勾配エネルギ−に関する一考察 by T.Koyama 1. 濃度勾配エネルギ−の評価 エネルギ−の評価には、その基本式がどのように導かれ、その際どのような仮定が含まれている かを正確に把握しておくことが大切である。ここではCahnとHilliardのスピノーダル分解理論におい て、濃度勾配エネルギ−がどのように導かれたかについて説明する。 まず濃度勾配エネルギ−の物理的意味について考えてみよう。通常の化学的自由エネルギ−は、 濃度のみの関数である。しかし、スピノ−ダル分解のように空間的に非常に急峻な濃度変動が生じ る場合には、化学的自由エネルギ−に過剰項が発生する。この原因は物理的に以下のように説明で きる。例えば濃度プロファイル上のある濃度 c1 の位置に着目した場合、もしその位置における濃度 勾配や濃度の曲率が異なれば、たとえ同じ濃度 c1 であっても、その部分の内部エネルギ−も異なる であろう。これは通常、化学的自由エネルギ−の内部エネルギ−項が原子の結合エネルギ−の総和 にて計算されることを考慮すれば、容易に理解できる。すなわち、急峻な濃度勾配を有する界面部 分では、原子の結合種の数(A-A対やA-B対等の本数)や界面部分の原子間距離(原子サイズの相 違による)が、濃度プロファイル形状に依存しているはずであるので、この効果によって、平均場 の化学的自由エネルギ−に対する過剰量が生じるのである。したがって、このような急峻な濃度プ ロファイルを有する系における化学的自由エネルギ−の評価では、濃度以外に濃度プロファイル形 状の情報である濃度勾配や濃度の曲率等を独立変数として、化学的自由エネルギ−表現に取り込む 必要がある。これを定式化した理論がCahnのスピノ−ダル分解理論である。 具体的に濃度勾配エネルギ−を導出してみよう。これには、まず多変数のテイラ−展開が使用さ れている。いま一般的に独立変数 x, p, q を持つ任意の関数 f ( x, p, q) を考え、このテイラ−展開を 考えよう(ここでは展開の一般手法を説明しているので、x は位置を表す変数ではなく、一般的な 変数としている点に注意。また p, q もこの段階では任意変数である)。さて、1変数 x のみのテイ ラ−展開は、 ∂f 1 ∂2 f 1 ∂3 f 2 f ( x, p, q) = f ( x0 , p, q) + ( x x ) ( x x ) ( x − x0 )3 + − + − + 0 0 2 3 x 2! x 3! x ∂ ∂ ∂ x = x0 x = x0 x = x0 (1-1) にて与えられる(展開中心を x0 とした)。 x のみでテイラ−展開したので、右辺の ( x − x0 )i の係数 は全て p, q の関数である。したがってこれら係数は、p もしくは q でテイラ−展開できる。試みに、 式(1-1)右辺第1項を、変数 p にて展開してみよう。 ∂f 1 ∂2 f − + f ( x0 , p, q ) = f ( x0 , p0 , q) + ( p p ) ( p − p0 ) 2 + 0 2 ∂ ∂ p 2! p x = x x = x p = p0 p = p0 0 0 と計算され、今度は右辺の ( p − p0 )i の係数が q のみの関数になる。したがって、この係数は q でテ イラ−展開できる。例えば上式の第1項と、2項の係数を q で展開すると、 ∂f 1 ∂2 f 2 − + f ( x0 , p0 , q) = f ( x0 , p0 , q0 ) + ( q q ) 0 2 x = x0 ( q − q0 ) + x = x0 ∂ q 2! ∂ q p = p0 p = p0 q = q0 q = q0 ∂2 f ∂f ∂f ( q − q0 ) + = + ∂ x xp==xp0 ∂ x xp==xp00 ∂ q∂ x xp==xp00 0 q = q0 q = q0 である。つまり多変数のテイラ−展開の計算は、結局、その展開係数部分の独立変数に着目し、1 変数ずつテイラ−展開して行けばよい。展開部分が入れ子形式になっているので、全てをもとにも どすと最終的な展開結果は、 1 ∂f ∂f ∂f f ( x, p, q ) = f ( x0 , p0 , q0 ) + ( q − q0 ) x = x0 ( x − x0 ) + x = x0 ( p − p0 ) + ∂ x p = p0 ∂ p p = p0 ∂ q xp==xp00 q = q0 + q = q0 q = q0 1∂ f 1∂ f 1∂ f 2 2 2 2 x = x0 ( x − x0 ) + 2 x = x0 ( p − p0 ) + 2 x = x0 ( q − q0 ) 2 ∂ x p= p 2 ∂ p p= p 2 ∂ q p= p 0 0 0 2 2 2 q = q0 q = q0 (1-2) q = q0 ∂2 f ∂2 f ∂2 f + ( q − q0 )( p − p0 ) + x = x0 ( x − x0 )( p − p0 ) + x = x0 ( x − x0 )( q − q0 ) + ∂ x∂ p p = p0 ∂ x∂ q p = p0 ∂ q∂ p xp==xp00 q = q0 q = q0 q = q0 のようになる。次に変数 x のみそのままにして、 p, q にてテイラ−展開する場合には、 ∂f ∂f f ( x, p, q) = f ( x, p0 , q0 ) + ( p − p0 ) + ( q − q0 ) ∂ p qp==qp0 ∂ q qp==qp0 0 + 0 ∂2 f 1∂ f 1∂ f ( p − p0 ) 2 + 2 ( q − q0 ) 2 + ( p − p0 )( q − q0 ) + 2 ∂ q∂ p p = p0 2 ∂ p p = p0 2 ∂ q p = p0 q=q q=q q=q 2 2 0 0 (1-3) 0 = f ( x, p0 , q0 ) + L( x )( p − p0 ) + K1 ( x )( q − q0 ) + K 2 ( x )( p − p0 ) 2 + K 3 ( x )( q − q0 ) 2 + K 4 ( x )( p − p0 )( q − q0 ) + となることは容易に理解できるであろう。ここで展開係数部分を改めて L( x ), Ki ( x ) のように置い た。注意すべき点は、この展開係数部分が x の関数となっている点である。 さて本題の濃度勾配エネルギ−の導出に戻ろう。式(1-3)において、独立変数を ( x, p, q) = ( c, ∇c, ∇2 c ) =(濃度, 濃度勾配, 濃度の曲率) と置き直すと、関数 f ( x, p, q) は、 f ( c, ∇c, ∇2 c ) = f ( c, 0, 0) + L( c )(∇c) + K1 ( c )(∇2 c ) + K 2 ( c )(∇c ) 2 + K 3 ( c )(∇2 c ) 2 + K 4 ( c )(∇c)(∇2 c ) + (1-4) ≅ f ( c, 0, 0) + L( c ) (∇c ) + K1 ( c ) (∇2 c ) + K 2 ( c ) (∇c ) 2 と表現される。ただし最後のところで高次項は省略した。この表現が、濃度プロファイル形状まで 考慮した濃度不均一系における化学的自由エネルギ−である。 さてここで1次元( x 方向:ここから変数 x が座標になるので注意)の左右対称な濃度プロファイ ルを考え、その中心を原点に取ると、物理的に、 f {c( x ), ∇c( x ), ∇2 c( x )} = f {c( − x ), ∇c( − x ), ∇2 c( − x )} でなくてはならない(これは同じ場所を表と裏からながめた場合と等しく、物理的にエネルギ−は 同じ値にならなくてはならない)。