとその付属品)で構成される。今回の新逆潮 制御ユニット 操作・表示パネルの外観 対応 SVRの制御装置は、従来型 SVR、逆潮対応 SVRと 特集 2:2015 年 会員企業各社の製品・技術開発とその成果 19 FDK株式会社 システム電池事業部ビジネス推進部 053-575-2529 蓄電システム FPSS シリーズ (3)製品の回収・リサイクルが確立している (4)使用しているニッケル水素電池はUL2054 認証を取得 (5)-10℃環境でも動作するため低温の地域や場所にも設置 可能 東日本大震災を契機とした電力供給 事情の変化から、オフィス・工場などで 2.2 容易な設置性 「電気を創る、蓄える、賢く使う」時代 (1)机下に設置可能なコンパクトサイズ が到来している。これを受けてBCP・ 2.3 ユーザー利便性に配慮 防災用途でも蓄電池のニーズが高まっ (1)オフィスに置ける静粛性を実現。通常時の騒音 43dB(A) ており、定置用蓄電システム市場で大 (2)LCD 操作パネルを斜め前面に配置し、操作性・視認性 きな成長が見込まれる。 が良好 これらビジネス環境の変化に対応 (3)タイマー機能を搭載し電力ピークシフト機能を実現 すべく、富士通グループのFDK 株式 会社(以下、FDK)は電子部品・電 池の保有技術を融合した蓄電システ (4)出力コンセントを前面と後面に装備 図 1 蓄電システム FPSSシリーズ ムFPSS(FDK Power Storage System)シリーズ(図1)を 開発した。 本蓄電システムは商用電力と使用機器の間につなぎ、蓄電 システムのコンセントに接続することで停電時に自動で電力を 供給する。 1.開発方針 ユーザーの利用シーンを想定し、停電時には「非常用電 (5)富士通サーバで実績のある震度 7に耐える免震台足を装備 (6)寿命予測技術により電池の残り寿命が約 1 年になるとメッ セージを表示 3.導入事例 本蓄電システムは、発電機が使用できないオフィス環境 (テナントビルなど) (図2)の 非常用電源として多数導入頂 いている。 例を以下に示す。 源」として活用でき、通常時には電力ピークシフトに活用で (1)メーカー様:都市部営業 きる蓄電システムを目指した。製品はオフィスに設置できるよ 所の衛星電話回線の電源 う、安全・安心、静寂、可搬型、机下収納可能な高さとした。 として 蓄電容量は2.4kWh、1.6kWhの2 機種とした。 1.1 通常時 (1)接続機器に商用電力を供給すると共に、搭載電池への充 電を行う (2)タイマー機能を搭載し電力ピーク時間の電力消費を抑制 する 1.2 非常時 (1)自動的に切り替え、業務を継続できる電源を確保する (2)重要システムの無停電電源装置(UPS)に電力を供給し 構成装置の停止を延長する 2.製品の特長 2.1 環境負荷が少なく、安全・安心なニッケル水素 電池を採用 (2)証 券 会 社 様:停 電 時の 法定帳簿作成システムの 電源として (3)運送会社様:停電時の複 図 2 発電機が使えない場所 での非常用電源として 合機(FAX 含む)とサーバの電源として (4)私立小学校様:停電時の私学安全システムの電源として (5)開業医様:停電時のワクチン保冷庫の電源として 4.むすび FDKはニッケル水素電池の安全・安心な特長を活かし、 今後も環境に配慮した蓄電システムの開発・販売を進めていく。 本製品のお問い合わせ先 〒108-8212 東京都港区港南 1-6-41(品川クリスタルスクエア) (1)他電池系に比較し環境負荷物質が少ない TEL:03-5715-7420 (2)電解液が水溶液のため、製品が破損しても発火・発煙し http://www.fdk.co.jp/cyber-j/ups/pi_ups_main.html にくい 20 電 機 2016・February FDK 株式会社/音羽電機工業株式会社 音羽電機工業株式会社 営業本部 06-6429-9591 絶縁形雷プロテクタ LAN 用の開発 1.はじめに LAN回線側は、被保護機器(PC、ルータ)の直近に OLA-PT1000を取り付けるだけで雷対策が可能となる。 また、 電源側についても雷対策を行う必要がある。この 場合、 別途電源用SPD や耐雷トランスを使用し対策を行う。 近年、各家庭等ではPC、スマートフォンをはじめとし たデジタル家電の普及により、無線 LAN 等を使用した ホームネットワークが構築されるようになってきている。 一方、オフィス内のネットワークの基幹部は伝送速度、 図 1 LAN 回線 雷対策例 電波状況、セキュリティ対策等の観点から、有線 LANに て構築をされることが多い。 このような有線 LAN 配線は雷サージの侵入経路となり 4.製品仕様 うる。したがって、雷対策を行う上で、ネットワーク機器 品名:絶縁形雷プロテクタLAN 用 のLAN回線への対策も重要となる。 形式:OLA-PT1000 現在の雷対策方法としては、LAN 用SPD(当社対応機 種:OLA-1000POE)を用いた雷対策が主流となっている。 主な製品仕様を表 1に示す。また、本製品の外観を 図2に示す。 当社製品を含め、LAN 用のSPDは接地を取ることが 表 1 OLA-PT1000 仕様一覧 必要であるが、ネットワーク機器(PC、ルータ等)は非 接地であることが多い。このため市場より、接地を取らな くてもネットワーク機器を保護できるような雷対策品を求 められていた。 そこで今回、新しいタイプのLAN 用雷対策製品である、 絶縁形雷プロテクタLAN 用「OLA-PT1000」を開発した。 項 目 仕 様 対応通信環境 10BASE-T 100BASE-TX 1000BASE-T AC 耐電圧(一次~二次間) 5000V 2sec インパルス耐電圧(一次~二次間) 7000V(1.2/50μs) 挿入損失(1~100MHz) 1.5dB 以下 2.本製品の特長 従来のLAN 用SPDは、接地を取ることで LAN回線 に侵入した雷サージを接地側へ逃がす方式であったが、 OLA-PT1000は内蔵している高耐圧パルストランスによ り、OLA-PT1000の一次側と二次側を電気的に絶縁して いるため、雷サージが一次側に侵入した場合、雷サージ は一次側で遮断される。そのため、雷サージによる機器 の絶縁破壊を防ぐことができ、より確実に雷サージから 機器を保護することができる。 従来のSPDとは異なり、本製品は接地不要であり、 図 2 OLA-PT1000 5.おわりに 近年では、機器が小型化され、またネットワーク化さ LANケーブルに接続するだけで容易にLAN回線に侵入 れることにより雷サージの侵入経路が増加し、雷サージ する雷サージを防ぐことができる。 に対して脆弱になっている。LAN回線においても、サー 3.雷対策例 図1は、LAN回線に接続されるPC、ルータの雷対策 バ等重要な設備が接続されていることが多いため、雷対 策の重要性は高まっている。本製品の開発により、LAN 関連の雷対策の幅がさらに広がることを期待している。 例である。 特集 2:2015 年 会員企業各社の製品・技術開発とその成果 21 株式会社 勝亦電機製作所 東京工場 製造部 03-3443-1244 電力量計模擬負荷装置(特許取得) 2.製品の特長 ● 押し釦スイッチによる選択で、低圧のすべての電気方 式に対応できる。 1.製品開発の背景 電力量計は需要家が使用した電力量を課金する根拠と なる重要な計器である。近年では省エネルギーの検証の ため電力量計を増設するケースも多くなり、使用電力量 の正確な計量機能は、客先に提供しなくてはならない技 術の一つである。 ● 試験時間タイマーにより負荷通電時間を設定できる。 ● 本装置を使用することにより実負荷接続完了を待たず に、受電・送電後すぐに電力量計の動作試験ができる。 3.特許取得の内容など ● 特許証:特許第 5753459 号 電力量計の交換及び新設、増設の際に発生するトラブ ● 特許権者:三機工業株式会社殿および弊社の共同特許 ルが誤配線である。これは起こしてはならないトラブル ● 特許内容:電力量計用模擬負荷装置 の一つで、客先の信用失墜や未計量になった電気料金の 具体的な用途としては受変電設備で降圧され低圧 補償問題などに発展し、信頼回復や事態の収集に多大な (600V 以下)とされて供給された後、分岐回路を形成 時間と労力を要することになる。このような誤配線の状態 する低圧配電設備に接続されている電力量計の負荷試 で運用されることを防止するため、模擬負荷により計量 験において模擬負荷を与えるための電力量計用模擬負 機能が正しく動作していることを検証する装置が必要に 荷装置である。 なった。 図 1 電力量計用模擬負荷装置 図 2 電気方式選択用押し釦スイッチ 図 4 電源種別による結線例 22 電 機 2016・February 図 3 試験時間タイマー 株式会社 勝亦電機製作所/河村電器産業株式会社 河村電器産業株式会社 研究開発部 0561-86-8171 感震機能付住宅用分電盤 1.はじめに ある。その結果、縦揺れ、横揺れ、直下型にも対応する 地震検知の範囲拡大はもちろん、小型化による分電盤サ イズの縮小、施工性や安全性も向上したのである。 2.2 住環境にあった動作設定 南海トラフ地震や首都直下地震などの大規模地震が予 感震リレーは地震検知感度の設定や検知後の屋内電 見されている。近年の大地震では電気を起因とした火災 力供給遮断時間の設定が可能である。マンションの高層 が多くみられ、阪神・淡路大震災、東日本大震災では火 階と低層階、耐震対策の有無など、建物の揺れ幅の違 災のなかの60%以上が電気を火源としたものであったと いを考慮した設定が可能である。地震感知レベルの調整 の報告がある。また、阪神・淡路大震災では、これらの は「震度 5 強 / 震度 6 弱」の選択式(2 段階)となってい 火災の多くは地震が発生してから数時間から数日経過後 る。夜間避難時の照明確保や発火の恐れのある家電製品 に発生している。地震発生時は被災地域全体が停電とな への安全対策を考慮して、地震発生から主幹ブレーカを り、電力供給がストップするものの、その後の電力復旧 遮断するまでの時間を「即時 /1 分 /3 分」から選択(3 段 時においては避難した無人の建物に電力供給されること 階)できる。これにより住まいの広さ、家族構成など、住 に危険が潜んでいることを意味しているのである。地震 環境に合わせた備えも可能となる。 で家具、家電製品や物品が落下し散乱している状態や、 痛んだ配線類に通電されたことで発熱や短絡などを起こ 3.おわりに し火災に至ったと考えられる。内閣府のシミュレーション 地震による電気火災撲滅のため、住宅への感震ブレー によると、電気の出火防止策を行った場合、その被害は カの普及が国を挙げて提言されている。その中の社会貢 現状の約 1/2になると予測しており、減災をする上で電気 献として、災害時に家財を守る安心・安全機能の充実。 火災に対する初動は重要であると考えられている。こう すなわち、これからの住宅用分電盤のあるべきカタチを した電気を起因とした火災を防ぐために大規模地震発生 追求し続ける。 時には住宅用分電盤の主電源を切ることが推奨されるが、 ■感震リレーの仕様 避難の際の混乱の中では非常に困難である。これを防ぐ 手段として「感震ブレーカ」がある。これは住宅の電路 に設置し、一定以上の震度の地震を検知すると一定時間 後に電気を一括遮断することで、火災の発生を防止する ものである。 2.新型感震リレー 2.1 センサによる正確な地震検知 項 目 設置箇所の指定 サイズ 電源 相線式 震度設定 警報表示 警報動作 遮断までの時間 取付角度 外部出力接点 外部入力接点 初期設定 仕 様 カワムラ製住宅用分電盤(en ステーション) 分岐サイズ(幅 10mm) AC100V 50/60Hz 1φ3W 震度 5 強、震度 6 弱 LED・ブザー 主幹を擬似漏電で遮断 即時、1 分、3 分 前後左右 ±10°以内 警報出力接点(オープンコレクタ出力) リセット SW 入力接点(無電圧 a 接点) 震度 5 強、3 分 住宅用分電盤に搭載している感震リレーには新型のセ ンシング技術を採用している。地震検知において加速度 センサはコンパクトで 3 軸(上下、左右、前後)の検知 が可能である反面、震動を識別することが難しく、地震 による揺れなのか、そうでない振動なのかの区別が大き 外 観 な課題であった。気象庁が公表している「計測震度の算 出方法」に従った内部演算と、実際の地震波形データか らのプログラム構築により可能とした加速度センサ内蔵の 感震リレーは当社独自の技術によって開発されたもので 動 作 特集 2:2015 年 会員企業各社の製品・技術開発とその成果 23 九電テクノシステムズ株式会社 営業部ソリューション企画グループ 092-551-1776 B ルート対応 HEMS 機器 器のコントロール、1時間毎の電気使用量や電気の使い 過ぎをメールで通知するサービス、ネットワークカメラ (別売り)による簡易セキュリティの4つのサービスに対 スマートメーターで計測した電気使用量データを宅内 に配信する「B ルート」サービスについては、平成28 年 4 月よりサービス提供が本格化する。その「Bルート」サー 応している。 2.eneQube(エネキューブ) ビスに対応したHEMS 機器を紹介する。 1.サービスゲートウェイ エネキューブは、コンパクトなキューブ型の電源タップ である。スマートフォンやタブレットを使って、 エネキュー ブに接続した家電機器の電気使用量を確認することがで サービスゲートウェイの主な特長は、①スマートメー きる。スマホやタブレットに専用アプリをダウンロードす ターのB ルートから30 分ごとに配信される電気使用量を ることにより、最大 10 台までの家電機器の電気使用量を スマートフォンやタブレットなどの通信端末に表示する機 確認することができる。その他の特長としては、無線ルー 能、②エアコン・照明機器などのエコーネット・ライト規 ターへの接続を容易にするWPS 機能、エコーネット・ラ 格で標準化されたHEMS 重点 8 機器に対する監視・制御 イト規格認証によりHEMS 機器としてホームネットワー 機能、③ OSGiフレームワーク対応によりサービスの追加 クを構築できる。その他、前述のサービスゲートウェイ が容易になっている。 との組み合わせにより、接続された家電機器の使い過ぎ 具体的には、電気使用量や料金の比較といった電力見 える化、エアコンや照明などエコーネット・ライト対応機 サービスゲートウェイ外観 24 電 機 2016・February メールの配信や電気の使用状況監視による簡易的な見守 りサービスも可能である。 エネキューブ外観 九電テクノシステムズ株式会社/株式会社 三社電機製作所 株式会社 三社電機製作所 技術本部 06-6321-0323 系統連系パワーコンディショナ評価システム またこれまでは、大容量機器に対して「高調波、基本波に 重畳させた次数間高調波、低周波に対するイミニティ」を実 近年、再生可能エネルギーに不可欠な系統連系パワーコン 施できる装置はなく、小型の装置で試験対象をほとんど無負 ディショナ(PCS)が普及しているが、大型 PCSを直接評価す 荷状態などで試験するなど、メーカ毎に工夫して実施してき る系統模擬電源設備はなく、メーカ毎に工夫して実施してきた たのが現状であった。 のが現状であった。当社はこれまで 500kW 級の系統連系PCS 今回開発した装置は、EMC 試験規格の一つのIEC61000- 評価システムとして海外の国立研究所や国内の国立研究所に 4-13「高調波、基本波に重畳させた次数間高調波、低周波に 納入した実績があるが、さらなる大型対応の要望があり、今回 対するイミニティ」に対応した試験を可能とする高調波重畳 大型 PCSを直接評価可能な5MVAの系統模擬電源を開発し 装置である。 た。IEEE1547や国際 標 準 規 格 IEC61000-4-11,13に定めら 特長は以下の通りである。 れた電圧、周波数、位相急変や高調波重畳などの機能を有し (1)基本波 50/60Hzの40 次までの周波数を重畳できる直列 ている。開発した装置は単機装置容量が 1.67MVAである。こ 方式の高調波重畳電源装置であり次数間高調波にも対応 れを2 並列運転とすることで 3.3MVA、3 並列運転とすることで した。 5MVAの大容量化を可能とし、最大 3MW 級までの大型 PCS の評価試験が行える。なお、2 並列運転時には、残り1 台を別 の1MW 級 PCSに接続し、並行して評価可能な並列運転切替 の仕組みを有しているため、電源装置を有効活用できる。 5MVA/3.3MVA+1.67MVA/1.67MVA×3 台の構成切替えを 設定することで主幹の配電遮断器が自動的に切替り、それに 連動して制御機器も適合する仕組みを含む評価システムを実 (2)電力変換の損失低減を目的にフル SiCFET 素子を採用し た。 (3)2 台並列の本装置を3 組、自由に組合せて並列動作させ ることを可能にし、最大 6 台並列使用にて、3MVA 相当 の大容量機器に対するイミニティ試験に使用できるよう にした。 (4)IEC61000-4-13 Sweep in frequencies、Individual harmonics、Interharmonics、Meister curveに対応 現した。 従 来 の100kVA、300kVA、500kVAに 加 えて、835kVA、 これにより、国内規格対応はもちろんのこと、IEC 規格対応、 1.67MVA、3.3MVA、5MVAまで系統模擬電源の製品化が完 および UL 規格対応の単独運転防止試験用の模擬負荷装置も 了した。 商品化しており、系統連系パワーコンディショナの評価試験 また、太陽電池模擬電源は、従来の100kW 機、300kW 機 システムとして供給可能である。 に加え、550kW 機を追加し、必要な容量は並列運転台数にて 選択可能なシステム構成が可能となった。 5MVA システムの主な仕様 項 目 出力電圧 定格電流 定格容量 高圧系統 系統模擬 電源装置 低圧系統 名 称 出力電圧 定格電流 定格容量 周波数範囲 特 徴 太陽電池 模擬電源 装置 模擬負荷 装置 操作盤 計測盤 出力電圧 出力電流 特 徴 抵抗負荷 誘導性負荷 容量性負荷 操 作 系統側 負荷側 PCS 側 仕 様 AC0V ~ AC576V AC2500A ×3 台 1.67MVA ×3 台 AC386V 以下は容量低限 AC0V ~ AC7000V AC159A ×3 台 1.67MVA ×3 台 AC6060V 以下は容量低限 45 ~ 66Hz FRT、LVRT 対応 UL1741、IEEE1547 対応 DC0V ~ DC1000V DC0A ~ DC1500Ax6ch EN50530 対応 I-V カーブ内蔵 MPPT 効率測定対応 1MWX3 台(at AC380V、6kV) 1MVarX3 台(at AC380V、6kV) 1MVarX3 台(at AC380V、6kV) 運転 / 停止 / 系統切離 / 非常停止 電圧、電流、電力 電圧、電流、電力 電圧、電流、電力 全チャンネル波形記録可能 製品外観例(高調波重畳電源を含む系統模擬電源) FRT(3LS)の運転設定例 高調波重畳例 特集 2:2015 年 会員企業各社の製品・技術開発とその成果 25 山洋電気株式会社 大代表 03-5927-1020 小容量無停電電源装置 「SANUPS A11K」 1.はじめに 近年の情報通信技術の発展により、サーバやルータなどの ネットワークシステムに関する装置の信頼性、安定した運転 の維持管理が非常に重要となってきている。また、ネットワー クシステムの重要性が高まるにしたがって、停止した場合に たままでのモジュールの交換を実現。 2.5 小型化 従来品と比較して、最大-30%の小型化を実現。 2.6 機能性の向上 操作部に液晶表示パネルを実装し、ユーザの操作性、視 認性を向上。操作部をモジュール化することで設置状況に合 わせた操作部の実装を実現。 3.従来品との比較 社会へ与える影響もより大きくなってきており、これらへ電力 従来品では出力の負荷力率は0.7であったが、高効率化 を供給する無停電電源装置(以下、UPS)も同様に、高い信 により、負荷力率 0.8を実現し、出力容量を増加した。また、 頼性が求められている。 1kVA、1.5kVAでは、バックアップ時間が従来品の1.4 ~ 1.7 また、自然環境の保護、特に地球温暖化防止に対する 倍となっている。装置外形寸法も従来品の幅 440mmから CO 2 削減への関心の高まりを受けて、電源装置にはさらなる 435mmと小型化することで 19インチラックに搭載しやすい 高効率化が期待されている。 サイズとした。 これらの要求に応えるべく小容量 UPS「SANUPS A11K」 従来品との比較を表に示す。 を製品化した。 表 従来品との比較 出力 容量 1 kVA 図 SANUPS A11K102(1kVA)の外観 2.特 長 SANUPS A11Kは、高品位な電力を供給するため常時イ 1.5 kVA 2 kVA ンバータ給電方式を採用したUPSである。出力容量は1kVA、 1.5kVA、2kVA、3kVA、5kVAをラインアップした。以下に、 SANUPS A11Kの特長を示す。 3 kVA 2.1 高効率 主回路には常時インバータ給電方式を採用、回路部品の最 適化をおこなうと共に、制御電源回路の擬似共振化などによ り最大効率 92%以上を実現。 2.2 ワイドレンジ入力 入力電圧範囲は、負荷率 70%未満では許容範囲-40%~ +20%を実現。 2.3 耐環境性の向上 使用温度範囲は-10℃~ +55℃を実現。 2.4 保守性の向上 5 kVA 型 名 出力 電力 SANUPS A11K102 800W 従来品 (A11F102) 700W SANUPS A11K152 1,200W 従来品 1,050W (A11F152) SANUPS A11K202 1,600W 従来品 1,400W (A11F202) SANUPS A11K302 2,400W 従来品 2,100W (A11F302) SANUPS A11K502 4,000W 従来品 3,500W (ASC50S1) バックアップ 時間 13 分 (700W 時) 9分 (700W 時) 12 分 (1,050W 時) 7分 (1,050W 時) 10 分 (1,400W 時) 10 分 (1,400W 時) 10 分 (2,100W 時) 10 分 (2,100W 時) 10 分 (3,500W 時) 10 分 (3,500W 時) 寸 法 WxDxH(mm) 435×440×86 440×440×86 435×488×86 440×550×86 435×625×86 440×575×132 435×625×131 440×625×176 435×690×175 210×512×682 4.むすび 今後、情報通信技術はますます高度化し、社会的な重要 性の高まりとともに、さまざまな環境での利用が進むと考える。 これにともない、UPSに対する要求も多様化していく。 「SANUPS A11K」シリーズは、基本性能だけでなく、耐 インバータ部とバッテリ部をモジュール化し、保守性を向上。 環境性、保守性を向上させることで、これらの要求に応え、 全容量で保守バイパス回路を搭載し、電力の給電を継続し さまざまな用途に使用できる製品であると考えている。 26 電 機 2016・February 山洋電気株式会社/株式会社 指月電機製作所 株式会社 指月電機製作所 システム開発本部 電力機器開発部 0798-74-5821 瞬低補償装置 「ラック式 SAG-Backup」 2.3 省ランニングコスト 独自の回路技術により、商用給電効率 98%を実現した。 さらに、バッテリー、ファンを使用せず保守費を大幅に削 減。初期投資と保守費を合せたライフコストをUPS 比で 1.概 要 約 3 分の1を達成できた。 ラック式 SAG-Backupは、系統側電源が瞬時電圧低下 した場合に負荷へ交流電力を無停電で供給するための常 時商用給電方式の瞬時電圧低下補償装置である。今回、 URL:http://www.shizuki.co.jp/ 3.仕 様 小容量品のラック式単相 100V/200V品を開発したので紹 表 1 ラック式 SAG-Backup の仕様 介する。 型 式 ラック式 SAG-Backup 定格容量(V) 100 2 特 長 2.1 投資コストの削減 冷却方式 自然空冷式 蓄電方式 電解コンデンサ式 必要最小限に絞った効率的な瞬低対策が行えるように なり、投資コストの削減が可能となった。 2.2 省スペース 点数の削減を行い、小型化に成功。大幅な省スペース化 が可能となった。躯体体積はUPS 比で約 14 分の1を達 成できた。 5 3 5 常時商用給電式 相数・線数 単相 2 線 定格周波数(Hz) 50/60 定格負荷力率 0.8 遅れ 瞬低切換時間 無瞬断(JISC4411 クラス 2 準拠) 瞬低補償時間(秒) 0.2 秒(100%低下)~ 1 秒(30%低下) 効 率 98% 幅 (mm) 使用環境 的に見直した。