歯科関連疾患の予防マニュアル - オーラルケアプロフェッショナル

歯科関連疾患の
予防マニュアル
̶オーラルケア製品の解説̶
監修 埴岡 隆 福岡歯科大学教授
歯間清掃器具等 患者の口腔環境や関心度、要望に応じて、適切に口腔清掃器具の情報を提供する事も予防歯科の役割です。歯の並びや
歯磨きのくせにより、どうしても磨き残しが出てきます。目的別の器具を上手に使用する事で、磨き残しをなくし、清掃
効果を高める事ができます。
歯間部清掃器具
歯周病の主な原因は、
磨き残しのプラーク(歯垢)ですが、
とりわけ歯間部(歯と歯の間の部分)には、プラークが残
この章では、代表的な歯間部清掃用の製品として、フロ
スと歯間ブラシを取り上げて解説します。
りやすくなります。
通常使用する歯ブラシでは歯と歯の間の部分のプラーク
は、約 6 割程度しか落とせないと言われています。歯間部
から歯肉の炎症が生じるケースが多いため、歯間部清掃用
器具(フロス、歯間ブラシ、タフトブラシ等)の併用が虫
歯や歯周病予防に効果的です。
健康日本 21 では、歯の健康に関する目標値として、40
∼ 50 代における歯間部清掃用器具を使用している者の割
合を 50%以上を目標としています。
歯垢染色剤で歯間部のプラークが染め出された口腔の状態。
デンタルフロス
歯間ブラシ
● 歯間部が狭く歯間ブラシが入らない部分に
● 歯間部に隙間がある場合に使用する
使用するので誰でも使用することができる
● デンタルフロスに比べて使用が簡便である
● 歯と歯が接する歯間のコンタクトポイント
● ブラッシングのように複雑なテクニックを
必要とせずに、歯間部のプラークが除去で
を通過できる
● 歯肉溝の清掃ができる
きる
●歯と歯周組織(右図)
歯肉溝
(3 mm 以内)と呼ばれる
れが深く、歯周ポケット
(4 mm
以上)
と呼ばれます。
歯周組織
溝
(隙)
があります。歯周病ではこ
歯
健康な人には歯と歯肉の間に
エナメル質
象牙質
歯髄
セメント質
歯肉
歯槽骨
歯根膜
歯肉縁部や歯肉溝にたまった
プラークが歯周病の原因に
象牙質
エナメル質
歯肉溝
3mmまで
歯肉
セメント質
歯槽骨
15
2.歯肉溝のプラークが除去できる
デンタルフロス
歯と歯肉の間にある「歯肉溝」という浅い溝にたまっ
デンタルフロスは、100 年以上も前から使われている歯
たプラークもブラッシングだけでは十分にプラークが取
り除けません。
間清掃のための用具です。
たくさんの細かい繊維が集まって一本になっているた
デンタルフロスは、自分でコントロールしながら、歯
め、う になりやすく歯と歯が接しているコンタクトポイ
と歯ぐきの溝までフロスを入れる事が出来るので、歯肉
ントに付着したプラーク(歯垢)や歯肉溝のプラークを効
縁下 3.5 mm 位までのプラークが除去できると言われてい
果的に除去することができます。
ます。
ブラッシングで磨き残したプラークは、フロッシングに
一方、フロスの使い方に慣れるまでは、フロッシング
よって効果的に取り除けることが、さまざまな研究により、
をやりづらく感じるのでフロスの使い方を十分理解して
確認されています。
おく事が重要です。
デンタルフロスによる歯間清掃により、歯ブラシだけの
また、歯肉炎がある場合、フロッシングをすると最初の
場合と比べて、歯間部のプラーク除去効果が、およそ 40%
うちは出血する事があります。しかし、数回続けると歯ぐ
きが引き締まってきて、出血しなくなります。したがって
1)
高まりました。
フロッシングを指導する際には、恐怖心を覚えないように
出血について十分に説明しておく配慮が必要です。
●歯間部のプラーク除去
歯ブラシでは約 58%しか取れなかった歯間部のプラー
クを約 86%まで取り除けます。2)
プラーク除去率
辺縁部
歯ブラシのみ
*
歯肉溝
乳頭部
約58%
接触点下部
接触点部
(コンタクトポイント)
歯ブラシにデンタルフロス併用
約86%
0
50
*歯肉辺縁と歯の間に歯肉溝があります。