式(1-4)は任意の濃度プロファイル形状について成立するはずで あるので、上記の条件を式(1-4)に課すと、 2 f {c( x ), 0, 0} + L{c( x )}{∇c( x )} + K1{c( x )}{∇2 c( x )} + K 2 {c( x )}{∇c( x )}2 = f {c( − x ), 0, 0} + L{c( − x )}{∇c( − x )} + K1{c( − x )}{∇2 c( − x )} + K 2 {c( − x )}{∇c( − x )}2 = f {c( x ), 0, 0} + L{c( x )}{−∇c( x )} + K1{c( x )}{∇2 c( x )} + K 2 {c( x )}{∇c( x )}2 ∴ L{c( x )}{∇c( x )} = 0 → L{c( x )} = 0 となり、L( c ) は恒等的に 0 でなくてはならないことがわかる。以上から不均一系の化学的自由エネ ルギ−は、 f ( c, ∇c, ∇2 c ) = f ( c, 0, 0) + K1 ( c )(∇2 c ) + K 2 ( c)(∇c )2 (1-5) にて与えられる。ここで、 f ( c, 0, 0) は濃度勾配や曲率が 0 である場合の化学的自由エネルギ−であ るので、通常の平均場の化学的自由エネルギ−に等しい。したがって、濃度変動が生じたことに起 因する系全体の過剰自由エネルギ− Esurf は、 Esurf = ∫ [ K1 ( c )(∇2 c ) + K 2 ( c )(∇c ) 2 ]dV = ∫ K1 ( c )(∇2 c )dV + ∫ K 2 ( c )(∇c ) 2 dV V V V (1-6) にて与えら れる。これ が濃度勾配 エネルギ− である。こ の右辺第1 項をガウス の発散定 理 ∫ r f ⋅ g, j dV = ∫ V ∫ S f ⋅ g ⋅ n j dS − ∫ V f , j ⋅ gdV (1次元では部分積分に相当)を用いて変形すると、 K1 ( c )(∇2 c )dV = ∫ K1 ( c ){(∇c ) ⋅ n}dS − ∫ (∇K1 ) ⋅ (∇c )dV S V = ∫ K1 ( c ){(∇c ) ⋅ n}dS − ∫ S V ∂K1 ∂K1 (∇c ) 2 dV = − ∫ (∇c ) 2 dV V ∂c ∂c (1-7) となる。 n は系の表面における外向き法線ベクトルである。表面積分項が消えているのは、系の表 面全体で積分した値が統計的に0となる(いま c と ∇c は独立と考えているので、個々の c につい て、表面位置における ∇c の法線方向成分 (∇c ) ⋅ n の総和を計算した場合、統計的に 0 とすることは 物理的に正しいと考えられる)ことを仮定した結果である。これより Esurf は最終的に ∂K Esurf = ∫ K1 ( c )(∇2 c )dV + ∫ K 2 ( c )(∇c ) 2 dV = ∫ K 2 ( c ) − 1 (∇c )2 dV V V V ∂c (1-8) と変形される。ここで改めて、 κ (c) = K2 (c) − ∂K1 ∂c (1-9) と置くことにより濃度勾配エネルギ−は、 Esurf = ∫ κ ( c )(∇c ) 2 dV (1-10) V となる。 κ ( c ) は濃度勾配エネルギ−係数と呼ばれ、エネルギ−に長さの自乗をかけた次元を持ち、 厳密にはこの場合、濃度の関数であるが、定数と仮定される場合が多い( κ ( c ) を平均組成の周りで 展開し定数項のみを残した場合ととらえても良い) 。 ここで1次元の濃度プロファイルを考え、不均一場における内部エネルギ−式を具体的に計算す 3 ることによって、濃度勾配エネルギ−係数を簡単に見積もってみよう。まず濃度場を ∂ c ∆x 1 ∂ 2 c ∆x ∆x cx + c ( x ) = + + 2 2 ∂ x x= x 2 2 ∂ x x= x 2 2 (1-11) のように展開する。AB2元系を考え、化学的自由エネルギ−内の内部エネルギ−項(平均場)を E = −Ωc 2 とする。 Ω は原子間相互作用パラメ−タである(定数と仮定)。位置 x によって濃度 c が微小に変 化しているとして、この平均場の内部エネルギ−を、 ∆x ∆x E = −Ωc x − c x + 2 2 (1-12) のように修正し、これに式(1-11)を代入して高次項を省略すると、 2 ∂2c ∂c 1 1 E = −Ωc( x )c( x ) − Ωc( x )( ∆x ) 2 2 + Ω( ∆x ) 2 4 ∂ x x=x ∂ x x= x 4 (1-13) を得る。右辺第1項は平均場の内部エネルギ−であるので、濃度プロファイル形状に起因する内部 エネルギ−の過剰量は第2および3項となる。式(1-5)との比較から、 1 K1 ( c ) = − Ωc( ∆x ) 2 , 4 K 2 (c) = 1 Ω( ∆x )2 4 (1-14) であることがわかる。式(1-9)に代入することにより濃度勾配エネルギ−係数が、 κ (c) = K 2 (c) − ∂K1 1 = Ω( ∆x ) 2 ∂c 2 (1-15) と導かれる。 ∆x はほぼ原子間距離のオ−ダ−を持つ。原子間相互作用パラメ−タに濃度に依存す る場合には、濃度勾配エネルギ−係数も濃度依存性を有することになる。しかし通常の解析では定 数と仮定される場合が多い。また式(1-15)の導出過程は非常に理想化した場合および1次元を想定 しているので、係数の 1/2 は実際には 1/2 から外れ、通常は任意変数と置かれる。 なお以上において、内部エネルギ−項の過剰項のみについて取り扱い、化学的自由エネルギ−に おけるエントロピ−項については何もふれなかったが、これはエントロピ−項についても同様に計 算すると、過剰項は現れないことが容易に確認されるからである。(定性的には、エントロピ−項 は掛け算を足し算にしてしまうために、ここで議論しているような過剰項は現れないと言える。 ) 2.濃度勾配エネルギ−係数の具体的評価 まず各種勾配エネルギ−係数の値は、以下の式に基づき暫定的に決定することができる。(なお 最終的な値は、スピノーダル分解波長や異相界面幅の実測値等と、相分解シミュレーション結果と を比較することにより試行錯誤にて決定される。 ) 4 ∆xS c2 − c1 ∆xS + ∆F = γSS Vm ∆x Vm 2 κc (2-1) γ SVm ∆x ( ∆x ) 2 − ∆ κc = F ( c2 − c1 ) 2 ( c2 − c1 ) 2 この式は、異相界面を平面とし、 「界面エネルギ−」と「界面部分の化学的自由エネルギ− + 濃 度勾配エネルギ−」が等しいと仮定した場合の関係式である。κ c は濃度勾配エネルギ−係数、c2 , c1 は界面を境にした2相の濃度、 ∆x は界面の幅、 S は界面積、 Vm はモル体積、 ∆F は界面部分の化 学的自由エネルギ−(界面部分の平均場の化学的自由エネルギ−を界面部分で平均化した量)で、 γ S は界面エネルギ−密度の実測値である。実際の計算では、各変数の次元に気をつける必要がある。 ちなみに各次元は以下のようになる。 J×m 2 m3 J J 2 ∆ x S V , m , m , , γ S 2 , ∆F [ ] m m mol mol mol κc J×m 2 γ SVm ∆x J m 3 ( ∆x ) 2 κc : : 2 m − ∆F = 2 ( c2 − c1 ) 2 mol (c2 − c1 ) m mol γ V ∆x ( ∆x ) 2 J×m 2 = S m 2 − ∆F : ( c2 − c1 ) 2 mol ( c2 − c1 ) J : m2 mol (2-2) 具体的に、合金(fcc)の代表的と思われる値を用いて、 κ 0 を見積もって見よう。 