さらに新たな回路方式の採用により部品 給電方式 外形寸法 装置内部の発熱解析を行い部品配置・冷却構造を全面 3 200 定格容量(kVA) 使用場所 482.6(19 インチ) 奥行(mm) 高さ(mm) 600 133 177 133 177 屋 内 周囲温度(℃) 0 ~ +40 周囲湿度(%) 30 ~ 90(結露しないこと) 注)効率は定格出力時 図 1 ラック式 SAG-Backup 図 2 ラック収納時(イメージ) 特集 2:2015 年 会員企業各社の製品・技術開発とその成果 27 シャープ株式会社 コンシューマーエレクトロニクスカンパニー 健康・環境システム事業本部 空調・PCI 事業部 第一商品企画部 06-6796-1037 蓄電池連携 DC ハイブリッドエアコン 3.商品の特長 1.はじめに 3.1 業界初の DC 電力のままエアコンへ直接給電 できるシステムの商品化 近年住宅においては高い省エネルギー性能が求められ、今 太陽光発電や夜間の安価な電力を蓄電池に蓄え(DC 電 後、急速に家庭に太陽光発電の普及拡大が見込まれる。家 力) 、その電力でエアコンを運転する場合、従来、給電過程 庭内で最も消費電力の大きいルームエアコンで、この太陽光 で複数回電力ロスが発生していたが、本製品はDC 電力のま 発電で創った電気との相性の良いDC 電力を、そのまま効率 ま直接給電することにより変換効率の5%アップを実現した。 よく利用できるエアコンの開発に取り組んだ。当社は、今回 開発したDC 電源をそのまま利用できるエアコン(DC ハイブ リッドエアコン)と、太陽光発電、蓄電池をソリューションと して提案し、クラウドHEMSによるエネルギー機器(太陽光 発電など)と省エネ家電機器との連携で、家庭内での最適な 電力の選択や機器のコントロールを行うことにより、より一層 効果を実感できる省エネの実現に貢献する。 2.商品の概要 図 2 蓄電池を起点とした給電経路の比較 従来のエアコンでは、AC 電力をエアコン内で DC 電力に 変換して運転を行っていた。また、蓄電池に蓄えられた電気 を使用して運転する際にはパワーコンディショナー等で DC 3.2 DC/AC 運転の自動切替を当社独自の HEMS との連携により実現 電力をAC 電力に変換してから給電する必要があった。供給 従 来は、AC 電 力のみだったが、本 製品の実 現のため されたAC 電力は再びエアコン内で DC 電力に変換されるた にAC 電力に加えDC 電力も制御できる当社独自の新たな め、何度もDC 電力とAC 電力の変換が行われ、変換ロスが HEMSを新規開発した。これにより太陽光発電の発電量と蓄 生じ、電気を効率よく使用することができなかった。本製品 電池の残量を管理し、自動で AC 電力とDC 電力を使い分け では蓄電池とエアコン室外機を直結してDC 電力を変換せず ることによる省エネと快適性の両立を実現した。 に直接給電することにより、エアコン内部やパワーコンディ ショナー等における変換ロスを抑えることができる。運転の 切り替えは家庭内のクラウドHEMSが売買電、時間帯、蓄電 3.3 運転状態を「本体表示」や「音声」で ユーザーへ知らせて省エネを「見える化」 池残量を管理してエアコンに指示する。このハイブリッドシス 省エネ運転の状態を本体表示だけでなく、音声 ※1 でも知ら テムを開発することにより、太陽光発電の発電量や蓄電池の せることにより、ユーザーに省エネを「見える化」し、省エネ 残量の有無にかかわらず、省エネを実現しながら安定的にエ アコンを使用できることを実現した。 を実感できるとともに省エネ意識を向上させる。 (※1 専用アプリ「ココロボ~ド」が必要。 ) 4.おわりに 2020 年に向け、家庭内の消費電力を全て自家発電(太陽 光発電等)でまかなうZEH※2 が推進されており、太陽光発電 システム、蓄電池市場の拡大が予測される。DC ハイブリッド エアコンはその中で DC 電力をより有効に活用し、そのメリッ トをユーザーがより実感しやすいシステムの省エネ家電機器 として商品化したものである。当社は、エネルギー機器と省 エネ家電機器とをソリューションで提案することにより、家庭内 エネルギー収支ゼロ化を普及させることを目指す。 図 1 本製品を組み込んだ全体概要図 28 電 機 2016・February (※2 ゼロ・エネルギー・ハウス) シャープ株式会社/株式会社 正興電機製作所 株式会社 正興電機製作所 総務部 (広報担当) 092-473-8892 M2M 無線式指針センサー 3.装置概要 3.1 装置使用 1.背 景 (無線一体型) 我が国のインフラ設備は、施工後数十年の年月が経ち 老朽化を迎えている。 これらのインフラ設備を維持・運営するためには日々 の点検・管理業務が欠かせないが、管理する企業におい ては、高齢化・少子化の波を受け技術員の不足が急速に 進んでいる。この様な世襲の中で、点検に要する時間と 労力をいかに効率よく運営していくかが管理会社の命題 となっている。 この様な背景の中、当社では小型カメラと無線技術を 使用し、点検で記録・管理を行っている指針メータの値 を読み取る「無線式指針センサー」を開発し、点検に掛 かるコストの低減を可能にした。 2.特 長 (1)指針の一部画像より角度解析が可能な新たなソフトウ 項 目 詳 細 カメラレンズ 広角レンズ 寸 法 Φ34mm×H53mm 被写体距離 50mm 以上 無線規格 920MHz 独自規格 使用電源 コイン電池 CR2450×2 個 電池寿命 24 ケ月(1 回/日 撮影) (無線分離型) 項 目 詳 細 カメラレンズ 魚眼レンズ 寸法(カメラ部) Φ23mm×H24mm (無線部) W40×L130×H25mm 被写体距離 10mm 以上 無線規格 920MHz 独自規格 使用電源 単三型乾電池 2 本 電池寿命 30 ケ月(1 回/日 撮影) エア解析技術を採用したことで、パネル面に直接装置 を取り付けた場合でも、目盛の視覚化可能な小型の 装置形状となり、施工面において容易に設置が可能。 (2)待機無線方式により、センターからの撮影指示があ 3.2 撮影方法 カメラの撮影は監視システムのソフトウエアより定時・ 瞬時を可能とする。 る場合のみカメラ部を通電させるため、装置の省電 定時撮影の時間変更は変更後の撮影タイミング以降 力化を実現。 に更新される。 (3)通常時の消費電力が少ないため、バッテリーでの長 時間駆動を実現。 3.3 データ表示 (4)無線通信のため、ケーブル工事が不要。 解析した指針の値は専用の監視ソフトにて表示可能。 複数のカメラを無線子機に接続可能なため設置費用 指針値の表示の他に閾値監視や帳票出力なども対応 を軽減。 可能。 一体型 取り付け施工例 分離型 監視画面 特集 2:2015 年 会員企業各社の製品・技術開発とその成果 29 株式会社 ダイヘン FA ロボット事業部 企画部 078-275-2008 極低スパッタ溶接が可能な「シンクロフィード GMA 溶接ロボットパッケージ」の開発 同製品では、板厚 1mm 以下の薄板が使われるドアサッ シやシート部品から、自動車の足回り部品やフレームな ど十分な溶け込みが必要となる同 4.5mm 以下の鋼板まで、 スパッタを極限まで抑えることができる(図3) 。 従来、溶接業界では、溶接に起因する不良につながる 同様に、板厚 1mm 未満の薄板溶接の際も、溶接ワイ 溶接中に飛散する溶融金属(以下、スパッタ)をいかに ヤ送給制御システムにより、溶接ワイヤを1 秒間に100回 抑えるかに焦点をあて、技術開発されてきた。スパッタは、 程度出し入れが可能となった。1.2mm 径のワイヤでも溶 母材に付着し溶接箇所(ビード)の外観を損ねるだけで 落ちのない低入熱溶接を実現。自動車業界を中心とした なく、塗装やメッキなどの表面処理にも悪影響を及ぼす。 高品質・高速溶接のニーズに十分マッチした製品になっ そのため、スパッタ除去作業が不可欠となり、生産性向 たと自負している。 上の妨げになる。さらに、スパッタが溶接機先端部のノ 当社では、溶接ロボットでのステンレスや亜鉛メッキ ズルに付着することで、溶接部への酸素や窒素の混入を 鋼板、アルミ材の溶接における適応範囲を自動車部品、 防ぐシールドガスの流れが悪くなり、溶接欠陥の原因に 住建材業界にも拡大すべく、技術開発を進めている。 もなる。 とくに、溶接の自動化が最も進んでいる自動車業界 では、溶接不良は商品の機能障害などリコール問題に も直結するため、低スパッタへのニーズが高まっている。 2000 年代前半以降、燃費性能や環境配慮、衝突安全性 能の向上を目的に、軽量化と車体強度が求められ、それ 図 1 従来工法の溶接 らの課題を克服する手段として、高張力鋼板(ハイテン) 素材を含め母材の薄板化が加速していることに加えて、 毎分 2メートルの高速溶接が求められている。つまり、究 極の「高品質溶接」と「高速溶接」の両立が求められて おり、溶接ニーズは低スパッタからスパッタが発生しない 図 2 シンクロフィード GMA 溶接の極低スパッタ溶接 「ノンスパッタ」へと高度化している。 一方で従来の電流波形制御だけではスパッタ発生量 の低減に限界があり、溶接電流の適応範囲も100 ~ 200 アンペアの狭い領域内に限られるという課題が発生する (図1) 。 ダイヘンはこれまでの電流波形制御に、新開発した溶 接ワイヤ送給制御を組み合わせる溶接ロボットパッケー ジ「シンクロフィードGMA 溶接ロボットパッケージ」を 開発。炭酸ガスで同社従来機比 2 倍以上の高速溶接で もスパッタを極限まで抑えることができるのが特長だ (図2) 。同製品では、新開発のAC サーボワイヤ送給シス テム(BP 制御)とデジタルインバータ溶接機「Welbee」 による高速電流波形制御(PDT 制御)を同期させること で、スパッタの大幅低減、溶着量の均一化、溶込み深さ の確保を実現している。 30 電 機 2016・February 図 3 極低スパッタで高速溶接を実現する「シンクロフ ィード GMA 溶 接ロボットパッケージ 」( 速 度 150cm/min、溶接電流 300A、板厚 2.3mm) 株式会社 ダイヘン/寺崎電気産業株式会社 寺崎電気産業株式会社 1.システム事業 海洋技術部 06-6692-1243 2.機器事業 技術部 06-6791-9324 1.新型舶用始動器盤 GS50 の開発 1.1 概 要 各種電動機を搭載したポンプ、ファンなどの補機は船舶の運航に 必要不可欠で、それらの始動・停止、制御・監視並びに保護を行 2.気中遮断器用 電子式高機能過電流 引外し装置の開発 2.1 概 要 遮断器の目的は、通常時の電路の開閉と事故に対する保護機能 うものが始動器であり、制御室などに効率よく配置しグループ化し を有することである。近年、この保護機能に加え、計測機能やメン たものを集合始動器盤と呼ぶ。 テナンス情報(状態表示・事故履歴)など付加価値を備えた高機 近年、船舶では多くの積み荷を搭載するため機関室並びに制御 室の小型化への要求が増えており、新型舶用始動器盤 GS50は基 能過電流引外し装置付き遮断器の要求が高くなってきた。 この要求の目的は、通信機能により遮断器の持つ全ての情報を 本ユニットを従来の幅 500mmから350mmとして開発され、当社 上位監視装置が吸い上げ、遠隔集中監視(制御・計測)すること 既存製品より約 10%(体積比)の小型化を実現した。また始動器 である。今回の開発では、主幹用として使用される気中遮断器の 内の複雑なシステム配線を容易にするため、各モジュール間をハー 保護機能(電圧・周波数保護追加など)の充実を、計測機能につ ネス化することでメンテナンスの容易性と区画化を進め、構造面で いても計測装置の計測項目やその範囲、精度に関する指針である の更なる安全性向上に努めた。さらに通常の船級要求の試験に加え IEC61557-12に準拠することを目指した。上記実施により、配電制 IEC61439-1に準拠した各種試験を実施し、顧客の製品への信頼性 御システムにおける高度化する要求機能を満足する過電流保護装 向上を図った。 置のバージョンアップ品を開発した。 1.2 製品特長 2.2 製品特長 新型舶用始動器盤 GS50は “省スペース” “安全性向上” “保守・ 作業性向上” を目的として開発され、主に以下の特長を有する。 (1)省スペース −ユニット幅寸法を350mmに− 本製品の特長を以下に述べる。 (1)発電機保護用に電圧・周波数保護機能を追加した。 (2)計測機能に対して高性能化を実現した。 (無効・皮相電力計測、 高調波計測など) (2)MCCB操作方式の選択 −直操式と外操式の選択が可能− (3)保護機能に対して、きめ細かな設定(ファインチューニング)を (3)外線ケーブルの接続作業性向上 (4)安全性向上 −アクシデンタルタッチ防止用カバーの装備− 可能にするなどの機能を追加し、顧客からの種々の要求設定値に (5)MCCB接続方式を配電盤と共通化 −予備品・交換作業の共 対応可能とした。 (4)既存品とは外形、取付や配線方法などに互換性を持たせた。 通化− (6)制御回路のシンプル化 −シンプルな回路構成としたプリント基 板を新開発− (5)メンテナンス性を向上させた。 (事故履歴トリップ/アラーム各10ケ) (7)ユニット内配線のハーネス化 −メンテナンス作業の容易化に対 応− 2.3 製品仕様 (8)IEC61439に準拠した各種試験をクリア 本製品の製品仕様を表 2にまとめる。 1.3 仕様一覧 表 2 新旧機能比較 本製品の基本仕様を以下表 1にまとめる。 項 目 表 1 GS50 仕様一覧 440V AC 制御電圧 24VDC、220VAC、110VAC 定格周波数 50/60Hz 主回路短絡電流 ~ 80kA 構 造 計 測 定 格 定格電圧 GS50F 350mm、 横 幅 奥行き GS50A GS50F GS50A GS50B 高 さ 保護等級 MCCB 操作 ケーブル導入口 適用モータ容量 ユニットサイズ 1,050mm 400mm 375mm 750mm 2,000mm、 保護/警報 外形寸法 GS50B 700mm、 2,100mm、 2,200mm、 2,300mm IP22(オプション:IP44) 直操式(オプション:外装ハンドル) 底 部 (オプション:上部、背面上部、側面) ~ 180kW 250mm ~ 1,600mm 図 1 新型舶用始動器盤 GS50 メンテ ナンス 電流(現在値・最大値) 電圧(現在値・最大値) 力率 有効電力(現在値・デマンド値)、 無効電力(現在値・デマンド値) 皮相電力(現在値・デマンド値) 有効電力量 無効電力量 皮相電力量 周波数 各相電流 THD 各相各奇数次数高調波電流 長限時・N 相保護 短限時保護 瞬時保護 プレトリップアラーム 地絡/漏電 逆電力 接点温度監視 欠相・反相保護 不足電圧警報 過電圧警報 不足/過 周波数 各設定値 ファインチューニング 引外し履歴 警報履歴 既存品 ● ● ● − − ● − − ● − − ● ● ● ● ● ● ● ● ● − − − ● バージョン アップ品 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● (1 個) (MAX10 個) ● ● (1 個) (MAX10 個) 図 2 LCD 表示式高機能 OCR AGR-31B 形 ●:対応機能 特集 2:2015 年 会員企業各社の製品・技術開発とその成果 31 株式会社 東光高岳 技術開発本部 技術企画部 03-6371-5028 1.環境配慮型変圧器 2.高速車両搭載モールド形変流器 近年、トップランナー変圧器に代表される、省エネ、 従来、各仕様によって形状・サイズが不統一であった 地球環境保護を目的とした機器の普及が進んでいる。変 車両搭載用の変流器をシリーズ化し、コンパクトかつ軽 圧器においては、従来の鉱油に替わる液体絶縁媒体とし 量化を実現したモールド変流器を開発した。 (図2、表 2) て生分解性に優れたエステル系絶縁油を適用した変圧器 主な特長を以下に挙げる。 の開発が進められており、今回、パームヤシ脂肪酸エス (1)車両搭載用として、振動や衝撃に対する機械的性能 テルの絶縁油を用いると共に、トップランナー基準を満 と変流器としての電気的性能を有するエポキシ樹脂 足した環境負荷を低減した環境配慮型変圧器を開発した。 を適用した。 (図1、表 1) (2)モールド成型技術により、二次端子箱部分をモール 主な特長を以下に挙げる。 ド一体形状として構造を簡素化、小型軽量化し、運 (1)環境性能向上:カーボンニュートラル効果により、 地球温暖化の防止に寄与する。 (2)土壌汚染防止:震災などで土壌へ漏油した場合も、 搬、据付作業などの取扱いを容易にした。 (3)200A、350A品と3,000A品で用途別に2 種類あった 形状を同一形状(金型共用)に統一したことで、変 土中・環境中の微生物により分解されるため土壌へ 流器の配置(スペース)設計や取扱い方法を共有化 の影響が低減できる。 した。 (3)性能向上:従来の絶縁油に比べ低粘度・高誘電率で あるため、冷却性能や絶縁耐力の向上が期待できる。 図 1 外観 図 2 外観 表 1 主な仕様(容量 75kVA の例) 表 2 主な仕様 CTR-0200 CTR-0350 CTR-3000 50/60Hz 定格一次電流 200A 350A 3000A 定格容量 75kVA 定格二次電流 5A 5A 5A 定格電圧 6,600V-210/105V 定格負担 25VA 25VA 40VA 冷却方式 油入自冷式 確度階級 3.0 3.0 1P 過電流定数 - - n > 10 定格周波数 50/60Hz 50/60Hz 50/60Hz 過電流強度 40 倍 40 倍 40 倍 相 数 形 式 単 相 周波数 結 線 単三結線 寸 法 全長 595× 幅 495× 高さ 915mm 総質量 320kg 総油量 78L 32 電 機 2016・February 適用規格 質量 JIS C 1731-1 JIS C 1731-1 12kg 12kg JEC-1201 10kg 株式会社 東光高岳/東芝産業機器システム株式会社 東芝産業機器システム株式会社 配電機器事業部 059-376-6081 スーパー高効率菜種油入変圧器 1.はじめに 地球温暖化防止と地球環境への配慮を望む要求は年々 3.鉱油との比較 項目 :菜種油絶縁 鉱油絶縁 絶縁・冷却媒体 :菜種油 鉱油 環境抑制物質 :◎ ○ 高まってきており、省エネルギーだけでなく、併せて環 環境抑制物質 :不含 不含 境負荷を低減する要求が強くなってきている。東芝産業 CO 2 排出量 :少ない 多い 機器システム株式会社では、鉱油に代え天然エステル材 絶縁油の生分解性:有り 無し 料である「菜種油」を使用した菜種油入変圧器を2005 引火点 :334℃ 152℃ 年より製品化した。この度、省エネ法の第二次判断基準 絶縁性 :◎ ◎ (トップランナー変圧器 2014)に適合したスーパー高効 冷却性 :◎ ◎ 率菜種油入変圧器を開発したので以下に紹介する。 2.スーパー高効率菜種油入変圧器 4.仕様及び製作範囲 機種 :菜種油入自冷式、屋外用(屋内兼用) 菜種油入変圧器は、絶縁油に菜種油を採用した変圧器 定格周波数 :50Hzまたは60Hz である。菜種油は、植物である菜の花の種を搾って生成 温度上昇限度:巻線 65K、油60K した天然原料であり、植物の段階で大気からCO 2 を吸収 適用規格 している。このため、変圧器の製造および廃却時にCO 2 定格一次電圧:6.6kVまたは3.3kV を放出してもトータル的には大気のCO 2 量を増加させな 定格容量 いカーボンニュートラル材料である。従って、鉱油を使 用した変圧器に対し、地球温暖化を抑制することができ る。また、菜種油は、天然素材であるため、万一溢れて も容易に分解される生分解性があり、急性毒性がないの で環境汚染が殆どなく、環境に配慮した製品である。さ らに従来の鉱油に比べ引火点が高く防災面で優れている。 配電用高圧変圧器は、省エネ法による第二次判断基準 (トップランナー変圧器 2014)が規格化(JIS C 4304: 2013、JEM 1500:2014)され、エネルギー消費効率 が基準化されている。今回の菜種油入変圧器は、更なる :JIS C 4304:2013、JEM 1500:2014 :単相:150 ~ 500kVA、 三相:75 ~ 1000kVA 5.東芝配電用油入変圧器トップランナー 2014 との互換性 JIS 適合品においては、据付面積が若干大きくなるが、 JEM 適合品は、同一である。質量は増加となるが、固定 用穴ピッチ及び端子取合い高さを同一とし、互換性を考 慮した。 代表特性:三相 300kVA 50Hz 6600/210V(YΔ) 環境負荷低減に鑑み、使用材料の見直し等によりエネル ギー消費効率を基準値の85%程度に抑えた低損失を実現 した「スーパー高効率」タイプとした。 特集 2:2015 年 会員企業各社の製品・技術開発とその成果 33 東芝ライフスタイル株式会社 HA 第二事業部 技術部 0561-86-8962 「Big マジックドラム」ドラム式洗濯乾燥機 TW-117X3 の開発 1.背 景 する「自動おそうじ機能」 、乾燥風路に付着するリントを落 とし、乾燥効率の低下を抑える「乾燥ダクト自動お手入れ」 や、洗濯槽内での衣類の取り忘れなどを予防する「槽内LED 照明」 、当社独自の「振動吸収クッション」と「アクティブ S-DDモーター」 、低騒音ボディによる運転音を抑えた低振動 洗濯においては、清潔志向、共働き世帯の増加に加え、節 設計などで使い勝手についても配慮を行っている。 水節電効果を期待したまとめ洗いが増えており、これに伴い、 大容量化、高い洗浄力が重視されている。また、ドラム式洗 濯乾燥機への買い替え時の不満点として、 「乾燥時間が長い」 、 「脱水時の振動が大きい」が挙げられる。こうした背景を踏ま え、設置場所の寸法に配慮した洗濯・乾燥容量増加、洗浄性 能、清潔さの向上、乾燥時間の短縮、低騒音・低振動設計を 目指したドラム式洗濯乾燥機を開発した。 2.コンパクト大容量の実現 洗濯容量 11kg、業界最大注 1 の乾燥容量 7kgの大容量で、 限られたスペースに置ける本体幅 60cmのスリムボディとした。 これらの実現のため、洗濯槽は、直径を従来比で約 2cm、容 積で約 21%拡大注 2 注 3 し大型化した。大型化したステンレス 洗濯槽は、汚れ付着防止加工により外側に黒カビの原因とな る汚れが付かない注 4「Bigマジックドラム」 。また、洗濯・脱 水時の振動を抑える「振動吸収クッション」に横揺れを抑え る「高減衰ゴム」を新採用することで、水槽の振動をさらに 抑え、本体幅を従来比で約 1cm 小さく注 5 した。 3.洗浄・乾燥の改善 洗浄については、大型化した洗濯槽によるたたき洗いの効 果と、約 44%流量を増した Ag+イオンを含む濃縮洗剤液の 注6 シャワー( 「Ag+抗菌 注 7 ダイナミックシャワー」 )により、しつ こい汚れをしっかり洗うことができる。また、新搭載の温水 洗浄専用ヒーターにより、洗剤の酵素が活性化する約 40℃の 温水つけおき洗いの効果で、落ちにくかった黄ばみ汚れをしっ かり落とす。乾燥は、大きな洗濯槽の中での衣類の広がりや すさと、大型乾燥ファンの採用で風量を従来比で約 31%増 (注 1 2015 年 10 月 19 日現在、国内ドラム式洗濯乾燥機において) (注 2 ス テ ン レ ス 洗 濯 槽 直 径 の 比 較 当 社 従 来 機 種 2014 年 発 売 TWZ96X2ML/R 約 52cm と TW-117X3L/R 約 54cm との比較) (注 3 洗濯槽容積の比較、当社従来機種 2014 年発売 TW-Z96X2ML/R 約 68L と TW-117X3L/R 約 82L との比較) (注 4「防汚コート」による汚れ落ちについて。当社調べ。 試験方法/防 汚コートを施した洗濯槽に擬似汚れを付着させた衣類にて、洗濯運 転を実施 対象部分/洗濯槽のステンレス円筒部の外側 試験結果/塗 布部の汚れ落ちを確認) (注 5 本 体幅の比較 当社 従 来 機 種 2014 年 発売 TW-Z96X2ML/R 61cm と TW-117X3L/R 60cm との比較) (注 6 洗濯時シャワー流量の比較 当社従来機種 2014 年発売 TW-Z96X2ML/R 約 16L/ 分と TW-117X3L/R 約 23L/ 分との比較) (注 7 抗菌について 試験方法/ JIS L1902 に基づく菌液吸収法、当社にて処 理した試験布を一般財団法人 ボーケン品質評価機構にて評価 抗菌方 法/銀イオンによる 対象部分/洗濯槽内の衣類 試験結果/菌の減少 率 99%以上) 量注 8 した効果により、シワを抑えてふんわり仕上げることが (注 8 乾燥風量〔お急ぎモード時〕の比較 当社従来機種 2014 年発売 TW‐ Z96X2ML/R 約 3.5m3/ 分と TW-117X3L/R 約 4.6m3/ 分との比較) できる。