100(%)
また歯肉炎に対する効果は、2 週間のフロス使用により、
歯肉からの出血量が 4 割減少する事で確認されています。3)
●歯と歯の間、歯肉溝の清掃器具の適用範囲
デンタルフロスは、歯間部(接触点下部・接触点部・歯肉溝)のプラーク除去ができます。
接触点部
(コンタクトポイント)
乳頭部
辺縁部
歯ブラシ
×
×
×
×
歯間ブラシ
○
×
△
×
ホルダーつきフロス
○
○
○
×
○
○
○
○
●歯肉乳頭部に対する効果
2 週間のデンタルフロス使用により、歯肉乳頭部からの
出血量が 4 割減少。4)
指に巻きつけるデンタルフロス
(ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社調べ)
双生児 51 組(12-21 才)
デンタル
歯ブラシ+
フロス
±a
41.5% b
歯肉出血の
減少率
a. ベースラインと比べて有意差なし
b. ベースラインと比べて有意差あり
歯肉
(乳頭部)
の歯肉縁下 3.5 mm まで届きます
到達度
歯肉縁下の
フロッシングの特長
●デンタルフロスは、歯と歯の間
(接触点下部)
の
プラーク除去方法
歯ブラシだけ
歯肉溝
接触点下部
ブラッシング(バス法)
0.5∼1.0mm
5)
歯間ブラシ
2.0∼2.5mm
デンタルフロス
6)
2.0∼3.5mm
1.コンタクトポイントのプラークが除去できる
歯と歯の間の接触点(コンタクトポイント)は、歯ブ
ラシや歯間ブラシは届かないので、プラークが付着して
う
になりやすい部位です。フロッシングにより、コン
タクトポイントに付着したプラークを取り除く事が出来
ます。
16
1)Terezhalmy GT et al. J Periodontol 79:245-251, 2008.
2)山本昇 他.日本歯周病学会誌 17:258 ∼ 264, 1975 より作図
3)Corby PMA et al. J Periodontol 79:1426-1433, 2008.
4)Biesbreck A et al. J Periodontol 77:1386-1391, 2006.
5)Waehaug, J. J Periodontol 52:30-34, 1981.
6)Waehaug, J. J Oral Rehabil 3:107-113, 1976.
7)Waehaug, J. J Clin Periodontol 8:144-150, 1981.
7)
口腔ケア製品とその活用 ◆歯間清掃器具等
フロスの種類
糸を指に巻きつけて使う糸巻きタイプ(写真)とプラス
チックのホルダーに糸がピンと張られているホルダータイ
プ(写真)とがあります。
ノーワックスタイプは、やわらかさやプラーク除去効果
の高いタイプを求める方にお勧めできます。
臨床では、PTC(Professional Tooth Cleaning)
、セメン
ホルダータイプは、ホルダーで糸が固定されているので、
使用は簡便ですが、歯面は曲面になっているので歯面に沿
ト除去、補綴物のコンタクト空隙の確認やカリエスチェッ
クなどに使用することができます。
わせて糸を入れる事ができません。糸巻きタイプのように
また、歯間の着色除去用として、研磨剤のシリカがフロ
自分でコントロールしながら、
隅角部分(辺縁部)のプラー
スに練り込まれている「ホワイトニングフロス」や歯間部
ク(歯垢)除去はできません。
のむし歯予防用にフッ素加工が施されている「フッ素配合
糸巻きタイプのフロスは、コンタクトポイント、歯間部、
近遠心の隣接面を含む歯肉溝のプラークが除去できます。
デンタルフロスにはワックスタイプとノーワックスタイプが
フロス」なども発売されています。
矯正装置やブリッジ装着部位には、歯間の接触点をフロ
スが越えることができないので、フロススレッダーと呼ば
あり、ワックスタイプはコンタクトポイントがきつい場合でも
れるプラスティック製の誘導針(使用イメージ参照)を使っ