γ S = 0.1(J/m 2 ) a0 = 0.3(nm) Vm = 6.02 × 1023 × ( a0 / 4) = 4.0 × 10−6 (m3 /mol) 3 ∆x = 1.0(nm) c2 − c1 = 0.8 ∆Fc = 50(J/mol) と置くと、 κc = γ S Vm ∆x ( c2 − c1 ) 2 − ∆F ( ∆x ) 2 = 5.5 × 10−16 (J×m 2 /mol) ( c2 − c1 ) 2 (2-3) と導かれる。経験則としては、 [J×m 2 /mol] の単位で、おおよそ κ c ≅ 10−16 ∼ 10−14 程度である。 3.多元系の濃度勾配エネルギ− 多元系の濃度勾配エネルギ−表記は、濃度場が保存場であるので過剰項が現れるので、注意が必 。 要である。以下、2元系と3元系について説明する(簡単のため1次元を考え、κ c は定数と置く) まず AB2元系の濃度勾配エネルギ−は 2 Esurf 1 ∂c 1 ∂c = κc A + κc B 2 ∂x 2 ∂x 2 (3-1) 5 と表現できる。2元系では、 dc A = − dcB であるので、 2 Esurf 2 2 2 ∂c 1 ∂c 1 ∂c 1 ∂c 1 ∂c = κc A + κc B = κc − B + κc B = κc B 2 ∂x 2 ∂x 2 ∂x 2 ∂x ∂x 2 (3-2) となる。2元系の相分解を扱った記述で、しばしば κ c の前に 1/2 があったり なかったりするが、 基本的には上記の変形がなされている。この場合は非常に単純であるが、3元系で同様な操作を行 うと交差項が存在することが容易にわかる。すなわち ABC3元系では、 dc A = −( dcB + dcC ) を考慮 して、 2 Esurf 2 1 ∂c 1 ∂c 1 ∂c = κc A + κc B + κc C 2 ∂x 2 ∂x 2 ∂x 2 2 2 ∂c 1 ∂c 1 ∂c 1 ∂c = κc − B − C + κc B + κc C ∂x 2 ∂x 2 ∂x 2 ∂x 2 2 ∂c 1 ∂c 1 ∂c 1 ∂c = κc B + C + κc B + κc C ∂x 2 ∂x 2 ∂x 2 ∂x 2 2 2 (3-3) 2 ∂c ∂c ∂c ∂c = κc B + κc C + κc B C ∂x ∂x ∂x ∂x となる。つまり濃度に関する独立変数を cB , cC とした場合、交差項として上式右辺第3項が現れる。 多元系における濃度場(保存場)の解析では、この項は省略できないので注意を要する。事実この 項を省略すると拡散場に異方性が生じ、物理的に間違った結果が得られる。 4.非保存変数に関する勾配エネルギ− 基本的には、非保存変数に関する勾配エネルギ−も濃度勾配エネルギ−と同様に表現できるが、 上記3で説明した制約条件はこの場合存在しない。しかし交差項が必ず0である保証はないので、 通常の定式化では省略しない方が良い。したがって、非保存変数 si に関する勾配エネルギ−は、 Esurf = 1 ∑∑ κ s ∇si ∇s j , (i = 1, 2, 3, ), ( j = 1, 2, 3, ) 2 i j ij (4-1) と表現される。1次元で、 i = j = 1 のみであり、 κ sij が定数 κ s の場合には、 s1 = s と置いて、 Esurf 2 2 2 1 1 ∂ s ∂ s ∂ s ∂ s ∂ s ∂ s 1 ∂ s ∂s ∂ s 2 , , , , = κ s ∇s = κ s + + ⋅ = κs 2 2 ∂x ∂ y ∂z ∂x ∂ y ∂z 2 ∂x ∂y ∂z となる。また1次元、 i = 1, 2 および j = 1, 2 、 κ sij が定数 κ s では、 6 (4-2) { } 1 2 2 κ s ∇s1 + κ s ∇s2 + 2κ s ∇s1 ∇s2 2 1 1 2 2 = κ s ∇s1 + κ s ∇s2 + κ s ∇s1 ∇s2 2 2 2 2 2 2 2 ∂ s1 ∂ s1 1 ∂ s2 ∂ s2 ∂s 1 ∂ s1 = κs + + + + 2 + κs 2 ∂x ∂y ∂z 2 ∂x ∂y ∂z Esurf = 2 (4-3) ∂ s ∂ s2 ∂ s ∂ s2 ∂ s ∂ s2 + κs 1 + 1 + 1 ∂y ∂y ∂z ∂z ∂x ∂x となる。濃度場と異なり、絶対値が必要である理由は交差項にある。 si を規則-不規則変態の規則 度としよう。通常 −1 ≤ si ≤ 1 と定義される。濃度場の場合、恒等的に、 ∂ c1 ∂ c2 ∂ c1 ∂ c2 = ∂x ∂x ∂x ∂x (4-4) が成立するので、濃度勾配の表記に絶対値を使用する必要はない。しかし、規則度場の場合には、 −1 ≤ si ≤ 1 であるので、 ∂ s1 ∂ s2 ∂ s1 ∂ s2 ∂ s1 ∂ s2 = or − ∂x ∂x ∂x ∂x ∂x ∂x (4-5) の2通りが現れることになる。しかし、 (∂ s1 / ∂ x )(∂ s2 / ∂ x ) と −(∂ s1 / ∂ x )(∂ s2 / ∂ x ) の状態は、エネ ルギ−としては物理的に全く等しくなっているはずである(基本的に位相がずれているだけで、例 えば原子間の結合を数えれば同数になっており内部エネルギ−は等しいはず)。つまり、絶対値表 記を使用しなければ、両者が異なった値となり矛盾が生じる。逆に、エネルギ−表記において交差 項が0である確証があれば絶対値表記は必要ない。しかし (∂ s1 / ∂ x )(∂ s2 / ∂ x ) は通常、無視できる 量ではないので、規則度にて勾配エネルギ−を記述する場合には、絶対値表記を使用しなくてはな らない。 5.原子サイズから組織への界面エネルギ−の定式化 結晶格子点位置 p における溶質原子の存在確率 c( p) を考慮することによって、原子サイズにおけ る広義の界面エネルギ−(平均場からのずれとして定義)を、以下のように定式化することができ る。 Esurf = 1 2 N a3 1 ∑∑W (p' − p")c(p')c(p") − 2 N ∑W c 0 p' p" 3 a 0 2 ( p') (5-1) p' p は結晶格子点の位置ベクトルで、 N a3 は全格子点数である。 W0 は次式にて定義され、 は実空 間平均であり、 ∆p = p' − p" である。 W0 ≡ ∑ W ( ∆p) 0 ∆p ここで c( p) を、格子点位置 p における溶質原子の存在確率と記した。時間を固定すれば、格子点に 7 おける溶質原子の存在確率は 0 か 1 である。ここでは、c( p) をある緩和時間の間の平均値と定義す ることによって、0∼1 の間の連続変数とみなす(格子点における時間平均濃度と考えても良い) 。 緩和時間の長さは対象とする現象や条件によって異なると考えられるが、ここでは規則-不規則変 態において局所的な規則度を定義する場合に必要な格子点数だけ原子が移動できる時間程度と仮 定する。なお W0 は以下のように導かれる。 1 1 [W0 (p' − p")c(p')c(p")] = ∑∑ [W0 ( ∆p)c(p')c(p' − ∆p)] ∑∑ 2 p' p" 2 p' ∆p = = = = 1 ∑ c(p') 2 p' ∑ [W ( ∆p)c(p' − ∆p)] 1 ∑ c(p') 2 p' ∑ W ( ∆p) c(p') + ∂ p ∆p ∆p 1 c( p') ∑ 2 p' 1 ∑ c(p') 2 p' 0 ∆p 0 ∂c ∑ [W (∆p)c(p')] 0 ∆p ∑ W ( ∆p ) ∆p 0 + ∂c ∑ W ( ∆p) ∂ p ∆p ∆p 0 c( p') 1 = W0 ∑ c 2 ( p') 2 p' ∂c ∂c = ∑ W0 ( ∆p) ∆p = 0 と置いた。 ∆p ∂p ∑ W ( ∆p) ∂ p ∆p この定式化において、 ∆p 0 さて式(5-1)を Esurf = 1 2 N a3 1 = 2 N a3 1 ∑∑W (p' − p")c(p')c(p") − 2 N ∑W c 0 p' p" 3 a 0 2 ( p') p' 1 c( p') ∑ W0 ( p' − p")c( p") − W0 c( p') = ∑ 3 p' p" 2Na (5-2) ∑ c(p') µ surf ( p') p' と置き直し、関数 µ surf ( p') を以下のように定義しよう(これは界面ポテンシャルに他ならない) 。 µ surf ( p') ≡ ∑ W0 (p' − p")c(p") − W0 c( p') (5-3) p" 次にこれをフ−リエ表現する。 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------フ−リエ変換および逆フ−リエ変換を、関数 f ( p) のフ−リエ変換を F ( k ) として、 F (k ) = f ( p) = 1 N3 ∑ f (p) exp(−ikp) p 1 (2π )3 ∑ F (k ) exp(ikp) k 8 にて定義しよう。関係式として、デルタ関数はフ−リエ変換にて 1 N3 ∑ exp(ikp) = δ (k ) p と表現できる。なぜなら、デルタ関数の定義から、 F ( k ) = δ ( k ) と置くと、 1 f ( p) = 1 (2π ) 1 ∑ δ (k ) exp(ikp) = (2π ) ∑ δ (0) = (2π ) ∑ 3 3 k 3 k =1 k となる。 f ( p) = 1 であるので、 1 N3 δ (k ) = F (k ) = 1 ∑ f (p) exp( −ikp) = N ∑ exp( −ikp) 3 p p である。ちなみに、この関係を用いて、 1 N3 ∑ f (p) exp(−ikp) 1 N3 ∑ (2π ) ∑ F (k') exp(ik'p) exp(−ikp) F (k ) = = p 1 1 1 = 3 (2π ) N 3 = = 3 p 1 (2π ) ∑∑ F (k') exp{i(k' − k ) p} p k' 1 3 ∑ F (k') N ∑ exp{i(k' − k ) p} 3 k' 1 (2π ) k' p 1 3 1 ∑ F (k')δ (k' − k ) = (2π ) ∑ F (k ) = F (k ) (2π ) ∑ 3 k' 3 k' = F (k ) k' となっていることがわかる。 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------さて、 N a3W0 ( p' − p") および c( p" ) を次式のようにフーリエ表現にて定義しよう。 N a3W0 ( p' − p", T ) ≡ c( p") ≡ 1 (2π )3 1 (2π )3 ∑V (k ) exp{ik (p' − p")} (5-4) k ∑ Q (k ) exp(ikp") (5-5) a k また式(5-4)(5-5)のフ−リエ逆変換は次式にて与えられる。 1 N a3W ( p' − p", T ) exp{−ik ( p' − p")} = ∑ W ( p' − p", T ) exp{−ik (p' − p")} (5-6) 3 ∑ N a p'−p" p'− p" 1 (5-7) Qa ( k ) = 3 ∑ c( p") exp( −ikp") N a p" V (k ) = ここで、 V ( k ) は物理的には、 9 V (k ) = = = = = 1 N a3 ∑ N W (p' − p", T ) exp{−ik (p' − p")} 3 a p'− p" 1 N a3 ∑ N W (∆p, T ) exp(−ik∆p) 1 N a3 ∑ ∑ 1 N a3 ∑∑W (∆p, T ) exp( −ik∆p) 1 N a3 ∑∑W (p' − p", T ) exp{−ik (p' − p")} 3 a ∆p ∆p p' W ( ∆p, T ) exp( −ik∆p) ∆p p' p' p" の計算に対応している。 さて、式(5-4)(5-5)を式(5-3)に代入する。 µ surf ( p') = ∑ W0 ( p' − p", T )c( p") − W0 c( p') p" 1 = ∑ 3 3 p" (2π ) N a = k a 3 6 a k k' 3 a p" W0 V ( k )Qa ( k') exp(ikp')δ ( k − k') − = 6 ∑∑ (2π ) k k' (2π )3 1 (2π )3 1 = (2π )3 1 = (2π )3 1 (2π )3 ∑ Q (k ) exp(ikp') a k W0 ∑∑V (k )Q (k') exp(ikp') N ∑ exp{i(k' − k ) p"} − (2π ) ∑ Q (k ) exp(ikp') 1 = 0 k 1 1 (2π ) 1 ∑V (k ) exp{ik (p' − p")} (2π ) ∑ Q (k ) exp(ikp") − W a 3 k (5-8) ∑ Q (k ) exp(ikp') a k W0 ∑V (k )Q (k ) exp(ikp') − (2π ) ∑ Q (k ) exp(ikp') a a 3 k k ∑ {V (k ) − W }Q (k ) exp(ikp') 0 a k ∑ {V (k ) − V (0)}Q (k ) exp(ikp') a k V(k)は式(5-6)より、例えば2次元正方格子の場合には、 V (k ) = ∑ W (p' − p") exp{−ik (p' − p")} p'− p" = ∑ W (p' − p") cos{k (p' − p")} (5-9) p'− p" = 2W ( d x ) cos( k x d x ) + 2W ( d y ) cos(k y d y ) + 4W ( d xy ) cos( k x d x ) cos( k y d y ) のように計算される。dx, dy,およびdxyは、それぞれ x方向,y方向,およびxy方向の原子間相互作 用距離で、W(dx), W(dy)およびW(dxy)は、その原子間距離における原子間相互作用エネルギ−である。 したがって、 d i , W ( d i ) が既知であるならば、あらかじめV(k)をkの関数として求めておくことが出 来る。以上から、式(5-5)(5-8)を式(5-2)に代入することにより、 Esurf は、 10 Esurf = = = 1 2 N a3 ∑ c(p') µ 1 2 N a3 ∑ (2π ) ∑ Q (k') exp(ik'p') (2π ) ∑ {V (k ) − V (0)}Q (k ) exp(ikp') surf ( p') p' 1 p' 1 1 2 (2π )6 1 1 2 (2π )6 1 1 = 2 (2π )3 = 1 a 3 k' a 3 k 1 ∑∑ Q (k'){V (k ) − V (0)}Q (k ) N ∑ exp{i(k' + k ) p'} a k a 3 a k' (5-10) p' ∑∑ Q (k'){V (k ) − V (0)}Q (k )δ (k' + k ) a k a k' ∑ Q (−k ){V (k ) − V (0)}Q (k ) a a k と計算される。以上までの議論では結晶格子を用いたが、通常の濃度場は結晶格子のある領域を空 間的に粗視化することによって定義される。次に粗視化について考えて見よう。粗視化した場合の 仮想的格子を「計算格子」(これが通常の数値計算における差分メッシュに相当するため)と呼ぶ こととし、この格子点の位置ベクトルをr'とする。通常、計算格子を結晶格子よりも小さく取るこ とはないので、p'とr'の関係は、次式にて与えられる。 p' = r' + q (5-11) qは個々の計算格子内部に存在する結晶格子点へ位置ベクトルで、その原点は位置r'である。 式(5-7)(5-11)を式(5-8)へ代入する。 