さらに、熱交換器の表面積を約 20%アップさせ、 「乾 (注 9 衣類の状況と使用環境により運転時間は増減する) 燥お急ぎモード(6kg 洗濯・乾燥) 」では、洗濯から乾燥まで 約 95 分のスピード仕上げ 注 9 が可能となった。 4.清潔さ・使い勝手への配慮 銀イオンの成分を含んだ Ag+抗菌水注 10 での洗濯による衣 類の抗菌 注 7・防臭、外槽の内側を自動で洗い流して除菌 注 11 34 電 機 2016・February (注10 抗菌水とは、洗濯時の水に Ag+〔銀イオン〕抗菌水ユニットから Ag+ 抗 菌成分が溶け出したもの) (注11 除菌について 試験依頼先/一般財団法人 日本食品分析センター 試験方 法/洗濯槽・水槽に有機物とともに付着させた菌の減少率測定 除菌方 法/脱水時に「Ag イオン含有水〔または抗菌水〕 」のシャワーをかける ことによる 対象部分/洗濯槽・水槽 試験結果/菌の減少率 99%以上) 東芝ライフスタイル株式会社/株式会社 戸上電機製作所 株式会社 戸上電機製作所 営業本部 営業企画グループ 0952-25-4125 遮断機能付地絡トリップ形 高圧ガス負荷開閉器 GBT 形 1.概 要 高圧交流負荷開閉器であるSOG開閉器の特性として、需 要家構内において過電流(短絡)事故発生時には、いったん 電力会社の変電所遮断器の動作後、開放する。これは波及 事故ではないものの、配電線が一度停電する。 SOG開閉器に短絡遮断機能があれば、電力会社の変電所 遮断器を動作させることなく、需要家構内を切り離すことが 可能となる。 本製品は、地絡事故、過負荷、短絡事故のすべてを検出し、 事故点を切り離すので、電力供給安定度のさらなる向上を図 3.定格および仕様 方向性 形 名 消弧性能および絶縁性能が抜群に優れているSF 6 ガス(不 燃性ガス)を消弧媒体とし、独自の消弧方式により高遮断能 力を持ち、小形・軽量化を実現。 (2)優れた安全性 ① ケースは耐久性および耐候性に優れているステンレス材 を使用。 ② 当社独自の消弧構造(マグネブラスト+圧力消弧方式) により安定した遮断性能を有する。 (3)耐雷構造 SF 6 ガスの高絶縁性能により耐雷性能の向上と、電源、負 荷の格差絶縁協調(負荷側先行閃路)を図る。 (4)放圧構造 雷撃などにより万一開閉器内部で短絡しても、放圧装置の - 定格周波数 50/60Hz 定格耐電圧 60kV 定格電流 200A 300A 400A 定格短時間耐電流(1 秒間) 8kA 12.5kA 定格短絡投入電流(注 1) C20kA C31.5kA 定格遮断容量 100MVA 160MVA 定格遮断電流 (注 1) C8kA C12.5kA 定格遮断時間 0.05 秒(50mS) 引外し方式 コンデンサ引外し方式 開閉性能 負荷電流 200A-200回 300A-200回 400A-200回 励磁電流 10A-1000回 15A-1000回 20A-1000回 充電電流 10A-1000 回 連続無電圧 1000 回 地絡検出方式 地絡電流:ZCT(開閉器内部主接点の電源側に装備) 地絡電圧:ZPD(開閉器内部主接点の負荷側に装備) ※ZPD は方向性のみ 過電流検出方式 CT(開閉器内部主接点の負荷側に装備) 耐塩じん汚損性能 0.35mg/cm2(耐重塩じん用) 封入ガス圧 ガス圧力低下表示・ ロック装置動作範囲 制御回路 口出線 ③ 操作機構はハンドル操作力に影響されない完全トグル蓄 力機構により「入」 「切」操作が確実。 - 7.2kV 2.特 長 (1)小形・軽量を実現 GBT-B-N11 定格電圧 ることが可能となり、これからの開閉器として有効な機種で ある。 GBT-B-D2N11 無方向性 (at20℃) 0.014~0.02MPa・G 0.1MPa・G(at20℃) 0.05 ~ 0.055MPa・G 方向性 6 心シールド付(Z1・Z2・Y1・K1・K2・L) 11 心ケーブル…10m 付(CVV-SXM) 無方向性 5 心シールド付(Z1・Z2・K1・K2・L) 9 心ケーブル…10m 付(CVV-SXM) 80mm2 -40cm 100mm2 -40cm 125mm2 -40cm 方向性 39kg 57kg 60kg 無方向性 38kg - - 主回路口出線サイズ 総質量(注 2) 0.05MPa・G 規 格 JIS C 4603(高圧交流遮断器)準拠 JIS C 4607(引外し形高圧交流負荷開閉器)準拠 (注) 1 C は回数 3 回。 2 総質量は制御ケーブル 10m 付の場合。 作用により周囲に被害を与えない安全設計。 (5)状態ロック装置付(ガス圧低下時動作) 200Aは 封 入 ガ ス 圧(0.05MPa・G) が 低 下(0.014 〜 0.02MPa・G)した場合に動作、300A、400Aは封入ガス圧 (0.1MPa・G)が低下(0.05 〜 0.055MPa・G)した場合に動 作し、その時の状態(入の場合は入、切の場合は切)のまま ロックし、同時にガス圧低下表示器で表示(赤色) 。また、制 御装置の自己診断表示灯が点灯。 遮断機能付地絡トリップ形高圧ガス負荷開閉器 GBT 形 特集 2:2015 年 会員企業各社の製品・技術開発とその成果 35 西芝電機株式会社 制御システム事業部 制御システム設計担当 079-271-2347 電気推進モード付軸駆動発電システム 1.軸駆動発電システム概要 軸発電機を主機関と切り離し推進電動機としてコンバー タ・インバータで可変速駆動し、プロペラを回転させて 航行するモードである。港湾内など排ガス規制が厳しい 海域において、主機関の代わりに電気推進で運航するこ 西芝電機では軸駆動発電システム(図1)を30 年以上 とでクリーンな航行を可能とし、船舶の環境性能を向上 に渡って販売してきた。同システムは船舶の主機関により させることができる。船の航行状況に応じて、発電、推 駆動される発電機と周波数変換装置で構成される。運転 進加勢、電気推進の3 種のモードをハイブリッド自動車の モードとして通常の「発電モード」と、主機関の駆動を ように切り替えられることが本システムの利点である。 加勢する「推進加勢モード」を備えている。各運転モー ドの概要を以下に示す。 また「電気推進モード」は非常航走運転にも使用でき る。非常航走運転は、主機関が故障した非常時に軸発電 システムで電気推進を行い、船を安全な場所へ運航させ ・発電モード…回転数が変化する主機関によって駆動さ る運転モードである。 れる発電機の周波数を一定周波数の60Hzに変換して 船内母線へ電力を供給する。燃費効率が優れた主機関 2.2 新開発制御盤による省スペース化 で発電することで発電燃料費を低減し、また別途設け 発電/推進加勢モードと電気推進モードは発電機の られる電力供給源である発電機関を停止させることで 運転方法が異なるため、2 系統の制御盤が必要であった。 省メンテナンスの効果も期待できる。 しかし、高性能なマイクロコンピュータを採用した制御基 板を新たに開発し、3 種類の運転モードをすべて備えた ・推進加勢モード…「発電モード」と電力の流れが逆と 制御盤を製品化した。これにより、少ないスペース、低 なるモード。船内母線を電源とし、発電機を電動機と コストで、なおかつ電気推進モードも備えた軸駆動発電 して駆動することで主機関のプロペラ駆動力が不足し システムを実現した。 た場合に発電機で主機関を加勢する。船舶の速度を増 すことができるとともに、船内の余剰電力の利用により 主機関の燃料消費量の抑制が可能で、船の推進システ ム全体の効率向上に寄与できる。 2.今回の開発 3.むすび 当社の長年培った制御システム技術により、環境性能、 保守性に優れた軸駆動発電システムが提供でき、船舶の 発展に貢献できると考える。 2.1 「電気推進モード」の実現 今回新しい制御盤を開発し、 「電気推進モード」の機能 を実装した。 「電気推進モード」は「推進加勢モード」と 同様に船内母線を電源とするが、軸駆動発電システムの 図 1 軸駆動発電システム 36 電 機 2016・February 図 2 製品外観 西芝電機株式会社/ニチコン株式会社 ニチコン株式会社 企画本部 広報部 075-241-5338 負荷電流検出方式 コンデンサ自動制御装置 1.概 要 進相コンデンサは、負荷および系統に発生する無効電力 を低減(力率改善)するために欠かすことのできない設備 である。力率改善には、線路電流の減少による損失の低減、 電圧降下の低減、受変電設備の有効利用、さらには電気 料金の大幅な節減など省エネや電力品質の安定を維持す る効果がある。 このように進相コンデンサは、力率改善を目的として設置 されているが、近年の負荷力率の向上などにより負荷容量 に対してコンデンサ容量が過剰となるケースや、中小規模 搭載することで、1 ~ 2群のコンデンサの最適制御を実現 する。 2.仕 様 表 負荷電流検出方式コンデンサ自動制御装置の定格仕様 品 番 入力電流 入力周波数 補助電源 制御群数 投入設定 引き外し設定 応答時間 使用温度 保存温度 相対湿度 サイズ 質 量 CASACE352A AC5A, 0.5VA 50/60Hz AC80V 〜 264V 1〜2群 0.1 〜 5.0A 投入設定値の 10 〜 90% 3 分/ 5 分 -10 〜 +55℃ -30 〜 +70℃ 30 〜 85% 71(W)×78(H)×110(D)mm 500g の需要家では軽負荷時もコンデンサが接続されているケー 3.特 長 スが多く見られ、進相容量が過剰になる場合がある。これ 1.負荷電流検出方式 によって進み力率での運用が増えると、進相電流による電 負荷電流入力だけで制御が可能なため設置が容易であ 圧上昇などから電力系統での適正な電圧を維持することが る。 困難になるなどの問題が発生している。これらに起因する進 み力率の問題に対して、抜本的な施策の実施には至ってい ないのが現状である。今後、電力品質に対する社会的要請 2.コンパクト、小型軽量 DINレール取り付けが可能で、小型・軽量である。 3.制御設定が容易で操作が簡単 のさらなる高まりや、新エネルギー(太陽光発電設備、風 コンデンサの投入条件は電流値を、引き外し条件は投 力発電設備 等)の連系増などにより、問題がさらに深刻化 入値に対する減少率を設定することで、電流値に合わ するおそれがある。 せたコンデンサ制御が容易にできる。 進相コンデンサによる進相容量の過剰運用を是正するた 4.時限機能手動スイッチ付き めには、コンデンサ容量や軽負荷での接続等の運用面を見 手動投入スイッチによる手動制御操作時にも応答時間 直す必要があるが、進相コンデンサの容量削減の見直しは 設定が有効で、手動操作時における操作ミスを防止で 力率改善による効果(電気料金の節減)との兼ね合いもあ きる。 り慎重に行うべきである。 当社は中小規模の需要家に多い軽負荷時でのコンデン サ接続を是正するために、小規模のコンデンサ群の開閉を 5.2群以下のコンデンサに最適 1 ~ 2群のコンデンサ制御において安全で最適な制御を 実現できる。 最適に自動制御する装置を開発した。 1 ~ 2群程度の小規模なコンデンサ群の運用は制御パ ターンが少なく、細やかな力率制御には適さないため、結 果的に負荷の運転に連動して投入される場合が多い。 よって、本制御装置においては負荷電流の増減に対して 開閉制御を行うと同時に、コンデンサの開閉運用に必要な 解列から投入までの放電時間の確保と、瞬時的な負荷変 動の影響によるチャタリング防止のための時限制御機能を 図 負荷電流検出方式コンデンサ自動制御装置 “CASACE352A” 特集 2:2015 年 会員企業各社の製品・技術開発とその成果 37 日東工業株式会社 お客様相談室 0561-64-0152 総合タイプ対応用感震リレー付 ホーム分電盤(2 段階遮断) 2.特 長 (1)従来品は地震波感知 3 分後に主幹ブレーカを遮断するこ とを基本機能としていたが、感震リレー付ホーム分電盤 (2 段階遮断)は基本機能に加え、即遮断する分岐ブレー カを最大 3回路搭載することが可能である。 さらに、蓄電池などの非常電源設備と接続された「自 動電源切替機能付重要負荷分電盤」と組合わせることに より、通電を継続する回路を構成することが可能となる。 1.概 要 これは、感震ブレーカー 総合タイプに対応する機能となる。 (2)感震動作機能 今後 30 年以内にM7 程度以上の地震が 70%の確率で発生 ・震度 5 強相当の地震を感知すると、感震リレー用分岐 すると言われ、首都直下地震や南海トラフ地震においても甚 ブレーカ(最大 3回路)を即遮断する。また3 分間表 大な被害が発生すると想定されている。政府、自治体におい 示ランプが点滅し、ブザーが鳴動した後、主幹ブレー ては地震によって発生が懸念される電気火災の予防に有効とさ カを自動遮断する。 れる感震ブレーカーの普及に力を入れ被害の縮小を図っている。 感震リレー付ホーム分電盤は内閣府、総務省消防庁、経済 産業省の連携のもと開催された「大規模地震時の電気火災の 発生抑制に関する検討会」で公表された「感震ブレーカー等 の性能評価ガイドライン」において、感震ブレーカーの分電盤 タイプに分類されている。 ・地震波感知から3 分の間に停電が発生すると、復電時 に主幹ブレーカを自動遮断する。 ・停電後 8 秒以内に地震波を感知すると、復電時に主幹 ブレーカを自動遮断する。 (3)拡張機能 蓄電池などの非常電源設備と接続された「自動電源切 替機能付重要負荷分電盤」と組合わせることにより、通 電を継続する分岐回路を構成できる。 総合タイプ システム構成例 38 電 機 2016・February 日東工業株式会社/パナソニック株式会社 パナソニック株式会社 アプライアンス社 ランドリー・クリーナー事業部 0748-23-8558 世界最軽量(本体質量 2.0kg)掃除機 MC-JP500G の開発 2.3 本体レイアウトを「ストレートレイアウト構 成」へ モーター・コードリール・紙パックの配置を縦一列に変 更(図4)し、デッドスペースを減らすことにより本体の 1.概 要 横幅を約 27%、体積を約 37%カットし、スリムでコンパ 近年、家庭用電気掃除機は高付加価値機能を搭載し クトなボディを実現した。 た機種が多く、その反面本体が重いという市場からの声 が多くあった。そこで当社は50 ~ 60 代の「目利き世代」 にターゲットを絞り、世界最軽量掃除機「MC-JP500G」 (図1)の開発を行った。 図 4 ストレートレイアウト構成 2.4 外装部品に発泡成形を採用 図 1 世界最軽量掃除機「MC-JP500G」 2.特 長 従来、発泡成形による軽量化は外観に表れない内蔵部 品に対して行うことが一般的であったが、自社掃除機で 初めて外装部品に採用した。 2.1 業界初! 軽さと強度を両立した先端材料 「PPFRP(PP 繊維強化樹脂)」の開発 通常、発泡成形品の表面には気泡の破裂に起因するス ワールマーク(渦巻状の模様)が発生する。 (図5)そこ 先端材料「PPFRP(PP 繊維強化樹脂) 」は綾織(あ でスワールマークの発生を抑制する加工条件を見出すと やおり)したPP 繊維を積層(図2)することで、一般的 共に、表面にシボ加工を施して目立ち難くする効果を実 に使用する材料のABSよりも強度を向上させることがで 証し、発泡成形を外装部品に用いる成形技術を確立した。 きる。更に従来品の約 1/2の薄さで同じ強度を確保でき その結果、外装部品を約 5 ~ 10%軽量化した。 るため、軽さと強度の両立を実現することができた。 図 2 PPFRP の積層構造 2.2 アルミ素材高効率モーターの開発 外郭部品の鉄と電磁コイルの銅を軽量素材のアルミニ ウムに変更すると共に、電磁鉄心の体積を約 54%カット、 また内部部品の配置を変更し、全体を小型化することで、 約 56%の軽量化を実現した。 (図3) 図 5 金型内のスワールマーク発生状態図 3.効 果 徹底したお客様視点での商品開発により、国内市場の 新たな方向性を見出すと共に、新素材「PPFRP(PP 繊 維強化樹脂) 」の採用、新成形工法の開発を通じた世界 最軽量となる本体質量 2.0 ㎏の実現等、新たなお客様価 値を創造したことにより、市場では非常に高い評価を頂 いている。その結果、大幅な増販を達成することができた。 図 3 アルミ素材高効率モーター 特集 2:2015 年 会員企業各社の製品・技術開発とその成果 39 日立工機株式会社 設計技術センタ 029-276-7341 1.先進の AC ブラシレスモータで小型・軽量・ 高性能かつ堅牢・高耐久 ロータリハンマドリル DH40MEY 形等 6 機種 丸のこ C6MEY 形等 2 機種 ディスクグラインダ G10VE 形等 5 機種 2.業界初トリプルハンマ搭載と電池 2 年保証 (高容量 6Ah) コードレスインパクトドライバ WH14DDL2 形/ WH18DDL2 形 2.1 概 要 当社は、ねじ締めスピード高速化と、カムアウトやねじ締め過 1.1 概 要 当社は、独自の高効率AC(交流)ブラシレスモータと制御回 ぎ軽減など使いやすさを兼ね備えた新しい打撃機構と制御を搭載 路の開発により、小形・軽量・高性能・堅牢・高耐久で、さらに、 したインパクトドライバを発売した。この製品では、ハンマの爪 継ぎコードやエンジン発電機を使用した場合でも安定な作業を可 を従来の2 個から3 個に増やし(トリプルハンマ) 、1回転 3 打 能とするなど、大幅に改良した電動工具を発売した。 撃で小刻みに打撃することでカムアウトやねじの沈み過ぎ低 1.2 特 長 減を図り、使いやすさを向上した。一方、1回転 1.5 打撃とな (1)高効率 ACブラシレスモータの採用によりモータ体積を るパワーモードでは、ハンマの打撃エネルギーがアップし、ね 40%低減させ、クラス最小・最軽量を実現し、作業者の じ締めスピードを高速化した。これらは、回転数や打撃タイミン 疲労を大幅に軽減。 グを最適制御する日立独自のACS(Active Control System) (2)負荷による回転数の低下が少なく、クラストップの作業 機能との組み合わせで実現し、1台で使いやすさと高性能化の 両立を可能にした。さらに、当社はリチウムイオン電池の発売 能率を実現。 (3)特に使用環境が苛酷なロータリハンマドリルでは、日立 当初より、独自の電池多重保護回路を搭載し、電池長寿命化 技術を培ってきた。これにより、業界初の2 年保証付 6.0Ahリ 独自のアルミ二重絶縁構造 (アルミダイカストボディ+プラスチック内筒式)の採用 により、堅牢・高耐久(剛性 10 倍でモータ寿命 2 倍)を 実現。 チウムイオン電池を発売し、作業量は約 1.2 倍にアップした。 2.2 特 長 (1)業界初*1 の新打撃機構トリプルハンマ搭載により、使い (4)独自の電子制御技術で、電圧・負荷状態を検知し出力を やすさ(カムアウト低減、沈み過ぎ低減)と高性能化(ク 補正するため、電圧降下時でも回転数の低下が少なく安 ラス最速*2 ねじ締付けスピード、クラス最大*2 締付けト 定した作業を実現。またエンジン発電機も使用可能。 ルク)両立を実現 (5)カーボンブラシ交換不要で、モータ高耐久・長寿命、メ ンテナンスフリー。 (2)2 年保証付き6.0Ahリチウムイオン電池付属〔作業量 約 1.2 倍(対 5.0Ah 電池) 〕+業界最速*1 急速充電器 DH52MEY DH45MEY DH40MEY (3)防じん・耐水〔 【IP56】国際規格適合証明書取得〕 (4)大容量小物入れ付きコンパクトケース (* 1 2015 年 7 月現在の国内電動工具メーカーにおいて〔日立工機調べ〕 ) (* 2 2015 年 7 月現在の国内電動工具メーカーの 14.4V/18V コードレスイン パクトドライバにおいて〔日立工機調べ〕 ) ロータリハンマドリル DH40MEY/DH45MEY/DH52MEY 形 丸のこ C6MEY 形 トリプルハンマ(業界初) ディスクグラインダ G10VE 形 40 電 機 2016・February 2 年保証付き 6.0Ah リチウムイオン電池 コードレスインパクトドライバ WH18DDL2 日立工機株式会社/株式会社 日立パワーソリューションズ 株式会社 日立パワーソリューションズ 社会産業・情報制御事業統括本部 営業統括部 03-5577-8193 遠隔監視・支援センタによる 高度保守サービスの提供 2.2 予兆診断技術による設備の安定稼働支援 オンライン監視により収集した設備情報の解析・診断 を行い、微小な状態変化や異常の兆候などを捉えること で、想定外の停止を回避し、安定稼働を支援する。 1.概 要 本機能は、当社の保守サービス事業において長年培っ 近年、設備の状態監視や復旧サービスだけでなく、故 障による想定外の設備停止を防止するなど、予防保全に てきたノウハウと予兆診断システム「HiPAMPS」を適用 し実現している。 よるコストミニマム化への期待が高まっており、メンテナ ンスサービスの高度化が求められている。 このような市場のニーズを受け、当社の遠隔監視・支 援センタでは、24時間 365日体制の監視サービスに加え、 IoT*やビッグデータ解析技術を組み込んだ、オンライン 監視、予兆診断、遠隔作業支援などの高度保守サービス を実現し、2015 年 10 月にリニューアルオープンした。 (* IoT:Internet of Things) 2.特 長 図 1 遠隔監視・支援センタ 2.1 オンライン監視による設備管理・運用の効率化 お客さま設備と当社の監視サーバをオンラインでつな 3.おわりに ぐことで、設備の稼働情報の収集が可能である。収集し 遠隔監視・支援センタでは、単なる機器監視だけでは た稼働情報を専用のWeb サイトに掲載することで情報の なく、設備全体のリアルタイム状況把握や予兆診断によ 「見える化」を実現する。さらに、当社が保有するドキュ る安定稼働および迅速な現地対応を支援している。市場 メントや保全作業履歴なども稼働情報とあわせてWeb サ のニーズに応えた高度保守サービスにより、お客さま設 イトに掲載することで、お客さまと当社でリアルタイムに 備の更なる安定稼働および、コストミニマム化に向けて、 情報共有し、設備管理・運用を効率化することができる。 お客さまと共に歩んで行く所存である。 図 2 予兆診断による設備の異常原因の推定と対策 特集 2:2015 年 会員企業各社の製品・技術開発とその成果 41 富士電機株式会社 広報 IR 部 広報課 03-5435-7206 1.IEC 規格適合 7.2kV スイッチギヤ 「VC/VCM-V6A」 2.北米向け大容量無停電電源装置 「UPS7000HX-T3U」 1.1 概 要 2.1 概 要 ス イッチ ギ ヤ の 高 い 安 全 新たに北米向けに、定 性を 要 求 する最 新 の国 際 規 格電圧 480Vの大容量で 格 IEC62271-200に 適 合 す る 高効率な「UPS7000HX- 7.2kVスイッチギヤを製品化し T3U」を開発した。 た。 「VC/VCM-V6A」 の外観 1.2 特 徴 (1)安全性の向上 2.2 特 徴 (1)北米規格適合 「UPS7000HX-T3U」の外観 米国 保険 業 者 安 全 試 験 所の製品安 全 規 格(UL 規 ES(接地装置)と遮断器及び扉やカバーが安全な状 態でのみ操作が可能とする信頼性の高い機械的インター 格) 、および米国防火委員会のケーブル敷設に関する規 格(NEC 規格)に適合している。 ロックにより安全性を確保した。 (2)高効率 (2)盤寸法の縮小 装置最高効率は世界最高水準の97.5%を達成した。ま VCB(真空遮断器)の相間を縮小した絶縁フレーム とし、ケーブル取合い位置を下部にすることで、VCB 盤 た、低い負荷領域(負荷率 25 〜 50%)においても効率 96%以上を達成した。 の外形寸法を縮小した。VMC(真空電磁接触器)盤は、 パワーヒューズをVMCの前後に配置し、下部にVMC、 (3)高信頼性 上部に操作用変圧器を配置した。主回路の絶縁被覆と絶 保守メンテナンス時や、万が一の故障時においても給 縁バリアにより絶縁距離を短縮することで、盤幅を縮小 電を継続する並列冗長運転方式や待機冗長運転方式に対 するとともに、VCB 盤の奥行にも合わせた。盤全体の設 応している。 置面積を従来の70%に縮小した。 (4)高性能・高機能 (3)保守性の向上 高力率負荷対応、パワーウォークイン機能、Web / VCBとVMCは、リフタを使用せずに電気室の床面に そのまま搬出入できるトラックタイプを採用し、停電作業 SNMPカード対応、MODBUSカード対応、などの各種 機能を備えている。 時に遮断器の点検を効率的に行える。 [仕様] [仕様] 項 目 型 式 適用規格 定格電圧 定格母線電流 定格電流 定格短時間耐電流 運転継続性(LSC) 内部アーク分類(IAC) 寸法(W×D×H) 質 量 VCB 盤 VMC 盤 VC-V6A VC-VS6A IEC62271-200 3.6/7.2kV 2,500A 2,000/1,250A 200/400A 31.5/40kA 3s LSC 2B-PM AFLR 31.5kA 1s 1,780×1,700×2,400(mm) 2,000kg 42 電 機 2016・February 項 目 仕 様 UPS 方式 常時インバータ給電方式 入出力相数 3相3線 入出力電圧 , 周波数 出力容量 装置最高効率 出力負荷力率 寸法(W×D×H) 質 量 480V, 60Hz 300 / 400 / 500kVA 97.5% 1.0 2,000×900×2,000(mm) 1,850kg 富士電機株式会社/富士電機機器制御株式会社 富士電機機器制御株式会社 事業企画本部企画部 03-5847-8120 制御回路用サーキットプロテクタ(CP) 1.はじめに サーキットプロテクタ(CP)は、機器内の回路を保護 するための過電流保護機能と、スイッチとしての機能を 付属品が付いた場合は主端子、補助端子の順に接続する 必要があり、また、保守作業で主端子を増し締めする際 には付属品の配線が邪魔になっていた。開発品では主端 子と補助端子の位置を左右に分けることにより、主端子と 補助端子の順序を問わず配線できるとともに、主端子の 増し締めだけを行えるようにした。 併せ持つ遮断器であり、近年のFA 機器、OA 機器、コン ピュータ及び周辺機器の進展とともに広く普及している。 富士電機は、1983 年、1993 年に制御回路用CPを発 2.4 グローバル仕様 国内向けと輸出向けの回路を同じ設計でできるように 売した。発売当時に比べてユーザのニーズは多様化し、 するため、主要な国内・海外規格に適合させた。IEC かついっそう高度化してきている。富士電機機器制御は (EN) , CCC, UL/CSA, KC, PSEを標準で取得している。 こうしたニーズを踏まえ、安全性と配線時の作業性を向 上させたCPを開発した(図) 。 2.製品の特長 2.1 小 型 主回路の端子カバーの機能を本体に一体化して、従来 品に比べ縦寸法を92.6mm⇒ 73mmに約 20mm 縮小し、 体積を約 20%小型化した。 3.仕 様 項 目 従来品は別売の端子カバーによって充電部を保護す る構造のため、端子を増し締めする際に端子カバーを外 す必要があった。開発品は充電部である端子ねじの外側 サーキットプロテクタ 形 式 CP30F 極 数 1、2、3 外形寸法(幅 × 縦 × 奥行) 17.5mm×73mm×66mm 主端子構造 主端子カバー ねじアップ構造 ケース・カバーに一体化 定格電流 定格使用電圧 2.2 安全性向上 仕 様 名 称 0.1 〜 30A AC250V、DC65V 動作特性 低速、中速、瞬時 遮断容量 2.5kA 取 付 表面ねじ取付、IEC レール取付 補助端子 ねじ端子 補助端子カバー 付 属 をケース・カバーで覆い、指が充電部に触れないように IP20 構造を標準で採用して、安全性を向上させた。 2.3 配線作業性向上 (1)丸型圧着端子付き電線の配線作業性向上 従来品では、丸型圧着端子が付いた電線を配線する 際にねじを外す必要があるため、ねじが脱落する恐れが あった。開発品では端子ねじの座金にスプリングを配置 し、端子ねじを緩めると座金と一緒に端子が持ち上がる ねじアップ構造を採用した。これにより、端子ねじを取り外 すことなく丸型圧着端子が付いた電線を配線できるように した。 (2)メンテナンス性の向上 図 CP 外観 <引用文献> 富士電機技報 2015 vol.88 no.4 サー 従来品では付属品の補助端子が左右両方にあるために、 キットプロテクタ「CP30Fシリーズ」 特集 2:2015 年 会員企業各社の製品・技術開発とその成果 43 株式会社 マキタ 宣伝デザイン室 宣伝 1 課 0566-97-1791 1.ロボットクリーナ 1.1 概 要 オフィス、店舗、倉庫等、業務用の清掃に。18Vリチ ウムイオンバッテリを使用し、自動走行で集じんする業務 (7)落下防止用赤外線センサ(4 ヶ所) 、障害物検知用 超音波センサ(8 ヶ所) 、バンパセンサ、スタック検 知用車輪センサ(2 ヶ所) 、地磁気センサ、直進性確 保用ジャイロセンサを搭載。 用のロボットクリーナである。18Vリチウムイオンバッテ 2.充電式せん定ハサミ リは、他に充電式インパクトドライバや充電式草刈機等、 2.1 概 要 113モデルと共通である。 1.2 特 長 (1)5.0Ahの18Vリチウムイオンバッテリ2 本で、最大約 18Vリチウムイオンバッテリ2 個による36Vで長時間 の作業を可能にし、日本製鍛造刃によりシャープな切れ 味を実現。刃物の開閉をトリガ操作に追従させることで、 500m (テニスコート約 2.5 面分) 、約 200 分の掃除 手バサミ感覚で、快適なせん定を可能にした。 が可能である。尚、バッテリ1 本でも使用可能である。 2.2 特 長 2 (2)本体前面の2か所の大型サイドブラシと、中央の大 (1)18V 5.0Ahリチウムイオンバッテリを2 個使用すれ 型パワーブラシ、内蔵の吸引ファンにより、隅々のゴ ば、1 充電あたりφ15mmのブドウの枝ならば、約 ミまでしっかりと吸い込み、大容量 2.5リットルのダ 70,000 本のせん定が可能である。 ストボックスは、2 層式で大きなゴミと小さなゴミを 分けながら、効率よく集じん。 (3)走行方式を広い場所や入り組んだ場所に合わせて 「パターン走行」と「ランダム走行」が選択できる。 また、センサウォール機能により、入ってほしくない 場所をセンサウォールテープで指定できるほか、広 いスペースを分けての清掃も可能である。 (4)お手入れも簡単。ブラシは、本体より外せて水洗い が可能で、フィルタやダストボックスも丸ごと水洗い が可能である。 (2)付属の充電器 DC18RDで 5.0Ah バッテリを2 本同時 に約 45 分という短時間での充電が可能である。 (3)刃物は日本製の硬く、しなやかな刃物用特殊鋼を採 用。下刃の先端を細くして、切断抵抗を低減し、枝 が密集していても狙いやすい形状になっている。 (4)刃物開口角度調整レバーで枝の太さに合わせて、最 大刃物開口角度が選択可能である。 (通常モード:切 断径 25mmまで、太枝モード:切断径 33mmまで) (5)スリムボディで、0.8kgという軽量(ハサミ部のみ) とともに、防じん、防滴性にも優れる(APT 機能付) 。 (5)1、3、5時間後に清掃運転を開始できるように、本 (6)バッテリ収納バッグは、背負い式で体にぴったり 体にはタイマー機能を搭載し、都合の良い時間にス フィット。ズレにくく、狭い場所でも邪魔にならない タートさせることが可能である。 スリム形状のハーネスを採用。 (6)本体位置お知らせ機能付きリモコンにより、広い場 所でもロボットクリーナの位置を簡単に見つけること (7)18V リチウムイオンバッテリは、シリーズ 全 113モ デルにて使用可能である。 ができる。 図 1 ロボットクリーナ RC200DZ 44 電 機 2016・February 図 2 18Vx2 = 36V 充電式せん定ハサミ UP361DPT2 株式会社 マキタ/三菱電機株式会社 三菱電機株式会社 1.系統変電システム製作所 開閉機器製造部 開閉装置開発課 06-6497-8636 2.リビング・デジタルメディア事業本部 リビング・デジタルメディア技術部 開発企画グループ 03-3218-2903 1.新形 420kV GIS の開発 1.1 概 要 据付容積を当社現行器比 30%と大幅に縮小した新形 420kVガス絶縁開閉装置(GIS)を開発した。 2.次世代ルームエアコン “ 霧ヶ峰 FZ シリーズ ” 2.1 概 要 室内機の内部構造を抜本的に見直したルームエアコン “霧ヶ峰 FZシリーズ” を開発した。 1.2 特 長 (1)機器の縮小・軽量化による据付面積縮小と工期短縮 ばね操作方式のガス遮断器(GCB)の遮断点数を現 2.2 特 長 (1)約半世紀ぶりの送風技術革新 行器の2 点から1 点に、主母線の配置を見直し現行器の 従来のラインフローファンを用いた方式では、熱交換 積層配置から並列/高密集配置にすることで、現行器比 器はファンを取り囲むようにΛ 型に配置され、熱交換器 で機器容積を30%に、質量を50%にそれぞれ縮小・軽 をこれ以上増やせないという課題があった。そこで、熱 量化。 交換器をW 型に変更し、送風機はより効率の高いプロペ ユニットを縮小化したことで、従来 5 分割していた輸送 形態からユニット一体での輸送を実現し、かつ変電所の 敷地面積を60%に縮小することで、現地での据付工期を 60%に短縮。 ラファンにレイアウトを変更した。 (2)小型・高効率 DCモータの開発 新型モータでは、フェライト磁石と希土類磁石を一体 成形する “ハイブリッド構造” のロータを開発することで、 (2)アクセス性・保守性の向上 GCBの遮断点数を1 点に削減したことで、GCB 操作装 置ユニットの前面配置を実現。 さらに、断路器、接地開閉器本体と操作装置の位置に プロペラファンのボス部への搭載を可能とした。 (3)独立気流で “二温度空間” を実現 “パーソナルツインフロー” は、左右のファンを独立回 転数で駆動させて風の強さをコントロールし、同じ部屋 制約されずに駆動力が伝達可能なフレキシブル連結機構 の中に異なる温度空間を作り出すことができる。つまり、 を採用することで、機器を高密集配置させたまま操作装 リモコンの設定温度は同じままで、二人を同時に快適に 置をユニット前面に集約することが可能になり、アクセス することが出来るようになった。 性・保守性が向上。 (3)環境負荷低減 (4)人の温冷感を捉える “ムーブアイ極” 当社の “ムーブアイ極” は、昨年度の4052 画素から ユニットの小形化により、SF 6(六フッ化硫黄)ガスを 18392 画素へと約 4 倍の解像度にアップし、人の手先・ 60%に低減するとともに、部品点数削減(従来比 70%) 足先など細部までの温度変化を測ることで、人が感じて により機器重量を50%に低減し、環境負荷低減に寄与。 いる温冷感までも検知できるように進化した。 (5)省エネルギー性 FZシリー ズ で は、5.6kW、6.3kW、8.0kWのクラス において業界 No.1※1 のAPF(通年エネルギー消費効率) を達成した。 ※1:2016 年1月22日現在 パーソナルツインフロー ムーブアイ極 図 1 新形 420kV GIS 図 2 霧ヶ峰 FZ シリーズ 特集 2:2015 年 会員企業各社の製品・技術開発とその成果 45 三菱電機システムサービス株式会社 生産性技術推進部 03-5431-7754 920MHz 帯 電池駆動パルスカウント 無線ユニット 1.概 要 電力・ガス・水道などメーター計量や、工場生産設備の生産数や稼働 回数などのカウントが可能。 (図2) 2.4 通信インタフェースを内蔵 上位システム用の通信インタフェースにEthernet、MODBUSを準備。 EthernetにはMCプロトコルを採用し、三菱電機製のFA 機器とプログラ ムレスで接続が可能。 当社は2013 年より920MHz 帯の無線 ユニットを開発してきた。 2.5 通信トポロジーの選択が可能 920MHzは2.4GHzに比べ減衰が少な く回折性があるため、障害物の影響を軽 920MHz 帯無線で一般的なメッシュ通信に加えて、応答速度を向上で 減でき安定した通信距離を確保すること が可能となった。 これまで工場の設備監視や生産管理 などのデジタル I/O やアナログ信号の無 線化、および、温湿度センサ無線ユニッ きるツリー通信にも対応。 図 1 電池駆動パルス カウント無線ユニット (SWL90-PL3-SEPB) (1)ツリー通信 ⇒ 生産管理、警報等 FA 用途向け 通信経路が指定(固定)でき、メッシュ通信に比べてサイクリック 性やシステム全体の応答速度向上できる。 (2)メッシュ通信 ⇒ 状態監視、見える化用途向け トを活用した空調制御、電力量監視のMODBUSデータなどの無線化を 無線ユニットが自動で通信経路を確立するため、経路を意識せず 提案してきた。 広いエリアでの情報収集が可能。 今回、無線のメリットである「設置の手軽さ」をさらに向上するため電 池駆動式の無線ユニットを開発した。 (図1) 2.6 無線環境監視ツールで通信状態の監視が可能 2.特 長 能。 各ユニットの経路情報や電波強度など、無線環境をパソコンで確認可 設置箇所の検討や通信エラー時の障害箇所の特定など、メンテナンス 2.1 電源の確保や配線が不要 性も高めている。 (1)電池駆動のため電源が確保しづらい箇所にも設置が可能。 無線環境監視ツールは当社 Webサイトから無償ダウンロードが可能。 (2)設備のレイアウト変更や、計測箇所の追加も容易。 ※製品の詳細については当社ホームページを参照ください。 http://www.melsc.co.jp/business/ 2.2 省電力設計で長寿命化を実現 (1)省電力設計(イベント駆動制御方式)により低消費化を実現。 (2)電池寿命 5 年間 の長寿命化を実現することで電池交換などの (※1) メンテナンス頻度を削減。 ・ペンシルアンテナ… ・高利得アンテナ… … 長距離通信用ユニット直付け型(※4) 2.3 パルスカウント機能を実装(停電時メモリ保持機能付) パルス信号を取り込むことで、無線ユニット内部でカウントを実施。カ GOTは三菱電機株式会社の登録商標です。MCプロトコルはMELSECコミュニケーショ ンプロトコルの略称です。Ethernetは米国 Xerox Corporationの商標です。MODBUS® は、 Schneider Electric SA の登録商標です。 図 2 システム構成例 46 電 機 2016・February ユニット直付け型(※2) ・つば付アンテナ… … ユニット分離ケーブル型(※3) (※1:常温で通信状態の良い場合に限る。 ) ウント用のコントローラ不要。 2.7 設置環境に応じたアンテナの選択が可能(図 2) 三菱電機システムサービス株式会社/株式会社 明電舎 株式会社 明電舎 総務部 (広報・CSR 担当) 03-6420-8222 電気鉄道向け直流き電用大容量・高効率 PWM 式回生インバータの開発 1.はじめに 電気鉄道向け直流き電用回生インバータは、直流の電 気鉄道において、電車の制動時の回生エネルギーを駅舎 電源などに供給することで回生失効を防ぎ、エネルギー の有効利用をはかることで省エネ・環境負荷低減に寄与 2.3 拡張性の向上 インバータ単機の直流電圧を750Vとし同一ユニットの 直列・並列の接続を変更することで、き電電圧の750V 系、1500V 系の両方に対して同一ユニットにて適用可能 とした。また、PWM 式を採用しているため制御の自由度 が高く、無効電力補償などユーザーの幅広い要求に対し て、容易に機能追加できる。 3.まとめ する装置である。回生インバータにはサイリスタ式が採 今回、IGBTを用いたPWM 式による高速応答性とい 用されてきたが、位相制御のため応答性の向上には限界 う特長を生かしながら、IGBTにおける課題を克服し、高 があった。従来当社では、サイリスタ式回生インバータ 効率で大容量にも対応可能な回生インバータを開発した。 の後継機として、IGBTを用いたPWM 式回生インバータ 今後は、省エネ・CO 2 削減などの環境負荷低減に加え、 を市場に投入してきた。しかしこの製品では、PWM 制 ユーザーの様々な要求へ柔軟に対応していきたい。 御により高速応答かつ高調波電流を低減できるが、導通 損失やスイッチング損失の増加による変換効率の低下や、 IGBTの最大電流定格が小さいことによる大容量化の課 題があった。そこで、今回これらの課題を克服した大容 量・高効率 PWM 式回生インバータを開発したので、以 下に概要を紹介する。 【主な仕様】 定格容量 1000kW ~ 4000kW 結線方式 三相ブリッジ直列(1500V 系) 三相ブリッジ並列(750V 系) 冷却方式 強制風冷 定格の種類 クラス S(100%連続、300% 1 分間) 2.本製品の特長 交流定格 2.1 高効率 効 率 97%以上 直流電圧精度 ±2%以内 従来製品では変換効率が 94%程度であったが、シミュ レーションによるスイッチング周波数とフィルタ定数の 2×460V、50/60Hz 回生開始電圧設定範囲 1V ステップで設定可能(ただし設定範囲あり) 最適化、リアクトルの電磁界解析による低損失化を行い、 IGBTを用いた装置としてはトップレベルの97%の高効率 化を実現した。 2.2 大容量化 単機 1000kWで最大 4 並列まで拡張可能な構成とする ことで、4000kWまでの大容量化を実現した。大容量化 をする場合には発生ノイズが大きく並列間のアナログ信 号や通信信号にノイズ除去用のフィルタを設ける必要が あり、通信速度に限界があった。本製品では光通信を採 用して耐ノイズ性を向上させるとともに、高速性を考慮し た電流分担制御方式を開発した。 製品外観(1500V 系、2000kW) 特集 2:2015 年 会員企業各社の製品・技術開発とその成果 47 株式会社 安川電機 技術開発本部 技術企画部 093-571-6011 1.産業用汎用インバータGA700の開発 ・クラウドサービスにより製品サポート情報に素早くアクセス でき、トラブルによって発生するダウンタイムの短縮に貢献 (3)安 心 ・世界中の主要な産業用途の規格や船舶規格などに標準 で適合 ・安全規格 SIL3(IEC61508)に標準対応し、コンタクタ レスによる省スペース、省配線を実現 ・IP55(防じん、防噴流)に対応し、制御盤の設置が不 要(オプション対応) 図 1 産業用汎用インバータ GA700 1.1 概 要 当社は、エネルギー効率の向上やICT 技術を活用した生産 性向上など、高度化した市場ニーズに応えるため、従来のイン バータシリーズを刷新した次世代インバータGA700を開発した。 ・基板ワニス対応により、耐環境性を向上 2.フル SiC パワー半導体モジュール 搭載マトリクスコンバータの開発 2.1 概 要 主回路を構成する全てのパワー半導体(スイッチとダイ 1.2 特 長 オード)にSiC(炭化珪素)材料を用いた次世代マトリクス (1)多 才 ・新機能 MTPA(Maximum Torque Per Ampere)制御 により、さらなる省エネを実現 ・従来外付けオプションであった制動ユニット、EMCフィ ルタ、DCリアクトルをインバータに内蔵し(容量等によ る) 、お客様のトータルコストダウンを実現 コンバータを世界に先駆けて開発し、当社の従来製品である U1000よりさらに高効率な入出力電圧電流正弦波ドライブを 提案した。 2.2 特 長 (1)入出力波形の歪み低減 マトリクスコンバータ技術により入力電流を、さらに新規開 (2)使いやすさ ・グラフィカルキーパッドとセットアップウィザードにより、 発した小型フィルタにより出力電圧も正弦波化した「入出力 電圧電流正弦波」ドライブを開発した(定格周波数比50 倍 簡単にセットアップが可能 ・高効率モータ(IE3、IE4 相当の誘導モータ、磁石式同 期モータ、同期式リラクタンスモータ)をオートチューニ 以下において波形歪み5%以下) 。 (2)高効率 高速スイッチングかつ低損失動作が可能なSiCを用いたパ ング不要で駆動可能 ・無線接続により、スマートフォン・タブレットを使用して ワー半導体を開発し、低損失化した小型フィルタとの組み合 離れたところからパラメータ設定、運転状態などを確認 わせによりさらなる高効率を実現した(最大変換効率98%以 することが可能(オプション対応) 上) 。 図 2 入出力電圧電流正弦波マトリクスコンバータの回路図 48 電 機 2016・February 株式会社 安川電機/利昌工業株式会社 利昌工業株式会社 管理本部 06-6345-8378 発電機用貫通形大電流変流器 (ブッシング CT) 利昌工業では変流器の大型化への対応として、従来の 貫通形変流器の構造に新しい方式を採用することで内部 応力を小さく抑え、信頼性の高い発電機用貫通形大電流 変流器の製品化を実現した。 暮らしを支える電気を生み出す発電所、その発電所の 心臓部ともいえるタービン発電機の電流計測、及び制御 以下に代表的な発電機用貫通形大電流変流器の仕様 の一例を紹介する。 に貫通形大電流変流器が使用されている。 発電機用の変流器(以後 CT)は、生み出された大き 仕様の概要 な電流を計測するために、CT 本体は、発電所の発電機 (例) 使用場所 :火力発電所等のタービン発電機に設置 本体の電流取り出し部に貫通するように設置され、数千 準拠規格 :JEC-1201-2007、JIS C 1731-1-1998、 ~数万アンペアの電流を常時通電するために、非常に大 IEC 61869-2-2012 きな貫通口を持った構造となる。そのためCTの大きさも 定格過電流 :400 kA 1 秒 等 必然的に大型となることはもちろん、電流変換の精度(確 定格一次電流:8,000 ~ 32,000A 度階級)や耐久性についての信頼性も求められる。 定格二次電流:5A CTの鉄心や巻線(コイル)を全てエポキシ樹脂で 定格負担 :~ 200VA 注型するタイプの貫通形 CTは、その寸法が大きいほど、 確度階級 :1PS 級、0.2 級、0.2S 級、1.0 級 等 モールド材料の注型時の硬化収縮、及びモールド材料と 過電流定数 :n>10 ~ 20 内部部品の微小な線膨張係数の違いにより注型される内 定格周波数 :50 又は60Hz 部部品に応力を与え、材料の持つ特性に影響が生じ、電 外形寸法 流変換の精度が低下する場合があった。 ※上記以外の仕様にも対応可能 :高さ1000×幅 1000×奥行 100mm 特集 2:2015 年 会員企業各社の製品・技術開発とその成果 49 リョービ株式会社 リョービ株式会社 住建企画管理部 0847-41-1280 1.ディスクグラインダ G-111P、G-111PH 1.1 概 要 鉄やステンレスの加工、溶接のビード削りなど長時間 作業を想定した耐久性と使いやすさにこだわった極細タ イプのディスクグラインダ「G-111P、G-111PH」を開発 した。 2.芝刈り用バリカン AB-1120、AB-1620 芝刈り用ポールバリカン PAB-1620 2.1 概 要 壁キワを刈り残しなく刈れるキワ刈りアタッチメントを 採用した芝刈り用バリカン「AB-1120、AB-1620」 、ポー ルユニットへの着脱をワンタッチで行うことができる芝刈 り用ポールバリカン「PAB-1620」を開発した。 1.2 特 長 (1)握りやすい極細握り(Φ52mm)で、長時間作業で も手や腕が疲れにくい。 2.2 特 長 (2)粉塵によるコイル傷で発生するモーター焼けを防止 するための防塵フィルタを採用した。 (3)当社既存モデル G-110Pよりもギヤヘッドの高さを 5mm 低くしたことで、狭所作業が容易となった。 (4)当社 既 存モデル G-110Pよりもギヤヘッドの幅を 7mm 小さくしたことで、ギヤケース部分の近くを握っ てしっかり保持できる。 (1)壁キワの芝を刃に寄せ、きれいに刈り取ることので きるキワ刈りアタッチメントを採用した。キワ刈りア タッチメントが刃物の直下にあるので、敷石の上な どでも刃物の接触を気にせず作業ができる。 (2)刈り込み高さ15・20・25mmにワンタッチで調節で きる。 (3)刈り取った芝を受け止め、芝刈り後の掃除が楽なグ (5)砥石を長く使え、切込深さが変わらない丸型ヘッド を採用した。 ラスレシーバを採用した。 (4)刃こぼれしにくく、切れ味が長持ちするニッケルコー ティングブレードを採用した。 「AB-1620」 「G-111P」 「AB-1120」 「G-111PH」 「PAB-1620」 50 電 機 2016・February ハイライト 2016年度 経済見通し ~下振れリスクをはらみつつも、緩やかな持ち直しが続く 三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング 調査部 主任研究員 小林 真一郎 本稿は 2015 年 12 月 17 日に当会で開催した講演会 実際にはそれ以前より利上げ観測が高まっており、新興 「2016 年度の国内外経済見通し」の内容に、講師が最近 国の通貨安の原因となっていた。米国が利上げに踏み切 れば、これまで高い金利を狙って新興国に投資されてい の情勢を加味し、書き起こしたものである。 た資金が米国に引き揚げられるとの思惑が高まり、通貨 が売られたのである。新興国が自国通貨の下落を阻止す 1.波乱の幕開けとなった 2016 年 るためには、金利を引き上げるしかない。こうして通貨防 衛のための利上げに追い込まれたことが、投資マネーの 1.1 高まる世界経済の減速懸念 2016 年は、昨年 12 月から始まった株価の下落が年明 け以降も続き、12 月初めに一時 2 万円を超えていた日経 流出と相まって、新興国の景気を減速させた。 一方、中国経済の減速懸念は、過剰投資の抑制策や 平均株価が 1 月下旬には 1 万 6 千円台まで下落するなど、 倹約令による内需の伸びの鈍化に加え、世界経済の減速 波乱の幕開けとなった(図 1) 。株価の下落は日本にとど を受けた輸出の低迷などを受けたものである。