おいでませドーソン箒専門店!-ホグワーツ魔法学校出張所

おいでませドーソン箒
専門店!-ホグワーツ
魔法学校出張所-
Out Lazy
︻注意事項︼
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小説の作者、
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超える形で転載・改変・再配布・販売することを禁じます。
︻あらすじ︼
予告擬きの一発ネタ。箒職人な少年の奮闘記、誰か書いてくれないかなぁ⋮⋮⋮⋮。
12/23
結局自分が書くことになるとは⋮⋮⋮⋮
箒職人のアンリは、自分の仕事を奪ったニンバス2000にご立腹
!
﹂
僕の箒の広告塔になってくれッ
﹂
そんな中、半ば強制的にホグワーツに入学させられることになるが⋮⋮⋮⋮
﹁ねぇハリー・ポッター
﹁初対面の人間に向かって何言ってんのよバカちんッ
!!!
!
!!!
目 次 お い で ま せ、ド ー ソ ン 箒 専 門 店 │ ホ グ
ワーツ魔法学校出張所│ ││││
商品その5│[広告塔との打ち合わせの
休み] ││││││││││││
商品その4│[組分けの儀式につき、本日
チャーリーの箒] │││││││
商 品 そ の 3 │ ト リ ネ コ の 柄、枝[無 銘:
枝[JET] │││││││││
商品その2│イチョウの柄、ユーカリの
プ] │││││││││││││
リュウモドキの尾[ホワイト:プロトタイ
商 品 そ の 1 │ ワ イ バ ー ン の 翼 骨、ギ ョ
1
5
16
25
36
為、本日休業] ││││││││
49
おいでませ、ドーソン箒専門店│ホグワーツ魔法学校出
張所│
ダイアゴン横丁の隅っこの、そのまた隅っこにある、古びたお店に⋮⋮⋮⋮
﹁ニンバス2000死すべし、慈悲は無い﹂
﹂
そこには寝ぼけ眼で箒を作る、店主兼箒職人の少年と、幼馴染の少女がいた
﹁いきなり何を言ってんのアンタは
!
んなとこ通ってたら店が潰れちまうよ﹂
?
結 局、少 女 に 流 さ れ る ま ま 少 年 は 流 れ 流 さ れ る ま ま ホ グ ワ ー ツ 行 き の 特 急 へ
﹁⋮⋮⋮⋮否定できないのがなんとも﹂
﹁それもこれもニンバスのせいだ⋮⋮⋮⋮﹂
﹁いや、そもそもこの店儲けなんてほとんどないから一緒だと⋮⋮⋮⋮﹂
﹁あん、ホグワーツ
そんな中、2人の元には﹃ホグワーツ魔法学校﹄からの手紙が⋮⋮⋮⋮。
﹁⋮⋮⋮⋮アンタ、ジャパニーズロボットに毒され過ぎよ﹂
ビウムと名付けよう﹂
﹁うーい、ここをこう縛ってー⋮⋮⋮⋮うし。新シリーズの試作3番目だから、デンドロ
!
1
⋮⋮⋮⋮。
﹁⋮⋮⋮⋮あのデコの傷。どこかで話を聞いたことがあるよーな﹂
そこで出会ったのは、丸渕眼鏡の同級生︵仮︶
﹂
﹂
﹁え、えぇ⋮⋮⋮⋮アンタそれは流石に⋮⋮⋮⋮﹂
僕もいるけど
﹁アンリ・ドーソン
﹂
そしてとうとう学校へ。そこで新入生達を待ち受けていたのは組み分けの儀式
﹁もうちょっとその感想どうにかなんないかしら
﹁無駄にデケェなぁオイ﹂
⋮⋮⋮⋮ええ、忘れてませんよ赤毛君。
!!?
﹁それでいいのかお前さん
﹂
!?
5分以上悩むと思われた生徒、30秒で決定
!
﹁あ、じゃあグリフィンドールで。あそこに見えた赤毛の双子が面白そう﹂
⋮⋮⋮⋮うわぁ、イロモノですねぇ。
でするが義には篤い⋮⋮⋮⋮﹂
だが強敵に立ち向かう勇敢さもある。捻くれてはおるがお人好しな上、騙しも嘘も平気
﹁ふむぅ⋮⋮⋮⋮コイツは難しい。方向性は偏っとるが頭は良い。半ばお門違いな敵意
!
!
!?
!
?
﹁いやおい
おいでませ、ドーソン箒専門店─ホグワーツ魔法学校出張所─
2
﹂
﹁⋮⋮⋮⋮あ、そういえば﹂
﹁ん、なんだい
﹂
﹂
﹁ほぼ初対面の人間に何を言っとるかこのバカちんッ
﹂
﹂
る少女の苦悩︶が、此処ホグワーツで繰り広げられる⋮⋮⋮⋮カモ
│ホグワーツ魔法学校出張所│﹄
なんにせよ、少年と少女の騒がしい学校生活が始まりそうです。
﹃おいでませドーソン箒専門店
!
?
歳若くして店を継いだ天才少年箒職人の戦い︵そして、そんな幼馴染にツッコミ入れ
?
!!!!!
?
﹁僕の箒の広告塔になって下さいお願いしますッ
!!!!!
﹁ちょっとちょっと。少しいいかいハリー・ポッター
あのデコに稲妻型の傷がある少年の名前、そしてその功績を⋮⋮⋮⋮。
組み分けられた寮の談話室につれられる最中、彼は思い出す。
﹁ど、どうしたのアンリ
?
3
﹂
﹂
﹁舐めるなよ⋮⋮⋮⋮確かに基本ダラけてるが⋮⋮⋮⋮こと箒に関しては妥協なんざゆ
Coming soon
⋮⋮⋮⋮ンなわけ無いけどね。
!!
!
るさねぇよッ
!!!!
﹁私はアンリを信じてるわ。だってアイツは⋮⋮⋮⋮世界最高の箒職人なんだから
おいでませ、ドーソン箒専門店─ホグワーツ魔法学校出張所─
4
商品その1│ワイバーンの翼骨、ギョリュウモドキの尾
﹃アンリ・ドーソン﹄
しかし、そんな時の流れに逆らいながら、魔法界にその名を轟かす箒職人が1人。
る慈悲なき濁流。
時の流れはどうしようもないもの⋮⋮⋮⋮下手に抗えば、為すすべなく全てを流され
なりました。。
ながらの手作り箒は、魔法による大量生産、大量出荷の箒へと取って代わられることに
しかし悲しいことに、時代を経ることによって、箒も大量生産物が出回るように。昔
ならぬ、箒職人という職種が存在していた程度には。
魔法使いにとっては杖の次に必需品。その為、一定の需要が存在するのです。杖職人
現代では、競技用箒という物も現れ、色々と謎な進化を遂げています。
今も昔も、魔法使いが空を飛ぶ際に使用する、本来は清掃用具である道具であります。
﹃箒﹄
[ホワイト:プロトタイプ]
5
商品その1─ワイバーンの翼骨、ギョリュウモドキの尾[ホワイト:プロトタイプ]
6
箒販売店﹃ドーソン箒専門店﹄を経営する夫婦の元に生まれ、齢七つにして両親に先
立たれたにも関わらず、己が才能と努力と根性で、親の忘れ形見である店を建て直した、
稀代の天才箒職人。完全オーダーメイドをウリにしたその古臭すぎて逆に斬新なスタ
イルで作られる箒は非常に人気で、魔法界中からひっきりなしに予約が舞い込んできま
す。
しかし、今でこそ彼の作る箒は賞賛を浴びているとは言え⋮⋮⋮⋮昔は全く見向きも
されなかったといいます。
さて、長々と前書きを垂れるのはやめましょう 今より語られるはそんな稀代の天
才箒職人﹃アンリ・ドーソン﹄の、あまり知られていない昔話
!
!
│ホグワーツ魔法学校出張所│]
箒への情熱を迸らせた彼の学生時代、
﹃ホグワーツ魔法学校﹄での暴走記録でございま
す
[おいでませドーソン箒専門店
≡≡≡≡≡☆
!
!
時は1991年7月1日の昼。
アンリ
起きなさい
今何時だと思ってんのよ
!
﹂
ダイアゴン横丁の隅っこにある、まるで廃墟の様な構えをした店にて。
﹁アンリ
!
!!
﹂
!
﹂
!
!
!?