µ surf ( p') = µ surf (r' + q ) = = = = 1 (2π )3 ∑ [V (k ) − V (0)]Q (k ) exp{ik (r' + q)} a k 1 1 (2π )3 ∑ [V (k ) − V (0)] N ∑ c(p") exp(−ikp") exp{ik (r' + q)} k 3 p" a 1 1 (2π )3 (5-12) ∑ [V (k ) − V (0)] N ∑ c(r" + q) exp{−ik (r" + q)} exp{ik (r' + q)} k 3 a 1 − V 0 V ) ( )] k [ ( 3 ∑ N (2π )3 k 1 r"+ q 1 3 ∑ r" Nq c r" + q − i kr" ( ) exp( ) exp(ikr') ∑q N 3 は計算格子の格子点数で、 N q3 は計算格子内の結晶格子点数である。 N a = N q N の関係にある。 ここで計算格子内部の局所平均組成を式(5-13)にて定義する。 c(r") ≡ 1 3 Nq ∑ c(r" + q) (5-13) q このように粗視化することによって、位置 r"における濃度場が定義される。さらにこの濃度場のフ −リエ変換を次式にて定義する。 Q (k ) ≡ 1 N3 ∑ c(r") exp(−ikr") (5-14) r" 11 式(5-13)(5-14)を式(5-12)に代入すると、右辺の変数 q は消え、最終的に式(5-15)が得られる。 µ surf (r') = 1 (2π )3 ∑ [V (k ) − V (0)]Q (k ) exp(ikr') (5-15) k また式(5-10)と同様に変形することによって、 Esurf = 1 2N 3 ∑ c(r')µ surf (r') = r' 1 1 2 (2π )3 ∑ Q( −k ){V (k ) − V (0)}Q(k ) (5-16) k を得る。式(5-8)と式(5-14)および式(5-10)と式(5-16)をそれぞれ比較すると、単に Qa ( k ) の部分を Q ( k ) に置き換えただけであることがわかる。Qa ( k ) と Q ( k ) を比較した場合、高 k 側で Qa ( k ) は値 を持つが Q ( k ) は0となる。また低 k 側では Qa ( k ) と Q ( k ) の値は等しい。 Q ( k ) において高 k 側が 0となった理由は、式(5-13)において計算格子内を粗視化したからである。つまり計算格子内を粗 視化し、計算格子内部を均一と仮定したことは、計算格子内部の濃度変動(結晶格子点における溶 質原子の存在確率変動)に起因する界面エネルギ−を0と仮定したことに他ならない(濃度場が均 一ならば、そこには界面エネルギ−は存在しない。)重要な点は、式(5-15)(5-16)の形式を用いれば、 原子オ−ダ−の濃度場の変動から、相分解レベルの濃度場の変動に起因する界面エネルギ−まで同 一の形式にて導くことが出来る点である。つまり、 Q ( k ) の計算精度に合わせて自動的に粗視化さ れた界面エネルギ−が計算されることになる。もともと界面エネルギ−は、空間における、濃度場 の変動に起因した過剰エネルギ−であるので、どのようなスケ−ルの変動であれ、その変動場がフ −リエ波で表されれば、そのフ−リエ成分を用いることによって、そこにおける界面エネルギ−を 式(5-15)(5-16)の形式により評価することが出来るのである。またもう一つ重要な点は、格子点にお ける溶質原子の存在確率を扱った場合、規則-不規則変態も c( p) を用いて記述できる点である。 6.式(5-16)と勾配エネルギ−との関係 まず、通常の勾配エネルギ−をフ−リエ表現しよう。勾配エネルギ−は、 Esurf = 1 2N 3 ∑ κ {∇c(r )} 2 (6-1) c r と表現でき、濃度場および濃度勾配場は、 1 ∑ Q (k ) exp(ikr ) (2π )3 k 1 ∇c(r ) = ∑ (ik )Q(k ) exp(ikr ) (2π )3 k c (r ) = (6-2) であるので、これを式(6-1)に代入することによって、 12 Esurf = = 1 2N 3 ∑ κ {∇c(r )} 1 2N 3 ∑κ 2 c r r c 1 (2π )3 1 ∑ (ik )Q(k ) exp(ikr ) (2π ) ∑ (ik')Q (k') exp(ik'r ) k 3 k' 1 1 1 κ c ∑∑ kk'Q ( k )Q ( k') 3 ∑ exp{i ( k + k') r} 6 N r 2 (2π ) k k' 1 1 =− κ c ∑∑ kk'Q ( k )Q ( k')δ (k + k') 2 (2π )6 k k' 1 1 κ k 2Q ( k )Q ( −k ) = 3 ∑ c 2 (2π ) k 1 1 = Q ( −k )κ c k 2Q ( k ) 3 ∑ 2 (2π ) k =− (6-3) を得る。これを式(5-16)を比較すると、両者が等しい場合には κ c k 2 = V ( k ) − V ( 0) (6-4) の関係があることがわかる。つまり、通常の勾配エネルギ−は、 V ( k ) を k の二次式で近似した場 合に他ならないのである。しかし、 V ( k ) は本質的には,例えば式(5-9)のように周期関数である。つ まり、スピノーダル分解理論における勾配エネルギ−は、k の小さな部分のみに着目し、 V ( k ) に 関するその部分を2次式で近似したエネルギ−である。k の大きなところで、Q ( k ) = 0 と仮定でき る組織の場合にはこの仮定は正当化される(つまり原子サイズよりも組織が十分粗ければ良い)。 しかし、組織が非常に小さいとこの仮定が成立しなくなる。たとえば、 cos( x ) = 1 − x2 x4 x6 + − + 2! 4! 6! を用いて、式(5-9)を展開する(簡単のために d x = d y = d1 , W ( d x ) = W ( d y ) = W1 , W ( d xy ) = W2 と置 く)と、 V ( k ) = 2W ( d x ) cos( k x d x ) + 2W ( d y ) cos( k y d y ) + 4W ( d xy ) cos( k x d x ) cos( k y d y ) = 2W1 cos( k x d1 ) + 2W1 cos( k y d1 ) + 4W2 cos( k x d1 ) cos( k y d1 ) k y2 d12 k y4 d14 k2d 2 k4d 4 ≅ 2W1 1 − x 1 + x 1 + 2W1 1 − + 2 24 2 24 k x2 d12 k y2 d12 k x4 d14 k y4 d14 k x2 d12 k y2 d12 + + + 4W2 1 − − + 24 4 2 2 24 13 ∴ V ( k ) − V ( 0) k y2 d12 k y4 d14 k x2 d12 k x4 d14 = 2W1 − + + + 2W1 − 2 24 2 24 2 2 k y2 d12 k x4 d14 k y4 d14 k x2 d12 k y2 d12 k d + 4W2 − x 1 − + + + 2 2 24 24 4 4 4 4 4 k 4 d 4 k d k4d4 k d = W1 − k x2 d12 − k y2 d12 + x 1 + y 1 + W2 −2k x2 d12 − 2k y2 d12 + x 1 + y 1 + k x2 k y2 d14 12 12 6 6 1 = −(W1 + 2W2 )( k x2 + k y2 )d12 + (W1 + 2W2 )( k x4 + k y4 )d14 + W2 k x2 k y2 d14 12 を得る。