実質 GDP まらず、世界各国でも同時に進行しており、リスク資産 成長率の数字は前年比で 7%程度は維持しているものの、 から逃避した資金が安全資産とみなされる円に流入した。 実態はもっと悪いとの見方が強まった。 このため、外国為替市場では円高が進み、円は対ドルで ただし、米国の利上げは市場では材料としてすでに織 12 月初めの 1 ドル= 123 円台から 1 月下旬には一時 115 り込まれており、いったん米国が利上げに踏み切れば、利 円台まで上昇した。 上げのタイミングを巡る不透明感が払拭されるため、金融 市場も安定するとの楽観論も一方で高まっていた。実際、 市場の予想通り 12 月 17 日に利上げが実施されると、そ の直後は各国の株価や新興国の通貨は安定して推移した。 しかし、安定したのは短期間であり、新興国の通貨に は下落圧力がかかり、世界各国の株価は再び下落し始め た。いったん減速し始めた中国を中心とした新興国経済 や資源国経済の景気は、簡単には持ち直さないのではな いかとの不安感が根強かったためである。また、需要の 減少観測によって原油などの資源価格の下落が続いたこ 図 1 日経平均株価の推移 とも、資源国の景気悪化を通じて世界景気を減速させる 世界同時株安の背景にあるのが、世界経済の減速懸 とみなされた。 念である。こうした懸念は、2015 年中にも高まっており、 夏場にも世界同時株安を引き起こした。 1.2 足元の景気は横ばい 懸念が高まっている原因は 2 つある。ひとつは米国の 景 気の動きを実 質 GDP 成 長 率で 確 認しておくと、 利上げを巡る混乱であり、もうひとつが中国経済の減速 2015 年 4 ~ 6 月期に前期比 -0.1%とマイナス成長に陥っ 懸念である。 たため、景気が踊り場に入ったとの見方が昨年夏場に強 米国の利上げが実施されたのは昨年 12 月であったが、 まった(図 2) 。さらに、7 ~ 9 月期も速報値の段階では 特集 2:2015 年 会員企業各社の製品・技術開発とその成果/ [ハイライト] 51 ハイライト 同 -0.2%と 2 四半期連続でマイナスとなったため、景気 が底割れするのではないかとの懸念が高まった。改訂値 では同 +0.3%とプラス成長に改訂されたため懸念は後退 した。しかし、プラス成長といっても、その内訳をみると、 2.景気回復がもたついている原因 2.1 経済の好循環とは なぜ景気の持ち直しの足取りは重たいままなのだろう 個人消費、設備投資、輸出とも力強い持ち直しを示す伸 か。アベノミクスは、十分な効果を発揮していないのだろ びではない。当面の景気の底割れリスクは後退したが、 うか。 景気は引き続き横ばい圏内にとどまっている状態にある。 アベノミクスは、大胆な金融緩和、機動的な財政政策、 民間投資を喚起する成長戦略という手段を 3 本の矢にな ぞらえ、強い経済を取り戻すこと、すなわち「デフレから の脱却」と「経済の好循環の実現」を最終的な目標とし ている。その期待する経済の好循環の流れを具体的に説 明すると、以下のような動きを指す(図 4) 。 まず、大胆な金融緩和によって人々のデフレマインド が後退すると、値下がりするまで待とうという買い控えの 動きがなくなり、財やサービスへの支出が増加する。さら 図 2 実質 GDP 成長率の推移 月次の指標の中には、改善してきている指標もある。 に、財政支出の拡大によって公共投資が増加する。その 結果、企業業績が改善する。 次に、企業業績が改善すれば雇用・賃金が増加するこ たとえば、鉱工業生産指数は、夏場までは弱含みの動 とになり、家計の所得が増えれば、財やサービスへの支 きが続いていたが、秋以降はプラス基調に転じつつある 出が増加する。こうして企業業績がさらに改善するという (図 3) 。中でも、スマートフォン関連の部品などの増産 サイクルが繰り返され、家計と企業の両方において所得 を反映して電子部品・デバイス工業が増加しているほか、 が増加し、景気の拡大が達成されることになる。また、こ 自動車もニューモデルの作り込みから増加している。また、 の過程において、当初は期待だけであった物価の上昇が、 2015 年に入ってから弱含んでいた輸出も増加基調にある 需要の回復とともに実際に上昇していくことになる。同時 (図 3) 。生産と同様に自動車やスマートフォン関連の部品 に期待実質金利の低下や業績改善により、企業の設備投 などが増えていることが背景にある。 しかし、生産、輸出とも、海外経済の減速が続いて需 要が落ち込めば、持ち直しの動きが途絶えてしまうリスク 資も増加すると見込まれる。 それでは、実際に経済の好循環の動きはみられるのだ ろうか。 がある。景気減速を受けて、すでにスマートフォンの需 要が世界的に鈍っており、今後は生産や輸出の押し下げ 要因として効いてくる見込みである。 図 4 経済の好循環とは 図 3 鉱工業生産・実質輸出の推移 52 電 機 2016・February 2.2 雇用は良好な状態が続くが消費は伸び悩み 最初に雇用からみていこう。足元の失業率は 3%台前 半と約 20 年ぶりの低水準にあり、有効求人倍率もバブル 期並みの高さまで上昇している。就業者の数も増えてお り、雇用情勢は良好な状態が維持されており、一部の業 種では人手不足感が強まっている。 こうなると、賃金には上昇圧力がかかりやすくなる。春 闘でのベアの効果によって所定内給与が増加するなど、 賃金は持ち直し傾向にある。しかし、労働需給のひっ迫 度合いと比べると、その増加ペースは遅い。2014 年度の 図 5 実質個人消費の推移 一人当たり賃金は 4 年ぶりに増加したが、伸び率はわず か +0.5%である。これは金額にすると月々わずか 1,500 円程度であり、賃金の上昇を実感できるほどの金額では ない。 2.3 動きの鈍い設備投資 一方、企業部門においては、大企業を中心に業績の改 善が続いている。円安によって輸出企業の売上高が増加 賃金の伸びが鈍いのは、固定費である雇用コストの増 していることに加え、原油をはじめとした資源価格の下落 加に企業が慎重な姿勢を堅持していることや、賃金水準 が円安による輸入物価の上昇を相殺しており、交易条件 の低い非正規雇用のシェアが上昇しているためである。 が改善していることが大きい。 また、ベア実施やボーナス支給額の増額は、大企業を中 さらに、人件費抑制といったコスト削減効果や海外子会 心とした動きであり、業績の改善が遅れがちな中小企業 社からの配当金の増加なども利益の押し上げに寄与して への広がりに欠けていることもある。 おり、利益率が高まっている。資源価格の下落が進んで こうした状況がすぐに変化することは考えづらく、2016 いることもあって、2015 年度の企業利益は過去最高益を 年の春闘でも 3 年連続でベースアップが達成され、賃金 更新する可能性が高く、2016 年度についても、年度を通 の増加は続くと予想されるものの、伸び率が拡大すること じて資源価格下落の恩恵を享受できることや、利益率の はないだろう。 高さから判断して、過去最高益を更新する可能性が高い。 次に個人消費の動きをみると、2015 年に入ってからは しかし、手元のキャッシュフローが潤沢であるにもかか 横ばい圏の動きにとどまっている(図 5) 。この原因とし わらず、設備投資の持ち直しペースは緩やかにとどまっ て、賃金の伸び率が緩やかにとどまっているうえ、消費 ている(図 6) 。先送りしてきた投資の再開や、人手不足 者の節約志向が強まった可能性が挙げられる。 を補うための投資、維持・更新投資などは増えているよ 足元の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は、8 うだが、能力増強投資といった積極的な投資を国内で行 月以降は小幅ながらも前年比でマイナスに落ち込み、11 うことは手控えられているようだ。また、生産拠点の国内 月時点でも同 +0.1%と低い伸びにとどまっている。これ 回帰の動きは、一部の企業における限定的なものにとど は原油など資源価格の下落を受けてガソリンや電気代な まっている。 どのエネルギー価格が急落したためである。 企業が国内での新規投資に消極的な理由は、企業の慎 しかし、消費者は物価が上昇していると感じているよう 重な経営姿勢にあると考えられる。少子高齢化に歯止め だ。これは、円安などの要因によって 2015 年度に入って がかからない中、人口減少に伴って国内需要が縮小して 食料品や衣料品など購入回数が多い身近な商品の値上が いくことを心配して、国内での新規投資には躊躇している りが相次いでいることや、天候不順の影響で生鮮食品価 のである。 格が上昇しているためである。このため、せっかく所得が このため、積み上がった内部留保の多くが、海外企業 増えても家計はそれを実感できておらず、むしろ財布の に対する M & A や生産拠点や営業拠点の海外への移転 紐を締めている。 といった対外直接投資に投入されている。こうなると、企 業業績がいくら改善しても、景気の拡大にはつながりづらい。 [ハイライト] 53 ハイライト 労働需給が引き締まった状態が続く中、雇用情勢は良 好な状態を維持すると考えられ、雇用者数の増加ととも に、緩やかながらも名目賃金も増加が続こう。このため、 個人消費の増加基調は維持される見込みであるが、高い 伸びは期待できない。後半に伸びは高まろうが、これは 消費税率引き上げを睨んでの駆け込み需要が出始めるた めである。 企業業績は改善が続く。人件費の増加が続くなどコス 図 6 実質設備投資の推移 ト負担が増すと予想されるが、原油価格など資源価格の 下落によってコストの削減が進むことや、これまでのリス 3.景気は緩やかな持ち直しにとどまる トラ効果によって高収益体質が維持されていることが利 3.1 経済の好循環の歯車は回転せず が維持されるため、国内投資に慎重な姿勢が維持される 以上みてきたように、日本経済の現状は、雇用情勢の 改善を反映して賃金が持ち直し、コスト減少を背景に企 業業績が改善するという動きは続いている。しかし、それ 益を押し上げる。企業のキャッシュフローが潤沢な状態 中にあっても、設備投資は持ち直してくるだろう。 公共投資は減少が続く。オリンピック関連需要が現れ 始める可能性はあるが、押し上げ効果はまだ小さい。 が個人消費や設備投資を押し上げる力は弱い状態にとど まっており、アベノミクスの期待する好循環の歯車は順調 3.2 最大のリスク要因は海外経済の悪化 に回転しているといえる状況にはない。2016 年も引き続 今後の景気の最大のリスク要因が、海外経済が悪化す き経済の好循環の動きは限定され、本格的に景気が拡大 ることである。金融市場の動揺が収まるにつれて、海外 するには至らないであろう。 経済の減速懸念も次第に後退すると期待されるが、減速 実質 GDP 成長率は、年度ベースでは前年比 +1.3%と、 2015 年度の同 +1.0%をやや上回る伸びにとどまる見込み 傾向が一段と強まるようであれば、国内景気の横ばい圏 での動きが長期化する懸念がある。 である(図 7) 。前半の回復ペースは緩慢であるが、後半 米国では堅調な個人消費を背景に景気回復が続くと見 には海外景気の持ち直しを受けて輸出の増加ペースが高 込まれ、世界景気の牽引役となることが期待される。追 まってくることや、2017 年 4 月の消費税率の引き上げを 加の利上げは緩やかなペースで進められる見込みであり、 にらんだ動きが家計部門を中心に現れ始めるため、持ち 景気が失速することはないであろう。このため、米国景 直しテンポがやや高まってくると予想される。 気拡大への期待感を背景に、年明け以降の国際的な金融 市場の動揺は、次第に鎮静化に向かうと予想される。新 興国では景気刺激のための利下げが可能となり、需要の 回復観測から資源価格も上昇基調に転じよう。 もっとも、海外経済の回復に勢いが戻ってくるのは 2016 年半ば以降となろう。中国では、経済対策や利下げ などの対応により失速は回避できる見込みであるが、同 様に、効果が出るまでにはしばらく時間がかかる。 インバウンド需要は引き続き増加が見込まれる。外国 人観光客の国内での消費はサービスの輸出という形で景 気の押し上げ要因となる。財の輸出が伸びづらい中で、 図 7 実質 GDP 成長率の予測 54 電 機 2016・February サービス輸出の増加が景気を下支えするであろう。 TO P I C S トピックス EFC15(欧州燃料電池セミナー 2015) 出席報告 パナソニック株式会社 アプライアンス社 山梨大学 客員教授 橋本 1.概 要 登 2.2 参加の目的 (1)Workshop EFC15 開催の前日に、標記 Workshop が開催された 1.1 出張目的 (1)Workshop での発表および情報収集 ので、日本での標準化活動について発表(JEMA 柴田氏) (2)EFC15 標準化セッションでの発表および情報収集 するとともに、欧州を中心とした標準化活動の状況を調 査する。 1.2 出張者(参加者名) 柴田 和男(TC105 AHG6、AHG5、WG6 セクレタリ、 (2)EFC15 Regulations, Codes & Standards の Sessionで、日本で の標準化の活動状況およびエネファームにおける開発と標 JEMA) 橋本 登(TC105 Head of Delegation、WG4 コンビ ナ、パナソニック) 準化の進め方について発表(筆者)するとともに、欧州 を中心とした燃料電池関連の研究開発状況を調査し、今 後の国際標準化活動の参考とする。 1.3 出張先 Royal Continental Hotel(ナポリ) 2.3 会議の概要 (1)全体を通じて 欧州での国際標準化活動に対するインセンティブがか 1.4 日程: 2015 年 12 月 13 日 ㈰ 日本出国、イタリア ナポリ着 2015 年 12 月 14 日 ㈪ レジストレーションおよび発表 内容の打合せ 2015 年 12 月 15 日 ㈫ Workshop なり明らかになった。 欧州では、安全性の標準化に加え、性能試験法の開発 への投資が大きいようである。 たとえば、JRC(Joint Research Center)では、活動 2015 年 12 月 16 日 ㈬ ~ 18 日 ㈮ EFC15 参加 の大半が性能試験法の開発であり、標準化に関わるテー 2015 年 12 月 19 日 ㈯ イタリア出国 マが全体の 70%程度を占めているようである。 2015 年 12 月 20 日 ㈰ 日本帰国 これは、日本の燃料電池関連の産業界とは大きく異な る。 2.出張概要 2.1 参加の背景 IEC/TC105 AHG6(水電解関連)のコンビナである ステファン氏より、EFC15(European Fuel Cell 2015) 日本では、システムメーカが主要機能部品であるセル スタックや改質器を自社開発している場合が多く、これら の部品の性能を客観的に評価する必要がなく、システム 性能が国際基準で評価できれば良い。 一方、欧州では主要部品を製造販売するメーカーとシ の紹介があり、標準化のセッションもあることから参加す ステムインテグレーションを行うメーカーが存在し、日本 ることとなった。 のようにシステムメーカーが一気通貫で開発している例 は非常に少ない。 このため、欧州では部品レベルでの性能を評価するた [ハイライト] / [トピックス] 55 TO P IC S トピックス めの試験法を準備する必要がある。 さらに性能試験法を開発する過程で、課題解決の糸口 じられるため、日本としても十分に戦略を練って取り組ん でいかなければならない。 が得られることもある。 このような背景のもと、欧州では性能試験法を研究開 2.4 各 論 発している大学や研究機関が多数存在し、標準化するこ (1)Workshop とが成果となっていると思われる。 欧州から、性能試験法の国際標準化提案が多いのはこ のためであろう。 次に、性能試験法に関する国際標準化活動への日本の 対応がどうあるべきかについて考える。 部品の性能試験法は、日本では上述した背景のもと、 強く望まれない場合もある(部品で商売する企業にはメ リットがあるのであるが) 。 (i)発表の概要 JRC、CNR、Jurich、DLR、ENEA などの研究機 関からの標準化への取組みと、一般社団法人 日本電機 工業会(JEMA)からの国際標準化活動およびセレス パワーからの SOFC システムの紹介があった。 日本からは燃料電池の国際標準化状況並びに日本の 標準化活動概要を紹介した。 (ii)注目すべき議論 一方、システムの性能試験法は、自社システムの性能 JRC のスタック性能試験法の開発者から、より効率 が正しく評価されるためには、非常に重要なものである。 よく性能試験法を確立するためには、メーカーが信頼 このため国際標準化は、欧州の動きに惑わされず、日 性の高いスタックを供給し、密に議論する環境が必要 本で必要と思われるシステムの性能試験法に関連した であるとの主張があった。これに対してセレスパワー社 ワーキングを中心に活動するのが良いと考えられる。 から、IP 保護の観点から簡単に提供することは困難で ただし、システムメーカーも将来的に、自社開発した 主要部品を外販する可能性はあるため、ケースバイケー スで部品レベルでの国際標準化活動をウォッチングして あるとの回答があった。 セレスパワー社は、自社で SOFC スタックを開発し、 システムに仕上げて販売している英国の企業である。 おくことも必要であろう。 (2)EFC15 発表は、研究発表が中心であり、やはり SOFC 関連の (2)まとめ 国際標準は、大きく性能試験と安全に対する規格で構 発表が最も多く、次いで PEFC と MCFC 関連の発表で あった。 成される。 安全性については、背後に認証があるため活動の中心 標準化のセッションでは、日本における標準化活動の にすべきであるが、性能試験法については日本企業への 状況およびパナソニックでのエネファームの取組みについ 効果を検討して重み付けをおこなうべきであろう。 て発表(筆者) 。 欧州でも、安全性の標準化活動は認証機関および認証 プレナリーセッションでは、 FCH、 DOE、 NOW、 NEDO、 業務関連者、性能試験法の活動には研究機関の研究者が IPHE および ENEA から燃料電池関連の推進状況の紹介 主に関与しており、特に前者の活動には強い戦略性が感 があり、各地域での取組みの情報を入手することができた。 EFC15308 First author: EFC15207 First author: EFC15209 First author: Session 8c: REGULATIONS, CODES & STANDARDS 16:40 → 17:40 Location: SANTA LUCIA Activities for deregulation and standardization on fuel cell technologies Noboru Hashimoto Variability and Comparability of Testing Procedures for PEMFC Modules and Stacks regarding Performance and Safety Aspects Harms Corinna Solid Oxide Cell and Stack Testing, Safety and Quality Assurance (SOCTESQA) Lang Michael セッションプログラム(抜粋) :技術基準及び規格に関するセッション 56 電 機 2016・February EFC15 オープニングセッション風景 2016年度(平成28年度)税制改正要望 結果報告 一般社団法人 日本電機工業会 総務部 当会の 2016 年度(平成 28 年度)税制改正要望につ として、2015 年 9 月に財務政策委員会にて決定し、政 いては、わが国電機産業の活性化や国際競争力強化を図 府等関係先へ要望書を提出致しました。その後、2015 年 るべく、法人実効税率の 20%台前半に向けた更なる引き 12 月 16 日に「2016 年度(平成 28 年度)税制改正大綱」 下げ、研究開発促進税制(R& D 税制)の本則化、拡充 が公表され、当会の要望結果については下表の通りとな ならびに期限延長、地方税の見直し(償却資産に係る固 りましたので、お知らせ致します。 定資産税の廃止・外形標準課税拡大反対等)を大きな柱 2016(平成 28)年度税制改正大綱における JEMA 要望内容に関する記載状況 No. JEMA 要望項目名 法人実効税率の引き下げ【重点要望項目】 ・法人実効税率 20%台への引き下げを平成 29 年度ま でに実現いただき、さらにアジア諸国並の 20%台前 半までの水準を目標としていただきたい。 ・わが国企業の国際競争力そのものが減退することに ならないよう、研究開発促進税制等、現状で国際競 争力強化に貢献している各種施策については、引き 1 平成 28 年度税制改正大綱の記載内容等 【一部実現】 ■ H28 年度= 29.97%(現行より▲ 2.14%)、H30 年度= 29.74%。 ■企業部門に対していわゆる先行減税を含む「財源なき減税」を重ねるこ とは、現下の厳しい財政事情や企業部門の内部留保(手元資金)の状況 等に鑑みて、国民の理解を得られない。このため、税率引下げに当たっ ては、制度改正を通じた課税ベースの拡大等により財源をしっかりと確 保することとした。 続き維持・拡充等の配慮をいただき、法人課税にお 経済界には、法人実効税率「20%台」の実現を受けて、改革の趣旨 いて、実質的な税負担軽減となるようお願いしたい。 を踏まえ、経済の「好循環」の定着に向けて一層貢献するよう、強く求 める。現在、企業の内部留保は 350 兆円を超え、手元資金も増えてい る一方で、大企業の設備投資は伸び悩んでいる。足下では賃上げに向け た動きも見えてきているものの、労働分配率は低下している。企業経営 者がマインドを変え、内部留保(手元資金)を活用して、投資拡大や賃 上げ、更には取引先企業への支払単価の改善などに積極的に取り組むこ とが、何よりも重要な局面となっている。今後、こうした経済界の取組 状況等を見極めつつ、企業の意識や行動を変革していくための方策等に ついても検討を行う。 研究開発促進税制(R&D 税制)の拡充ならびに期限延長 【重点要望項目】 ① 研究開発促進税制の本則化 企業がさらに安定的、継続的に研究開発投資を行え る環境を整備し「稼ぐ力」の向上につながる民間投 資を加速すべく本税制の本則化を要望 2 ★関連事項 期限が到来するものを中心に、各措置の利用状況等を踏まえつつ、必 要性や政策効果をよく見極めた上で、廃止を含めてゼロベースで見直し を行う。 また、租税特別措置の創設・拡充を行う場合は、財源の確保や、全体 の項目数をいたずらに増加させないことに配意する。 ② 総額型の税額控除限度額(法人税額の 25%→ 30%) の拡充 ③ 増加型上乗せ措置について増加割合 5%以下でも適 用とすること(現行は増加割合 5%超に適用) ④ 特別試験研究費の要件の緩和(適用要件自体ならび に書類提出手続き等の簡素化) ⑤ 総額型の税額控除限度超過額の繰越制度の復活(期 間を 3 年として復活) [トピックス] 57 TO P IC S No. トピックス JEMA 要望項目名 地方税の見直し(固定資産税の見直し等) 【縮減】法人事業税における外形標準課税の拡大 【重点要望項目】 ■所得割税率:(現行)6.0%→(H28 年度)3.6% (1)固定資産税の見直し ■付加価値割税率:(現行)0.72%→(H28 年度)1.2% ① 償却資産に係る固定資産税の廃止 ② 償却資産税における償却計算を法人税と同一化 ③ 土地・家屋に対する固定資産税の見直しならびに 負担水準の軽減 (2)地方税体系の見直し(整理統合・簡素化)・課税拡 大への反対 ① 事業所税の廃止・見直し ② 事業税外形標準課税の課税拡大には反対 ③ 事業税等の損金不算入には反対 ④ 地方税への連結納税制度の導入 3 平成 28 年度税制改正大綱の記載内容等 ⑤ 地方税納付事務の簡素化 ⑥ 申告電子化の徹底やフォーマットの統一 (3)地方独自課税への対応(法定外税の新設導入時の 手続きの法制化等) ■資本割税率:(現行)0.3%→(H28 年度)0.5% ※ ただし付加価値割 40 億円未満の法人については負担軽減措置有り(H28 ~ 30) ■地方法人特別税:(現行)93.5%→(H28 年度)414.2% -----------------------(H29 年度以降) 地方法人課税の偏在是正 ■道府県民税法人税割 (現行)標準税率 3.2%、制限税率 4.2%→ (H29 年度)標準税率 1.0%、制限税率 2.0% ■ 市 町 村 民 税 法 人 税 割 ( 現 行 ) 標 準 税 率 9.7 %、 制 限 税 率 12.1 % → (H29 年度)標準税率 6.0%、制限税率 8.4% ■地方法人税(国税) (現行)税率 10.3%→(H29 年度)4.4% ■地方法人特別税は廃止(国税) ★関連事項 ■地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の創設 (国税)地域再生法の改正を前提に、青色申告書を提出する法人が、地 域再生法の改正法の施行の日から平成 32 年 3 月 31 日までの間に、地 域再生法の認定地域再生計画に記載された同法の地方創生推進寄附活用 事業(仮称)に関連する寄附金を支出した場合には、その支出した寄附 金の額の合計額の 20%からその寄附金の支出について法人住民税の額 から控除される金額を控除した金額とその支出した寄附金の額の合計額 の 10%とのうちいずれか少ない金額の税額控除ができることとする。 