スムーズに歯間部を通過できるので初心者に適しています。
てフロスを歯間部に通して使用します。
糸巻きタイプ
ホルダータイプのフロス
フロススレッダーの使用イメージ(ブリッジの装着部位の例)
●デンタルフロスの選び方
ガンコな歯垢もとれる
ノーワックスタイプ
フロッシングに
慣れた人
歯間に入りやすい
ワックスタイプ
初めて使う人
香りさわやか
ミントフレーバー
(ワックスタイプ)
清潔感が欲しい人
感触がやさしい
ソフト&ミント
デンタルフロス
NEW
効率的なプラーク
除去をめざす人
高い歯垢除去効果
256 本の特殊加工繊維
超・爽快ミントフレーバー
デンタルフロス クリーンバースト
歯間が広い人
歯間のゆるい方にお奨めしたい
テープタイプ
デントテープ(ワックス付)
…歯科医院専用製品(一般に市販さ
れていない場合があります)
●ワックスの有無によるデンタルフロスの用途の違い
ワックスあり
ワックスなし
PTC
○
◎
プラーク除去
ワックスあり
○
ワックスなし
◎
セメント除去
○
×
やわらかさ(歯肉に対するソフト感)
○
◎
補綴物コンタクトチェック
○
×
挿入のしやすさ(歯間部)
◎
○
カリエスチェック
○
○
耐久性
◎
○
17
口腔ケア製品とその活用 ◆フロス・補助具
デンタルフロスの使い方 *準備:フロスを約 40 cm 程(指先からひじまで)の長さに切ります。
デンタルフロスの仕方には 2 通りの方法 があります
指に巻きつける法
サークルにする法
しっかりと固定して
プラーク
(歯垢)
を効果的に
除去する
子供やお年寄りでも簡単
デンタルフロスの準備
●デンタルフロスを手のひ
デンタルフロスの準備
ら(手掌)に 1 回半まき
●デンタルフロスを手のひ
ら(手掌)に 2 回巻いて
つけて切り、両端を揃え
切断します。
て端から約 5mm くらい
のところで 2 重結びをし
●中指の間隔が 1.0 ∼ 1.5 cm
て輪を作ります。
になるように、片方の中
指に 3 回、残りは別の中
(中指・薬指・小指でフロスを握り、両手の
指に 3 回巻きつけます。
親指と人差し指で保持しながら使用します。
)
デンタルフロスの持ち方
親指と人差し指を使って、指と指の間のデンタルフロスが 1 ∼ 1.5 cm になるように長さを調整し糸がぴんとはる
ように保持します。
右手
左手
自分からみた
デンタルフロスの
持ち方
左手
右手
上顎左側部
右手
左手
上顎右側部
下顎左右側
口腔内での
持ち方
人差し指
人差し指
親指 人差し指
親指
デンタルフロスの操作
ここからは、
どの歯についても共通です。鏡を見て、歯とデンタルフロス
デンタルフロスが汚れたら
指に巻きつける法 の位置を確認しながらゆっくり行いましょう。
使ったデンタルフロス部にはプラークがつい
1
ているので、中指に汚れた部分を巻きつけ、
4
4 4
4
歯面に沿って、のこぎりをひくように内外
清潔な部分を送り出して使います。
に動かしながら、歯と歯が接触している部
分を通過するまで少しずつ入れます。
4 4 4 4
★取り外すときも同じようにのこぎりをひくように動
かしながら行いましょう。ひっかかって外せなく
なったときは、片方をほどいて横に抜きましょう。
2
3
18
親指
歯と歯が接触している部分を通過したら、
内外に横方向にこすりながら操作します。
★歯肉を傷つけないように注意しましょう。
歯の側面にあてて、5 回ほど上下に動かし
ます。これを前後の歯に行います。
★歯の両側面をきれいにしましょう。
サークルにする法 使った場所をずらして使います。
マウスウォッシュ 抗菌成分を液体によって上顎や舌苔、頬粘膜など、口腔のすみずみまで行き渡らせて、口腔内全体の細菌に対して化学的
にプラーク
(歯垢)
をコントロールをするマウスウォッシュは、
口臭予防だけではなく、
歯周病やう 予防ができる歯磨きのサポー
ト役としてクローズアップされています。