結局、kに関する4次式以降が無視できない場合には、通常の勾配エネルギ−表記は使用 できない。しかし直接、V ( k ) を計算して広義の界面エネルギ−を評価する手法ならば問題はない。 したがって、規則-不規則変態の計算を行う場合には、通常の勾配エネルギ−表記ではなく、V ( k ) に基づく解析を行わなくてはならない。 14 付録 1.変分法 まず始めに、変分法の解説から始める。 1-1. 1次元で、変数に c, x , c' = ∂ c / ∂ x を持つ場合 まず汎関数を以下のように設定する。 J= z LMN RST F c( x ), x , ∂c ∂x UVOPdx WQ (1) 第一変分は、 RS T δ J = lim J ( c + εv ) − J ( c ) ε →0 ε UVε W (2) さらに、微分が定義できる場合には、 δJ = FG ∂ J (c + εv )IJ H ∂ε K ε (3) ε =0 にて計算されるので、 F ∂ F Rc + εv, x, F ∂ c I + ε F ∂ v I UdxI GH ∂ x JK GH ∂ x JK VW JK GH ∂ ε z ST F F ∂ F I vdx + F ∂ F I v' dxI ε = Gz G H H ∂ c JK z GH ∂ c' JK JK F ∂ F IJ δ cdx + FG ∂ F IJ δ c' dx = zG z H ∂ c' K H ∂c K δJ = ε= ε =0 FG ∂ F lc + εv, x, c'+εv'qdxIJ H ∂ε z K ε ε =0 (4) この第2項を部分積分する。 z FGH IJ K ∂F δ c' dx = ∂ c' LMF ∂ F I δ cOP − d F ∂ F I δ cdx NGH ∂ c' JK Q z dx GH ∂ c' JK (5) したがって、 FG ∂ F IJ δ c' dx IJ z K H ∂ c' K LF ∂ F I δ cOP − d F ∂ F I δ cdx ∂ FI = δ cdx + MG J ∂c K NH ∂ c' JK Q z dx GH ∂ c' JK LF ∂ F I δ cOP + RSF ∂ F I − d F ∂ F I UVδ cdx = MG NH ∂ c' JK Q z TGH ∂ c JK dx GH ∂ c' JK W δJ = z FGH z FGH ∂F δ cdx + ∂c 15 (6) これより、オイラ−方程式は、 FG ∂ F IJ − d FG ∂ F IJ = 0 (7) H ∂ c K dx H ∂ c' K F ∂ F IJ は c, x, ∂ c の関数であるので、x で微分する場合には合成関数として なお、この第2項内の G ∂x H ∂ c' K 扱わなくてはならない。たとえば、 FG ∂ F IJ ( dx ) + FG ∂ F IJ ( dc ) + FG ∂ F IJ ( dc' ) = FG ∂ F IJ ( dx ) + FG ∂ F IJ ( dc ) + FG ∂ F IJ{d (c' )} H ∂ x K H ∂ c K H ∂ c' K H ∂ x K H ∂ c K H ∂ c' K dF F ∂ F I F ∂ F I F dc I F ∂ F I R d F dc I U F ∂ F I F ∂ F I F ∂ F I =G J + G J G J + G J S G J V = G J + G J c'+G J c" dx H ∂ x K H ∂ c K H dx K H ∂ c' K T dx H dx K W H ∂ x K H ∂ c K H ∂ c' K dF = (8) であるから、同様にして、 FG IJ FG IJ FG ∂ F IJ + FG ∂ IJ FG ∂ F IJ c'+FG ∂ IJ FG ∂ F IJ c" H K H K H ∂ c ' K H ∂ c K H ∂ c' K H ∂ c' K H ∂ c ' K ∂ d ∂F = dx ∂ c' ∂x (9) が得られる。 1-2. 2次元で、変数に c( x , y ), x , y , c, x = ∂ c / ∂ x , c, y = ∂ c / ∂ y を持つ場合 まず汎関数を以下のように設定する。 J= LM F RSc( x, y ), x, y, ∂ c , ∂ c UVOPdxdy zz N T ∂ x ∂ y WQ (10) 第一変分は、 RS T δ J = lim J {c( x , y ) + εv ( x , y )} − J {c( x , y )} ε →0 ε UVε W (11) にて計算されるので、 LM 1 o F (c + εv, x, y, c + εv , c + εv )dxdy − F (c, x, y, c , c zz N ε zz F F ∂ F I vdxdy + F ∂ F I v dxdy + F ∂ F I v dxdyI ε = G zz G zz GH ∂ c JK zz GH ∂ c JK JK H H ∂ c JK F ∂ F IJ δ cdxdy + F ∂ F I δ c dxdy + F ∂ F I δ c dxdy = zz G zz GH ∂ c JK zz GH ∂ c JK H ∂c K δ J = lim ,x ε →0 ,x ,y ,y ,x ,x ,y x y ,x ,y ,x ,y この第2および3項を部分積分する。 16 ,y tOPQ )dxdy ε (12) F ∂ F I δ c dxdy = R|S F ∂ F I δ c dx U|Vdy zz GH ∂ c JK z |Tz GH ∂ c JK |W R|LF ∂ F I δ cO − d F ∂ F I δ cdx U|dy = z SMG |TNMH ∂ c JK PQP z dx GH ∂ c JK V|W R| d F ∂ F I δ cU|dxdy = − zz S G |T dx H ∂ c JK V|W F ∂ F I δ c dxdy = R|S F ∂ F I δ c dy U|Vdx zz GH ∂ c JK z |Tz GH ∂ c JK |W R|LF ∂ F I δ cO − d F ∂ F I δ cdy U|dx = z SMG |TMNH ∂ c JK PPQ z dy GH ∂ c JK V|W R| d F ∂ F I δ cU|dxdy = − zz S G |T dy H ∂ c JK V|W ,x ,x ,x ,x ,x (13) ,x ,x ,y ,y ,y ,y ,y (14) ,y ,y したがって、 FG ∂ F IJ δ cdxdy + F ∂ F I δ c dxdy + F ∂ F I δ c dxdy zz H ∂ c K zz GH ∂ c JK zz GH ∂ c JK F ∂ F IJ δ cdxdy − R|S d F ∂ F I δ cU|Vdxdy − R|S d F ∂ F I δ cU|Vdxdy = zz G zz |T dx GH ∂ c JK |W zz |T dy GH ∂ c JK |W H ∂c K R|F ∂ F I − d F ∂ F I − d F ∂ F I U|δ cdxdy = zz SG |TH ∂ c JK dx GH ∂ c JK dy GH ∂ c JK V|W δJ = ,x ,y ,x ,y ,x ,x (15) ,y ,y これより、オイラ−方程式は、 FG ∂ F IJ − d F ∂ F I − d F ∂ F I = 0 H ∂ c K dx GH ∂ c JK dy GH ∂ c JK ,x (16) ,y ここで、F は c, x , y , c, x , c, y の関数であるので、x で微分する場合には合成関数として扱わなくては ならない。