ただし、控除税額は、当期の法人税額の 5%を上限とする。 (地方税)地域再生法の改正を前提に、青色申告書を提出する法人が、 地域再生法の改正法の施行の日から平成 32 年 3 月 31 日までの間に、 地域再生法の認定地域再生計画に記載された同法の地方創生推進寄附活 用事業(仮称)に関連する寄附金を支出した場合には、法人事業税及び 法人住民税から、それぞれ税額控除ができる措置を講ずる。(詳細省略) 減価償却制度の見直し【重点要望項目】 ① 定額法一本化への対応 定額法への一本化については、償却による投資コス 【一部実現】 平成 28 年 4 月 1 日以後に取得をする建物附属設備及び構築物につい て、定率法を廃止し定額法とする。 トの回収等、企業の競争力に大きな影響を与えるこ とから慎重に検討いただくよう要望。なお一本化を 4 実施する場合、新規取得資産から実施とし、また全 ての資産区分において一斉に実施せずに、建物附属 設備や構築物等から順次実施したりするなど、準備 期間の確保や実務に配慮した措置を講じていただく よう要望。 ② 少額減価償却資産の損金算入限度額の引き上げ ③ 減価償却資産区分の簡素化・明確化 繰越欠損金の繰越控除期間の延長、使用制限の撤廃 【重点要望項目】 5 ① 繰越控除期間の延長 ② 使用制限の撤廃 ③ 繰戻還付の復活と繰戻期間の延長 【縮減】 ■ H28 年度 60%(現行 65%)、H29 年度 55%、H30 年度 50% ■ H30 年度以降 繰越期間・帳簿保存期間及び更正の期間制限を 10 年 (現行 9 年)に延長 ■中小企業者等以外の法人の欠損金の繰戻しによる還付制度の不適用措置 の適用期限を 2 年延長する。 58 電 機 2016・February No. JEMA 要望項目名 環境関連投資促進税制の延長ならびに拡充 【重点要望項目】 ・本制度の恒久化もしくは平成 27 年度末で適用期限を 6 平成 28 年度税制改正大綱の記載内容等 【一部実現】 エネルギー環境負荷低減推進設備等を取得した場合の特別償却又は税 額控除制度(環境関連投資促進税制)について、次の見直しを行った上、 迎える本税制の延長、また即時償却対象設備に太陽 その適用期限を 2 年延長する(所得税についても同様とする)。 光発電設備を追加するよう要望 ■風力発電設備について普通償却限度額との合計でその取得価額までの 特別償却ができる措置(即時償却)を廃止する。 ■対象資産について、太陽光発電設備を電気事業者による再生可能エネ ルギー電気の調達に関する特別措置法の認定発電設備以外のものとす る等の見直しを行う。 ■税額控除の対象資産から車両運搬具を除外する。 「生産性向上設備投資促進税制」の将来的な延長 7 【重点要望項目】 【実現せず】 生産性向上設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度(生産 性向上設備投資促進税制)は、適用期限をもって廃止することとし、関 係規定を削除する(所得税についても同様とする)。 企業年金積立金に対する特別法人税の撤廃 【重点要望項目】 ★関連事項 確定給付企業年金法等の改正を前提に、企業年金等の掛金等の損金算入 の対象に次の確定給付企業年金の掛金等を加えるとともに、その掛金等に 係る積立金を退職年金等積立金に対する法人税の課税対象に加える。 ① 事業主が将来の財政悪化を想定して計画的に拠出する掛金 ② 事業主が拠出する掛金で給付増減調整により運用リスクを事業主と加 入者とで分担する企業年金に係るもの ③ 複数事業主制度における厚生労働大臣の承認等を受けて実施事業所を 8 減少させる特例によりその減少の対象となる事業主が一括拠出する掛金 ★検討事項 年金課税については、少子高齢化が進展し、年金受給者が増大する中 で、世代間及び世代内の公平性の確保や、老後を保障する公的年金、公 的年金を補完する企業年金を始めとした各種年金制度間のバランス、貯 蓄商品に対する課税との関連、給与課税等とのバランス等に留意して、 年金制度改革の方向性も踏まえつつ、拠出・運用・給付を通じて課税の あり方を総合的に検討する。 国際関連税制の見直し【重点要望項目】 (1)外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制) の軽減税国判定 基準の引下げ(16%以下) (2)外国税額控除制度の改善 (3)二国間租税条約の新規締結・改定の推進(ドイツ・ 中国・台湾を最優先) (4)移転価格税制の見直し ① 事前確認制度(APA)および相互協議の一層の迅 速化、効率化 9 ②「国外関連者」基準の見直し(出資比率 50%以上 ⇒ 50%超) ③ 相互協議および APA の決着に伴う過年度修正に ついて、地方税も含め、協議決着の日の属する事 業年度において一括調整が図れる仕組みの創設 ④ 相手国政府との事前合意を移転価格課税の成立要 件とすること ⑤ 事務運営指針における価格調整金と寄附金との区 分の明確化 ⑥ 無形資産取引定義の明確化 【一部実現】 日本と諸外国・地域との間の二重課税リスクを排除し、法的安定性を 高める等により、グローバルな投資・経済交流の一層の促進を図る。 日本と台湾との投資・経済交流を促進するため、「所得に対する租税 に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための公益財団法人交流協会 と亜東関係協会との間の取決め」 (以下「日台民間租税取決め」という。) に規定された内容を日本で実施するための国内法を整備する。 更に、健全な国際的投資交流の促進によりわが国経済を活性化する等 の観点から、今後とも租税条約の締結・改正を推進し、租税条約ネット ワークの迅速な拡充に努める。 ★関連事項 ■帰属主義への変更に伴う、適格現物出資の対象の変更 ■移転価格税制に係る文書化制度について、「BEPS プロジェクト」の行 動計画に対応して示された勧告を踏まえ措置を講ずる。(詳細省略) ★検討事項 外国子会社合算税制については、喫緊の課題となっている航空機リー ス事業の取扱いやトリガー税率のあり方、租税回避リスクの高い所得へ の対応等を含め、外国子会社の経済実体に即して課税を行うべきとする BEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクト最終報告書の基本的な考え 方を踏まえ、軽課税国に所在する外国子会社を利用した租税回避の防止 という本税制の趣旨、日本の産業競争力や経済への影響、適正な執行の 確保等に留意しつつ、総合的な検討を行い、結論を得る。 [トピックス] 59 TO P IC S No. トピックス JEMA 要望項目名 10 受取配当金の益金不算入制度の改善【重点要望項目】 会計基準変更への対応【重点要望項目】 平成 28 年度税制改正大綱の記載内容等 記載なし 記載なし ① 減価償却費の損金経理要件の廃止 11 ② 試験研究費の発生時の損金算入 ③ 減損損失の損金算入 ④ 資産除去債務計上に伴う減価償却費の損金算入 地球温暖化対策税の見直し【重点要望項目】 ・平成 28 年 4 月からの税率引き上げ停止、もしくは 廃止を含めた見直し 12 ・使用目的反対 【実現せず】 ■地球温暖化対策のための税について、その本格的な普及に向けたモデル 事業や技術開発、調査への活用の充実を図ることとし、経済産業省、環 境省、林野庁の 3 省庁は連携して取り組む。 ■市町村が主体となった森林・林業施策を推進することとし、これに必 要な財源として、都市・地方を通じて国民に等しく負担を求め、市町村 による継続的かつ安定的な森林整備等の財源に充てる税制(森林環境税 (仮称))等の新たな仕組みを検討する。その時期については、適切に判 断する。 企業組織再編税制の整備 記載なし ① LLC 税制の創設 ② 株主における譲渡損益の繰り延べ措置の創設 ③ 適格組織再編に係わる要件の明確化 13 ④ 時価算定方法の明確化 ⑤ 会社分割時の承継資産に関する固定資産税の取り扱い ⑥先行設立した受皿会社に対する共同吸収分割の適格 要件緩和 ⑦ 繰越欠損金の引継ぎ制限の短縮(5 年→ 3 年) ⑧ 従業員の引継要件の緩和 連結納税制度の改善【重点要望項目】 記載なし 14 ① 連結対象会社の拡充 ② 連結納税制度における中間申告納付期限の延長 15 印紙税の廃止 その他の法人税制の見直し (1)交際費の損金算入制度の期限延長 (2)役員賞与に係る「利益連動給与」「事前確定届出給 与」の損金算入要件の緩和 16 (3)電話加入権の損金算入 (4)一般寄附金の損金算入限度額の拡大 (5)「当初申告要件及び適用額の制限」緩和にかかる職 権更正への適用拡大 記載なし 【一部実現】 ■交際費等の損金算入制度について、その適用期限を 2 年延長するととも に、接待飲食費に係る損金算入の特例及び中小法人に係る損金算入の特 例の適用期限を 2 年延長する。 ■法人の支給する役員給与について、役員から受ける将来の役務の提供 の対価として交付する一定の譲渡制限付株式による給与についての事前 確定の届出を不要とするとともに、利益連動給与の算定指標の範囲に ROE(自己資本利益率)その他の利益に関連する一定の指標が含まれる ことを明確化する。 (6)貸倒引当金制度の復活 消費税軽減税率制度導入反対ならびに仕入税額控除制度 【実現せず】 「95%ルール」復活【重点要望項目】 17 消費税の軽減税率制度を、平成 29 年 4 月 1 日から導入する。あわ せて、複数税率制度に対応した仕入税額控除の方式として、適格請求書 等保存方式(いわゆる「インボイス制度」)を平成 33 年 4 月 1 日から 導入する。それまでの間については、現行の請求書等保存方式を基本的 に維持しつつ、区分経理に対応するための措置を講ずる。 60 電 機 2016・February 業界報告 定置用小形燃料電池の新たな認証基準 一般社団法人 日本電機工業会 燃料電池発電システム技術専門委員会 伊東 洋三 1.はじめに ◇ 部分に関する技術基準に、JET から提供いただいた「系 統連系保護装置等の試験方法」を組み合せる形で構成さ 定置用小形燃料電池の認証システムは、一般社団法 人 日本電機工業会(JEMA)の常設委員会として 2004 れている。本共通認証基準に基づき、2008 年 2 月に家 庭用燃料電池システムが初めて認証を取得した。 2010 年以降は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)の 年 7 月に設置された「家庭用燃料電池認証システム検討 委員会」で検討を開始し、同年 12 月に世界に先駆けて、 小出力発電設備への追加、太陽光発電の余剰電力買い取 定置用小形(家庭用燃料電池を含む)の認証システムの り制度の浸透、並びに蓄電池システムによる停電対策の 運用を開始した。先行して開始された太陽光発電システ ニーズ拡大が重なり、これら 3 種の発電(蓄電)システ ムの認証システムと異なり、 ムに共通する系統連系に関する技術要件が相次いで系統 (1)パワーコンディショナ(PCS)だけでなく、燃料電 連系規程に反映されるようになった。その系統連系規程 の改訂を受けて、本共通認証基準も順次改訂されている。 池システム全体の認証 (2)複数の認証機関による認証が可能 その経緯を表 1 に示す。 燃料電池の FRT *技術要件については、JEMA「2013 一般財団法人 電気安全環境研究所(JET) 一般財団法人 日本ガス機器検査協会(JIA) 年電機 10 月号」 、新型能動方式は単相の分散型電源を対 一般財団法人 日本燃焼機器検査協会(JHIA) 象とした JEM1498 の改訂版を参照願いたい。 (3)上記認証機関のどこに申請してもワンストップでの認 証取得が可能 本共通認証基準は、2015 年 10 月に第 9 版が発行され ているが、表 1 の 5 項以外に以下の 2 件の認証基準の検 (4)上記認証機関に共通した技術基準の作成 等の 4 点の特長を有している。 討結果が反映された。 (1)逆潮流有り/無し認証の共通化 (4)項の技術基準は、 「家庭用小形燃料電池の技術上 (2)原燃料としての水素の取扱いの明確化 の基準及び検査の方法(共通認証基準)という名称で 2004 年 12 月に第 1 版が発行された。本認証基準は、前 述の JEMA 常設委員会・WG でまとめた燃料電池設備 どちらも燃料電池特有の要件であり、以下その概要を 紹介する。 (* 事故時運転継続機能) 表 1 系統連系規程の主要改訂事項と JEMA 燃料電池共通認証基準への反映の経緯 No. 年 1 2010 2 名 称 系統連系規程 JEMA 共通認証基準 固体酸化物形燃料電池(SOFC)に関する規定の追加 2010 年追補版 1 第5版 2011 新型能動方式に係る規程の追加 2011 年追補版 1 第7版 3 2012 燃料電池の FRT 技術要件に関する規程の追加 2013 年追補版 1 第8版 4 2013 自立運転に係る規程の追加 2013 年追補版 2 第8版 5 2014 燃料電池と蓄電池を組み合わせる場合の FRT 要件の明確化 2014 年追補版 2 第9版 ◇東芝燃料電池システム株式会社 企画部 企画・業務担当 [トピックス]/[業界報告] 61 業界報告 2.逆潮流有り/無し認証の共通化 2.1 逆潮流有りと逆潮流無しについて 置宅に FC が追加設置されるケース 2(主に既築)が多 いが、FC 設置宅に PV が追加設置されるケース 3 もあり うる。ケース 1 とケース 2 では、逆潮無しの FC を設置 図 1 に逆潮流有りと逆潮流無しの構成例を示す。逆潮 すれば良いが、ケース 3 において、逆潮流有りの FC が 流有りでは家庭内負荷を引いた余剰分を系統に送り出す 先に設置されていた場合には、PV 追加時に別型式の逆 ことができるが、逆潮流による電圧上昇を抑制する機能 潮流なしの FC に現地で交換する必要が生じる。 を PCS に設けることが必要となる。逆潮流無しの場合は、 余剰分を系統に送り出すことができないため、受電点で 逆潮流が生じないように PCS に逆電力防止リレーを設け 2.2 逆潮流有り/無し認証の共通化について 燃料電池は逆潮流有り/無しのどちらの認証取得も可 能であるが、認証型式が異なるため、前述のように設置 る必要がある。 これまでの認証制度では、逆潮流有りと無しは別認証 済みの FC を別の FC に交換しなければならないケースが となり、認証申請時にどちらかを選択するようになってい 発生する。設置宅での取り替え工事を避けるために、単 る。燃料電池発電設備(FC)が単独で設置される場合 独設置の場合でも将来のダブル発電化の可能性を考慮し は、基本的にどちらの認証でも取得し、設置することは て逆潮流無しの FC を設置することが多いが、その場合 可能であるが、図 2 のように太陽光発電設備(PV)との は逆潮流防止制御を行うことにより、逆潮流有りの FC を ダブル発電を行うケースでは、PV の買取価格を担保す 設置した場合に比べて FC の発電電力量が減少する。 るために、逆潮流無しの FC を設置する必要がある。こ それらの課題をクリアするために、FC の逆潮流有りと のダブル発電となるケースは、図 3 に示すように FC と 無しの認証を共通にすることが新たな認証基準として追 PV が同時に設置されるケース 1(主に新築)や、PV 設 加された。その概要は以下の通り。 図 1 逆潮流有りと逆潮流無しの構成例 62 電 機 2016・February (1)認証区分 ことが必要。再度変更する場合も同様とする。 現状の燃料電池認証区分に「逆潮有り/無し兼用」 を追加して 3 区分とする。 (5)JEMA 共通認証基準への反映 ① 逆潮流有り…逆潮流有り運用のみ可能 今回の認証区分の追加は、JET から提供いただいて ② 逆潮流無し…逆潮流無し運用のみ可能 いる「系統連系保護装置等の試験方法」の通則、個 ③ 逆潮流有り/無し…逆潮流有り/無し両運用が 別に反映する箇所がないため、第 9 版に直接的な記 可能 載はないが、解説等に追記することを検討する。 (2)認証試験項目 (6)認証機関への申し込み 逆潮流有りと無しの試験項目には共通のものが多く、 認証機関の認証申込書の「逆潮流の有無」の欄に逆 図 4 に示す試験項目とする。 潮流有り/無し兼用と記載する。 (3)逆潮流有り/無し認証取得時の工場出荷時設定 ③の認証を取得した FC の工場出荷時設定は「逆潮 流無し」とする。 3.燃料電池の原燃料として 水素の取扱いの明確化 これまでの JEMA 共通認証基準の「適用範囲」の原 (4)逆潮流有り/無しの運用変更時の手続き 燃料として、 「気体燃料(都市ガス、液化石油ガスなど) ダブル発電への変更等で運用を変更する場合には、 …」と記載はされていたが、水素が含まれるかが明確で 都度電気事業者との系統連系協議等で確認を受ける なかった。2015 年度に開催された家庭用燃料電池認証 図 2 燃料電池発電設備と太陽光発電設備のダブル発電の例 図 3 太陽光発電設備とのダブル発電となるケース 図 4 認証区分別の試験項目 [業界報告] 63 業界報告 システム検討委員会において、解釈上水素を原燃料とす 有するものとし、排出水素濃度の基準は、水素の爆 るものも含まれるとした結果に基づき、第 9 版では都市 発下限界(LEL)とした。 ガス、液化石油ガス等を燃料とする燃料改質装置がある ものと水素燃料機器の構造上の差異を明確にし、それに ② 水素燃料機器の触媒燃焼部を有するものは、触媒燃 対する安全項目を抽出し、水素燃料機器に関わる項目を 焼部で排ガス中の水素を燃焼処理できることから、 追記した。具体的な反映内容は以下の通り。 触媒燃焼状態を適切に管理することで安全性を確保 できる。このため触媒燃焼状態に異常が生じた場合 3.1 JEMA 共通認証基準第 9 版への反映事項 に、本安全装置が動作するよう、規定した。 注:( )内の頁は第 9 版の該当頁を示す (1)標準機器構成(P7 〜 8) ① 固体高分子形燃料電池(PEFC)は、都市ガス燃料 (4)点火・燃焼試験(P26 〜 28) ① 触媒燃焼部を有する場合の点火の確認については、 機で必要な燃料改質装置が不要となり、システムフ 触媒による反応が反応起動時間内に確立出来なかっ ローが大きく異なるため、図 5 に示す構成例を追加 た場合も含めて、使用する触媒の種類や予備加熱の した。 方法により大きく異なるために、製造業者の指定する 方法で実施することとした。さらに、燃焼及び運転 ② 図中の脱硫器/脱臭器については、水素供給事業者 状態の確認は、触媒の温度または温度変化速度が許 が保安上の理由で水素中に付臭成分(例:シクロヘ 容範囲外になった場合も含めて、製造業者の指定す キセン)を混合させる場合、燃料電池の安定動作の る燃焼検知手段によって、使用上の支障および異常 ためこれを除去するために脱硫器/脱臭器が必要と 停止の有無を確認することとした。 なる。ただし、この脱硫器/脱臭器の設置位置は、 システムの内部/外部のどこに設置されるべきかは 現時点で確定しておらず、ここでは内部にある場合 ② 触媒燃焼部の無い PEFC は、これらの試験を実施し なくても良いこととした。 の事例を示している。 (5)安全装置試験(P42) (2)燃料電池発電ユニットに関する基準(P14 〜 15) ① 触媒燃焼部の無い PEFC については、排ガス中に ① 水素を燃料とする PEFC については、燃焼部を持た 水素を排出する可能性があることから、排ガス中の ないために、点火・燃焼試験を実施できない。この 水素濃度が著しく上昇しないこととした。検出方法 ため、耐風及び耐雨試験における安定運転を確認す は、センサーあるいはそれと同等の機能を有するも る試験を新たに追加し、安全性を確認することにし のとし、排出水素濃度の基準は、水素の爆発下限界 た。 (LEL)とした。 ② 更に燃料極排ガスを空気で希釈して排出しているが、 ② 触媒燃焼部を有する PEFC は、触媒燃焼部で排ガス 適切に排出されているかを確認するために、起動、 中の水素を燃焼処理できることから、触媒燃焼状態 定格運転、最低負荷運転、停止完了までの運転状態 を適切に管理することで安全性を確保できる。この において排ガス中の水素濃度を確認する試験を新た ため触媒燃焼状態に異常が生じた場合に、本安全装 に追加し、安全性を確認することにした。 置が動作するよう、規定することとした。 (3)安全装置(P24 〜 25) (6)排ガス中の水素濃度試験(P48) ① 排ガス中に水素を排出する可能性があることから、 ① 触媒燃焼部の無い PEFC は、空気で希釈して排出す 排ガス中の水素濃度が著しく上昇しないこととした。 ることから、排ガス中の未反応の水素濃度を確認す 検出方法は、センサーあるいはそれと同等の機能を ることとした。冷機状態(停止状態または保管停止 64 電 機 2016・February 状態)より起動し、出力が定格出力到達後 30 分以 上経過した時点で負荷変動[定格出力⇒最低負荷出 4.あとがき 力]を行い、停止完了までの状態において排ガス中 今回の「家庭用小形燃料電池の技術上の基準及び検査 の水素濃度を測定し、4%を超えないことを確認する の方法(共通認証基準) 」第 9 版の発行により、周波数 こととした。 の切替運用と同じように、同一型式の燃料電池により逆 潮流有りと無しの両方の運用が可能となる。その結果メー ② 水素の空気中での爆発下限界(LEL)は 4%であり、 カからユーザに対して経済メリット等を向上させる幅広い 排ガス出口より排出されると瞬時に空気により希釈さ 提案ができるようになると期待される。また、水素を燃料 れることから、排ガス出口において 4%を超えなけれ とする燃料電池の試験基準と安全基準が明確になったこと ば、理論上燃焼範囲に入ることはない。 で、燃料多様化による燃料電池市場の拡大が見込まれる。 なお水素燃 料電池自動車の安全性に関する世界統 今回の改訂で、燃料電池特有の技術要件の認証基準 一基準(HFCV-GTR)の可燃性排気に対する安全 化は一段落し、今後は太陽光発電システム、ガスエンジ 性基準においても、水素パージ時においては、任意 ン発電システム等の分散電源と共通である系統連系技術 の 3 秒間において平均濃度が 4%を超えないこととさ 要件が「系統連系規程」に新たに追加された場合に、本 れている。 共通認証基準の改訂を行う予定である。 図 5 固体高分子形燃料電池(水素燃料)の機器構成 [業界報告] 65 業界報告 標準化活動紹介 【成 果】 IEC/SC23E/WG1、WG2 (小形の配線用遮断器・漏電遮断器) バルセロナ会議 出席報告 次の通り、関連規格の改正審議に参加すると共に、意 見提出、情報入手を行った。 IEC/SC23E 国内対応委員会 山口 健二 ◇ 【概 要】 開催会議 IEC/SC23E/WG1、WG2(小形の配線用遮 〈WG1〉 1.直流回路用の小形の配線用遮断器の規格案審議 現在規格がない、直流回路用の小形の配線用遮 断器(以下、配線用遮断器という)の規格開発が開 始された。主な内容は、次のとおり。 (1)配線用遮断器の遮断特性の一つである瞬時引 き外し電流領域について、交流/直流の両回 断器・漏電遮断器) 路用の配線用遮断器の規格(IEC 60898-2)に 開催期間 2015 年 11 月 10 日 ㈫ ~ 12 日 ㈭ :WG2 ある直流回路用の規定値との整合を議論し、電 (小形の漏電遮断器) 流-時間積(I2t)での遮断特性の決定であり、 2015 年 11 月 12 日 ㈭ ~ 13 日 ㈮ :WG1 (小形の配線用遮断器) 開催地 バルセロナ(スペイン) 参加者 14 カ国 27 名(日本含む) IEC 60898-2 の直流回路用の規定値を採用でき る意見もあったが、実験を行うこととなった。 (2)配線用遮断器の定格電流以下でのアーク消 弧しにくい領域の試験に対して、ドイツメン 【出席背景など】 バーから、定格電流までの範囲ではなく、直流 1500A 以下という範囲拡張を提案してきたが、 原案のとおり定格電流までの範囲とする方向と 1.製品:小形の配線用遮断器・漏電遮断器 なった。 2.背景(全般) :輸出品は IEC 規格適合、国内品は JIS 規格適合。 〈WG2〉 1.漏電保護装置の Group Safety Publication(GSP) IEC 規格の変更は、JIS の規定・製品設計に影響する。 