士 で そ れ な り の 交 流 が あ っ た 為、そ れ は も う ヨ チ ヨ チ 歩 き の 時 分 か ら の 仲 で あ り
2人は、俗に言う﹃幼馴染﹄の関係。互いの家がこのダイアゴン横丁に店を構える同
﹁だまらっしゃい
﹁⋮⋮⋮だが断る﹂
なさい
﹁うるさいじゃないわよ全く もう2時よ 少しはまともな人間らしい生活を送り
る気のなさそうな少年です。
の髪、細く開けた目は髪と同じ色をし、ぬぼーっとしたその何処と無く緩い顔付きの、や
そしてその店の扉から出てきた少年。名を、﹃アンリ・ドーソン﹄。赤銅色のボサボサ
﹁⋮⋮⋮⋮うるさいメアリ。近所迷惑﹂
なったような少女です。
均整のとれた顔立ち、将来に期待が持てるスタイルと、まるで人形がそのまま大きく
しウェーブのかかった金髪に、透き通るような碧眼、少し目が吊り上ってはいるものの
その店の扉をバンバンと叩く1人の少女がいました。名を、﹃メアリ・シールズ﹄。少
!
7
⋮⋮⋮⋮、
シー ル
したと言わんばかりのピカピカの店が現れたではありませんか
いな⋮⋮⋮⋮﹂
?
﹁もう半日しかないけれど、今日も頑張って、アンリ﹂
ファンタジーなんでしょうが。
それにしてもファンタジーですね⋮⋮⋮⋮あ、魔法使いのお話だからまごう事なき
アンリの言葉に気を良くしたメアリは、少し胸を張りながら返します。
﹁まあウチは、シールズですから
﹂
﹁あいも変わらず、お前んとこの封印の応用アイテムはぶっ飛んでると言わざるを得な
!
すると、廃墟のような店が音を立てながら様変わりしていき⋮⋮⋮⋮まるで新装開店
く、それなりに丈夫な一振りを取り出し、店の扉をトントンと2回叩きました。
彼は懐から杖⋮⋮⋮⋮本体は空木、芯はサンダーバードの羽軸。長さは18cmと短
﹁う∼⋮⋮⋮⋮目ぇ覚めた。というわけで店開けるぅ∼﹂
あがっている、というわけでして。
付き合いが長いからなのか、齢11にしてダメ男とダメンズウォーカーの構図ができ
﹁⋮⋮それが僕の生き様︵キリッ﹂
﹁全く⋮⋮⋮⋮いくつになってもアンリはだらしないんだから⋮⋮⋮⋮﹂
商品その1─ワイバーンの翼骨、ギョリュウモドキの尾[ホワイト:プロトタイプ]
8
﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮どうせ開けても、もう客はこねぇよ﹂
と、とにかく
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
ドーソン箒専門店、開店です
≡≡≡≡≡☆
﹂
?
﹁あーそれ ジャパンから取り寄せたハンドサイズの研磨機⋮⋮⋮⋮を、魔法で動く
﹁また変なのが増えてるわね⋮⋮⋮⋮この機械は何
の他にも様々な器具が乱雑ではありますが、揃っていました。
魔法以外の技術というものを軽視する魔法使いにしては珍しく、彼の工房には材料庫
店の中に入っていった2人は、奥の方にある工房へと入ります。
!
!
9
﹂
ふははは
!
店開いてもやっていけるわよ﹂
﹁⋮⋮⋮⋮アンリ。毎度思うんだけど、ぶっちゃけ箒に拘らなくてもアンタなら魔道具
様に改造した魔道具﹂
?
﹁阿呆吐かせ。この様なもの、至高の箒を作るための踏み台でしかないわ
は
!
部分は取り替えてやった﹂
?
﹂
横に逸れる癖があるとか聞いて調整したとか、長時間
﹁まったく、素直じゃないわね﹂
の飛行にも腰回りが耐えられるように細工したとか、そんなことやってねーし
!
俺は今から新作箒に取り掛かるから帰れ帰れ
﹂
!
を大事そうに抱え、それがまたアンリの顔を異様に逸らさせ⋮⋮⋮⋮ゴホン。
﹁と、とりあえず用は済んだだろ
﹁えー。私、気になるわ﹂
自分らの店
﹁実 家の売り子の仕事はどうした
!?
!?
﹂
﹃でもありがとう﹄と口にして、満面の笑みを浮かべながら彼女はその箒[ミーティア]
!
﹁べ、別に何にもしてねーから
悪戯げに彼女がアンリの顔を覗き込むと、バツが悪そうにかれは顔を背けました。
﹁あら、ありがとう。でも、それだけじゃないでしょ
﹂
﹁ホラよ、預かってた[ミーティア]。寿命じゃねえかって言ってたからダメになってた
それは、マホガニーの柄に、キラキラと輝く尾が目を引く箒。
の一つを下ろし、メアリに差し出しました。
シュンとしながら、何かを思い出した彼は、工房内の箒専用棚に引っ掛けてあるウチ
﹁アッハイ。⋮⋮⋮⋮あ、そうだ﹂
﹁似合ってないしキモい﹂
商品その1─ワイバーンの翼骨、ギョリュウモドキの尾[ホワイト:プロトタイプ]
10
﹁妹が百味ビーンズで代わってくれたわ。持つべきものは話の分かる妹よね﹂
思わずジト目になるアンリを他所に、メアリは工房内の椅子に座り、ワクワクしなが
﹁⋮⋮⋮⋮おい姉。それでいいのか﹂
ら期待の眼差しを彼に送ります。
そして、なんだかんだ言って幼馴染には甘いアンリ。
﹁⋮⋮⋮⋮ゴーグルしとけ。目に骨粉入っても知らねぇからな﹂
﹂
自分の分と、彼女の分のゴーグルを棚から取り出し、実質的な許可を出しました。
﹁うふふ、やった﹂
﹁⋮⋮⋮⋮つまらなくなったら速攻出てけよ﹂
﹁あら、心配しなくてもいいわ。今までそんなことあったかしら
﹁⋮⋮⋮⋮ねーけど﹂
≡≡≡≡≡☆
・・・
基本的に、箒は柄と尾とそれらを縛る紐で構成されます。
飛ぶと、いろんな意味で痛いですからね。
そこで、ただの飛行用に用いる箒は最低限の、箒に座れる細工を施します。そのまま
?
11
そして競技用箒は、本来の清掃用具としての箒の機能をほとんど廃し︵具体的には空
気抵抗を減らす為、尾を完全に固定︶、速度を上げたり、姿勢制御機能を付けたりなど、
魔法技術を駆使し、完全な飛ぶためだけの処理がなされます。
さて、以上を踏まえた上で。
競技用箒を作るのは、かなりの知識と技量が必要です。少なくとも、齢11の少年が
簡単に作れるものではありません。
が、
これは、柄に枝を巻きつけるだけ、という単純な作業ではなく。枝1本が少しあらぬ
ながら彼は、既にある程度形を整えたギョリュウモドキの枝を大量に取り出しました。
研磨により形を整え、機能を仕込み、ワックスで最終処理を施した柄の出来に満足し
﹁柄の加工は終了⋮⋮⋮⋮次は尾﹂
作ってみようと思いついたのがきっかけのようです。
ます。今まで、柄に生物を使った箒が無いことに目をつけた彼が、骨を柄に用いた箒を
現在アンリは、とある伝で手に入れたワイバーンの翼骨の一部を柄として加工してい
苦労する、柄に機能を付けていく作業を、単純作業の様にこなしていきます。
ドーソン箒専門店の店主:アンリ・ドーソンは、大手箒メーカーお抱えの箒職人でも
﹁振動制御、完了。瞬時加速、完了。姿勢制御、完了。向風障壁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂
商品その1─ワイバーンの翼骨、ギョリュウモドキの尾[ホワイト:プロトタイプ]
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方向を向くだけで旋回性能にかなりの影響が出てきたりするのです。大量生産品だと、
この辺りが雑になり、あまり良いとは言えない性能になるのですが⋮⋮⋮⋮まあそれは
余談ですね。
アンリは、ぬぼーっとした顔を普段が嘘みたいに見える程引き締めながら、形を整え
て仮縛りし、調整をしながら尾を固めていき、本縛りをします。
最後に、最終点検。致命的な欠陥が無いかのチェックを行います。本来ならば、ここ
に飛行点検が入るのですが、今回は飛行データを取ることがもくてきなので、入らない
ようですね。
﹁別に、大量生産品が悪いと言ってるわけじゃない。消耗品である以上、それは仕方のな
箒が完成した達成感に浸るのも束の間、彼はその顔を嫌悪に歪める。
バスシ2000]は納得がいかん﹂
んだろうが知らないけど、同じツラして大量に出回るアレを高級競技用箒と宣う[ニン
ダーメイドで、自分にしか合わない箒を用意すべきなんだ。⋮⋮⋮⋮限定量だろうがな
﹁本来はその位気合い入れて作らないとダメなんだ。さらに言うなら、箒は完全なオー
ねぇ⋮⋮⋮⋮﹂
﹁また安直な⋮⋮⋮⋮それにしてと、箒とはまた別の側面から見てもかなりの工芸品よ
﹁ん、できた。白いから[ホワイト]とでもしておこうか﹂
13
いことだと思うし、俺だって使わないわけじゃないからな﹂
しかし、﹃だが﹄と前置きして、アンリは口を開きました。
高級ではあるのですけどね
早くに両親を亡くしつつも、祖父母や付き合いのあったシールズ家のみんなの協力も
﹁お陰で商売上がったりだクソッタレ⋮⋮⋮⋮リアルに泣きそうだよ﹂
自称高級箒なら、どちらが売れるか⋮⋮⋮⋮それは、言わずもがなでしょう。
有名で実績もある箒メーカーの作る高級量産箒と、天才とは言え齢11の少年の作る
﹁⋮⋮⋮⋮まあ、そのせいでアンリの作る高級志向の箒が売れなくなったわけだしね﹂
にかなりの性能だ。だが、高級品として、我が物顔で市場に出回るのは勘弁ならん﹂
﹁別に、高級量産箒と銘打ちするのなら納得してやる。確かに素材も良いし、量産品の割
?