たとえば、 FG ∂ F IJ ( dx ) + FG ∂ F IJ ( dy ) + FG ∂ F IJ ( dc ) + F ∂ F I{d (c )} + F ∂ F I{d (c GH ∂ c JK H ∂ x K H ∂ y K H ∂ c K GH ∂ c JK dF F ∂ F I F ∂ F I F dc I F ∂ F I F d c I F ∂ F I F d c I =G G J G J+ J + G JG J + dx H ∂ x K H ∂ c K H dx K GH ∂ c JK H dx K GH ∂ c JK H dxdy K dF = ,x ,x 2 ,y 2 2 ,x ,y 同様に 17 ,y )} (17) F I F I F ∂ F I + F ∂ I F ∂ F I FG dc IJ + F ∂ I F ∂ F I FG d c IJ + F ∂ I F ∂ F I FG d c IJ GH JK GH JK GH ∂ c JK GH ∂ c JK GH ∂ c JK H dx K GH ∂ c JK GH ∂ c JK H dx K GH ∂ c JK GH ∂ c JK H dxdy K F ∂ F I + F ∂ F I FG dc IJ + F ∂ F I FG d c IJ + F ∂ F I FG d c IJ =G H ∂ x∂ c JK GH ∂ c∂ c JK H dx K GH ∂ c JK H dx K GH ∂ c ∂ c JK H dxdy K (18) d F ∂ F I F ∂ I F ∂ F I F ∂ I F ∂ F I F dc I F ∂ I F ∂ F I F d c I F ∂ I F ∂ F I F d c I =G +G J G J+ G J+ G J J dy GH ∂ c JK H ∂ y K GH ∂ c JK H ∂ c K GH ∂ c JK H dx K GH ∂ c JK GH ∂ c JK H dxdy K GH ∂ c JK GH ∂ c JK H dy K F ∂ F I + F ∂ F I F dc I + F ∂ F I F d c I + F ∂ F I F d c I =G H ∂ y∂ c JK GH ∂ c∂ c JK GH dy JK GH ∂ c ∂ c JK GH dxdy JK GH ∂ c JK GH dy JK ∂ d ∂F = ∂x dx ∂ c, x 2 2 2 ,x ,x 2 2 ,x 2 ,x 2 2 ,x ,x ,x ,y 2 ,x 2 2 y ,x 2 2 2 ,y ,y ,y 2 ,x 2 ,y 2 ,y ,y ,y 2 ,x 2 2 2 ,y ,y ,y 2 である。したがって、最終的にオイラ−方程式は次式にて与えられる。 FG ∂ F IJ − d F ∂ F I − d F ∂ F I H ∂ c K dx GH ∂ c JK dy GH ∂ c JK F ∂ F IJ − R|SF ∂ F I + F ∂ F I FG dc IJ + F ∂ F I FG d c IJ + F ∂ F I FG d c IJ U|V =G H ∂ c K |TGH ∂ x∂ c JK GH ∂ c∂ c JK H dx K GH ∂ c JK H dx K GH ∂ c ∂ c JK H dxdy K |W R|F ∂ F I + F ∂ F I F dc I + F ∂ F I F d c I + F ∂ F I F d c I U| = 0 − SG |TH ∂ y∂ c JK GH ∂ c∂ c JK GH dy JK GH ∂ c JK GH dy JK GH ∂ c ∂ c JK GH dxdy JK V|W ,x ,y 2 2 ,x 2 2 ,x ,x 2 2 ,y 2 2 ,y 2 2 ,y 2 2 ,y 2 (19) ,x 2 2 2 ,x ,y 2.勾配エネルギ−係数の方位依存性 勾配エネルギ−係数が方位に依存する場合を考える。まず勾配エネルギ−係数を次式のように定 義する。 κ (θ ) = κ 0γ (θ ) = κ 0 {1 + γ cos( k λθ )}2 (1) γ (θ ) = {1 + γ cos( kλθ )}2 (2) ここで、界面に垂直方向の方位と界面における order parameter の方位には次の関係が存在する。 (変 数 c は、任意の order parameter であるが、イメ−ジし易くするために濃度場と考えてもよい。 ) FG ∂ c IJ sin θ H ∂ x K c tan θ = = = cos θ F ∂ c I c GH ∂ y JK ,x (3) ,y これより、次のような関係式が導かれる。 (cos θ ) 2 + (sin θ ) 2 1 1 dθ = dθ = dc, x 2 2 c, y (cos θ ) cos θ F ∂ θ I = cos θ = GH ∂ c JK c (c 2 ,x ,y ,x (4) c, y ) 2 + ( c, y ) 2 18 c 1 dθ = − , x 2 dc, y 2 cos θ ( c, y ) F ∂θ I = − c GH ∂ c JK (c ) ,x ,y (5) c, x cos 2 θ = − 2 ( c, x ) + ( c, y ) 2 2 ,y sin θ c x 1 − cos 2 θ ( c x ) 2 , = , = cos 2 θ (c y )2 cos θ c y ( cx )2 cos 2 θ = 1 − cos 2 θ 2 (c y ) (c y )2 1 cos θ = = ( cx )2 ( cx )2 + ( c y )2 1+ ( c y )2 (6) 2 さて、系の自由エネルギ−は次式にて与えられる。 z F = [ f {c(r )} + κ {θ (r )} ∇c ]dr 2 (7) r 式(3)より、 θ は c, x , c, y の関数であるので、 z LM z MN F = [ f {c(r )} + κ {∇c}( ∇c ) 2 ]dr r = R|F ∂ c I F ∂ c I U|OPdr )}SG J + G |TH ∂ x K H ∂ y JK V|WPQ 2 f {c(r )} + κ {θ ( c, x , c, y r (8) 2 と書くことが出来る。式(7)内の化学的自由エネルギ−の c に関する変分、すなわち化学ポテンシャ ルは、式(9)にて与えられる。 µ (r ) = FG ∂ f IJ H ∂c K (9) 式(8)の右辺積分内第2項の変分は、以下のように計算される。まず、この項を改めて次式のように 置く。 n E g = κ {θ ( c, x , c, y )} ( c, x ) 2 + ( c, y ) 2 s (10) 式(10)を c, x および c, y にて偏微分する。 ∂ Eg ∂ c, x FG ∂κ IJ F ∂ θ I n(c ) + (c ) s + 2κ {θ (c , c )}(c ) H ∂ θ K GH ∂ c JK F ∂κ I F c I n(c ) + (c ) s + 2κ {θ (c , c = G JG H ∂ θ K H (c ) + (c ) JK F ∂κ I = G J c + 2κ {θ ( c , c )}( c ) H ∂θ K = 2 2 ,x ,y ,x ,y ,x ,x ,y 2 2 ,x ,y ,x 2 2 ,y ,x ,y ,x ,y ,x 19 ,y )}( c, x ) (11) ∂ Eg ∂ c, y FG ∂κ IJ F ∂ θ I n(c ) + (c ) s + 2κ {θ (c , c )}(c ) H ∂ θ K GH ∂ c JK I n(c ) + (c ) s + 2κ {θ (c , c c F ∂κ I F = G JG− H ∂ θ K H (c ) + (c ) JK F ∂κ I = −G J c + 2κ {θ ( c , c )}( c ) H ∂θ K = 2 2 ,x ,y ,x ,y ,y ,y ,x 2 2 ,x 2 ,x 2 ,y ,x ,y )}( c, y ) (12) ,y ,x ,x ,y ,y ここで、式(1)より、 κ (θ ) = κ 0 {1 + γ cos( kλθ )}2 (13) ∂ κ (θ ) = 2κ 0 {1 + γ cos( k λθ )}{−γ sin( k λθ )}k λ ∂θ = −2γ k λκ 0 {sin( k λθ ) + γ sin( k λθ ) cos( k λθ )} (14) = −γ k λκ 0 {2 sin( k λθ ) + γ sin( 2k λθ )} ∂ 2κ (θ ) = −γ k λκ 0 {2k λ cos( k λθ ) + 2γk λ cos( 2 k λθ )} ∂θ 2 (15) = −2γ k λ2κ 0 {cos( k λθ ) + γ cos( 2 k λθ )} である。