また、歯肉の腫脹・炎症が強度であると、出血や疼痛のためにブラッシングによる物理的プラークコントロールが不可能に
なることもあります。物理的プラークコントロールができない部位には、化学的プラークコントロールとして抗菌成分の配合さ
れたマウスウォッシュを適用します。
マウスウォッシュは、効果の違いで化粧品と医薬部外品に分けられ、さらに、使用方法の違いで洗口液と液体歯磨きに分け
られます。また、配合されている成分によって効果が違うので、患者の口腔状態やニーズ、ライフスタイルを考慮して患者にあっ
たマウスウォッシュを選択する必要があります。
歯磨きをする時間や場所がないような場合には、
手軽な「洗
洗口液と液体歯磨き剤
口液」を使用するなど、その時の使用者の状況に応じて使
い分けがされます。
現状は呼称や使い方があいまい
洗口液(医薬部外品)の代表的な製品として「リステリ
市場の拡大に伴って数多くの製品が販売されています
ン(ジョンソン・エンド・ジョンソン)
」が挙げられます。
が、
「マウスウォッシュ」
、
「洗口液」
、
「液体歯磨き剤」
、
「デ
リステリンは、合成系の殺菌剤ではなく、エッセンシャル
ンタルリンス」
、
「マウスリンス」など、実にさまざまな名
オイルといわれる天然ハーブ由来の殺菌成分(チモール、
称が使われています。そのため、どの製品も、
「口の中に
1,8 シネオール、サリチル酸メチル、ℓ メントール)を
入れてすすいだ後、吐き出す」という認識で使用される場
4種類配合しているのが特徴です。抗菌剤が作用しにくい
「バイオフィルム」に対しても浸透・殺菌し、長期に使用
合が多く見られます。
マウスウォッシュは薬事法上、
「歯肉炎の予防」
、
「歯周
炎の予防」
、
「むし歯の予防」などの効能効果をもつ医薬部
しても歯面の着色や歯石を形成しないというエビデンスを
もつ洗口液です。1‒3)
外品と、口内を清掃して口臭を防ぐ目的の化粧品に分類さ
液体歯磨き剤(医薬部外品)の代表製品としては、
GUM(サ
れます。医薬部外品は有効成分として殺菌剤などが配合さ
ンスター)が挙げられます。GUM は、清掃助剤、界面活性剤
れますが、化粧品に有効成分はなく、一時的なマスキング
のココイルアルギニンエキスの働きにより、歯周病菌の排出
作用をもつ添加剤が含有されています。
する内毒素リポ多糖を吸着し、有効殺菌成分塩化セチルピ
リジニウムによって不活性化することを特長としています。
洗口液、液体歯磨きともに、歯周病やう を効果的に予
〈洗口液と液体歯磨きの違い〉
マウスウォッシュは、液体歯磨きと洗口液の両方を含む呼
称で、研磨剤や粘結剤が配合されていない液体の剤型です。
防するためには、歯周病菌をはじめとする口内病原菌に対
する殺菌力の強さがポイントになります。
洗口液は、歯ブラシを使わずに口をすすぐだけで口臭を
防ぐほか、製品によっては、歯肉炎の予防やプラークの沈
着を防止する働きがあります。
液体歯磨きは、適量を口に含んでブラッシングを行いま
す。吐き出した後にブラッシングを行うこともあります。
1)Pan P et al. Determination of the in situ bactericidal activity of an
essential oil mouthrinse using a vital stain method. J Clin Periodontol
27 : 256-261, 2000.
2)Ouhaton JP. Penetrating the plaque biofilm:impact of essential oil
mouthwash. J Clin Periodontol 30 : 10-12, 2003.
3)Foster JS et al. The effect of rinsing with Listerine antiseptic on the
properties of developing dental plaque. Biofilms 1 : 5-12, 2004.