は乗れません。この時点で、アンリの思う高級箒ではありません。⋮⋮⋮⋮いや、十分
確かに[ニンバス2000]は速度の割に扱い易くはあります。ですが、乗れない人
さて、では[ニンバス2000]はどうなのか。
合わせるタイプの箒指します。
全に乗りこなすことも可能です。アンリのイメージにある高級箒は、こういった個人に
速い箒というのは、乗り手を選びはしますが⋮⋮⋮⋮個人に合った調整を施せば、十
﹁[ニンバス]は別だ。あの程度なのに﹃高級箒﹄を名乗ってるのが心底腹立たしい﹂
商品その1─ワイバーンの翼骨、ギョリュウモドキの尾[ホワイト:プロトタイプ]
14
あり、今まで両親の形見である店を潰さずにやってこれたアンリは⋮⋮⋮⋮その店が潰
れてしまう未来予想が頭から離れずに、参っていました。
﹁アンリ⋮⋮⋮⋮﹂
弱々しく丸まったその背中に、彼女は心配そうに、声をかけました。幼い頃からの付
き合いだけに、彼の苦悩が手に取るように分かるのでしょう。
そんな陰鬱とし始めた2人の頭上から、何かがはらりと落ちる。
﹂
﹂
パサリと作業台の上に落ちた2つの封筒。
﹁⋮⋮⋮⋮あん
?
即ち、ホグワーツ魔法学校⋮⋮⋮⋮入学許可を報せる、手紙でありました。
送り主は⋮⋮⋮⋮﹃ホグワーツ魔法学校﹄。
宛先は⋮⋮⋮⋮自分達の名前。
﹁⋮⋮⋮⋮あ、コレって
!
15
﹂
商品その2│イチョウの柄、ユーカリの枝[JET]
僕はホグワーツなんぞに行かん
!!
もちろんここで、
そして、食事中のアンリの絶叫。
す。
らない彼に呆れて、シールズ御夫婦は夕食時には強制的にアンリを招くことにしていま
に面倒を見てもらいながら生活していました。そして、監視の目がなければ食事すら取
アンリくん、両親がいなくなってから彼のお祖父さんとお祖母さんとシールズ御夫婦
シールズさん家にて、アンリ、叫ぶ。
﹁いーやーだーっ
!
と東洋に伝わるツッコミ兵装︻HARISEN︼が唸りながら、彼の頭
!
という、生半可な拷問器具も真っ青なブツとなっておりますが⋮⋮⋮⋮今はどうでもい
それを貰ったメアリがおふざけ半分で細工をして、痛覚にのみ甚大なダメージを与える
上に落ちます。勿論コレは、アンリがジャパンから取り寄せたジョークグッズであり、
バチコン
﹁食事中、うるさい﹂
商品その2─イチョウの柄、ユーカリの枝[JET]
16
いですね。
﹁痛いじゃないか﹂
﹁喧しい。というか、あのホグワーツよ
光栄なことじゃない﹂
﹁⋮⋮⋮⋮やっぱり、店を放っていくのが嫌なの
いと思うのだがね﹂
﹂
﹁ふむ⋮⋮⋮⋮君のお父さんも、お母さんも、君が店に縛られることはあまり望んでいな
﹁まあ、ね。だって、幾らお客さん来なくても、店をほっぽり出すの如何なものかと﹂
ムスッとした顔が一転。心配気な表情を浮かべたメアリが、彼の顔を覗き込みます。
?
う。
少女と同じ学校に入るというのは⋮⋮⋮⋮本人は否定しそうですが、嬉しいことでしょ
ありますし、知識を得ることは、箒作りに活かせることもあるでしょう。何より、隣の
別に、アンリだって全く行きたくないわけじゃないのです。魔法使い志望の憧れでも
パンを口に頬張りながら、アンリは渋い顔をしつつ唸ります。
﹁普通ならそうなんだろうけど、なぁ﹂
しょう。
取りを見ながらニヨニヨしているだけなのです。将来も安泰だ、などと思っているので
ちなみに、食卓に付いてるのは何も2人だけではありません。ただ、この2人のやり
?
17
流石にニヨニヨしている場合でないと判断したシールズパパ。落ち着いてアンリを
説得しにかかります。
任せるかって言っても、僕のスタンス上箒の作り置きは死んでもごめんですし、そもそ
﹁ですがシールズさん⋮⋮⋮⋮ほら、信用問題的にアウトじゃないですか。じゃあ誰に
も誰かを雇うお金がありません。じいちゃんばあちゃんも、もう歳ですからキツイこと
もさせたくないんすよ⋮⋮⋮⋮﹂
おっとアンリさん、結構色々と考えていたようです。シールズパパ以外は説得するの
は難しそうだと、顔を歪めています。
?
だが﹂
﹁⋮⋮⋮⋮
﹂
﹁これは、メアリにやらせようかと思っていたことだから、話半分で聞いてもらいたいの
た気分になるそうです。
アンリはこの顔が、メアリが振り下ろすハリセンの次に苦手です。曰く、見透かされ
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
す。
しかし、シールズパパ。何故か余裕そうな表情を浮かべたままアンリに笑顔を向けま
﹁成る程、確かに君の言う通りだアンリ﹂
商品その2─イチョウの柄、ユーカリの枝[JET]
18
﹂
﹁なに、変なことではないよ。単に、ホグワーツで﹃シールズ小物店﹄の宣伝をしてもら
おうかと、ね﹂
﹂
!?
﹁⋮⋮⋮⋮ッッッ
聞いてないわよ
!?
﹂
!!
﹂
?
アンリ、君は手紙の封は開けていないのかな
?
?
が有意義です﹂
﹁ん
﹂
だったはず。1年も待つ位なら、その間に箒業界に革命を起こすために研究を重ねた方
﹁⋮⋮⋮⋮確かに、効果はありそうです。が、箒の持ち込みが許可されるのは2年生から
しかし、一周回って冷静になったアンリ、その案について考え直します。
く、です。
アンリの食いつき様がぱねぇです。それはもう砂漠でオアシスを見つけた旅人の如
﹁⋮⋮⋮⋮そうか、実際に使ってッ
持って馳け廻るだけが宣伝じゃ無いだろう
﹁な に も 大 っ ぴ ら に し ろ と 言 う つ も り は 無 い か ら 安 心 し て く れ メ ア リ。な に も、看 板
を続けます。
それぞれが面白い様に反応してくれたことに気を良くしたシールズパパ、さらに言葉
アンリ、目から鱗。メアリ、鳩が豆鉄砲を食らった様な顔。
﹁ちょ、パパ
!!!!
19
﹁と、いいますと
﹂
│││││││││││││││││
アルバス・ダンブルドア 印
上記の者の箒の持ち込みを許可する。
アンリ・ドーソン
│││││││││││││││││
中には、入学許可証が入ってました。ですが、それだけではありませんでした。
かと思い、通うつもりがなく読む必要なしと未開封だった封筒を開けます。
シールズパパの言わんとしていることが分からないアンリ。ただ開けた方がいいの
?
﹂
?
ルズパパ
﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂
﹁だから、あとは君の気持ち次第といったところかな
!!?
いやいや、というかアルバス・ダンブルドアとのコネがある貴方の方が謎ですよシー
ろうから誘導してくれと僕に頼んでくる辺り、性格についても、ね﹂
﹁あのお方は、君の事情も知っていらっしゃるのだろうね。何も言わないと開けないだ
﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮ッ﹂
商品その2─イチョウの柄、ユーカリの枝[JET]
20
言い知れない敗北感に、顔を歪めまくるアンリは、これ以上無いほど苦い声で。
い⋮⋮⋮⋮と思っていたアンリ。
ですが、
!!