さらに、式(11)(12)を x および y にて常微分する。 LMF ∂κ I c + 2κ {θ (c , c )}(c )OP Q NGH ∂ θ JK F ∂ κ IJ R|SF ∂ θ I c + F ∂ θ I c U|Vc + FG ∂κ IJ c =G H ∂ θ K |TGH ∂ c JK GH ∂ c JK |W H ∂ θ K F ∂κ IJ R|SF ∂ θ I c + F ∂ θ I c U|Vc + 2κ {θ (c , c )}c + 2G H ∂ θ K |TGH ∂ c JK GH ∂ c JK |W R|F ∂ θ I c + F ∂ θ I c U|RF ∂ κ I c + 2F ∂κ I c U + F ∂κ I c + 2κ {θ (c , c )}c = SG |TH ∂ c JK GH ∂ c JK V|WSTGH ∂ θ JK GH ∂ θ JK VW GH ∂ θ JK |R c c − c c |UVRSFG ∂ κ IJ c + 2FG ∂ κ IJ c UV + FG ∂ κ IJ c + 2κ {θ (c , c =S |T(c ) + (c ) (c ) + (c ) |WTH ∂ θ K H ∂ θ K W H ∂ θ K d dx ,y ,x ,y ,x 2 , xx 2 , yx ,x ,y , yx ,y , xx , yx ,x ,x ,x ,y (16) , xx ,y 2 , xx , yx ,x 2 ,y ,x , yx ,x ,y , xx ,y 2 , y , xx 2 ,x , x , yx 2 2 ,y ,x 2 2 ,y ,x ,y 20 , yx ,x ,y )}c, xx LM F I OP G J NH K Q F ∂ κ IJ R|SF ∂ θ I c + F ∂ θ I c U|Vc − FG ∂ κ IJ c = −G H ∂ θ K |TGH ∂ c JK GH ∂ c JK |W H ∂ θ K F ∂κ IJ R|SF ∂ θ I c + F ∂ θ I c U|Vc + 2κ {θ (c , c )}c + 2G H ∂ θ K |TGH ∂ c JK GH ∂ c JK |W R|F ∂ θ I c + F ∂ θ I c U|RF ∂ κ I c − 2F ∂ κ I c U − F ∂ κ I c + 2κ {θ (c , c )}c = − SG VSG J G J V G J T|H ∂ c JK GH ∂ c JK W|TH ∂ θ K H ∂ θ K W H ∂ θ K R| c c − c c U|VRSF ∂ κ I c − 2F ∂ κ I c UV − F ∂ κ I c + 2κ {θ (c , c )}c = −S |T(c ) + (c ) (c ) + (c ) |WTGH ∂ θ JK GH ∂ θ JK W GH ∂ θ JK R| c c − c c U|VRSF ∂ κ I c − 2F ∂κ I c UV − F ∂κ I c + 2κ {θ (c , c )}c =S |T(c ) + (c ) (c ) + (c ) |WTGH ∂ θ JK GH ∂ θ JK W GH ∂ θ JK ∂κ d − c, x + 2κ {θ ( c, x , c, y )}( c, y ) ∂θ dy 2 , xy 2 , yy ,x ,x , xy ,y , xy , yy ,x ,y ,x , yy ,y ,y (17) 2 , xy , yy ,x ,x 2 ,y , xy ,x ,y , yy ,y 2 , y , xy 2 ,x , x , yy 2 2 ,y ,x 2 ,y ,x 2 , xy ,x ,y , yy ,y 2 , x , yy 2 ,x , y , xy 2 2 ,y ,x 2 ,x 2 ,y , xy ,x ,y , yy ,y オイラ−方程式は、 FG ∂ F IJ − d F ∂ F I − d F ∂ F I = 0 H ∂ c K dx GH ∂ c JK dy GH ∂ c JK ,x ,y にて与えられるので、最終的に、全ポテンシャルは、式(18)にて計算される。 OP d LM−F ∂κ I c + 2κ {θ (c , c )}(c )OP Q dy N GH ∂ θ JK Q |R c c − c c |UVRSFG ∂ κ IJ c + 2FG ∂κ IJ c UV − FG ∂κ JI c − 2κ {θ (c , c )}c =µ−S |T(c ) + (c ) (c ) + (c ) |WTH ∂ θ K H ∂ θ K W H ∂ θ K R| c c − c c U|VRSF ∂ κ I c − 2F ∂κ I c UV + F ∂κ I c − 2κ {θ (c , c )}c −S |T(c ) + (c ) (c ) + (c ) |WTGH ∂ θ JK GH ∂ θ JK W GH ∂ θ JK F ∂κ IJ (c − c ) = µ − 2κ {θ ( c , c )}( c + c ) − G H ∂θ K LM(c c − c c )RF ∂ κ I c + 2F ∂κ I c U OP STGH ∂ θ JK GH ∂ θ JK VW P M 1 − (c ) + (c ) M MM+(c c − c c )RSFG ∂ κ IJ c − 2FG ∂κ IJ c UVPPP TH ∂ θ K H ∂ θ K WQ N LM(c c − c c )RF ∂ κ I c + 2F ∂κ I c U OP STGH ∂ θ JK GH ∂ θ JK VW P 1 M = µ − 2κ {θ ( c , c )}( c + c ) − (c ) + (c ) M MM+(c c − c c )RSFG ∂ κ IJ c − 2FG ∂κ IJ c UVPPP TH ∂ θ K H ∂ θ K WQ N χ =µ− d dx LMF ∂κ I c NGH ∂ θ JK ,y + 2κ {θ ( c, x , c, y )}( c, x ) − ,x ,x ,y ,y 2 , y , xx 2 ,x , x , yx 2 2 ,y ,x 2 2 ,y ,x , yx ,x ,y , xx 2 ,x ,y , xy ,x ,y , yy ,y 2 , x , yy 2 ,x , y , xy 2 2 ,y ,x ,x ,y , xx 2 ,y , yy , yx , xy 2 , y , xx 2 , x , yx 2 ,x ,y 2 ,x 2 ,y , x , yy , y , xy ,x 2 ,y 2 , y , xx ,x ,y , xx , yy 2 ,x , x , yx 2 ,y 2 ,x 2 ,y , x , yy 21 , y , xy 2 ,x ,y (18)
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