●薬事法上の分類(使用法と効能効果の違い)
分類
使用法
洗
口
液
適量を口に含み、すすいでから
吐き出す。
化 粧 品
●口中を浄化する
●口臭を防ぐ
医薬部外品
配合成分によって下記のような効能取得が可能
●歯肉炎の予防 ●歯垢の沈着を防ぐ ●歯石の沈着を防ぐ
●口臭の防止 ●口中を浄化する ●口中を爽快にする
●むし歯を防ぐ ●タバコのやに除去 ●出血の予防
液体歯磨き
適量を口に含み、ブラッシング
して吐き出す
●ムシ歯を防ぐ
●歯を白くする
●歯垢を除去する
●歯のやにをとる
●歯石の沈着を防ぐ
●口中を浄化する
●口臭を防ぐ
●歯を白くする ●口中を浄化する ●口中を爽快にする
上記に加え、配合成分によって下記のような効能取得が可能
●歯周炎(歯槽膿漏)の予防 ●歯肉炎の予防
●むし歯の発生および進行の予防(むし歯を防ぐ)
●歯石の沈着を防ぐ ●口臭の防止 ●タバコのやに除去
■参照 医薬部外品・化粧品製造販売ガイドブック 2008、薬事日報社
29
の報告もみられます。
マウスウォッシュに配合される有効殺菌成分
イソプロピルメチルフェノール(チモールの異性体)は、
日本で発売されているマウスウォッシュで一番汎用され
ている抗菌成分は塩化セチルピリジニウム(CPC)で、代
デンターシステマやリステリンに配合され、抗菌剤が浸透
しにくいバイオフィルムに対する効果があります。
表製品は GUM(サンスター)やクリニカ(ライオン)が
下の表は「液体歯みがき」
(医薬部外品)に配合可能な有効
成分とその成分の配合によって取得できる効能効果 * です。
挙げられます。
なお、
「洗口液」は承認基準が設定されていないので、
海外では、グルコン酸クロルヘキシジン(CHX)が配合
されたものが多く、長期臨床試験によりプラーク(歯垢)
沈着と歯肉炎の軽減に関する有効性が確認されています
が、長期連用により、歯石の沈着や歯面着色が発生すると
各社が有効性、安全性のデータを添付して承認を得ます。
* 薬用歯みがき類製造(輸入)承認基準(平成 6 年 3 月 15 日 薬発第 241 号)
による。
●液体歯みがきの有効成分と取得可能な効能効果
口臭を防ぐ
歯肉炎の予防
歯周炎の予防
塩酸クロルヘキシジン
使用法
○
○
○
ムシ歯の発生を防ぐ 歯石の沈着を防ぐ
塩化セチルピリジニウム
○
○
○
イソプロピルメチルフェノール
○
○
○
塩化ベンザルニコウム(塩化ベンゼトニウム)
○
○
○
塩化デカリニウム
○
○
○
トリクロサン
○
○
アミノカプロン酸
○
○
○
アラントイン
○
○
○
塩化ナトリウム
○
○
○
グリチルリチン酸(グリチルレチン酸)
○
○
○
アズレンスルホン酸ナトリウム
○
○
○
アスコルビン酸
○
○
塩酸ピリドキシン
○
○
酢酸トコフェノール
○
○
○
塩化リゾチーム
○
○
○
銅クロロフィリンナトリウム
○
○
ヒノキチオール
○
○
ゼオライト
○
タバコのやに除去
○
○
○
○
ピロリン酸二水素二ナトリウム
○
リン酸水素ナトリウム
○
ポリリン酸ナトリウム
○
○
ポリエチレングリコール
○
ポリビニルピロリドン
○
■参照 薬用歯みがき類製造(輸入)承認基準(平成 6 年 3 月 15 日 薬発第 241 号)
バイオフィルムに対する洗口液の効果は?
∼ 30 秒程度と短いため、殺菌効果は強くても浸透性の悪
デンタルプラークは、ただ単に歯の表面に付着した菌の
いものはバイオフィルム内部まで入っていかず、ほとんど
塊というだけではなく、細菌自体が粘着性の高い菌体外多
効果が期待できません。したがって、洗口液は、殺菌力と
糖を産生して膜をつくり、
その中で種々の菌が共存する「バ
ともに浸透性がよいものを選択する事が重要です。
イオフィルム」であることが近年の研究でわかってきまし
洗口液に含まれる代表的な殺菌成分は、グルコン酸クロ
た。化学的プラークコントロールに用いられる洗口液は、
ルヘキシジン(CHX)
、塩化セチルピリジニウム(CPC)
、
バイオフィルムに効果があるのでしょうか?