これではまるで、箒のことなんか忘れて学業に励めと言わんばかりでは││││││
ます。
多少の借金を覚悟して、決死の覚悟で宣伝活動に励もうとしていた矢先にこれであり
︻ホグワーツ通うと思ったから教育資金はグリンゴッツに貯めてあるよ︵意訳︶︼
ドーソン祖父母の家から手紙。その内容は。
﹁じ、じーちゃん達も一枚噛んでやがった⋮⋮⋮⋮
﹂
ホグワーツに通うとなれば、そこから先はドタバタと準備と金策をしなければならな
≡≡≡≡≡☆
⋮⋮⋮⋮。
実質的なホグワーツに通う宣言に喜んで抱きつくメアリに慌てふためくまで、5秒前
ありませんよ﹂
﹁⋮⋮⋮⋮釈然としませんが。まあ、そこまでお膳立てしてもらってるのなら、吝かじゃ
21
│
﹁⋮⋮⋮⋮いや、それは無いか﹂
仮にそうだったら、箒の持ち込み許可なんて出しませんしね。
ともかく教材、制服代が問題なく出せるのはありがたいですね。杖に関しては、彼は
元々持っていますし。ペットに関しては、要らないと突っぱねるでしょう。
ならば、彼がこれから力を入れなければならないのは。
﹁こいつの、整備だな﹂
プレベルの性能と奇抜さを誇る傑作です。
彼がジェット機から構想を得、試行錯誤して作り出した、彼の作った箒の中でもトッ
作品名[JET]
他にも色々ありますが、何よりも目を引くのはこの二点でしょうか。
く、枝は螺旋しつつも円筒型に固められています。
しかし、柄に交差する様に付けられた、ハンドルの様な物。そして、尖る筈の尾はな
イチョウの柄、ユーカリの枝を使った、材料だけは違和感の無い箒。
工房の棚に掛かっている箒で、一際異彩を放つソレ。
それと﹂
﹁⋮⋮⋮⋮持っていく分の仕事道具、シールズさんに頼んでそれを詰める空間弄った箱、
商品その2─イチョウの柄、ユーカリの枝[JET]
22
宣伝活動として、これ程うってつけのものはありません。奇抜過ぎて嘲笑を受けるこ
とになろうとも、注目してくれなければお話にならないのですから。
作業台にJETを置いたアンリは、点検作業を始めます。
ら察するに、これ以上の速度が出ると言ってるのですから笑えません。
だということを、彼は気が付いているのでしょうか⋮⋮⋮⋮恐ろしい。しかも口振りか
こんなもんか、と呟いてますが、現在販売されてるどの箒よりもスペック上は高性能
りゃこんなもんか﹂
﹁⋮⋮⋮⋮トップスピードまで15秒、最高速度約210㎞/h。まあ限界突破しなけ
しながら一気に加速させます。
上空で幾つかの基本的な飛行法を試し、頭の中で微調整が必要な項目をその都度整理
ます。
そしてそのまま箒を握ったまま店を飛び出し、店に鍵をした後そのまま空を飛び立ち
﹁⋮⋮⋮⋮最終確認。見たところは問題無いか。あとは試運転﹂
螺旋からはみ出した枝を、添うように整えながら固めます。
﹁⋮⋮⋮⋮尾部確認。ほつれた枝7本﹂
柄の確認が終わったあと、ワックスがけを施し、次に尾の確認へ。
﹁⋮⋮⋮⋮術式確認。姿勢制御術式と腰部固定術式に若干の綻び。修正。再確認、完了﹂
23
ですがこの箒、かなりの速度が出る代わりに両手でハンドルに捕まって無いと操縦が
難しい様です。片手なら、ギリギリなんとかなりそうですが、間違って箒の上に立とう
ものなら一瞬で落とされるでしょう。クディッチ向きとは、言い難いですね。
と夕日に向かって吼える図は、なんというか、締まりの
﹁うん、OKOK。微調整して終わりだな﹂
これで顧客をゲットだぜ
ないものでありました。
﹂
べ、別にそんなんじゃないからね
良かったですね、メアリさん
ひ、1人にしたらアンリが心配だとか、
!?
!
ともかく、コレでアンリくんも学校通えますよ。
!!
そんなんじゃないんだからね
!?
⋮⋮⋮⋮両者ツンデレとは、なんという悲劇。
!?
﹁ふぇ
商品その2─イチョウの柄、ユーカリの枝[JET]
24
商品その3│トリネコの柄、枝[無銘:チャーリーの箒]
スーツケース︵と言っても、空間拡張の施された︶の中に衣類に安全手袋、各種教科
﹁スーツケースは偉大だ。引き摺れる鞄というのは楽だ﹂
書に予習の物も含めたノート、その他鍋だの薬瓶だの望遠鏡だの秤だの、色々詰め込ん
﹂
だ上で、彼の箒を含めた仕事道具一式を纏めた木箱を入れ、コレでよしと頷くアンリ。
とても満足そうで楽しげですが、
この確認何回目かしら
?
﹂
?
﹂
﹁荷物確認に付き合ってって言われたから付き合ったのになんなのよ
性なの
!?
どれだけ心配
!?
した。
と、ここで現れた︻HARISEN︼。的確に、それはもう的確にアンリの頭を叩きま
﹁えーそうね。正確には7回よ﹂
﹁んー。ざっと6回目かな
彼の後ろにいる少女は、青筋を浮かべながら笑ってました。怖いですねぇ。
﹁⋮⋮⋮⋮そうね。でもアンリ
?
25
﹁うーん、自分で思ってる以上にホグワーツ行くの楽しみみたい﹂
叩かれたのにヘラヘラと笑う彼の姿は、確かに楽しみで仕方がない子供の顔をしては
魔法もある程度大っぴらに使えるし、空も飛べるし、
勿論、たくさんのことも学べるだろうから最高の箒に更に前進で
?
いましたが。
﹂
!
!
捧げ始めました。
﹁天国の父さん母さん
僕絶対にウチの店を再興させてみせるから
いということはないでしょうが⋮⋮⋮⋮。
﹁とにかく、そろそろ行くわよ。遅刻しちゃう
﹁あいよー﹂
≡≡≡≡≡☆
﹂
﹂
未だかつて、こんな動機でホグワーツを目指す新入生がいたでしょうか
!!
全くいな
一 般 人 の 方 ⋮⋮⋮⋮ 所 謂 マ グ ル の 方 も
!!
や っ て ま い り ま し た キ ン グ ズ・ク ロ ス 駅
!
?
!
行きたくないと言っていたのが嘘のように目を輝かせながら、彼は両手を組み祈りを
きるかも
クィデッチもある
﹁だってさ、ホグワーツだぜ
商品その3─トリネコの柄、枝[無銘:チャーリーの箒]
26
ごった返していますが、魔法使い思わしき人もそれなりに見受けられます。
﹂
?
も通りであり。
﹁メアリ、頑張ってくるのよ
﹂
﹁うん、売り上げに貢献してくるから
﹂
﹂
﹁ついでに中途半端じゃなくてちゃんと仕留めてきてよねおねーちゃん
﹁う、うるさい
﹁⋮⋮⋮⋮そりゃ反則ですよシールズさん﹂
い﹄﹂
﹁じゃあ僕は、ドーソンさん達の代わりに。﹃やりたいように、思うようにやってきなさ
!
!
!
別れる際もいつも通り││││││
!
﹂
そんなどうでもいいことを話しながらシールズ一家に急かされる2人は、まさにいつ
﹁そんなこと言われても分かんないわよ﹂
な、真ん中通るんだし﹂
﹁で も な ん で こ ん な 中 途 半 端 な 数 字 な ん だ ろ ⋮⋮⋮⋮ 別 に 9 と 1 / 2 番 線 で も い い よ
﹁そうね。初めての人はおっかなびっくり通り抜けることで有名ね﹂
んだよな
﹁なーなー。たしか9と3/4番線って、9番線と10番線の間を通り抜けた先にある
27
﹁ここでは﹃お父さん﹄と言って欲しかったかな
﹂
を早くに亡くしてしまったダメージが無いわけではないのです。
まあ、幾ら店を任せられる程の才能と精神力を持つ彼でも、やはり子供なのです。親
訂正、何やらアンリ君涙ぐんでますし、シールズパパはシリアスを決め込んでます。
?