WG2 及び 親組織の SC23E で決定された IEC/ IEC 規格の動向把握と、IEC 規格への一般社団法人 TR 60755※1 の(IEC における共通安全要求規格) 日本電機工業会(JEMA)意見に対するフォローを行う。 として規格化について、新規規格提案文書(NP) に対する各国意見の審議を行った。 3.審議アイテム 〈WG1〉 (1)直流回路用の小形の配線用遮断器の規格案 〈WG2〉 (2)1.漏電保護装置の Group Safety Publication、2. 直流回路用の小形の漏電遮断器、3. 自動再投入 (※1 General requirements for residual current operated protective devices) この GSP は、当該の SC23E の所管規格として 発行されるが、他の規格開発組織(TC、SC)の 製品規格にも参照を推奨される規格である。 (1)JEMA から、現行、規定がある漏洩電流の検 漏電遮断器、4. 定常過電圧保護装置、5. 自己診 出特性のタイプ A(正弦波検出+脈流検出) 、 断機能、6. その他 タイプ F(タイプ A +高周波検出) 、タイプ B ◇パナソニック株式会社 エコソリューションズ社エナジーシステム事業部 品質革新センター技術総務グループ 技術法務チーム チームリーダー 66 電 機 2016・February (タイプ F+直流検出) に加えて、IEC 62752※2 荷の電圧アンバランス、誤結線等による過電圧を検 に規定がある漏洩電流の検出特性(タイプ A 出する装置(POP)に関する規格:EN50550※3 を +直流検出)を、新しいタイプとして追加する ベースとした新規規格提案文書(NP)の各国意見 べき旨の提案を行ったが、汎用で活用できる特 の照会が行われた。これら意見は、WG2 傘下に検 性ではなく、EV 充電用という限定的な仕様で 討組織を設けて検討することとなった。 あるため、GSP への導入は否決された。 (※2 In-Cable Control and Protection Device for mode 2 charging of electric road vehicles〔IC-CPD〕 ) (2)SC23E の所管は、いわゆる産業用途の漏電保 (※3 Power frequency overvoltage protective devices for household and similar applications, POP) 5.自己診断機能(Self Testing End-of-Life〔STEOL〕 function) 護装置は含まれていない。産業用途の漏電保護 漏電遮断器の漏電電流の検出回路に対する故 装置を検討している組織から、産業用途で一般 障 検 出 に つ い て、UL934※4 に あ る STEOL の 的に活用していない「感度電流の設定変更は工 IEC 規格化の提案が米国メンバーからなされた。 具を使用」の記載の削除意見があり、一般使用 UL934 の内容確認が必要とのことで、次回以降 者も操作が可能な装置に限定という条件付きで の WG2 で検討とした。 意見採用となった。 (※4 Ground-Fault Circuit-Interrupters) 2.直流回路用の小形の漏電遮断器の検討 現在規格が存在していない直流回路用の小形の 6.その他 太陽光発電システムの直流回路におけるアー 漏電遮断器(以下、漏電遮断器という)の規格 ク検出装置、直流回路全般に対する漏電遮断器、 化検討は、WG2 傘下のタスクフォース(TF)に 漏電モニターに関して、フリーディスカッションが て、新規規格提案文書(NP)を作成している旨 行われた。 の報告が行われた。 3.自動再投入の機能(ARD) 自動再投入の機能は、一般回路用ではなく、山 【今後のアクション】 新しい規格発行に向けた直流回路用の配線用遮断器、 岳地等の特殊場所の電気設備に搭載される配線 直流回路用の漏電遮断器、自動再投入の機能、定常過電 用遮断器・漏電遮断器への付加機能である。今 圧保護装置、自己診断機能や、GSP の議論に対して、既 回、新規規格提案文書(NP)に対して、各国意 存製品への影響の有無の確認を行いつつ、意見を提出し 見の検討が行われた。 ていく。 JEMA からは、自動再投入の機能の規定作成 が進んでいる産業用の漏電遮断器の規格案(IEC 60947-2)との整合について意見を提出したが、 この付加機能は、電気に対して知識を有しない 操作者も対象であるため、産業用の IEC60947-2 とは似て非なる機能であることが確認され、意 見の全面採用とならなかった。 4. 定 常 過 電 圧 保 護 装 置(Permanent Overvoltage Protective Device:POP) 三相 4 線式の回路における中性相の欠相時の負 会議風景 [業界報告] 67 業界報告 を接続することができる IEC 60320-1 及び IEC 60320-3 IEC/TC61(家電機器の安全) シドニー会議 出席報告 で規定する「Appliance outlets」並びに IEC 60884-1 及 び IEC/TR 60083 で規定する「Socket-outlets」がある。 第 59/61/116 小委員会 WG1 主査 佐藤 政博 ◇ 【概 要】 機器付属のアウトレットは、いわゆる壁用コンセントの形 状と同じものが使用されている場合が多く、使用者が容 量の使用限度値を一般のコンセントのものと誤解する危 険があるため、これらに対する新たな構造規定が審議さ れている。今回の提案では、アウトレット負荷「Outlet 開催会議 IEC/TC61(家電機器の安全) load」というものを定義(3 項)することにより、機器の 開催期間 2015 年 11 月 16 日 ㈪ ~ 11 月 20 日 ㈮ 入力測定(10 項)や平常温度上昇試験(11 項)等の試 開催地 シドニー(オーストラリア) 験時にアウトレットに接続する負荷条件を明確にしてい 参加者 参加者:22 ヶ国 74 名(日本含む) る。さらに、アウトレットに接続する負荷が過負荷となっ た場合の保護に対する構造要求(ブレーカーやヒューズ 【出席背景・目的】 の要求:22 項)も明記している。この提案は、次回もま た CD(委員会原案)として審議される予定である。 IEC/TC61 は、主に家電機器(いわゆる白物)の安 全規格である IEC 60335-1(通則) 、IEC 60335-2-2 ~ -111(個別規格) 、IEC 61770(水道接続用ホース等) 、 2.機器の入力(定格電力)の測定について (IEC60335-1 の 10.1 項関連) IEC 62115(おもちゃ)を担当している。 (個別規格の一 以前にも紹介した通り、IEC60335-1(5 版)の改訂版 部は SC が担当、TC61 は 70 余りを担当)そのため会議 (Amendment 1)において、入力に対する試験方法が変 は年 2 回開催されている。最近、一部 SC の廃止により 更となった。入力が変動するものに対して、これまでは、 担当規格が増加したため年 2 回の開催でも審議が追いつ 代表的な部分(例えば、洗濯機の洗濯サイクル等)の入 かない場合も出ている。 力の算術平均をとることとなっていた。ただし、どの程 IEC 60335 シリーズは、各国が強制規格として採用し 度入力が変動した場合に算術平均値をとるべきかについ ており、その要求内容は海外の家電事業に大きく影響す て必ずしも明確ではなかった。新たに改正された規定で ることも考えられる。また、国内では電気用品安全法(電 は、入力の変動が比較的大きい場合(代表的な部分の入 安法)技術基準の IEC 整合化(国際整合 JIS 規格の採 力の算術平均値の 2 倍の値がその最大値を超え、かつ、 用等)が加速しており、この点でも重要度が増している。 その値が全体の 10%以上を占める場合)にのみ、最大値 をとることになっている。今回の会議でも、種々の入力 【主な審議等の紹介】 測定に関連する案件(61/4865/CDV 等)が審議された が、現行の規定を見直すべきとの意見が出された。これ 今回の会議は、業務用厨房機器関連の案件が追加され らの意見を考慮して、この試験に係るガイダンス文書を たため特に議題が多くなったが、この中で複数の機器に IECEE-CTL(試験機関委員会)の枠組みで作成するこ 関連する議題に焦点を当ててここに紹介する。 ととなった。このタスクは CTL と TC61 とのリエーゾン を務めている私に委ねられている。この問題については、 1.機器用コンセントに対する追加要求事項 (IEC60335-1 の 22 項) (通則関連文書:61/4970/CD) 機器付属のアウトレットには、標準化され様々な機器 ◇一般財団法人 電気安全環境研究所 電気製品安全センター 技師長 68 電 機 2016・February 日本国内でも多くの疑問が出されているため、できるだけ これらの意見を反映したガイダンス文書を作成したいと 考えている。 場 所 3.洗濯機、食器洗い機等の作業面(Working surface)を有する機器に対する液体漏えい試験 (IEC60335-2-xx の 15.2 項関連) Politecnico di Milano, Bovisa Campus 海外参加者 YASUTAKE Yuko(Secretary/A&E Communications:Japan) CASALENGO Andrea(Politecnico di この要求事項は、作業面(水平で平らな面)を有する 機器で、その上に洗剤等を置いたりする可能性があるも Milano:Italy ) のに対して規定されている。液体洗剤等がこぼれて、ス ROCKWARD Tommy(Los Alamos イッチ等の電装部品に対して安全が損なわれないことを National Laboratory:US) 確認する試験である。関連する規格間(IEC60335-2-4 SQUADRITO Gaetano(CNR-ITAAE: (脱水機) 、IEC60335-2-5(食器洗い機) 、IEC60335-2-7 Italy) (洗濯機) 、IEC60335-2-11(タンブラー型乾燥機) )にお HINDS Gareth(NPL:UK) いて不統一となっているとの指摘により改正案が出された JUNGMANN Thomas(Fraunhofer ISE: ものである。現行の要求事項は規定の液体及びその量を Germany) 対象となる部分に注ぐというものである。スイッチ等が複 日 程 数点在するものに対しては、1 回の試験で行うのではなく、 2015 年 12 月 8 日 ㈫ 東京発~ミラノ着 個別に行うことが確認されている。規定の液体が異なる 2015 年 12 月 9 日 ㈬ Secretary と事前準備打合せ ものの、同じ安全視点で規定されている 1%の食塩水を 2015 年 12 月 10 日 ㈭ ~ 11 日 ㈮ 漏えいする試験は、他の個別製品規格にも存在しており、 今回の明確化は大変参考なると考えられる。 IEC/TC105 WG11 会議出席 2015 年 12 月 12 日 ㈯ ミラノ発~東京着(翌日) 【背景と目的】 IEC TS62282-7-1 Test methods - Single cell performance tests for polymer electrolyte fuel cells(PEFC) の改訂(Ed.2 作成)のため、前回 2015 年 6 月のジュ ネーブでの第 3 回ドラフト審議会議の結果を盛り込んだ 会議風景 委員会原案(CD)に対して寄せられた各国からのコメン トについて審議を行う。 IEC/TC105/WG11 (燃料電池単セル・スタック試験法) ミラノ会議 出席報告 【成 果】 技術仕様書原案(DTS)を 2016 年 2 月末頃までに IEC/TC105/WG11 木下 伸二 ◇ 【会議の概要】 出張目的 IEC/TC105/WG11 第 4 回国際会議 (イタリア ミラノ市)へ出席 出席者 小関和雄(FCDIC) 、木下伸二(旭硝子) TC へ提出する必要があるため、482 件のコメント審議は、 Technical を優先して審議。Editorial のうち、その多く はケアレスミスでもあるため、コンビナとセクレタリが中 心になって対応する事として進めた。なお、Technical に ついても前回会議までに多くの議論を重ねてきたこともあ り、大きく内容が変更するようなものはなく、説明不足や より適切な表現への対応が大半であったため審議は順調 に進んだ。 ◇旭硝子株式会社 中央研究所 [業界報告] 69 業界報告 結果は 、Technical を中心にすべてのコメント審議を終 持ち帰り、変更案文を作製する。 了。改定案文作成については、そのいくつかは宿題事項 とし、担当者が持ち帰り電子メールにて対応することとし た。2016 年 2 月末までに DTS を作成し 、TC105 事務局 へ送付する予定。 【今後の予定】 ・2 月初旬:Draft DTS を WG11 experts に回覧 ・2 月末:DTS を TC へ提出 【会議内容】 ・投票のために 3 ヶ月間回覧 ・5 月末:投票期限 1.開会と経緯・進行についての説明 ・6 月下旬:投票時のコメントについての審議 1.1 本会議のホストをPolitecnico di MilanoのAndrea ・8 月末:技術仕様書(TS)を TC へ提出 氏と CNR-ITAAE の Gaetano 氏に務めていただく中、 次回会議 小関コンビナの開会宣言で会議を開始。 ・候補日および場所:2016 年 6 月 23 日 ㈭ ~ 24 日 ㈮ 、 ワシントン DC 1.2 Andrea 氏より施設内での予定詳細について説明。 さらに Lab Tour の申し出があり、審議時間が許せば実 ・目的:DTS に対するコメント審議 施していただくことで出席メンバーが合意。 1.3 参加者全員の自己紹介。 1.4 小関コンビナより今までの経過および今後のスケ IEC/TC117(太陽熱発電システム) マドリッド会議 出席報告 ジュールについての説明。また、前回議事録が承認済 みであることを確認。DTS を 2016 年 2 月末頃までに TC へ提出する必要があるため、482 件のコメント審議 一般社団法人 日本電機工業会 は、Technical を優先して審議を進め、Editorial はその 新エネルギー部 専任次長 多くはケアレスミスでもあるため、コンビナとセクレタ 柴田 和男 リが中心になって対応することとして進めた。 【概 要】 2.コメントの審議 Technical について順次審議。審議したコメントと変更 開催会議 IEC/TC117(太陽熱発電システム) 内容のいくつかについて以下に記す。 開催期間 2015 年 12 月 9 日 ㈬ ~ 12 月 11 日 ㈮ ▶ Comment 開催地 70:8.3 Table.1 Parameters and units に記 載の NTP を、より実際的な 0℃基準の STP とする。 ▶ スペイン規格協会(AENOR)本部 1.1 会議室(マドリッド) Comment 89:I-V characteristics tests よりも Polar- 参加者(敬称略・順不同) ization curve test が一般的であるため、Polarization curve test に統一する。 ▶ Comment 柴田和男(JEMA) 230:Annex C が Informative になっている が、Normative に変更する。 ▶ Comment 吉田一雄(エネルギー総合工学研究所) * TC117-Plenary への各国出席者数:26(6 か国:中国、デンマーク、スペイン、イスラ 258:11.6 Internal Resistance(IR)measure- エル、イタリア、日本及び IEC 中央事務局) ment について、 その測定方法や条件例の記載が不十分。 11.6.1、11.6.2の記載を見直す。 (Gareth氏 Homework) ▶ Comment 325:C.12.3 ORR activity test に お い て、 水素リークと短絡電流を補正するように手順を追記。 1.会議開催の背景等 IEC/TC117(Solar Thermal Electric Plant) は、 毎 年 Plenary 会議を開催しており、東京国際フォーラムで D. 開催した 2014 年 11 月開催の会議に引き続き、今回はマ Leak Test に関するコメントについては、Thomas 氏が ドリッドで開催した。この会議は、通常の開催スケジュー ▶その他:ドイツからの追加コメントのうち、Annex 70 電 機 2016・February ルにより、傘下の 2 つの Project Team も同時開催した。 ここでは TC117/Plenary 会議の経過について報告する。 2.2 TC117 傘下のプロジェクト (1)パラボリックトラフ型集熱装置(PT62862-3-2) プロジェクトリーダの Ms. Fabienne Sallaberry (スペイン)より、活動報告があったのち、審議 2.主な決定事項等 ◎ Plenary 会議では、今回から新議長に就任したドイツ 中の WD の概要について紹介があった。WD は の Werner PLATZER 氏の司会により議事が進められ、 ISO/TC180(太陽熱)で改正審議中の ISO9806 各プロジェクトリーダからの進捗状況報告と課題対応 (Solar energy − Solar thermal collectors − Test について審議が進められた。 methods)との間で集熱装置の性能試験条件など で規定上の重複を避けるための確認作業が必要 2.1 太陽熱発電システム(STE-P)市場動向 であるとのことから、ISO9806 を担当する ISO/ 太陽熱発電システムに関する欧州や中東各国の市場 TC180/WG1 との合同で Web 会 議を開 催する 動向について、TC117 セクレタリからスライドにより ことになった。合同 Web 会議は 2016 年 1 月 27 紹介があった。主な事項は以下のとおり。 日 ㈬ に開催を予定した。また、PT62862-3-2 と 国名等 スペイン フランス 稼働中又は計画中の設備 総発電量 2,304MW 稼働 2020 年の目標 5,000MW 12MW のフレネル形をコルシカ島に 2014 年 4 月から建設中、 2015 年第 4 四半期稼働目標 2017 年中旬に 9MW Fresnel CSP 運用開始 以下のプラントが稼働 (1)Sicily 島の Mazzara に 50MW タワー型システム イタリア (2)Gela Sardinia 地区に 12MW PTC 溶融塩型蓄熱システム (3)Villasor 地区及び Gonnosfanadiga 地区に 55MW パラボ リックトラフ型システム+溶融塩型蓄熱システム (4)Banzi(Basilicata)地区に 50MW parabolic trough + 液体蓄熱システム ギリシャ NER 300 initiative 研究開発支援プロジェクトによるタワー型 システム及びディッシュ型システムが稼働している キプロス NER 300 initiative 研究開発支援プロジェクトによる 25MW の小形のタワー型システムにオーストラリアのグラファイト蓄熱 システムをセットした「EOS プロジェクト」が進行中 アメリカ Solana(280MW)、Ivanpah(390MW)、Genesis (250MW)、Crescent Dunes(110MW)及び Mojave (280MW)で、それぞれプロジェクトが稼働しており、総発電 量で 1845MW のシステムが稼働している モロッコ 合計 165MW の STE-P が稼働中 10MW の Tower 形 plant が完成 中 国 50MW plant が建設中 2×135 MW の tower 形プラント及び 50MW のパラボリック トラフ型システムの建設を開始 インド 50MW パラボリックトラフ型システム、100MW フレネル形が 完成 イスラエル 110MW パラボリックトラフ型システム、及び Tower 形 plant の建設を開始 オーストラリア 44MW のフレネル形プラントが完成間近 チ リ 17,5 時間の蓄熱装置を持つ 110MW の plant で、一部 PV と のハイブリッド型の建設が決定 STE による発電量は 2050 年までに世界の総発電量の 11%を 占める IEA Roadmap (参考) 中東及びアフリカの STE は、アメリカの STE や PV と同様に 2050 年までに主要な発電システムとして位置づけられる して原案作成作業のため 2016 年 3 月 16 日 ㈬ に Web 会議を開催することにした。なお、ISO/ TC180 との連携要員(Liaison Member)として Stephen Fischer 氏が選任された。 (2)集光装置(PT62862-3-3) 当プロジェクトはリーダが交代することにな り、イスラエルの Ms. Gali Pahl がリーダとし て承認され、作成中の WD の概要について紹 介があった。この原案も ISO/TC180 で作成し た ISO 22975 series(Solar energy – Collector components and materials)との規定上の重複・ 矛盾をなくすため、見直し作業を行うことにして いる。 (3)太陽熱発電用語(PT62862-1-1) プロジェクトリーダのスペイン Lourdes González Martínez 氏より、プロジェクトの進捗状況につい て報告があった。用語に関しては、IEC/TC82(太 陽光発電システム)及び ISO/TC180 でまとめて いる用語との整合作業を行うことにした。 (4)蓄熱システム(PT62862-2-1 及び PT62862-2-2) 臨時プロジェクトリーダのスペイン Esther Rojas Bravo 氏よりプロジェクトの進捗状況について報 告があった。蓄熱システムに関する規格案(WD) は、一般事項(General Characteristics)と間接 蓄熱(indirect TES using fluid media)の個別事 項に分けることにし、1 月末までに具体的な作業 欧州では STE の主要市場とはならないが、南欧州地域の STE に よる発電量は総発電量の 4% を終え、2 件の原案(CD 用)を 2016 年 9 月ま STE による発電量は、2050 年までに 1000GW に達する でに完成させる。 [業界報告] 71 業界報告 PT の次回会議は、2016 年 2 月 23 日㈫に Web も出席する予定である。 会議を開催し原案の取りまとめ作業を行う。 (5)基準太陽年(PT62862-1-2 及び PT62862-1-3) 新プロジェクトリーダのスペイン Ibon Salbidegoitia Garcia 氏より、プロジェクトの進捗状況につい て報告があった。当プロジェクトチームは、 「日射 量算出評価のシミュレーション手法」と「データ の収集フォーム」の 2 件のプロジェクトを進めて おり、グループの審議に IEC/TC82 から関係者を 呼んで審議を進める。 (6)フレネル形太陽熱集熱装置(PT62862-5-2) 新プロジェクトリーダの Piero Pili 氏(スペイン) より、プロジェクトの進捗状況について報告があっ た。具体的な原案(WD)はまだ纏まっていない。 中国から当グループへの新規参加の申し入れが あった。 TC117 Plenary 会議風景(AENOR 101 会議室) (7)関連委員会との連携(Liaison) プロジェクトを進めるうえで連携が必要な委員会 (TC)が多く、以下について Liaison メンバーを確 認した。 IEC/TC5(タービン)、ISO/TC180(太陽熱)、 IEC/ISO JWG ECD 62959 (環境配慮設計)KISTA (シスタ)会議 出席報告 IEC/TC192( ガ ス タ ー ビ ン )、SolarPACES は Task ごとに設定した。また、新たに IEC/TC1 一般社団法人 日本電機工業会 (用語) 、IEC/TC82(太陽光発電)、IEC/SC8A 環境部 担当次長 齋藤 (大容量再生可能エネルギー発電所の系統連系) との Liaison を追加した。 3.今後の予定及び日本としての対応 (1)次回は 2016 年 10 月の IEC General Meeting 開催 潔 【概 要】 開催会議 IEC/ISO JWG ECD 62959(環境配慮設計) に合わせて期日を設定することにした。 開催期間 2015 年 11 月 16 日 ㈪ ~ 18 日 ㈬ なお、2016 年の IEC General Meeting では WG 開催地 KISTA(シスタ、スウェーデン) や PT の会合は開催できない見込みのため、会議 参加者 13 ケ国 22 名 開催が必要なプロジェクトチームがある場合は、 IEC 中央事務局での開催が可能である旨の説明が あった。 