イソプロピルメチルフェノール(IPMP)
、塩化ベンゼトニ
バイオフィルムは、成熟すると抗菌成分が浸透しにくく、
30
ことがわかっています。洗口液は口に含んでいる時間が 20
ウム(BTC)
、トリクロサン(TC)です。
また、免疫細胞にも抵抗性をもつため、薬用成分が深部に
バイオフィルム(デンタルプラーク)は、
陰性(マイナス)
浸透するまでに時間がかかり、深部の細菌を殺菌できない
に帯電し、薬用成分(CHX、CPC、BTC)は、陽性(プラス)
口腔ケア製品とその活用 ◆マウスウォッシュ
グルコン酸クロル
ヘキシジン(CHX)
塩化セチルピリジニウム
(CPC)
イソプロピル
塩化ベンゼトニウム(BTC)
メチルフェノール(IPMP)
トリクロサン(TC)
特
長
・陽イオン性化合物
・陽イオン界面活性剤
・フェノール系の消毒剤で、 ・陽イオン界面活性剤
・有機塩素化合物
・抗 菌 ス ペ ク ト ル は 広 く、 ・殺 菌、 歯 肉 炎 減 少、 歯 垢
別名チモール
・即効性があり、一般細菌 ・結核菌を除くグラム陰性
グラム陽性菌に対し、より 沈 着 抑 制 と し て 効 果 が 高 ・芽胞菌とウィルスには効 に 対 す る 消 毒 効 果 が 高 い 菌及び緑膿菌を除くグラム
効果があるが、ウィルスに い。
果がない。
が、芽胞、結核菌、ウィル 陰性菌に静菌作用を示す。
対する作用は低い。
・中性
ス に 対 す る 消 毒 効 果 は な ・真菌にも有効。
く、抗菌スペクトルは狭い。
備
考
・長期使用により、歯石形成や着色の報告がある。
・すみやかにバイオフィル ・歯磨き剤のラウリル硫酸 ・湿疹、皮膚炎などの皮膚
・歯磨き剤のラウリル硫酸 Na(陰イオン界面活性剤)と
ム内部まで浸透して殺菌 Na(陰イオン界面活性剤) 障害があるときは、悪化さ
沈殿を形成して、殺菌効果が低下する。
できる。
と沈殿を形成して、殺菌効 せる恐れがある。
果が低下する。
・アナフィラキシーショッ
クの報告あり。
■参考 「消毒剤」徳島大学医学部付属病院教授 高杉益充ら著者 医薬ジャーナル社発刊
Overholser CD. Comparative effect of 2 chemotherapeutic mouthrinses on the development of supragingival dental plaque and
gingivitis. J Clin Periodontol. 17 : 575-579, 1990.
に帯電しているので、薬用成分はバイオフィルム表面に吸
下記は、口腔洗浄を控えてプラーク(歯垢)を蓄積させ
着し、持続的な殺菌効果が期待できる反面、膜への浸透性
た 17 歯からプラークを採取し、エッセンシャルオイル配合
が悪いため、内部への浸透性や殺菌効果が弱いことがわ
群と対照洗口群に無作為に振り分け、バイオフィルムに対
かっています。
する作用を比較した結果です。CPC 対照 A 群や CHX 対
一方、プラスにもマイナスにも帯電していない中性の薬
照 B 群では、死滅した細菌は 27.8%にとどまっていました
用成分(IPMP、エッセンシャルオイル)は、すみやかに
が、エッセンシャルオイル群は、バイオフィルムに浸透し
バイオフィルム内部まで浸透して殺菌できることが近年の
75%の細菌を死滅させました。
1)
研究でわかってきました。