汽車の車両の中で、空いている席を探し始めました。メアリも、そんな彼の後を慌てて
ちょっぴり情けない感じで恥ずかしかったアンリ君は、走り出したホグワーツ特急の
≡≡≡≡≡☆
⋮⋮⋮⋮何やらアンリ君の両親が亡くなったのは、何やら事情がありそうです。
ちていて。
なんにせよ、これからだけれどね、と呟くシールズパパの顔は、これ以上なく憂に満
﹁ああ。楽しそうで、何よりだよ﹂
﹁⋮⋮⋮⋮やっぱり、この判断は間違っていなかったわね﹂
照れ隠しのように柱に向かって走り出す彼を、慌てて追いかけるメアリ。
﹁あ、ちょっと待ってよアンリー﹂
﹁⋮⋮⋮⋮じゃ、行ってきますよ﹂
商品その3─トリネコの柄、枝[無銘:チャーリーの箒]
28
付いていきます。
﹁ちょっとアンリ
﹂
僕は適当なところに
さっきのコンパートメントでも良かったじゃない
﹁⋮⋮⋮⋮女の子ばっかだったじゃん。メアリは行ってきたら
潜り込むから﹂
﹁で、でも⋮⋮⋮⋮﹂
!
それにお互い友達も増やさないと﹂
?
﹁⋮⋮あーはいはい。上手くいかなかったら愚痴りに行くわ﹂
大に笑ってやる﹂
﹁だからむしろ行ってこい。そんで四苦八苦しやがれチクショー。もしそうなったら盛
な人がいなかったのです。可哀想なことに。
は身につけているのです。単純に、それを発揮できる同い年、さらには友達になれそう
者というわけではありません。2人とも店を持つ家に生まれた流れで、人当たりの良さ
別に、アンリとメアリの2人が、お互い以外どうでもいいと思ってるような性格破綻
﹁﹁⋮⋮⋮⋮近所の同い年が2人しかいないのも悩みもの﹂﹂
一気に渋い顔になった2人が、同時にため息をつきながら、
﹁⋮⋮⋮⋮あー、そうね﹂
だろう
﹁別にメアリが一緒にいても問題ないけど、これからの学校生活で離れる時間は増える
?
!
29
﹁ケッ
﹂
次の車両に移り││││││
﹁⋮⋮どういう意味
﹂
?
﹁早く来てください先生
ここで新入生達が喧嘩を
!
﹂
とは言え、見過ごすのはどうかと思った中途半端に善人のアンリ。取った行動は。
≡≡≡≡≡☆
アンリは、その口論に出くわし、天井を仰ぎました。
︵⋮⋮⋮⋮あのー、流石にこれはハードル高いって︶
てことさ﹂
﹁そこにいるウィーズリー家の奴らや、ハグリッドみたいな下等な連中と同類になるっ
?
﹂
しかし、自分も自分で友達は見つけないと意気込んだアンリは、へこたれて堪るかと、
に予想をしていたので、結構ピンチに陥っていたりしてます。
そんなこんなで別れたアンリ。実は座れるアテがなさそうなことは歩いているうち
天邪鬼アンリ君、絶好調です。
!
﹁もう少し礼儀を心得ないと、君の両親と同じ道を辿ることになるぞ
商品その3─トリネコの柄、枝[無銘:チャーリーの箒]
30
!
⋮⋮⋮⋮こすい。あまりにもこすいですアンリ君。
行くぞ
﹂
しかし、必死そうな顔も相まって効果は絶大だった様で。
﹁⋮⋮⋮⋮チッ。クラッブ、ゴイル
!!
﹂﹂
﹁⋮⋮⋮⋮で、実際のとこどーなの
き返しました。
﹂
青白い肌の少年が、不本意そうに腰巾着であろう大柄な男の子2人に指示を出し、引
!
じゃあ今の先生ってのは⋮⋮⋮⋮﹂
?
新任な
?
く前に問題行動を咎められるのは避けたかったのでしょうね。
子が、安堵した様に胸をなでおろします。先程言い合ってた様な気もしますが、学校着
黒髪、痩せた印象、緑色の目に、額の稲妻型の傷。かなり特徴的な見た目をした男の
﹁よ、良かった⋮⋮⋮⋮﹂
らまだしも﹂
﹁あー、うん。うーそー。つか、この列車に先生が乗ってるわきゃねーでしょ
赤毛で、ソバカスだらけで、身長の高い男の子は、アンリに恐る恐る尋ねます。
﹁え、え
に、思わず変な声を出した模様。
そのコンパートメントの中にいた2人は、一気に顔からやる気の抜けたアンリの様子
﹁﹁へ
?
?
31
﹁それで、えっと⋮⋮⋮⋮﹂
アンリは、コンパートメントの中を見て言葉を失います。
﹂
お菓子、お菓子、お菓子。車内販売で売られてるお菓子が、ワンサカと⋮⋮⋮⋮
?
﹂
﹁なに、気にするこたぁないさ。でもそうだな⋮⋮⋮⋮もし良かったら、座っていーい
正直なところ、2対3はヒヤヒヤしたと言いながら、赤毛の男の子が礼を言います。
﹁当たらずも遠からず、ってところかな。なんにせよ、助かったよ﹂
﹁⋮⋮おやつぱーちー
商品その3─トリネコの柄、枝[無銘:チャーリーの箒]
のっけから飛ばしまくるアンリ君。欲望バリバリですね
!
経営してる、しがない箒職人。良かったら、是非ご贔屓に﹂
﹁では自己紹介から。僕はアンリ・ドーソン。君らと同じ一年生だ。普段は箒専門店を
≡≡≡≡≡☆
2人から、一も二もなく首肯するのは、自明の理でしょう。
?
があるって
﹂
﹁あ、パパから聞いたことがある ダイアゴン横丁の隅っこの方に、潰れそうな箒の店
32
!
!
﹁⋮⋮⋮⋮本人目の前にしてよく言うね﹂
﹁え、あ、いやその⋮⋮ごめん﹂
﹁⋮⋮⋮⋮いや、いーよ。実際潰れそうだしね、あははは、はは、はぁ﹂
乾いた笑い声に、黒髪の方の男の子が赤毛の男の子の方を少し非難めいた顔を向けま
す。
﹁い、いやでも話には続きがあるよ そこのお店の箒は低価格なのに高級品だって
!
﹂
!
すっげぇなぁオイ⋮⋮⋮⋮﹂
!?
﹁あ、ごめん。僕はロン・ウィーズリー。で、こっちがあの﹂
﹁そ、それで君たちは﹂
ることに、思わずアンリは苦笑いです。
赤毛の男の子のアンリを見る目が英雄譚に出てくるヒーローに向けるそれになって
﹁本当
持ってきたし、簡単な箒なら向こうでも作れると思う﹂
﹁ん 〟 ん 〟。ま あ そ う い う わ け だ か ら、興 味 が あ れ ば い つ で も 言 っ て ね。仕 事 道 具 も
赤毛の男の子のフォローに、頗る機嫌が良くなったアンリは、調子を取り戻します。
﹁⋮⋮⋮⋮7つ上。そっか、父さん達の箒が﹂
デッチのキャプテンまで登りつめたからね
僕の7つ上の兄のチャーリーが、確かそこで箒を買ったんだけど、その箒のままクィ
!
33
﹁ハリー・ポッター﹂
⋮⋮⋮⋮驚いた。そういえば、先程ウィーズリーと言ってましたね。その上、ハリー・
ポッター。
この名前は、魔法族なら知らぬ者はいないでしょう。なにせ、ヴォル⋮⋮⋮⋮﹃名前
を言ってはいけないあの人﹄、闇の魔法使い﹃死喰い人﹄を統べ、魔法界を恐怖のどん底
に叩き落したあの人を、撃退した、﹃生き残った男の子﹄なのですから。
﹂
?
で、楽しそうにおやつぱーちーを楽しんでいましたとさ。
でも、友達になったばかりの3人は楽しそうに、栗色の髪の毛を持つ女の子が来るま
﹁別に僕は気にしないよアンリ﹂
﹁言葉を選ばなくていいよ。単に世間知らずなんだから﹂
﹁き、君って相当変わってるね⋮⋮﹂
ずっこけるロン。こんな人もいるのかとむしろホッとしたハリー。
や﹂
﹁ごめん、ハリー。なんかどこかで聞いたことがある気がするんだけど、思い出せねー
る感を味わいながら、彼はウンウン唸ります。
アンリの顔が歪みます。思い出せそうで思い出せない⋮⋮⋮⋮喉に小骨が刺さって
﹁んー。よろしくロンにハリー。⋮⋮⋮⋮ハリー
商品その3─トリネコの柄、枝[無銘:チャーリーの箒]
34
35
そしてこれが⋮⋮⋮⋮アンリの後の学校生活の方向を決定付ける、運命の分岐点とも
言うべき瞬間でした。
商品その4│[組分けの儀式につき、本日休み]
無事、何事もなくホグワーツ特急。それからあれよあれよと言う間に、アンリは舟に
乗っていました。
﹁⋮⋮⋮⋮き、気がついたら舟に乗っていた。な、何を言ってるのか分からねーと思う
が﹂
﹂
?