各プロジェクトチームの WD は、適宜国内のメ 【背 景】 2004 年 10 月 に 発 足 し た IEC/TC111 - Environ- ンバーあるいは分科会で内容を検討する。 mental standardization for electrical and electronic 日本から提案予定の「集光装置の性能評価方法」 products and systems は、電気・電子機器全般に共通す について、提案をまとめる計画としている。 る環境分野の国際標準化を検討する役割を担っている* 1。 (2)Solar PACES は、2016 年 10 月 10 日 か ら 14 日 TC111 は、近年の国際的な環境問題への関心の高まりを に UAE での開催が決まっており、TC117 関係者 受け、電気・電子機器の環境法規制に関連する整合規格 72 電 機 2016・February (参照規格) 、サプライチェーン間での環境配慮に関する goods and services. This International Standard is 共通ルールとしての国際標準規格の開発を中心に、その applicable to all products within all sectors and is 活動を推進している。TC111 の議長は市川芳明氏(日立 also applicable to organizations regardless of size 製作所)が務めており、TC の運営、国際エキスパートに and type. よる規格開発作業への参画や新規作業提案及び WG 主 (全ての製品・サービス分野〈組織の大きさや種類に 査の就任など、日本は業界を挙げて積極的に貢献してい かかわらず〉に適用できる環境配慮設計の原則、 〈必 る。 要な〉要求事項と〈有用な〉ガイダンスを提供) こうした中で、2014 年の TC111 東京会議において、 2009 年 2 月 に 発 行 し た IEC 62430 Ed.1.0(Environ- 2.開発文書の発行までの作業スケジュール(概略は 以下の通り) mentally conscious design for electrical and electronic ・2016 年 1 月末~ 2 月上旬 CD(1st CD)発行 products)/JIS C 9910「電気・電子製品の環境配慮設 ・2016 年 7 月 第 3 回 JWG 会議 計」 (2011 年 3 月)の改正について、IEC 主導で IEC/ ISO のダブルロゴ標準の開発を進めること、その日本提 ・2017 年 2 月 CDV 投票 案の文書(提案文書= New work item proposal、以下 ・2017 年 7 月 FDIS 発行 NWIP)が、IEC/TC111、ISO/TC207( 環 境マネジメ ・2017 年 12 月 IS 発行 ント)の両方で承認されたことから共同 WG(JWG)を CD(2nd CD)発行 3.開発文書の構成 スタートすることが合意された。JWG のコンビナーは TC111 の山田教授(筑波大学) 、また、共同コンビナー 7 月のブリュッセル会議での合意を一部見直し、今 回のシスタ会議では、1st CD の発行において以下の構 には ISO/TC207 から Mr. Daniel Trillos が就任し、2017 成とすることを確認した。 年の国際標準規格発行をめざして活動を開始している。 INTRODUCTION 1 Scope 2 Normative references 3 Terms and definitions 4 Principles of environmentally conscious design(ECD)環境配慮設 計の原則〈Principles(原則)〉 4.1 General 4.2 Life cycle thinking 4.3 Legal and other stakeholders’ requirements 4.4 Relationships between the management strategy of an organization and ECD 5 Environmentally Conscious Design Process(ECD Process)環境配 慮設計のプロセス(手順)〈Requirements(要求事項)〉 5.1 General 5.2 Analysis of legal and other stakeholders’ environmental requirements 5.3 Identification and evaluation of environmental aspects and corresponding impacts ル会議で確認した内容をフォローし、各国の国内委 員会に回覧する 1st CD において以下の通りとする。 5.4 Design and development 5.5 Review and continual improvement 5.5.1 Process review, 5.5.2 Design review, 5.5.3 Records of reviews タ イ ト ル:Environmentally Conscious Design – 5.6 Information exchange for supply chain collaboration(“プライチェ ーン間の環境配慮設計に係る関連情報のコラボレーション” とし て、タイトルを見直し) (* 1 環 境 分 野の国際 標 準 化 活 動では、国際 標 準 化 機 構〔 以 下、ISO: International Organization for Standardization〕の TC207〔 環 境 管 理 〕 と双璧をなす関係にある。 ) 【審議概要と成果】 JWG は、“IEC/ISO JWG ECD 62959” として活動を 開始し、2015 年 3 月の準備会議(ミラノ)を経て、7 月 に第 1 回会議(ブリュッセル) 、そして、今回、11 月に第 2 回会議(シスタ)が開催された。今回の会議では、そ の成果として以下の内容が確認された。 1.開発文書のタイトルとスコープ ・開発文書のタイトルとスコープは、7 月のブリュッセ Principles, Requirements and Guidance ス コ ー プ:This International Standard explains principles, specifies requirements and provides guidance to integrate environmental aspects into design and development process for products. Hereafter, the term products is taken to mean both Annex A(informative)Fundamentals of environmentally conscious design Annex B(informative)Elaboration of Environmentally Conscious Design Process(ECD Process) Annex C(informative)Examples categories of tools Annex D(informative)(新しい Annex を追加)– Sector specific examples [業界報告] 73 業界報告 4 章:Principles(原則) 既 存 文 書(IEC 62430 Ed.1.0 2009) で 要 求 事 項 環境配慮設計として、製造業の他分野への適用は十分に 応用できる内容になっているが、ISO とのダブルロゴ標 (shall)として記述していた内容は、 「5 章へ移動させる」 準であり、製造業以外のあらゆる業種(例えば、農業、 というブリュッセル会議での決定に基づき、文書を見直 金融業…)への適用も考えなければならない。さらに最 し。スコープを電気・電子製品(サービスを含む)以外 近の新たなビジネスモデルとして、“モノ” ではなく “機 の様々なセクターに拡大するなかで、より一般的な “原 能” を提供するサービス分野にもどこまで有用な要求事 則” としてふさわしい内容へ文章をブラッシュアップ。 項やガイダンスを適用できるか、検討においての課題と なるが、これについては 1stCD 発行以降に具体的な検討 5 章:Requirements(要求事項) 既存文書の要求事項の内容(Shall 部分)は、基本的 には変更しないという方針の下に検討。 を進めていく予定である。1st CD の段階では、先ずは、 核となる 4 章と 5 章の内容を確定させていくことに重きを 置いた検討としている。 議論の中では、しばしば、その方針を逸脱する発言や 提案も出てくるが、スコープを電気・電子製品(サービ スを含む)以外の様々なセクターに拡大する中での要求 【所感及び今後のアクション】 事項への適合については、Annex B(5 章の shall 内容 IEC/TC111 の国際標準化活動は、欧州を中心とした の How to を記載)や Annex D(5 章の shall 内容の実 急速な環境規制への対応として、企業が、国際的なサプ 際の適用に関する事例)で有用な事例等を盛り込む)で ライチェーンの中でサプライヤーやステークホルダーとコ 対処する。シスタ会議でも、以上の基本認識を確認しつ ミュニケーションを図りながら、コンプライアンス(遵法) つ文書の内容を検討。 を円滑かつ実効的に進めていくという点において、大きな (4)1st CD の発行に向けて 役割を果たし、また、貢献している。 実際、電気・電子製品のサプライチェーンの上流には、 7 月のブリュッセル会議で、開発文書の構成を踏ま 素材・部品産業があり、また、下流には流通産業が存在 え、各章や Annex について共同 WG のエキスパート していることから、国際的なサプライチェーンでの対応を による文書作成チームを編成することを確認した。今回 考えれば、業種の垣根を超えて環境配慮に関連するルー のシスタ会議では、核となる 4 章「Principles of envi- ルの共有化が必須になる。環境配慮設計はもとより、例 ronmentally conscious design(ECD)環境配慮設計の えば、IEC TC111 では、環境配慮設計以外にも、RoHS 原 則〈Principles( 原 則 ) 〉 」と 5 章「Environmentally 規制や REACH 規則等製品に含有される特定物質使用 Conscious Design Process(ECD Process)環境配慮設 制限等の対応に係る国際標準も開発している。こうした 計のプロセス(手順) 〈Requirements(要求事項) 〉 」を 中心にグループ討議も行い、1stCD 文書の叩き台を検討 中で、日本が主導する環境配慮設計国際標準規格開発の した。4 章、5 章はいずれも日本のエキスパートがグルー あり、大きな価値があることと認識している。ブリュッセ プリーダーとして文書作成の取りまとめを行い、シスタ ル会議、シスタ会議と、各国から集まった IEC 及び ISO 会議後、12 月中に一旦その取りまとめを終えた。今後、 2016 年 1 月末から 2 月上旬に 1stCD を発行し、各国の のエキスパートメンバーは皆アクティブであり、共同 WG 国内委員会に回付してコメントを募集(90 日)する予定 規格発行というゴールは確認されており、引き続き、全 になっている。 員でその方向性を確認できた非常に有意義な会議であっ IEC/ISO 共同 WG の活動は、その先例となる取組みで の運営面では事務手続き等難しい面もあるが、2017 年の たことを報告する。 既存文書の IEC 62430 Ed.1.0 は、電気・電子製品の 74 電 機 2016・February ュ フラッシス ニュー 一般社団法人 日本電機工業会 2016年 年賀交歓会(大阪) 大阪支部では、1 月 7 日 ㈭ 、中央電気倶楽部「大ホール」において、2016 年 年賀交歓会を会員、来賓など 約 150 名の参加を得て開催した。 まず、小林彰裕 大阪支部長の挨拶にはじまり、津田純嗣 会長挨拶の後、来賓を代表して、関総一郎 経済産業 省 近畿経済産業局長よりご挨拶をいただき、会員の真鍋靖 株式会社 日立製作所 執行役員 関西支社長のご発声 により乾杯が行われた。 小林彰裕 大阪支部長 関 総一郎 経済産業省 近畿経済産業局長 津田純嗣 会長 真鍋 靖 株式会社 日立製作所 執行役員 関西支社長 [業界報告] / [フラッシュニュース] 75 一般社団法人 日本電機工業会 2016年 年賀交歓会(名古屋) 名古屋支部では、1 月 13 日 ㈬ 、キャッスルプラザ 4 階 「梓の間」 において、2016 年 年賀交歓会を会員、来賓など 約 60 名の参加を得て開催した。 まず、中嶋正博 名古屋支部長の挨拶にはじまり、海老塚 清 専務理事挨拶の後、来賓を代表して、田島雅俊 経済 産業省 中部経済産業局 産業部次長よりご挨拶をいただき、松村年郎 名古屋大学 大学院 工学研究科 教授のご発声 により乾杯が行われた。 中嶋正博 名古屋支部長 田島雅俊 経済産業省 中部経済産業局 産業部次長 海老塚 清 専務理事 松村年郎 名古屋大学 大学院 工学研究科 教授 76 電 機 2016・February ュ フラッシ ニュース 一般社団法人 日本電機工業会 2016年 年賀交歓会(福岡) 福岡支部では、1 月 8 日 ㈮ 、ホテルハイアットリージェンシー福岡 2 階「リージェンシーⅡ」において、2016 年 年賀交歓会を会員、来賓など約 60 名の参加を得て開催した。 まず、福重康行 福岡支部長の挨拶にはじまり、海老塚 清 専務理事挨拶の後、来賓を代表して、堀尾容康 経済 産業省 九州経済産業局 地域経済部長よりご挨拶をいただき、会員の田處正隆 株式会社 キューヘン 代表取締役 社長のご発声により乾杯が行われた。 福重康行 福岡支部長 堀尾容康 経済産業省 九州経済産業局 地域経済部長 海老塚 清 専務理事 田處正隆 株式会社 キューヘン 代表取締役社長 [フラッシュニュース] 77 統計 ■ 電機・電子産業の生産額 (経済産業省「生産動態統計調査」による) (単位:百万円,%) 2015 年 9 月分 機 種 金 額 2015 年 10 月分 前年同月比 金 額 2015 年 11 月分 前年同月比 金 額 前年同月比 発電用原動機計 ※ 91,270 127.4 17,598 29.1 21,338 51.2 回転電気機械計 ※ 76,538 84.1 74,717 84.3 69,630 86.6 静止電気機械器具計 ※ 70,262 86.0 61,701 95.1 61,193 99.4 136,415 102.7 105,629 98.6 109,319 109.5 民生用電気機械器具◎ 76,735 119.4 75,830 107.8 71,046 108.8 エアコンディショナ、フリーザ、除湿機◎ 59,614 110.8 76,388 109.0 74,020 117.4 電子計算機及び関連装置 107,832 103.0 77,667 89.2 76,023 93.0 電子管・半導体素子及び集積回路 551,593 102.8 523,735 101.1 498,281 99.8 57,303 104.2 61,270 98.1 57,497 102.9 電子部品 228,343 115.4 223,049 112.0 200,238 113.2 通信機械器具及び無線応用装置 111,844 95.9 80,331 107.6 69,533 88.2 電球、配線及び電気照明器具 86,787 110.8 101,297 110.7 103,889 120.3 電池 69,564 102.1 63,181 91.8 66,079 105.8 5,044 120.2 5,327 121.9 5,416 125.0 123,315 101.2 88,421 101.1 94,092 102.9 1,852,459 104.2 1,636,141 98.9 1,577,594 101.8 開閉制御装置・開閉機器計 ※ 民生用電子機械器具 事務用電子機器 電気計測器及び電子応用装置 合計 * 1:太字は JEMA 取扱い製品 * 2:※の和は重電機器の合計 ◎の和は家電機器の合計(下表の家電機器数値とは、対象品目に一部違いがあることから合致しない) ■ JEMA 取扱い製品(重電機器・家電機器)の生産・輸出入実績 生 産 (経済産業省「生産動態統計調査」による) 2015 年 9 月分 2015 年 10 月分 2015 年 11 月分 金額(百万円) 前年同月比(%) 金額(百万円) 前年同月比(%) 金額(百万円) 前年同月比(%) 重電機器 374,485 99.3 259,645 80.9 261,480 92.2 家電機器 135,532 115.3 151,430 108.5 144,169 112.9 510,017 103.1 411,075 89.2 405,649 98.6 【 合 計 】 輸 出 (財務省「日本貿易月表」による) 2015 年 9 月分 2015 年 10 月分 2015 年 11 月分 金額(千円) 前年同月比(%) 金額(千円) 前年同月比(%) 金額(千円) 前年同月比(%) 重電機器 194,983,624 原子炉およびその部分品 家電機器 輸 入 95.5 208,697,743 89.2 184,543,642 91.0 520,138 75.2 466,377 31.4 366,526 126.1 24,656,006 106.4 26,026,477 100.8 25,221,682 107.5 (財務省「日本貿易月表」による) 2015 年 9 月分 2015 年 10 月分 2015 年 11 月分(注) 金額(千円) 前年同月比(%) 金額(千円) 前年同月比(%) 金額(千円) 前年同月比(%) 重電機器 103,358,440 96.2 105,183,111 105.6 117,824,417 120.2 10,722 4.5 6,916 60.4 3,058 − 0 − 0 − 0 − 75,493,446 106.8 75,335,528 96.5 86,993,633 109.8 原子炉およびその部分品 核燃料要素 家電機器 (注)輸入の 2015 年 11 月分は速報値 78 電 機 2016・February 品目別の詳細な統計データーは、JEMA ウェブサイトで 公開しております(ダウンロード可能) 。 www.jema-net.or.jp ■ 電気機器生産実績の推移 重電機器・家電機器 合計 億円 % 140 7,000 130 6,000 120 5,000 110 4,000 100 3,000 90 2,000 80 1,000 70 0 , 14/11 12 , 15/1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 前年同月比(右目盛) 生産額 (左目盛) 8,000 0 年/月 重電機器 億円 % 140 7,000 130 6,000 120 5,000 110 4,000 100 3,000 90 2,000 80 1,000 70 0 , 14/11 12 , 15/1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 前年同月比(右目盛) 生産額 (左目盛) 8,000 0 年/月 家電機器 億円 % 140 7,000 130 6,000 120 5,000 110 4,000 100 3,000 90 2,000 80 1,000 70 0 , 14/11 12 , 15/1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 前年同月比(右目盛) 生産額 (左目盛) 8,000 0 年/月 [統 計] 79 電機 2016 年を迎えて、すでにひと月が過ぎました。読者の皆様 は、新たな目標に向かって前進されていると思います。今年は 暖冬の影響もあったのか、特に太平洋地方の各地は元旦から 晴天に恵まれ、ダイヤモンド富士を拝むことが出来ました。今 年は良い年になると確信しております。その前兆として昨年末 に理化学研究所(理研)の研究チームが、原子番号 113 番 の新元素発見者として国際学会から認定されました。日本が その元素の命名権を得たということで、新しい元素周期表を注 目したいと思います。この 113 番元素をめぐっては、理研と米 露の共同研究チームがその発見を競っていたそうです。米露の 研究チームは理研より 7 カ月早く113 番元素の発見を報告し ていたにもかかわらず、国際学会が理研を発見者と認めたのは、 理研の実験の質が高かったからなのです。この発見は、世界の 科学界の壁を乗り越え、日本の科学界のレベルの高さを世界 へ発信できた快挙だと思います。 『壁を乗り越えた』といえば、サッカー男子のリオデジャネイ ロ五輪のアジア最終予選を兼ねた 23 歳以下(U23)アジア選 発 行 , THE JAPAN ELECTRICAL MANUFACTURERS ASSOCIATION 編集兼発行人 松本 俊博 ■本 部・〒102-0082 東京都千代田区一番町17番地4 (電機工業会館) 電話03-3556-5882 ファクシミリ03-3556-5891 (本誌編集部) ■大 阪 支 部・〒530-0004 大阪市北区堂島浜2-1-25 (中央電気倶楽部4階) 電話06-6344-1061 ファクシミリ06-6344-1837 ■名古屋支部・〒460-0008 名古屋市中区栄2-10-19 (名古屋商工会議所ビル6階) 電話052-231-5211 ファクシミリ052-231-5610 ■福 岡 支 部・〒810-0004 福岡市中央区渡辺通2-1-82 (電気ビル北館10階) 電話092-761-4778 ファクシミリ092-751-2094 至九段下 女子学院高・中 至市ヶ谷 一番町 大妻通り 駅 り 麹町 ビ通 楽町線 有 コンビニ 農済会館 4 番出口 酒屋 麹町小 郵便局 麹町学園 女子高・中 GS 3 番出口 20 新宿通り 麹町 4 丁目 至新宿 半蔵門線 半 蔵門駅 ない場面に遭遇します。どんな壁でも乗り越えられると信じて いますが、なかにはあきらめが肝心な場合もありませんか。私 2016年2月23日発行 テレ も乗り越えられる手段はあるのです。 人生はいろんな壁にぶち当たり、必ず乗り越えなければなら 頒価540円(本体500円) 日本 手権で、日本代表がイラクに勝利して 6 大会連続 10 回目の 五輪出場を決めたこともその一つではないでしょうか。本大会 の開催地は、23 年前の『ドーハの悲劇』の地でもありましたが、 日本代表選手の活躍は、その悲劇を忘れさせてくれました。 一方、全豪オープンテニスでは、錦織選手が世界ランク 1 位 を独走しているジョコビッチ選手に完敗し、4 強入りを逃してし まいました。錦織選手の勝利を信じて声援を送った方も多かっ たと思いますが、ジョコビッチ選手の壁は桁外れの高さだったよ うです。 ところで、壁を乗り越えるためには何をしたらよいのでしょう。 一流のスポーツ選手は自分の技術を磨き、常に高いレベルの 技術を求めそれを体得するための行動を起こし、その行動を継 続しています。一般の方々には、なかなかまねができることで はありません。壁を乗り越えられないと思うことが、限界と感じ てしまうからなのでしょう。ある方は、 「壁を乗り越えるためには、 『①実力をつける』 『②方法を見つける』 、このどちらかの手段が 考えられる」と仰っておりました。険しい山を越えるのに、歩く だけの手段しかなければ限界と感じてしまうかもしれませんが、 飛行機、気球、自動車、列車などいくらでも方法は見つかりま す。何事も視野を広くして冷静さを忘れなければ、どんな壁で 2016 February 第782号 麹町 1 丁目 麹町 3 丁目 至永田町 パン屋 至内堀通り 至永田町 ■地下鉄半蔵門線 半蔵門駅下車 4番出口徒歩3分 ■地下鉄有楽町線 麹町駅下車 3番出口徒歩7分 は壁を乗り越える手段として、 『あきらめ』をついつい使ってし まいます…今年は、このあきらめの壁を乗り越えるための方法を 見つけたいと思います。 (matsumo.) 印刷所 港北出版印刷株式会社 〒150-0002 東京都渋谷区渋谷2-7-7 JEMAウェブサイト www.jema-net.or.jp 80 電 機 2016・February (JEMA会員については会費中に本誌頒価が含まれています。)[2016 ⓒ 禁無断転載]
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