●バイオフィルムへの浸透・殺菌作用の比較 1)
処理前
塩化セチルピリジウム
(CPC)
含有
対照洗口液 A 群(60 秒)
クロルヘキシジン
(CHX)
含有
対照洗口液 B 群(60 秒)
エッセンシャルオイル群(30 秒)
写真上 生体染色を施したバイオフィルムの顕微鏡(上方)
。
写真下 同じく側面像。下部はバイオフィルムの基部。
※黄色と赤色はバイオフィルムの損傷を、
緑色は細菌の活性を示す。
通常のブラッシングに加えて、洗口を行った場合の効果
1 日 2 回(朝と晩)のブラッシング後に洗口液を使用し
た場合、プラークや歯肉炎がどの程度減少するのか、108
名の患者に長期(6 ヵ月)の臨床試験を行った結果を示し
ました。
●予防歯科処置と、通常の機械的方法による口腔ケアに加え
て 1 日 2 回洗口を行った。
●被験者にやわらかめナイロン植毛製歯ブラシおよびフッ
化物配合歯磨き剤を配布した。
●試験で用いた洗口液以外の洗口液は使用しないように被
〈試験方法〉
●被験者 108 名(20 ∼ 57 歳)をエッセンシャルオイル
配合洗口液群、0.12% クロルヘキシジン洗口液群 *、5%
アルコール陰性対照に割り付けた。
験者に指示した。
● 3 ヵ月目および 6 ヵ月目に再び診査を行った。
* クロルヘキシジン配合製品は海外発売品を使用。なお、日本
でのクロルヘキシジン配合は 0.05%が上限となっている。
● 試 験 開 始 前 に 歯 肉 指 数(Löe-Silness)
、歯垢指数
(Quigley-Hein)
、歯石指数(Volpe-Manhold)
、外因性歯
牙着色指数(Lobene)を用いて各スコアを判定した。
■参照 1)Foster JS et al. Biofilms 1 : 5-12, 2004.
31
〈結果〉
● 6 ヵ月目の陰性対照群と比較したプラーク(歯垢)沈着
●対照群との比較で見られた差はいずれも統計学的に有意
予防効果および歯肉炎予防効果は両洗口液とも同程度で
であったが(p<0.001)
、両洗口液で得られた軽減効果
あった。
に有意差はなかった。
●特記される所見として、外因性の歯の着色および歯石形成
●洗口液を補助的に 1 日 2 回使用することによって、
プラー
は 0.12% クロルヘキシジン洗口液を使用した被験者のほ
ク沈着および歯肉炎の予防効果が更に高まる事が確認さ
うがエッセンシャルオイル配合洗口液を使用した被験者よ
れた。
りも有意に大きかった。
●歯磨きに洗口液をプラス使用した場合の効果〈6 ヵ月目〉
歯磨きだけと
比較して
歯磨き
エッセンシャル
オイル配合洗口液
(p<0.001)
+
歯肉炎指数の
軽減率
歯垢指数の
軽減率
18.8%↓
14.0%↓
有意差なし
0.12%
クロルへキシジン
配合洗口液
歯磨きだけと
比較して
(p<0.001)
歯垢指数の
軽減率
歯肉炎指数の
軽減率
21.6%↓
18.2%↓
■参考 Charles CH et al. Comparative antiplaque antigingivitis effectiveness of a chlorhexidine and an essential oil mouthrinse.
6-month clinical trial. J Clin Periodontol 31 : 878-884, 2004.