というわけで。
?
ドーソンです﹂
﹁どんな紹介をされたかは分からないッスけど、おそらくそうですね。どうも、アンリ・
││││
興味本位、という感じでアンリ君に顔を近付ける女子に、アンリ君はタジタジ│││
﹁成る程、あなたがメアリの言ってたアンリ君なのね
﹂
に乗りたかった彼はそのチャンスを逃し、メアリと他女子2人の舟に乗ることになった
一隻の定員が4名のその舟。本当なら同じコンパートメントにいたあの2人と一緒
﹁あーいえなんでもありませんメアリ様﹂
﹁何ぶつぶつ言ってるの
商品その4─[組分けの儀式につき、本日休み]
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にはならず、見事な他所向きの顔を浮かべながら自己紹介をしました。流石は、お店
の子。
どう見ても貴女の言ってた様な人には見えないわ﹂
そこから女の子達も自己紹介をし、雑談に入ったのですが、
﹁うーん、メアリ
しくお願いします﹂
﹁あ、ついでに﹃シールズ小物店﹄もね
?
女の子2人は顔を見合わせ、2人が幼馴染であることに納得したとさ。
﹁﹁せ、宣伝が露骨⋮⋮﹂﹂
同級生ってことでサービスするわよ﹂
﹁んんっ。まあそういうワケっスから、もし何か縁があれば﹃ドーソン箒専門店﹄をよろ
むしろアンリを適確に表現した言葉故に、何も言えなくなりました。
﹁うん、否定できねー﹂
﹁箒作りに本気出す箒キチ﹂
だそうとすると││││││
思わぬところで悪い噂が広がってるのではと危機感を抱くアンリ。すぐさま問いた
﹁ちょい待て。メアリてめーなんて説明しやがった﹂
﹁そんなものなのかしら﹂
﹁流石に初対面の人の前で暴走する程常識知らずじゃないわよ流石に﹂
?
37
≡≡≡≡≡☆
眼前に聳え立つ大きな城⋮⋮⋮⋮の前にたどり着いた新入生達。
今の今まで新入生達の引率をしていた大男││││名前をハグリッドという、ホグ
ワーツの禁じられた森の番人││││は、城の扉を叩きます。
扉が開き、中から出てきたのは、エメラルド色のローブを纏った、背の高い黒髪の魔
女。⋮⋮⋮⋮いっちゃあアレですが、めちゃくちゃ厳しそうな方ですねぇ。四角い眼鏡
掛けてますが、逆三角の眼鏡を掛けても似合いそうです。
いきませんが、そのやる気無さげな顔に苛々を浮かべながら腕を組みます。
の新入生全員が押し込まれているのです、窮屈で仕方ありません。青筋を立てるまでは
個人的に狭いところがあまり好きではないアンリ君。さらにこの狭い部屋には今年
﹁⋮⋮⋮⋮狭ぇ﹂
ルの脇にある空き部屋に入っていきます。
そうして、次の引率であるマクゴナガル先生に、新入生達は付いていき、城の玄関ホー
﹁ご苦労様ハグリッド。ここからは私が預かりましょう﹂
﹁マクゴナガル教授、イッチ年生のみなさんです﹂
商品その4─[組分けの儀式につき、本日休み]
38
しかしまもなく、マクゴナガル先生が挨拶をはじめました。
次にハッフルパフ。心優しく勤勉でまっすぐな者が集う寮。よく言っても悪く言っ
うか。刺激的な学校生活を送るなら、間違いなくここがオススメです。
いこともないです。やはり共通するのは、ある程度の怖いもの知らずということでしょ
が。そういう生徒も多いのは多い反面、傲慢な生徒や騎士道精神とは程遠い生徒もいな
見 ず な 生 徒 が 集 ま る 傾 向 に あ り ま す。触 れ 込 み は 騎 士 道 精 神 に 溢 れ た 云 々 な の で す、
まずグリフィンドール。勇猛果敢な者が集う寮。よく言えば勇者、悪く言えば向こう
違います。
それぞれ、ホグワーツの創始者達の名前から取った名前であり、寮ごとにその特色が
・スリザリン
・レイブンクロー
・ハッフルパフ
・グリフィンドール
ホグワーツには、4つの寮があります。
みなさんの家族のようなものですから、寮の組み分けはとても大事な儀式です﹂
着く前に、みなさんが入る寮を決めなくてはなりません。ホグワーツにいる間、寮生が
﹁ホグワーツ入学おめでとう。新入生の歓迎会が間もなく始まりますが、大広間の席に
39
商品その4─[組分けの儀式につき、本日休み]
40
ても、なぁなぁと言うべき寮でしょうか
他の寮と違って引っかかる基準が低いの
得手無く満遍なく優秀な者が多い為、文武両道であります。さらにここに選ばれる生徒
身内同士の結束が高いので、狡猾な者が集まるとはいえ寮内の雰囲気は良好。更には不
リンを毛嫌いする傾向にあります。ですが、悪い面ばかりではなく、良い面もあります。
認めんと言わんばかりの純血主義者の巣窟なのですから。他の三寮も、共通してスリザ
その筈。俗に言う闇の魔法使い達の排出率が高い、純血の魔法使い、魔女以外の存在を
別意識の高い生徒が集まります。まずのっけから良い印象の抱けない寮です。それも
最後に、スリザリン。狡猾な者が集う寮。よく言えばプライドの高い、悪く言えば差
とっては、周りと競い合いながら切磋琢磨していける、最高の環境と言えましょう。
す。ですが、頭の良い生徒が集まるのは間違いないので、自分の知力を高めたい生徒に
生を見下し村八分にしてしまうなど、俗に言う嫌なヤツが集まりやすい傾向にありま
が、それ故に高圧的になったり、同じ寮の生徒でも基準に合わない⋮⋮⋮⋮つまり劣等
く言えば薄情な生徒が集まります。知力を重視する風潮があり、総じて成績優秀です。
さて、レイブンクローは、機知と叡智に優れた者が集う寮。よく言えば頭の良い、悪
ざは他の寮と比べて少ないので、非常に過ごしやすい、とても良い寮だと思います。
で、劣等生自体はどの寮にもそれなりにいることはお忘れなく︶。生徒間同士のいざこ
で、劣等生が集まる寮とも言われます︵本当は、良くも悪くも目立つ生徒が少ないだけ
?
の親には金持ちだったり権力者だったりが多い為、コネを作るチャンスが非常に多いで
す。自分の才能を開花、発揮し、約束された成功の未来を勝ち取るなら、スリザリンが
ダントツでしょう。
そしてそんな感じで思考の海に沈んでいるアンリは、マクゴナガル先生が来るまで
りますね。
とは。流石は、
﹃天才﹄と言ったところでしょう。間違いなくレイブンクローの適性があ
⋮⋮⋮⋮流石はアンリ君。断片的な情報から大体の儀式の内容を推測してしまえる
適性である以上、頭を読み取られる系の何か、と推測するが⋮⋮⋮⋮︶﹂
以上、まさか魔法を使わせるわけでもあるめぇし。寮ごとの適正が心の在り方と単なる
﹁︵儀式⋮⋮⋮⋮っても、そんな大層なことはやらんだろう。マグル出身の新入生もいる
べっぱなしですが︶。
しかし、アンリはそのぬぼーっとした顔に、不安は浮かべませんでした︵苛々は浮か
のか、ざわざわとした声が部屋に漂います。
静かに、とは言ったものの、新入生の大半は組み分けの儀式がどの様なものか不安な
そう言って、マクゴナガル先生は部屋を出ていきました。
に待っていてください﹂
﹁それでは、学校側の準備ができたら戻ってきますから、それまでに身なりを整えて静か
41
ずっと無反応でありました。⋮⋮⋮⋮ゴーストが入ってきて、周りがガヤガヤしてるの
に気付かないって、どんだけっすか。
≡≡≡≡≡☆
戻ってきたマクゴナガル先生が、1列になった新入生達を連れてきたのは│││││
る、ある意味で始まりの間です
のアンリ君がそんな感じです。
知識で知っていても、体験すると思っていた物と違うことってありますよね
﹁こいつぁ、ビックリだわぁ﹂
!
上級生達の方を向かされます。
現在
ともかく、新入生達は4つの長テーブルと先生達のテーブルの間まで連れていかれ、
?
!
そう、此処がホグワーツ魔法魔術学校の大広間 何度と無く生徒が集まることにな
ルがあり、おそらく教職員の方々が座っていました。
そして4つの長ーいテーブルには上級生達が着いていて、その先にはさらに長いテーブ
空中に浮かぶは何千ものロウソク。天井は魔法がかけてあるのか星の見える夜空が。
﹁⋮⋮⋮⋮おおぅ﹂
商品その4─[組分けの儀式につき、本日休み]
42
そして全員が前に集まったことを確認したマクゴナガル先生は、新入生達の前に4本
脚のスツールを置き、その上に魔法使いが被るとんがり帽子⋮⋮⋮⋮のボロっちいのが
置かれました。
︶﹂
高度な魔法技術の塊とも言える飛行用箒を扱うアンリは、思わず息を飲みます。
︶﹂
!!
!!
前に進み出ました。
拍手が鳴り止んだところで、マクゴナガル先生が長い羊皮紙の巻き紙を手にしながら
気合を入れて拍手をしてました。最早この帽子の猛烈なファンとも言えましょう。
歌が終わると、広間にいた全員が拍手をした。アンリも、その1人。むしろ誰よりも
歌の内容は、帽子自身のこと、それとそれぞれの寮のこと。
突如としてその帽子が歌い出して、驚きます。
﹁∼∼∼♪﹂
と、猛烈に感動していた彼ですが。
てモンだ
﹁︵こいつぁスゲェ⋮⋮⋮⋮ コレを見ただけでもホグワーツに来た価値があったっ
魔法技術を見つけることができ、口の端が面白い様に上がっていきます。
アンリ君、戦慄。それと共に、上辺だけでも彼がこれからの箒作りで応用できる様な
﹁︵な、なんぞコレ⋮⋮⋮⋮すんげーオーパーツ的な塊でねーか
!?
43
︶﹂
﹁ABC順に名前を呼ばれたら、帽子をかぶって椅子に座り、組分けを受けてください﹂
﹁︵⋮⋮⋮⋮うっそマジでABC順かよ
ね。
それと共に、何故か先生方が少しだけどよめいたのですが⋮⋮⋮⋮この話は後です
割と早期に呼ばれ、意外にもアンリ君ガチガチです。
﹁ドーソン、アンリ﹂
いなく早いですね。
アンリ・ドーソン︵Henri Dawson︶⋮⋮⋮⋮苗字の先頭はDです。間違
!?
︶﹂
!!
︶﹂
?
なかったのです。
自分としては、レイブンクローかなーなんて思っていた以上、悩まれるとは思ってい
腕を組んだまま、アンリは疑問で頭を埋めてしまいます。
﹁︵⋮⋮⋮⋮え
﹁ふむぅ⋮⋮⋮⋮こいつは難しい﹂
勢いよく帽子を被り、座り込んで腕を組む。
﹁︵ええい、ままよ
しかし、被らないと先に進めないのも事実で⋮⋮⋮⋮
﹁︵ど、どーしよう⋮⋮⋮⋮柄にもなく緊張してんぜぇ⋮⋮⋮⋮︶﹂
商品その4─[組分けの儀式につき、本日休み]
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﹁うむ、確かにレイブンクローに行ったら、君の望む知識は手に入るだろうし、成功への
︶﹂
道も開ける。⋮⋮⋮⋮だが、それだけでは少々物足りない気がするのだよ﹂
﹁︵物足りない、ねぇ
︶﹂
?
なくなることもある君にピッタリだ﹂
﹁スリザリンに入れば⋮⋮⋮⋮君は間違いなく成功するだろう。目的の為に手段を問わ
確かに、なぁなぁだと時に過激さを見せるアンリの情熱にはむかなさそうです。
⋮⋮⋮⋮﹂
の 目 的 に は、そ ぐ わ な い だ ろ う。そ れ を 良 し と す る な ら ば、勧 め て も 良 い の だ が
はいるが優しく、とても勤勉だ。此処に入っても、君は上手くやっていける。だが、君
﹁ハッフルパフは⋮⋮⋮⋮おそらく止めておいた方が良いだろう。確かに君は捻くれて
なのでしょうか。
その点だけで言えば。つまり、アンリにとってよろしくないところもあるということ
言えば最高の寮だろう﹂
かかることだろう。目的のため、必要な知識を貪欲に求める君にとってはその点だけで
﹁成る程、よろしい。まず、先程言ったレイブンクローなら、君のその叡智に更に磨きが
﹁︵なら帽子さん、それぞれの寮に入った場合の意見を貰っても
徐々に落ち着いてきたアンリは腕組みを止め、目を開き、頭の中で帽子に問います。
?
45
血の問題も、アンリにとっては関係ありませんし、虐めもなさそうです。
︶﹂
﹁最後にグリフィンドールだが⋮⋮⋮⋮﹂
﹁︵⋮⋮⋮⋮帽子さん
︶﹂
いだろう。私としては、此処を1番に推そう﹂
するだろう。君は失敗することを恐れない非常に勇敢な性格だ。素質としても、問題な
フ程ではないが、不足ない学校生活を送れるだろう。スリザリン程ではないが、成功は
﹁レイブンクロー程ではないが、君はその叡智に磨きをかけられるだろう。ハッフルパ
?
?
︶﹂
?
︶﹂
?
﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂
げることができる﹂
・・・・
うだろう。だがグリフィンドールならば、君自身が、未来を選択できる。可能性を、広
﹁左様。先の3つの寮に入って仕舞えば、おそらく君の未来はある程度定められてしま
﹁︵お、面白そう
﹁どうなるかが分からない⋮⋮⋮⋮それが、1番面白そうだからだ﹂
﹁︵ならば、何故
﹁悪く言えば、そうなるだろう。まぁ私も、それだけでは推したりせんよ﹂
ジトッとした思念を頭に浮かべるアンリ君。その返答は。
﹁︵裏を返せば、どれもこれも中途半端なのに
商品その4─[組分けの儀式につき、本日休み]
46
もう一度、アンリは腕を組み、目を瞑ります。
﹁グリフィンドール
ちなみに、
﹂
へと駆けていくのでした。
ドーソンは、ワクワクしながら自分を歓迎するグリフィンドールの上級生達のテーブル
帽子を被ってから実に5分37秒。今年1番組分けに時間をかけた1年生:アンリ・
!!!
そして、
﹁帽子さん、乗った﹂
ニンマリと口元を歪めながら、アンリは決めました。
れちまうじゃねーか︶﹂
﹁︵⋮⋮⋮⋮選択肢は自分の手の中。そんな風に煽られて逃げたら、臆病モンだって思わ
で嫌だ︶﹂
﹁︵成功への道が確定⋮⋮⋮⋮でも、レールの上に乗せられるのは、自分の力じゃない様
﹁︵学校生活は楽しく送りたい⋮⋮⋮⋮けど、店を再興できないのは論外だ︶﹂
﹁︵確かに、知識は欲しい⋮⋮⋮⋮でも、暗にそれだけしか言われてないね︶﹂
47
﹁シールズ、メアリ
﹂
﹂
もうちょっとこうないんですか
﹁グリフィンドール
﹁早っ
﹂
!?
!! !
﹁君の行き先は、あの少年の行き先だろう⋮⋮⋮⋮﹂
!?
嬉しいけど、なんか喜べないメアリなのでした。
﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂
商品その4─[組分けの儀式につき、本日休み]
48
商品その5│[広告塔との打ち合わせの為、本日休業]
無事、組分けの儀式も終わり、校長⋮⋮⋮⋮アルバス・ダンブルドア先生の有難くも
﹂
訳のわからない頭おかしい挨拶の後、歓迎会という名の飲み食いパーティーの最中のこ
と。
﹁へー、じゃあアンリは早い段階で
らでも転がり込むけどね
﹂
﹄っ
﹂
僕は箒職人、選手になんかならないよ。ま、専属箒職人の枠があるなら今か
てことは、来年からグリフィンドールのクディッチの選手入りを狙う感じ
てはしゃいでたね﹂
﹁おー
!!
のですが。
す。⋮⋮⋮⋮まぁ、同年代と話す機会が無かったから、確かに楽しいのだろうとは思う
饒舌アンリ君、めちゃくちゃ輝いてます。これ以上無いくらいにテンション高いで
!!
!
!
﹁まさか
?
だってさ。じーさんは﹃将来こいつは立派なクディッチ選手になるに違いないっ
﹁そーなんだよー。3歳のガキが箒をお猿さん掴みでブラブラしながら曲芸飛行したん
?