洗口液・液体歯磨き
●一般向け市販品
製
品
名
製造販売元
ジョンソン・エンド・ジョンソン
発
ジョンソン・エンド・ジョンソン
売
元
標 準 価 格
含 有 成 分
製
品
名
オープン価格
(溶剤)エタノール(湿潤剤)ソルビット液(溶解補助剤)プロ
パノール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコー
ル(薬用成分)1,8- シネオール、ジンククロライド、チモール、
サリチル酸メチル、ℓ -メントール(保存剤)安息香酸(矯味
剤)スクラロース、サッカリンナトリウム(pH 調整剤)安息香
酸ナトリウム(着香剤)香料〈ミントタイプ〉
(着色剤)青 1
ジョンソン・エンド・ジョンソン
発
ジョンソン・エンド・ジョンソン
売
元
含 有 成 分
製
品
名
オープン価格
(溶剤)エタノール、(薬用成分)1,8- シネオール、チモール、サリチル
酸メチル、ℓ -メントール、(保存剤)安息香酸、(溶解補助剤)ポリオ
キシエチレンポリオキシプロピレングリコール、プロパノール〈フレッ
シュミント、クールミント、(着色剤)カラメル〈オリジナル〉、黄 203、緑
3〈フレッシュミント〉、緑 3〈クールミント〉、黄 5、青 1〈ソフトミント〉、オ
レンジ色素〈ナチュラルシトラス〉、(PH 調整剤)安息香酸ナトリウム
ジョンソン・エンド・ジョンソン
発
ジョンソン・エンド・ジョンソン
売
元
含 有 成 分
効
分
効能・
効果
1,8- シネオール、ジンククロライド、チモー 特長
ル、サリチル酸メチル、ℓ -メントール
歯石の沈着予防、歯垢の沈着予防、
歯肉炎予防、口臭予防
用法・ 日常(毎日)の歯磨きに加え、適量
用量
(約 20ml)を口に含み、30 秒程す
従来のリステリンの効果に加え、ジン
ククロライド
(塩化亜鉛)の配合により、
歯石の沈着を予防します。
歯石が予防できるマウスウォッシュは
ターターコントロールが初めての製品。
容量:250ml、500ml、1000ml
すいでから吐き出してください。
効
分
1,8- シネオール、チモール、サリチ
ル酸メチル、ℓ -メントール
効能・
効果
歯垢の沈着予防、歯肉炎予防、口
臭予防
有
成
リステリン独自の 4 つのエッセンシャルオイルが口
腔内のトラブルを引き起こす原因菌を殺菌し、歯垢
の沈着、歯肉炎、口臭を予防。
長期使用しても歯石形成、着色、味覚異常などの副
作用を生じることはなく、口内細菌叢のバランスにも
影響を与えません。アメリカで 125 年以上の歴史を
持ち、アメリカ歯科医師会(ADA)が、その有効性を認
めた日本で市販されている唯一のマウスウォッシュ。
容量:100ml(クールミント)
、250ml(フレッシュミン
ト、クールミント、ターターコントロール)
、500ml、
1000ml
1,8- シネオール、ジンククロライド、チモー 特長
ル、サリチル酸メチル、ℓ -メントール
健康な口腔環境の 6 つの基準である、口臭、
ネバつき、着色汚れ、歯垢、歯肉炎、歯石を
全てケアできる進化したマウスウォッシュ。
液体歯磨き(ブラッシングと併用する)のカ
テゴリーのため、従来のリステリンの効能
に加え、2 つの効能「自然な白い歯へ」
と
「口
中の浄化」が追加されました。
用法・ 日常(毎日)の歯磨きに加え、適量
用量
(約 20ml)を口に含み、30 秒程す
すいでから吐き出してください。
オープン価格
(溶剤)エタノール、
(湿潤剤)
ソルビット液、
(着香剤)香料〈ミ
ントタイプ〉
、
(薬用成分)1,8- シネオール、ジンククロライド、
チモール、サリチル酸メチル、ℓ -メントール、(溶解補助剤)
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、(保
存剤)
安息香酸、
(矯味剤)
スクラロース、
サッカリンナトリウム、
(pH 調整剤)安息香酸ナトリウム、(着色剤)赤 102、青 1
有
成
洗口液(医薬部外品)
特長
薬用リステリン ® トータルケア
製造販売元
標 準 価 格
有
成
洗口液(医薬部外品)
薬用リステリン ®(オリジナル、フレッシュミント、クールミント、ソフトミント、ナチュラルシトラス)
製造販売元
標 準 価 格
32
薬用リステリン ® ターターコントロール
液体歯磨き(医薬部外品)
効
分
効能・
効果
歯石の沈着予防、自然な白い歯へ、口中の浄化、
歯垢の沈着予防、歯肉炎の予防、口臭の予防
用法・
用量
適量約 20ml を口に含み、よくす
すいでから吐き出して、そのままブ
ラッシングしてください。
歯科関連疾患の予防マニュアル ̶オーラルケア製品の解説̶
非売品
監修 埴岡 隆
発行 株式会社 法研
〒 104 ̶8104 東京都中央区銀座 1̶10 ̶1 法研ビル
電話:03-3562-8403
編集協力 ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社
本書の内容を無断で複写(コピ−)、転載することを固く禁じます。
歯科関連疾患の
予防マニュアル
̶オーラルケア製品の解説̶