49
﹂
見ての通りさ
﹁ハァーイ、アンリ。楽しんでる
﹁おぉ、我が愛しの幼馴染殿
﹁⋮⋮⋮⋮へーい﹂
アリさん。組分け後の渋い顔が嘘のようです。
﹂
そしてそんなアンリに話しかけるのは、彼とどっこいどっこいでテンション高めのメ
!
?
﹁気持ち悪いからその変なキャラやめなさい﹂
!
︶﹂
?
﹁︵いやあのな
﹁︵うんうん︶﹂
あそこに、ハリー・ポッターがいるじゃん
︶﹂
?
︶﹂
?
失笑物だし、悪ければこの学校にいられなくなるわ︶﹂
﹁︵⋮⋮⋮⋮聞いたのが私で良かったわええ本当。彼を知らないなんて、いろんな意味で
言い出しそうです。
彼の言葉に、彼女は頭を抱え始めました。この幼馴染、何をトチ狂ったことをとでも
うにもね、思い出せないのね。メアリは知って⋮⋮⋮⋮メアリ
﹁︵なんか、超有名人らしいんだよね。僕も聴いたことあるような気がするんだけど、ど
?
急にひそひそ声になるアンリに、嫌な予感をしながらも、彼女は耳を寄せます。
﹁︵⋮⋮⋮⋮なによ
﹁︵あ、そういえばメアリ。一つ聞きたいことが︶﹂
商品その5─[広告塔との打ち合わせの為、本日休業]
50
︶﹂
!!
﹁︵う、うそん⋮⋮⋮⋮︶﹂
彼はね、ハリー・ポッターはね、
﹃生き残った男の子﹄なのよ
⋮⋮⋮⋮あ、アンリ君の顔が青ざめ始めました。
︶﹂
﹁︵⋮⋮⋮⋮う、うそん。どーりで聞いたことがある気がした︶﹂
﹁︵聞いたことがあるレベルじゃないわよこの箒キチ
!!
﹂
﹂
⋮⋮⋮⋮あれ、アンリ君の顔がいけない方向に輝き出しましたよ
﹁︵ご、ごめん⋮⋮⋮⋮あ、でも︶﹂
﹁んじゃメアリ、あんがとさん
逃げるなァ
!!
!
﹁ハァイ、ハリー
元気にやってるゥ
﹂
?
ソイツはすまなんだ﹂
?
ホラ、ハリーだってビクついてますよ
?
⋮⋮⋮⋮それはともかく、アンリの顔、妙な笑顔を保ったままで気持ち悪いんですが。
ケ ラ ケ ラ 笑 い つ つ も 少 し も 済 ま な い よ う な 雰 囲 気 は 感 じ ら れ な い ん で す が ね ぇ
﹁んお
﹁あ、アンリか。急に声をかけられてビックリしたよ﹂
!
スルリとメアリから逃げ出した彼は、そのまま件のハリー・ポッターのもとへ。
﹁あ、ちょ、アンリ
!
?
ひそひそ声で叫ぶという奇妙な特技を披露しながら、胸ぐらを掴みガクガクと揺らし
﹁︵本当よこのバカ
!!
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﹂
﹂
﹁ところでハリー。汽車でのコンパートメントが一緒だったよしみで頼みがある﹂
﹁な、何かな
の内容に、ハリーの思考は止まり⋮⋮⋮⋮
﹁ほぼ初対面の人間に何を言っとるかこのバカちんッ
﹂
!!!!!
割と知名度の高いその魔法使いどころか英国人にとっても奇抜なその所作とその発言
ジャパニーズに伝わる最上級の謝罪である、床にデコをつける動作、
︻DOGEZA︼。
!!
?
﹁僕の箒の広告塔になって下さいお願いしますッ
商品その5─[広告塔との打ち合わせの為、本日休業]
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大広間に響き渡る、怒号とツッコミ兵装︻HARISEN︼の乾いた音。思わず全生
徒、全教師が凍りつく程度には目を引くものでありました。
⋮⋮⋮⋮彼らを知る者は、後にこの事をこう語りました。
﹁それでアンリ、さっきのアレはどういうこと
﹂
アンリ君は、グリフィンドール男子寮、寝室の一室にて、ハリー君に怒られてました。
?
グリフィンドール寮の談話室に着いていて。
長先生のありがたい忠告も、何もかもが右から左に流してしまいながら、いつの間にか
そしてそんなアンリと、己の行動に頭を抱えていたメアリは、その後の校歌斉唱も、校
情でアンリも意外に有名人ですしね。
行動力のあるバカ:アンリ・ドーソンの名はすぐに広まりました⋮⋮⋮⋮まぁ、諸事
≡≡≡≡≡☆
ションを決定付けたんだ⋮⋮⋮⋮﹃変人﹄とその﹃飼い主﹄ってね﹄
﹃ある意味で、あの出来事はアンリ・ドーソンとメアリ・シールズのホグワーツでのポジ
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ちなみに同室の野次馬のオマケ付きです。
まあ、それも仕方がないでしょう。だって、元々出自のせいで視線を集めていてむず
痒かったのが、アンリの行動によってさらに視線を集めることになったのですからね。
だから、
﹁⋮⋮⋮⋮本当すんません。いや、言った内容については他意はないんですけど﹂
他意が無いのは本当の様です。寧ろその方がタチが悪いんですけれど。
?
﹁そこはお気になさらず。打算コミコミで話を持ちかけてる以上、僕の持てる知識なん
﹁でも僕、魔法のことなんか全然知らないんだけれど⋮⋮⋮⋮﹂
よ、コンパートメントでの君の印象からね﹂
わけだし。それでも君に頼んだのは、君となら仲良くやっていけそうだと思ったからだ
いよ。別に有名人ってだけの括りなら君でなくても、ホグワーツの先生方に頼めばいい
﹁ああ、勘違いしない様に言っておくけど、別に有名人なら誰でもいいってわけじゃあな
﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂
かりますけれど。
野次馬の1人、同じ寝室のロン君が思わず声を漏らしました。まあ、その気持ちは分
﹁わぁ⋮⋮⋮⋮ド直球﹂
ウチの箒を使ってもらって宣伝してもらいたかったんだ﹂
﹁ハリーは嫌がるかもしれないけどさ⋮⋮⋮⋮ほら、ハリーは有名人じゃん
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かは伝えるし教えるさ。それに、飛行用箒自体は魔力さえあれば簡単に乗れるモンさ。
そこはまあ、飛行訓練の授業でやるから、僕が教えるまでもないんだけどね﹂
こと箒に関わることなら、アンリの右に出る者はほとんどいないでしょう。それは魔
法のことを何にも知らないハリーでも、散々箒職人であることの誇りをコンパートメン
トで聞かされたからなんとなく分かったのでしょう、一応は納得した様です。
と不安そうに上目遣いでハリーを見るアンリは、じみーに尻尾を垂らす
?
を渡そうと思うが⋮⋮⋮⋮どうだろう
﹂
!?
?
こ、この男、外野を味方につけてハリーの首を縦に振らせる魂胆なのか
狡い、あ
﹁なんなら、ハリーの同室の君たちにも。もちろん広告塔になってもらうこと込みで、箒
言葉は。
その反応を見て、チャンスと感じ取ったアンリ。心の中でニヤリと笑いながら、続く
リ君です。先ほどまでの怒りが一気に薄れてグラつきます。
元より、箒や飛行に興味はあったハリー。そこに追い討ちをかけるかの様にこのアン
﹁う⋮⋮⋮⋮﹂
仔犬の様であり。
どうかな
ら、既存のどの箒よりも素晴らしい箒を無償で渡すことを約束しよう﹂
﹁まあ無理なら無理でそれでも構わない⋮⋮⋮⋮が、もし広告塔になってもらえるのな
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まりにも狡い
﹂
﹂
て言うか寧ろこんな無茶な話に付き合ってくれてありがとうッ
﹂
と叫ぶアンリ君は、そのまま│││││││
﹁⋮⋮え、気絶した
ヤッター
?
﹁ど、どうしよう
﹁⋮⋮放置で﹂
﹂
⋮⋮⋮⋮本当に大丈夫か、この箒職人。
幸せそうな顔で、仰向けに倒れましたとさ。
?
﹂
?
!!!
ら、その時ってことでもいい
﹁わ、分かったよ。でも、確か個人の箒を持ってこれるのは2年生からだよね だか
真っ先に反応したロンは、キラキラした顔でハリーを、期待の眼差しで⋮⋮⋮⋮。
﹁え、本当に
!? !!
!!!! !!
﹁うわー⋮⋮⋮⋮おったまげー﹂
?
﹁もちろん
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